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【発明の名称】 機械定植用培土
【発明者】 【氏名】粕谷 恵美子
【住所又は居所】東京都渋谷区千駄ヶ谷5−32−7 奥多摩工業株式会社内

【要約】 【課題】育苗に必要な水分や肥料を十分保持し且つ機械定植時の崩壊を極力抑えた培土を提供する。

【解決手段】機械定植用培土であって、培土100gあたりの陽イオン交換容量が50meq/100g以上であり、蒸留水において重量で30倍以上の吸水能力を有する吸水性樹脂を培土1L当たり0.01〜5g及び/又は高分子凝集剤を培土1L当たり0.01〜10g含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 蒸留水において、重量で30倍以上の吸水能力を有する吸水性樹脂を培土1L当たり0.01〜5g及び/又は高分子凝集剤を培土1L当たり0.01〜10g含むことを特徴とする機械定植用培土。
【請求項2】 培土100gあたりの陽イオン交換容量が50meq/100g以上である請求項1に記載の機械定植用培土。
【請求項3】 陽イオン交換容量50meq/100g以上のゼオライトを10〜95重量%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の機械定植用培土。
【請求項4】 前記吸水性樹脂が、ゼラチン、寒天、ポリビニルアルコール、アクリル酸系ポリマーから選択される1又は2以上の物質である請求項1ないし3いずれか1項記載の機械定植用培土。
【請求項5】 前記高分子凝集剤が、モノマー濃度0.05%以下のポリアクリルアミドである請求項1ないし4いずれか1項記載の機械定植用培土。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、機械定植用の苗箱の培土に関し、特に機械定植時の崩壊を防止した培土に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に機械定植には、樹脂製の容器であって多数のポットが形成された専用の苗箱が用いられ、定植時には地面にべた置きし育苗された苗の根鉢と地面へ張り出した根の間を断根した後、底部より押し出し、自動植付けする。この押し出し時に、培土が崩壊しないような強度が必要であり、このため例えば定植苗の根鉢の前処理としてアルギン酸などの固化剤或いは固結剤を使用し、乾燥固化させる技術が用いられている(特開平9-296170号、特開平7-170854号など)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしこの場合、根鉢が乾燥気味であるため、潅水設備のあるところ以外は干ばつ期の定植が不可能である。また培土の原料などの性質によって固化剤の濃度や量が異なり、適切な濃度量を添加するには技術や手間が必要であった。
【0004】一方、断根は定植後の活着状態が悪くなるため、容器から張り出した根を断根しなくてもすむように、育苗容器と地面との間に空間を設けて育苗する方法がある。この方法では、容量の小さい容器内で苗を定植まで生育させることが可能なように、保肥力の大きな培土を使用することが好ましい。しかし、培土の保肥力を高めることができるゼオライトのような資材は、固化剤による固化ができず、機械定植を円滑に行えないという問題がある。
【0005】そこで本発明は、育苗に必要な水分や肥料を十分保持し且つ機械定植時の崩壊を極力抑えた培土を提供することを目的とする。また本発明は、機械定植による植付け時の水分管理が容易であり、植付け時期や植付け場所の制約を低減することが可能な機械定植用の培土を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明者らは機械定植以外の育苗培土としても使用できる保水力、保肥力を有し、且つ培土の崩壊を防止できる添加材料について鋭意研究した結果、培土中に重量で30倍以上の吸水能力を有する吸水性樹脂及び/又は高分子凝集剤を含有せしめることにより、容器内に入れた培土の形状を保持することができ、また培土と容器内面の押し出し抵抗力を低減し、これにより従来のように培土を固化させなくても機械定植できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0007】即ち、本発明の機械定植用培土は、重量で30倍以上の吸水能力を有する吸水性樹脂及び/又は高分子凝集剤を含むものであり、その含有量は、吸水性樹脂の場合、培土1L当たり0.01〜5g、高分子凝集剤の場合、培土1L当たり0.01〜10gとすることが好適である。
【0008】また本発明の機械定植用培土は、培土100gあたりの陽イオン交換容量が50meq以上のものである。好適には、陽イオン交換容量50meq/100g以上のゼオライトを10〜95重量%含むものである。吸水性樹脂としては、ゼラチン、寒天、ポリビニルアルコール、アクリル酸系ポリマー等、高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0009】以下、本発明の機械定植用培土について詳述する。本発明の機械定植用培土に用いる培土の主材料は、通常の育苗培土に用いる材料を、生育すべき苗の種類によって適宜混合して用いることができる。具体的には、一般的な資材としてココナッツ繊維、樹皮繊維、砂、粘土鉱物、炭化物、堆肥等、また培土の物理的性質や生育性を改善するものとしてピートモス、パーライト、バーミキュライト、ゼオライトを使用することができる。特に保肥力を高めるために、陽イオン交換容量が50meq/100g以上のゼオライトを10〜95重量%、好ましくは30〜70重量%程度配合することが好ましい。
【0010】陽イオン交換容量は、好ましくは培土100g当たり50meq以上、より好ましくは70meq以上とする。またリン酸吸収係数が2000mg/100g未満であることが好ましい。陽イオン交換容量を50meq/100g以上とすることにより、容量の小さい(例えば4〜12mlの)容器であっても、棚上げで追肥を行わなくても育苗が可能となる。またネギ類のように40〜60日という長期育苗に必要な肥料を添加し、その後無追肥で育苗することができる。また潅水による肥料成分の流亡が抑制され、根の生育状態が良好となるため、吸水性樹脂及び/又は高分子凝集剤による効果と相乗的に定植時の崩壊を防止することができる。
【0011】その他の資材として、適宜、リサイクル資材、廃材、汚泥、焼却灰等の毒性に問題がない限り配合することができる。また上記培土材料のほかに適宜窒素、リン酸、カリウムなどの肥料成分を含むことが好ましい。
【0012】吸水性樹脂は、育苗中には、培土の保水性を高めることができ、容量の小さい容器を用いた場合には潅水軽減の効果も得られる。また保管中には、土の余剰水分を吸収することにより乾燥剤として作用するとともに、肥料成分等の変質や寒暖差による水分の移動を抑制し保存性を向上させることができる。また吸水性樹脂は、培土の形状を保持する形状保持剤としても機能する。特に定植時に潅水することにより膨張し、容器内を圧密状態にさせて培土の形状を保持することができ、機械定植に耐える強度が得られる。
【0013】吸水性樹脂は、吸水能力が水に対し重量で30倍以上であることが好ましい。吸水能力が30倍未満では上述した形状保持機能が不充分であり機械定植を円滑に行うことが困難になる。このような吸水性樹脂としては、ゼラチン、寒天等の天然高分子材料、ポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル酸系ポリマーやポリビニルアルコール系ポリマー等の高吸水性樹脂を使用することができる。
【0014】吸水性樹脂は、培土1L当たり0.01〜5g、好ましくは0.1〜3g添加する。0.01g以上添加することにより、乾燥剤として機能し培土保存中の水分量を調整することができる。また5g以下とすることにより、吸水能力が30〜50倍程度あっても培土が容器からあふれるのを防止できる。
【0015】高分子凝集剤は、透水性を阻害する培土中の粉状物を凝集させることにより、培土の透水性を改善するとともに、定植時に根鉢と容器内面との滑りを改善し、粘結性をも付加するため、十分に固化しない状態でも機械定植を可能する。高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド等の公知の高分子凝集剤を用いることができる。但し、ポリアクリルアミドの場合、アクリルアミドモノマーは毒性を有するので、モノマー濃度が0.05%以下のものを用いる。
【0016】高分子凝集剤は、培土1L当たり0.01〜10g、好ましくは0.1〜5g添加する。0.01g未満では凝集効果が得られず、また10gを超えると粘度が増し、逆に透水性が低下し、作物の発芽を妨害する可能性がある。
【0017】上述した吸水性樹脂及び高分子凝集剤は、いずれか一方を培土中に添加しても、両方を添加してもよい。両方を添加する場合には、両者の合計が培土1L当たり10g以下であることが好ましい。
【0018】本発明の培土は、上述した吸水性樹脂及び高分子凝集剤の他に、ガム、ペクチン、デキストリン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、澱粉系高吸水性ポリマー、アルギン酸ナトリウム、粉状スメクタイト等の粘土鉱物、更には水に対して容易に崩壊する粉状粘土鉱物の造粒物などの粘結剤を適宜添加してもよい。
【0019】本発明の培土は、上述した材料を所定の配合比で混合したものを、機械定植用苗箱の各ポットに入れ、育苗培土として使用することができる。育苗中は、保水性、保肥力が高く、潅水や施肥の頻度が少なくても育苗に必要な水分、肥料を維持することができる。定植時には、吸水性樹脂及び/又は高分子凝集剤の存在により、根鉢と容器との摩擦抵抗が低減されるため、乾燥・固化させなくても水分を保持した状態のまま容易に定植機械の押し出し棒で根鉢を押し出すことができ、押し出された後にも形状が保持され容易に崩壊することがない。従って、定植の時期や場所の制限を受けることなく、機械定植を行うことができる。
【0020】
【実施例】以下、本発明の機械定植用培土の実施例を説明する。尚、以下の実施例において、「%」は特に断らない限り「重量%」を意味する。
【0021】<実施例1>表1に示す記配合比(単位は重量%)で培土材料を混合した培土に、培土100%に対し吸水性樹脂(架橋性ポリアクリル酸ナトリウム)0.2%、高分子凝集剤(ポリアクリルアミド)0.1%を添加混合し、機械定植用培土とした。肥料は水溶性アンモニア態窒素と水溶性の緩行性肥料(硝酸態窒素)とその他必須成分(リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、微量要素)を添加した。この培土の肥料成分の溶脱率、崩壊率、保水率及び保存性を以下の方法で測定した。また機械定植時の摩擦抵抗を簡易に評価するために、引き抜き時の重量を測定した。比較例1として、吸水性樹脂及び粘結剤を添加しない培土についても同様に溶脱率、崩壊率、保水率、保存性及び引き抜き時重量を測定した。結果を表2、図1及び図2に示す。
【0022】
【表1】

【0023】[溶脱率]培土5gに対して、純水50mlを加え、30分振とう後濾過して、濾液中の肥料(水溶性アンモニア態窒素)含有量(Nとしてmg/100g)を測定し、この測定値を用い次式により培土の肥料成分の溶脱率を求めた。
溶脱率(wt%)=測定値÷(アンモニア態窒素添加量)×100【0024】[崩壊率]培土を機械定植用苗箱(みのるトレイ448:みのる産業)に土詰めし、十分潅水した後2時間放置した。その後、トレイ底部より直径6.5mmの棒で培土を押し出し、重量を測定後、半分の厚さになるまで圧縮した。押し出し後の重量Xと圧縮時に崩壊しなかった部分の重量Yから、次式により崩壊率を求めた。
崩壊率(%)=(1−(Y/X))×100【0025】[保水率]容量100mlのコアに上記培土を土詰めし、コア底面より吸水させ水で飽和状態にした。加圧式pF測定装置を使用して、pF1.8の水分状態まで加圧して水を抜き、この状態(pF1.8は、重力水の抜けた圃場容水状態と言われる)でコアと湿潤培土の合計重量(X)を測定した。次いで乾燥機により105℃で24時間乾燥し、コアと乾燥培土の合計重量(Y)を測定した。これら測定重量X、Yから次式により保水率を求めた。
保水率(容量%)=(X−Y)(100ml当たりの保水量)
【0026】[保存性]インキュベーターで培土を35℃に保って培養し、緩効性肥料(硝酸態窒素)の溶出量の経過を観察した。
【0027】[引き抜き時重量(摩擦抵抗値)]培土を入れた容器内で育苗し定植期となった苗の地上部を、先端にクランプ(洗濯バサミ)を取付けたバネ秤のクランプで挟んで、容器から引き抜き、バネ秤にかかる重量を測定した。
【0028】<実施例2>実施例1と同じ配合比の培土に、培土100%当たり0.2%の吸水性樹脂(架橋型ポリアクリル酸ナトリウム)を添加、混合し、機械定植用培土を得た。この培土についても実施例1と同様に溶脱率、崩壊率、保水率、保存性及び引き抜き時重量を測定した。結果を表2、図1及び図2に示す。
【0029】<実施例3>実施例1と同じ配合比の培土に、培土100%当たり0.1%の高分子凝集剤(ポリアクリルアミド)を添加、混合し、機械定植用培土を得た。この培土についても実施例1と同様に溶脱率、崩壊率、保水率、保存性及び引き抜き時重量を測定した。結果を表2、図1及び図2に示す。
【0030】<実施例4>実施例1で用いた高CECゼオライト(CEC:150meq/100g)の代わりに低CECゼオライト(CEC:60meq/100g)60重量%を用い、それ以外は同様の配合比とした培土に、培土100%当たり0.2%の吸水性樹脂(架橋性ポリアクリル酸ナトリウム)及び0.1%の高分子凝集剤(ポリアクリルアミド)を添加、混合し、機械定植用培土を得た。この培土と、吸水性樹脂及び高分子凝集剤を添加しない培土(比較例2)についても実施例1と同様に溶脱率及び崩壊率を測定した。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】表及び図面に示す結果からもわかるように、実施例1〜3の培土では、吸水性樹脂及び/又は高分子凝結剤を添加したことにより、崩壊率が低下し、保水率が向上した。また保存性については、吸水性樹脂の乾燥剤としての働きにより緩行性肥料(硝酸態窒素)の溶出が抑制され、保存性が向上することが確認された。また実施例4の低CECゼオライトを用いた培土でも、吸水性樹脂及び高分子凝結剤を添加した効果(定植時の崩壊抑制効果)が得られた。但し、溶脱率が高いことから培土のCEC量では肥料成分保持できず、保肥力の低いことが確認された。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、機械定植用培土に吸水性樹脂及び/又は高分子凝集剤を含有せしめたことにより、培土の保水性を高めるとともに崩壊性を改善することができる。これによりある程度水分を含んだ状態での定植を可能とし、定植時期や圃場によらず、植付け後の水分管理を容易にすることができる。特に培土の高CEC化を図ることにより、潅水時の肥料の流亡を防ぎ、根の生育状態を良好にすることができ、崩壊改善効果を高めることができる。
【出願人】 【識別番号】390020167
【氏名又は名称】奥多摩工業株式会社
【住所又は居所】東京都渋谷区千駄ケ谷5丁目32番7号
【出願日】 平成14年4月8日(2002.4.8)
【代理人】 【識別番号】100099852
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 公子 (外1名)
【公開番号】 特開2003−289720(P2003−289720A)
【公開日】 平成15年10月14日(2003.10.14)
【出願番号】 特願2002−105470(P2002−105470)