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【発明の名称】 植生体
【発明者】 【氏名】山田 廉
【住所又は居所】大阪府守口市金田町3丁目1番11号 ロンタイ株式会社内

【氏名】五月女 篤信
【住所又は居所】大阪府守口市金田町3丁目1番11号 ロンタイ株式会社内

【要約】 【課題】木本植物の種子が発芽して成長するために必要な保湿貯蔵環境と植生基盤を人工的に提供する。

【解決手段】植生体1は、草本種子4を備えた種子層2と、種子層を被覆する分解性ネット10と、種子層と分解性ネットとの間に適宜間隔をあけて配置され且つ保湿貯蔵を必要とする木本種子8と植物性保湿材9を含む複数の袋体6と、種子層・分解性ネット・袋体を一体化する接合部材11からなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 草本種子を備えた種子層と、上記種子層を被覆する分解性ネットと、上記種子層と分解性ネットとの間に適宜間隔をあけて配置され且つ保湿貯蔵を必要とする木本種子と植物性保湿材を含む複数の袋体と、上記種子層・分解性ネット・袋体を一体化する接合部材とを備えたことを特徴とする植生体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、法面などの緑化に用いられる植生体に関する。
【0002】
【従来の技術】明発芽種子に属する草本種子の植物は、生育が早く、短時間で根が成長し土壌との結合を強めて土壌浸食防止効果を発揮することから、法面などの緑化に広く利用されている。また、草本植物の根は糖やアミノ酸を分泌して土壌微生物の生息に好適な環境を提供するうえ、枯れた後は土壌微生物により分解されて土壌の肥沃化に寄与し、結果的に木本植物が成長する好適な植生基盤を提供する。さらに、草本植物の種子は乾燥貯蔵が可能であることから、工場生産される植生体にとって利用し易いものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】他方、近年森林緑化景観の要求から、木本植物による緑化が試みられている。しかし、木本植物の種子は、ある程度の湿度を持った環境に保湿貯蔵する必要があり、乾燥すると死滅するものが多い。特に、カエデ類・ツバキ・シャリンバイ・クヌギ・コナラ・ネズミモチなどの木本植物の種子は保湿状態で貯蔵しなければならず、湿気を含むバーミュキュライトなどの鉱物質土壌改良材の中に保存しても運送、保管中に乾燥してしまい、工場生産の植生体に木本植物を加えることが著しく困難であった。
【0004】また、木本植物は初期の生育が遅いため、早期の土壌浸食防止効果が得られないし、その生育には厚みのある植生基盤が必要である。例えば、草本植物の健全な生育には植生基盤の厚みが約10cm必要とされているのに対し、木本植物には植生基盤の厚みが約30cmも必要とされている。
【0005】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明は、森林林床が、表面の枯葉層(L層)及び該枯葉層の下にあって枯葉などの分解が不完全な層(F層)で構成されており、保湿貯蔵を必要とする木本種子の発芽は暗く湿ったL層とF層の境界域で活発である点に着目してなされたもので、木本植物の種子が発芽して成長するために必要な保湿貯蔵環境と植生基盤を人工的に提供し得る植生体に関する。
【0006】具体的に、本発明の植生体は、草本種子を備えた種子層と、上記種子層を被覆する分解性ネットと、上記種子層と分解性ネットとの間に適宜間隔をあけて配置され且つ木本種子と植物性保湿材を含む複数の袋体と、上記種子層・分解性ネット・袋体を一体化する接合部材とを備えたことを特徴とする。
【0007】
【作用】このような構成を備えた植生体は、分解性ネットを上に位置させ、種子層を下に位置させた状態で地盤に敷設される。この場合、分解性ネットを透過し、隣接する袋体の間を通って植生シートに到達する太陽光を受け、この植生シートに含まれる草本種子が成長する。草本種子から成長した草本植物の根は、隣接する植生基盤に素早く根を張って表層地盤の安定化を図り、後に木本植物が成長するために必要な植生基盤を形成する。また、草本植物の葉は、分解性ネットの目合いを通過して成長する。
【0008】一方、木本種子は植物性保湿材に囲まれて良好な湿潤状態で保持されており、雨滴衝撃などにより繊維が分散し、これにより生じた袋体の空隙から発芽し、分解性ネットの目合から成長していく。根は、植物性保湿材、微生物によって分解された袋体を通り、草本植物によって形成された安定した基盤に根を張る。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を説明する。図1と図2に示す実施の形態の植生体1において、最下層の種子層2は、水分を吸収すると分散する二枚の水分散性シート3の間に草本種子4と肥料5を挟持して構成されている。水分散性シート3には、紙、パルプ、パルプにピートモス又はバークなどの土壌改良材を混合して抄紙した薄層シート、レーヨンなどの繊維からなる不織布が好適に利用される。草本種子4には、ススキ等のイネ科種子、トールフェスク等のイネ科牧草、ヨモギ等のキク科種子、メドハギ等のマメ科種子が含まれる。また、肥料5には、高度化成肥料、有機質肥料が含まれる。
【0010】種子層2の上に所定の間隔をあけて平行に配置された複数の袋体6は、筒状の袋7と、袋7の内部に収容されている木本種子8及び植物性保湿材9を含む材料とからなる。袋7の中には、木本種子8や植物性保湿材9の他に、肥料(例えば、緩効性肥料)や土壌改良材を収容してもよい。
【0011】袋7は、初期の製造段階及び保存段階では植物性保湿材9を保湿状態に保ち且つ植生地盤に敷設後は降雨等の水分を吸収して袋体を構成する繊維が分散し、その後徐々に微生物によって分解する材料が選択されており、例えばレーヨン又は生分解性プラスチック等の繊維からなる不織布、PVAフィルム、若しくはそれら不織布とフィルムを重ねた又は張り合わせた複合体が好適に利用されている。
【0012】植物性保湿材9には、ピートモス、ミズゴケ、腐葉土などが好適に利用できる。なお、ピートモスは、ミズゴケ、スゲ類の堆積地盤から得られるもので、含水率は約40%である。また、腐葉土は、広葉樹の落葉を堆積し発酵させて解砕したものである。これらピートモス等は、いずれも植物細胞の細胞壁構造が残っているため、保湿力が高いという特徴を有する。また、腐葉土にあっては、乾燥状態で、気乾含水率が約10%以上(最大約60%)を有し、乾燥すると空気中の水分を吸収してほぼ一定範囲の含水率を保持し、この吸湿作用の有無が鉱物質土壌改良材と大きく異なる点である。さらに、植物性保湿材9には植物の生育に必要な微生物が多く含まれるのに対し、鉱物土壌改良材にはそのような微生物が存在しない点でも大きく相違する。
【0013】最上層の分解性ネット10は、ジュート、木綿、生分解性プラスチック、ヤシなどの糸又は紐を編成したものが好適に利用できる。また、分解性ネット10の目合い又は開口部は、その開口部を十分な太陽光が透過し、保湿貯蔵されている木本植物の種子の発芽、生育を妨げない大きさとする。
【0014】以上の種子層2、袋体6、分解性ネット10は、図2に示すように、隣接する袋7の間で上下の種子層2と分解性ネット10を適当な接合部材11を用いて連結され、植生体1となる。図示しないが、同様の接合部材を用いて、袋体6の両端部を種子層2と分解性ネット10に接合してもよい。具体的な接合部材としては、例えば、分解性結束ピン、ステープルなどがある。
【0015】このように構成された植生体1は、図3に示すように、切土法面又は盛土法面などの施工面(植生地盤)12に、種子層2が地盤に接し、分解性ネット10が上になるように敷設され、複数のアンカーピン13によって固定される。施工面12に固定された植生体1は、隣接する袋7の間から供給される降雨、日照に晒され、種子層2の草本種子4が速やかに発芽、発根し、袋7と袋7の間の領域から成長する。また、成長した草本植物は、施工面に広く根を張り、降雨時の浸食から施工面12を保護する。特に、草本植物のうち、トールフェスクなどのイネ科草本は、多くの細かいひげ根を地表近くに広げ、根からの分泌物が微生物を増殖し、根の更新によって死んだ根が有機物を土壌に供給してその肥沃化を促進する。また、増殖した微生物が水分散性シート3や袋7及び分解性ネット10の分解を促進する。
【0016】一方、袋7の中に保湿貯蔵されている木本種子8は、植物性保湿材9によって乾燥から保護される。そして、降雨水を吸収した植物性保湿材は重量を増し、種子層2を施工面12に密着させる。また、植物性保湿材9に保持された降雨水によって発芽、発根し、その根は植物性保湿材9、更に草本種子4によって肥沃化された施工面12に発達していく。さらに、植物性保湿材9に含まれる微生物が袋7を分解するため、木本植物の根の成長が阻害されることはない。
【0017】このように、成長の早い草本植物は隣接する袋7の間で成長し、草本植物に比べて成長の遅い木本植物は草本植物の成長しない領域(袋7部分)で成長する。すなわち、草本植物と木本植物は領域を分けて成長するため、根圏における水分、養分の競合が発生しないし、早期に成長した草本植物によって木本植物への日照が遮られることもないので、木本植物は必要な日照を受けて順調に成長し、好適な森林景観を提供する。そして、木本植物の直根や側根が袋7の外へ伸びて広がる頃には、草本植物が作り出した有機物と養分が施工面12に蓄積されており、木本植物の成長に好適な環境を提供する。
【0018】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明に係る植生体によれば、保湿貯蔵を必要とする木本種子は、死滅することなく植物性保湿材と共に袋内に保持され、その状態で植生地盤に提供される。つまり、木本植物の種子を含む植生体を、工場で生産することができる。
【0019】また、施工した状態において、隣接する袋の間から提供される太陽光を受けて草本植物が成長すると共に、成長した草本植物の根は施工面の土壌に張って地盤の安定化、浸食の防止、土壌の肥沃化を図り、木本植物の好適な生育環境を形成する。
【0020】そして、成長した木本植物は、人工法面に森林景観を提供する。また、種子層を構成する材料、袋体、ネット等はいずれも分解されることで基盤上に残存することがなく、環境を害することがない。
【出願人】 【識別番号】593029880
【氏名又は名称】ロンタイ株式会社
【住所又は居所】大阪府守口市金田町3丁目1番11号
【出願日】 平成13年12月25日(2001.12.25)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆 (外2名)
【公開番号】 特開2003−189735(P2003−189735A)
【公開日】 平成15年7月8日(2003.7.8)
【出願番号】 特願2001−392197(P2001−392197)