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【発明の名称】 花卉用保水袋およびその成形方法
【発明者】 【氏名】河合 秀明
【住所又は居所】東京都千代田区岩本町三丁目10番7号 株式会社東京自働機械製作所経営企画部内

【要約】 【課題】花卉用の保水袋において茎の周囲を確実に液封し、また外圧等による漏水を防止する。

【解決手段】花卉用保水袋1は、その下部分に形成された貯水部2を有し、また、その上部分に区画して形成された上部ポケット8を有している。上部ポケット8はその上端に開口した注入口18を有し、また、その底には部分的に底抜けして形成された挿通口12を有している。切り花Fの茎Sは注入口18および挿通口12を通じて貯水部2まで差し込まれ、この状態で上部ポケット8内にコーキング剤14が充填されている。コーキング剤14は上部ポケット8内を埋め尽くし、茎Sの周りにて注入口18および挿通口12を閉塞する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内部に花卉の茎を受け容れ可能な袋本体と、前記袋本体の下部分にて給水液を貯留する貯水部と、前記袋本体の上部分に前記貯水部から区画して形成され、上端が前記袋本体の口にて開口する上部ポケットと、前記上部ポケットの底に形成され、その区画を部分的に底抜けさせることにより前記開口を通じて前記貯水部内に茎を差し込み可能とする挿通口と、前記上部ポケット内に充填して収められ、前記貯水部内に差し込まれた茎の周囲にて前記挿通口および前記開口を閉塞する充填材とを具備したことを特徴とする花卉用保水袋。
【請求項2】 前記袋本体は熱溶着性のフィルム包材からなり、前記上部ポケットの区画はフィルム包材のヒートシールにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の花卉用保水袋。
【請求項3】 熱溶着性のフィルム包材により状袋様の袋本体を形成する工程と、前記袋本体の上部分に、上端が開口し且つ部分的に底が抜けた上部ポケットを形成して前記袋本体の上部分と下部分とを区画する工程と、前記上部ポケットの上端開口および底抜け部分を通じて前記袋本体内に花卉の茎を挿通させるとともに、その下部分に給水液を注入する工程と、前記上部ポケット内に充填材を充填し、茎の周囲にて前記上部ポケットの上端開口および底抜け部分を閉塞する工程とからなる花卉用保水袋の成形方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、花卉に供給する給水液を漏らさずに保持しておくための花卉用保水袋およびその成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の保水袋に関する技術は、例えば特開平8−172910号公報や特開平8−172911号公報等に記載されている。前者の技術は、薄肉ゴム製等の柔軟性容器に液体を封入し、これに植物の茎を挿入して容器の口をその収縮力で閉止するものである。また後者の技術は、収縮力を有した素材からなる容器に液体を収容し、その口部を吸水性ポリマーにより閉止するものである。これら従来の容器によれば、切り花が水を吸うにつれて次第に容器が収縮し、その収縮力で水が茎に接触しやすくなるため、切り花への連続給水が容易であると考えられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の容器はその素材の収縮力で口を閉じているため、茎を挿入する際に容器に外圧が加わると容易に漏水する。また後者の容器は吸水性ポリマーを担持するために担体(スポンジ等)を必要とするため製袋作業が複雑化するし、粉末状のポリマーが充分な給水状態となるまで茎への密着性が弱く、その間は茎の安定性に欠けるという問題がある。
【0004】このため、例えば特開平10−4787号公報には別の容器が開示されている。この容器はその側部に形状保持用の補強部を有し、そして上部に茎径より小さい貫通用孔を有している。このうち補強部は外圧による容器の変形を抑制し、また貫通用孔は容器の素材による弾性力で逆止弁的に茎の周りを締め付けて茎を挿入する際の漏水を抑制するものとしている。しかしながら、この容器ではブロー成形等の樹脂成形法により補強部を設ける必要があるためコストが高くなるし、また、茎に凹凸があると貫通用孔が拡がり、そこから漏水しやすくなるという別の問題を有している。
【0005】そこで本発明は、茎の形状に関わらずその周囲を確実に液封し、また外圧等による漏水を防止できる花卉用保水袋およびその成形方法の提供を課題としたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、保水袋の袋本体に花卉の茎を差し込んだ状態でその周りに充填材を充填し、この充填材により袋本体の口を閉じることで上記の課題を解決している。具体的には、保水袋の袋本体は上下に区画され、それぞれ上部ポケットおよび貯水部が形成されている。貯水部には花卉用の給水液が貯留されており、袋本体に差し込まれた茎は給水液中に浸される。上部ポケットは上端が袋本体の口にて開口し、また底が部分的に底抜けに形成されて貯水部に通じている。花卉の茎は上端の開口および底抜け部分の挿通口を通じて袋本体に差し込まれる。この状態で上部ポケット内に充填材が充填されることにより、茎の周囲にて上端開口および挿通口が閉塞される。充填材は上部ポケット内にて茎の周囲を埋め尽くすことができ、これにより茎に瘤や棘があった場合でもその外面が確実にシールされる。
【0007】また熱溶着性のフィルム包材で袋本体を形成すれば、そのヒートシールにより貯水部や上部ポケットを容易に形成することができる。このため保水袋の成形過程は簡素且つ容易化され、生産性の高いものとなる。
【0008】
【発明の実施の形態】図1は、花卉用保水袋1の一実施形態を示している。この保水袋1には、例えば一輪の切り花Fが容れられている。切り花Fの品種には特に限定がなく、いろいろな品種に対応して保水袋1を成形することができる。なお切り花Fの背丈は概ね50cm〜60cm程度が好ましいが、切り花Fの品種や市場流通性を考慮して適度な背丈を設定することができ、それに合わせて保水袋1のサイズも決定される。
【0009】図1に示されるように、保水袋1には茎Sの切断端から一定長さの部分が挿通されている。また保水袋1の下部分には貯水部2が形成されており、この貯水部2には所定量の給水液Wが貯留されている。茎Sは貯水部2内に差し込まれて給水液Wに浸されている。なお給水液Wとしては、例えば水道水や薬液等の液体が適宜選択される。
【0010】保水袋1は例えば熱溶着性のフィルム包材からなり、その下端部に合掌シール部4が形成されている。合掌シール部4は対向するフィルム包材を互いにヒートシールすることにより溶着されており、この状態で保水袋1の下端を密閉している。この密閉された保水袋1の下部分に上述の貯水部2が形成されている。保水袋1の口にも同様の合掌シール部6が形成されているが、口は完全に閉塞されていない。具体的には、合掌シール部6は口のほぼ中央で途切れており、この途切れ部分にて開口している。茎Sはこの開口を通じて保水袋1内に差し込まれている。
【0011】保水袋1の上部分には上部ポケット8が形成されており、この上部ポケット8は一対のシール線10により上述の貯水部2から区画して形成されている。これらシール線10もまた、重なり合うフィルム包材を互いにヒートシールして形成されており、それゆえ貯水部2からシール線10を超えて給水液Wが移動することはない。
【0012】一対のシール線10はいずれも鍵形に折れ曲がり、袋本体の中心に関して対称に配置されている。各シール線10は上端が合掌シール部6に接続され、この合掌シール部6から垂れ下がっている。そして一対のシール線10の先端は所定の間隔を存して互いに対向している。これら先端間では、重なり合うフィルム包材が互いに溶着されておらず、このため上部ポケット8はその構造上、部分的に底抜けとなっている。この底抜けの部分は、図1に示されるように茎Sの挿通口12となり、茎Sは上部ポケット8の上端開口から挿通口12を通じて貯水部2に差し込み可能となっている。
【0013】図2に詳しく示されているように、上部ポケット8内はコーキング剤14で充満されている。コーキング剤14は上部ポケット8内を埋め尽くし、茎Sの周囲にてその上端開口と挿通口12とを閉塞している。またコーキング剤14はフィルム包材の内面になじんで強固に密着しているため容易には剥離しない。これにより給水液Wは貯水部2内にて密封され、保水袋1から漏れ出ることはない。
【0014】また茎Sに瘤や棘があったとしても、コーキング剤14はこれらの周りを埋め尽くすようにして上部ポケット8内に充填されているので、給水液Wを確実にシールすることができる。特に茎Sに棘があったとしても、その周囲がコーキング剤14により覆われているため、棘によってフィルム包材が突き破られることはない。
【0015】なおコーキング剤14としてはシリコン系のものが好ましく、このようなコーキング剤14は上部ポケット8内に充満された状態で、ある程度の弾力性を保持したまま固着することができる。ただし、コーキング剤14はシリコン系のものに限定されておらず、その他の適当な材料のものを用いることが可能である。一実施形態の保水袋1は例えば以下の手順により成形される。
【0016】先ず図3に示されるように、フィルム包材から状袋様の袋本体16を形成する。フィルム包材としては、例えばシーラント層を有した熱溶着性のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。チューブ状のフィルム包材であれば、その下端開口をヒートシールして上述の合掌シール部4を形成することで袋本体16が得られる。またプレーンフィルムであれば、これを2つ折りしたものに両側シールを施したり、重ね合わせた2枚のフィルムに三方シールを施したりして同様に袋本体16を形成することができる。
【0017】袋本体16の口に沿って一対の合掌シール部6を形成し、あわせて一対のシール線10を形成する。これにより袋本体16の上部分と下部分とが区画され、上部分に上部ポケット8が形成される。またこのとき袋本体16の下部分は貯水部2となる。上述のように、口のほぼ中央で一対の合掌シール部6は途切れているため、これらの間に袋本体16の上端開口、つまり、給水液Wおよびコーキング剤14の注入口18が確保されている。一方、上部ポケット8の底は上述の挿通口12により部分的に底抜けとなっている。
【0018】なお、以上の作業は袋本体16を形成した後に行ってもよいし、あるいは、袋本体16の成形と同時に合掌シール部6およびシール線10の形成を行うようにしてもよい。次に、図4に示されるように注入口18および挿通口12を通じて茎Sを差し込み、また貯水部2内に所定量の給水液Wを注入する。なお、ここでの茎Sの差し込みと給水液Wの注入はいずれを先に行ってもよいし、あるいは両者を同時に行ってもよい。
【0019】そして注入口18を通じてコーキング剤14を充填し、上部ポケット8内に充満させると図1の保水袋1が得られる。一実施形態の保水袋1によれば、上部ポケット8内で茎Sの周囲を覆い隠すようにしてコーキング剤14が充填されているので、茎Sに瘤や棘があっても給水液Wを確実にシールすることができる。また茎Sが直接フィルム包材に接触しないためフィルム包材が保護され、その破損を確実に防止することができる。
【0020】またコーキング剤14は固着してもある程度の弾力性を保持しているので、保水袋1に容れられた状態で切り花Fを輸送しても、その輸送過程における揺れや衝撃を緩和し、切り花Fを保護することができる。またコーキング剤14は、上部ポケット8内に隙間なく充満されるため貯水部2を気密的および水密的に封止し、外部からの雑菌類の進入を強固に防止することができる。このため保水袋1内での雑菌の発生率はきわめて低く、切り花Fの品質が長期間にわたって保持され、保水袋1はその保水力とともに切り花Fの日持ち保証を確実なものにすることができる。
【0021】また保水袋1に熱溶着性のフィルム包材を使用すれば、袋本体16や上部ポケット8の形成を容易に行うことができる。さらに保水袋1の成形過程において袋本体16の形成と合掌シール部6およびシール線10の形成を同時に行えば、成形時間の短縮化が可能となり、保水袋1の生産性が向上する。上述した各実施形態の保水袋およびその成形方法により得られる保水袋は、茎の外形に関わらず確実にその外面に密着して給水液を確実に密封することができる。また、保水袋に外圧が加わった場合にあっても液圧で口部分が拡大されることがなく、給水液が不所望に漏れ出ることはない。このため花卉の生産地から市場への出荷・流通過程において長期間にわたり給水液を保持することができ、切り花の日持ち保証を可能とする。また保水袋に収められた状態でも花卉の取り扱いが容易であり、切り花の運搬性や商品性を大きく向上することができる。
【0022】本発明は上述した実施形態に制約されず、各種の態様にて実施可能である。例えば袋本体を透明または半透明フィルムにより形成したり、袋本体に窓を設けたりして給水液の残量を視認可能としてもよいし、また袋本体の外面に原産地表示や商品表示等の文字情報や識別記号等を付してもよい。上部ポケット8の大きさや挿通口12、注入口18の大きさは特に制約がなく、花卉の規格に合わせてこれらの大きさを適宜設定することができる。また、合掌シール部やシール線等の成形過程においてフィルム包材をヒータブロックによりヒートシールしてもよいし、インパルスシールや超音波シール等を用いてもよい。
【0023】その他、上部ポケット8に充填される充填材は一実施形態のコーキング剤14に限られず、包材の材質や花卉の物性に合わせて適宜変更することができる。
【0024】
【発明の効果】本発明の花卉用保水袋は給水液を確実に密封し、各品種の花卉について長期間の日持ち保証を可能とする。また充填剤により花卉を保護するため輸送過程で花卉を損傷させたり、あるいは袋本体を破損させたりすることがなく、保水袋の信頼性や商品価値を大きく向上することができる。
【0025】特に熱溶着性のフィルム包材をヒートシールする場合は保水袋の成形が容易であり、安価で品質の高い保水袋となる。また本発明の成形方法は生産性が高く、その自動化への対応も容易である。
【出願人】 【識別番号】000151461
【氏名又は名称】株式会社東京自働機械製作所
【住所又は居所】東京都千代田区岩本町3丁目10番7号
【出願日】 平成14年2月28日(2002.2.28)
【代理人】 【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二 (外2名)
【公開番号】 特開2003−250344(P2003−250344A)
【公開日】 平成15年9月9日(2003.9.9)
【出願番号】 特願2002−53530(P2002−53530)