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【発明の名称】 自然環境導入計画支援システム
【発明者】 【氏名】那須 守
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目2番3号 清水建設株式会社内

【氏名】横田 樹広
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目2番3号 清水建設株式会社内

【要約】 【課題】ビオトープのような自然環境の創出、復元、保全において、ユーザが計画段階から参加できるシステムの実現を図る。

【解決手段】(a)に示されているように、まず、ビオトープのような自然環境ニーズを分析し、自然環境の利用や管理をイメージしながらのアンケートによるモデル化を行う。自然環境の現状把握としてユーザ(顧客)参加による自然環境を調査することもある。次に、ユーザが要求している導入要素を抽出する。ここでは、事例データベースに基づく要素選択を行う。続いて、ビオトープ計画シミュレータを用いる。このシミュレータは、完成像をアップツーデートに3次元画像でシミュレーションを行うものである。(b)は、前記(a)の処理をフローで示した図である。Mはモデル化、Dは形態化、Sは実像化を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ユーザが導入を計画する自然環境を創出する際に、ユーザニーズをアンケートによりモデル化する手段と、前記アンケートに基づいてユーザが要求する自然環境の要素を抽出して形態化する手段と、前記形態化された要素をシミュレーションにより実像化する手段とを備えたことを特徴とする、自然環境導入計画支援システム。
【請求項2】 前記アンケートは、前記自然環境の景観、利用目的や維持管理のような項目毎に、想定されるユーザニーズに対応するキーワードを含み構成されていることを特徴とする、請求項1記載の自然環境導入計画支援システム。
【請求項3】 前記ユーザニーズを評価する縦軸および横軸の評価軸からなる相関表に、複数の自然環境モデルを配列し、前記アンケートのキーワードに関連付けて形成される自然環境モデルを選定することを特徴とする、請求項2記載の自然環境導入計画支援システム。
【請求項4】 前記アンケートに回答した際に、アンケート内容の項目毎に配置した前記自然環境モデルに配点される配点表を設けることを特徴とする、請求項3記載の自然環境導入計画支援システム。
【請求項5】 前記配点表に基づき、前記各自然環境モデルの配点を定量的に表示することを特徴とする、請求項4記載の自然環境導入計画支援システム。
【請求項6】 前記各自然環境モデル毎に、予め異なる要素で階層状に形成されるカタログデータベースを設定しておき、ユーザが前記自然環境モデルを選択した際に、当該自然環境モデルの各要素毎に、上位の階層から下位の階層に順次事例を選択して自然環境の構造を構築することを特徴とする、請求項3〜請求項5のいずれかに記載の自然環境導入計画支援システム。
【請求項7】 前記データベースの要素は、異なる階層毎に複数のキーフレーズを含み、前記キーフレーズは、ユーザニーズに対応するようにカテゴライズされていることを特徴とする、請求項6記載の自然環境導入計画支援システム。
【請求項8】 前記データベースの要素は、異なる階層間、および同一階層上の他のキーフレーズと関連付けられて、ネットワーク構造とされていることを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の自然環境導入計画支援システム。
【請求項9】 前記キーフレーズには、各々具体的内容を、写真、イメージ図、語句または文章で対応させたことを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の自然環境導入計画支援システム。
【請求項10】 前記自然環境の構造を構築する際に、前記要素を画面上に平面状または3次元で表示してシミュレーションすることを特徴とする、請求項6〜請求項9のいずれかに記載の自然環境導入計画支援システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自然環境の創出、復元、保全において、ユーザが計画段階から参加できるように支援する構成とした自然環境導入計画支援システムに関する。
【0002】
【従来の技術】最近は、各分野において環境や資源への関心が高まってきている。その一例として、建物やその周辺に自然環境を導入しようとする試みがなされている。具体的には、屋上緑化やビオトープなどにより自然環境を創出したいというユーザ(顧客)の要請が増加してきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような自然環境を創出する際には、ユーザのニーズを的確に把握して、施工主などの計画者は設計や工事に反映させる必要がある。しかしながら、従来は、ユーザが計画段階から参加して自然環境を造成することは殆どなされていなかった。このため、完成した自然環境の利用の低下や、維持管理が放棄されるという問題が起こることもあった。
【0004】この点に関して、住宅の販売においては、ユーザのニーズを取り込んで間取りや外観を決定する例がみられる。この場合には、ユーザの家族構成やライフスタイルなどを住宅メーカが調査して、一種のユーザ参加型の形態で住宅を造成している。前記屋上緑化やビオトープなどにより自然環境を創出する際にも、住宅販売におけるユーザ参加型の形態を採用することが考えられる。
【0005】住宅の場合には、ユーザの種々の要求を平面図や立面図などで表現しやすく、住宅メーカとユーザとの間で住宅の形状や色彩などでミスマッチを生じることは比較的少ないといえる。しかしながら、自然環境の完成状態は平面図や立面図などでは表現しにくい上に、季節が変化した場合に景観がどのように変わるのか把握できないという問題がある。
【0006】さらに、自然環境を創出する際のユーザニーズは漠然としていて不明瞭であることが多い。ユーザは、屋上緑化やビオトープなどの自然環境をとりあえず造成してみたい、という要求だけを計画者に出す例もある。このため、計画者側ではユーザが具体的にはどのような景観を要求しているのか判断することができないことがあった。換言すれば、ユーザの潜在的なニーズを顕在化することができず、ユーザの意向に沿った自然環境の創出ができないという問題があった。
【0007】本発明は、上記課題を解決するものであって、自然環境の創出、復元、保全において、ユーザが計画段階から参加できるように支援する構成とした自然環境導入計画支援システムの実現を図るものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】そのために本発明の自然環境導入計画支援システムは、ユーザが導入を計画する自然環境を創出する際に、ユーザニーズをアンケートによりモデル化する手段と、前記アンケートに基づいてユーザが要求する自然環境の要素を抽出して形態化する手段と、前記形態化された要素をシミュレーションにより実像化する手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】また、前記アンケートは、前記自然環境の景観、利用目的や維持管理のような項目毎に、想定されるユーザニーズに対応するキーワードを含み構成されていることを特徴とするものである。また、前記ユーザニーズを評価する縦軸および横軸の評価軸からなる相関表に複数の自然環境モデルを配列し、前記アンケートのキーワードに関連付けて形成される自然環境モデルを選定することを特徴とするものである。また、前記アンケートに回答した際に、アンケート内容の項目毎に配置した前記自然環境モデルに配点される配点表を設けることを特徴とするものである。また、前記配点表に基づき、前記各自然環境モデルの配点を定量的に表示することを特徴とするものである。
【0010】また、本発明の自然環境導入計画支援システムは、前記各自然環境モデル毎に、予め異なる要素で階層状に形成されるカタログデータベースを設定しておき、ユーザが前記自然環境モデルを選択した際に、当該自然環境モデルの各要素毎に、上位の階層から下位の階層に順次事例を選択して自然環境の構造を構築することを特徴とするものである。また、前記データベースの要素は、異なる階層毎に複数のキーフレーズを含み、前記キーフレーズは、ユーザニーズに対応するようにカテゴライズされていることを特徴とするものである。
【0011】また、本発明の自然環境導入計画支援システムは、前記データベースの要素は、異なる階層間、および同一階層上の他のキーフレーズと関連付けられて、ネットワーク構造とされていることを特徴とするものである。また、前記キーフレーズには、各々具体的内容を、写真、イメージ図、語句または文章で対応させたことを特徴とするものである。また、前記自然環境の構造を構築する際に、前記要素を画面上に平面状または3次元で表示してシミュレーションすることを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明においては、建物や敷地における屋上緑化、ビオトープなどの自然環境の創出、復元、保全について、計画者とユーザの協働により計画を推進する、ユーザ参加型の自然環境導入計画支援システムを実現するものである。
【0013】このようなユーザ参加型のユーザ支援システムを実現するためには、自然環境の創出、復元、保全の計画段階からユーザが参画し、多様なユーザのニーザを統合する必要がある。また、計画者とユーザが3次元モデルにより自然環境の完成像を共有することも求められている。
【0014】このため、前記システムは、以下の手段により構成されている。すなわち、(1)ユーザのニーズを導入自然環境のモデルに具体化する「自然環境ニーズ調査・分析」手段、(2)ユーザの目的や要求に応じて導入する要素やその組み合わせについて、事例を参照しながら検討できる「カタログデータベース」手段、(3)出来上がる自然景観の姿を3次元コンピュータグラフィックスで擬似体験できる「計画シミュレータ」手段、を用いている。
【0015】図1は、ユーザのニーズを具体像に形成するプロセスの説明図である。図1(a)は、ユーザのニーズをかたちにしていくツールと流れを示している。図に示されているように、まず、ビオトープのような自然環境ニーズを分析し、自然環境の利用や管理をイメージしながらのアンケートによるモデル化を行う。自然環境の現状把握として、ユーザ(顧客)参加による自然環境を調査することもある。
【0016】次に、ユーザが要求している導入要素を抽出する。ここでは、事例データベースに基づく要素選択を行う。続いて、ビオトープ計画シミュレータを用いる。このようなシミュレータは、完成像をアップツーデートに3次元画像でシミュレーションを行うものである。図1(a)に示されているような種々のツールを用いて計画者はユーザを支援し、ユーザニーズを把握した上で、その実現を図る。
【0017】図1(b)は、前記図1(a)の処理をフローで示した図である。Mはニーズアンケートのモデル化、Dは要素の抽出による形態化、Sはシミュレーションの実像化を示している。この図から明らかなように、本発明においては、ユーザのニーズアンケートによりビオトープのような自然環境についてモデル化を行う。そして、モデル化された自然環境について導入要素を抽出して形態化を図り、形態化された内容をシミュレーションにより実像化している。
【0018】図2、図3は、ユーザに対してなされるアンケートの例を示す説明図である。このアンケートAa、Abは、ユーザが要求する対象の利用目的、求める自然環境や要素、維持管理など想定されるユーザニーズに対応するキーワードを含む複数の質問項目と、各項目毎の複数の選択肢で形成されている。
【0019】図2、図3は、ユーザが建物の屋上緑化や敷地内に自然環境を造成するエコビルの建設を希望している場合のアンケートの例を示している。このアンケートは、質問項目として1.エコビルで、どんなことをしてみたいですか?(利用目的)、2.エコビルに、何があるといいですか?、どんな風景にしたいですか?(要素、自然環境)3.エコビルの管理は、どのようにしたらいいですか?(維持管理)、を列挙している。
【0020】これらの質問項目は、それぞれ細分化されて出来るだけ具体的にユーザのニーズを引き出すように、工夫されている。このため、質問項目1. (利用目的)と質問項目2. (要素、自然環境)では各9種類の選択肢を設け、質問項目3. (維持管理)では7種類の選択肢を設けている。
【0021】このような1〜3の質問項目と、各質問項目毎に設定される複数の選択肢をどのようなキーワードを含ませて配列するかは、潜在化されているユーザのニーズを顕在化させる上で極めて重要なポイントとなるものである。本発明においては、係るキーワードを選定、配列するところにも特徴を有している。
【0022】例えば、質問項目1.においては、選択肢1は眺望を楽しむ、選択肢2はガーデニング、選択肢3は自然観察、というように、ユーザの意向を分析してユーザが希望するような利用目的を具体的に列挙している。また、質問項目2.においては、選択肢1(番号10)で、植栽の内容、選択肢2(番号11)は地域の自然を再現する、というようにユーザが選択しやすいキーワードを設定している。このようなキーワードは、計画者の長年の経験に基づいてユーザニーズをできるだけ補足できるように考慮して選定される。
【0023】図4は、図2、図3のアンケートで得られるユーザのニーズを評価モデルで表した説明図である。図4の縦軸には、利用度を設定する。この評価軸の下段には景観、中段に環境学習、上段に地域交流を設定する。したがって、利用度の評価軸は、下段にはいわば静的なモデル(単に眺望を楽しむ)を設定し、上段には動的なモデル(人の交流が多い)を設定している。
【0024】図4の横軸には、生物多様性を設定している。この評価軸の左側は生物多様性が低いモデルを設定し、右側にいくほど生物多様性が高いモデルを設定している。このように、図4は縦軸と横軸の相関表に自然環境モデルを配列するものである。以下、各モデルMa〜Miについて説明する。利用度の評価軸で下段の「景観」については、生物多様性の評価軸で低い評価から高い評価に向けて、「景観植栽(花壇、樹木)」、「自然植栽」、「ビオガーデン」のモデルMa〜Mcを配列している。
【0025】このように、利用目的が「景観」という点では共通するレベルであっても、生物多様性の観点からみると、単なる「景観植栽」を設置する場合よりも、「ビオガーデン」を設置する場合の方が明らかに評価が高くなる。したがって、このようなモデルの配列を行うことにより、ユーザが希望する漠然とした自然環境のイメージを、明確に表現することができる。すなわち、前記潜在化されているユーザのニーズを顕在化させることができる。
【0026】次に、利用度の評価軸で中段の「環境学習」に関しては、生物多様性の評価軸で低い評価から高い評価に向けて、「学習花壇」、「バードサンクチュアリ」、「生態園」のモデルMd〜Mfを配列している。この例でも、利用目的が「環境学習」で共通の場合に、「学習花壇」のモデルよりも「バードサンクチュアリ」のモデルの方が生物多様性の評価は高くなる。
【0027】また、利用度の評価軸で上段の「地域交流」では、生物多様性の評価軸で低い評価から高い評価に向けて、「ガーデン(ハーブ、ローズ)」、「畑、田農地」、「里山(雑木林,ため池)」のモデルMg〜Miを配列している。この例では、畑などの自然環境よりも、里山の自然環境が生物多様性の観点からみれば評価が高くなるのは当然といえる。
【0028】このように、図4の例では、縦軸の利用度の評価軸と、横軸の生物多様性の評価軸で9個のモデルを設定している。各モデルは、前記のように縦軸と横軸の評価軸からなる相関表に配列され、各モデルの配置位置は、各軸の評価軸と相関性を持たせている。例えば、利用度の評価軸で人の交流が少ない「静的」な観点で、生物多様性を評価する際に、図4の例では、生物多様性が低いモデルは「景観植栽」であることが計画者もユーザも直ちに把握できる。このような情報を計画者とユーザが共有することになり、ユーザニーズに関して両者間でのミスマッチの発生を防止することができる。
【0029】また、人の交流が多い「動的」な観点で、生物多様性を評価する際に、生物多様性が高いモデルは「里山」であることも明確に確認できる。すなわち、図4の例では、右上のモデルほど縦軸と横軸の評価の相関が大きくなるように各モデルを配置している。図4で示したような縦軸と横軸の評価軸をどのような観点で選定するかも、本発明においては工夫している。縦軸と横軸の評価軸の設定次第で、ユーザニーズを適格に顕在化させることができるかどうかが分かれることが想定されるからである。
【0030】また、このような評価軸の設定と合わせて、モデルをどのような用語で表現し、各モデルをどのように配列するかも、ユーザのニーズを引き出す上で重要となり、ここにも本発明の特徴が示されている。図4の例では、縦軸方向と横軸方向に各3個、合計9個のモデルを配列している。本発明においては、各モデルは、縦軸と横軸が同数配列されなくても良い。例えば、縦軸方向に2個、横軸方向に4個配列しても良い。モデルの数が多いほどユーザニーズを詳細に把握することができる。なお、図4の例では、利用目的と生物多様性の相関表を示しているが、例えば、自然環境の維持管理を縦軸の評価軸に、生物多様性を横軸の評価軸に設定した相関表を用いることもできる。
【0031】図6は、図2、図3のアンケートから、図4のモデルを選定する際に用いる配点表Caの例を示す説明図である。図6に示すように、アンケートの各設問には、各モデルを対応させている。例えば、ユーザが、1.エコビルで、どんなことをしてみたいですか?(利用目的)、の質問項目で、No1の「都市の生態系保全や復元の役割を担う屋上ビオトープをつくり、眺めを楽しむ」を選択したとする。この場合には、対応するモデルの「ビオガーデン」に1ポイント配点する。
【0032】図6の例では、各モデルは、質問項目1.エコビルで、どんなことをしてみたいですか?(利用目的)、質問項目2.エコビルに、何があるといいですか?、どんな風景にしたいですか?(要素、自然環境)、質問項目3.エコビルの管理は、どのようにしたらいいですか?(維持管理)、の各質問項目毎に対応させている。
【0033】すなわち、各モデルは異なる観点で配点される構成としている。この例では、前記三項目の各質問項目の観点で同一モデルが選択されると、最高3点配点されることになる。なお、No20とNo22を選択した場合には、それぞれ2つのモデルに配点されることになっている。
【0034】図6の例では、アンケート1問選択につき対応するモデルは1点の配点としているが、例えば選定されたアンケート(〇)は2点配点に、どちらかといえばあったほうが良い(△)は1点配点とすることもできる。このような配点法を用いた場合も、ユーザニーズの傾向を把握することができる。さらに、不要な事項をアンケートで選択した場合に、対応するモデルを消去する消去法でユーザのニーズを調査しても良い。
【0035】本発明においては、図6の配点表に示すように、アンケートの内容に適合するように最適なモデルを設定している。このように、アンケート内容(キーワード)を抽出して、ユーザが選択したアンケートの内容に適合させるようにどのようなモデルを対応させるかを設定することも、ユーザニーズを的確に抽出する上で重要な事項である。
【0036】図5は、図6の配点表に基づいて作成されたグラフの例を示す図である。図4で説明した縦軸と横軸に対応させてモデルを配列する。各モデルの得点を高さ方向に積み上げる。このように、棒グラフ表示することにより、ユーザニーズの各モデルに対する適合性を分析することができる。また、自然環境へのユーザの志向を定量的に明確化することができる。例えば、図5でBaのビオガーデンのモデルと、Bbの生態園のモデルがユーザの関心が高いことを示している。
【0037】図7は、前記ユーザのアンケート調査に基づき把握されたニーズに対して、自然環境の具体的な形態を表示していくプロセスを示す説明図である。この例では、モデル事例データベース(カタログデータベース)によりユーザから要求された自然環境を実現するための導入要素を抽出している。
【0038】図7においては、最初にコンセプト(基本概念)、全体像の要素の事例を参照して、その中からユーザが最適と考える要素を選択する(Da)。次に、前記ユーザが選択したコンセプト、全体像の要素に対応するエコロジカルなシステムの要素の事例を参照しながら、その中からユーザが最適と考える要素を選択する(Db)。
【0039】続いて、ユーザが選択したエコロジカルなシステムの要素に対応するエコロジカルな空間の要素の事例を参照して、その中からユーザが最適と考える要素を選択する(Dc)。最後に、ユーザが選択したエコロジカルな空間の要素の事例に対応するディテール、空間構成要素の事例を参照して、その中からユーザが最適と考える要素を選択する(Dd)。
【0040】このように、図7の例では、コンセプト、システム、空間、ディテールの要素は、「ふれあいと学びの空間」、「緑の連続性のための要素」などの目的や状態でカテゴライズされたカタログデータベースから導入されている。ユーザは、自然環境ニーズ分析、周辺環境等の条件に基づき導入する前記各要素をカタログデータベースから選択することにより、自然環境の構造を構築している。このようなカタログデータベースの要素には、事例の写真、図、解決しなければならない問題点、解決策、注意点、関連する要素などが格納されている。
【0041】図9は、図7に示したカタログデータベースを、キーフレーズの全体像の表Kaで示す説明図である。前記のように、カタログデータベースの要素は目的や状態などがユーザニーズに対応するように、カテゴライズされている。各カテゴリーは、例えば上位の階層から下位の階層に向けて、コンセプト、システム、空間、ディテールと階層的に配列されている。
【0042】図9において、スケール1の全体像/地域環境の形成、の要素では、例えば「〜することを目的にエコビルをつくる」というように、理念の動詞形でキーフレーズを形成する。この例では、具体的には「自然生態系の保全・創造」、「利用者のアメニティ」、「地球環境への貢献」の三項目を設定し、各項目の中にキーフレーズを設定している。
【0043】スケール2は、スケール1の下位の階層であり、エコロジカルなシステムを要素としている。この要素では、例えば「目的達成のために敷地全体で〜する」というように、対策の動詞形でキーフレーズを形成する。この例では、前記「自然生態系の保全・創造」の項目に対応して、「自然生態系のためのシステム」の項目を設定し、この項目の中に具体的なキーフレーズを設定している。
【0044】また、スケール2においては、例えば、「(〜の)うち、関係性があるときは、必ず〜する」という対策の動詞形も項目として設定している。この例では、具体的には「必ず配慮すべきルールとなるシステム」を項目としており、この項目の中に、前記「目的達成のために敷地全体で〜する」という項目で設定されるキーフレーズとは異なるキーフレーズを設定している。
【0045】スケール2の下位階層のスケール3では、エコロジカルな空間を要素としている。ここでは例えば、「以上のために、〜な〜空間をつくる」というような、(状態の形容詞+つくるものを表す名詞)をキーフレーズとして設定している。一例として、スケール2の「自然生態系のためのシステム」に対応する項目として、「生物多様性の空間」、「保全の空間」、「連続性の空間」の三項目を設定している。
【0046】最下層の階層であるスケール4では、空間構成要素、ディテールを要素としている。この例では、「望ましい空間を、〜な〜によって構成する」というような、(状態の形容詞+つくるものを表す名詞)をキーフレーズとして設定している。一例として、スケール3の「生物多様性の空間」、「保全の空間」、「連続性の空間」の項目に対応する項目として、「生物多様性の要素」、「保全の要素」、「連続性の要素」を設定している。
【0047】図10は、図9の上位キーフレーズを選択する例の表Kbを示す説明図である。図10では、図9のスケール1「全体像/地域環境の形成」の要素と、スケール2「エコロジカルなシステム」の要素に対応したキーフレーズを選択している。この例では、全体像/地域環境の形成の要素では、複数のキーフレーズの中から、「子供達を育む自然体験の場をつくる」というキーフレーズを選択している。
【0048】次に、スケール2「エコロジカルなシステム」の要素では、スケール1「全体像/地域環境の形成」の要素で選択された、前記「子供達を育む自然体験の場をつくる」というキーフレーズに対応させて、複数のキーフレーズが設定されている。この例では、「地形を活かす」、「表土を保全する」、「食う、食われるの関係を生む」、「多様な自然解説の場をつくる」、「二次林を再生する」などであるが、ここではユーザが「エコアップして水辺空間を創出」というキーフレーズを選択するものとする。
【0049】図11は、図9の下位キーフレーズを選択する例の表Kcを示す説明図である。図11では、図9のスケール3「エコロジカルな空間」の要素と、スケール4「空間構成要素・ディテール」の要素に対応したキーフレーズを設定している。図11において、前記スケール2の要素で選択された「エコアップして水辺空間を創出」に対応して、スケール3「エコロジカルな空間」の要素では複数のキーフレーズが設定されている。
【0050】この例では、「ミニ田んぼ」、「草丈の違う草地」、「自然な生態系が生まれる湿地」、「環境が連続して変化する水辺」、「人の手の届かない中島」などのキーフレーズが設定されている。ユーザは、「トンボやメダカの棲む池」というキーフレーズを選択している。
【0051】スケール3「エコロジカルな空間」の要素で選択されたキーフレーズの「トンボやメダカの棲む池」に対応して、スケール4「空間構成要素・ディテール」の要素では複数のキーフレーズを設定している。この例では、「水底の凹凸と質」、「水面に影を落とす樹木」、「水中の生物を育む水生植物帯」、「多孔質な水の際」、「多様な環境に接する水辺」、「植物に被覆されない開放水面」などのキーフレーズが設定されている。
【0052】図9〜図11で説明したデータベースの要素であるキーフレーズは、上位、下位、同位の要素と関連付けされ、ネットワーク構造となっている。図12は、このようなネットワーク構造となっているキーフレーズの表Kdの例を示す説明図である。図12において、図9で説明したキーフレーズが矩形状の枠でスケール1〜スケール4として階層構造で示されている。
【0053】図12の破線の右側は、利用の観点からのキーフレーズを表している。また、破線の左側は生態系の観点からのキーフレーズを表している。上位階層のキーフレーズと下位階層のキーフレーズを実線で結び、前後関係(上位、下位の関連キーフレーズ)を表示している。ここで前後関係とは、例えば、スケール2のキーフレーズからみて、実線で結ばれたスケール1のキーフレーズは、前後関係では前の関係である。また、スケール2のキーフレーズからみて、実線で結ばれたスケール3のキーフレーズは、前後関係では後の関係である。
【0054】次に、図12の矢印付の実線で結ばれたキーフレーズは、同一スケール内の関連キーフレーズを示している。同一スケール内の関連キーフレーズは、スケール1には設定されていない。スケール1は、コンセプト、全体像を選択するものであり、独立性が高いものと考えられるからである。
【0055】図12において、矩形枠に斜線を施した部分はユーザが各スケールで選択したキーフレーズを示している。当該選択されたキーフレーズは、前記のように前後関係のスケール、または同一スケール内で関連付けされて、ネットワーク構造を形成している。このように、各階層に設定されているキーフレーズをネットワーク構造で連結しているので、キーフレーズ相互間の関連性を明確に判断することができる。
【0056】ユーザは、各スケールで階層構造を形成している要素を種々の手法で選択できる。例えば、全要素一覧表、カテゴリー別要素一覧表、階層別要素一覧表を用意しておき、これらの一覧表の中から必要な要素を選択することができる。また、各要素に格納されている関連要素などからも要素を選択することができる。
【0057】図13〜図16は、カテゴリー別要素一覧表の例を示す説明図である。この例では、「自然・人間環境における問題解決と具体化のためのキーフレーズ」についてのカテゴリーを設定している。なお、スケール2以下の下位階層では、キーフレーズを一部のみ抜粋して示している。
【0058】図13のキーフレーズ表Kpにおいて、スケール1は、全体像/地域環境の形成の要素を設定するものであり、この例では、目的として地域スケールを設定している。この中では、「自然生態系の保全・創造」の項目と、「利用者のアメニティ」の項目と、「地球環境への貢献」の項目が設定されている。これらの各項目は、いくつかのキーフレーズを含んでいる。
【0059】例えば、「自然生態系の保全・創造」の項目においては、No2としてキーフレーズ「地形・水系・緑地を保全する」が設定されている。また、その具体的内容として「地形改変の極小化/水源の保全/樹木の保全/林縁の保全/斜面緑地の保全/屋敷林の保全」が設定されている。このように、具体的内容の欄は、語句または文章でキーフレーズと対応させている表現している。スケール1は、最上位の階層にあるので、前後関係の関連付けは、下位の階層である後の関係のみが対象となる。
【0060】また、「利用者のアメニティ」の項目では、例えばNo8としてキーフレーズ「美観向上でイメージアップ」が設定されている。また、その具体的内容として、「緑被率アップ/概観の演出」が設定されている。次に、「地球環境への貢献」の項目では、例えばNo14としてキーフレーズ「省エネ・リサイクルに取り組む」が設定されている。また、その具体的内容として、「雨水の利用/他の環境共生の仕組みとの組み合わせ」が設定されている。
【0061】図14のキーフレーズ表Kqにおいて、スケール2は、エコロジカルなシステムの要素を設定するものであり、この例では、建物(敷地)スケールを設定している。この中では、「自然生態系のためのシステム」の項目が設定されている。この項目に対応して、No15〜No32のキーフレーズが設定されているが、図14ではNo26までのキーフレーズを表示している。
【0062】なお、図示を省略しているが、この階層では図9で説明したように、この他にも「利用者のアニメティのためのシステム」の項目と、「地球環境のためのシステム」が設定されており、これらの項目に対応してそれぞれ複数のキーフレーズが設定されている。また、スケール2は、前後関係の関連付けは、上位の階層と下位の階層である前後の関係が対象となる。
【0063】例えば、図14のNo22では「二次林を保全・再生する」のキーフレーズが設定されている。このキーフレーズの具体的内容として、「落葉広葉樹の植林/落葉広葉樹林の維持管理」が設定されている。また、No24では、「農地を保全・創出する」のキーフレーズを設定し、その具体的内容として「市民農園/民間施設緑地/農業体験の場の提供」が設定されている。
【0064】図15のキーフレーズ表Krにおいて、スケール3は、エコロジカルな空間の要素を設定するものであり、この例では、緑化空間スケールを設定している。この中では、「生物多様性の空間」の項目と、「保全の空間」と、「連続性の空間」が表示されている。図15では表示を省略しているが、この他に、図9で表示した「ふれあいと学びの空間」、「憩いと安心の空間」、「自然エネルギーの空間」、「循環の空間」の各項目が設定されており、これらの各項目毎に複数のキーフレーズと、そのキーフレーズに対応した具体的内容が設定されている。
【0065】図15において、例えば「生物多様性の空間」の項目で、No56のキーフレーズとして「野山の野草が茂る野草園」が設定されており、その具体的内容として「多年草の草地」が設定されている。また、「保全の空間」の項目でNo62のキーフレーズとして、「地下水・湧水を活用した池・水路」が設定されている。その具体的内容は、「地下水口・湧水池からの水路・池」とされている。
【0066】図16、図17のキーフレーズ表Ks、Ktは、スケール4の「空間構成要素・ディテール」の要素を設定するものであり、この例では施工スケールを設定している。この中では、「生物多様性の要素」の項目が表示されているが、この他に、図9で示したように「保全の要素」、「連続性の要素」、「ふれあいと学びの要素」、「憩いと安心の要素」、「自然エネルギーの要素」、「循環の要素」が設定されている。これらの各要素は、それぞれ複数のキーフレーズと、そのキーフレーズに対応した具体的内容が設定されている。
【0067】「生物多様性の要素」の項目では、No98〜No112のキーフレーズが設定されているが、図16のキーフレーズ表KsではNo107までのキーフレーズを表示している。例えば、No100のキーフレーズとして「多様な生き物の住まいづくり」を設定し、その具体的内容として「草刈り残しのエコバッチ/裸池・乾燥地との組み合わせ」が設定されている。
【0068】図17のキーフレーズ表Ktは、図示を省略している「循環の要素」の項目で設定されているキーフレーズの一部を表示している。「循環の要素」の項目では、No176〜No188のキーフレーズが設定されている。例えば、No188の「落ち葉の管理が可能な孔部」のキーフレーズには、その具体的内容として「落ち葉の管理を考えたデッキ・排水溝」を設定している。
【0069】このように、本発明においては、階層化された各カテゴリー毎に、例えばスケール1〜スケール4として「全体像、システム、空間、ディテール」に区分したカテゴリー毎に、多数の項目を設定している。例えばスケール1のカテゴリーでは、「自然生態系の保全・創造」、「利用者のアニメティ」、「地球環境への貢献」の項目を設定している。
【0070】そして、これら多数の項目の各項目毎に複数のキーフレーズと、このキーフレーズの具体的な内容を対応させてデータベースの要素を設定している。前記のように、図13〜図17の例では188項目のキーフレーズとその具体的内容が設定されている。
【0071】このように、カテゴリーを階層化させて設定すると共に、各階層毎に大量のキーフレーズ、およびその具体的な内容でデータベースを準備していることも本発明の特徴である。このようなデータベースを備えることにより、あらゆるユーザニーズに対応した自然環境の要素を適格に引き出すことができる。
【0072】前記のようにして、ユーザが自然環境の構造を構築する要素を選択した際に、各要素の内容は、パーソナルコンピュータなどの画面でプレビューできる。図8は、このようにしてユーザが視覚により要素を確認する例を示す説明図である。図8は、ビオトープ計画シミュレータの例を示している。ビオトープ計画シミュレータにおいては、等高線によって入力された地形、立体ブロックによって形づけられる建物の屋上や壁面に小川,池、樹木,草花などの構成要素を配置するものである。
【0073】図8において、最初に画面にユーザが選択した要素を平面レイアウト図で表示する(Sa)。これらの要素は、予め3次元数値モデルとして部品化されているので、ワンクリックで直ちに3次元コンピュータグラフィックスにより3次元鳥瞰図で画面に表示することができる(Sb)。また、ウォークスルーの機能により、3次元シミュレーションでユーザは画面上の視点を変えて自然環境を疑似体験できる(Sc)。
【0074】ユーザは、画面に表示された要素が希望に沿わない場合には、計画を変更し、変更された内容をワンクリックで画面上において確認することができる。計画者も、ユーザの目の前でリアルタイムにより自然環境の形態をつくりこみながら、ユーザニーズに適合したビオトープを完成することができる。
【0075】本発明においては、自然環境の要素を予め3次元数値モデルとして部品化している。このため、ユーザが要求する要素を画面に表示する際に、当該要素の四季の変化や経年変化、例えば樹木や草花の成長の様子なども確認することができる。したがって、ユーザは現状のみではなく、将来にわたり選択した自然環境の形態を確認できるので、自然環境を導入する際の参考とすることができる。
【0076】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、自然環境の創出、復元、保全において、ユーザが計画段階から参加できる自然環境導入計画支援システムを構成している。このため、創出した自然環境の利用の低下や維持管理の放棄という問題を減少させることができる。
【0077】また、本発明においては、以下のような特徴を有している。すなわち、(1)ユーザと計画者でユーザニーズを共有する。(2)ユーザの要望を反映した計画を短期間で作成する。(3)コンピュータグラフィックやウォークスルーによる完成時の自然環境を把握する。このため、ユーザ参加型の計画を効率的に実施することが可能となり、顧客満足度が高い計画を提案できる。
【0078】さらに、ユーザの目の前で画像表示によりリアルタイムで計画を進行させて、ユーザの関心を得やすい構成とすることができる。
【出願人】 【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目2番3号
【出願日】 平成14年2月27日(2002.2.27)
【代理人】 【識別番号】100109748
【弁理士】
【氏名又は名称】飯高 勉 (外8名)
【公開番号】 特開2003−250345(P2003−250345A)
【公開日】 平成15年9月9日(2003.9.9)
【出願番号】 特願2002−51000(P2002−51000)