| 【発明の名称】 |
藻場の造成方法、育成部材及び藻場増殖礁 |
| 【発明者】 |
【氏名】鈴木 裕明 【住所又は居所】東京都千代田区六番町6番地28 住友大阪セメント株式会社内
【氏名】橘 紀久夫 【住所又は居所】東京都千代田区六番町6番地28 住友大阪セメント株式会社内
【氏名】棚橋 達治 【住所又は居所】東京都千代田区六番町6番地28 住友大阪セメント株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】従来は具体的には困難であった、アラメ、カジメ、クロメのうちいずれかの多年生褐藻類の確実な藻場造成が可能な方法を提供する。
【解決手段】多年生褐藻類の胞子を付着させ培養した種糸において目視により前記多年生褐藻類を胞子から幼葉が確認できるまで培養する初期培養段階S1と、その後、多年生褐藻類を育成する育成部を具備する育成部材に種糸を巻き付けた状態にして当該多年生褐藻類の根が種糸から育成部材に移り変わって活着したことを確認するまで実海域の水中にて海底に接することなく保持した多年生褐藻類を生育させる中間育成段階S2と、その後、その育成部材を実海域の海底に移設する移設段階S3とを経ることによって藻場を造成する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】アラメ、カジメ、クロメのうちいずれかの多年生褐藻類の胞子を付着させ培養した種糸において目視により前記多年生褐藻類を胞子から幼葉が確認できるまで培養する初期培養段階と、その後、前記多年生褐藻類を育成する育成部を具備する育成部材に前記種糸を巻き付けた状態にして当該多年生褐藻類の根が種糸から育成部材に移り変わって活着したことを確認するまで実海域の水中にて海底に接することなく保持した状態で多年生褐藻類を生育させる中間育成段階と、その後、その育成部材を実海域の海底に移設する移設段階とを経ることによって藻場を造成するようにしていることを特徴とする藻場の造成方法。 【請求項2】初期培養段階において、目視により幼葉が確認できるまで培養される多年生褐藻類の大きさは、3cm未満である請求項1記載の藻場の造成方法。 【請求項3】前記初期培養段階は、多年生褐藻類の胞子を付着させた種糸を、実海域の海中に沖出しして、又は陸上水槽内に入れて行う請求項1又は2記載の藻場の造成方法。 【請求項4】移設段階において、前記育成部材を、海底に沈設され自らアンカー機能を有するアンカー部材に取り付けて藻場増殖礁を形成することで、当該藻場増殖礁を主体とする藻場を造成するようにしている請求項1、2又は3記載の藻場の造成方法。 【請求項5】請求項1乃至4記載の藻場の造成方法において用いられる育成部材であって、アラメ、カジメ、クロメのうちいずれかの多年生褐藻類の胞子を付着させ培養した種糸を巻き付けて当該多年生褐藻類を育成する育成部と、水底に設置され自らアンカー機能を有するアンカー部材への取付部とを具備し、水底において自らはアンカー機能を有していないことを特徴とする育成部材。 【請求項6】前記種糸を巻き付ける面に凹凸形状を有する育成部を形成するとともに、当該種糸が巻き付けられない面を略平滑にしている請求項5記載の育成部材。 【請求項7】請求項1乃至4記載の藻場の造成方法において用いられる藻場増殖礁であって、アラメ、カジメ、クロメのうちいずれかの多年生褐藻類の胞子を付着させ培養した種糸を巻き付けて当該多年生褐藻類を育成する育成部を具備し水底において自らはアンカー機能を有していない育成部材を、自ら水底におけるアンカー機能を有するアンカー部材に取り付けてなることを特徴とする藻場増殖礁。 【請求項8】育成部材を、アンカー部材に対して着脱可能に取り付けるようにしている請求項7記載の藻場増殖礁。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、実海域における好適な藻場の造成方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】近時、主に海域において、水温や水質の変化、或いは海中の植食生物による食害等、硬い海藻類による柔らかい海藻類の締め出しによる新規の海藻類の付着困難など、様々な原因によって藻類が死滅してしまういわゆる磯焼け現象が問題となっている。このような要因のため、近海域における天然の藻場が急速に減少しつつあり、健全な藻場を回復することが海底の生物資源保護並びに沿岸漁業における急務となっている。そこで、藻場造成に関して、従来より様々な方法が試みられている。 【0003】例えば、特開平11−69924号公報に開示されている藻場造成方法は、既存の藻場における海藻類の増殖力等に着目して、既存の藻場そのものを人工基盤への海藻類の種苗の着生及び生育に利用するものである。この方法では、既存の藻場に重量物からなる資材を沈設して表面に海藻類を着生、成育させた後、この資材を回収して藻場を造成すべき場所に種資材として移設するとともに、その周囲に海藻類を着生させるべき他の資材を配して、種資材の海藻類を他の資材に増殖させて藻場を造成しようとするものである。しかしながら、海底に安定的に沈設できるほどの重量物である資材を、海藻類を着生させるべき種資材として利用するため、非常に重い種資材そのものを移設するには多大な費用を必要とするという問題がある。また、せっかく造成した藻場に磯焼けが生じると、新たに種資材を運搬したり、資材の表面に付着した石灰質を磨いて落とすための時間や手間、費用が非常に大きくなってしまうという問題もある。さらには、種資材は既存の藻場で海藻類を着生させるものであるため、目的とする海藻類が当初の予想通りに着生しなかったり、着生、生育しても植食生物による食害被害に遭う恐れもある。 【0004】このような方法による不具合を解消する方法として、例えば特開平10−33083号公報に開示されているような、海藻類の育成機能を有する部材と海底への安定設置のためのアンカー機能を有する部材とに分離した藻場増殖礁を用いた藻場造成方法も考えられている。このような方法では一般に、予め陸上の水槽内で種糸上において海藻類を発芽させ、海藻類が未だ幼苗の段階でその種糸を育成部材に取り付けて、その育成部材を海底のアンカー部材へ取り付けることで藻場造成のための藻場増殖礁を形成することを企図している。このような育成機能とアンカー機能とを別部材にする方法によれば、確かに海中での育成部材のアンカー部材への簡便な脱着操作の実現、高コストを要する陸上水槽での海藻育成の回避等を図り得るものと一応は考えられる。また、幼苗段階の海藻類が海底で食害を受けやすいという不具合を解消するために、種糸を取り付けた育成部材をアンカー部材へ取り付ける前の段階で、当該育成部材を実海域の海中に吊した状態にして食害を受けにくくなるまで海藻類を更に中間育成した後に、その海藻類が活着した種糸から乗り移った育成部材ごと海底のアンカー部材へ移設して藻場増殖礁を形成するという方法も試みられている。このような中間育成段階を経る藻場造成方法は、海藻類の食害被害を防止し、しかも陸上設備に多大なコストを要しないという点で、藻場造成に有用であると考えられている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】ところが、現実に藻場造成をする場合には、海藻種による生態の違い、陸上水槽から実海域へ移設する時期等の条件を最も適切なものとしなければならないが、上述のような一般的な方法では具体性に欠け、その方法を採用したからといって藻場造成が実際に成功するとは言い難い。 【0006】本発明者らは、アラメ、カジメ、クロメ等の自然な状態では岩の表面に根を張る多年生褐藻類を調査研究対象としたので、それについて具体的に説明すると、まず、種糸に付着させた海藻類がまだ十分に生育していない段階でその種糸を取り付けた育成部材を海底へ移設すると、植食生物の格好の餌食となる。このような多年生褐藻類の場合、十分に生育すると植食生物が嫌うフロロタンニン等の苦み成分を分泌するようになるが、幼苗の段階ではその苦み成分を分泌することができないため、ウミウシやウニ等の植食生物に食べられてしまう可能性が高い。また、種糸上の多年生褐藻類の幼葉が目視で確認できないほど小さい段階で、その種糸を育成部材に取り付けて実海域に出し中間育成を行っても、その種糸に珪藻等の付着物が付いてしまい、それによって発芽した幼葉が光合成を行うことができなくなり、十分に生育しないおそれが多分にある。さらに、多年生褐藻類が潮流により流されてしまわないようにするには、その根が種糸から育成部材に乗り移ってしっかりと張った、いわゆる活着した状態となることが望ましいが、中間育成前の初期培養の段階において種糸上で多年生褐藻類が生育し過ぎると伸びた根が丸まってしまい、種糸から育成部材への乗り移りができなくなってしまう。また、陸上水槽での培養には、濾過水を使用するために栄養塩が少なく、多年生褐藻類の育成に長期間を要することになるばかりか、陸上培養のための設備維持やメンテナンスにも多大な費用がかかるため、あまりに長期間に亘る初期培養は好ましくない。このようなことから、種糸上の多年生褐藻類を初期培養後に中間育成を開始するタイミングを見極めることが、藻場造成において極めて重要であることが、本発明者らの調査研究により明らかとなった。 【0007】そこで本発明は、以上のような問題に鑑みて、アラメ、カジメ、クロメといった多年生褐藻類の藻場を造成するに際して、多年生褐藻類の生育段階を的確に把握した育成方法を採用することで、これまでになく確実に藻場を造成することができる極めて現実的な藻場の造成方法を提供することを主たる目的とするものである。本発明はまた、当該藻場の造成方法に好適に用いられる育成部材並びに藻場増殖礁をも提供することを目的としている。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明の藻場の造成方法は、アラメ、カジメ、クロメのうちいずれかの多年生褐藻類の胞子を付着させ培養した種糸において目視により前記多年生褐藻類を胞子から幼葉が確認できるまで培養する初期培養段階と、その後、前記多年生褐藻類を育成する育成部を具備する育成部材に前記種糸を巻き付けた状態にして当該多年生褐藻類の根が種糸から育成部材に移り変わって活着したことを確認するまで実海域の水中にて海底に接することなく保持した状態で多年生褐藻類を生育させる中間育成段階と、その後、その育成部材を実海域の海底に移設する移設段階とを経ることによって藻場を造成することを特徴としている。 【0009】ここで、本発明において藻場造成の対象としたアラメ、カジメ、クロメといった多年生褐藻類は、自然環境では根を海底の岩石等の表面に伸ばして張り、そこで群落をなして藻場を形成する。これら多年生褐藻類の成体の寿命は約3年であり、また、夏期から秋期に掛けて水温が急低下する時期、具体的には10〜11月頃に胞子を放出し、世代交代する。本発明ではこのような多年生褐藻類の生態に着目し、人為的に藻場形成を行うのに最も適切な方法を見出した。 【0010】すなわち上述した本発明の藻場の造成方法において、まず初期培養段階では、種糸上で幼葉が目視できる程度の大きさになるまで多年生褐藻類を育成する。この程度の大きさになると、その後多年生褐藻類の中間育成を行うために実海域の海中において種糸に付着する珪藻等の付着物による光合成阻害の影響を受けることがない。ここで、目視により幼葉が確認できるまで培養される多年生褐藻類の大きさは、3cm未満であり、この大きさを越えると多年生褐藻類の根が伸びすぎて種糸からはみ出し、そのため根が丸まってしまう。また、この初期培養は、多年生褐藻類の胞子を付着させた種糸を、実海域の海中に沖出しして行ったり、陸上水槽内に入れて行うことが望ましい。実海域であれば大規模な陸上設備が不要であり栄養塩の多い新鮮な海水を多年生褐藻類に与えられるというメリットがあるし、陸上水槽では培養の管理を容易に行うことができるというメリットがある。 【0011】また、中間育成段階では、幼葉が目視で確認された種糸を育成部材に巻き付けて、種糸から伸びた多年生褐藻類の根が育成部材に移り変わったいわゆる活着した状態になったことを確認できるまで、多年生褐藻類を実海域の水中で育成する。すなわち、種糸からまだ多年生褐藻類の根が出ていない状態で、種糸を育成部材に巻き付けることで、根の育成部材への乗り換えを確実且つ容易にさせることができる。これは、種糸から根が伸びた状態となってからその種糸を育成部材に巻き付けても、根が既に丸まってしまっているため、育成部材への乗り移りができないからである。また、根が種糸から育成部材へ移り変わってしまうと、これら多年生褐藻類の本来の特徴である岩石等へ活着したのと同じ状態となって、育成部材にしっかりと根付いているため、葉が潮流を受けて生育した多年生褐藻類が育成部材から抜け落ちてしまう不具合も生じにくい。 【0012】ここで、多年生褐藻類の根は、育成部材に設けた所定の育成部に移り変わるようにしておくことが望ましい。また、この中間育成は、育成部材を海面から海中に吊り下げて行うことが好ましい。このようにすることで、中間育成している多年生褐藻類を海底に生息する植食動物(ウニ、ウミウシ、巻貝等)から物理的に隔離できるので、幼葉の食害を防止でき、さらに多年生褐藻類の生育に必要な日光や新鮮な海水を十分に与えることができるうえに、最適な海水温で育成するためには、育成部材の吊り下げ深さを海水温の変化に応じて変更することも容易となる。 【0013】さらに、移設段階においては、育成部材に活着した多年生褐藻類を、その育成部材ごと海底に移設して、その海底で多年生褐藻類の藻場を造成する。すなわち、既に育成部材に根を張り活着した多年生褐藻類は、ウミウシやウニ等の植食生物が嫌う苦みのあるフロロタンニン等の忌避成分を分泌することができるようになっているため、自己防衛機能を発揮することができ、食害被害を受けにくい。ここで、前記育成部材を、水底に沈設され自らアンカー機能を有するアンカー部材に取り付けて藻場増殖礁を形成することで、当該藻場増殖礁を主体とする藻場を造成するようにすることで、極めて安定した藻場の中核を得ることができる。 【0014】したがって、以上のような方法によって最終的に多数の育成部材を海底に移設すれば、従来は極めて困難であった各種の問題点をクリアして、海底に安定した多年生褐藻類の群落からなる藻場を確実に造成することができる。 【0015】なお、本発明においては、初期培養段階から中間育成段階へ移行する際の多年生褐藻類の生育状態を見極めることが特に重要であるため、初期培養段階において種糸上において目視により胞子から幼葉が確認できた段階で、前記中間育成段階を開始することに留意すべきである。また、この場合、中間育成段階から移設段階へ移行する際の多年生褐藻類の生育状態を見極めることが重要であるため、当該多年生褐藻類の根が種糸から育成部材に移り変わって活着したことを確認した段階で、前記中間育成段階を終えるべきである点にも留意する必要がある。 【0016】上述した藻場の造成方法において用いられ、軽量で取り扱いの容易な育成部材としては、多年生褐藻類の胞子を付着させ培養した種糸を巻き付けて当該多年生褐藻類を育成する育成部を具備し、水底において自らはアンカー機能を有するものを適用することが望ましい。このような育成部材を海底に直接移設すると、潮流によって育成部材が流されて藻場造成ができないおそれがあるが、この育成部材に、水底に設置され自らアンカー機能を有するアンカー部材への取付部を設け、この取付部を介して育成部材をアンカー部材へ取り付けるようにすれば、潮流による流失のおそれがない安定した藻場造成が可能となる。 【0017】さらに、これら多年生褐藻類は、自然では凹凸のある岩の表面に根を張るものであるため、前記種糸を巻き付ける育成部材の面に凹凸形状を有する育成部を形成することが好ましい。また、生育中の多年生褐藻類を枯死させることなく、より多数の育成部材を海中に保持して高効率な中間育成を実現し、アンカー部材へ育成部材の取付の便と安定した取付状態を得るためには、複数の当該種糸が巻き付けられない面を略平滑にするとよい。このようにすることで、中間育成段階においては、例えばその平滑な面同士を向かい合わせにして複数の育成部材を同時に海中に吊り下げることで、育成部材の取り扱い数を飛躍的に増大させることができる。また、移設段階では、アンカー部材において育成部材を取り付ける面を略平滑にしておけば、その面に育成部材の平滑面を合わせて載せることで、アンカー部材上の育成部材の安定化を図ることができる。 【0018】一方、上述した藻場の造成方法にでは、以上のように別部材であってそれぞれ機能の異なる育成部材とアンカー部材とから藻場増殖礁を構成し、この藻場増殖礁を中心として藻場造成を行うとよい。この場合、育成部材をアンカー部材に対して着脱可能に取り付けるようにしていると、例えば藻場増殖礁上で多年生褐藻類が寿命などで枯死したとしても、取り扱いの容易な育成部材のみを新たなものと交換することで新規に藻場造成を行うなど、メンテナンスが容易であるばかりでなく、藻場造成すべき海域への育成部材の運搬とアンカー部材の運搬とを、それぞれの重量に適した船を使って別々に行うことができるので、運搬コストの低減も可能となる。 【0019】 【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。 【0020】この実施形態は、多年生海藻類の一種であるアラメの藻場を造成するためのものである。図1に示すように、このアラメの藻場造成方法は大別して、陸上水槽を利用した初期培養段階S1、育成部材を使用した実海域での中間育成段階S2、及び育成部材を海底のアンカー部材へ移設して藻場増殖礁を形成する移設段階S3の三段階からなる。以下、各段階における方法を具体的に説明する。 【0021】まず、初期培養段階S1は、図1に示すように、アラメの採取S11、種付けS12、培養S13、幼葉の確認S14の四過程からなる。具体的に説明すると、まず、アラメの採取過程S11では、既存の天然若しくは人工のアラメ藻場から採取したアラメを、直射日光を避けて陸上に運搬し、比較的風通しのよい場所で陰干しする。陰干ししたアラメから水気がなくなると、その胞子がぬめりとして確認されるので、茎部を切り落とし、葉部のみを採取する。この陰干しに要する時間は一時間以内を限度とする。なお、アラメの採取時期は、アラメが胞子を放出する海水温が急低下する夏から秋にかけての時期、例えば10〜11月頃とするのがよい。 【0022】そして、種付け過程S12では、まず、種糸にアラメの胞子を付着させる。続いて、培養過程S13では、種糸に胞子を付着させた状態で、陸上水槽にて培養する。胞子から発芽したアラメの幼葉が1〜2mmを越えたことを目視にて確認すると、この種糸を沖出しする。さらに、幼葉の確認過程S14として、アラメCが3cm程度の大きさになったことを目視にて確認する。なお、種糸1の沖出しをせずに、この初期培養段階S1を全て陸上水槽で行うこともできるが、その場合は種糸1を浸す濾過水の交換作業や温度管理に留意すべきである。 【0023】次に、中間育成段階S2は、図1に示すように、育成部材への種糸の巻付け過程S21、育成部材の海中吊り下げによるアラメ育成過程S22、アラメの葉長確認過程S23の三過程からなる。ここで、この中間育成段階S2は、図2に示すような育成部材2を用いて行う。この育成部材2は、例えば約10cmX25cmの平面視概略長方形状をなし5cm程度の厚みを有する一体成型品であるコンクリート板を主体としてなるもので、その重量は約1.5〜2kgである。この育成部材2には、中央部に厚み方向に貫通する直径2cm程度の貫通孔21を設けており、上面における前記貫通孔21の両側端部側にそれぞれ瘤状に表面を隆起させた隆起部22を形成している。さらにこの隆起部22の裾部分には、一般的なボルトの頭部及び軸部の形状を模した第1突起部23をそれぞれ4つずつ上方に突出させて設けている。また、この第1突起部23よりも高位置となる隆起部22の表面に自然石の形状を模した凹凸形状からなる複数の第2突起部24を上方に突出させて設けている。第1突起部23は、ボルトの頭部に相当する上端部が軸部に相当する下端部よりも平面視形状が大きいものであるため、上端部の下向面が隆起部の表面と対向する逆勾配23aとなっている。これら第1突起部23及び第2突起部24を含む隆起部22は、アラメAの根を活着させてアラメAを育成するための育成部2aとしての機能を有するものである。さらに、この育成部材2の上面における両側端部には、例えば木製の小片25をコンクリートの成型時にそれぞれ予め埋め込んで固定している。この小片25には、育成部材2の長手方向と略合致する方向に上方に開口する種糸1を掛止するための切り込み部25aを二つ形成している。また、前記2つの隆起部22間において貫通孔21を通過する平滑な部位を、後述するアラメ育成過程S22において育成部材1を海中に吊り下げる際に使用するロープ等の吊下具を沿わせて通過させるための通路26としている。 【0024】そして、前記初期培養過程S1で葉長3cm未満の大きさに生育したアラメAが付着している種糸1を、前記巻付け過程S21として、図3に示すように育成部材2に取り付ける。具体的には、種糸1の両端部の間の部位を第1突起部23の逆勾配23aに巻回し、その第1突起部23と第2突起部24の間及び第2突起部24同士の間を隆起部22の表面に沿わせた上で、種糸1の両端部を前記切り込み部25aに差し込んで掛け止める。この段階で、アラメAの根は未だ十分には伸びておらず、丸まっていない。 【0025】このように種糸1を取り付けた育成部材2を、次のアラメ育成過程S22において、実海域の海中にてアラメAの中間育成を行う。具体的には図4に示すように、海面Rに浮かべた筏X1等の浮体から漁業用ロープX8を海中Rに垂下させ、そのロープX8に育成部材2を保持させて海中Rに吊り下げた状態とする。この吊り下げに際しては、好ましくは、二枚の育成部材2を裏合わせにするとともに、それらの厚み方向を水深方向に略一致させた縦向きの姿勢として、部分的に撚りを解いたロープX2を前記隆起部22同士の間の通路26に添接させて挟み込むようにしている。さらに育成部材2のロープX2からの脱落を防止するために、前記貫通孔21に結束バンド(図示省略)を挿通し、その結束バンドをロープX2に拘束する。このようにすることで、育成部材2の裏面へのフジツボ等の付着防止を図るとともに、より多数の育成部材4を同時に吊り下げられるようにしている。しかして二枚一組の育成部材2を一本のロープX2に高さを異ならせて複数取り付け、さらに筏X1には多数のロープX2を結わえることによって、約2000枚の育成部材2を海中に吊り下げる。このように育成部材1の吊り下げを一定期間、例えば1ヶ月程度継続すると、アラメAが急速に生長し、やがて根を育成部材2上で育成部2aに伸ばして第1突起23や第2突起24に掴まるように種糸1から乗り移り、育成部材1に活着することになる。そして、葉長の確認過程S23として、アラメAの葉長が最大10cm程度にまで生長していることを確認する。アラメAはこの大きさになると、フロロタンニン等の海底の植食生物に対する忌避成分を分泌することができるので、自己防衛機能を発揮して食害を防止できるとともに、根が育成部材2に活着していることで、潮流により育成部材2から抜け落ちてしまうこともないため、海底Pに移設するのに適した状態となっている。 【0026】最後に、移設段階S3は、図1に示すように、育成部材の引き上げ過程S31、育成部材の運搬過程S32、藻場増殖礁の構築過程S33、藻場造成過程S34の四過程からなる。まず、育成部材の引き上げ過程S31としては、前記葉長の確認過程S23でアラメAが所定の大きさまで生育して育成部材1に活着したことを確認した後、漁船上に育成部材1を引き上げる作業を行う。そして、育成部材の運搬過程S32として、アラメAの藻場を造成すべきところとして設定した海域まで育成部材1を運搬する。 【0027】ここで、藻場造成を行う海域の海底Pには、例えば図5に示すようなアンカー部材3を予め沈設している。このアンカー部材3は、板状コンクリートブロックからなる台座部31と、台座部31を上下に貫通する柱状部32と、柱状部2の上端部に配設される横架材33とから主として構成されるものである。台座部31は、例えば一辺が120cm程度の平面視正方形状をなし、約20cmの厚みを有する重量約700kgのものであり、海底Pにおいて安定設置されるものである。柱状部32は、台座部31の四隅から内寄りの位置にそれぞれ約90cmの間隔で台座1を略垂直に貫通する長さ約80cmのL字型鋼材からなるものである。ここで、L字型鋼材としては、例えば横断面の一辺が約10cmで厚さが約1cmの汎用のものを使用している。この柱状部32の下端部は、台座1の裏面から下方に約20cm突出しており、例えば海底Pが砂地盤である場合に当該砂地盤に突き刺さるスパイクとしての機能を有している。また、台座部31の上面から上方に約40cm突出する柱状部32の上端部に横架材33を溶接等により取り付けている。この横架材3は、柱状部2に用いたものと同様の約100cmの長さを有するL字型鋼材であり、二つの面をそれぞれ上方及び側方に向けた姿勢で、隣接する柱状部32の上端部間を接続している。そして、柱状部32に取り付けた横架材33の上面及び側面には、それぞれ所定間隔で2本及び3本の育成部材2の取付用ボルト34を各面と直交する方向に溶接などして取り付けている。また、台座部31と横架材33との間には、各柱状部32の台座部31からの上方への突出高さによって、高さが約30cm、幅及び奥行きがそれぞれ約80cmの大きさの空間3sが形成されることになる。 【0028】そして、前記育成部材2及びアンカー部材3からなる藻場増殖礁4の構築過程S33として、当該アンカー部材3が沈設されている海域に運搬してきた育成部材2を、潜水したダイバーなどの手によって、アンカー部材3に取り付ける。その取付に際しては、図5に示すように、育成部材2を、その貫通孔21に横架材33に設けたボルト34を挿入した状態で、ボルト34の先端部に樹脂製蝶型ナット35を螺着することによって、アンカー部材3に取り付ける。このようにして、図5及び図6に示すような着脱式の藻場増殖礁4が構築される。このような藻場増殖礁4では、前記空間3sの存在によってアンカー部材3が受ける潮流からの受動圧力を軽減できるとともに、砂地盤の海底Pに突き刺さった柱状部32がスパイク機能を奏しているため、潮流によって傾いてしまう等の不具合を回避することができる。 【0029】さらに、藻場造成過程S34として、上述したような藻場増殖礁4を中心として、アラメAの藻場を形成する。その際、例えば図6に示すように、藻場増殖礁4の周囲に、自然石やコンクリートブロック等X3を沈設しておき、藻場増殖礁4で生長したアラメAから放出された胞子をその自然石等X9に付着させるようにすることで、藻場の拡大を図ってもよいし、藻場増殖礁4をその海底Pに多数沈設してもよい。以上のような方法を経ることで、アラメAの藻場を確実に造成することができる。 【0030】なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば育成部材やアンカー部材の形状や大きさ、数などは、それらが使用される海域の条件や造成する藻場の規模等に応じて適宜変更することができる。また、本発明の方法と同様の方法によって、アラメ以外にも、カジメやクロメといった多年生褐藻類の藻場育成を行うことができる。その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。 【0031】 【発明の効果】以上に詳述したように、本発明に係る多年生褐藻類の藻場の造成方法によれば、初期培養、中間育成、海底への移設という段階を経るようにしており、アラメ、カジメ、クロメといった多年生褐藻類の生態に着目して、特に各段階の移行時に適した多年生褐藻類の生長段階を見極めるため、極めて具体的に確実な藻場造成を行うことが可能である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000183266 【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社 【住所又は居所】東京都千代田区六番町6番地28
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| 【出願日】 |
平成14年2月4日(2002.2.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100085338 【弁理士】 【氏名又は名称】赤澤 一博 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−225025(P2003−225025A) |
| 【公開日】 |
平成15年8月12日(2003.8.12) |
| 【出願番号】 |
特願2002−26593(P2002−26593) |
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