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【発明の名称】 作業機の走行装置
【発明者】 【氏名】松田 善正
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】上村 孝彦
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】秋山 尚文
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】廣田 幹司
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【要約】 【課題】煩雑な操作をすることなく、走行停止中であっても、畦際等で刈取・脱穀作業ができる作業機の走行装置を提供する。

【解決手段】エンジン入力軸17に設けた走行伝動機構(ギア102、ギア28〜30側)と刈取・脱穀伝動機構(ギア101、107、プーリ31側)とに伝動系を分岐する分岐部と、該分岐部に設けた前記刈取・脱穀伝動機構へは駆動力を常時伝達可能とし、前記走行伝動機構への駆動力の伝達を入り切りするクラッチ部材105と、前記走行伝動機構への動力伝達を遮断し、かつ手動のHSTレバー23を前記入力軸17部へのエンジン駆動力が伝達されない中立位置にした後に前記刈取・脱穀伝動機構を増速位置に変速可能にする単一の操作手段(足踏み式の畦際・駐車ペダル108)とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンからの駆動力を入力する入力軸17部と、該入力軸17部へのエンジン駆動力を増速位置又は中立位置に変速制御する手動の変速手段23と、前記入力軸17部からの駆動力を複数段に副変速した後の駆動力を左右一対の車軸11L、11Rへ断続的に伝動可能な左右のサイドクラッチ44L、44Rを含む変速用歯車機構を備えた走行伝動機構と、前記入力軸17部に設けた刈取装置9及び/又は脱穀装置10の駆動を行う刈取・脱穀伝動機構と、前記走行伝動機構と刈取・脱穀伝動機構とに伝動系を分岐する分岐部と、該分岐部に設けた前記刈取・脱穀伝動機構へは駆動力を常時伝達可能とし、前記走行伝動機構への駆動力の伝達を入り切りするクラッチ部材105と、前記走行伝動機構への動力伝達を遮断し、かつ手動の変速手段23を前記入力軸17部へのエンジン駆動力が伝達されない中立位置にした後に前記刈取・脱穀伝動機構を増速位置に変速可能にする単一の操作手段とを備えたことを特徴とする作業機の走行装置。
【請求項2】 前記単一の操作手段は足踏み式のペダル108であることを特徴とする請求項1記載の作業機の走行装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クローラ等を走行手段とする作業機の走行装置に関する。
【0002】
【従来の技術】クローラを走行手段とする作業機の走行装置として、農業用のコンバインを例に従来の技術を説明する。コンバインはクローラを構成する無限履帯の接地面積を広くし、水田など軟弱な圃場でも自由に走行して刈取作業などの農業作業を可能としている。
【0003】コンバインは動力源としてエンジンを搭載し、エンジンの発生する動力をコンバインの走行、刈取、脱穀などに使用するが、そのクローラは、エンジンの動力を走行トランスミッションにより変速して駆動する。走行トランスミッションは、静油圧式無段変速装置(以下、無段変速装置をHSTという)、歯車列機械的変速手段、クラッチ手段、ブレーキ手段などにより構成されている。
【0004】コンバインを直進走行させるときは、左右一対のクローラを等速で駆動し、コンバインを左右に旋回させるときは、左右のクローラに速度差を与えて駆動し、高速側のクローラを外側に、低速側、停止側または後退側のクローラを内側とする旋回が可能な構成としている。
【0005】また、従来の走行トランスミッション基本伝動系を備えた走行系に、差動歯車装置を備えた走行トランスミッション差動伝動系(補助伝動系)を加えた構成を用いて微速前進時の旋回確実性を向上させたコンバインが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前記差動歯車装置を備えた走行系を備えたコンバインの中には、畦際等で刈取・脱穀作業を継続したい場合において、このとき走行停止中であると、走行トランスミッションの走行系が停止状態である場合には刈取装置と脱穀装置も停止してしまい、畦際等で刈取・脱穀作業ができないコンバインがある。
【0007】この不具合を解消して畦際でコンバインの走行を停止させたまま、刈取・脱穀作業をするために、駐車ブレーキと畦際刈りペダルを設けたコンバインがあるが、このような構成では駐車ブレーキを踏み込んで走行を停止させ、同時に畦際刈りペダルを踏み込むという2つの動作を同時に行う必要があり、煩雑な操作であり、また誤操作の原因になっていた。
【0008】本発明の課題は、煩雑な操作をすることなく、走行停止中であっても、畦際等で刈取・脱穀作業ができる作業機の走行装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は次の構成により解決される。請求項1の発明は、エンジンからの駆動力を入力する入力軸17部と、該入力軸17部へのエンジン駆動力を増速位置又は中立位置に変速制御する手動の変速手段23と、前記入力軸17部からの駆動力を複数段に副変速した後の駆動力を左右一対の車軸11L、11Rへ断続的に伝動可能な左右のサイドクラッチ44L、44Rを含む変速用歯車機構を備えた走行伝動機構と、前記入力軸17部に設けた刈取装置9及び/又は脱穀装置10の駆動を行う刈取・脱穀伝動機構と、前記走行伝動機構と刈取・脱穀伝動機構とに伝動系を分岐する分岐部と、該分岐部に設けた前記刈取・脱穀伝動機構へは駆動力を常時伝達可能とし、前記走行伝動機構への駆動力の伝達を入り切りするクラッチ部材105と、前記走行伝動機構への動力伝達を遮断し、かつ手動の変速手段23を前記入力軸17部へのエンジン駆動力が伝達されない中立位置にした後に前記刈取・脱穀伝動機構を増速位置に変速可能にする単一の操作手段とを備えた作業機の走行装置である。
【0010】請求項2の発明は、前記単一の操作手段は足踏み式のペダル108である。
【0011】請求項1、2の発明によれば、単一の操作手段(畦際(駐車)ペダル108)を踏み込むと、変速手段(主変速HSTレバー)23が強制的に中立復帰する。そのとき、例えば図8に示すように揺動アーム121の長孔121aと固定部材117のL字型孔117aとが側面視で合致して、ロッド123、124の下端部に回動自在に挿入されたペダル108に突設されたピン120がL字型孔117aと長孔121a内を共に移動できるようになると、中立位置に強制復帰した主変速HSTレバー23を前進操作することができるようになる。
【0012】例えば、図6に示す例で本発明の前記「刈取装置9及び/又は脱穀装置10の駆動を行う刈取・脱穀伝動機構と前記入力軸17部に設けた走行伝動機構と刈取・脱穀伝動機構とに伝動系を分岐する分岐部」について説明すると、単一の操作手段(畦際(駐車)ペダル108)を、矢印■の方向に踏み込むと、畦際ペダル108の先端部の揺動中心軸108aを中心に矢印■方向に揺動し、揺動プレート110の端部に一端が固定されたケーブル112(アウターワイヤ112aとインナーワイヤ112b)が作動して、揺動プレート113が矢印■方向に作動し、該揺動プレート113の回動中心と同一回動中心を持ち揺動プレート113と固着したシフター114が矢印■方向に揺動して、シフター114に当接したシフト部材103の摺動によって爪クラッチ105が離脱する。
【0013】ミッション入力軸である広幅伝動ギア26に、刈取出力ギア101を相対回転不能に固定し、走行出力ギヤ102を相対回転自在に遊嵌し、シフト部材103を軸方向摺動自在にスプライン嵌合し、走行出力ギヤ102とシフト部材103との対向端面間に爪クラッチ105が形成されている。従って前記シフト部材103の軸方向への摺動によって、該爪クラッチ105が係脱するよう構成されている。
【0014】シフト部材103は常時クラッチ105側に付勢されているので、爪クラッチ105が係合すると、走行出力ギヤ102が伝動ギア26と一体回転し、該走行出力ギヤ102と常時噛合した副変速ギヤである大中小ギア28〜30を介してこれより下位の走行伝動系が駆動され、爪クラッチ105が離脱されると走行出力ギヤ102には広幅伝動ギア26からの動力伝達が無くなり、走行出力ギヤ102はフリー回転するが、広幅伝動ギア26と一体的に回転する刈取出力ギア101から第一副変速軸27(b軸)に固着した刈取伝動ギア107には広幅伝動ギア26の駆動力が伝達され、第一副変速軸27(b軸)に固着した刈取伝動プーリ31が回転して刈取装置9は駆動状態を維持する。
【0015】従来は、駐車ブレーキ用のペダルと畦際刈りペダルとを独立して設けているが、本発明では、単一の操作手段(畦際(駐車)ペダル108)の操作によって、停車と該停車後の畦際刈りとを行うことができる。
【0016】
【発明の効果】本発明の請求項1、2記載の発明によれば、単一の操作手段(畦際(駐車)ペダル108)を踏み込むと、変速手段(主変速HSTレバー)23が強制的に中立復帰したのち、機械的なリンク機構で中立位置に強制復帰した変速手段(主変速HSTレバー)23を前進操作することができるようになるため、低コストで畦際で走行停止しながら刈取・脱穀作業ができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を用いて具体的に説明する。図1は本発明のコンバインの左側面図であり、図2は本発明のコンバインの右側面図である。
【0018】図1および図2に示すように、コンバイン1の車体フレーム2の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ3を有する走行装置本体4を配設し、車体フレーム2の前端側に分草杆8を備えた刈取装置9が設けられている。刈取装置9は車体フレーム2の上方の支点を中心にして上下動する刈取装置支持フレーム7で支持されているので、コンバイン1に搭乗したオペレータが操縦席20の操向レバー21を前後に傾倒操作することにより、刈取装置支持フレーム7と共に上下に昇降する構成である。
【0019】車体フレーム2の上方には、刈取装置9から搬送されてくる穀稈を引き継いで搬送して脱穀、選別する脱穀装置10と該脱穀装置10で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク13が載置され、グレンタンク13の後部にオーガ15を連接して、グレンタンク13内の穀粒をコンバイン1の外部に排出する構成としている。
【0020】すなわち、コンバイン1はオペレータが操縦席20において主変速HSTレバー23および副変速レバー22を操作し、エンジン(図示せず)の動力を図3、図4に示す走行トランスミッションケース12内の主変速機の走行用HST18および副変速機24の歯車変速手段を介して変速し、左右のクローラ3、3に伝動して任意の速度で走行する。
【0021】また、コンバイン1は、オペレータが操縦席20において操向レバー21を左右に傾倒操作することにより各種旋回走行することができる。すなわち、操向レバー21をコンバイン1を旋回させようとする方向に傾倒操作することにより、図3、図4に示す走行ミッションケース12内のクラッチ44、82が作動し、左右のクローラ駆動スプロケット(図示せず)に選択的に伝動されるので、左右のクローラ3、3に速度差が与えられて走行方向の変更が行われる構成としている。
【0022】本実施の形態のコンバイン1の走行ミッション装置14を展開して示す断面図を図3、図4に示し、図5に差動歯車装置のギアの回転数の関係図を示す。
【0023】走行ミッション装置14は、図3に示すa〜e軸からなる走行トランスミッション基本伝動系と図4に示すカウンタ軸60(A軸)、クラッチ軸70(B軸)及び支持軸50(C軸)を備えた走行ミッション差動伝動系(補助伝動系)を備えている。
【0024】まず、走行ミッション装置14のa軸〜e軸からなる走行トランスミッション基本伝動系を主に図3で説明する。図示しないエンジンからの回転駆動力が走行用HST18に伝動され、正・逆転の切換えや変速回転動力が出力軸17(a軸)から出力される構成としている。そして、主変速レバー23により走行用HST18の増減速の変速と前後進(正・逆転の切換え)の切換えができる構成としている。
【0025】そして、操向レバー21を操作して、後述のサイドクラッチ44L、44Rの「入」・「切」と増減速の変速操作により差動歯車装置6を駆動させて旋回走行ができる構成としている。
【0026】走行ミッションケース12内には、副変速装置24とサイドクラッチ装置と差動歯車装置6とギア変速装置19が設けられ、これらの装置の伝動下手側の左右のホイールシャフト11L、11Rから図示しない駆動スプロケットを介して左右の走行クローラ3、3を駆動する構成になっている。
【0027】副変速装置24は、走行用HST18の出力軸17の広幅伝動ギア26からの動力が伝動される第一副変速軸27(b軸)上に一体に設けられた大ギア28と中ギア29と小ギア30と第二副変速軸33(c軸)上に設けられた変速大ギア34、変速中ギア35及び変速小ギア36から構成される。第一副変速軸27上に一体に設けられたギア28〜30は第一副変速軸27の軸方向に摺動自在に軸装して変速可能に構成している。そして、上記第一副変速軸27は、端部を走行ミッションケース12から外側に延長して刈取伝動プーリ31(刈取PTOプーリ)を軸着して車速に同調した回転動力を刈取装置9などの回転各部に入力できる構成としている。
【0028】そして、第二副変速軸33は、前記第一副変速軸27の伝動下手側に軸架し、変速大ギア34、変速中ギア35、変速小ギア36及び伝動ギア37をそれぞれ軸着している。第二副変速軸33の変速大ギア34は前記第一副変速軸27の小ギア30に噛合し、変速中ギア35は第一副変速軸27の中ギア29に噛合し、変速小ギア36は第一副変速軸27の大ギア28に噛合し、さらに伝動ギア37は後述のサイドクラッチ軸41L、41R(d軸)に動力を伝動するセンターギア40に常時噛合している。また伝動ギア37はカウンタ軸60の出力ギア61にも常時噛合している。
【0029】サイドクラッチ装置は、上記第二副変速軸33の伝動下手側にセンターギア40を中心として、その左右にサイドクラッチ軸41L、41Rを備えている。サイドクラッチ軸41L、41R上にはそれぞれクラッチギア43L、43Rがスプライン係合しており、前記センターギア40にはクラッチギア43L、43Rが係合、解放可能な内周ギアを備えている。また、クラッチギア43L、43Rはスリーブ42L、42R上にスプライン係合し、さらに、スリーブ42L、42Rは左右のサイドクラッチ軸41L、41R上にそれぞれ遊嵌している。
【0030】ギアドック式に噛合したクラッチギア43L、43Rとセンタギア40の内周ギアからなる構成をそれぞれサイドクラッチ44L、44Rと呼ぶことにする。
【0031】また、サイドクラッチ軸41L、41R上にはスリーブ42L、42Rがそれぞれ遊嵌しており、スリーブ42L、42Rを介してクラッチギア43L、43Rがホイールシャフトギア48L、48Rと常時係合していて、ギア48L、48Rにそれぞれホイールシャフト11L、11R(e軸)が固定され、該ホイールシャフト11L、11Rの両端に図示しない駆動スプロケットが固定され、該駆動スプロケットにそれぞれ固定された左右の走行クローラ3、3が駆動可能になっている。
【0032】また、スリーブ42L、42Rと走行ミッションケース12との間にそれぞれスプリング49L、49Rが設けられ、このスプリング49L、49Rによりスリーブ42L、42Rは常時センターギア40側に付勢されているが、それぞれシフタ47L、47Rでスプリング49L、49Rの付勢力に打ち勝つ方向に移動可能な構成になっている。
【0033】シフタ47L、47Rは直進走行時には作動せず、サイドクラッチ44L、44Rが共に係合した状態であるので、左右のクローラ3、3が等速回転する。また所望の旋回方向に操向レバー21を操作することでシフタ47L又は47Rが作動して、サイドクラッチ44L又は44Rの係合と解放が選択され、エンジン動力が左又は右のクローラ3、3に伝達され、所望の方向に回転する。また、ホイールシャフトギア48L、48Rは後述する差動歯車装置6のサイドギア55L、55Rと常時噛合している。
【0034】また、走行ミッション装置14のA軸〜C軸から成る走行トランスミッション差動(補助)伝動系を主に図4で説明する。走行トランスミッション差動(補助)伝動系は、前記副変速装置24の後段側に設けられるクラッチ軸70(B軸)上に設けられる直進用クラッチ81と旋回用クラッチ82とカウンタ軸60(A軸)を備えたギア変速装置19と支持軸50(C軸)を備えた差動歯車装置6を備えている。
【0035】ギア変速装置19のカウンタ軸60には直進用クラッチ81に動力伝達するための出力ギア61が固着されており、また該出力ギア61の並列位置に出力ギア62が設けられており、スピンターン又はブレーキターンで旋回できる構成になっている。出力ギア61には、第二副変速軸33の伝動ギア37から駆動力が伝達される。
【0036】ギア変速装置19からの駆動力が直進用クラッチ81に伝動されると、該駆動力は差動歯車装置6のリングギア53、中間ベベル歯車52を経由してサイドギア51L、51Rを同時に等速回転させて、支持軸50(C軸)及びサイドギア55L、55Rを回転させ、さらにホイールシャフトギア48L、48Rとホイールシャフト11L、11R(e軸)を経由して走行クローラ3、3を等速回転させる。
【0037】また、前記副変速装置24及びギア変速装置19からの回転伝動力が旋回用クラッチ82を経由する場合は、差動歯車装置6のサイドギア51L、51Rをそれぞれ所定の互いに異なる回転数で回転させ、左右のクローラ3、3を経由して所望の方向に所望の旋回モードでコンバインを旋回させるが、その詳細は後述する。
【0038】副変速レバー22の作動で副変速シフタステー(図示せず)を介して副変速装置24の第一変速軸27の三種類の変速ギア28、29、30と第二副変速軸33の対応するギア36、35、34のいずれかの組を噛合させることで第二副変速軸33の伝動ギア37に常時係合するカウンタ軸60(A軸)に固定された出力ギア61を回転させる。該カウンタ軸60の出力ギア61は円筒状回転体72に設けられたギア72aに常時噛合している。円筒状回転体72はクラッチ軸70に遊嵌しており、該円筒状回転体72とスプライン嵌合している円筒状回転体71との間で多板式摩擦板からなる直進用クラッチ81を構成している。なお、円筒状回転体71はクラッチ軸70とスプライン嵌合している。また、円筒状回転体72の外周には円筒状回転体74が遊嵌しており、該円筒状回転体74には伝動ギア37に常時係合するカウンタ軸60(A軸)に固定された出力ギア62とが常時係合している。また円筒状回転体74と円筒状回転体71との間で多板式摩擦板からなる旋回用クラッチ82を構成している。直進用クラッチ81と旋回用クラッチ82との間には圧縮バネ75が配置され、該圧縮バネ75の付勢力は直進用クラッチ81が「入」となる油圧より強く設置されている。
【0039】また、円筒状回転体71の外周には直進用クラッチ81と圧縮バネ75と旋回用クラッチ82の間をそれぞれ仕切る円盤状プレート76a、76bを備えた円筒体76が一体化して設けられている。
【0040】油口77から圧油の導入がない場合には圧縮バネ75によって円筒状回転体71と円筒状回転体72との間で常時直進用クラッチ81が係合する「入」方向に付勢されている。直進用クラッチ81は常時「入」状態を保ち、旋回用クラッチ82は常時「切」状態を保っている。
【0041】油口77から圧油の導入があると、ピストン73と円筒体76がバネ75の付勢力に打ち勝って図4の左側(矢印A方向)にシフトし、直進用クラッチ81は解放(「切」状態)となり、旋回用クラッチ82が係合(「入」状態)になる。
【0042】直進用クラッチ81が「入」の場合はカウンター軸60の出力ギア61からの駆動力は円筒状回転体72、円筒状回転体71、クラッチ軸70を回転させ、該クラッチ軸70にスプライン嵌合している伝動ギア78と、該伝動ギア78に常時係合している差動歯車装置6のリングギア53を回転させる。このとき旋回用クラッチ82が「切」であるのでカウンター軸60の出力ギア62からの駆動力は円筒状回転体74を空回りさせる。
【0043】また、旋回用クラッチ82が「入」の場合は、直進用クラッチ81が「切」となり、カウンター軸60の出力ギア61からの駆動力は円筒状回転体72を空回りさせるが、このときカウンター軸60の出力ギア62の駆動力が円筒状回転体74のギア74aを経由して、円筒状回転体71を回転させ、該回転体71の回転でクラッチ軸70を駆動させる。この結果、クラッチ軸70に固定された伝動ギア78が回転して差動歯車装置6のリングギア53を回転させる。
【0044】差動歯車装置6には、中間ベベル歯車52の外周に設けたデフケース54と一体のリングギア53が設けられており、また、支持軸50には側部ベベル歯車51L、51Rが回転可能に支持されており、また、側部歯車51L、51Rには左右のサイドギア55L、55Rがそれぞれ固定している。これらサイドギア55L、55Rはそれぞれホイールシャフトギア48L、48Rに常時係合している。リングギア53はクラッチ軸70の伝動ギア78に常時係合している。
【0045】図4から明らかなように直進用クラッチ81と旋回用クラッチ82を同一軸であるクラッチ軸70に設けることにより両クラッチ81、82を択一的に操作できるので、構成が簡素化でき、安価になる。また両クラッチ81、82の切り替えのタイミングを機械的に調整できるので複雑な制御が不要となる。
【0046】上記構成からなる走行ミッション装置14のギア機構において、コンバインの直進時はサイドクラッチ装置の左右のサイドクラッチ44L、44Rが共に係合したままであり、エンジン動力は副変速装置24の第二副変速軸33の伝動下手側のサイドクラッチ軸41L、41Rと係合しているセンターギア40から左右の走行系に動力がそれぞれ伝動される。左側の走行系ではセンターギア40から伝動される動力はクラッチギア43Lからホイールシャフトギア48L、ホイールシャフト11L及び図示しない駆動スプロケットを順次回転させて左クローラ3を駆動する。同様に右側の走行系ではセンターギア40の動力はクラッチギア43Rからホイールシャフトギア48R、ホイールシャフト11R及び図示しない駆動スプロケットを順次回転させ右クローラ3を駆動する。
【0047】副変速レバー22の作動で副変速シフタステー(図示せず)が副変速装置24の第一副変速軸27のギア28、29、30とそれぞれ対応する第二副変速軸33のギア36、35、34のいずれかの組のギア同士を噛合させて、適切な速度段で直進走行ができる。
【0048】このとき直進用クラッチ81は「入」で、旋回用クラッチ82は「切」であり、直進時の差動歯車装置6の状態は次の通りである。
■ホイールシャフトギア48L、48Rが共に回転しているので、ホイールシャフトギア48L、48Rがそれぞれ噛合しているサイドギア55L、55Rは同じ方向に共に等速回転する。従って、サイドギア55L、55Rとそれぞれ一体回転するサイドギア51L、51Rを介してデフケース54と該デフケース54と一体のリングギア53も同じ方向に回転する。
【0049】さらに、■第二副変速軸33の駆動力がカウンタ軸60の出力ギア61、直進用クラッチ81の円筒状回転体72のギア72a、直進用クラッチ81、円筒状回転体71、クラッチ軸70、伝動ギア78及びリングギア53に順次動力伝達される。
【0050】このようにリングギア53は上記■、■の二系統から回動されるので上記■、■の二系統からのリングギア53への変速比を同じに設定する。従ってサイドクラッチ44L又は44Rを「切」にしたとき、上記■の伝動系統からの動力がリングギア53からサイドギア55L、55Rとホイールシャフトギア48L、48Rにそれぞれ伝わるので、ショックが防止される。
【0051】次に前記ギア機構の左旋回時の作動について説明する。操向レバー21を左側に傾斜させることで、シフタ47Lを作動させ、サイドクラッチ44Lを図3に示すように「切」にすると、図示しない機構により油口77から圧油が導入され、ピストン73と円筒体76が図4の矢印A方向に移動する。この矢印A方向への移動により直進用クラッチ81を「切」として、旋回用クラッチ82を「入」とする。カウンタ軸60の出力ギア62を旋回用クラッチ82の円筒状回転体74の外周に設けられた対応するギア74a等を経由させてリングギア53を駆動させる。
【0052】旋回用クラッチ82は、その多板式摩擦板を油圧力を図示しない旋回用クラッチ82の油圧制御手段によって無段階的(連続的)に設定された旋回モードまで制御することができる。なお、この旋回用クラッチ82の摩擦板の油圧力の制御は操縦席20に設けた操向レバー21に付属するポテンショメータ(図示せず)で検出・出力される傾動角度の制御で行うことができる。
【0053】カウンタ軸60の出力ギア62と円筒状回転体74のギア74aの変速比の関係により、例えば旋回用クラッチ82を完全に接続させた場合にサイドギア55Lの回転はサイドクラッチ44R側のサイドギア55Rの回転数の−1/4になり、急旋回(スピンターン)状態になるように設定しているので、緩旋回からブレーキ旋回と急旋回が可能になっている。
【0054】すなわち、図5に示すように左旋回時にはサイドクラッチ44Rが「入」状態であるので、ホイールシャフトギア48Rの回転がサイドギア55Rに伝動され、サイドギア55Rの回転数は一定となるが、リングギア53の回転数が旋回用クラッチ82の摩擦力が強くなるに従い減速して行くと、それに比例してサイドギア55Lの回転数が減少していく。リングギア53の回転数がサイドギア55Rの1/2になると、サイドギア55Lはゼロ回転となり、サイドギア55Lからホイールシャフトギア48Lを経由する回転数がゼロになり、左クローラ3にブレーキが利いているのではないが左クローラ3が回転しない、いわゆるブレーキ旋回が行われる。
【0055】さらにリングギア53が減速していくと、サイドギア55Rの回転方向に対してサイドギア55Lは逆転回転をして左クローラ3が逆回転し、いわゆる急旋回が行われる。
【0056】サイドギア55Rの回転数に対してサイドギア55Lの逆転回転数は、ギア62とギア72aの変速比を図5の点Xに設定していると、サイドギア55Lがサイドギア55Rに対して−1/4スピンターンまで実行可能な逆転回転数まで設定が可能である。
【0057】また、右旋回選択時はサイドクラッチ44Rを「切」にすることで、前記左旋回と全く逆の作動が走行ミッション装置14で行われる。
【0058】上記したような副変速装置24と旋回用クラッチ82との間に比較的簡単な構成のギア変速装置19を介装し、旋回用クラッチ82の摩擦板の係合圧を調整することで、緩旋回からブレーキ旋回及び−1/4の急旋回まで実行可能な状態に切り替えられるようにした。以下、旋回用クラッチ82への送油圧力を増減するための目標制御ラインの設置について述べる。
【0059】上記構成からなる走行装置において、操向レバー21の操作角度に応じて前記旋回用クラッチ82への送油圧力を増減するために目標制御ラインを設置する。従ってこのときの操向レバー21の操作角度に応じて目標制御ラインに沿って旋回用クラッチ82のクラッチ圧が変化して緩旋回、ブレーキ旋回及び急旋回モードが設定される。
【0060】本実施の形態の特徴は、図3、図6に示すように前記差動ミッション伝動系の入力軸(HST出力軸17)部において、走行伝動系と刈取伝動系とに動力伝達経路を分岐することであり、前記刈取伝動系へは駆動力を常時伝達可能とし、前記走行伝動系への駆動力の伝達を入り切りするクラッチ(爪クラッチ105)を前記入力軸部(HST出力軸17)に設け、該走行伝動系への動力伝達を遮断可能とする。
【0061】上記構成を達成するために、操縦席20に設けたペダル108の踏み込み操作に基づき、前記爪クラッチ105が切り作動すると共にHST出力回転を増速回転可能にして、刈取伝動系を作動したのちHST出力回転が元の回転に復帰し、HSTレバー23が中立位置に復帰するように連繋する構成とする。
【0062】以下、上記構成を詳細に説明すると、ミッション入力軸である広幅伝動ギア26に、刈取出力ギア101を相対回転不能に固定し、走行出力ギヤ102を相対回転自在に遊嵌し、シフト部材103を軸方向摺動自在にスプライン嵌合して設ける。走行出力ギヤ102とシフト部材103との対向端面間に爪クラッチ105を形成し、シフト部材103の軸方向への摺動によって、該爪クラッチ105が係脱するよう構成する。シフト部材103と走行トランスミッションケース12の壁面との間にはスプリング106が設けられ、シフト部材103は常時クラッチ105側に付勢されている。
【0063】爪クラッチ105が係合すると、走行出力ギヤ102がミッション入力軸である広幅伝動ギア26と一体回転し、該走行出力ギヤ102と常時噛合に設ける副変速ギヤである大中小ギア28〜30を介してこれより下位の走行伝動系が駆動される。
【0064】爪クラッチ105が離脱されると走行出力ギヤ102には広幅伝動ギア26からの動力伝達が無くなり、走行出力ギヤ102はフリー回転するが、広幅伝動ギア26と一体回転する刈取出力ギア101から第一副変速軸27(b軸)に固着した刈取伝動ギア107には広幅伝動ギア26の駆動力が伝達され、第一副変速軸27(b軸)に固着した刈取伝動プーリ31が回転して刈取装置9は駆動状態を維持する。
【0065】なお、図示していないが、刈取伝動プーリ31の駆動力が伝達される駆動系とは別の駆動系から脱穀装置10を駆動できる構成になっている。
【0066】また、爪クラッチ105の離脱は次のようにして行う。すなわち、図6に示すように畦際刈りペダル(畦際ペダルということがある)108を矢印■の方向に踏み込むと、畦際ペダル108の先端部の揺動中心軸108aに設けられた揺動プレート110が前記揺動中心軸108aを中心に矢印■方向に揺動する。揺動プレート110の端部に一端が固定されたケーブル112のアウターワイヤ112a中のインナーワイヤ112bが作動して、インナーワイヤ112bの他端に固定した揺動プレート113が矢印■方向に作動し、該揺動プレート113の回動中心と同一回動中心を持ち揺動プレート113と固着したシフター114が矢印■方向に揺動して、シフター114に当接したシフト部材103の摺動によって前記爪クラッチ105が離脱する構成とする。
【0067】前記シフト部材103の摺動により爪クラッチ105の離脱を行う畦際ペダル108を駐車ペダルと兼用し、さらにペダル108の踏み込みでHSTレバー23を強制的に中立復帰させコンバインの走行停止を行い、そのときシフト部材103の摺動により爪クラッチ105を離脱させ、その後HSTレバー23を前進側に操作できる構造を図7〜図9に示す。
【0068】図7〜図9に示す実施の形態では、操縦席20に設けられた畦際ペダル108(駐車ペダルと兼用)に連繋させ、畦際ペダル108を踏み込む操作により、主変速HSTレバー23が中立復帰してコンバインが走行停止すると、畦際ペダル108に連繋された図6に示す揺動アーム110とインナーレース112bにより、図6に示すシフト部材103を摺動させて、爪クラッチ105を離脱させ、走行出力ギヤ102への広幅伝動ギア26からの動力伝達を遮断する。前記シフト部材103の摺動により爪クラッチ105が離脱されると同時に主変速HSTレバー23の手動操作を可能にすることで再びHST入力軸17を前進モードで回転させると、刈取伝動系に動力が伝達され、刈取装置9が作動する構成とする。
【0069】前記構成の詳細を次に説明する。図7に示す上方に付勢された畦際ペダル108の先端部には操縦席20の床構造体116に固定されたL字孔117aを備えた固定板117が設けられ、該ペダル108に設けられたピン120が固定板117のL字型孔117aを摺動可能になっている。また固定板117に隣接してペダル108の揺動中心軸108aと同一揺動中心を有する上方に付勢された揺動アーム121が設けられている、該アーム121には長孔121aが設けられ、該長孔121aには前記ペダル108に突設されたピン120が摺動自在に貫通している。また該ピン120にはHSTレバー23の基部に回動自在に連結した一対のロッド123、124の下端部がそれぞれ回動自在に連結している。ロッド123、124の上方はそれぞれ長孔123a、124a内をHSTレバー23の下方両側端部に設けられたピン23a、23bが移動するので、ロッド123、124はそれぞれHSTレバー23に回動自在に連結している。
【0070】従って、ペダル108を踏み込むと、ピン120が固定板117のL字型孔117aの屈折部まで下がり、この時点で主変速HSTレバー23が強制的に中立復帰する。そのとき揺動アーム121の長孔121aと固定部材117のL字型孔117aとが側面視で合致して(図8)、ロッド123、124の下端部に係合したピン120がL字型孔117aと長孔121a内を共に移動できるようになると、中立位置に強制復帰された主変速HSTレバー23を前進操作することができるようになる。なお主変速HSTレバー23は二つのロッド123、124のHSTレバー基部側の接続部に設けられた長孔123a、124a内をHSTレバー基部に固定されたピン23a、23bが摺動するので、HSTレバー23は前進だけでなく後退方向にも操作できる(図9)。
【0071】従来は、駐車ブレーキ用のペダルと畦際刈りペダルとを独立して設けているが、本実施の形態では、単一のペダル108の操作によって、停車と停車後の畦際刈りとを行うことができる。
【0072】また、図10に示すように畦際ペダル108とHSTレバー23を連繋させた構成にしても良い。
【0073】この実施の形態の走行伝動装置は、図6に示す構成と同じで畦際ペダル108を踏み込むことで矢印■方向に動かし、揺動プレート110の矢印■方向の動きによりインナーレース112bを介して揺動プレート113が矢印■方向に動くためシフタ114を介してシフト部材103を摺動させて爪クラッチ105を離脱させて走行伝動系への動力伝達を遮断させ、刈取伝動系にはHST出力軸17からの動力が伝達可能にしておく。このとき、前記ペダル108の踏み込み操作に基づき、前記爪クラッチ105が切り作動すると共にHST18の出力回転が所定時間にわたって自動的に増速回転し、該所定時間経過後にはHST18の出力回転が元の回転に復帰し、HSTレバー23が中立位置に強制復帰されるように連繋する。
【0074】すなわち、畦際ペダル108の踏み込みで、揺動アーム110の揺動によりスイッチ126が作動し、コントローラ127にスイッチ126からの信号が入力する。このとき、HSTレバー23が増速側に操作されるとポテンショメータ129よりの検知信号がコントローラ127に出力される。スイッチ126からの信号とポテンショメータ129からの信号がコントローラ127に入ると、コントローラ127は自動的にアクチュエータ(電動モータ)130によって走行用HST18のトラニオン軸を増速側へ回動させる。コントローラ127により、この増速状態が所定時間(2〜3秒間)継続するように制御され、前記所定時間経過後はHST18のトラニオン軸は元の回動角に戻り、HSTレバー(主変速レバー)23が中立位置に強制復帰される。この場合の制御フローを図11に示す。
【0075】こうして、ペダル108の操作によって、コンバインの走行を停止した状態で刈取装置9及び/又は脱穀装置10を自動的に適正回転まで増速駆動できるため、刈取装置9が低速で駆動される場合に比較して刈取穀稈の取り込み・引継ぎ性が良くなり、畦際刈りを円滑に行うことができる。
【0076】また、図10に示す構成で、コントローラ127の制御態様を、ペダル108の踏み込み操作で爪クラッチ105が切り作動すると共にHST18の出力回転が自動的に所定量増速回転し、前記ペダル108の踏み込み操作を解除するとHST18の出力回転が元の回転に復帰し、HSTレバー23が中立位置に強制復帰されるように連繋するようにしても良い。この場合の制御フローを図12に示す。
【0077】この場合にはペダル108の操作によって、コンバインの走行を停止した状態で刈取装置9を自動的に適正回転まで増速駆動できるため、刈取装置9が低速で駆動される場合に比較して刈取穀稈の取り込み・引継ぎ性が良くなり、畦際刈りを円滑に行うことができる。
【0078】図13に示す構成では、図10に示すと同様に畦際ペダル108を踏み込み操作すると、畦際ペダル108の先端部の該ペダル揺動中心軸108aに設けられた揺動アーム110とインナーワイヤ112b、揺動プレート113、シフター114の作動でシフト部材103が爪クラッチ105を離脱させ、コンバインの走行系の駆動を停止させる。
【0079】それと同時にスイッチ126が作動し、コントローラ127を介してHST18のトラニオン軸を中立位置(中立角度)に強制復帰させるように斜板角度変更用モータ130が作動する。斜板角度変更用モータ130の回転軸には一方向性クラッチ132が設けられており、さらに一方向性クラッチ132がHSTレバー23の基部プレート133に回動自在に係合したロッド135と連動する構成になっている。
【0080】そのため畦際ペダル108の踏み込み操作に連動してHST18のトラニオン軸を中立位置(中立角度)に強制復帰させると、一方向性クラッチ132とロッド135、基部プレート133を介してHSTレバー23を強制的に中立復帰させる。こうして、HST18の中立状態とHSTレバー23の中立状態を一致させておく。
【0081】こうして、駐車ペダル108を踏んだ状態でHST18からミッション走行伝動系への伝動状態が断たれるように構成しておけば、畦際で停車したまま刈取装置9を駆動でき、別途、畦際ペダル等の操作手段を設ける必要がない。
【0082】従来は、駐車ペダル108を踏み込み操作するとこれに連動して主変速レバー23を中立位置に強制復帰させるべく、駐車ペダル108と主変速レバー23とをロッドで連繋したものが知られているが、この構成は安価な装置が提供できないだけでなく、駐車ペダル108を踏んだ状態では主変速HSTレバー23を前進操作できず、畦際刈りを行うことができなかった。
【0083】しかし前記図13に示す構成では、駐車ペダル108と主変速HSTレバー23との間に設けられていた機械式の連繋機構を廃止して安価な装置が提供できる。また、駐車ペダル108を踏んだまま、中立位置に戻った主変速HSTレバー23を再び前進操作できるように構成することで、畦際で停車したまま刈取装置9及び/又は脱穀装置10だけを駆動でき、別途、畦際ペダル等の操作手段を設ける必要がない。この場合の制御フローを図14に示す。
【0084】(0104587)図15には、図3、図6に示す作動ミッション伝動系の一部を変更して、高速走行時ないし副変速段が高速(路上走行)時には、前記ペダル108が操作されても爪クラッチ105が切れないようにした構成例を示す。
【0085】図15に示す作動ミッション伝動系において、図3、図6に示した構成で同一機能を奏する部材は同一番号を付して、その説明は省略する。
【0086】ミッション入力軸である広幅伝動ギア26に、刈取出力ギア101’を相対回転不能に固定し、走行出力ギヤ102’を相対回転自在に遊嵌し、刈取出力ギア101’と走行出力ギヤ102’との対向端面間に爪クラッチ105’を形成し、走行出力ギヤ102’の軸方向への摺動によって、該爪クラッチ105’が係脱するよう構成する。走行出力ギヤ102’と走行トランスミッションケース12の壁面との間にはスプリング106が設けられ、走行出力ギヤ102’は常時クラッチ105’側に付勢されている。
【0087】爪クラッチ105’が係合すると、走行出力ギヤ102’が広幅伝動ギア26と一体回転し、該走行出力ギヤ102’と常時噛合に設ける副変速用の大ギア28’、中ギア29、小ギア30を介してこれより下位の走行伝動系が駆動される。
【0088】爪クラッチ105’が離脱されると走行出力ギヤ102’には広幅伝動ギア26からの動力伝達が無くなり、走行出力ギヤ102’はフリー回転するが、刈取出力ギア101’から刈取伝動ギア107’には広幅伝動ギア26の駆動力が伝達され刈取プーリ31は回転して刈取装置9は駆動状態を維持する。
【0089】また、爪クラッチ105’の離脱は、図6に示す構成と同様に畦際ペダル(駐車ペダル)108を踏み込み操作すると、畦際ペダル108の先端部の該ペダル揺動中心軸108aに設けられた揺動アーム110が該ペダル108の矢印■と同一方向に該揺動中心軸108aを中心に矢印■方向に揺動する。揺動アーム110の端部に一端が固定されたケーブル112のインナーワイヤ112bが作動して、インナーワイヤ112bの他端に固定した揺動プレート113が矢印■方向に作動し、該揺動プレート113の回動中心と同一回動中心を持ち揺動プレート113と固着したシフター114が矢印■方向に揺動して、それにより走行出力ギヤ102’の摺動によって前記爪クラッチ105’が離脱する構成とする。
【0090】しかし、図15に示す構成は、高速走行時ないし副変速段が高速(路上走行)段のギヤ28’が駆動される時には、前記ペダル108が操作されても前記爪クラッチ105’が切れないように刈取伝動ギア107’と大ギア28’の対向する側面に爪クラッチ115を設けたものである。すなわち、副変速装置24の第一副変速軸27(b軸)の大ギア28’が第二副変速軸33(c軸)の変速小ギア36に噛合しているときは爪クラッチ115により大ギア28’に刈取出力ギヤ101’と刈取伝動ギア107’を介して動力が伝達される。
【0091】このように副変速装置24が「高速(路上)走行」に入っているときには、刈取伝動ギヤ107’の爪クラッチ115と刈取出力ギヤ101’の爪クラッチ105’が噛み合い状態となり、畦際ペダル108を踏んでもミッション走行系の駆動が断たれない。そのため、例えば坂道走行中に畦際ペダルを踏んでもミッション走行系は駆動状態にあり、坂道を不用意に下ることはない。
【0092】また、図16、図17に示す実施の形態の構成は、前記図6又は図15に示す前記差動ミッション伝動系と同様に、その入力軸(HST出力軸)部において走行伝動系と刈取伝動系とに動力伝達経路を分岐し、前記刈取伝動系へは駆動力を常時伝達可能としながら、前記走行伝動系への駆動力の伝達を入り切りする爪クラッチ105を前記入力軸17に設け、該走行伝動系への動力伝達を遮断可能とする構成において、爪クラッチ105を操縦席20に設ける畦際(駐車)ペダル108によって入り切り操作可能に連繋すると共に、刈取クラッチ(又は脱穀クラッチ)レバー136が切れている場合に、畦際(駐車)ペダル108が操作されても爪クラッチ105が切れないよう牽制するものである。
【0093】図16、図17に示すように刈取クラッチ(又は脱穀クラッチ)レバー136が図示の「切」り状態にあるとき、ペダル108を踏み込み矢印■方向に回動させると、ペダル108の基部に固定された逆T字型プレート140はペダル108と共に車体フレーム2に突設されたペダル軸141を軸芯として下方(矢印■方向)に回動する。逆T字型プレート140はペダル軸141に遊嵌されたアーム142に当接してアーム142もペダル軸141を中心に矢印■方向に回動する。アーム142の矢印■方向への回動で、HSTレバー23の基部に設けられた一対のロッド123、124(図Bも参照)に作用して、HSTレバー23は中立位置に復帰する。このときペダル軸141に遊嵌されている畦クラッチ連繋用のアーム145は動かない。そのためケーブル112も動かないのいで爪クラッチ105も切れない。
【0094】刈取クラッチ(又は脱穀クラッチ)レバー136が点線に示す「入」り状態にあるとき、該刈取クラッチ(又は脱穀クラッチ)レバー136の動きに連動するケーブル146が矢印■方向に引かれ、逆T字型プレート140はスプリングの付勢力に抗して矢印■方向に揺動して点線位置に移動する。この状態でペダル108を踏み込むと、逆T字型プレート140が回動してアーム145に当接し、アーム145はペダル軸141を軸芯として下方(矢印■)に回動する。アーム145の側面に設けられたピン145aがケーブル112を引っ張り、爪クラッチ105が切れる。このときアーム142はペダル軸108に遊嵌しているので回動しない。
【0095】このように、ペダル108の操作によって走行伝動系への動力伝達を遮断し、この状態でHST18を駆動することにより、停車した状態で刈取装置9(脱穀装置10)を駆動して畦際刈りが行える。しかも、刈取クラッチ(又は脱穀クラッチ)レバー136が切られた路上走行時には、ペダル108を踏んでも走行伝動系への動力伝達状態が遮断されず、傾斜面で機体が転がり落ちることがない。
【0096】また、本発明の別実施例として図18に示す走行伝動ギア機構を採用しても良い。図18に示す走行伝動装置の左右のホイルシャフトギヤ48、48間に亘ってデファレンシャルギヤ機構(差動歯車装置)6の左右の差動軸(支持軸)50に固定されたサイドギア55を連動連結すると共に、該デファレンシャルギヤ機構6のデフケース54のリングギア53と副変速後のクラッチ軸(伝動軸)70とを直進用クラッチ81及び旋回用クラッチ82を介して連動連結して差動ミッション伝動系を構成する。直進用クラッチ81及び旋回用クラッチ82にはカウンタ軸60の出力ギア62a、62bからそれぞれ駆動力が伝達される。
【0097】直進用クラッチ81と旋回用クラッチ82とを、夫々の油圧シリンダ81’、82’によって作動するように構成する。各油圧シリンダ81’、82’へは、夫々設けた比例減圧弁81”、82”を介して送油すべく構成する。
【0098】このような構成にすることで、直進用クラッチ81と旋回用クラッチとを独立して接続圧制御することが可能になる。
【0099】また、図19(a)に各クラッチ81、82の差動油圧と操向レバー21の傾斜角の関係を示し、図19(b)に伝動ギア78の回転数の関係を示す。図18に示す構成では、旋回開始時に直進用クラッチ81が完全に切れる前に旋回用クラッチ82の接続圧を立ち上げ始めることができ、これによって単一のシリンダによって、直進用クラッチ81を切り、これに続いて旋回用クラッチ82を設けた場合のようなデフケース54がフリーになる不安定な状態(図19(c)参照)を少なくすることができ、旋回状態への移行をスムーズに行うことができる。また、走行負荷が大きい湿田などでも、車軸がロックしやすい状態を回避して、緩旋回状態を現出することが容易となる。
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【住所又は居所】愛媛県松山市馬木町700番地
【出願日】 平成14年2月13日(2002.2.13)
【代理人】 【識別番号】100096541
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 孝義
【公開番号】 特開2003−235330(P2003−235330A)
【公開日】 平成15年8月26日(2003.8.26)
【出願番号】 特願2002−35635(P2002−35635)