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【発明の名称】 緑化用保水剤、植栽基材および緑化方法
【発明者】 【氏名】竹内 浩史
【住所又は居所】神奈川県横浜市鶴見区大黒町10番1号 三菱レイヨン株式会社化成品開発研究所内

【要約】 【課題】高い保水能力を有し、植物生長阻害作用を効果的に抑制した緑化用保水剤、これを添加してなる植栽基材、更に該植栽基材を利用した緑化方法の提供。

【解決手段】(メタ)アクリルアミド60〜80質量部、(メタ)アクリル酸20〜40質量部のうち5〜50モル%を中和によりアルカリ金属塩に変換した(メタ)アクリル酸及びそのアルカリ金属塩、架橋性モノマー0.01〜5質量部の架橋共重合体からなる緑化用保水剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 (メタ)アクリルアミド60〜80質量部、(メタ)アクリル酸20〜40質量部のうち5〜50モル%を中和によりアルカリ金属塩に変換した(メタ)アクリル酸及びそのアルカリ金属塩、架橋性モノマー0.01〜5質量部を重合してなる架橋共重合体からなる緑化用保水剤。
【請求項2】 イオン交換水の吸水倍率が30〜300g/gであることを特徴とする請求項1に記載の緑化用保水剤。
【請求項3】 有機質系及び/または無機質系人工軽量土壌を含有してなる土壌に、請求項1または2に記載の緑化用保水剤を保水成分として添加してなることを特徴とする植栽基材。
【請求項4】 請求項3に記載の植栽基材を基盤上に施工し、該植栽基材に植物体を植え付け、施工部分を緑化することを特徴とする緑化方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、緑化用保水剤、該緑化保水剤を利用する植栽基材、更に該植栽基材を利用する緑化方法に関し、より具体的には、建造物あるいは路面、法面の緑化に用いる植物の保水剤、植物の支持体である基材、これらを利用した緑化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸(塩)を含むモノマー群の共重合体からなる吸水・保水剤は既に多数報告されている。例えば、特開平10−94729号公報には、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸(アルカリ金属塩)、必要により他の水溶性エチレン性不飽和単量体を特定の比率で共重合体させ、更に熱架橋させた吸水・保水剤が開示されている。
【0003】特開平10−191777号公報には、ノニオン性の水溶性エチレン性不飽和単量体と、必要によりアニオン性の水溶性エチレン性不飽和単量体を特定の比率で共重合させ、更に熱架橋させた土壌または園芸用保水剤が開示されている。また、特開平9−263462号公報には、コンクリートの表面にポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の保水性高分子を混合した植栽基盤が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】特開平10−94729号公報、特開平10−191777号公報に記載される吸水・保水剤は、多価金属イオンを多量に含有する水溶液でも効率よく吸収できる特徴を有すると記載がなされている。しかし、この方法では、一旦水溶液重合で得られた樹脂を、更に熱架橋させる工程を経るため、全体の工程数が多くなっている。結果として、生産コストの上昇を招く要因を内在している。また、特開平9−263462号公報では、保水層に吸水性樹脂を添加することにより、灌水回数を低減でき、なおかつ基材を薄型にして軽量化できるとしている。しかしながら、保水層の吸水性樹脂として非イオン性のものを使用する場合は、吸水倍率が低いので添加量を多くしなければならず、また材料が比較的高価なのでコスト的に不利である。一方、ポリアクリル酸ソーダは植物生長阻害作用を有することが知られており、保水剤としてはあまり適さない。
【0005】なお、アクリル酸(塩)系ポリマーの植物に対する生育阻害については、1)高吸水性高分子物質の作物の初期生長へ及ぼす影響:砂丘研究、31(1)、1−8、1984、2)緑化工資材としての高吸水性ポリマーの利用:緑化工技術、9(2)、11−15、1983、3)植物に優しいハイドロゲル:バイオサイエンスとインダストリー、56(1)、40−41、1998 等の様々な報告がなされている。
【0006】上記するように、従来から提案されている保水剤は、所望の特性を示すものの、なお改善の余地を残すものである。また、これらの保水剤を、植物の生育に用いる際には、その保水剤自体が植物生長を阻害せず、また、用いる原料は可能な限り安価に入手できる材料を用い、工程自体も単純化し、製造コストの低減が可能なものとすることが望まれている。
【0007】一方、緑化分野、特に屋上緑化においては、有機質系もしくは無機質系人工軽量土壌を利用した植栽基盤が考案されているが、長期間にわたり水分の保持性能を維持することは困難であり、吸水・保水力に優れた保水剤が求められている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は前記の課題を解決すべく、鋭意研究を進めたところ、緑化用保水剤として利用可能なものとして、(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸とを主成分とする共重合体において、(メタ)アクリル酸の比率は、40質量部を超えない範囲に留め、加えて、(メタ)アクリル酸を、部分的に中和度を低く抑えつつアルカリ金属塩に変換して、最終原料の(メタ)アクリル酸の5〜50モル%をそのアルカリ金属塩とすると、必要とする吸水性・保水性を維持しつつ、(メタ)アクリル酸塩成分由来の植物生長阻害作用を効果的に抑制することが可能となることを見出した。かかる知見に基づき、前記の組成を有する保水剤を鋭意研究したところ、原料モノマーの比率を、(メタ)アクリルアミド60〜80質量部、(メタ)アクリル酸20〜40質量部、架橋性モノマーを0.01〜5質量部の範囲で添加する範囲に選択し、水溶液中、アルカリ金属を含む塩基で、含有される(メタ)アクリル酸を部分的に中和し、その中和度を5〜50モル%とした状態で重合を行うと、使用したモノマーの比率に沿った含有比率を有し、かつ、樹脂中に含有される(メタ)アクリル酸由来の成分中、アルカリ金属塩に変換されたものの比率が、全(メタ)アクリル酸に由来する成分の5〜50モル%の範囲を占めるものとなることをも確認して、本発明を完成するに至った。
【0009】すなわち、本発明は、(メタ)アクリルアミド60〜80質量部、(メタ)アクリル酸20〜40質量部のうち5〜50モル%を中和によりアルカリ金属塩に変換した(メタ)アクリル酸及びそのアルカリ金属塩、架橋性モノマー0.01〜5質量部を重合してなる架橋共重合体からなる緑化用保水剤である。
【0010】加えて、本発明は、該緑化用保水剤を、保水成分として利用する方法の発明をも併せて提供している。すなわち、本発明にかかる植栽基材は、上記の本発明の緑化用保水剤を保水成分として利用する方法であって、有機質系及び/または無機質系人工軽量土壌を含有してなる土壌に、前記記載の緑化用保水剤を保水成分として添加してなることを特徴とする植栽基材である。加えて、本発明にかかる緑化方法は、上記の本発明の緑化用保水剤を保水成分として利用する方法であって、かかる緑化用保水剤を含有する前記本発明の植栽基材を基盤上に施工し、前記植栽基材に植物体を植え付け、施工部分を緑化することを特徴とする緑化方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を更に具体的に説明する。
【0012】本発明の緑化用保水剤は、原料モノマー全体に対して、(メタ)アクリルアミドを60〜80質量部、(メタ)アクリル酸を20〜40質量部、架橋性モノマーは0.01〜5質量部の範囲に、その比率を選択した上、含まれる(メタ)アクリル酸に関して、その5〜50モル%を中和して、アルカリ金属塩の形態に変換して重合反応を行い、得られる架橋共重合体である。本発明の緑化用保水剤は、前記の通り、高い吸水性を達成する上で好適な、(メタ)アクリルアミド成分が60〜80質量部、(メタ)アクリル酸成分が20〜40質量部の比率の組成を有し、さらに、前記(メタ)アクリル酸成分のうち、5〜50モル%の範囲内に選択する所定の割合のみをアルカリ金属塩とするので、(メタ)アクリル酸塩成分由来の植物生長阻害作用が効果的に抑制されたものとなっている。この二つの利点を生かし、本発明の緑化用保水剤は、緑化に用いる植栽基材における保水成分として、好適に利用することができる。
【0013】例えば、有機質系及び/または無機質系人工軽量土壌を含有してなる土壌に、保水成分として、本発明の緑化用保水剤を添加した植栽基材とし、さらに、このような植栽基材を利用して、基盤上に施工し、植物体を植え付けることにより、施工部分を緑化することを特徴とする緑化方法において、本発明の緑化用保水剤の保水成分としての利点が発揮される。
【0014】本発明の緑化用保水剤において、原料モノマーとして使用される主要なモノマー成分は、非イオン性モノマー成分であるメタクリルアミド、アクリルアミド、ならびに、アニオン性モノマー成分であるメタクリル酸、アクリル酸である。なかでも、非イオン性モノマー成分としてアクリルアミド、アニオン性モノマー成分としてアクリル酸を選択した組み合わせが、特に好適である。原料モノマー中、非イオン性モノマー成分である(メタ)アクリルアミドは主成分とされるが、その使用量は、60〜80質量部の範囲に限定される。非イオン性モノマー成分である(メタ)アクリルアミドの含有比率が、80質量部を超えて高くすると、充分な吸水性能を発揮できない場合が生じる。なお、非イオン性モノマー成分である(メタ)アクリルアミドの含有比率を60質量部以上とし、相対的に、アニオン性モノマー成分である(メタ)アクリル酸の含有比率を過度に高くしないことで、アニオン性モノマー成分である(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩の共重合体成分が関与する植物生長阻害をより効果的に低減できる。
【0015】従って、アニオン性モノマー成分である(メタ)アクリル酸の使用量は、20〜40質量部の範囲に限定される。20質量部を下回ると、得られる樹脂において、充分な吸水性能を達成できないことがある。一方、40質量部を超えると、(メタ)アクリル酸(塩)由来の植物生長阻害作用の効果的な低減が達成されない場合が生じる。加えて、(メタ)アクリル酸の使用量を上記の範囲に選択した上、水溶液中において、原料モノマーの(メタ)アクリル酸全体のうち、アルカリ金属を含む塩基を利用して、5〜50モル%を中和した上で重合に供される。この中和度が、50モル%を超えると、例えば、100%アルカリ金属塩に変換すると、得られる緑化用保水剤において、(メタ)アクリル酸塩由来の植物生長阻害作用が顕著に現れる場合がある。一方、中和度が5モル%に満たないならば、(メタ)アクリル酸の使用量が少なく際には、目標とする高い吸水性能が達成できない場合が生じる。なお、前記アルカリ金属を含む塩基を利用した中和によって、アルカリ金属塩に変換される比率(中和度)を、例えば、全(メタ)アクリル酸成分のうち、20〜50モル%の範囲内に選択することもできる。
【0016】また、本発明の緑化用保水剤は、イオン交換水の吸水倍率が30〜300g/gであることが好ましく、50〜200g/gであることがより好ましい。なお、イオン交換水の吸水倍率を、100〜300g/gの範囲とすることもできる。吸水倍率が30g/g未満では、緑化施工の際、植物が基盤に定着するまで充分な保水力を維持することが困難である。また、吸水倍率が300g/gを超えると基材の比重が重くなり、人工軽量土壌の使用による軽量化の効果が低減する可能性があるので好ましくない。
【0017】また、前記アルカリ金属を含む塩基を利用した中和によって、アルカリ金属塩に変換される比率(中和度)を、全(メタ)アクリル酸成分のうち、5〜50モル%の範囲内において選択しているため、本発明の緑化用保水剤は、イオン交換水を吸水させ膨潤状態とした際、pHは弱酸性の範囲とでき、例えば、pHが3.5〜5.5の範囲内となるように調製することも可能である。同時に、アニオン性モノマー成分である(メタ)アクリル酸の含有比率と、それに含まれるアルカリ金属塩の比率(中和度)とを、上記の範囲内に選択することで、多価金属イオン、例えばカルシウムイオン(Ca2+)に対する捕捉能が不必要に高くなることを防止できるものとなっている。
【0018】本発明の緑化用保水剤は、効率的な製造のため、原料モノマーを含む水溶液中で重合反応を行う際、反応液におけるモノマー濃度の総和を、20〜50重量%の範囲とすることが好ましい。モノマー濃度を少なくとも20重量%以上とすることで、断熱的重合もしくは重合発熱に追随するように外部から加温しながら、所定の温度範囲において重合反応を行うことにより、重合発熱を利用し短時間で効率的に重合反応を行うことができる。また、モノマー濃度を50重量%以下に留めることによって、場合によっては、重合発熱の除去が行うことで、重合発熱によって系内温度の過度の上昇を防止しつつ、所定の温度範囲において重合反応を行うことが可能であり、顕著な生産効率の向上を維持することができる。通常、重合反応は、反応溶液中のモノマー濃度を30重量%未満の範囲に選択する際には、例えば、真空層を備えた断熱重合装置もしくは重合発熱による反応槽内部の温度上昇に追随し、外部から加温可能な重合装置を使用して、重合温度を制御しつつ行うことが好ましい。また、反応溶液中のモノマー濃度を30重量%以上の範囲に選択する際には、例えば、箱型形状の薄型重合槽もしくはモノマー充填可能な堰の付いたベルト状重合装置を用いたシート重合を行うことが好ましい。その際、重合操作は不活性ガス雰囲気下で行うか、もしくは、酸素遮断を目的として、フィルムでラミネートすることにより空気を遮断することが望ましい。また、シート重合の場合は、高濃度重合による過剰な重合発熱を防止する目的で、冷却装置を付設することが望ましい。
【0019】本発明の緑化用保水剤には、架橋構造が導入される。架橋性モノマーとしては、2官能以上のラジカル重合性基を有する単量体ならば特に限定はないが、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、特にN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドが好適である。架橋性モノマーの使用量は、0.01〜5質量部の範囲に、より好ましくは、0.1〜3質量部の範囲に選択することが好ましい。かかる架橋性モノマーの含有比率が0.01質量部以上ならば、水に対する溶解性が低くなるため、灌水や降雨による保水剤の流失を抑制することができる。また、かかる架橋性モノマーの含有比率を5質量部以下、より好ましくは3質量部以下とすることで、架橋に付随する共重合体の架橋密度増大が過度にならず、充分な吸水性能が維持できる。
【0020】本発明の緑化用保水剤は、上述するように、原料主成分とする(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸(塩)の架橋共重合体であるが、目標とする緑化用保水剤の性能を損なわない範囲で、他のモノマーを共重合することもある。その際には、製造に用いる原料モノマー中に、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸(塩)の含有比率を上述する範囲に維持しつつ、他のモノマーを加える。本発明の製造方法を用いる際、前記(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸(塩)と共重合可能な他のモノマーは、ラジカル重合性基を有していれば特に限定はないが、利用可能なものとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩等のカチオン性(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ノルマルブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリルアミドメタンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエタンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドn−ブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)等の(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸(塩)類、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドメチルクロライド塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドベンジルクロライド塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドジメチル硫酸塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドジエチル硫酸塩等のカチオン性(メタ)アクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド等のN−ビニル系水溶性モノマー等が挙げられる。
【0021】本発明の緑化用保水剤は、水性媒体中での溶液重合によって製造することが特に好適である。水性媒体中において好適に使用されるラジカル重合開始剤としては、例えば、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過酸化物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノブタン)2塩酸塩等のアゾ系重合開始剤が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、単独もしくは2種類以上の混合物として使用することができる。また、前記の過酸化物に第三級アミン、亜硫酸塩、第1鉄塩等の還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤、さらには、レドックス系重合開始剤とアゾ系重合開始剤を組み合わせた併用重合開始剤を使用してもよい。
【0022】また、本発明の緑化用保水剤を製造する方法としては、特定波長の光を与える光源下で、光ラジカル重合開始剤を用いて重合を行うこともできる。その際、使用される光ラジカル重合開始剤は、特定波長の範囲内の光照射により分解し、ラジカルを発生するものであれば特に限定はないが、好適に利用できるものとして、例えば、アシルホスフィンオキサイド、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、アントラキノン等の通常光重合に使用される開始剤、その他に、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)ナトリウム塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ系重合開始剤が挙げられる。これらのうちから、利用する光波長に応じて、任意のものを1種類以上を選択し使用することができる。また、前記の特定波長とは、反応液中に含有される単量体自身による光吸収、ラジカル生成に利用される光量子エネルギーの二つの点を考慮すると、波長が200〜650nmの領域の光を用いることが望ましい。波長が200〜650nmの領域の光照射に利用可能な光源の代表例としては、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、蛍光ケミカルランプ、蛍光青色ランプ等が挙げられる。光重合は、前述のシート重合に好適である。
【0023】本発明の緑化用保水剤は、緑化分野において、保水成分としての利用に適している。例えば、有機質系及び/または無機質系人工軽量土壌を含有してなる土壌に、保水成分として、本発明の緑化用保水剤を添加することにより、軽量で保水性に優れた植栽基材を得ることができる。この植栽基材の調製に使用される人工軽量土壌としては、黒曜石系パーライト、真珠岩系パーライト、バーミキュライト等の無機質系鉱物類、ピートモス、バーク堆肥、樹皮等の有機質系土壌改良材、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ−1,2−ブタジエン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂発泡体が挙げられ、目的に応じて、任意のものを単独もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中で、ピートモス、パーライトなどが特に好適である。本発明にかかる植栽基材の構成要素として使用される人工軽量土壌は、その含有量を、20体積%以上であることが好ましく、50体積%以上であることがより好ましい。すなわち、植栽基材の軽量化を図る上では、人工軽量土壌の含有量を20体積%以上に選択することが、極めて有効である。
【0024】また、本発明にかかる植栽基材には、前記の本発明の緑化用保水剤、人工軽量土壌以外に、植栽基材において利用される種々の構成要素成分が含まれてもいてもよい。本発明にかかる植栽基材に含むことができる他の構成要素成分として、例えば、自然土壌、あるいはゼオライト、酸性白土、珪藻土、カオリン、ロックウール等の無機鉱物、ウレタンフォーム、ヤシ殻、クリプトモス等の有機素材等が挙げられる。
【0025】本発明にかかる植栽基材は、前記する固形成分に加えて、植物の生育に必要な成分を含む水溶液を含んでいてもよい。その際、植栽基材を構成する固形成分、特には、本発明の緑化用保水剤に、植物の生育に必要な成分を含む水溶液を吸収させて、前記水溶液成分を保持する植栽基材として製造することができる。
【0026】前記する水溶液中に含ませる、植物の生育に必要な成分としては、窒素、リン、カリウム、カルシウム、鉄、銅、マンガン、亜鉛等の必須な元素源が挙げられる。これらの元素源は、水溶性の塩類として、溶液中に溶解させることが望ましく、通常、これらの元素を含む有機または無機塩類が用いられる。なお、鉄、銅、マンガン、亜鉛の量は、窒素、リン、カリウム、カルシウムの量に比べて、微量でよい。
【0027】また、本発明にかかる緑化用保水剤は、植物の生長を調節するホルモン剤や農薬等を含んでいてもよい。
【0028】
【実施例】以下に、実施例を示して、本発明をより具体的に説明する。なお、これら実施例は本発明にかかる最良の実施形態の一例であるものの、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0029】(吸水倍率測定法)吸水倍率は保水剤0.2gを不織布製袋に封入し、1Lビーカー中のイオン交換水に24時間浸漬した後、充分に水切りして重量を測定した。また別に、保水剤の入っていない不織布製袋を上記方法によって測定し、これをブランクとした。このようにして得られた測定値からブランクを差し引き、保水剤1g当たりの重量に換算した値を吸水倍率とした。この数値が大きいほど、高吸水性であることを示す。
【0030】吸水倍率(g/g)=(膨潤した保水剤を含む不織布製袋の質量−ブランクの不織布製袋の質量)/0.2−緑化用保水剤の製造−<製造例1>1Lビーカーに、50%アクリルアミド水溶液(三菱レイヨン(株)製)280g、アクリル酸(三菱化学(株)製)60g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(日東理研工業(株)製)1g、純水460gを秤り取り、攪拌しながら水酸化ナトリウム10gを添加して溶解し(アクリル酸中和度30モル%)、モノマー水溶液(モノマー濃度24.8%)を調製した。このモノマー水溶液を冷浴で10℃まで冷却し、温度センサー、窒素導入管を備えた1Lのデュワー瓶にモノマー水溶液を移した後、1時間窒素バブリングを行った。
【0031】前記窒素バブリング処理後、このモノマー水溶液に、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩(V−50、和光純薬工業(株)製)の10%水溶液4ml、過硫酸アンモニウム(関東化学(株)製、以下APSと略す)の10%水溶液4ml、L−アスコルビン酸(和光純薬工業(株)製)の10%水溶液2mlを添加した(反応液中の当初モノマー濃度24.4%)。この添加後、直ちに重合反応が開始し、液温は約100分間で82℃に到達した。更に2時間熟成させた後、得られたハイドロゲルを取り出した。ハイドロゲルをミートチョッパーで解砕し、70℃で20時間乾燥させ、粉砕して、緑化用保水剤:GP−1を得た。このGP−1のイオン交換水の吸水倍率は、150g/gであった。その際、イオン交換水を吸水した膨潤状態において、そのpHは4.8となっていた。
【0032】<製造例2>製造例1において、架橋性モノマーとするN,N’−メチレンビスアクリルアミドの使用量を1gから2.4gに変更した他は、全く同様の手順・条件で保水剤の製造を行って、緑化用保水剤:GP−2を得た。このGP−2のイオン交換水の吸水倍率は、100g/gであった。
【0033】<製造例3>製造例1において、架橋性モノマーとするN,N’−メチレンビスアクリルアミドの使用量を1gから4gに変更した他は、全く同様の手順・条件で保水剤の製造を行って、緑化用保水剤:GP−3を得た。このGP−3のイオン交換水の吸水倍率は60g/gであった。
【0034】<製造例4>製造例1において、水酸化ナトリウムの使用量を10gから3.3g(アクリル酸中和度10モル%)に変更した他は、全く同様の手順・条件で保水剤の製造を行って、緑化用保水剤:GP−4を得た。このGP−3のイオン交換水の吸水倍率は110g/gであった。
【0035】<比較製造例1>製造例1のモノマー水溶液の調製工程において、アクリル酸の中和のために加える水酸化ナトリウムを10gから33gに増して、アクリル酸中和度を99モル%とし、他は全く同じ組成として、モノマー水溶液(モノマー濃度24.1%)を調製した。その後の手順、反応条件は、製造例1と同様として、重合反応(反応液中の当初モノマー濃度23.8%)と、得られるハイドロゲルの乾燥・粉砕処理を施して、ポリマー:P−1を得た。このP−1のイオン交換水の吸水倍率は、240g/gであった。その際、イオン交換水を吸水した膨潤状態において、そのpHは6.3となっていた。
−緑化用保水剤の評価−<実施例1>100ml試験管に、GP−1 0.5gを秤り取り、イオン交換水25mlを加えて膨潤させ、ハイドロゲル培地を調製した。この培地に、ローングラスを播種し、照明付インキュベーター(東京理化器械製FLI-301NH型)で、25℃、20,000 lx、12時間長、80%RHの条件で10日間生育試験を行った。試験終了時の生育したローングラスの平均草丈は6.1cmであった。
【0036】<実施例2>実施例1において、GP−1の代わりにGP−2を使用した以外は、全く同様の手順・条件でローングラスの生育試験を行った。試験終了時の生育したローングラスの平均草丈は6.5cmであった。
【0037】<実施例3>実施例1において、GP−1の代わりにGP−3を使用した以外は、全く同様の手順・条件でローングラスの生育試験を行った。試験終了時の生育したローングラスの平均草丈は6.2cmであった。
【0038】<実施例4>実施例1において、GP−1の代わりにGP−4を使用した以外は、全く同様の手順・条件でローングラスの生育試験を行った。試験終了時の生育したローングラスの平均草丈は5.2cmであった。
【0039】<比較例1>実施例1において、GP−1の代わりにP−1を使用した以外は、全く同様の手順・条件でローングラスの生育試験を行った。ローングラスは生育途上で生育障害を起こし、枯死した。
【0040】<比較例2>実施例1において、GP−1の代わりに架橋ポリアクリル酸ソーダ(市販)を使用した以外は、全く同様の手順・条件でローングラスの生育試験を行った。ローングラスは発芽直後に生育障害を起こし、枯死した。
【0041】−植栽基材の調製と評価−<実施例5>ピートモス、パーライトを主成分とする市販の軽量土(嵩比重:約0.3)100gに、緑化用保水剤:GP−1を1g(1重量%)添加し、均一に分散させて植栽基材を調製し、ポリプロピレン製ポッドに充填した。ローングラス1gを、この植栽基材表面に播種して軽く覆土し、0.5dm3の水を均一に灌水した後、 照明付インキュベーターで、25℃、20,000 lx、12時間長、80%RHの条件で1ヶ月間生育試験を実施した。試験中は1週間に1回灌水を行った。
【0042】試験終了時の生育したローングラスの平均草丈は12.2cmであった。更に、このポッドを20,000lx、12時間長、50%RHで乾燥させたところ、10日間経過後も生育状態に変化は見られなかった。
【0043】<実施例6>実施例5において、GP−1の代わりにGP−2を使用した他は、全く同様の手順・条件で、ローングラスの生育試験を行った。試験終了時の生育したローングラスの平均草丈は11.8cmであった。更に、このポッドを実施例5と同じ条件で乾燥させたところ、10日間経過後も生育状態に変化は見られなかった。
【0044】<実施例7>実施例5において、GP−1の代わりにGP−3を使用した他は、全く同様の手順・条件で、ローングラスの生育試験を行った。試験終了時の生育したローングラスの平均草丈は12.5cmであった。更に、このポッドを実施例4と同じ条件で乾燥させたところ、10日間経過後も生育状態に変化は見られなかった。
【0045】<実施例8>実施例5において、GP−1の代わりにGP−4を使用した他は、全く同様の手順・条件で、ローングラスの生育試験を行った。試験終了時の生育したローングラスの平均草丈は11.8cmであった。更に、このポッドを実施例5と同じ条件で乾燥させたところ、10日間経過後も生育状態に変化は見られなかった。
【0046】<比較例3>実施例5において、GP−1の代わりにP−1を用いた他は、全く同様の手順・条件で、ローングラスの生育試験を実施した。試験終了時の生育したローングラスの平均草丈は7.3cmであった。更に、このポッドを実施例5と同じ条件で乾燥させたところ、10日間経過した時点で、ローングラスの約30%がしおれていた。
【0047】<比較例4>実施例5において、GP−1の代わりに架橋ポリアクリル酸ソーダ(市販)を使用した他は、全く同様の手順・条件で、ローングラスの生育試験を実施した。生育状態は不良であり、試験開始から1ヶ月経過した時点で、約20%がすでに枯れていた。
【0048】<比較例5>実施例5において、植栽基材中に保水剤を全く添加しない他は、全く同様の手順・条件で、ローングラスの発芽生育試験を実施した。試験終了時の生育したローングラスの平均草丈は9.2cmであった。更に、このポッドを実施例5と同じ条件で乾燥させたところ、10日間経過した時点で、ローングラスの約80%がしおれていた。
【0049】以上の製造例1、2、3、4の緑化用保水剤、比較製造例1の保水剤、市販の架橋ポリアクリル酸ソーダ、ならびに、実施例5、6、7,8の植栽基材、比較例3、4の植栽基材の評価結果を対比すると、保水剤として、本発明の緑化用保水剤:GP−1、GP−2、GP−3、GP−4(いずれもアクリルアミド−アクリル酸塩架橋重合体:吸水倍率各々150g/g、100g/g、60g/g、110g/g)をそれぞれ軽量土に添加した植栽基材を用いると、植物の生育が良好であり、加えて、乾燥状態での保水性能が高いことが検証された。なお、比較例5の保水剤を全く添加しない軽量土と比較しても、本発明の緑化用保水剤:GP−1、GP−2、GP−3、GP−4をそれぞれ軽量土に添加した植栽基材を用いると、生育状態が良好であり、また、乾燥状態での保水性能が高いことが検証された。
【0050】一方、ポリマー:P−1(アクリルアミド−アクリル酸塩架橋重合体:アクリル酸中和度99モル%)、あるいは、市販の保水剤(架橋ポリアクリル酸ナトリウム)を軽量土に添加した植栽基材を使用した際には、著しい生長阻害が見られ、供試植物が枯死したものもある。なお、保水剤を全く添加しない軽量土と比較しても、この比較例3、4の植栽基材における、枯死もしくは生育不良は有意なものである。
【0051】すなわち、ポリマー:P−1は、アクリル酸ポリマー中のナトリウム塩部分の比率が高いものであり、中和度が高くなり、ナトリウム塩の比率が一定割合を超えると、著しい植物生長阻害を引き起こすことが明確に示唆される。
【0052】一方、本発明の植栽基材では、緑化用保水剤:GP−1、GP−2、GP−3、GP−4のように、含まれる(メタ)アクリル酸成分の中和度を50モル%以下、5モル%以上、この例では10〜30モル%に選択することにより、一部をナトリウム塩として、所望の親水性を保ちつつ、植物生長阻害の要因となることを回避している。また、本発明の植栽基材は、軽量であり尚かつ保水性に優れ、植物生長阻害を起こさないことから、特に植栽基材として好適であることが判る。
【0053】
【発明の効果】本発明は、(メタ)アクリルアミド60〜80質量部、(メタ)アクリル酸20〜40質量部のうち5〜50モル%を中和によりアルカリ金属塩に変換した(メタ)アクリル酸及びそのアルカリ金属塩、架橋性モノマー0.01〜5質量部の架橋共重合体からなる緑化用保水剤に関する。また、本発明の緑化用保水剤は、高い吸水性を達成する上で好適な、(メタ)アクリルアミド成分が60〜80質量部、(メタ)アクリル酸成分が20〜40質量部の比率の組成を有し、さらに、前記(メタ)アクリル酸成分のうち、5〜50モル%の範囲内に選択する所定の割合のみをアルカリ金属塩とするので、植物生長に必須な多価金属イオンに対する捕捉能も低いものとなっている。この二つの利点を生かし、本発明の緑化用保水剤は、緑化に用いる植栽基材における保水成分として、好適に利用することができる。
【出願人】 【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
【住所又は居所】東京都港区港南一丁目6番41号
【出願日】 平成14年1月21日(2002.1.21)
【代理人】 【識別番号】100088328
【弁理士】
【氏名又は名称】金田 暢之 (外2名)
【公開番号】 特開2003−169537(P2003−169537A)
【公開日】 平成15年6月17日(2003.6.17)
【出願番号】 特願2002−11511(P2002−11511)