| 【発明の名称】 |
自然エネルギーを利用した栽培施設 |
| 【発明者】 |
【氏名】黒田 哲生 【住所又は居所】東京都大田区羽田旭町11番1号 株式会社荏原製作所内
【氏名】竹内 良一 【住所又は居所】東京都大田区羽田旭町11番1号 株式会社荏原製作所内
【氏名】大塚 秀光 【住所又は居所】東京都大田区羽田旭町11番1号 株式会社荏原製作所内
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| 【要約】 |
【課題】その施設がある地域で利用できるエネルギーを最大限に活用することによって、外部から供給することを要する栽培用エネルギーを最小とすることができる栽培施設を提供する。
【解決手段】栽培床の培地に作物の栽培を行う栽培施設であって、栽培床の底部もしくは内部に培地の温度を加熱もしくは冷却する伝熱装置を備え、前記栽培床のある地域に設置した太陽発電設備、風力発電設備からの電力、又は地下ダム、氷貯留所からの熱エネルギーの一つ以上を前記伝熱装置に与えることにより直接培地を加熱もしくは冷却するようにしたことを特徴とする栽培施設。前記伝熱装置に地下ダムの貯留水又はそれと熱交換した熱媒体を通すことにより直接培地を加熱もしくは冷却するようにすることが好ましい。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 栽培床の培地に作物の栽培を行う栽培施設であって、栽培床の底部もしくは内部に培地の温度を加熱もしくは冷却する伝熱装置を備え、前記栽培床のある地域に設置した太陽発電設備、風力発電設備からの電力、又は地下ダム、氷貯留所からの熱エネルギーの一つ以上を前記伝熱装置に与えることにより直接培地を加熱もしくは冷却するようにしたことを特徴とする自然エネルギーを利用した栽培施設。 【請求項2】 前記伝熱装置に地下ダムの貯留水又はそれと熱交換した熱媒体を通すことにより直接培地を加熱もしくは冷却するようにしたことを特徴とする請求項1記載の栽培施設。 【請求項3】 前記栽培床の培地として多孔質の固形培地を用い、培養液を滴下して作物の栽培を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の栽培施設。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、野菜や花きなどの作物を栽培するための栽培施設に関し、特に、栽培施設がある地域における自然エネルギーを最大限に利用して少ないエネルギーで作物を適正な温度に維持できる栽培施設に関し、なかでもその施設がある地域における特有の自然エネルギーを最大限に利用して作物を適正な温度に維持できる栽培施設に関する。 【0002】 【従来の技術】温室やビニールハウスなどを用いる施設栽培においては、作物の生育環境を整えるために、作物を栽培する空間をガラス板やシート状又は板状のビニール樹脂材で覆うことで栽培施設を作り、その施設内の温度を適正に維持したり、降雨や風の影響をなくしているが、一般的には冬季の低温による植物の被害を防いだり、生育の阻害をなくすために、その栽培室内を加温するようにしている。さらに、高級な作物の施設栽培では、施設内の温度を常時適正に保つため、加熱ヒーターのほかに冷却器を備えているのもある。 【0003】施設内の温度の調整手段としては、石油又はガスを燃焼して、その高温の排ガスを直接施設内へ導入するものや、施設の内壁に沿って放熱器を設けるものが一般的であった。また、特殊な例として、水耕栽培の場合のように、多量の培養液を作物に循環供給する栽培形態では、培養液の循環量が大きいことから、培養液の温度を調整することにより施設の温度を制御することも行われている。 【0004】このような施設栽培は、自然の栽培環境に比べて栽培環境をその作物の成長に最も適した条件に維持しやすく、季節を問わず希望する作物を栽培し、収穫できることから、日本のように四季があり、周年の気象変動の大きな地域では、安定した野菜類の供給手段として優れ、露地栽培からの作物の供給が減少する端境期に出荷できるために、収穫した野菜の単価も高く、また栽培環境が適正に保たれていることから生産性も高い。このため、露地栽培の収入を上回る額の燃料を消費してまでも施設の温度を保持するような栽培が行われることもある。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】従来の施設栽培における、床面に沿って伝熱パネルを施設内に設置したり、直接熱風を吹き込むことにより加熱を行うという施設内の温度調整の方式では、かなり大きい熱エネルギーを要するものであり、それによりコストも高いものである。このような施設では、施設内の温度は外気の温度とはかなりの差があり、このため、外壁であるガラス板やビニール樹脂シートの表面で外気と室内空気との間で熱交換が行われる。 【0006】従来のように、培地の表面の上方におかれた加熱器からもたらされる空気の温度は、加熱の場合は希望する施設内温度よりはやや高いものとなり、また、冷却の場合にはやや低いものとなる。このことは、換言すれば、局部的に高温または低温の空気が加熱器・冷却器からもたらされ、その空気は直接施設を覆うガラス板やビニール樹脂シートに接することから、それらを介して外気との間で多量の熱交換が行われることになる。しかも、施設では内部の温度をなるべく均一になるように送風機で攪拌しているから、熱交換が一層助長されるという状態になっている。このため、従来の施設栽培では、施設の温度を調整するために多量のエネルギーを必要とした。 【0007】さらに、栽培施設内の温度を均一化したり、熱エネルギーの節減を図るために、熱風や冷風を送風機等で栽培施設内に吹き付け、循環させたりすると、その風のために、特に吹き出し口付近で、肝腎の作物が損傷したり、成長が阻害されたり、形や姿が変形する等の被害をこうむりがちであるという問題点も生じることがあった。 【0008】また、大量の培養液を循環させる施設では、培養液の廃棄に際して多量の汚濁液を周辺に排出するため好ましいものではなかった。さらに、培養液を循環させると、作業工程が増えてしまう。その理由のひとつは、循環させると菌も繁殖しやすいので殺菌作業が必要である。もうひとつは、培養液の成分バランスが作物に吸収されることによりくずれてくるので、培養液の調整作業が必要になってくる。作業工程が増えれば費用がかかるという問題点もあった。 【0009】このような栽培施設は、自然環境が温暖で露地栽培ができる地方では必要がないが、亜熱帯地方、熱帯地方や寒冷地方では日常消費する野菜を供給する上で設けることが望ましいものである。しかし、このような地方ではその気温が栽培しようとする野菜類の最適温度とかけ離れているため、その最適栽培温度に維持する条件で栽培施設の温度を制御すると、前記したように多量のエネルギーを必要とするので、最小のエネルギー消費で野菜類が生育できるような栽培施設を構成することが望まれている。そのためには、温室のような閉じられた空間を野菜類の生育に適した地方の環境(温度、湿度、降雨量など)とそっくり同じ環境になるように条件を制御するというコストの高い方法から脱却することが求められている。そして、その際、その土地で得られる条件を最大限活用することが、コストの低減に寄与する点で望まれている。 【0010】本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、より少ないエネルギーで作物を適正な温度に維持でき、しかも培養液の点滴量も少なくできて、施設の温度保持エネルギーを最小化でき、かつその施設がある地域で利用できるエネルギーを最大限に活用することによって、外部から供給することを要する栽培用エネルギーを最小とすることができる栽培施設を提供することを目的とするものである。 【0011】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意検討を行い、その施設がある地域で利用できるエネルギーを最大限に活用するとともに、栽培施設の全体を栽培に適する条件に保持しなければならないという考えを捨てて、栽培床の培地を植物の栽培に適する条件とし、かつ栽培床の培地をそのような条件の維持が容易であるものを選択することにより、その上記の課題の全てを解消できることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。 【0012】すなわち、本発明は、従来の栽培施設に比べて温度調整のためのエネルギーを節約するためのものであり、次の構成からなるものである。 (1)栽培床の培地として多孔質の固形培地を用い、培養液を滴下して作物の栽培を行う栽培施設であって、栽培床の底部もしくは内部に培地の温度を加熱もしくは冷却する伝熱装置を備え、前記伝熱装置に地下ダムの貯留水又はそれと熱交換した熱媒体を通すことにより直接培地を加熱もしくは冷却するようにしたことを特徴とする自然エネルギーを利用した栽培施設。 (2)前記伝熱装置に熱を与えるのに使用した水を地下ダムに還流することを特徴とする前記(1)記載の栽培施設。 (3)栽培床の培地として多孔質の固形培地を用い、培養液を滴下して作物の栽培を行う栽培施設であって、栽培床の底部もしくは内部に培地の温度を加熱もしくは冷却する伝熱装置を備え、前記栽培床の隣接地に設置した太陽電池、風力発電設備からの電力、又は地下ダム、氷貯留所からの熱エネルギーの一つ以上を前記伝熱装置に与えることにより直接培地を加熱もしくは冷却するようにしたことを特徴とする栽培施設。 【0013】本発明においては、その基本的なところは、栽培施設に用いるために外部から購入するエネルギーを、その栽培施設の地域において得ることができる自然エネルギーを最大限活用することにより、最小限に抑えることができるようにしようとするものである。すなわち、その具体化手段の一つとしては、地下ダムの水を栽培施設の熱源ないし冷熱源としようとするものである。たとえば、沖縄の島の一つである宮古島では年間2000mm(3.6億トン)という多い量の降雨量があるが、島全体がサンゴ礁の隆起してできた、非常に透水性の高い「琉球石灰岩からなる島」であるために、そのうちの40%(1.4億トン)は土壌面から直ちに琉球石灰岩層に浸透して地下水となり、しかもそのまま海へ流出しているという状況にあった。ただ、宮古島ではその地層を調査したところ、図3に示すように、琉球石灰岩層31の下が「島尻層」という不透水性層32があるため、水がその上に溜まり、琉球石灰岩層31に帯水層34を形成していて、その水を利用することが可能であることがわかった。 【0014】この地下水を利用するために、昭和54年以降、図3に示すように、地下水流域の終端部に琉球石灰岩層31内に止水堰33を設けることにより、地下ダム3を建設することが行われている。この地下ダム3では琉球石灰岩層31が帯水層34となっており、砂川ダムの場合950万トンの水を貯留できるといわれている。この地下ダムの水は主として農業用水として利用されている。地下ダムからの取水は、前記帯水層34に多数の取水用の井戸37を設け、各取水井に水中ポンプ38を設けて井戸から水を取水するとともに、これらを主送水管で連結し、取水ゲート39でまとめるようにした取水施設36に送水ポンプを設けて、送水路40を経て高所に設けたファームポンド4にポンプアップする。ファームポンド4に入った水は幹線水路41から支線水路を経て灌漑などに使用される。 【0015】この取水される地下ダム水の温度は年間を通じて約21〜23℃であり、その温度は栽培施設で栽培しようとする野菜の最適栽培温度に近いから、これを栽培施設の熱源として利用することは冷熱源として非常に好ましいものであることが言える。しかも、ファームポンドに送られる地下ダム水の量は非常に大きいので、冷温熱源として非常に安定して使用できる利点もある。このようにして、本発明は、宮古島の場合、夏が非常に暑くて栽培施設の栽培温度の制御が、地下ダム水を利用することにより、容易に行うことができ、商用電力を使用しないで行うことができる。 【0016】地下ダムがあっても、これを汲み上げて栽培施設の冷熱源として使用するのは、単に地下水を汲み上げるのと同様で、汲み上げのための動力費がかなり大きいが、宮古島の場合にはファームポンドに送るための汲み上げがあるので、汲み上げのための動力費を別に要することはない。この地下ダム水を冷熱源として使用する際には、それを栽培施設の熱交換装置に直接送ることは適切ではなく、熱媒体と熱交換するようにすることが好ましい。その熱交換に際して、熱交換の効率からいうと、蛇管式のものなどがよいが、これらは圧損が大きく、ファームポンドに送るための動力費が増大するので、圧損が最も少ない構造のもの、例えばプレート型の熱交換器を用いることが好ましい。 【0017】本発明においては、栽培施設の温度調整に地下ダム水を利用することが主要な点であるが、地下ダム水もその地域で利用できる自然エネルギーの一つであるから、もっと広義にはその地域で利用することができる自然エネルギーを総合的に利用することにより、外部から得るエネルギーをより減少させることができる。そのような自然エネルギーとしては、例えば宮古島の場合、強い太陽光を利用する太陽発電設備、島のために外海からの強い風を利用した風力発電設備からの電力を用いることができ、これらの電力は栽培施設の温度調整に用いてもよいが、前記した地下ダム水との熱交換器への熱媒体の循環に要するポンプの駆動にようする電力や、栽培施設の制御装置に必要な電力に当てることが好ましい。その地域で利用できる自然エネルギーとしては、その他、潮汐力発電設備、地熱発電設備などがあるが、これらを総合的に組み合わせることができる。 【0018】また、地域により得られる熱源としては、前記したものに限られず、種々のものを用いることができる。なお、ここで「熱源」としては、加熱するものに限るものではなく、冷却するものもマイナスの熱源(「冷熱源」)という意味で同じであるから、それも含めるものである。その意味において、上記した地下ダムの水は冷却水として重要な熱源であり、地域によっては、冬に雪や氷を貯蔵した貯氷所の冷熱源を利用することができる。 【0019】本発明においては、その栽培施設において必要とする熱エネルギーを最小とする目的からしても、栽培施設ないし栽培方法自体が、その作物を栽培するのに要する熱エネルギーを最小とすることができるものでなければならない。この意味において、栽培室(温室)の内部全体(つまり培地も含めて)をその栽培する作物の最適条件に保持することは、非常に大きな熱エネルギーを要するので、新しい手段を採用するものである。本発明では、作物の生育には根の部分の条件、特に温度が非常に関連することに注目し、栽培床の培地の温度を最適温度に制御しようとするもので、そのために栽培床の地下又は地中に熱交換装置を設置して、栽培床の温度を調節するのである。特に、その栽培床を支柱で支持して土壌面から離しておくときには、地面の温度との関連がなくなり、気温の影響の方が大きくなるが、土壌から切り離されているため、栽培床の温度管理が容易になる。 【0020】すなわち、従来は作物の栽培においてはその作物の周囲の空間がその作物の生育に最も影響するものということから、例えば温室にみるようにその室内の温度、湿度の制御に重点をおいてきたが、亜熱帯地方のような環境では、栽培床の培地の温度を最適温度に制御することが重要であって、作物の葉のある空間の温度はそれほど影響がないということを、本発明で確認してそれを利用するものである。それを代表的な作物の例で説明すると、栽培上には最も成長が良いように温度条件を選択する必要があるが、最適ないし好適栽培条件は、ホウレンソウの場合、培地温度が、昼間18〜24℃、夜間18〜24℃で、トマトの場合、培地温度が、昼間25℃前後、夜間20℃前後であるといわれている。一方、栽培可能温度は、ホウレンソウの場合、培地温度が、昼間13〜24℃、夜間13〜24℃で、トマトの場合、培地温度が、昼間18〜28℃、夜間18〜25℃であるといわれている。例えば、ホウレンソウの場合、根の部分が13℃以下となると成長に悪影響があると言われているので、そのような温度にならないようにすることが必要である。 【0021】このことから、本発明では、その栽培においては、栽培床における培地の温度が上記した最適ないし好適栽培条件にあるようにして実施される。もちろん、上記した栽培床の上部である、作物の葉のある空間の温度条件も何でもよいというわけではないが、作物の根の部分ほど生育に影響はないので、ある程度の許容性がある。温室栽培における代表的な作物であるホウレンソウとトマトの栽培条件をみると、温室内気温は、ホウレンソウの場合、栽培可能温度が昼間10〜30℃、夜間10〜30℃で、トマトの場合、栽培可能温度が昼間10〜30℃、夜間10〜30℃である。また、最適ないし好適栽培条件は、トマトの場合、昼間26〜28℃、夜間13〜15℃であり、ホウレンソウの場合トマトの場合より低いといわれている。この点からみて、培地温度で制御した方が、温室内気温で制御するよりも容易である。 【0022】このような栽培床の栽培条件を保持するための制御は、その栽培施設を設ける地域の気候条件により大きく左右されるところであるが、例えば沖縄地方の場合をみると、那覇での気温データによると、日最高気温の月別平均値が7月31.1℃、8月30.7℃、9月29.9℃と高く、月別平年気温が6月26.2℃、7月28.3℃、8月28.1℃、9月27.1℃、10月24.5℃と高い状況にある。沖縄地方で、本発明により、培地冷却の手段で前記した栽培の最適ないし好適条件に保持できるようにするためには、ホウレンソウの場合、昼間は6〜10月の期間、夜間は7〜9月の期間、冷却を行うことが必要であることが分かった。また、トマトの場合、昼間は6〜9月の期間、夜間は4〜11月の期間、冷却を行うことが必要であることが分かった。 【0023】本州の場合、温室栽培というように、温室は冬季に温度を周囲の気温よりも高くするために使用しているが、沖縄地方では亜熱帯地方であるために夏季に冷却するという、逆の温度調節をする必要がある。そのための冷温熱源として前記の地下ダム水を用いることは、その水温が21〜23℃であることにより一層好ましい結果が得られる。すなわち、栽培の最適ないし好適条件は、培地温度については、ホウレンソウ及びトマトの場合には上記したような温度であるため、地下ダム水の水温に近く、冷温熱源としてそのまま用いることができる。温度が小さいので、その場所により栽培床の温度が異なってくることがない。さらに、上記では、夏季の冷却の場合について説明したが、那覇では1月の日最高気温の月別平均値が18.6℃で、日最低気温の月別平均値が13.6℃、月別平年気温が16.6℃であるため、ホウレンソウの根の成長に悪影響がある場合が考えられるので、その場合には地下ダム水を温熱源として培地を加温する手段を取ることができる。 【0024】また、本発明では、栽培床の培地の温度を最適温度に制御するよう、栽培床の温度を調節するために、培地として多孔質の軽石培地を用いることが好ましい。このような多孔質の軽石培地は、比重が小さいため熱容量が小さく、熱交換装置での温度調節が容易となる。さらに、軽石培地を用いる場合には培養液の供給方式も点滴掛け流し方式をとるが、この方式によるときは作物の生育に最小限必要な量の液しか供給されないので、軽石培地が含有する水分量が極めて少ない状態となっており、水の熱容量が大きいことから分かるように、水を含めた培地全体の熱容量が小さいことになり、熱交換装置による温度調節が容易となる。 【0025】本発明においては、前記軽石培地としては、飽和透水係数が0.3〜0.8cm/sec、通気係数が乾燥試料及び湿潤試料で15〜40cm/secの粒状の軽石から構成されることが好ましい。さらに、軽石培地は、3.0〜4.0meq/100gの陽イオン交換容量を有し、1.0〜5.6mmの粒状の軽石であることが好ましい。この粒状の軽石は、採掘後に乾燥工程を施されて0.4%以下の含水率を有するように調整されているものがよい。 【0026】本発明においては、栽培施設がガラスやビニール樹脂シートで覆われていないものでもよいが、外部の温度が作物の好適栽培温度と差が大きい場合には、ガラスやビニール樹脂シートで覆われているものとすることが好ましい。また、栽培床の底部もしくは内部に設ける伝熱装置には各種の加熱装置、或いは冷却装置が使用できる。伝熱装置に使用できるエネルギーとしては、各種の熱源(冷却を含めて)を使用することができるが、なるべくコストが低いものを使用することが好ましい。そのようなものとしてエネルギー密度の低いものを使用することができ、例えば、暖房の余熱、集落廃水処理での温度の少し高い処理水、温泉などを使用するとコストを低く抑えることができる。伝熱装置を栽培床の底部に設ける場合には、底部の下に断熱用のマットを敷き、そのマットの上に伝熱装置を設けるようにするなどの手段を取ることが好ましい。 【0027】 【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の具体的態様を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の技術的な概念図を示すものであり、例として宮古島における実施の場合を示したものである。本発明の栽培施設1は、培地温度コントロールシステム2を有しており、前記システム2は、地下ダム3からファームポンド4へ大量に汲み上げられる地下ダム水5の導管の途中に設けた熱交換器6に接続されていて、21〜23℃の温度にある地下ダム水5の冷・熱源を授受できるようになっている。また、前記システム2は、氷蓄熱器7とも接続していて、地下ダム水5が利用できない場合や、それだけでは不十分である場合に、その冷熱を利用できるようになっている。なお、氷蓄熱器7は、後述する電力系で余剰電力が出た場合にそのエネルギーを保存することができるし、また商用電力10と繋がる地域では、夜間の余剰電力を利用して安価に熱エネルギーを用いることができる。 【0028】この栽培施設1は、培地温度コントロールシステム2における熱交換器6への熱媒体の循環、コントロールシステムの制御機器の運転、栽培床への培養液の供給などのために様々な電力が必要となるが、これらは栽培施設の周囲に電力の供給源を作り、そこから電力を供給するようにすることができる。例えば、宮古島の場合、太陽光が強烈であるので、栽培施設の通路などの栽培床への日射を遮らない場所、管理棟の屋根などに太陽電池10を設置して、太陽発電設備を設けて、電力の供給源とする。さらに、島であるために風が強いという自然環境を利用して隣接地に風力発電設備11を設けたりして、自然エネルギーを利用した発電設備により電力を得ることができる。そのほかにも、自然エネルギーを利用した発電設備としては、潮位差を利用するものとか、波のエネルギーを利用するものもある。 【0029】本発明では、自然エネルギーを利用した発電設備からの電力を活用するものであるが、これらから得られる電力の質が同じではなく、得られる時間帯も大きくことなるので、それらの電力を総合し、安定した電力として栽培施設に供給するためには各電力系を連係し、総合して、一定の電圧とし、余剰分を貯蔵するか、あるいは商用電力供給会社に売却し、また電力の不足時に電力の貯蔵所から取り出すか、あるいは商用電力12の供給を受けることができるように、制御しなければならない。 【0030】図1において、太陽電池10、風力発電設備11、商用電力12などの電力源からの電力を総合的に制御するために系統連係盤13が設けられている。この系統連係盤13を中心として制御することにより、自然エネルギーを最大限に利用することができて、栽培施設を操業するのに要する他からのエネルギーを最小限のものとすることができる。これは、例えば、宮古島のような工業地帯から遠いところでも、自然環境に恵まれているため、その地域の自然エネルギーを活用することにより、他からのエネルギーを最小限して最適条件のもとで作物をつくることができるようになる。 【0031】図2は、本発明の栽培施設を例示する模式図である。ガラス板又はビニール樹脂シートなどの外覆15内に、多数の支柱16によって隔離トレー17が支持され、この隔離トレー17内にはシラスのような軽石を主成分とする培地18が充填され、隔離床を形成している。隔離トレー17内の培地18の内部には、伝熱具である伝熱パイプ19が挿入され、伝熱パイプ内19には冷温熱源20から加温もしくは冷却されたブラインが循環されて、隔離床の温度を加熱または冷却する。隔離床の培地18には、培養液供給装置21から成分と濃度が調整された培養液が、導水管22と、導水管22に接続された放水小孔が所定間隔で周壁に長さ方向に一列に点在する点滴チューブ23(多孔放水管)により液滴が供給されるようになっている。前記の点滴チューブ23はその内部に圧力補正機構付ドリッパーを装着したものである。この簡単な構造で水平に配置された点滴チューブ23の多数の放水小孔から培養液が点滴式に供給される。このような点滴式の施設栽培では、培養液の滴下量が少なく、肥培管理のためのエネルギーが少ない。 【0032】また、この栽培施設では隔離床の培地18としては、シラスのような軽石を主成分とするものを用いることが好ましいが、シラスのような軽石は保肥能力が低いので、比較的短いサイクルで培養液を滴下供給しなければならない。しかし、全体として培養液の滴下量は、培地の表面蒸発と作物の表面蒸発に見合う量であり、極めて少なくてすむ。培地に対する培養液の供給は、作物の生育に大きく影響するので、その生育が最も良いように制御する必要がある。その培養液の供給による培地の水分量は、色々な測定手段があるが、pF値を基準とする手段を用いることが最適である。そのpF値としては、例えば1.7〜3の範囲とすることが好ましい。軽石培地を用いる場合には培養液の供給を少な目にすることから、pF値は前記の範囲よりも小さいようにする。そのpF値の測定は、培地が軽石培地の場合難しいが、本発明者が先に提案したFDR法などを補助手段として用いることにより求めることができる。なお、培地用の材料としては、園芸用土壌代替物として知られているバーミキュライト、土壌混合物として知られているパーライトなどの無機発泡体も考えられるが、強度、作物の保持に必要な比重が小さ過ぎる、強度的に軽石に較べて弱い等の点で軽石ほど好ましい材料でない。更に、連続気泡型の発泡プラスチック、例えば、ウレタンフォーム等も使用できるが、有機物であるため、高価であるばかりでなく、耐久性の点からも軽石に較べ劣り、軽石が最も好ましい材料である。隔離床の培地18は、保水量が少ない状態としたものは、比熱が小さいためその温度を上下するために必要な熱量が少なくてすむので、伝熱装置から加える熱エネルギーが少なくてよく、制御が簡単になる。 【0033】さらに、培地18は、軽石の場合には粒径1〜5.6mm程度のものを用いることが好ましく、この場合培地粒子間の空隙も一般の露地における土壌の空隙よりも大きなものとなっている。しかも、上記のように培養液の滴下量は蒸発に見合う量とすれば、培地は常に乾燥気味に維持されるため、根腐れのおそれが全くないばかりでなく、余剰培養液がほとんど出ず、余剰培養液の排出による栽培施設周辺地区の環境汚染の心配も全く生じない。 【0034】図2で、培地18内に挿入された伝熱パイプ19からの冷気もしくは暖気は、伝熱さらに主として気流による対流によって隔離床全体に伝わる。加熱または冷却のための熱媒としては、温水、冷水などを用いることができ、加熱または冷却手段としては、電気、蒸気など多様なものが利用できる。例えば、設置地域の地下水を利用することもでき、また、隣接した位置に焼却炉などの燃焼設備があれば、排ガスを利用することもできる。 【0035】ガラス板やビニル樹脂シートの外覆を有する栽培設備で最も簡単な伝熱手段をを用いてエネルギー節約を行い得る手段を考えた場合、培養液を滴下する形態の栽培においては、培養液を介して熱を伝える方式を検討すると、培養液に同伴して培地にもたらされる熱エネルギーは小さなものであるから、培養液供給で施設内の温度を適正に維持できるものではなく、外気の温度の影響を防ぐには培養液以外の熱源による温度調整が必要となる。しかして、本発明では、凡そ1〜5.6mmの粒径の軽石を培地とした施設栽培の加熱または冷却に、加熱または冷却媒体を培地中に挿入して施設の温度管理を行った場合には、施設内における発熱もしくは冷却源が隔離床となり、作物に最も近い場所であるばかりでなく外気と離れたところに位置するために、外覆における施設内外の熱交換量が最小になり、しかも、培地粒子の空隙が大きいことから、対流による加熱または冷却が速やかに実施され、培養液の点滴量が少ないことに併せて、施設の温度保持エネルギーおよび栽培エネルギーが最小になる効果を有するものである。 【0036】 【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明する。ただし本発明は、この実施例のみに限定されるものではない。 【0037】実施例1沖縄県宮古島において、トマトの栽培を行う際に、本発明による培地加熱と比較のための培地非加熱の比較栽培を行った。栽培床は、雨などの天候の影響を受けないようにするために温室内に設置したが、環境の温度が外気と同じになるように外気と連通させた。栽培ベッドの周囲温度:1日の最高温度、最低温度、平均温度は、栽培期間の前記した那覇における日最高気温など、月別平年気温とほぼ同様のものであった。 【0038】(培地加熱による栽培) 栽培条件を下記に示す。 1.培地 粒径1〜5.6mmの軽石(栽培ボックス) 2.培地加温方法 栽培ボックスの深さ8cmでの培地の温度を20℃になるよ ように制御したが、実際の平均温度は約21℃であった。(栽 培ボックスの配管に水温21〜23℃の地下ダム水と熱交換し た水温20℃の温湯を流量23リットル/分で循環することに より加熱を行った。) 3.育苗方法 育苗箱にて育苗4.移植 9cmポットに移植5.定植 培地加温装置付き栽培ボックス(縦250mm×横400m m×深さ180mm)に各1株ずつ定植6.灌水方法 培養液を点滴掛流し7.調査株数 5株8.栽培品目 トマト(品種:ハウス桃太郎) 9.栽培歴 ・2000年9月29日播種 ・2000年10月10日移植 ・2000年11月18日定植 ・2001年2月11日収穫開始 ・2001年6月14日収穫終了10.加熱期間 2000年12月14日−2001年3月31日11.収穫量 6.8kg/株【0039】比較例1(培地非加熱による栽培)栽培条件を下記に示す。培地、育苗方法、移植、定植、潅水方法、調査株数、栽培品目、栽培歴は、実施例1と全く同じにした。 2.培地温度 培地非加熱、深さ8cmでの培地温度を測定した。月により多少の違いがあるが、2月〜3月における18時から翌日の8時までの培地の平均温度は約15.7℃であった。 11.収穫量 4.9kg/株【0040】実施例1及び比較例1の収穫量の比較により、冬場の培地加熱トマト栽培が有効であることが判明した。トマトの地上部においては同条件であるが、地下部の栽培温度の違いにより収穫量に歴然とした差が出た。培地非加熱に対し、培地加熱の栽培では、トマトの収穫量が約38%アップである。この場合、培地の加熱には地下ダムから多量に汲み上げられる地下ダム水の熱が利用できるため、別の熱エネルギーを必要とせず、地下ダム水との熱交換と栽培施設の培地加熱装置との間に温水を循環するのに必要な動力エネルギーがあれば十分であった。 【0041】実施例2沖縄県において、ホウレンソウの栽培を行う際に、本発明による培地冷却と比較のための培地非冷却の比較栽培を行った。栽培ベッドは、雨などの天候の影響を受けないようにするために温室内に設置したが、環境の温度が外気と同じになるように外気と連通させた。 【0042】(培地冷却による栽培)栽培条件を下記に示す。 1.培地 粒径1〜5.6mmの軽石(栽培ボックス) 2.培地冷却方法 栽培ボックスの深さ6cmでの培地の温度を20℃になるよ ように制御したが、実際の平均温度は約21℃であった。(栽 培ボックスの配管に水温21〜23℃の地下ダム水と熱交換し た水温20℃の水を流量23リットル/分で循環することによ り冷却を行った。) 3.育苗方法 セルトレーにて育苗(1穴に2粒播種、0.5m2に130 粒播種) 4.定植 培地加温装置付き栽培ベッドに定植(5連セルを15個定植 ) 5.灌水方法 培養液を点滴掛流し6.栽培面積 1.5m27.栽培品目 ホウレンソウ(品種:サンクレスト) 8.栽培歴 ・2000年7月20日播種 ・2000年8月1日定植(播種後11日) ・2000年9月8日収穫(定植後38日) 9.冷却期間 2000年8月1日−2000年9月8日10.収穫量 2057g/m2【0043】比較例2(培地非冷却による栽培)栽培条件を下記に示す。培地、育苗方法、定植、潅水方法、栽培品目、栽培歴は、実施例2と全く同じにした。 2.培地温度 培地非冷却、深さ6cmでの培地温度を測定した。月により多少の違いがあるが、8月における7時から19時までの培地の平均温度は約30.8℃であった。 10.収穫量 230g/m2【0044】実施例2及び比較例2の収穫量の比較により、夏場の培地冷却ホウレンソウ栽培が有効であることが判明した。ホウレンソウの地上部においては同条件であるが、地下部の栽培温度の違いにより収穫量に歴然とした差が出た。培地非冷却に対し、培地冷却の栽培では、収穫量が約795%アップである。 【0045】 【発明の効果】本発明によれば、野菜や花きなどの作物を栽培するための栽培施設において、その栽培施設がある地域における自然エネルギーを最大限に利用して少ないエネルギーで作物を適正な温度に維持できる栽培施設に関し、なかでもその施設がある地域における特有の自然エネルギーを最大限に利用して作物を適正な温度に維持できる。特に、亜熱帯地方において、地下ダム水を冷温熱源として利用する場合には、地下ダム水が農業用水として汲み上げられている関係で、単にその熱を利用できるので、汲み上げのためのエネルギーを要せず、しかも地下ダム水の水温の関係で、夏季には冷熱源として、また冬季には温熱源として使用することができ、少ないエネルギーで栽培をすることができる。 【0046】さらに、本発明によれば、施設栽培の加熱または冷却のために、栽培床の培地中に加熱または冷却媒体を通す伝熱装置を挿入して施設の温度管理を行うことにより、培地を作物の栽培に最適な温度条件とすることができ、それにより施設内の空中における温度条件を作物の栽培に最適な条件ではなく、好適ないし生育に支障のない温度条件としても、作物を良好に成長させることができるので、栽培施設の室内全体を作物の栽培に最適な温度条件となるようにする従来の温度管理方式に比して著しいエネルギーの消費量の減少を得ることができる。しかも、培地として軽石を用いた場合には、断熱効果が大きく、伝熱装置により与えられた熱が逃げにくいために、熱効率がよい。また、培地粒子として粒径の大きなものを用いる場合には、培地粒子の空隙が大きいことから、対流による加熱または冷却が速やかに実施される。また、培養液の供給方式として、培養液を滴下する、いわゆる点滴掛け流し方式を採用する場合には、培養液の点滴量が少ないことにより、培地内の水分含有量が少ないため、培地内の水分の温度を上げるに要する熱量が少ないので、栽培床の温度調節のために要する熱エネルギーが最小になる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000239 【氏名又は名称】株式会社荏原製作所 【住所又は居所】東京都大田区羽田旭町11番1号
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| 【出願日】 |
平成13年12月28日(2001.12.28) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100105647 【弁理士】 【氏名又は名称】小栗 昌平 (外5名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−189745(P2003−189745A) |
| 【公開日】 |
平成15年7月8日(2003.7.8) |
| 【出願番号】 |
特願2001−400436(P2001−400436) |
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