トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業




【発明の名称】 酸性有機資材の撥水性緩和方法
【発明者】 【氏名】粕谷 恵美子
【住所又は居所】東京都渋谷区千駄ヶ谷5−32−7 奥多摩工業株式会社内

【要約】 【課題】ピートモス等の酸性有機資材のpHを調整すると同時に撥水性を改善し、培土としての特性に優れた有機資材を提供する。

【解決手段】撥水性を有するピートモス等の酸性有機資材の表面に、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムなどの水ガラスを噴霧添加し、当該有機資材の表面でゲル化する。水ガラスは粉末でも、水溶液でもよい。この処理により撥水緩和効果が長期に持続し、保水性、通気性、透水性に優れた有機資材及び培土を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 撥水性を有する酸性有機資材の表面に、アルカリ金属の水溶性珪酸塩を噴霧添加し、当該有機資材の表面でゲル化することを特徴とする酸性有機資材の撥水性緩和方法。
【請求項2】 前記酸性有機資材が、ピートモス、ココナッツファイバー、堆肥、厩肥、腐植から選ばれる1種以上の資材である請求項1記載の撥水性緩和方法。
【請求項3】 前記水溶性珪酸塩が、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム及び水ガラスから選ばれる1種以上の化合物である請求項1又は2に記載の撥水性緩和方法。
【請求項4】 請求項1ないし3いずれか1項記載の撥水性緩和方法によって撥水性が緩和された有機資材。
【請求項5】 資材として請求項4記載の有機資材を含むことを特徴とする培土。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は培土用資材として広く利用されている有機資材の改良技術に関し、特に撥水性を有する資材の撥水性緩和方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ピートモス、ココナッツファイバー等の有機資材は、ベントナイト、パーライト、ゼオライト等の鉱物資材とともに広く培土用の主資材として利用されている。これら有機資材特にピートモスは、通気性、保水性に富むという特性があるが、一方、撥水するという欠点がある。このようなピートモスに水を添加して湿潤させた場合、保管中の温度変化で水分が蒸発し、再度撥水したり肥料成分が変質したりするという問題があった。
【0003】ピートモス等の撥水性を改善するために、従来、界面活性剤を添加しているが、この場合、培土中の、本来空気が存在する気相部分にまで水が浸透し、浸透過剰な状態となり、これにより発芽障害や根腐れを起こす場合があった。また作物やその品種によって界面活性剤に対する抵抗性が異なるため、界面活性剤の添加量を作物や品種によって調整する必要があり、このような調整を行わない場合には、生育障害を生じることがある。さらに培土の保管が長期に亘ったり、保管中高温に曝されたりした場合、界面活性剤による撥水防止効果が低下するという問題もあった。
【0004】またピートモスは、pHが4前後の酸性資材であり、単独では培土として適していないため、苦土、石灰、消石灰、パーライトなどでpH調整する必要があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、ピートモス等の酸性有機資材のpHを調整すると同時に撥水性を改善し、培土としての特性に優れた有機資材を提供することを目的とする。また本発明は、長期保存や高温下においても撥水性抑制効果が持続する撥水性緩和方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、水の浸透過剰による生育障害や根腐れのおそれがなく、良好な通気性、保水性、保肥力等を有する培土を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明者らは酸性有機資材に含まれる有機酸の機能に着目し、この有機酸と水ガラス等のアルカリ金属の珪酸塩との反応によって有機資材表面に親水性を示すゲルを生成せしめることにより、有機資材が有する通気性、保水性等の性質を維持しつつ、撥水性を抑制し、吸水性を改善しうることを見出し本発明に至ったものである。
【0007】即ち、本発明の酸性有機資材の撥水性緩和方法は、撥水性を有する酸性有機資材の表面に、アルカリ金属の水溶性珪酸塩を噴霧添加し、当該有機資材の表面でゲル化することを特徴とするものである。
【0008】酸性有機資材としては、具体的には、ピートモス、ココナッツファイバー、堆肥、厩肥、腐植から選ばれる1種以上の資材を利用することができる。またアルカリ金属の水溶性珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム及び水ガラスから選ばれる1種以上の化合物を用いることができる。
【0009】本発明の有機資材は、上記撥水性緩和方法によって撥水性が緩和された有機資材である。また本発明の培土は、上記撥水性緩和方法によって撥水性が緩和された有機資材を含むものである【0010】以下、本発明の撥水性緩和方法について詳述する。本発明の方法が適用される有機資材は、少なくとも表面に、アルカリ金属の水溶性珪酸塩と反応する有機酸を有する酸性の有機資材であり、具体的には、ピートモス、ココナッツファイバー、堆肥、厩肥、腐植などが挙げられる。これらは、いずれも植物繊維等の堆積物或いは腐植物であり、フマル酸、フミン酸、リグニン酸等の有機酸を含み、例えばピートモスはpH4前後、ココナッツファイバーはpH5前後の酸性を示す。このような酸性の有機資材に対し本発明を適用することにより、効果的に撥水性を緩和できる。
【0011】アルカリ金属の水溶性珪酸塩としては、具体的には、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムのような水ガラスを用いることができる。水ガラスは、SiO2:Na2O(またはK2O)比が2:1ないし4:1の含水珪酸ナトリウム又は珪酸カリウムを主体とするアメ状のアルカリ性粘稠液である。これら水溶性珪酸塩は、粉末状のもの(無水水ガラス)を用いても良いし、水溶液として用いても良い。
【0012】本発明の撥水性緩和方法では、上述したアルカリ珪酸塩の水溶液を酸性有機資材の表面に噴霧するか、粉末を表面に均等に散布する。有機資材に対する珪酸塩の使用量は特に限定されず、表面を珪酸塩水溶液又は粉末が覆う程度であればよい。例えば、1リットルの有機資材に対し、珪酸ナトリウム換算で1〜10g程度の珪酸塩を用いることができる。また水溶液として用いる場合の濃度も特に限定されないが、均一に表面を覆うために、5〜20wt%程度とすることが好適である。
【0013】噴霧の方法としては、例えば、噴霧器や散水器を用いて有機資材表面に噴霧する。粉末を均等に散布する場合には、ミキサー等に有機資材と粉末を入れ、混合する。
【0014】有機資材表面にアルカリ珪酸塩の水溶液を噴霧することにより、有機資材に含まれる有機酸とアルカリ珪酸塩が例えば次式に示すように反応し、有機資材表面に白色の親水性ゲル状物質(珪酸)が生成される。粉末を用いた場合にも、有機資材自体に含まれる水が無水水ガラスと反応し、水溶液の場合と同様にゲル状物質が生成される。その結果、ゲルで被覆された有機資材が得られる。
【0015】
【化1】

【0016】こうして有機資材表面に形成されたゲル状物質は安定であり、有機資材と結合しているため、通常の環境では分解、溶出することがなく、長期に亘って撥水性抑制効果を維持することができる。即ち、改良された吸水性を維持することができる。また珪酸カリウム或いは珪酸カリウムを主体とする水ガラスを用いた場合には、有機資材と反応しなかった珪酸塩は珪酸肥料、カリウム肥料となる。さらに上記反応によって酸性有機資材のpHを6程度まで高めることができる。これによりpH調整剤等を別途添加することなく培土用資材として用いることができる。
【0017】本発明の培土は、このように撥水性を緩和された有機資材を用いるものであり、上記有機資材のみでもよいが、必要に応じて、ゼオライト、ベントナイト、赤玉土、鹿沼土などの粘土鉱物、パーライト、バーミキュライト、ロックウール、利用可能な廃材、炭化物等の資材を配合して培土とする。またチッソ、リン酸、カリ、カルシウム、マグネシウム、その他微量要素等の肥料成分を添加することが好ましい。
【0018】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。
【0019】[実施例1]ピートモス(pH3.8)1リットルに対し、水ガラス(珪酸カリウム水ガラス)を含む水溶液40mlを噴霧し、24時間放置した。このように水ガラスで処理したピートモスの透水性(撥水性の改善)を評価するために、底部に水透過用のフィルタを設けた円筒状容器(直径5cm×高さ5cm)に水ガラスで処理後のピートモスを入れ、水で飽和させ、円筒上部2.5cmの水位を維持しながら、円筒下部へ通過する水の量(ml/分)を測定した。ピートモス1リットルに対する水ガラスの量を0g、2.5g、5.0gと異ならせたときの透過水量の結果を図1に示す。図1のグラフからわかるように、水ガラスで処理することにより、ピートモスの撥水が抑制された。
【0020】[実施例2、3]実施例1の水ガラスの代わりに、珪酸ナトリウム(20%水溶液)、珪酸カリスム(20%水溶液)を用いて、実施例1と同様にピートモスを処理した。このように処理したピートモスと、ゼオライト、パーライト、水及び肥料(チッソ、リンサン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、微量要素)を表1に示す配合割合(wt%)で混合し、ネギ用培土を作成した。
【0021】この培土について、実施例1と同様に透水速度(ml/分)を測定した。また培土に、培土:水=1:10の重量比で水を加え、1時間振とう後の懸濁液のpHを測定した。比較例として、未処理のピートモスを用いて同様の配合比の培土を作成し、この培土についても透水速度およびpHを測定した。結果を表1に示す。なお、表1において珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムの量は、水溶液に溶解する前の粉末自体の量である。
【0022】[実施例4]ピートモス1リットル(100g)と無水珪酸ナトリウムの粉末2.6gをミキサーに入れて混合し、ピートモス表面に無水珪酸ナトリウム粉末を均等に散布した。このピートモスを用いて、その他の資材を表1で示す割合で配合し、ネギ用培土を作成した。この培土についても実施例2と同様に透水速度およびpHを測定した。結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】表の結果からもわかるように、ピートモスを珪酸塩で処理することにより撥水が緩和されるとともに酸性度が弱められ、好適な透水性、pHを有する培土が得られた。また粉末よりも水溶液で処理した場合の方が大きな効果が得られた。これは、水溶液として添加することによりピートモス表面でのゲル化反応が速やかに進行するためと考えられる。
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、有機資材の表面に水溶性珪酸塩を噴霧するという簡単な操作で、酸性有機資材の撥水性を緩和し、吸水性を改良することができると同時に、有機資材の酸性度を弱めることができる。また本発明によれば、撥水緩和効果が長期に持続し、保水性、通気性、透水性に優れた有機資材及び培土を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】390020167
【氏名又は名称】奥多摩工業株式会社
【住所又は居所】東京都渋谷区千駄ケ谷5丁目32番7号
【出願日】 平成14年5月10日(2002.5.10)
【代理人】 【識別番号】100099852
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 公子 (外1名)
【公開番号】 特開2003−325046(P2003−325046A)
【公開日】 平成15年11月18日(2003.11.18)
【出願番号】 特願2002−135944(P2002−135944)