| 【発明の名称】 |
植生法面の再緑化方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】吉田 寛 【住所又は居所】東京都港区三田3丁目11番36号 東興建設株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】経済的かつ簡易な植栽工による植生法面の再緑化方法を提供する。
【解決手段】既存植生の生育する植生法面において、新たな苗木の被圧を回避するべく少なくとも該新たな苗木の植栽位置の周囲領域に生育する既存植生の刈取りを行う工程と、該刈取りを行った周囲領域における横断方向の中心線より谷側部分に対し該新たな苗木を植栽する工程とを有する植生法面の再緑化方法である。周囲領域の形状を、水平方向の長さよりも横断方向の長さの方が長い形状とし、また、刈取りを行った周囲領域における横断方向の中心線より山側部分の一部又は全部に対し再出芽抑制層を造成することが好適である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 既存植生の生育する植生法面において、新たな苗木の被圧を回避するべく少なくとも該新たな苗木の植栽位置の周囲領域に生育する既存植生の刈取りを行う工程と、該刈取りを行った周囲領域における横断方向の中心線より谷側部分に対し該新たな苗木を植栽する工程とを有することを特徴とする植生法面の再緑化方法。 【請求項2】 前記刈取りを行う前記周囲領域の形状を、水平方向の長さよりも横断方向の長さの方が長い形状とすることを特徴とする請求項1に記載の植生法面の再緑化方法。 【請求項3】 前記刈取りを行った周囲領域における横断方向の中心線より山側部分の一部又は全部に対し再出芽抑制層を造成することを特徴とする請求項1又は2に記載の植生法面の再緑化方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、既存植生の生育している法面等の傾斜地の再緑化方法に関する。 【0002】 【従来の技術】国土開発や自然災害等で生じ得る法面等(任意傾斜の斜面を含む)の傾斜地若しくは荒廃地等の裸地に対し、斜面安定、法面保護、植生回復等を図るために、法面緑化工が広く行われている(但し、法面等が不安定な場合を除く)。法面緑化工で多様されている植物としては、クリーピングレッドフェスク、オーチャードグラス、トールフェスク、ケンタッキーブルーグラス、ウィーピンググラブフラス、バミューダグラス、バヒアグラス、ホワイトクローバ等の外来草本類、ススキ、ヨモギ、イタドリ、メドハギ等の在来草本類、コマツナギ、ヤマハギ、イタチハギ等の木本植物がある。 【0003】法面緑化工を施された法面等の傾斜地(以下、「植生法面」と称する)において、導入された草本植生や木本植生のハギ類等のいずれかが優占したり、ススキ、クズ、セイタカアワダチソウ等が繁茂して植生遷移が停滞あるいは退行したりすることがある。斯かる状態に至ると、本来の植生工の目的すなわち、多様性のある木本植物群落の実現という目的が達成できない。以下、法面等の傾斜地において生育している導入植物である外来草本類、在来草本類及び木本植物並びに侵入植物である雑草類を「既存植生」と称する。 【0004】従来、上記のように植生遷移の停滞あるいは退行に至った植生法面を再緑化する手法としては、法面等に既に形成された草本植物や木本植物を刈り取った後、再度通常の法面緑化工を施工する方法や、既存の植生法面の表層を除去した上で法面緑化工を再施工する等の方法が行われている。 【0005】しかしながら、これらの土木工事を伴う再緑化方法は、多額の経費と工期、交通規制等の制約を伴う問題がある。この問題に対処する方法として、本出願人は、特に草本植生をより簡易に木本植物群落に再緑化する手法を、特開平8-284171号公報(特許第2857599号)に開示している。また、同じく草本植生の再緑化用の資材として、客土材と樹木種子を封入した植生筒袋を用いて、これを草本植生面に張り付けることによって木本植物による再緑化を図る製品等が市販されている。 【0006】上記特開平8-284171号公報に記載された方法は、法面緑化工により導入された外来草本類や、クズ、セイタカアワダチソウ等の侵入雑草の繁茂により、植生遷移が停滞あるいは退行した植生法面に木本植物を導入する方法であり、その概要は次の通りである。すなわち、既存植生面に天然鉱物質繊維及び生分解性プラスチック繊維から選択された繊維材を含む繊維質層を2〜5cmの厚さで吹付造成した後、その上に生育基盤を吹付造成する。また、前記繊維質層に接合材を混合する方法、前記繊維質層の代わりに出芽を抑制する程度の網目を有するネットを敷設する方法も開示している。これらの繊維質層又はネットは、既存植生の再出芽を抑制するための再出芽抑制層として機能する。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】ここで、法面緑化においては、緑化目標や法面の立地条件、気象条件等に応じて、具体的な植生工法として播種工か植栽工のいずれかが選択される。特開平8-284171号公報に開示された方法は、播種工によって既存植生を再緑化することを目的としているものである。従って、一般的に、全面施工となる播種工を適用できる場合には効果的な方法である。 【0008】しかしながら、植栽工を適用する場合には、植栽工は一般的に部分的な施工となることから、必ずしも全面的に再出芽抑制層を造成する必要はない。全面的に再出芽抑制層を造成することはコスト高を招く。従って、植栽工の場合は、より経済的、合理的な再緑化方法が要望されている。 【0009】さらに、再緑化が必要な法面の多くは、既に供用されている道路法面等であるので、再緑化施工時に大幅な交通規制を伴うことなく、極力簡易に施工できる方法が好ましい。 【0010】以上から、植栽工による再緑化方法における具体的要件として、次のものが挙げられる。 (1)植栽時に大量の刈り取った草や木等が発生しないことを要する。 (2)一般的に法面は大面積に及ぶことから、植栽後に定期的な管理を行うことは経費的、時間的にも難しいので、植栽後の定期的な管理が不要であることを要する。 (3)植栽に必要な最低限の範囲の既存植生を処理するだけで植栽可能であることを要する。 (4)植栽木を順調に成長させるために植栽後に植栽木周辺の既存植生により植栽木の被圧を回避できることを要する。 (5)特に、既存植生がヤマハギ群落、イタチハギ群落、コマツナギ群落等の木本植生の場合には、植栽木にこれらの既存木本植物が覆い被さることにより、植栽木が被圧を受ける問題があるため、刈り取ったこれらの既存木本植物の再出芽を抑制し、さらにこれらの既存木本植物が生長を回復させても植栽木が被圧を受けないようにする必要がある。 【0011】本発明の目的は、植生法面の再緑化方法において上記の要件を満足するような植栽工による再緑化方法を提供することである。すなわち、本発明は、法面等の傾斜地において、緑化工施工後に各種外来草本類、ハギ類等の在来草本類等の各種緑化用植物が優占する状態に至った導入植生法面や、植生遷移が停滞又は退行してススキ、セイタカアワダチソウ、クズ等の草本類が優占した既存植生法面に対し、木本植物をその中に導入することにより再緑化を行い、法面の植生遷移を促すことにより、生態系、環境及び景観の回復を実現する植生法面の再緑化方法を提供することである。 【0012】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するべく、本発明による植生法面の再緑化方法の実施形態は、既存植生の生育する植生法面において、新たな苗木の被圧を回避するべく少なくとも該新たな苗木の植栽位置(この時点では、植栽前であるので植栽予定位置である)の周囲領域に生育する既存植生の刈取りを行う工程と、該刈取りを行った周囲領域における横断方向の中心線より谷側部分に該新たな苗木を植栽する工程とを有する。好適には、上記実施形態において刈取りを行う前記周囲領域を、水平方向の長さよりも横断方向の長さの方が長い形状とする。また、好適には、上記実施形態において、前記刈り取りを行った周囲領域における横断方向の中心線より山側部分の一部又は全部に対し、再出芽抑制層を造成する。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。少なくとも一度は緑化工が施工された法面等の傾斜地における既存植生には、前述したように、各種外来草本類や、ヤマハギ、イタチハギ、コマツナギ等のマメ科植物に代表される緑化用植物が優占している場合、ススキ、クズ、セイタカアワダチソウ等の侵入雑草類が繁茂している場合が多く、これらの場合は、植生遷移が停滞して順調に進んでいないと云える。 【0014】近年では、地球温暖化の原因となる炭酸ガスを固定する手法として法面の樹林化が広く行われているが、上記のように植生遷移が順調に進んでいない場合にも、既存植生の樹林化を促すために木本植物を積極的に導入することが求められる。本発明においても、木本植物の導入のために植栽工を適用するものである。 【0015】既存植生の中に木本植物を植栽しようとする場合、先ず、作業性の点等で植栽工自体に支障があるため、既存植生を除去する必要がある。そこで、本発明では、新たな苗木の植栽位置の周囲領域に対し既存植生の刈取りを行う。この刈取りを行う範囲は、新たな苗木を植栽しようとする位置の周囲領域である。この周囲領域の刈取り面積は、一般的に、既存植生が草丈の短い草本植物であれば少なくて済むが、ススキ等のように草丈がやや高い植物の場合は草丈の短い植物に比べて広い範囲が望ましい。さらに、既存植生がハギ類等の木本植物である場合には、枝の覆い被さりも考慮してさらに広い面積が必要となる。このような条件を考慮して周囲領域の刈取り面積が設定される。 【0016】また、周囲領域の刈取り面積は、基本的には植栽木に十分太陽光線が当たる状態を確保できれば十分である。好適な刈取り面積は、通常、既存植生の状態、植栽する苗木の大きさや形状、植栽方法等から判断して決定される。刈取り面積は、特に限定しないが、刈り取られた草や木の発生量を最小限に抑えることを考慮すると、法面の横断方向(法面の上下方向、傾斜方向)及び水平方向(法面の左右方向)における当該刈り取られた周囲領域の長さが30〜200cm程度となるように設定することが好ましい。 【0017】植栽位置(植栽前にあっては植栽予定位置)の周囲領域の刈取りは、植栽時に支障となる既存植生を除去することのほか、植栽後に既存植生により新たな苗木が被圧を受けるのを回避する上で重要な意味をもつ。図1(A)〜(C)は、刈取りを行った植栽位置の周囲領域10の形状の実施例を示す図であり、法面に対して垂直な方向から見た図である。従って、図の上方は法面上部、下方は法面下部に相当する。 【0018】図1の各実施例に示すように、法面等の傾斜地において再緑化を図る場合、刈取りを行う周囲領域10の形状を、法面の水平方向の長さL1よりも横断方向の長さL2の方が長くなるような形状とすることが好適である。これにより、植栽木よりも法面上方側に位置する既存植生による被圧の影響や、刈取りを行った部分から再生した既存植生が植栽木を被圧する程度を最小限とすることが可能となる。 【0019】また、刈取りを行う周囲領域10の形状は、図1(A)に示す楕円形又は図1(B)に示す長方形が一般的である。尚、植栽位置は、後述するように周囲領域10の横断方向中心線15よりも谷側部分14内に設けられる。従って、周囲領域10の山側部分13が谷側部分14より広く確保できれば既存植生による被圧を防止する効果が向上することから、図1(C)に示す逆二等辺三角形の形状でもよい。植栽位置が、周囲領域10の横断方向中心線15よりも谷側部分14内に設けられる形状であれば、特別な形状に限定されない。 【0020】周囲領域10の刈取りを行った後、横断方向中心線15より谷側部分14(斜線部)に新たな苗木を植栽する。傾斜地では、斜面の山側の植物が谷側に傾斜することが多く、葉や枝等を谷側に下垂させることが一般的である。従って、刈取りを行った周囲領域10の横断方向中心線15上や、それより山側部分13に植栽すると、施工後短期間で既存植生による被圧を受けてしまうこととなる。そこで、周囲領域10の横断方向中心線15の谷側部分14内に植栽することにより、既存植生の下垂や覆い被さりによる被圧を、施工後長期間回避することが可能となる。 【0021】植栽位置は、谷側部分14内でも特に、水平方向中心線16の近傍部分17(網掛部)が好適である。従って、実際には、谷側部分14の中心部18が植栽位置として選ばれることが多い。尚、植栽木の植栽方法は、特に限定されず、芽出し苗、コンテナ苗、ユニット苗、成木苗等、あらゆる形状及び植栽方法を適用できる。 【0022】さらに、刈取りを行った周囲領域10内において、少なくとも植栽位置よりも山側においてその一部又は全部に再出芽抑制層を造成することが好適である。再出芽抑制層は、刈り取られた植物の再出芽を抑制し、さらに長期間に亘り植栽木の被圧を防止する役割を果たす。すなわち、再出芽抑制層は、既存植生の再出芽(再生)や、刈取り後に周辺から飛散した雑草種子等が発芽成立することを防止する。再出芽抑制層は、刈取りを行った周囲領域10の上を被覆(マルチング)できるものであればよく、具体的には、土嚢、各種マルチシート、繊維材等の吹付け、マルチ材による被覆等、公知の方法が適用できる。特に、土嚢を用いる方法は高い効果が得られる。 【0023】図2は、本発明による再緑化方法により施工した法面28の断面を模式的に示す図である。法面28上に刈取りを行った周囲領域22内の谷側部分に植栽木24を植栽し、植栽木24よりも山側部分25に再出芽抑制層23(土嚢等)を設けている。図示の例では、再出芽抑制層23を山側部分25全体ではなくその一部に設けているが、これは必要最小限の被圧防止策である。これにより、植栽木24への既存植生27の覆い被さりによる被圧を防止することが可能となる。再出芽抑制層23は、少なくとも植栽木24よりも山側部分25を被覆するように設けるべきであるが、谷側部分26を含む周囲領域22全体を被覆するように設けると最良である。 【0024】 【発明の効果】以上述べた通り、本発明により、各種緑化用植物や草本類(雑草)が繁茂したり、植生遷移が停滞若しくは退行したりしている法面等の傾斜地に対して木本植物を導入する再緑化方法が提示された。 【0025】本発明によれば、既存植生に対し必要最小限の面積の刈取りを行うだけで、植栽後の植栽木の被圧を長期間防止することが可能となり、極めて有用性の高い方法である。この結果、草本植生から木本植生への植生遷移を大幅に早めることが可能となり、温室効果ガスである炭酸ガスの固定、環境・景観の回復、向上、保全に寄与する質の高い緑への再緑化が実現可能となる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】392012261 【氏名又は名称】東興建設株式会社 【住所又は居所】東京都港区三田3丁目11番36号
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| 【出願日】 |
平成14年2月8日(2002.2.8) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100095267 【弁理士】 【氏名又は名称】小島 高城郎 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−235337(P2003−235337A) |
| 【公開日】 |
平成15年8月26日(2003.8.26) |
| 【出願番号】 |
特願2002−32934(P2002−32934) |
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