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【発明の名称】 牛のビタミンA欠乏状態の簡易測定機
【発明者】 【氏名】片山 信也

【氏名】鈴木 巧

【氏名】戸塚 忠

【要約】 【課題】この発明は、牛の肢の腫脹を測定することで、簡易・安全に血中ビタミンA濃度を推定する器具に関するものである。

【解決手段】本発明は、はかりに連動したひも状部材で牛の肢を所定の強弱の張力で締めてくい込ませることにより、ビタミンA欠乏状態で組織水腫を起こした牛の肢の腫脹程度を測定することができる。ひも状部材はガイドを介して棒状部材の前部で操作するため、測定者は牛の蹴り上げによる危険から解放されると同時に立位での測定作業のため疲労も少ない。
【特許請求の範囲】
【請求項】(イ)棒状部材(1)の前部(2)に強靱なひも状部材(3)の一端を設ける。
(ロ)ひも状部材(3)の他端にはかり(4)を設ける。
(ハ)棒状部材(1)に目印(5)を設ける。
(ニ)棒状部材1の前部2にひも状部材3を通すガイド6を設ける。
(ホ)はかり(4)とガイド(6)の間に目印(7)を設ける。
以上の構成より成る牛のビタミンA欠乏状態の簡易測定機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は牛の血中ビタミン濃度を容易に推定する器具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高品質牛肉(霜降り肉)の生産のためには、牛の肥育期間中をビタミンAの欠乏状態に維持することが重要である。しかし、危険量を下回る低ビタミンA状態で牛を飼養をすると、運動失調、失明、食欲不振、突然死等の事故損失が生じる上に、筋肉水腫(ズル肉)等の食用不適格肉発生による経済損失も発生する。安定的に高品質牛肉を生産するためには定期的に血中ビタミンAの状態を把握する必要がある。従来は、血清または血漿を高速液体クロマトグラフィーで分析することによってビタミンAを測定しているが、「測定器械が高価」「煩雑な試料の前処理と複雑な測定操作が必要」「検査機関による分析では費用・時間がかかる」「採材した試料を遮光・低温保持する煩雑さ」「採血のための器材コスト」「採血作業に伴う保定の労力と採血作業中の事故が伴う」等の欠点がある。簡易なビタミンA測定法として、比較的安価な光学機器(蛍光分光分析計)を用いて血漿中ビタミンAを測定する手法(山崎ら、1996年)が開発されたが、「採血が必要」「煩雑な試料の前処理」を必要とする等の欠点がある。特別な器具を使用しない方法として、瞳孔反射の遅延割合を測定してビタミンAの欠乏状態を推定する簡易法(松田ら、2000年)も開発されたが、「秒単位の測定のため測定誤差が大きい」欠点がある。結膜細胞の顕微鏡観察によりビタミンA欠乏を推定する方法もあるが、「試料採取が難しい」「顕微鏡等の器具を必要とする」「特殊な知識・技術を必要とする」等の欠点がある。生産現場では、角や蹄のツヤ、皮毛の粗剛性、下肢や胸垂の腫脹等の観察によりビタミンA欠乏状態を推察しているが、経験則に基づいた確実性の低い定性的な観察法という欠点がある。
【0003】
【この発明が解決しようとする課題】簡易な操作で牛の血中ビタミンA濃度を迅速に測定する方法を開発する必要があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】ビタミンA欠乏状態では毛細血管の透過性が亢進し、血清蛋白の一部が組織中に漏出するために水腫(腫脹)を起こすことが知られる。そこで、前記課題を解決するため、ビタミンA欠乏状態の牛の多くで観察される肢の腫れから血中ビタミンA濃度を推定した。すなわち、棒状部材の前部において、ガイドを介して作られる強靱なひも状部材のループで牛の肢を取り囲み、はかりを目安にひも状部材を一定の張力で引くことで生じる棒状部材に設けた目印とはかりとガイドの間に設けた目印のズレ幅から牛の肢の腫れを測定することをその要旨とする。本発明は、(イ)棒状部材(1)の前部(2)に強靱なひも状部材(3)の一端を設け、(ロ)ひも状部材(3)の他端にはかり(4)を設け、(ハ)棒状部材(1)に目印(5)を設け、(ニ)棒状部材(1)の前部(2)にひも状部材(3)を通すガイド(6)を設け、(ホ)はかり(4)とガイド(6)の間に目印(7)を備える牛のビタミンA欠乏状態の簡易測定機である。ここで、棒状部材は測定者が容易に立位で作業するための長さを有するが、牛の肢から測定者の手元に足る長さと、はかりによる引っ張り強度に耐える強度があれば筒状、板状、L字やH字状断面の部材でも良い。ひも状部材は牛の肢の骨の上にある組織に食い込む必要がある一方で、測定時の牛のストレスや怪我を防止するため丸断面が好ましい。材質は、張力がかかる方向のノビが少ない性質であれば金属でも樹脂でも良い。棒状部材前部における強靱なひも状部材は、測定誤差が少ない前部側面か先端部に設けられる。ただし、牛の肢にひも状部材をまわす際の利便性を向上するために、棒状部材前部とひも状部材の接合部を取り外し自在のひっかけ構造にしても作用は変わらない。ひも状部材の他端にはかりを設けることで、はかりの目盛りを目安に所定の力で牛の肢を締め付けることが容易となる。なお、ひも状部材とはかりの接合部を取り外し自在のひっかけ構造にすると、作用は変わらずに牛の肢にひも状部材をまわす際の利便性が向上する。その際、はかりの力点側を棒状に延長するとひも状部材の操作性が向上する作用がある。棒状部材にははかりとガイドの間に設けた目印と合わせて、牛の肢を締め付けた時の外周長を計るための目印が設けてあるが、棒状部材の目印を目盛り状の目印にすると測定時の効率が良い。なお、はかりとガイドの間に設けた目印を目盛り状にしてもその作用がある。棒状部材前部とはかりの力点側はひも状部材を介してつながるが、はかりの作用点側と棒状部材の後部を弾性ひも状部材でつなぐと、測定作業時のはかりのブラつきが抑制されるため利便性が向上する。棒状部材の前部に設けたガイドは、はかりを後方に引く力を牛の肢の周囲に巻いたひも状部材を締め付ける力に変える作用がある。ひも状部材とガイドの接触部分におけるガイドの形状は穴でも溝でも作用は変わらないが、取り外し時の利便性を考慮すると溝の方が望ましい。なお、ガイドは1ケ所だけでなく棒状部材前部において棒状部材の長尺方向に沿って複数個設けることで、さらにひも状部材を安定して動作させる効果がある。なお、以上に述べた各構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明は、図1及び図2にその構成を示したように、(イ)棒状部材(1)の前部(2)に強靱なひも状部材(3)の一端を設け、(ロ)ひも状部材(3)の他端にはかり(4)を設け、(ハ)棒状部材(1)に目印(5)を設け、(ニ)棒状部材(1)の前部にひも状部材(3)を通すガイド(6)を設け、(ホ)はかり(4)とガイド(6)の間に目印(7)を備える牛のビタミンA欠乏状態の簡易測定機で、迅速・安全な牛の肢の腫脹を測定作業を実現した。以下に本発明の実施例を図3から図11に基づいて説明する。
【0006】
【実施例1】図3は牛の肢に接触するひも状部材の作動位置を棒状部材前部の側面とした例である。ひも状部材に張力を掛けて牛の肢を締め付けると、ひも状部材が牛の肢に食い込むと同時に棒状部材も牛の肢に強い力で押し付けられるが、本例のように先端部よりも接触面積の大きい側面が接触する場合には牛の痛みが少ない利点がある。
【0007】
【実施例2】図4は棒状部材とひも状部材を取り外し自在の構造とした例である。これにより牛の肢にひも状部材をまわす際に牛の肢をあげさせる必要がない。また、牛の足下にひも状部材先端部を落とし、棒状部材前部の先端部で拾い上げることで安全・容易に牛の肢にひも状部材をまわすことができる。
【0008】
【実施例3】図5は図4で示した棒状部材とひも状部材の取り外し自在構造を棒状部材前部のフックとひも状部材先端のボールで実現したものである。これによると、敷料(オガクズ、モミガラ等)が敷き詰められた牛房内における測定作業でも、容易にひも状部材の先端を確保することができる。
【0009】
【実施例4】図6は図4で示した棒状部材とひも状部材の取り外し自在構造の雄雌の組み合わせ関係を反対にした例であり、実施例2と同様の作用がある。なお、ガイドは作業性の良い溝構造として示した。
【0010】
【実施例5】図7は溝構造のガイド及び延長したはかりの力点を示した。牛の肢へのひも状部材の巻き付け時にガイドからひも状部材を外すことによって、棒状部材前部で形成されるひも状部材のループが穴構造のガイドに比べ大きくとれるために巻き付け作業が容易になり、締め付け時には溝にひも状部材を掛けることにより穴状構造のガイドと同様の作用が得られる。さらに、延長したはかり力点はひも状部材先端のハンドリングを容易にする効果がある。
【0011】
【実施例6】図8は、棒状部材に目盛り状の目印を設けた例である。ひも状部材の目印と合わせることで容易に牛の肢の周囲長を計ることができる。
【0012】
【実施例7】図9はひも状部材に目盛り状の目印を設けた例である。棒状部材の目印と合わせることで容易に牛の肢の周囲長を計ることができる。
【0013】
【実施例8】図10は棒状部材前部に複数のガイドを設けた例である。ひも状部材の動きを安定させる作用がある。
【0014】
【実施例9】図11は棒状部材の後部とはかりの作用点部材を弾性部材で結んだ例である。これにより、測定作業時のはかりのブラつきを抑制することができる。
【0015】以上に述べた各構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0016】次に本発明の作用について説明する。測定者は棒状部材前部(2)が下を向くように棒状部材(1)を持ち、保定された牛の傍らに立つ。棒状部材前部(2)よりひも状部材(3)を延ばし、牛の肢をひも状部材の(3)の中に入れる。実施例2、3及び4の如くひも状部材(3)と棒状部材(4)が取り外し自在の引っかけ構造になっていれば、牛の肢下部に巻き付くように棒状部材を振り、前肢を巻いて反対側に投げ出されたひも状部材の先端を棒状部材前部で引っかけることにより、牛の肢を動かすことなくひも状部材(3)で囲むことができる。次に棒状部材と並行にはかり(4)を後方に引くとガイド(6)または(12)または(18)を通ったひも状部材が(3)が引かれ、牛の肢を締めつけることができる。はかり(4)を強と弱の張力で引き、牛の肢を締め付けながらひも状部材と棒状部材の目印(5)と(7)の差を計ることで肢の腫脹を測定できる。実施例2、3及び4の如くひも状部材(3)と棒状部材(4)が取り外し自在の引っかけ構造になっていれば、測定終了後はひも状部材(3)を緩めることにより、ひも状部材(3)の弾力と重みにより棒状部材前部のひっかけ構造から簡単にはずれる。静岡県東部農林事務所家畜衛生課で実施した試験によると、ひも状部材に径5mmのワイヤーを使用し、締め付け張力を強が5kg、弱が3kgで締めたときの管囲の差を腫脹として取り出し、これを肥育後期の肉牛の高速液体クロマトグラフィーによる血中ビタミンA測定値と比較したところ、腫脹比{(5kg管囲−3kg管囲)/5kg管囲}の間に負の相関を認めた。血中ビタミンA値をY、腫脹比をXとする回帰式Y=−311.36X+101.68(R=−0.644、p<0.0001)と従来知られる簡易測定法と同等の精度の評価が可能であった。ワイヤーのみによる前肢管の外周測定は、しゃがみこみによる直接測定になるため、多数個体の省力測定には不向きであり、牛の蹴り上げによる危険も伴うが本発明による器具を使用すれば測定者が立ったままで並べて繋いだ牛を連続的に測定できるため迅速・簡易・安全・省力である。また、前肢における短時間測定では、牛を頭絡や鼻環で簡単に保定するだけで実施可能なため、牛に対するストレスも少ない。ひも状部材は細いほどくい込みが強くなるため測定精度が高くなるが、痛みによる牛のあばれや牛体への損傷の危険がある。しかし、ひも状部材に5mmのワイヤーを使用し、締め付け圧力は牛が強い痛みを示さない5kgと測定部位からワイヤーが動かない最低限の張力3kgで実施したところ問題は生じなかった。
【0017】
【発明の効果】本発明では、はかりにつないだひも状部材で牛の肢を所定の強弱の張力で締めてくい込ませることにより、ビタミンA欠乏状態で組織水腫を起こした牛の肢の腫脹程度を測定することができる。ひも状部材はガイドを介して棒状部材の前部で操作するため、測定者は牛の蹴り上げによる危険から解放されると同時に立位での測定作業のため疲労も少ない。また、短時間で測定できるため、牛に対するストレスも少ない。
【出願人】 【識別番号】590002389
【氏名又は名称】静岡県
【出願日】 平成14年1月30日(2002.1.30)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−219747(P2003−219747A)
【公開日】 平成15年8月5日(2003.8.5)
【出願番号】 特願2002−61207(P2002−61207)