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【発明の名称】 長尺育苗マット
【発明者】 【氏名】柳沢 博文
【住所又は居所】滋賀県守山市森川原町163番地 グンゼ株式会社研究開発部内

【氏名】森川 陽
【住所又は居所】滋賀県守山市森川原町163番地 グンゼ株式会社研究開発部内

【氏名】豊永 武彦
【住所又は居所】滋賀県守山市森川原町163番地 グンゼ株式会社研究開発部内

【要約】 【課題】欠株が生じない、根を斜めに切断されない、即ち移植機適性に優れ、湿潤時にロール状に保持できる、即ち湿潤時形状維持性に優れた生分解性育苗マットおよび前記育苗マットを使用した育苗方法、移植方法を提供する。

【解決手段】水稲の育苗に使用され、育苗後ロール状に巻き取られ、移植機での移植時に移植爪により掻き取られ分割される長尺育苗マットであって、天然素材からなるマット基材に生分解性樹脂を含侵して形成され、幅方向のループ圧縮強度が0.3〜2.0gであることを特徴とする長尺育苗マット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】水稲の育苗に使用され、育苗後ロール状に巻き取られ、移植機での移植時に移植爪により掻き取られ分割される長尺育苗マットであって、天然素材からなるマット基材に生分解性樹脂を含浸して形成され、湿潤時の幅方向のループ圧縮強度が0.3〜2.0gであることを特徴とする長尺育苗マット。
【請求項2】天然素材が、パルプ、再生セルロース、ケナフ、綿からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の素材からなることを特徴とする請求項1記載の長尺育苗マット。
【請求項3】生分解性樹脂がポリ-ε-カプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、およびポリブチレンサクシネートからなる群より選ばれた少なくとも1以上であることを特徴とする請求項1または2記載の長尺育苗マット。
【請求項4】育苗マットの幅方向に筋状に生分解性樹脂が積層されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の長尺育苗マット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水稲の育苗に使用され、育苗後ロール状に巻き取られ、移植機での移植時に移植爪により掻き取られ分割される長尺育苗マットに関するものであり、特に田植えの省力化、および移植時の欠株を少なくすることを目的とした長尺育苗マットに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、稲作は周知のとおり、まず幅28cm長さ60cm程度の、長方形の育苗箱に播種を行ない、苗がある程度成長した時点で、圃場への移植を行なわれてきた。その際育苗箱の数は、10haあたり2000箱程度準備しなければならず、更に、育苗箱は土壌の苗床に播種後、さらに覆土をするため圃場への移植時には1箱あたり7kg程度にもなる。そのため、例えば10haの圃場への移植にはのべ14tの育苗箱の搬送を余儀なくされていた。また、予備の育苗箱を移植機の苗載台の上に載せ、苗継ぎを頻繁にする必要がありオペレータの疲労の要因にもなっていた。
【0003】そこで近年、交換回数を減らすために、従来の育苗箱よりも長い長尺育苗マットを使用することが検討されたが、従来のように床土で苗の根の部分をもつれさせて1枚の育苗マットとしただけでは形状を保持することはできず、更に、マットの重量が重くなるため、土壌の代わりに不織布や紙を使用してきた。その場合、移植機のロータリー移植機構は、移植爪で苗とともにマットを掻き取り分割しながら圃場に移植するので、マットの素材が非生分解性である場合、圃場に残る問題がある。そこで、生分解性の素材として綿の不織布やケナフ製の紙を用いられるのが一般的であった。
【0004】しかし、綿の不織布を用いた場合、移植機のスライド機構がスムーズに働かず、スライドが不十分な状態で移植爪で苗を掻き取ろうとするので、欠株が生じたり、根が斜めに切断されることになり、苗の初期の発育状態が悪くなるという問題点があった。また、紙の場合、湿潤時の強度が極端に低下するためマットをシート状に維持しロール状に巻くことが困難であった。そこで、欠株が生じない長尺育苗マットとしては、特開平11-332383号公報で開示されたものがある。特開平11-332383号公報では、掻き取り操作により伸張しない剛性を有し、所定の比重(28cm×58cmの単位面積あたり200〜500gの重量)を有する生分解性材料からなる育苗・移植用長尺マットが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の育苗・移植用長尺マットは、28cm×58cmの単位面積あたり200〜500gの重量を有するため、標準的な長さの育苗マットは6mであり、その総重量は2〜5kgにもなる。更に播種後は水分を含むため搬送時には15〜20kgにもなり、大変重く、作業は重労働なものとなる。本発明は、(1)欠株が生じない、(2)根が斜めに切断されない、(3)湿潤時の強度が極端に低下しないためにロール状に保持でき、更に(4)軽量で作業がしやすい生分解性長尺育苗マットを提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】水稲の育苗に使用され、育苗後にロール状に巻き取られ、田植機での移植時に移植爪により掻き取られ分割される長尺育苗マットであって、天然素材からなるマット基材に生分解性樹脂を含浸して形成され、湿潤時の幅方向のループ圧縮強度が0.3〜2.0gであること長尺育苗マットであることを特徴とする。天然素材が、パルプ、再生セルロース、ケナフ、綿からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の素材からなる長尺育苗マットであること特徴とする。生分解性樹脂がポリ−ε−カプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、およびポリブチレンサクシネートからなる群より選ばれた少なくとも1以上である長尺育苗マットであることを特徴とする。育苗マットの幅方向に筋状に生分解性樹脂を積層されてなる長尺育苗マットであることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の長尺育苗マットの実施の形態を説明する。本発明の長尺育苗マットは以下の通り使われる。まず、マット上に播種し、マットに栄養を含んだ水を含浸させる。発芽し一定の大きさまで成長したらマットをロール状に巻き取り、田植機に乗せる。該マットは田植機の移植爪で掻き取られながら苗ごと分割され圃場に移植される。
【0008】発明者は、鋭意研究を重ねた結果、天然素材に生分解性樹脂を含浸させ、湿潤時のマットの幅方向のループ圧縮強度を0.3〜2.0gに設計することにより初めて、(1)欠株が生じない、(2)根を斜めに切断されない、(3)ロール状に保持でき、更に(4)軽量で作業がしやすい生分解性の長尺育苗マットを提供できることを見出した。
【0009】ここで、ループ圧縮強度とは、マットをU字型に湾曲させたときの湾曲部分に圧縮方向の力を掛けたときの強度を指す。湿潤時のマットの幅方向のループ圧縮強度は、0.3〜2.0g、好ましくは0.35〜1.5g、より好ましくは0.4〜1.0gであることが望ましい。幅方向のループ圧縮強度が0.3〜2.0gに設計することにより、移植機の苗のスライド機構がスムーズに働き、欠株を生じたり、根を斜めに切断されることもなく移植される。ループ圧縮強度が0.3g未満の場合またはマットが柔らかすぎて測定不可能な場合、移植時のスライド機構がスムーズに働かず、スライドが不十分な状態で移植爪で苗を掻き取ろうとすると、欠株が生じたり、根が斜めに切断されるため好ましくない。又、ループ圧縮強度が2.0gを超える場合、育苗マットを移植機の棚板に配置する際に棚板の形状にうまくなじまないため好ましくない。
【0010】ループ圧縮強度を0.3〜2.0gにするには、マット基材を厚くする方法、マット基材に生分解性樹脂をコーティングする方法、マット基材に生分解性フィルムをラミネートする方法、生分解性樹脂をマット基材とする方法、マット基材に生分解性樹脂を含浸させる方法が挙げられるが、長尺育苗マットの保水性、軽量性、経済性を考慮すると、マット基材に生分解性樹脂を含浸させる方法が好ましい。マット基材を厚くする方法は、重たいものとなり、ロール状に巻くことも難しくなるため好ましくない。マット基材に生分解性樹脂コーティングする方法やマット基材に生分解性フィルムをラミネートする方法は、マット基材が有している保水性を低下させるため好ましくない。また、生分解性樹脂をマット基材とする方法は、マット基材が高価なものとなり実用性に欠けるため好ましくない。
【0011】次に、本発明の長尺育苗マットの構成および製造方法について具体的に説明する。本発明の長尺育苗マットは天然素材をマット基材として生分解性樹脂を含浸させた構成のものを指す。マット基材に用いる天然素材とは、自然界を起源とするものを指し、わら、竹、麻、パルプ、再生セルロース、ケナフ、綿、楮、三椏などが例示できるが、その中でも、マット基材に要求される特性として保水性、放水性、通気性、柔軟性や入手容易性、低価格であることを備えているという点で、パルプ、再生セルロース、ケナフまたは綿が好ましく、パルプがより好ましい。これらは1種で使用しても良いし、それらの数種を選択し組み合わせて使用しても良いし、特に制限はない。
【0012】マット基材の形状は、保水性、放水性、通気性を維持できるのであれば、不織布、紙、シート、フィルムのいずれでもよいが保水/放水がしやすく、経済的で伸度が低く移植爪で掻き取りやすい点において紙が好ましい。
【0013】マット基材に含浸させる生分解性樹脂は、脂肪族ポリエステル樹脂であり、グリコール成分と脂肪族ジカルボン酸とを脱水重縮合してなる脂肪族ポリエステル(以下、脂肪族ポリエステルAという)、ポリ乳酸、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ−3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシプロピオネートとの共重合体、3−ヒドロキシ酪酸と4−ヒドロキシ酪酸との共重合体、ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートなどを例示できるが、含浸させる溶液調整のしやすさの点で、好ましくはポリ−ε−カプロラクトンや脂肪族ポリエステルA、より好ましくは脂肪族ポリエステルAが望ましい。
【0014】ポリ−ε−カプロラクトンとは、環状単量体であるε−カプロラクトンを有機金属化合物触媒で開環重付加してなる重合体であり、化1の化学構造式で示される。またポリ−ε−カプロラクトンの数平均分子量(Mn)は、特に制限されるものでないが、1,000〜120,000が好ましく、数平均分子量(Mn)が1,000未満では、強度、剛性が小さくなる傾向があり、120,000を越えると成形性が劣る傾向がある。
【0015】
【化1】

【0016】また、脂肪族ポリエステルAとしては、後記の化2を繰り返し単位として有する脂肪族ポリエステルからなるものであって、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、シクロペンタンジカルボン酸およびシクロヘキサンジカルボン酸からなる二塩基性カルボン酸とエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、1,8-オクチレングリコール、ナノメチレングリコール、デカメチレングリコールからなるグリコールから任意に選ばれたジカルボン酸とグリコール間の脱水縮合あるいはそれに続く脱グリコール反応による反応生成物である。なお、前記の二塩基性カルボン酸およびグリコールは複数種類を併用してもよい。脱水縮合反応および脱グリコール反応は当業者に周知の方法で、加熱、減圧、触媒の存在下で行われる。
【0017】
【化2】

【0018】脂肪族ポリエステルAの数平均分子量は、1000以上が好ましく、さらに好ましくは1000〜25000、とくに5000〜20000がよい。脂肪族ポリエステルAの生分解性は、数平均分子量が5000以下で大きく、さらに1000以下では極めて大となる。数平均分子量の増加に伴う生分解性の低下は、はじめは急激であるが、5000以上では徐々に小さくなる。一方、高分子材料としての機械的諸物性、例えば、靭性、耐久性、耐熱性等は数平均分子量の増加とともに一般に向上する。従って、使用目的により、具体的用途に相応しい数平均分子量を選択することとなる。
【0019】前記生分解性樹脂を天然素材に含浸させるためには、生分解性樹脂を液状に調整する必要がある。液状に調整する方法として、生分解性樹脂を加熱溶融する方法、有機溶剤に溶解する方法、エマルジョン化する方法があるが、粘度調整のしやすさから有機溶剤に溶解する方法、エマルジョン化する方法が好ましく、環境への配慮から水系でエマルジョン化する方法がより好ましい。
【0020】生分解性樹脂を有機溶剤に溶解させる方法の場合、使用する溶剤は生分解性樹脂が溶解するものであれば特に限定はない。ポリ−ε−カプロラクトンの場合、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、クロロホルムなどがあり、なかでも、アセトン、テトラヒドロフランが好ましい。また、脂肪族ポリエステルAの場合も、ポリ−ε−カプロラクトンの場合同様に、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、クロロホルムなどがあり、なかでも、アセトン、テトラヒドロフランが好ましい。
【0021】また、エマルジョン化する方法は、公知の方法を用いればよいが、乳化剤の種類、油相成分と水相成分の比、エマルジョン化の方法を適宜選択することにより、油相に水相が分散するW/O(water/oil)型エマルジョン溶液、水相に油相が分散するO/W(oil/water)型エマルジョン溶液が得られる。更に具体的には、例えば生分解性樹脂が微粒子として油相をなし、水相中に安定している状態(O/W型エマルジョン溶液)とするには、生分解性樹脂を融点以上に溶融した後に、乳化剤を含む水相と混合する方法、あるいは溶液を用いる場合には、乳化剤を含む水相と混合後、溶剤を留出する方法により、エマルジョン溶液が得られる。
【0022】溶液にする際に使用する溶剤としては、樹脂を溶解するものであれば特に限定されるものではないが、酢酸エチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランが例示できる。また、乳化剤としては、所望の効果が得られるのであれば特に制限はなく、公知のものを使用すればよいが、界面活性剤、すなわち、ラウリル硫酸ソーダ、さらにはオレイン酸ソーダ等炭素数4−18の脂肪酸塩を含む陰イオン性界面活性剤、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン性界面活性剤、N-ラウリルグリシン等の両性イオン性界面活性剤、ノニールフェニールポリエチレンオキサイド等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。また、非イオン性界面活性剤には食品添加物として用いられているグリセリン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等も含まれる。
【0023】マット基材に生分解性樹脂を含浸させる方法としては、コーター法、吹き付け法、浸漬法を例示でき、いずれの方法であっても良いが、有機溶剤に生分解性樹脂を溶解した溶液(以下、溶液という。)や生分解性樹脂のエマルジョン溶液中にマット基材を浸漬させる浸漬法が好ましい。その理由は、紙、不織布等の繊維が絡み合った基材に生分解性樹脂を含浸させることにより吸水時の強度保持が期待できるためである。つまり、繊維同士の交点が樹脂により接着するために、吸水状態に於いても、繊維のズレが生じず、寸法変形や極端な強度低下を抑えることができるのである。更に、マット基材に生分解性樹脂を含浸させる浸漬方法としてロールプレス法が好ましく、他法と比べて、基材内部まで溶液が混入しやすく、浸漬斑が起こりにくい傾向にある。
【0024】溶液中の生分解性樹脂の比率は5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜35重量%が望ましい。5重量%未満では、溶液中の生分解性樹脂の濃度が低いため、一回の浸漬作業ではマット基材に生分解性樹脂が十分に含浸できず、浸漬・乾燥の工程を何度も繰り返さなければならない傾向にある。一方、50重量%を越えると、溶液の粘度が高くなるため、作業性が悪くなり、マット基材への含浸が不均一になる傾向にある。
【0025】含浸後の乾燥は、溶液の場合は、乾燥温度が溶剤の発火点以下であれば公知のいずれの方法であってもよい。また、O/W型エマルジョン溶液の場合は、水を乾燥させることができ、マット基材が熱変形しない温度であれば特に制限はないが、マット基材への生分解性樹脂の接着強度を上げるために生分解性樹脂の融点以上の温度で乾燥することが望ましい。また、融点以下で乾燥を行った場合には、更に融点以上に加熱する工程を設けることが望ましい。
【0026】マット基材に含浸する生分解性樹脂の含浸量は、含浸させる樹脂やマット基材の種類、目付により異なるが、概ねマット基材の目付の10〜100重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜60重量%の量が好ましい。例えば目付50g/mのマット基材の場合、5〜50g/m、好ましくは10〜40g/m、より好ましくは15〜30g/mの含浸量が望ましい。含浸量が10重量%未満の場合、湿潤時に十分な強度を付与できないために、ロール状にマットを巻くときにマットが破れたり、移植時のスライド機構で苗が圧縮され、欠株が生じたり、根が斜めに切断される傾向にある。一方、含浸量が100重量%を越える場合、マット基材に起因する保水性が損なわれるため、保水量が少なくなり苗の根枯れが発生したり、移植機の移植爪で引きちぎることが困難になる傾向がある。
【0027】次に、生分解性樹脂を含浸した長尺育苗マット(以下、育苗マットという。)について説明する。本発明の育苗マットの幅と長さは、苗継ぎ回数が少なくて済むように田植機の大きさ、圃場の大きさに合わせて、適宜変えればよく、特に制限はないが、作業性を考慮して育苗マットの総重量を10kg程度までに抑えるのが望ましい。
【0028】本発明の育苗マットには通根性の点から、空孔を設けるのが好ましい。空孔はマット基材の面積の30〜65%、好ましくは40〜60%、より好ましくは45〜55%が望ましい。(これを空孔率という。)空孔率が30%未満の場合、苗の発芽を抑制したり、育苗マット株に根が伸びないことによる根枯れが発生し、苗の発育不良の傾向にある。一方、空孔率が65%を超える場合、マット基材の強度が低下するためマット基材の破損などが起こり、形状を維持するのが困難になる傾向にある。
【0029】空孔を設ける方法は、マット基材に適当な空孔を設けられるのであれば公知のいずれの方法で行ってもよい。例えば、パンチ穴をあける方法、加熱したニードルで溶融穴をあける方法、ニードルで突き刺し穴をあける方法など例示できるがこれらに限定されるものではない。空孔の大きさは、直径5mm以下、好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下が望ましい。直径が5mmを越えると、下に伸びた根が育苗マット下で絡まず上に伸び根枯れが発生する傾向にある。
【0030】本発明の育苗マットは、湿潤時のマットの引張破断強度が4〜20N/15mm、好ましくは5〜18N/15mm、より好ましくは6〜15N/15mmであるのが望ましい。マットの湿潤時の引張破断強度を4〜20N/15mmに設計することにより、マットをシート状に維持し、容易にロール状に巻くことができ、かつ移植機のフィンガーで苗と共に引きちぎりなから圃場に移植することができる。湿潤時のマットの引張破断強度が4N/15mm未満の場合、マット基材に生分解性樹脂を含浸した効果が十分に生かされず、マットをシート状に維持し、ロール状に巻くことが困難になる傾向がある。一方、湿潤時の引張強度が20N/15mmを越える場合、移植の際、移植機のフィンガーで引きちぎりにくくなる傾向がある。
【0031】更に、本発明の育苗マットは、育苗マットの幅方向に筋状に生分解性樹脂を積層するのがより好ましい。筋状に生分解性樹脂を積層する方法としては、グラビアコーター法や噴霧塗布法、ホットメルト法によりスリットノズルから一定間隔で塗布する方法が例示できる。ホットメルト法により塗布する場合は、結晶性の高い生分解性樹脂が好ましく、特にポリ乳酸が好ましい。ポリ乳酸は、塗布後に結晶化処理を行うことにより樹脂の結晶化が進み、硬く脆くなり、幅方向の圧縮に対する強度に優れ、移植爪により引きちぎりやすい傾向にある。
【0032】次に、積層する量は、樹脂によって異なるが基材面積に対して5〜30g/m塗布するのが好ましい。30g/mを越えると、移植機のフィンガーで引きちぎられ難い傾向にある。また、筋の間隔は育苗マットのループ圧縮強度が0.3g以上となるならば特に制限されるものではない。
【0033】
【実施例】次に本発明を代表的な実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明において使用した物性値の測定方法及び評価方法は次の通りである。
【0034】ループ圧縮強度は、東洋精機株式会社製ループステフネステスターを用いて下記の通り測定した。
サンプル幅 : 15mmサンプル長さ : 90mm圧縮速度 : 3.5mm/s測定レンジ : 20g押し潰し距離 : 10mm【0035】引張破断強度は、株式会社島津製作所製オートグラフAGS−100Aを用いて、JIS K6732に準じて測定した。その際、マット本来の特性を把握するため、サンプルは空孔を設ける前のものを使用した。また、湿潤時のサンプルとしてあらかじめ水道水に30分間浸積し、十分に湿った状態で測定した。
【0036】また、育苗マットの乾燥時および湿潤時の重量も測定した。保水量の評価は、次の通り行った。まず、10cm角に乾燥状態の育苗マットを切り取り、乾燥状態(DRY状態)での育苗マット重量を測定し、次にこれを水道水に30分浸漬し、十分に湿った状態とし、水中から取り出し、湿潤状態(WET状態)での育苗マット重量を測定し、下記の式にて算出した。
(式1)
保水量(g)=WET状態での育苗マット重量(g)−DRY状態での育苗マット重量(g)
【0037】育苗状態の評価は、次の通り行った。幅27.8cm、長さ6mの育苗マットを準備し、苗を水耕栽培後に苗の育苗状態を目視にて評価した。ほぼ全面均一に苗が生長したものを○、根枯れが発生したものを×とした。湿潤時形状保持性の評価は、次の通り行った。育苗後の育苗マットを、ロール状態に巻いたときの、形状、育苗マットの破れ等を目視にて評価した。巻き幅が均一でロール形状が保持できたものを○、巻き幅が不均一ながら形状が保持できたものを△、育苗マットに破れが発生したものを×とした。圃場状態の評価は次の通り行った。圃場状態は、ロール状に巻いた育苗マットを、移植機に備え付け、圃場に移植し、移植直後、移植2週間後の苗の状態を目視にて評価した。欠株が少なく、均一に移植できたものを○、欠株が多数発生したり、移植後に成長不良が見られたものは×とした。
【0038】(実施例1)ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業(株)製 プラクセルH−7)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、20重量%の溶液に調整した。次にマット基材として55g/m2のケナフ紙(幅28cm、長さ6m)に幅方向に58穴、長手方向に5.5mmピッチで直径4mmのパンチ穴を設けた(空孔率47%)目付29g/m2のものを準備し、溶液中に含浸した後、50℃の乾燥機中に1分間放置し、溶剤を乾燥させ、育苗マットを得た。ポリカプロラクトンの含浸量は12g/mであった。
【0039】(実施例2)マット基材として目付50g/m2の綿の不織布を使用する以外は実施例1と同様にして育苗マットを得た。このときのポリカプロラクトンの含浸量は13g/m2であった。
【0040】(実施例3)ポリブチレンサクシネートエマルジョン(昭和高分子株式会社製 ビオノーレOLX-7527)を水に希釈し、樹脂濃度20重量%に調整したものを使用し、120℃の乾燥機中に2分間放置し、乾燥させた以外は実施例1と同様にして育苗マットを得た。ポリブチレンサクシネートの含浸量は12.5g/cmであった。
【0041】(実施例4)マット基材として目付50g/m2の綿の不織布を使用する以外は実施例3と同様にして育苗マットを得た。このときのポリブチレンサクシネートの含浸量は14.2g/m2であった。
【0042】(実施例5)実施例3で得られた育苗マットに、更にポリブチレンサクシネートエマルジョン(昭和高分子株式会社製 ビオノーレOLX-7527)(樹脂濃度50重量%)を幅方向に5cm間隔で幅1mmの筋状に塗布し育苗マットを得た。
【0043】(比較例1)3wt%のTHF溶液を使用する以外は実施例1と同様にして育苗マットを得た。ポリカプロラクトンの含浸量は2g/mであった。
【0044】(比較例2)52wt%のTHF溶液を使用する以外は実施例1と同様にして育苗マットを得た。ポリカプロラクトンの含浸量は35g/mであった。
【0045】(比較例3)樹脂分が52wt%のポリブチレンサクシネートエマルジョン(昭和高分子株式会社製 ビオノーレOLX-7527)を用いる以外は実施例1と同様にして育苗マットを得た。ポリブチレンサクシネートの含浸量は34g/mであった。実施例1、2、3、4、5および比較例1、2、3の評価結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【発明の効果】本発明は、以上のような構成からなるもので、以下のような効果を奏する。本発明の育苗マットは、移植機での移植時に、欠株が生じない、根を斜めに切断されない、即ち移植機適性に優れ、また、湿潤時に長尺のマットをロール状に保持して運搬可能、即ち湿潤時形状維持性に優れたものであるので、作業者の労働負荷軽減に優れる生分解性育苗マットである。さらに本発明は前記育苗マットを使用することにより作業者の労働負荷を軽減する育苗方法、移植方法を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
【住所又は居所】京都府綾部市青野町膳所1番地
【出願日】 平成14年2月26日(2002.2.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−250350(P2003−250350A)
【公開日】 平成15年9月9日(2003.9.9)
【出願番号】 特願2002−50447(P2002−50447)