| 【発明の名称】 |
海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収方法及び装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】平田 悟史 【住所又は居所】兵庫県明石市川崎町1番1号 川崎重工業株式会社明石工場内
【氏名】梶畠 賀敬 【住所又は居所】兵庫県明石市川崎町1番1号 川崎重工業株式会社明石工場内
【氏名】杉山 和彦 【住所又は居所】東京都港区浜松町2丁目4番1号 川崎重工業株式会社東京本社内
【氏名】大戸 寛 【住所又は居所】東京都港区浜松町2丁目4番1号 川崎重工業株式会社東京本社内
【氏名】倉持 安孝 【住所又は居所】東京都港区浜松町2丁目4番1号 川崎重工業株式会社東京本社内
|
| 【要約】 |
【課題】海洋深層水中に含まれる栄養塩類を利用可能な形態に濃縮して回収するための方法及び装置を提供すること。
【解決手段】本発明の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収方法は、海洋深層水中に含まれる栄養塩類を、当該海洋深層水を用いた植物プランクトンの生産と、生産された植物プランクトンを用いた動物プランクトンの生産により、動物プランクトンの細胞内に濃縮して回収するものである。また、本発明の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置は、海洋深層水を用いて植物プランクトンを生産する装置と、生産された植物プランクトンを用いて動物プランクトンを生産する装置と、植物プランクトンを植物プランクトン生産装置から動物プランクトン生産装置へ移送する配管とから構成される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 海洋深層水を取水して、海洋深層水中に含まれる栄養塩類を植物プランクトンの生産に利用した後、生産された植物プランクトンを回収して別工程で動物プランクトンの生産に利用することにより、海洋深層水中に含まれる栄養塩類を動物プランクトンの細胞内に濃縮して回収することを特徴とする海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収方法。 【請求項2】 植物プランクトンの生産に太陽光及び人工光のいずれかを用いる請求項1記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収方法。 【請求項3】 植物プランクトンの生産に太陽光と人工光を併用する請求項1記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収方法。 【請求項4】 植物プランクトンの生産で副産物として生じる酸素を動物プランクトンの生産に用いる請求項1、2又は3記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収方法。 【請求項5】 動物プランクトンの生産で副産物として生じる二酸化炭素を植物プランクトンの生産に用いる請求項1〜4のいずれかに記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収方法。 【請求項6】 動物プランクトンの生産速度に応じて植物プランクトンの生産速度を制御する請求項1〜5のいずれかに記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収方法。 【請求項7】 海洋深層水の取水速度、人工光の強さ及び植物プランクトンの回収速度の少なくともいずれかを制御する請求項6記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収方法。 【請求項8】 植物プランクトンの生産速度に応じて動物プランクトンの生産速度を制御する請求項1〜5のいずれかに記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収方法。 【請求項9】 海洋深層水を取水する取水手段と、取水した海洋深層水に含まれる栄養塩類を用いて植物プランクトンを生産する植物プランクトン生産装置と、生産された植物プランクトンを用いて動物プランクトンを生産する動物プランクトン生産装置と、前記植物プランクトン生産装置からの植物プランクトンを動物プランクトン生産装置に移送する植物プランクトン移送用配管とを包含してなることを特徴とする海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置。 【請求項10】 植物プランクトン生産装置が光を透過する素材で作られた密閉容器であり、密閉容器に海洋深層水又は/及び海洋深層水中の栄養塩類を含んだ液体を供給する配管及び該配管に設けられたポンプと、密閉容器から植物プランクトン懸濁液を回収する配管及び該配管に設けられたポンプと、密閉容器に植物プランクトンの生産に必要なガスを供給する配管及び該配管に設けられたポンプと、密閉容器から植物プランクトンの生産で発生したガスを回収する配管とを接続した請求項9記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置。 【請求項11】 植物プランクトン懸濁液を回収する配管に濃縮機を設け、植物プランクトン濃縮スラリーを動物プランクトン生産装置へ供給し、濃縮機で分離された海水は海水交換機構で海洋深層水に含まれる栄養塩類を補給するか、又は直接海洋深層水と一部を交換して植物プランクトン生産装置に循環するようにした請求項10記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置。 【請求項12】 動物プランクトン生産装置が密閉容器であり、密閉容器に植物プランクトンを含む液体又は植物プランクトン濃縮スラリーを供給する配管及び該配管に設けられたポンプと、密閉容器から動物プランクトン懸濁液を回収する配管と、密閉容器に動物プランクトンの生産に必要なガスを供給する配管及び該配管に設けられたポンプと、密閉容器から動物プランクトンの生産で発生したガスを回収する配管とを接続した請求項9、10又は11記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置。 【請求項13】 植物プランクトンの生産に必要なガスを供給する配管と動物プランクトンの生産で発生したガスを回収する配管とを接続し、動物プランクトンの生産に必要なガスを供給する配管と植物プランクトンの生産で発生したガスを回収する配管とを接続した請求項12記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置。 【請求項14】 植物プランクトン生産装置が、装置内の植物プランクトンに照射される光の量を調節するための人工光源を備えた請求項9〜13のいずれかに記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置。 【請求項15】 植物プランクトン生産装置が、装置内の植物プランクトンの濃度を測定するための濃度測定手段を備えた請求項9〜14のいずれかに記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置。 【請求項16】 動物プランクトン生産装置が、装置内の動物プランクトンの濃度を測定するための濃度測定手段を備えた請求項9〜15のいずれかに記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置。 【請求項17】 濃度測定手段が濁度計である請求項15又は16記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置。 【請求項18】 植物プランクトン生産装置の濃度測定手段を制御装置に接続するとともに、制御装置を植物プランクトン生産装置に付属するポンプに接続して、植物プランクトン生産装置の植物プランクトン濃度に応じてポンプを制御できるようにした請求項15、16又は17記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置。 【請求項19】 植物プランクトン生産装置の濃度測定手段を制御装置に接続するとともに、制御装置を植物プランクトン生産装置に付属する人工光源に接続して、植物プランクトン生産装置の植物プランクトン濃度に応じて人工光源を制御できるようにした請求項15〜18のいずれかに記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置。 【請求項20】 植物プランクトン生産装置が遮光板を備えており、植物プランクトン生産装置の濃度測定手段を制御装置に接続するとともに、制御装置を植物プランクトン生産装置に付属する遮光板に接続して、植物プランクトン生産装置の植物プランクトン濃度に応じて、植物プランクトン生産装置に照射される太陽光強度を減衰できるようにした請求項15〜19のいずれかに記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置。 【請求項21】 植物プランクトン生産装置が装置表面の太陽光強度を測定する太陽光強度測定手段を備えており、植物プランクトン生産装置の濃度測定手段と植物プランクトン生産装置の表面における太陽光強度測定手段を制御装置に接続するとともに、制御装置を植物プランクトン生産装置に付属する人工光源に接続して、植物プランクトン生産装置の植物プランクトン濃度及び/又は太陽光強度に応じて人工光源を制御できるようにした請求項15〜20のいずれかに記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置。 【請求項22】 植物プランクトン生産装置の濃度測定手段を制御装置に接続するとともに、制御装置を動物プランクトン生産装置に付属するポンプに接続して、植物プランクトン生産装置の植物プランクトン濃度に応じてポンプを制御し、動物プランクトンの生産を制御できるようにした請求項15〜21のいずれかに記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置。 【請求項23】 動物プランクトン生産装置の濃度測定手段を制御装置に接続するとともに、制御装置を植物プランクトン生産装置に付属する人工光源に接続して、動物プランクトン生産装置の動物プランクトン濃度に応じて人工光源を制御し、植物プランクトンの生産を制御できるようにした請求項16〜22のいずれかに記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置。 【請求項24】 動物プランクトン生産装置の濃度測定手段を制御装置に接続するとともに、制御装置を植物プランクトン生産装置に付属するポンプに接続して、動物プランクトン生産装置の動物プランクトン濃度に応じてポンプを制御し、植物プランクトンの生産を制御できるようにした請求項16〜23のいずれかに記載の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、海水中に含まれる物質を効率よく回収し利用するための方法及び装置に関するもので、詳しくは、海洋深層水中に含まれる栄養塩類を植物プランクトン及び動物プランクトンの食物連鎖を利用して濃縮回収する海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収方法及び装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】海水、特に水深約200mより深いところに存在する海洋深層水には、硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩などの栄養塩類が豊富に含まれている。自然界においては、これらはまず植物プランクトンによって摂取されたのち、植物プランクトン、動物プランクトン、小型魚類、大型魚類・海生哺乳類という食物連鎖を経ることによって、より大型の生物に濃縮・蓄積されていく。つまり、海水中の栄養塩類は、海で生きるすべての生物の源となっている。 【0003】栄養塩類の豊富な海洋深層水は、日本周辺にほぼ無尽蔵に存在する再生型資源であり、富栄養性という特性だけでなく、低温安定性、清浄性といった特性も有している。海洋深層水を利用した技術としては、例えば、海洋深層水を取水して洋上に散布し、海域の肥沃化を図ることによって、植物プランクトン→動物プランクトン→魚類という食物連鎖を利用して魚類を増殖させ、漁獲量の増大につなげるという方法が知られている。しかし、海洋深層水を単に洋上散布する技術では、表層水の量に対し、散布する深層水の量が極端に少なく、海域を十分に肥沃化することが困難である。また、植物プランクトン→動物プランクトン→魚類の食物連鎖の効率が低く、散布された海洋深層水の栄養塩類のうちごくわずかしか、魚類の増殖に寄与していない。さらに、上述した海洋深層水の低温安定性、清浄性という特性は全く利用されていない。 【0004】また、例えば、特開平9−121711号公報には、海洋深層水を用いて植物プランクトンの生産・増殖を行い、生産・増殖された植物プランクトンにより植物プランクトン−動物プランクトン−魚類もしくはろ過摂取動物(貝)の3段階又は植物プランクトン−魚類もしくはろ過摂取動物の2段階の食物連鎖を利用して魚類又はろ過摂取動物を生産する食料生産方法が記載されている。この技術では、植物プランクトン及び動物プランクトンの生産の場として海域の一部を利用するため、植物プランクトン及び動物プランクトンの生産性が低く、また、生産が不安定であり、生産条件の制御も困難である。また、植物プランクトンと動物プランクトンを同じ槽内で混合状態で培養するため、生産のコントロールが難しい。しかも、培養槽が外気と遮断されていないため、生産したい生物以外の生物が混入・増殖する可能性が高い。 【0005】一方、従来の動物プランクトン(水産用餌料)の生産技術では、屋外に設置した植物プランクトンの培養槽(プールなど)に、取水した海水(表層水)と必要な栄養塩類(窒素、リンなど)を入れて植物プランクトンを生産し、この植物プランクトンを動物プランクトンの培養槽に投入して動物プランクトン(水産用餌料)を生産していた。しかし、この技術では、雑菌等の混入により、植物プランクトン、動物プランクトンの生産性が低く、かつ生産が不安定となりやすい。また、植物プランクトン及び動物プランクトンの生産に表層水を利用するため、殺菌装置が必要になる。しかも、表層水は栄養塩類が乏しいので、上記のように植物プランクトンの生産では栄養塩類を添加する必要がある。栄養塩類として用いる物質の大半は限りある資源を輸入して用いているため、原料コストの負担のみならず、間接的な食料自給率の低下につながる。また、長期的には資源の枯渇を招くことにもなる。 【0006】ところで、動物プランクトンの一種であるシオミズツボワムシ(ワムシ)は栽培漁業や養殖等で用いられる魚類種苗の生産において、初期生物飼料として欠くことができないものであり、ワムシを用いることなく種苗生産ができない魚類は多い。そのため、例えば、特開平3−39021号公報、特開平6−165627号公報、特開平7−79659号公報、特開2000−232833号公報において開示されるように、ワムシ等の動物プランクトンの高密度培養あるいは連続培養に関する先行技術が数多く存在する。このような事実は、動物プランクトン、特にワムシの培養が魚類の種苗生産において如何に重要な技術であるのかを示している。 【0007】従来のワムシの典型的な生産方法は、植物プランクトン、例えば、ナンノクロロプシスを培養し、生産された植物プランクトンを主餌料として補助的に淡水クロレラ、パン酵母等の餌料を投与して空気(酸素)を補給しながら培養するものであった。この方法による実用的なワムシの生産には、数百トンのワムシ培養槽とその数倍のナンノクロロプシス培養槽が必要となる。ナンノクロロプシスの生産は天候に左右されるため、ワムシの生産も不安定なものであった。 【0008】また、海洋深層水を利用した魚介類の生産施設としては、例えば、特開2000−316417号公報に、海洋において深層水を汲み上げ、魚の餌であるプランクトンを繁殖させて放流した魚を育成する浮遊式生簀が記載されている。この技術では、植物プランクトンの生産エリアと魚介類の生産エリアとが区別されておらず、しかも海洋上に設置された施設であることから、生産性が低く不安定である。また、特開平11−253067号公報には、海洋上に多数の肥沃化ユニットを設置して、汲み上げた海洋深層水を用いて植物プランクトンを生産し、植物プランクトンを生産者として大型魚を3〜4次消費者とする食物連鎖により大型魚を増殖させる海洋生物増殖施設が記載されている。この技術も、上述したように生産性が低く不安定なものとなる。また、微細藻類の培養を自動化したシステムとしては、例えば、特開平8−242842号公報に、貝類や甲殻類の飼料である植物プランクトンの培養システムを自動制御化した技術が開示されており、雑菌の混入防止等による生産性の向上、低コスト化などを実現している。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の諸点に鑑みなされたもので、本発明の目的は、海洋深層水の洋上散布により海域を肥沃化する技術での問題点を解決し、海洋深層水に含まれる栄養塩類を効率よく動物プランクトンとして濃縮・回収することで、真の海域肥沃化に貢献でき、さらに、既存技術との組合せにより、海洋深層水の低温安定性、清浄性も利用可能となる海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収方法及び装置を提供することにある。また、本発明の目的は、従来の動物プランクトン(水産用餌料)の生産技術での問題点を解決し、海洋深層水の利用と閉鎖系の装置で雑菌汚染がなくなること等により、動物プランクトンの生産性が高く、かつ生産が安定し、しかも、動物プランクトンの生産に必要な原料(栄養塩類)は海洋深層水から賄うことができるため、生産コストが下がるとともに、限りある資源の節約につながる海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収方法及び装置を提供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収方法は、海洋深層水を取水して、海洋深層水中に含まれる栄養塩類を植物プランクトンの生産に利用した後、生産された植物プランクトンを回収して別工程で動物プランクトンの生産に利用することにより、海洋深層水中に含まれる栄養塩類を動物プランクトンの細胞内に濃縮して回収するように構成されている。 【0011】上記の方法において、植物プランクトンの生産には太陽光を用いることができる。また、人工光を用いることも可能である。さらに、太陽光と人工光を併用する場合もある。また、上記の方法において、植物プランクトンの生産で副産物として生じる酸素を動物プランクトンの生産に用いることが好ましい。また、動物プランクトンの生産で副産物として生じる二酸化炭素を植物プランクトンの生産に用いることが好ましい。 【0012】また、上記の方法において、動物プランクトンの生産速度に応じて植物プランクトンの生産速度を制御することができる。この場合、海洋深層水の取水速度、人工光の強さ、植物プランクトンの回収速度などを制御することで、植物プランクトンの生産速度を制御する。また、上記の方法において、植物プランクトンの生産速度に応じて動物プランクトンの生産速度を制御することができる。 【0013】本発明の海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置は、海洋深層水を取水する取水手段と、取水した海洋深層水に含まれる栄養塩類を用いて植物プランクトンを生産する植物プランクトン生産装置と、生産された植物プランクトンを用いて動物プランクトンを生産する動物プランクトン生産装置と、前記植物プランクトン生産装置からの植物プランクトンを動物プランクトン生産装置に移送する植物プランクトン移送用配管とを包含してなることを特徴としている。 【0014】上記の装置において、植物プランクトン生産装置は光を透過する素材で作られた密閉容器であり、密閉容器に海洋深層水又は/及び海洋深層水中の栄養塩類を含んだ液体を供給する配管及び該配管に設けられたポンプと、密閉容器から植物プランクトン懸濁液を回収する配管及び該配管に設けられたポンプと、密閉容器に植物プランクトンの生産に必要なガスを供給する配管及び該配管に設けられたポンプと、密閉容器から植物プランクトンの生産で発生したガスを回収する配管とを接続した構成である。この場合、植物プランクトン懸濁液を回収する配管に濃縮機を設け、植物プランクトン濃縮スラリーを動物プランクトン生産装置へ供給し、濃縮機で分離された海水は海水交換機構で海洋深層水に含まれる栄養塩類を補給するか、又は直接海洋深層水と一部を交換して植物プランクトン生産装置に循環することが好ましい。 【0015】また、上記の装置において、動物プランクトン生産装置は密閉容器であり、密閉容器に植物プランクトンを含む液体又は植物プランクトン濃縮スラリーを供給する配管及び該配管に設けられたポンプと、密閉容器から動物プランクトン懸濁液を回収する配管と、密閉容器に動物プランクトンの生産に必要なガスを供給する配管及び該配管に設けられたポンプと、密閉容器から動物プランクトンの生産で発生したガスを回収する配管とを接続した構成である。 【0016】また、上記の装置において、植物プランクトンの生産に必要なガスを供給する配管と動物プランクトンの生産で発生したガスを回収する配管とを接続し、動物プランクトンの生産に必要なガスを供給する配管と植物プランクトンの生産で発生したガスを回収する配管とを接続することが好ましい。また、上記の装置において、植物プランクトン生産装置は、装置内の植物プランクトンに照射される光の量を調節するための人工光源を備えた構成とすることができる。 【0017】また、上記の装置において、植物プランクトン生産装置は、装置内の植物プランクトンの濃度を測定するための濃度測定手段を備えた構成とすることができる。また、動物プランクトン生産装置が、装置内の動物プランクトンの濃度を測定するための濃度測定手段を備えた構成とすることができる。この場合、濃度測定手段としては、一例として、濁度計を用いることができる。 【0018】また、上記の装置においては、植物プランクトン生産装置の濃度測定手段を制御装置に接続するとともに、制御装置を植物プランクトン生産装置に付属するポンプに接続して、植物プランクトン生産装置の植物プランクトン濃度に応じてポンプを制御できる構成とすることが可能である。また、植物プランクトン生産装置の濃度測定手段を制御装置に接続するとともに、制御装置を植物プランクトン生産装置に付属する人工光源に接続して、植物プランクトン生産装置の植物プランクトン濃度に応じて人工光源を制御できる構成とすることが可能である。 【0019】また、上記の装置においては、植物プランクトン生産装置に遮光板を備えた構成とし、植物プランクトン生産装置の濃度測定手段を制御装置に接続するとともに、制御装置を植物プランクトン生産装置に付属する遮光板に接続して、植物プランクトン生産装置の植物プランクトン濃度に応じて、植物プランクトン生産装置に照射される太陽光強度を減衰できる構成とすることが可能である。また、植物プランクトン生産装置に装置表面の太陽光強度を測定する太陽光強度測定手段を備えた構成として、植物プランクトン生産装置の濃度測定手段と植物プランクトン生産装置の表面における太陽光強度測定手段を制御装置に接続するとともに、制御装置を植物プランクトン生産装置に付属する人工光源に接続して、植物プランクトン生産装置の植物プランクトン濃度及び/又は太陽光強度に応じて人工光源を制御できる構成とすることが可能である。 【0020】また、上記の装置においては、植物プランクトン生産装置の濃度測定手段を制御装置に接続するとともに、制御装置を動物プランクトン生産装置に付属するポンプに接続して、植物プランクトン生産装置の植物プランクトン濃度に応じてポンプを制御し、動物プランクトンの生産を制御できる構成とすることが可能である。また、動物プランクトン生産装置の濃度測定手段を制御装置に接続するとともに、制御装置を植物プランクトン生産装置に付属する人工光源に接続して、動物プランクトン生産装置の動物プランクトン濃度に応じて人工光源を制御し、植物プランクトンの生産を制御できる構成とすることが可能である。また、動物プランクトン生産装置の濃度測定手段を制御装置に接続するとともに、制御装置を植物プランクトン生産装置に付属するポンプに接続して、動物プランクトン生産装置の動物プランクトン濃度に応じてポンプを制御し、植物プランクトンの生産を制御できる構成とすることが可能である。 【0021】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施することが可能なものである。図1は、本発明の実施の第1形態による海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置を示している。図1に示すように、海1の中に海水取水管2を水深約200m以上の所まで延設し、栄養塩類の豊富な海洋深層水を取水する。海洋深層水は、表層近くまでは動力等を要することなく海水取水管2を上昇し、海水取水管2に接続された海水取水ポンプ3により洋上に汲み上げられ、海水取水管5を通って海水交換機構7に導入される。この場合、例えば、海水取水管5等に熱交換器等を設置して海洋深層水の冷熱を回収すれば、海洋温度差発電等に利用することができ、海洋深層水の低温安定性という特性を有効に活用することができる。 【0022】海水交換機構7に導入された海洋深層水は、後述する植物プランクトン濃縮スラリーの脱離液である海水と一部を交換するか、あるいは海洋深層水に含まれる栄養塩類を膜などを透過させて前記海水に移行させることで、植物プランクトン生産装置11に供給される海水に海洋深層水中の栄養塩類を補給する。このように、海水交換機構7は、海水の一部を直接交換する構成としてもよいし、膜などを介して栄養塩類のみを移行させる構成としてもよい。栄養塩類を利用した後の海洋深層水は、例えば、水産養殖用の海水、海水療法などに利用可能であり、海洋深層水の清浄性という特性を有効に活用することができる。 【0023】海水交換機構7で栄養塩類が補給された海水は、循環ポンプ9を経由して海水移送用配管12を通り、植物プランクトン生産装置11に供給される。植物プランクトン生産装置11は光を透過する素材で作られた密閉容器であるが、その詳細は実施の第2形態で説明する。植物プランクトン生産装置11では、光合成により植物プランクトン(一例として、ナンノクロロプシスなど)を培養し、生産された植物プランクトンは、植物プランクトン懸濁液として植物プランクトン懸濁液移送用配管13を通って植物プランクトン懸濁液濃縮機15に導入される。植物プランクトン懸濁液濃縮機15で濃縮された植物プランクトン濃縮スラリーは、植物プランクトン濃縮スラリー供給用ポンプ18を経由し、植物プランクトン濃縮スラリー移送用配管19を通って動物プランクトン生産装置21に供給される。一方、植物プランクトン懸濁液濃縮機15で脱離された海水は、海水移送用配管17を通って前記海水交換機構7で栄養塩類が補給され、植物プランクトン生産装置11に循環される。なお、植物プランクトン懸濁液濃縮機15としては、一例として、遠心分離機などを用いることができる。 【0024】上記のように、植物プランクトン濃縮スラリーが動物プランクトン生産装置21に供給され、植物プランクトン(一例として、ナンノクロロプシスなど)を主餌料として動物プランクトン(一例として、ワムシなど)を培養する。動物プランクトン生産装置21はタンク型等の密閉容器であるが、その詳細は実施の第2形態で説明する。動物プランクトン生産装置21から動物プランクトン懸濁液を回収し、動物プランクトン懸濁液濃縮機23で動物プランクトン濃縮スラリーを得る。なお、動物プランクトン懸濁液濃縮機23としては、一例として、遠心分離機などを用いることができる。生産された動物プランクトンの細胞内には、海洋深層水に含まれる栄養塩類が効率よく濃縮されており、例えば、水産用餌料などとして用いることができる。なお、従来のワムシの培養方法としては、例えば、特開平7−79659号公報に、培養槽内の溶存酸素濃度とpHを調整するという技術があるが、この方法ではワムシの生産に用いる餌料について何ら記述がされていない。 【0025】図2は、本発明の実施の第2形態による海洋深層水からの栄養塩類濃縮回収装置を示している。図2に示すように、海1の中に海水取水管2を水深約200m以上の所まで延設し、栄養塩類の豊富な海洋深層水を取水する。海洋深層水は、表層近くまでは動力等を要することなく海水取水管2を上昇し、海水取水管2に接続された海水取水ポンプ3により洋上に汲み上げられ、海水取水管5を通って海水交換機構7に導入される。海水交換機構7に導入された海洋深層水は、後述する植物プランクトン濃縮スラリーの脱離液である海水と一部を交換するか、あるいは海洋深層水に含まれる栄養塩類を膜などを透過させて前記海水に移行させることで、植物プランクトン生産装置11に供給される海水に海洋深層水中の栄養塩類を補給する。 【0026】海水交換機構7で栄養塩類が補給された海水は、循環ポンプ9を経由して海水移送用配管12を通り、植物プランクトン生産装置11に供給される。植物プランクトン生産装置11は光を透過する素材で作られた密閉容器であり、例えば、図3に示すようなパネル型リアクターとすることができる。植物プランクトン生産装置11には人工光源29を設けることが可能であり、人工光源29を備えた装置の場合は、太陽27からの太陽光と人工光源29からの人工光を併用して、又は人工光源29からの人工光のみで植物プランクトンの生産を行うことができる。人工光源29としては、一例として、蛍光灯、発光ダイオード、ハロゲンランプなどが用いられる。人工光源29の光の量を調節することで、植物プランクトン生産装置11内の植物プランクトンに照射する光の量を調整して植物プランクトンの生産量をコントロールすることができる。また、植物プランクトン生産装置11には濁度計などの植物プランクトン濃度測定器30を設けることが可能であり、後述する植物プランクトンの生産速度の制御などに利用することができる。 【0027】植物プランクトン生産装置11では、光合成により植物プランクトンを培養し、生産された植物プランクトンは、植物プランクトン懸濁液として植物プランクトン懸濁液移送用配管13を通って植物プランクトン懸濁液濃縮機15に導入される。植物プランクトン懸濁液濃縮機15で濃縮された植物プランクトン濃縮スラリーは、植物プランクトン濃縮スラリー供給用ポンプ18を経由し、植物プランクトン濃縮スラリー移送用配管19を通って動物プランクトン生産装置21に供給される。一方、植物プランクトン懸濁液濃縮機15で脱離された海水は、海水移送用配管17を通って前記海水交換機構7で栄養塩類が補給され、植物プランクトン生産装置11に循環される。 【0028】上記のように、植物プランクトン濃縮スラリーが動物プランクトン生産装置21に供給され、植物プランクトンを主餌料として動物プランクトンを培養する。動物プランクトン生産装置21は密閉容器であり、例えば、図4に示すようなタンク型リアクターとすることができる。動物プランクトン生産装置21には濁度計などの動物プランクトン濃度測定器35を設けることが可能であり、後述する動物プランクトンの生産速度の制御などに利用することができる。動物プランクトン生産装置21では、動物プランクトンの呼吸により二酸化炭素濃度の高い空気が発生するので、この二酸化炭素付加空気を二酸化炭素付加空気供給用配管33を介して植物プランクトン生産装置11に供給すれば、光合成による植物プランクトンの生産を効率よく促進することができる。また、前述の植物プランクトン生産装置11では、植物プランクトンの光合成により酸素濃度の高い空気が発生するので、この酸素付加空気を酸素付加空気供給用配管31を介して動物プランクトン生産装置21に供給すれば、動物プランクトンの生産を効率よく促進することができる。 【0029】動物プランクトン生産装置21から動物プランクトン懸濁液を回収し、動物プランクトン懸濁液濃縮機23で動物プランクトン濃縮スラリーを得る。生産された動物プランクトンの細胞内には、海洋深層水に含まれる栄養塩類が効率よく濃縮されている。他の構成及び作用等は実施の第1形態の場合と同様である。 【0030】また、本実施の形態では、制御装置37を設けて、動物プランクトンの生産速度に応じて植物プランクトンの生産速度を制御したり、植物プランクトンの生産速度に応じて動物プランクトンの生産速度を制御したりできる構成としている。すなわち、植物プランクトン濃度測定器30を制御装置37に接続し、植物プランクトンの濃度にあわせて制御装置37から、循環ポンプ9に植物プランクトン生産速度制御信号39を送ったり、海水取水ポンプ3に海水取水ポンプ制御信号41を送ったり、人工光源29に人工光源制御信号43を送ったりして、植物プランクトンの生産速度、生産条件をコントロールする。また、動物プランクトン濃度測定器35を制御装置37に接続し、動物プランクトンの濃度にあわせて制御装置37から、植物プランクトン濃縮スラリー供給用ポンプ18に動物プランクトン生産速度制御信号45を送ったり、循環ポンプ9に植物プランクトン生産速度制御信号39を送ったり、海水取水ポンプ3に海水取水ポンプ制御信号41を送ったり、人工光源29に人工光源制御信号43を送ったりして、植物プランクトンを餌料とする動物プランクトンの生産速度、生産条件をコントロールする。 【0031】また、図2に図示していない他の制御方法としては、植物プランクトン生産装置に遮光板を備えた構成とし、植物プランクトン濃度測定器30を制御装置37に接続するとともに、制御装置37を前記遮光板に接続して、植物プランクトン生産装置の植物プランクトン濃度に応じて、植物プランクトン生産装置に照射される太陽光強度を減衰できるようにすることが可能である。また、植物プランクトン生産装置に装置表面の太陽光強度を測定する太陽光強度測定手段を備えた構成とし、植物プランクトン濃度測定器30と前記太陽光強度測定手段を制御装置37に接続するとともに、制御装置37を人工光源29に接続して、植物プランクトン生産装置の植物プランクトン濃度及び/又は太陽光強度に応じて人工光源29を制御できるようにすることが可能である。 【0032】本実施の形態において用いる植物プランクトン生産装置の一例を説明する。図3に示すように、光を透過する素材で作られた密閉容器51は、太陽光(又は/及び人工光)が効率よく照射されるように、薄型のパネル型リアクターとなっている。光を透過する素材としては、例えば、アクリル、ガラス、強化プラスチックなどが使用可能である。密閉容器51には、液体供給用ポンプ61を経由し、液体供給用配管59を通って海洋深層水の栄養塩類を含んだ海水が供給され、密閉容器51内の植物プランクトン懸濁液には、ガス供給用ポンプ55を経由し、ガス供給用配管53を通って二酸化炭素付加空気が供給される。一方、密閉容器51からは、液体回収用ポンプ65を設けた液体回収用配管63より植物プランクトン懸濁液が回収され、ガス回収用配管57より光合成で発生した酸素付加空気が回収される。67は植物プランクトンの濃度を測定可能なレーザー濁度計であり、植物プランクトン濃度の測定が行える。 【0033】つぎに、本実施の形態において用いる動物プランクトン生産装置の一例を説明する。図4に示すように、密閉容器71はタンク型リアクターとなっている。密閉容器71には、液体供給用ポンプ81を経由し、液体供給用配管79を通って植物プランクトン濃縮スラリーが供給され、密閉容器71内の動物プランクトン懸濁液には、ガス供給用ポンプ75を経由し、ガス供給用配管73を通って酸素付加空気が供給される。一方、密閉容器71からは、液体回収用ポンプ85を設けた液体回収用配管83より動物プランクトン懸濁液が回収され、ガス回収用配管77より動物プランクトンの呼吸で発生した二酸化炭素付加空気が回収される。87は動物プランクトンの濃度を測定可能なレーザー濁度計であり、動物プランクトン濃度の測定が行える。 【0034】 【発明の効果】本発明は上記のように構成されているので、つぎのような効果を奏する。 (1) 海洋深層水の洋上散布による海域の肥沃化に比べて、植物プランクトン及び動物プランクトンの細胞内に蓄積することで利用される栄養塩類の比率が格段に高く、海洋深層水に含まれる栄養塩類を効率よく利用して、人間が必要とする魚介類の量を増やすことができるので、真の海域肥沃化に貢献できる。 (2) 既存技術との組合せで、海洋深層水の低温安定性、清浄性も利用可能である。 (3) 従来の動物プランクトン(水産用餌料)の生産技術と異なり、清浄な海洋深層水を利用し、しかも、培養装置が閉鎖系で外気と直接触れないので、雑菌汚染が起こりにくく、動物プランクトンの生産性が高く、かつ、生産が安定する。また、清浄な海洋深層水を利用することで、海水の殺菌装置が不要となる。 (4) 動物プランクトンの生産に必要な原料(栄養塩類)は海洋深層水から賄うことができるため、生産コストが下がるとともに、限りある資源の節約につながる。 (5) 植物プランクトンの生産に動物プランクトンの生産(呼吸)で発生した二酸化炭素含有ガスを利用し、動物プランクトンの生産に植物プランクトンの生産(光合成)で発生した酸素含有ガスを利用する場合は、効率よく植物プランクトン及び動物プランクトンの生産性を向上させることができる。 (6) 植物プランクトン、動物プランクトンそれぞれの生産速度、生産条件を容易に制御することが可能である。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000000974 【氏名又は名称】川崎重工業株式会社 【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区東川崎町3丁目1番1号
|
| 【出願日】 |
平成13年11月22日(2001.11.22) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100076705 【弁理士】 【氏名又は名称】塩出 真一 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2003−158944(P2003−158944A) |
| 【公開日】 |
平成15年6月3日(2003.6.3) |
| 【出願番号】 |
特願2001−357045(P2001−357045) |
|