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【発明の名称】 生分解性農業用被覆シート
【発明者】 【氏名】給田 圭三
【住所又は居所】東京都中央区日本橋室町3−4−4 ユニチカ株式会社東京本社内

【要約】 【課題】使用後には微生物の作用によりほぼ完全に分解されて廃棄処理が容易であり、また、機械的特性に優れた生分解性農業用被覆シートを提供する。

【解決手段】繊度が2〜15デシテックス、目付が5〜30g/m2の生分解性長繊維不織布に、生分解性糸条または生分解性フィルムのスリットヤーンを少なくとも5mm間隔に横方向に積層して接合してなる生分解性農業用被覆シート。また、前記と同様の生分解性長繊維不織布に、生分解性糸条または生分解性フィルムのスリットヤーンを少なくとも5mm間隔に縦横またはバイアスに積層して接合してなる生分解性農業用被覆シート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 繊度が2〜15デシテックス、目付が5〜30g/m2の生分解性長繊維不織布に、生分解性糸条または生分解性フィルムのスリットヤーンを少なくとも5mm間隔に横方向に積層して接合してなることを特徴とする生分解性農業用被覆シート。
【請求項2】 繊度が2〜15デシテックス、目付が5〜30g/m2の生分解性長繊維不織布に、生分解性糸条または生分解性フィルムのスリットヤーンを少なくとも5mm間隔に縦横またはバイアスに積層して接合してなることを特徴とする生分解性農業用被覆シート。
【請求項3】 生分解性長繊維不織布が、ポリ乳酸系重合体からなる不織布であることを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性農業用被覆シート。
【請求項4】 生分解性糸条または該生分解性フィルムが、生分解性脂肪族ポリエステルからなる糸条またはフィルムであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の生分解性農業用被覆シート。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、露地栽培やトンネル栽培あるいはハウス栽培において作物や植物等を被覆する農業用被覆シートに関し、さらに詳しくは使用後に微生物の作用によりほぼ完全に分解して、廃棄処理が容易である生分解性農業用被覆シートに関する。
【0002】
【従来の技術】防草シートやハウスの内張カーテン、水稲育苗用シート等の農業用資材として各種の不織布が使用されている。また、不織布はその通気性、透水性、軽量性を活かし被覆シート(いわゆる、べたがけシート)としても使用されている。
【0003】このべたがけとは、作物に直接被覆し、保温、保水、防霜、防虫、防鳥、防風等の効果を生ぜしめ、もって作物の生育促進、品質向上、増収を図るものである。また、不織布の被覆有無を選択することで作物の成長速度を制御して出荷時期を調整したり、被覆により虫害を減らして減農薬を進め、安全な生鮮野菜を供給するためにも使用されている。
【0004】かかるべたがけシートとしては、ポリプロピレンやポリエステルからなる長繊維不織布が用いられているが、使用後の資材は焼却等の廃棄方法で処理しなければならなかった。近年、農業分野では、使用済みの各種資材を、自然環境を汚染することなく、いかに処理するかが大きな課題となっており、土中の微生物の作用でほぼ完全分解される、いわゆる生分解性素材の適用が検討されている。
【0005】しかしながら、生分解性素材からなる長繊維不織布は、引張強度や伸度、引裂強度といった機械的特性が実用上不足しているものが多く、例えば、被覆シートを展張する際の張力が高いと切断しやすく、特にシートの縦方向に割裂が生じやすい(引裂強度が低い)などの問題がある。したがって、広く浸透するまでには至っていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記問題点を解決するものであって、機械的特性に優れ、かつ廃棄処理が容易な生分解性農業用被覆シートを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、このような状況に鑑み鋭意検討を行った結果、生分解性長繊維不織布からなる農業用被覆シートに、生分解性糸条または生分解性フィルムのスリットヤーンを積層して接合することにより、敷設が容易で、破断しない機械的特性に優れた被覆シートを提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち、本発明は、繊度が2〜15デシテックス、目付が5〜30g/m2の生分解性長繊維不織布に、生分解性糸条または生分解性フィルムのスリットヤーンを少なくとも5mm間隔に横方向に積層して接合してなることを特徴とする生分解性農業用被覆シートを要旨とするものである。
【0009】また、本発明は、繊度が2〜15デシテックス、目付が5〜30g/m2の生分解性長繊維不織布に、生分解性糸条または生分解性フィルムのスリットヤーンを少なくとも5mm間隔に縦横またはバイアスに積層して接合してなることを特徴とする生分解性農業用被覆シートを要旨とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】本発明の生分解性農業用被覆シートに使用する生分解性長繊維不織布は、土中の微生物で分解され、最終的に水と二酸化炭素しか発生しない生分解性素材からなる。中でも、紡糸工程における製糸性や不織布としての機械的性質に優れる点からポリ乳酸を主体とする長繊維不織布であることが好ましい。
【0012】好適に用いられるポリ乳酸としては、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、L−乳酸とD−乳酸の共重合体、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸とD−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体のうち融点が80℃以上である重合体が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸の例としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシカプリル酸等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。このようなポリ乳酸系重合体は、数平均分子量が約20、000以上、好ましくは40、000以上のものが、得られる繊維特性の点で、また製造時の製糸性の点で好ましい。
【0013】本発明における長繊維不織布には、必要に応じて、結晶核剤、艶消し剤、顔料、着色剤、難燃剤、耐候剤等の各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0014】本発明における長繊維不織布は、その繊維形態が1種の重合体単独からなるものでもよく、融点が異なる2種類以上の重合体が複合したものでもよい。また、その繊維断面形状は、通常の丸断面の他に中空断面、異形断面、並列型複合断面、多層型複合断面、芯鞘型複合断面、分割型複合断面等、任意の繊維断面形状を採用しうる。特に、2種類以上の生分解性樹脂が複合された繊維の場合、高融点重合体を芯成分とし、該重合体より20℃以上低い低融点重合体を鞘成分とすることで、熱接着処理した場合の不織布の機械的特性が向上し、さらに、糸条またはスリットヤーンと積層して、熱接着により接合した場合にその接合強度が高く、農業用被覆シートとして使用するに際し、一定期間経過した後も被覆シートの機械的特性を保持することが可能となり、好ましい。
【0015】生分解性長繊維不織布の目付は、5〜30g/m2である。目付が5g/m2未満であると、繊維間の空隙が大きくなって、保温性に劣るだけでなく機械的強度も低下する。一方、目付が30g/m2を超えると、繊維間の空隙が小さくなって透光性や通気性が劣り、被覆シートとして使用したとき作物の生育に支障を来す。
【0016】また、生分解性長繊維不織布を構成する繊維の繊度は、2〜15デシテックスであることが好ましい。繊度が2デシテックス未満であると、得られる不織布の単位面積当たりの繊維構成本数が増加するために繊維間の空隙が小さくなって不織布の透光率が低下し、作物や植物の生長に十分な光を与えることができない傾向となる。一方、繊度が15デシテックスを超えると、繊維間の空隙が大きくなって、被覆シートとしての保温性や防霜性、防虫性が劣ることになる。これらの理由から、繊度は2〜15デシテックスが好ましく、さらに好ましくは3〜10デシテックスである。
【0017】本発明の長繊維不織布に積層する生分解性糸条または生分解性フィルムは、生分解性脂肪族ポリエステルからなることが好ましい。脂肪族ポリエステルとしては、前述のポリ乳酸またはポリ乳酸を主体とする重合体の他、特定の構造を有する脂肪族ジカルボン酸とジグリコールからなるポリエステルが挙げられる。かかる脂肪族ジカルボン酸あるいはその誘導体としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、それらの誘導体、およびそれらの酸無水物を挙げることができ、これらの中から適宜選択された少なくとも1種が使用される。また、必要に応じて、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のオキシカルボン酸や生分解性を損なわない範囲でテレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸を構成単位に加えてもよい。これらの脂肪族ジカルボン酸の中では、コハク酸およびその誘導体が生分解性に優れていることから好ましい。
【0018】また、脂肪族ポリエステルの構成単位であるジグリコールとしては、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができ、これらの中から適宜選択された少なくとも1種が使用される。
【0019】ここで例示したポリ乳酸またはポリ乳酸を主体とする重合体、特定の構造を有する脂肪族ジカルボン酸とジグリコールからなるポリエステルは、それら単独で用いてもよいし、2種類以上の重合体を混合して用いてもよい。さらに必要に応じて、結晶核剤、艶消し剤、顔料、着色剤、難燃剤、耐候剤等の各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0020】本発明の生分解性農業用被覆シートに使用する生分解性糸条または生分解性フィルムのスリットヤーンは、糸条の場合は直径が200μm以上、スリットヤーンの場合は幅が0.5mm以上であることが好ましい。糸条の直径が200μm未満、またはスリットヤーンの幅が0.5mm未満であると、長繊維不織布の補強効果を十分に奏しない傾向となる。糸条の直径あるいはスリットヤーンの幅の上限については、不織布に積層する際に、十分な間隔が設けられることでシートの通気性が確保されていれば、特に限定しないが、糸条では3mm程度、スリットヤーンでは10mm程度であればよい。
【0021】かかる糸条またはスリットヤーンは公知の方法で製造することができる。例えば、糸条の場合は、重合体を溶融し、溶融押出機からダイスを通して、紡出糸条を延伸・冷却・固化させて巻き取ることにより製造することができる。また、スリットヤーンの場合は、重合体をTダイから溶融押出し1軸または2軸延伸装置で延伸する方法、またはインフレーション製膜法で生分解性フィルムを作製し、該フィルムを所望の幅にスリットすることで製造することができる。また、Tダイから押出して冷却した後にスリットし、次いで1軸延伸してスリットヤーンを得ることができる。
【0022】本発明の農業用被覆シートは、生分解性長繊維不織布に、生分解性糸条または生分解性フィルムのスリットヤーンを少なくとも5mm間隔に横方向に積層して接合しているものである。長繊維不織布においては、一般に構成繊維は主として縦方向に配向しているので、縦方向に沿って割裂が生じやすく(すなわち、横方向に対して直行する縦方向の引裂強力が低い)、また、縦方向の強力よりも横方向の強力が低い。本発明の農業用被覆シートにおいては、長繊維不織布に特定の間隔で横方向に糸条またはスリットヤーンを積層、接合することにより、たとえ、縦方向に沿って割裂が生じても、横方向に糸条またはスリットヤーンが存在することにより、それ以上、割裂が進行することを止めることができ、縦方向の引裂強力に優れ、シートの縦・横方向の機械的強力に優れる。そして、農業用被覆シートを敷設する場合、展張性が良好で、弛みなく敷設することができて、取扱が容易で良好となる。
【0023】本発明の農業用被覆シートは、さらに機械的強力の向上のために、生分解性長繊維不織布に生分解性糸条または生分解性フィルムのスリットヤーンを、少なくとも5mm間隔に縦横またはバイアス(斜めに交叉する状態)に積層して接合したものが好ましい。
【0024】長繊維不織布に積層、接合してなる生分解性糸条または生分解性フィルムのスリットヤーンの間隔は、少なくとも5mm以上とする。この間隔が5mm未満であると、長繊維不織布の多くが糸条またはスリットヤーンにより覆われてしまい、シートの通気性が損なわれ、夏場等における作物の高温・多湿障害が生じやすく、作物の生長を阻害する。
【0025】生分解性長繊維不織布に生分解性糸条または生分解性フィルムのスリットヤーンを接合する方法としては、接着剤を介して接合しても、また、熱を付与することにより、長繊維不織布あるいは糸条、スリットヤーンの少なくとも一方を溶融または軟化させることによる熱融着により接合してもよく、特に制限しない。
【0026】
【実施例】次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。実施例において、各物性値は以下のようにして求めた。
【0027】(1)引張強力(N/5cm幅):JIS L1906に記載のストリップ法に準じて測定した。すなわち、試料長が20cm、試料幅が5cmの試料片を縦方向(機械方向)および横方向(機械方向に直交する方向)に10点を作成し、定速伸長型引張試験機を用いて試料片毎にチャック間隔10cm、引張速度20cm/分で伸長し、最大引張強力を求め、10点の平均値を引張強力(N/5cm幅)とした。
【0028】(2)引裂強力(N):JIS L1096に記載のペンジュラム法に準じて測定した。すなわち、試料長が6.5cm、試料幅が10cmの試料片を不織布の縦方向に5点作成し、各試料片の引裂強力を求め、得られた値の平均値を引裂強力(N)とした。
【0029】実施例1融点が169℃、数平均分子量が59100のポリ乳酸(D体/L体=1.3/98.7)を芯成分とし、融点が140℃、数平均分子量が60100のポリ乳酸(D体/L体=7.7/92.3)を鞘成分とする芯鞘型複合長繊維を芯鞘型複合紡糸口金より溶融紡出した。複合比は質量比で1/1とした。紡出糸条を冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアサッカーにて牽引速度5000m/分で牽引細化し、公知の開繊機を用いて開繊し、移動するメッシュスクリーンコンベア上にウェブとして堆積させた。次いで、このウェブを105℃に加熱されたエンボスロールと表面平滑な金属ロールからなる部分熱圧着装置に通し、線圧588N/cmの条件で圧着し、単糸繊度が7.0デシテックスの長繊維からなる目付15g/m2の長繊維不織布を得た。この長繊維不織布の引張強力は、縦35N/5cm、横16N/5cm、引裂強力は6Nであった。
【0030】融点が169℃、数平均分子量が120000のポリ乳酸(D体/L体=1.0/99.0)90質量部、ポリブチレンサクシネート(昭和高分子社製ビオノーレ1903)10質量部をチップ混合して押出機を用いて、温度200℃でTダイより溶融押出し、未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムをスリットした後、120℃に加熱し、長さ方向にロール法にて7倍に1軸延伸し、厚み20μ、幅2mmのスリットヤーンを得た。
【0031】得られたスリットヤーンを、長繊維不織布の縦・横両方向に格子状に30mm間隔で熱圧着してシートを得た。得られたシートの引張強力は、縦58N/5cm、横34N/5cm、引裂強力は12Nであった。
【0032】この被覆シートを10月中旬播種した小松菜に被覆した。12月中旬に収穫した際、不織布に数カ所破れ(裂け)が発生していたが、スリットヤーンの所で破れは止まっていた。
【0033】比較例1実施例1で得られた長繊維不織布のみ(スリットヤーンとの積層を行っていない)を用いて実施例1と同時期に被覆シートとして用いた。実施例1と同時期に小松菜に被覆したが、展張時の張力により20mm程度の破れ(裂け)が数カ所発生した。12月中旬に収穫した際には、この破れは最大100mmまで拡大していた。
【0034】
【発明の効果】本発明の生分解性農業用被覆シートは、その構成素材である長繊維不織布と糸条またはスリットヤーンとが共に生分解性素材で構成されるため、使用に際して、一定期間が経過した後のシートは微生物によりほぼ完全に分解され、被覆シートを回収して廃棄処理を行う手間が省け、しかも自然環境を汚染することがない。また、長繊維不織布に糸条またはスリットヤーンが一定間隔で積層して接合しているので、良好な通気性・透光性を保持しながら、引張強力および引裂強力が向上し、敷設する際の展張性に優れる。
【出願人】 【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
【住所又は居所】兵庫県尼崎市東本町1丁目50番地
【出願日】 平成14年4月3日(2002.4.3)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−289731(P2003−289731A)
【公開日】 平成15年10月14日(2003.10.14)
【出願番号】 特願2002−101301(P2002−101301)