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【発明の名称】 屋上緑化用植栽基盤及び屋上緑化用植栽構造
【発明者】 【氏名】江藤 清光
【住所又は居所】愛知県尾張旭市下井町下井2035番地 クリオン株式会社内

【氏名】橋本 整
【住所又は居所】大阪府大阪市北区曽根崎新地1−3−16 クリオン株式会社大阪支店内

【氏名】中村 貴一
【住所又は居所】大阪府門真市末広町8番13号 大日化成株式会社内

【氏名】山下 律正
【住所又は居所】岡山県勝田郡勝央町黒土115−1 大日化成株式会社岡山工場内

【要約】 【課題】従来に比べて軽量で、低アルカリ度のpHを有するとともに、保水性と排水性のバランスに優れた基盤層から構成される屋上緑化用植栽基盤及び屋上緑化用植栽構造を提供することを目的とする。

【解決手段】軽量気泡コンクリート(ALC)板1の上面に植物21と土壌22を含む植栽層2を積層することにより、本発明の屋上緑化用植栽基盤Aを構成する。また、屋上緑化用植栽基盤Aと、この屋上緑化用植栽基盤を敷設するスラブ面6との間にスペーサー5を設けることにより、本発明の屋上緑化用植栽構造を構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 軽量気泡コンクリート(ALC)板の上面に植物と土壌を含む植栽層が積層されていることを特徴とする屋上緑化用植栽基盤。
【請求項2】 ALC板は、嵩比重が0.2〜0.6の範囲にあり、pHが8〜10の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の屋上緑化用植栽基盤。
【請求項3】 ALC板は、水分吸水率が40〜120wt%の範囲にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の屋上緑化用植栽基盤。
【請求項4】 ALC板は、その内部に連続気孔を30%以上含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の屋上緑化用植栽基盤。
【請求項5】 前記植栽層は、これを構成する土壌が植生シートで被覆されており、この植生シートはALC板に固定されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の屋上緑化用植栽基盤。
【請求項6】 ALC板は、その上面に条溝または下方に向かって縮径する凹部が形成され、前記条溝または凹部には、ALC板の下面まで貫通する排水路が形成されるとともに、前記排水路の下端に設けられた排出口には、植栽層を構成する土壌の落下を防止するための土壌止め部材が貼着または嵌め込まれていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の屋上緑化用植栽基盤。
【請求項7】 ALC板は、その厚みが30〜50mmの範囲にあり、植栽層を構成する土壌は、その厚みが3〜30mmの範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の屋上緑化用植栽基盤。
【請求項8】 前記植栽層を構成する土壌は、ALC板の上部に設けられた土壌保持部材によって保持されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の屋上緑化用植栽基盤。
【請求項9】 前記土壌保持部材は、ALC板の周縁部に設けられた土壌止め枠であることを特徴とする請求項8に記載の屋上緑化用植栽基盤。
【請求項10】 土壌止め部材は、排水が通過可能な編織物または不織布から選ばれる透水布であり、この透水布がALC板の下面に設けられた排出口に貼着されていることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれかに記載の屋上緑化用植栽基盤。
【請求項11】 土壌止め部材は、断面略T字型の栓材であり、この栓材がALC板の下面に設けられた排出口に、排水可能なように嵌め込まれていることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれかに記載の屋上緑化用植栽基盤。
【請求項12】 請求項1から請求項11のいずれかに記載の屋上緑化用植栽基盤と、この屋上緑化用植栽基盤を敷設するスラブ面との間にスペーサーを設けたことを特徴とする屋上緑化用植栽構造。
【請求項13】 スペーサーは、前記栓材の下面と一体的に接合されていることを特徴とする請求項12に記載の屋上緑化用植栽構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は屋上緑化用植栽基盤及び屋上緑化用植栽構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、建造物の屋上、ベランダ等に用いられる屋上緑化用植栽基盤が種々提案されており、植栽層に対する基盤層としては、通常ポーラス(多孔質)コンクリートを用いたものが種々提案されている。また、屋上緑化を行なう場合、施工後の潅水等のメンテナンスを省力化するため、耐乾燥性を有する植物が多用されるようになっている。
【0003】さらに、近年植栽基盤の施工後に植物の生育を待つよりも、施工終了時点ですでに屋上緑化をある程度または完全に完了していることが要求されることもある。そこで、このような要望に応えるため、あらかじめ植物を生育させた植栽層をポーラスコンクリートからなる基盤層の上に積層、固定化した植栽基盤も提案されている。
【0004】しかし、ポーラスコンクリートは、排水性は良いが保水性が悪いため、そのまま使用すると植物が生育するための水分が不足しやすく、常時潅水して水を補給するか、あるいはポーラスコンクリートの空隙部分に土壌材や保水材等を充填して保水性を向上させる必要があった。しかし、常時潅水する場合、施工後のメンテナンスの負担が大きくなる。一方、保水材等を充填する場合、基盤層の製造工程が複雑になるとともに製造コストも上昇する等の問題点があった。
【0005】また、ポーラスコンクリートはpHが12程度とアルカリ度が高いため、植物の生育に好ましくないという問題点もあった。この問題を改善するため、コンクリート表面に薬剤または樹脂等を塗布することにより、高アルカリ度の元になる水酸化カルシウムが内部から流出するのを防止する試みも行なわれている。しかし、かかる処理によってもその実用上の効果は十分とは言い難かった。さらに、ポーラスコンクリートは通常2000kg/m3と比較的重たいため、取扱い性が悪く、迅速な施工を行なう上で妨げとなっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、従来に比べて軽量で、低アルカリ度のpHを有するとともに、保水性と排水性のバランスに優れた基盤層から構成される屋上緑化用植栽基盤及び屋上緑化用植栽構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の屋上緑化用植栽基盤は、軽量気泡コンクリート(ALC)板の上面に植物と土壌を含む植栽層が積層されていることを特徴とする。また、上記のALC板は、嵩比重が0.2〜0.6の範囲にあり、pHが8〜10の範囲にあることが好ましい。また、上記のALC板は、水分吸水率が40〜120wt%の範囲にあることが好ましく、また、その内部に連続気孔を30%以上含むことが好ましい。
【0008】また、前記植栽層は、これを構成する土壌が植生シートで被覆されており、この植生シートはALC板に固定されていることが好ましい。また、本発明で用いるALC板は、その上面に条溝または下方に向かって縮径する凹部が形成され、前記条溝または凹部には、ALC板の下面まで貫通する排水路が形成されるとともに、前記排水路の下端に設けられた排出口には、植栽層を構成する土壌の落下を防止するための土壌止め部材が貼着または嵌め込まれていることが好ましい。また、上記のALC板は、その厚みが30〜50mmの範囲にあり、植栽層を構成する土壌は、その厚みが3〜30mmの範囲にあることが好ましい。また、上記植栽層を構成する土壌は、ALC板の上部に設けられた土壌保持部材によって保持されていることが好ましい。この土壌保持部材としては、ALC板の周縁部に設けられた土壌止め枠が好ましい。
【0009】また、上記の土壌止め部材は、排水が通過可能な編織物または不織布から選ばれる透水布であり、この透水布がALC板の下面に設けられた排出口に貼着されていることが好ましい。また、上記の土壌止め部材は、断面略T字型の栓材であり、この栓材がALC板の下面に設けられた排出口に、排水可能なように嵌め込まれていることが好ましい。また、本発明の植栽構造は、上記の屋上緑化用植栽基盤と、この屋上緑化用植栽基盤を敷設するスラブ面との間にスペーサーを設けたことを特徴とする。このスペーサーは、上記栓材の下面と一体的に接合されていることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の屋上緑化用植栽基盤の一実施例を示したものである。屋上緑化用植栽基盤Aは、ALC板1の上面に植物21と土壌22を含む植栽層2が積層されることにより、基本的に構成される。
【0011】本発明で用いるALC板1は、屋上緑化用植栽基盤の基盤層としての役割を有するものであり、一般的にケイ酸質原料、石灰質原料等の主原料に発泡剤と水を加え、これを内部に補強筋を配置した型枠内に流し込んで半硬化体とし、この半硬化体を高温高圧蒸気養生することにより製造されるものである。
【0012】ここで、「高温高圧蒸気養生」とは,オートクレーブ養生とも称され、常圧より高い圧力下で高温の水蒸気を用いて行なう蒸気養生を意味する。本発明においては、例えば上記の半硬化体となったコンクリートを一定の温度勾配で昇温して、180〜190℃、10〜11気圧程度の等温等圧条件を所定時間(3〜5時間程度)保持することにより、オートクレーブ養生が行なわれる。
【0013】また、本発明においてALC板1を構成する原材料は特に限定されるものではないが、代表的なものを例示すると、ケイ酸質原料としてはケイ石、ケイ砂等が好ましく用いられ、石灰質原料としては生石灰とセメント等が好ましく用いられる。また、発泡剤としては、金属アルミニウム粉末等が好ましく用いられる。また、補強筋としては、ラス筋、メッシュ筋等が好ましく用いられる。
【0014】本発明で用いるALC板1は、嵩比重が0.2〜0.6の範囲にあることが好ましい。嵩比重をかかる範囲に設定することにより、従来よりも軽量で取扱い性に優れた基盤層とすることができ、簡易迅速な施工が可能になる。本発明においては、ALC板1の内部に無数の小さい気孔が存在するので、ALC板1の軽量化を容易に達成することができる。
【0015】本発明において、気孔の形態は特に制限されるものではなく、独立気孔でも連続気孔でも好ましく用いられる。ここで、本明細書において「連続気孔」とは、独立気孔が3つ以上連続したものをいい、本発明では、全ての気孔に対する連続気孔の割合が30%以上の範囲にあることが好ましく、40%以上の範囲にあることが更に好ましい。
【0016】また、ALC板1は、その外表面にも上記の気孔が形成されていることが好ましい。外表面に気孔が形成されることにより、植栽層2を構成する植物21の根がALC板1の内部に侵入しやすくなり、この結果、植栽層2とALC板1とが強固に固定されることになる。
【0017】また、本発明で用いるALC板1は、上記の如く無数の小気孔が存在することにより、熱伝導率が極めて小さく、通常のポーラスコンクリートに比べて断熱性が10倍程度高い。このため、ALC板1の内部では、季節による温度変化が緩和されるので、植物の根がALC板1の内部に固定された場合には、従来よりも植物の生育に適した温度環境が実現できる。
【0018】また、本発明で用いるALC板は、pHが8〜10の範囲にあることが好ましい。pHをかかる範囲に調整することにより、ポーラスコンクリート(pH12程度)に比べてアルカリ度が大幅に低下するので、従来よりも植物の生育に優れた基盤層とすることができる。
【0019】本発明では、オートクレーブ養生を行なうことにより,常温ではまったく不活性なシリカでもカルシウムと化合して強固なケイ酸カルシウム水和物という安定した化学反応物が生成し、一方で高アルカリ度の元になる水酸化カルシウムの生成が抑制されるので、ALC板1のpHを従来のポーラスコンクリートよりも低下させることができる。
【0020】さらに、本発明で用いるALC板は、従来のポーラスコンクリートと比較して、空気中のCO2と組織内部のケイ酸カルシウム水和物とが反応してCaCO3が生成する、いわゆる炭酸化が進行しやすく、施工後速やかにpHが中性化されるので、植物の生育に適した環境が実現できる。なぜなら、ポーラスコンクリートは、組織内部に空気中のCO2が進行しにくいのに対し、ALC板は無数の小気孔がその外表面及び内部に存在するため、組織内部に空気中のCO2が進行しやすいからである。
【0021】また、本発明で用いるALC板1は、排水作用とともに適度な吸水ないし保水作用も有するものである。すなわち、ALC板1は、上述した保水材等を充填することなく、それ自身が植栽層に対する基盤層として好適な保水作用を有する。このALC板1の内部で保水された水分は、植物への水分補給に用いられるため、施工後の潅水等のメンテナンスを軽減することができる。なお、ALC板1の水分吸水率は、40〜120wt%の範囲にあることが好ましく、100〜120wt%の範囲にあることが更に好ましい。水分吸水率をかかる範囲に設定することにより、保水性と排水性のバランスに優れた屋上緑化用の基盤層として好適に用いることができる。
【0022】ここで、「水分吸水率」は、標準乾燥状態(20℃、60%RHで乾燥、含水率;約10重量%)の供試体(ALC板1)を用いて、供試体の全面または下部を20℃の条件で水中に浸漬し、供試体の重量変化がなくなるまで浸漬試験を行なうことにより算出することができる。上記の浸漬試験が終了した後、浸漬後の供試体重量を浸漬前の供試体重量で除したものに100を乗じて水分吸水率を算出する。ALC板1の水分吸水率は、ALC板1の気孔含有率を調整することにより、容易に制御することができる。
【0023】本発明に用いるALC板1を屋上緑化用の基盤層として実際に適用するには、取扱い性を考慮して正方形とすることが好ましく、大きさとして縦600mm×横600mmが最適である。また、ALC板1の厚みは、30〜50mmの範囲が好ましく、30〜40mmの範囲が更に好ましい。厚みが30mmを下回るとALC板自体の強度が不足するので好ましくない。一方、厚みが50mmを上回るとALC板1が重くなり、本発明の目的の一つである軽量化を達成できなくなる。
【0024】続いて、ALC板1の上面及び内部に設けられる構造について説明する。本発明に用いるALC板1は、その上面に植物の根が定着しやすい形状を有する凹部や条溝などを設けることが好ましい。凹部としては、図2に示すように、縦横に等間隔に配置された、ALC板の下方に向かって縮径するクレーター状の凹部11が好ましく用いられる。この凹部11の間隔は50〜200mmの範囲に設定することが好ましい。また、凹部11の直径は少なくとも50mm以上とすることが好ましく、凹部の深さは10〜20mmの範囲に設定することが好ましい。このようにクレーター状の凹部11を設けることにより、植物の根が凹部11に入り込んで定着しやすくなるとともに、水が集水されやすくなる。
【0025】また、条溝としては、図3に示すように、縦横に碁盤上に配置された直線状の条溝12が好ましく用いられる。この条溝12の間隔は、5〜200mmの範囲に設定することが好ましい。また、条溝12の溝構造は、下方に向かって幅狭となるように傾斜構造とすることが好ましく、また溝幅は2mm以上、その深さは5mm以上とすることが好ましい。溝幅と深さをこのような範囲に設定することにより、植物の根が条溝12に入り込んで定着しやすくなる。
【0026】また、上記の凹部や条溝には、ALC板1の下面まで貫通する排水路が設けられることが好ましい。図2(b)を用いて説明すると、各々の凹部11にはALC板の下面まで直線的に貫通する排水路13を設けることが好ましい。また、この排水路13の形状は、断面を円形とすることが一般的に好ましく、さらに排水路13の口径はALC板の上下にわたって均一に形成されることが好ましい。
【0027】本発明では、この排水路13の口径は少なくとも20mm以上にすることが好ましい。排水路13を上述の如く設計することにより、排水作用とともに植物の根を効率よく誘導することができる。また、このようにして排水路13内に誘導された植物の根は、排水路13の外部表面に形成された小気孔を介してALC板1の内部に入り込むことができる。これにより、植物の根がより強くALC板に固定されるとともに、ALC板1から効率的に水分が供給される。
【0028】また、上記の排水路13の下端、すなわちALC板1の下面に設けられた排出口14には、植栽層2を構成する土壌の落下を防止するため土壌止め部材4が貼着または嵌め込まれていることが好ましい。かかる土壌止め部材4を上記排出口14に貼着等することにより、例えば雨水等の排水に混じった土壌が排水路13を伝って建物の屋上等のスラブ面に落下することを防止できるため、スラブ面を良好な状態に維持することができる。
【0029】上記の土壌止め部材4としては、土壌の落下を防止することができ、さらに排水が可能な構造を有するものであれば特に制限されずに用いることができる。本発明では、このような要求を満たすものとして汎用樹脂を原材料とする編織物または不織布から選ばれる透水布41が好ましく用いられる。図4は、土壌止め部材として透水布41を用いた場合の実施例を示したものである。
【0030】また、土壌止め部材4の他の好ましい実施形態としては、断面略T字型の栓材42を挙げることができる。具体的には、屈曲部を一部に有する細幅で薄厚の複数の線部材42aと円形凸部42bを備えた平板42cとから構成される栓材42を挙げることができる(図5参照)。この栓材42は、円形凸部42bの周側面に、線部材42aの一端が、その屈曲部を外部に向けて垂直方向に接合されて構成されることが好ましい。また、上記円形凸部42bは、上述した排出口14よりやや小径に設計することが好ましい。
【0031】この栓材42を用いた場合、線部材42aが排出口14から挿入されると、排出路13の壁面を外部方向に押圧する弾性力が線部材42aに働くことにより、結果として、栓材42が排出口14に嵌め込まれる。また、栓材42を用いる場合、平板42cがALC板1の下面に密着するまで挿入せずに、少し隙間を開けて、この隙間に上述した透水布41を挟持させるように用いることが好ましい。このような使用方法を採用することにより、土壌の落下を防止することができるとともに、排水を可能にすることができる。
【0032】次に、ALC板1の上面に積層される植栽層2について説明する。本発明で用いる植栽層2は、植物21と土壌22を含むものであり、植物21の根が土壌22内部に進入して絡み合うことにより、植物21の根と土壌22とが一体化した植生土壌層として構成されるものである。
【0033】また、植栽層2の別形態として、植栽層を構成する土壌22が植生シート3で被覆された形態を採用することもできる。この植生シート3を用いることにより、植物21の根と土壌22の一体化が増強され、風の影響で土壌が飛散しにくくなるとともに、外から飛来してくる雑草などの種の発芽を防止することができる。
【0034】植生シート3としては、機械的強度がある程度大きく、植物の成長を妨げることがないように三次元的な空間が形成されていることが好ましく、例えば、編物、織物または不織布等から構成される布材が好ましく用いられる。この布材を構成する繊維原料としては、綿、麻、ジュート等の天然繊維、またはポリオレフィン、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、レーヨン等の合成繊維が好ましく用いられる。また、植生シート3に伸縮性を付与する場合は、上記繊維体と弾性体(例えば、ゴム)との複合品、あるいは上記繊維体と軟質スポンジ(例えば、ウレタンスポンジ、アクリルスポンジ、セルローススポンジ)との複合品を用いることができる。
【0035】また、上記の植生シート3を用いる場合、例えば土壌22の上から植生シート3を重ね合わせ、次いで播種、播苗、挿し木等を行なうことにより植物を生育養生する方法が、好ましい実施態様として挙げられる。これにより、植物21の根が植生シート3に絡みつき易くなるので、土壌22内部と植物21の根が、より一層強固に結合されるとともに、土壌22のかたよりを防ぐこともできる。また、予め植物を活着させた植生シート3を、土壌に重ね合わせてもよい。また、本発明において、上記の植生シート3はALC板1に固定されることが好ましく、例えばALC板1の側面または下面に固定されることが好ましい。固定手段は特に限定されるものではなく、例えば、ビス、釘、ホッチキスなどの固定具の他、接着剤等も使用することができる。
【0036】本発明で用いる植物21は、耐乾燥性があり、わずかの土壌で生育可能なものが好ましく用いられる。このような植物として、ベンケイソウ科、スベリヒユ科、ツルナ科などの多肉植物を例示することができ、この中でもベンケイソウ科セダム属の植物は、一般的に根茎がそれほど発達しないので、好ましく用いられる。
【0037】上記のベンケイソウ科セダム属の植物としては、例えばツルマンネングサ、メキシコマンネングサ、メノマンネングサ、タイトゴメ、オノマンネングサ、マルバマンネングサ等が好ましく用いられる。このようなベンケイソウ科セダム属の植物を用いることにより、施工後の潅水等の養生管理がほとんど必要なくなる。
【0038】また、本発明では、植物の繁茂率は特に制限されるものではないが、一般的に、良好な緑化景観を示すには、40〜75%の範囲に設定することが好ましい。
【0039】また、植栽層2に用いる土壌22としては、公知のものであれば特に制限されずに用いることができる。好ましい土壌としては、腐葉土、パーク、ピートモス、ケト土、水苔等の有機質材料、若しくはロックウール、パーライト、クレイボール、バーミキュライト、炭、等の無機質材料、鹿沼土、黒土、などの土壌材料と、肥料、生長調整剤、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、保水剤としてはポリアクリル酸塩系、デンプン系、セルロース系などの高分子吸水剤等を挙げることができる。本発明では、この土壌の厚みは3〜30mmの範囲に設定することが好ましい。厚みが3mmを下回ると保水性が十分確保できず、また植物の根の定着性も低下してくるので好ましくない。一方、厚みが30mmを上回ると植物の根が土壌を貫通して、植栽層2の下に配置されるALC板1と定着し難くなるので好ましくない。
【0040】また、本発明では、必要に応じて、ALC板の上部に土壌保持部材を設け、植栽層2を構成する土壌22を保持することもできる。土壌保持部材としては、植栽層2と同程度若しくはそれ以上の高さの土壌止め枠15をALC板1の周縁部に設けたものが、好ましい実施態様として挙げられる。土壌保持部材として土壌止め枠15を用いた場合、土壌止め枠15の枠内に植栽層2を載置すればすむので、施工が簡略化されるとともに、植栽層2の横方向のずれを防止することもできる。
【0041】また、土壌保持部材の他の好ましい実施態様として、土壌22内部にネット状部材を埋設する方法が挙げられる。このネット状部材は、上述した植生シート3と同様の材質を用いて構成することができる。また、ネット状部材の線径は特に限定されるものではないが、一般的に土壌22厚みに対して30〜100%の範囲に設定することにより、効果的に土壌22の移動を防ぐことができる。
【0042】以上説明したように、本発明の屋上緑化用植栽基盤Aは、ALC板1の上面に植栽層2が積層されて構成される。また、この植栽基盤Aは、建造物の屋上やベランダ等(以下、「屋上等」という)に好適に用いられるものであるが、実際に植栽基盤Aを屋上等のスラブ面に施工するにあたっては、上記の基本構成に加えて、更に好ましい形態を付加した植栽構造を採用することもできる。
【0043】例えば、ALC板1と、このALC板1を敷設するスラブ面との間にスペーサーを設けた植栽構造を採用してもよい。具体的には、図6に示したように、前記栓材42の下面に、支持台51と柱状部材52から構成されるスペーサー5を接合したものが好ましく用いられる。このようにALC板1の下部にスペーサー51を設けることにより、排水路13を伝ってスラブ面6に落下した排水の水はけを良好にすることができる。また、日射によりスラブ面6に蓄えられた熱がALC板1に伝わらないので、特に夏場においてALC板1の温度が急激に上昇することもなく、植物の生育に適した温度環境を実現することができる。
【0044】また、スペーサー5の長さは5〜100mmの範囲に設定することが好ましく、10〜20mmの範囲に設定することが更に好ましい。長さが5mmを下回ると上記の効果が十分発揮されない。一方、長さが100mmを上回ると植栽基盤Aのバランスが悪くなり好ましくない。
【0045】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明によれば、従来に比べて軽量で、低アルカリ度のpHを有するとともに、保水性と排水性のバランスに優れた屋上緑化用植栽基盤及び屋上緑化用植栽構造を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000185949
【氏名又は名称】クリオン株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋3丁目5番15号
【識別番号】391037892
【氏名又は名称】大日化成株式会社
【住所又は居所】大阪府門真市末広町8番13号
【出願日】 平成14年1月11日(2002.1.11)
【代理人】 【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄 (外2名)
【公開番号】 特開2003−204717(P2003−204717A)
【公開日】 平成15年7月22日(2003.7.22)
【出願番号】 特願2002−5242(P2002−5242)