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【発明の名称】 建築物の緑化方法
【発明者】 【氏名】牧野 俊二
【住所又は居所】福岡県福岡市南区野間4丁目4−36 株式会社ダイイチコロナ工販内

【要約】 【課題】従来の粒状の人工培土による植栽ベッドに代えて簡易な構造の植栽ベッドとし、建築物緑化の構造を簡素化する。

【解決手段】板状の多孔質セラミックス体11を屋上などの緑化領域に敷き詰めて植栽ベッド10とし、この多孔質セラミックス体11の上面に着生植物であるミズゴケを植栽して着生植物層20を形成する。着生植物層20を構成するミズゴケはマット状の植物体の隙間に培養土を巻き込みながら多孔質セラミック体表面の多数の突起および孔隙に枝部を引っ掛けて着生する。そして、この着生植物層20および培土層21内に根をはる単葉植物30を植栽する。また植栽ベッド10は、壁面に垂直に配置することもできる。このときでも着生植物は多孔質セラミック体11表面に着生しているために剥離しにくい構成となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 建築物の屋上や壁面を緑化する方法において、板状の多孔質セラミック体を緑化領域に敷き詰めて植栽ベッドとし、前記板状の多孔質セラミック体上面に着生植物層を形成することを特徴とする建築物の緑化方法。
【請求項2】 前記多孔質セラミック体上面と前記着生植物層の間に培土層を形成する請求項1に記載の建築物の緑化方法。
【請求項3】 前記培土層に単葉植物を植栽する請求項1または2に記載の建築物の緑化方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建築物の屋上やバルコニー、壁面などを人工的に緑化する方法に関し、とくに土壌の構成材料の一部として多孔質セラミック体を使用して簡易な構造で建築物を緑化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ビルや住宅などの建築物の屋上やバルコニーの床面に土壌を敷き詰め、樹木を植樹し、芝生を植栽して緑化する技術は公知のものである。また、屋上やバルコニーの緑化は、とくに緑地が少なくなっている都市部において有効であり、屋上などを緑化して緑地面積が増加することによって、平均気温を下げる効果が期待され、都市部で問題となっているヒートアイランドによる平均気温の上昇に伴う生活環境の悪化を改善することができるとともに、建築物の最上階での室内環境の改善、とくに夏期の屋根からの熱負荷の低減効果に寄与することができる。
【0003】屋上緑化の一般的な方法としては、軽量薄型の植栽ベッドを屋上のスラブ面に設置し、その底面から毛細管現象を利用して植物に給水する方法や、スラブ面に防水層、防根層、排水層、保水層を順に構成し、その上に土壌(または人工軽量土壌)を敷き詰めて植栽する方法が用いられている。このような屋上緑化において、植栽ベッドの吸水性や土壌の保水性、排水、あるいは積層構造の簡素化などの改良に関して種々の提案がなされている。
【0004】たとえば特開平8−80130号公報には、高さの低い遮水槽内に多孔質培土を敷き詰め、この多孔質培土層内に給水パイプと排水パイプを設置して植栽ベッドとし、この植栽ベッドの上に植栽カゴカセットを載置した構造が記載されている。この構造では、貯水槽からの給水と排水を制御して植栽ベッドの保水量を制御することにより、植物の根に対して充分な水が供給される。
【0005】また特開平8−317729号公報には、屋上またはバルコニーの屋根床の上面に防根性を有する防水層を形成し、この防水層の上面に貯水可能な保水層を形成し、この保水層の上面に高排水性土壌を敷き詰めるようにした構造が記載されている。このような構造とすることによって、防根性のある防水層にて芝生の根の影響が屋根床に及ばないようにすることができ、高排水性土壌に供給した水分を保水層にて必要な分だけ貯留し、常に高排水性土壌を最適の状態に維持することができる、とされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ヒートアイランド現象の緩和を目的とした建築物の緑化を考える場合、屋上やバルコニーのごく一部の狭い範囲のみ緑化してもその効果は低く、緑化による気温降下をはかるためには、できるだけ広い面積にわたり緑化することが望ましい。かかる観点からすると、上記の各公報に記載の緑化方法は、広い面積の緑化には適していないといえる。
【0007】特開平8−80130号公報に記載の構造では、植栽ベッドに多孔質培土を装填する作業および多孔質培土層内の給排水パイプの配管作業が厄介であり、また、植栽カゴカセットの配置や水分補給の管理が面倒である。特開平8−317729号公報に記載の構造では、従来の五層構造が三層構造になるとはいえ、大量の軽量人工土壌層を敷き詰める構成であり、風や雨により土壌層が流出する可能性がある。土壌層の流出は植栽範囲周辺の設備や環境に影響を与えてしまうために小規模の緑化にしか適用できない。
【0008】また、屋上のみの緑化にとどまらず、建築物の壁面も緑化しようとする場合、従来の粒状の人工培土では、容器状のベッドに装填する以外になく、装置構造が複雑になる。
【0009】本発明が解決すべき課題は、従来の粒状の人工培土による植栽ベッドに代えて簡易な構造の植栽ベッドとし、建築物緑化の構造を簡素化することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、建築物の屋上や壁面を緑化する方法において、板状の多孔質セラミック体を緑化領域に敷き詰めて植栽ベッドとし、前記板状の多孔質セラミック体上面に着生植物層を形成することを特徴とする建築物の緑化方法である。
【0011】本発明において植栽ベッドとして使用する多孔質セラミック体は、多数の連続気泡を有し、透水性、保水性に優れた焼結体である。たとえば特許第3158086号公報に、多数の細孔を有するクリンカーアッシュ粒子を骨材とし、その表面の少なくとも一部に被覆した10〜100μm程度の通孔をもつ多孔質結晶化ガラスを介してクリンカーアッシュ粒子を部分的に結合せしめるとともに、この結合したクリンカーアッシュ骨材の粒子間に100〜5000μmの空隙を形成させた粗粒子焼結体が記載されており、このような粗粒子焼結体を板状とした多孔質セラミック体を好適に使用することができる。
【0012】本発明では、この多孔質セラミック体上面に着生植物層を形成する。着生植物とは、藻類と菌類の共生する地衣類や蘚苔類植物を指し、多孔質セラミック体上面に付着して、多孔質セラミック体内の空隙に保持された水分や養分を吸収して成長する。着生植物は乾燥に強く、繁殖能力も高いので、培土がない多孔質セラミック体であっても自生することができる。このとき、着生植物は多数の枝部が多孔質セラミック体の表面凹凸に入り込み、引っ掛かることで着生する。
【0013】植栽ベッドとしての多孔質セラミック体への着生植物の固定は、着生植物本来の機能により着生させるものであるため、他の固定器具や容器などは必要としない。また着生植物は植栽ベッド表面を覆うように繁殖し、植物体自体は高さ方向にはあまり成長しない。したがって、着生後に植栽ベッドを垂直方向に立てて配置しても、植栽ベッドから着生植物層が剥離することはないので、建築物の壁面の緑化にも簡単な構造で取り付けて壁面緑化をはかることができる。
【0014】さらに、この多孔質セラミック体上面と着生植物層の間に培土層を形成してもよい。多孔質セラミック体上面と着生植物層の間にピートモスなどの培土を散布して培土層を形成することで、着生植物の着生をより良くするとともに、この培土層に他の植物を植栽することができる。この培土層を覆うようにして着生植物が成長することで、培土層は着生植物によって保持されるので、壁面緑化の場合でも培土層を形成することは可能である。
【0015】さらに、上記の培土層に単葉植物を植栽することもできる。培土層内に芝などの単葉植物の種子を散布し、発芽した根を培土および着生植物に絡ませることで単葉植物を固定することができる。これら単葉植物が成長し葉や茎が着生植物層上方に生い茂ることにより、着生植物に直射日光があたることが低減され、着生植物が適当な湿度を保つことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施形態における緑化構造体の一部を示す斜視図である。本実施形態においては、板状の多孔質セラミック体11を緑化領域に敷き詰めて植栽ベッド10とし、この多孔質セラミック体11の上面に着生植物であるミズゴケを植栽して着生植物層20を形成する。着生植物層20を構成するミズゴケはマット状の植物体の隙間に培土(図2の培土層21を参照)を巻き込みながら多孔質セラミック体表面の多数の突起および孔隙に枝部を引っ掛けて着生している。この着生植物層20および培土層21に根をはる単葉植物30を植栽する。
【0017】さらに図2に示すように、本実施形態における植栽ベッド10を、壁面を緑化するために壁面に沿って垂直に配置することもできる。この場合でも、着生植物は多孔質セラミック体11表面に着生しているために剥離しにくい構成となる。また、この着生植物層20と多孔質セラミック体11表面との間に培土を介在させることにより、垂直な壁面に層状に固定された培土層21を形成することができる。
【0018】さらにこの植栽ベッド10は、植栽ベッド10とほぼ同面積の容器内に収納し、この容器底部に水がある程度の水位を保って溜まるようにすることも可能である。板状の多孔質セラミック体11には貫通した多数の微細な孔隙が形成されており、毛管現象によって多孔質セラミック体11下面の水分は孔隙を通じて着生植物層20へ供給される構成となる。したがって、緑化領域に散水しなくとも雨水などの溜まり水により植栽ベッド10へ給水することが可能となる。
【0019】本実施形態において使用する多孔質セラミック体11は、前述の特許第3158086号公報に記載された粗粒子焼結体であり、多数の連続気泡を有し、透水性、保水性に優れた焼結体である。
【0020】この多孔質セラミック体11は、クリンカーアッシュ骨材と、ソーダ石灰ガラスと水硬性セメントからなる多孔質結晶化ガラス成分とを主成分とする配合物に水を加えて混合、造粒した組成物を成形、焼結することによって、クリンカーアッシュ中のカーボン質からのガス放出により連続気孔が形成され、高い結合強度を有し、骨材および骨材間に優れた透水性と保水性を有する焼結体である。
【0021】この板状の多孔質セラミック体11の寸法は、製造工程上の制約や取り扱い上の制約の範囲内で、できるだけ大きい方が望ましい。建築物の屋上や壁面に敷設する際の取り扱いおよび作業効率上の適当な大きさは、幅400〜600mm程度、長さ600〜900mm程度である。厚さは、折損などが生じない程度の強度が確保されればよい。
【0022】この多孔質セラミック体11を敷き詰めた植栽ベッド10に直接植栽する場合は、乾燥ミズゴケを予め一昼夜程度吸水させたものを植栽ベッド10に敷き詰める。この植栽ベッドに充分に水を与え、日当たりの良い場所で数日間育成して着生植物層20を形成する。またピートモスなどの培土を散布したあとにミズゴケを植栽することも可能である。さらにこのあと、植栽ベッド10上に単葉植物を植栽してもよい。
【0023】上記の板状の多孔質セラミック体11を緑化領域に敷き詰めて植栽ベッド10とすることにより、植栽ベッド10の構築が容易になり、緑化領域が広い場合でも緑化装置全体の構造を簡素化することができる。
【0024】
【発明の効果】(1)板状の多孔質セラミック体を緑化領域に敷き詰めて植栽ベッドとし、この板状の多孔質セラミック体上面に着生植物層を形成することで、植栽ベッドの構築が容易になり、緑化領域が広い場合でも緑化装置全体の構造を簡素化することができる。着生植物は多孔質セラミック体の表面凹凸に仮根が入り込んで固定されるので、壁面緑化の場合に多孔質セラミック体を垂直に配置しても着生植物が剥離することがない。
(2)植栽ベッドの着生植物層と多孔質セラミック体の間に培土層を形成しても、培土は着生植物体によって保持されるので培土の流出や飛散を防ぐことができる。
(3)植栽ベッドに着生させた着生植物層に単葉植物を植栽することで、植栽ベッドを垂直に配置した場合でも植物の根部が着生植物層とともに多孔質セラミック板に固定される。これにより建築物の壁面を簡易な装置で緑化することができる。
【出願人】 【識別番号】501459756
【氏名又は名称】株式会社ダイイチコロナ工販
【住所又は居所】福岡県福岡市南区野間4丁目4−36
【出願日】 平成13年11月28日(2001.11.28)
【代理人】 【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
【公開番号】 特開2003−158916(P2003−158916A)
【公開日】 平成15年6月3日(2003.6.3)
【出願番号】 特願2001−362452(P2001−362452)