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【発明の名称】 コンバインの前処理駆動装置
【発明者】 【氏名】山崎 弘章
【住所又は居所】島根県八束郡東出雲町大字揖屋町667番地1 三菱農機株式会社内

【氏名】江田 秀弥
【住所又は居所】島根県八束郡東出雲町大字揖屋町667番地1 三菱農機株式会社内

【氏名】門脇 隆志
【住所又は居所】島根県八束郡東出雲町大字揖屋町667番地1 三菱農機株式会社内

【氏名】錦織 将浩
【住所又は居所】島根県八束郡東出雲町大字揖屋町667番地1 三菱農機株式会社内

【氏名】石橋 俊之
【住所又は居所】島根県八束郡東出雲町大字揖屋町667番地1 三菱農機株式会社内

【氏名】山崎 達也
【住所又は居所】島根県八束郡東出雲町大字揖屋町667番地1 三菱農機株式会社内

【要約】 【課題】刈取り作業開始時において、コンバインが高速発進しても、前処理部の作動遅れによる刈取り不良の発生を防止することが出来るコンバインの前処理駆動装置を提供する。

【解決手段】走行用HSTの回転速度と前処理用HSTの回転速度を一定の比例関係で制御するようにしたコンバインの前処理駆動装置であって、T/M(トランスミッション)回転センサ97により走行用HSTの回転開始を検知し、マイコン87内の増速タイマ100に、予め設定された増速運転時間をセットする。そして、増速タイマ100にセットされた増速運転時間が経過するまでの間、HST駆動モータ75に増速回転指令を与えて前処理用HSTの回転速度を、前記走行用HSTの回転速度との前記一定の比例関係より増速して回転させ、コンバインの走行開始時における前処理部の穀稈の処理能力を向上させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 動力源と、この動力源の出力を、トランスミッションを介してクローラ走行装置に伝達し、コンバインを走行させる走行駆動用無段変速機と、前記動力源の出力を前処理部に伝達して、穀稈の刈取りと搬送を行なわせる前処理駆動用無段変速機と、を備え、前記コンバインの走行速度と前記前処理部における穀稈の刈取り及び搬送速度を比例関係で制御するようにしたコンバインの前処理駆動装置において、前記トランスミッションの回転開始時に、前記前処理駆動用無段変速機を、一定時間、前記比例関係より増速駆動させるようにした制御装置、を設けた、ことを特徴とする、コンバインの前処理駆動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、前処理部で刈取った穀稈を脱穀部に向けて搬送するコンバインの前処理駆動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】コンバインでは、穀稈の刈取りと脱穀を同時に行うため、前処理部に穀稈の刈取部と搬送部を設け、刈取部で刈取った穀稈を搬送部(掻き込み装置、こぎ深さ搬送装置)により順次脱穀部のフィードチェーンに送り込むようになっている。
【0003】また、前記搬送部には、刈取られた穀稈を検出するこぎ深さメインセンサと、刈取られた穀稈の穂先を検出する株元センサ及び穂先センサとを設け、こぎ深さメインセンサの検出出力に基づいて、株元センサ及び穂先センサが作動し、刈取られた穀稈の穂先を検出して、こぎ胴に対する穀稈の穂先の通過位置を制御するこぎ深さ制御が行なわれている。
【0004】また、コンバインでは、コンバインの走行によって刈取り部に送り込まれる穀稈を確実に刈取って搬送するため、コンバインの走行速度と前処理部の刈取り、搬送速度が一定の比例関係になるように比例制御している。この比例制御は、前処理部を駆動する前処理駆動用無段変速機(以下、前処理用HSTという)と、トランスミッションの走行駆動用無段変速機(以下、走行用HSTという)の回転速度が一定の比例関係になるように制御することで行なわれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このようなコンバインでは、コンバインの走行を開始したとき、即ち、走行用HSTが始動してからある速度に達するまでの回転初期の間において、前処理用HSTは、前記比例関係における目標値より遅れ勝手に追従する。そして、走行用HSTがある速度になると、前処理用HSTの回転速度が前記比例関係の目標値に追いつき所要の比例関係になる。
【0006】このため、コンバインの発進速度が速い場合には、前処理部における刈取り、搬送速度がコンバインの走行速度に追いつかず、刈取り部に多量の穀稈が送り込まれて刈取り不良が発生することがある。
【0007】上記の事情に鑑み、本発明は、コンバインが高速発進しても、刈取り不良を発生させることなく、穀稈を確実に刈取り、搬送させることができるコンバインの前処理駆動装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、請求項1に係る本発明は、動力源(13)と、この動力源(13)の出力を、トランスミッション(59)を介してクローラ走行装置(11、11)に伝達し、コンバイン(10)を走行させる走行駆動用無段変速機(60)と、前記動力源(13)の出力を前処理部(16)に伝達して、穀稈の刈取りと搬送を行なわせる前処理駆動用無段変速機(72)と、を備え、前記コンバイン(10)の走行速度と前記前処理部(16)における穀稈の刈取り及び搬送速度を比例関係で制御するようにしたコンバイン(10)の前処理駆動装置において、前記トランスミッション(59)の回転開始時に、前記前処理駆動用無段変速機(72)を、一定時間、前記比例関係より増速駆動させるようにした制御装置(85)、を設けた、ことを特徴とする、コンバインの前処理駆動装置にある。
【0009】なお、括弧内の符号等は、図面において対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図6は、本発明の実施の形態を示すもので、図1は、本発明を実施するコンバインの断側面図、図2は、図1に示すコンバインの駆動系統図、図3は、図1に示すコンバインの制御系統図、図4は、図3における制御系統で行なう制御の過程を示すフローチャート、図5は、図3における制御系統で行なう制御のタイミングを示すタイミングチャート、図6は、コンバインの車速と前処理用HSTの回転速度の関係を示す特性図である。
【0011】図1において、コンバイン10は、左右一対のクローラ走行装置11、11により支持された機体12を有している。この機体12の前部(図1の左側)の左右いずれか一側には、エンジン13が搭載されている。このエンジン13の上方には、運転席15が配置されている。
【0012】また、前記機体12の前方(図1の左側)には、穀稈を刈取り搬送する前処理部16が昇降自在に支持されている。さらに、前記機体12の前部の左右いずれか他側には、刈取られた穀稈を脱穀し、脱穀した穀粒を選別する脱穀部45が配置されている。
【0013】そして、前記クローラ走行装置11、11、前処理部16及び脱穀部45は、前記エンジン13により駆動され、コンバイン10の走行と、穀稈の刈取り、脱穀作業が行なわれる。
【0014】前記前処理部16は、倒伏した穀稈を引起す引起し装置26と、切断された穀稈を掻き込む掻き込み装置31と、刈取られた穀稈を前記脱穀部45へ向けて搬送すると共に、穀稈の位置を調整するこぎ深さ搬送装置36を備え、その作動基端側を機体12の前方に配置された伝動軸ケース17に回転可能に支持されている。
【0015】この伝動軸ケース17から機体12に対し、機体12の前方斜め下方に向けて延出された伝動ケース19は、その長手方向の中間位置に配置された油圧シリンダ20の伸縮により、伝動軸ケース17を中心として揺動する。前記伝動軸ケース17には、伝動ケース19の回動量を検出するリフトポテンショメータ21が設けられている。
【0016】また、前記伝動ケース19の下方には、機体12の左右方向(図1の紙面前後方向)に亘って延設され、かつ該伝動ケース19と略T字状に直交する伝動軸筒22が一体的に連結されている。この伝動軸筒22には、機体12の前方に向かって延びる前処理フレーム23を介して、未刈り穀稈を分草して引起し通路に導く複数個のデバイダ25が一体的に連結されている。
【0017】また、左右両端のデバイダ25の下方には、コンバイン10の自動走行を可能とする方向センサ(図示せず)を有している。前記デバイダ25の後方には、分草された穀稈を引起す前記引起し装置26が、前処理部16の前方から後方に向けて上昇する傾斜状に設けられている。
【0018】前記引起し装置26は、爪付チェーン27と引起しケース29を有し、爪付チェーン27には所定の間隔で複数本の爪が取付けられ、これらの爪が引起しケース29内を上方に回動して穀稈をすき上げる。この爪付チェーン27は、後述する駆動系により駆動される。
【0019】前記引起し装置26の後方で、かつ伝動軸筒22の前方下部には、地面に近い位置で穀稈の株元を切断する刈刃30が設けられている。この刈刃30により切断された穀稈は、掻き込み装置31によって掻き込まれて後方に移送される。
【0020】前記掻き込み装置31は、搬送ベルト32と株元搬送スターホイル33、株元搬送チェーン35等を有している。前記刈刃30によって刈取られた穀稈は、搬送ベルト32と株元搬送スターホイル33によって掻き込まれて各々の通路に寄せられる。そして、株元搬送チェーン35によって挟持され、掻き込み装置31の後方に配置された前記こぎ深さ搬送装置36に引き継がれる。
【0021】前記こぎ深さ搬送装置36は、こぎ深さ調整が可能なように、その後部が前記伝動軸ケース17を中心として回動可能に支持されていて、穀稈の穂先側を搬送する穂先搬送チェーン37と株元側を搬送する株元搬送チェーン39を備えている。
【0022】これら穂先搬送チェーン37と株元搬送チェーン39は、前述した後部を支点に一体となって上下(図の矢印方向)動自在とされいる。また、その始端側は、前記掻き込み装置31の株元搬送チェーン35の搬送方向終端側の上方に延設されている。
【0023】前記こぎ深さ搬送装置36に付設されたUパイプ部40には、搬送途中の穀稈の有無を検出する第1の検出手段としてのこぎ深さメインセンサ41が配設されている。このこぎ深さメインセンサ41は、例えば、オン、オフスイッチが用いられ、搬送途中の穀稈の有無を検出する。
【0024】また、前記Uパイプ部40には、第2の検出手段としての株元センサ42と、穂先センサ43からなる株元・穂先センサが取り付けられている。この株元・穂先センサは、掻き込み装置31からこぎ深さ搬送装置36に引き継がれた穀稈の穂先の位置を検出する。
【0025】前記脱穀部45には、フィードチェーン46と、このフィードチェーン46に略平行してこぎ室47が設けられていて、該こぎ室47内には機体12の前後方向に沿う回転軸を中心としてこぎ胴49が回転自在に配置されている。このこぎ胴49の下方には、脱穀された穀粒を漏下する受網50が設けられていて、該受網50の下方には、揺動選別部51が前後揺動可能に配設されている。
【0026】そして、揺動選別部51の揺動作用と唐箕52及び吸引ファン53から発生される選別風とにより稈枝混じりの穀粒物が選別される。揺動選別部51にて選別された穀粒は、下方に配置された1番樋55又は2番樋56に落下収容される。
【0027】なお、こぎ室47内でこぎ胴49により脱穀された後の穀稈は、フィードチェーン46から機体12の後部に設けられた排稈チェーン57に引き継がれて処理される。
【0028】前記エンジン13を動力源とするコンバイン10の駆動系統は、図2に示すように構成されている。同図において、コンバイン10の走行駆動系を構成するトランスミッション59(T/M)には、主変速機を構成する走行用HST60と、副変速機61及び歯車列62が配置され、クローラ走行装置11を駆動する。
【0029】エンジン13(E/G)から走行用HST60へは、エンジン13の出力軸13aに固定されたプーリ13bと、走行用HST60の入力軸60aに固定されたプーリ60bの間に掛け渡されたベルト63で動力の伝達が行なわれる。
【0030】駆動軸65は、コンバイン10の所定の位置に回転可能に支持されている。エンジン13から駆動軸65へは、エンジン13の出力軸13aに固定されたプーリ13cと、駆動軸65に固定されたプーリ65aの間に掛け渡されたベルト66で動力の伝達が行なわれる。なお、ベルト66には、作業機クラッチ67(テンションクラッチ)が配置されている。
【0031】中間軸69は、コンバイン10の所定の位置に回転可能に支持されている。駆動軸65から中間軸69へは、駆動軸65の一端に固定された傘歯車65bと、この傘歯車65bと噛み合うように中間軸69に固定された傘歯車69aで動力の伝達が行なわれる。
【0032】中間軸69からこぎ胴49へは、中間軸69の一端に固定されたプーリ69bと、こぎ胴49の入力軸49aの一端に固定されたプーリ49bの間に掛け渡されたベルト70で動力の伝達が行なわれる。従って、こぎ胴49は、作業クラッチ67がONの状態にあるときには、常に回転している。
【0033】前処理用変速機71は、前処理用HST72を備えている。駆動軸65から前処理用HST72へは、駆動軸65に固定されたプーリ65cと、前処理用HST72の入力軸72aに固定されたプーリ72bの間に掛け渡されたベルト73によって動力の伝達が行なわれる。なお、前処理用HST72は、駆動モータ75を備え、該駆動モータ75によりその回転速度が制御される。
【0034】前記前処理用HST72は、前処理用変速機71の出力軸71cを、前記走行用HST60の回転に比例して回転させるT/M比例モードと、前記エンジン13の回転速度に比例して回転させるE/G比例モードで回転して、前記前処理部16及び脱穀部45のフィードチェーン46を駆動する。
【0035】前処理駆動軸76は、コンバイン10の所定の位置に回転可能に支持されている。前処理用変速機71から前処理駆動軸76へは、前処理用変速機71の出力軸71cに固定されたプーリ71dと、前処理駆動軸76に固定されたプーリ76aの間に掛け渡されたベルト77によって動力の伝達が行なわれる。
【0036】なお、ベルト77には、刈取りクラッチ79(テンションクラッチ)が配置され、脱穀部45の駆動中に前処理部16を停止させ、手こぎ作業を可能にするよう構成されている。
【0037】前記前処理駆動軸76から扱ぎ深さ搬送装置36へは、傘歯車76bと、この傘歯車76bと噛み合う傘歯車37aにより動力の伝達が行なわれ、穂先搬送チェーン37及び株元搬送チェーン39を駆動する。
【0038】伝動軸80は、コンバイン10の所定の位置に回転可能に支持されている。前記前処理駆動軸76から伝動軸80へは、前処理駆動軸76に固定された傘歯車76cと、この傘歯車76cと噛み合うように伝動軸80に固定された傘歯車80aにより動力の伝達が行なわれる。
【0039】この伝動軸80は、刈刃30を駆動すると共に、伝動軸80に固定された歯車80bと噛み合う歯車32a、この歯車32aと噛み合う歯車32bを介して掻き込み装置31の搬送ベルト32を駆動する。
【0040】駆動軸81は、コンバイン10の所定の位置に回転可能に支持されている。前記前処理用変速機71の出力軸71cから駆動軸81へは、出力軸71cに固定された歯車71eと噛み合う歯車71fに一体に固着されたスプロケット71gと、駆動軸81に固定されたスプロケット81aとの間に掛け渡されたチェーン82により動力の伝達が行なわれる。そして、駆動軸81に固定されたスプロケット81bにより、フィードチェーン46が駆動される。
【0041】コンバイン10の制御装置85は、図3に示すように構成されている。同図において、制御装置85は、入力インターフェース86と、マイコン87及び出力インターフェース89を備え、コンバイン10のメインスイッチ90に接続されている。
【0042】前記入力インターフェース86には、リフトポテンショメータ21、リフト上昇スイッチ91、作業機クラッチスイッチ92、刈取りクラッチスイッチ93、こぎ深さメインセンサ41、リフトシャットスイッチ94、バックスイッチ96、T/M(トランスミッション)回転センサ97、HST回転センサ98、エンジン回転センサ99等が接続されている。
【0043】前記リフト上昇スイッチ91は、操作パネル(図示せず)に配置され、前処理部16を上昇させる。このリフト上昇スイッチ91は、ONすることにより前処理部16を上昇させる。また、リフト上昇スイッチ91を連続してONさせることにより、前処理部16が連続して上昇する。
【0044】前記作業機クラッチスイッチ92は、作業クラッチレバー(図示せず)に設けられ、コンバイン10の走行と、前処理部16及び脱穀部45の駆動を、連動もしくは切離しする作業機クラッチ67の切り替えを行なう。
【0045】前記刈取りクラッチスイッチ93は、刈取りクラッチレバー(図示せず)に設けられ、前処理部16と脱穀部45の駆動を、連動もしくは切離しする刈取りクラッチ79の切り替えを行なう。
【0046】バックスイッチ96は、走行用HST60の主変速操作レバー(図示せず)に配置され、コンバイン10の走行方向を選択する。
【0047】T/M(トランスミッション)回転センサ97は、走行用HST60の出力軸に設けられ、その回転速度をコンバイン10の走行速度として検出する。
【0048】HST回転センサ98は、前処理用HST72の出力軸に設けられ、その回転速度を前処理部における穀稈の搬送速度として検出する。
【0049】エンジン回転センサ99は、オルタネータのパルスをカウントし、エンジン13の回転速度を検出するようになっている。
【0050】また、マイコン87内には、増速タイマ100が設けられている。この増速タイマ100には、コンバイン10が走行を開始したとき、前処理部16の駆動速度をコンバイン10の走行速度との比例関係より大きくする増速運転時間Tをセットする。
【0051】この増速運転時間Tは、コンバイン10の走行により穀稈が処理部16に送り込まれたとき、コンバイン10の走行速度に対して比例制御される前処理部のコンバイン10の走行開始初期に発生する遅れによって、前処理部16(特に、刈取り部)で穀稈の詰まりが発生しなくなるまでに要する一定の時間とする。
【0052】また、出力インターフェース89には、ホーン101、手こぎランプ102、前処理搬送用のHST駆動モータ75、E/Gストップソレノイド103が接続されている。
【0053】このような構成のコンバイン10では、コンバイン10を圃場に入れた後、その走行方向を穀稈の配列方向に向けて前進させる。すると、デバイダ25が穀稈の配列内に分け入り、爪付チェーン27で穀稈を引起す。刈刃30で穀稈を切断(刈取り)する。
【0054】刈取られた穀稈は、搬送ベルト32で搬送され、こぎ深さ搬送装置36に渡される。こぎ深さ搬送装置36で、フィードチェーン46に向けて搬送される間に、搬送される穀稈は、こぎ深さメインセンサ41で検出されると共に、株元センサ42と穂先センサ43で穀稈の穂先の位置が検出される。そして、その検出結果に基づいて、穀稈の穂先が株元センサ42と穂先センサ43の間に位置するように、こぎ深さ搬送装置36により、穀稈の位置が調整される。
【0055】こぎ深さ搬送装置36の終端まで搬送された穀稈は、フィードチェーン46に受け渡される。フィードチェーン46に渡された穀稈は、その穂先がこぎ室47内を通過するように搬送され、こぎ胴49との接触により脱穀される。フィードチェーン46の終端まで搬送された穀稈は、排稈チェーン57に受け渡され、排稈チェーン57でコンバイン10の外へ廃棄される。
【0056】穀稈から脱穀された穀粒物は、受網50上に落下し、さらに受網50を通り揺動選別部51上に集められる。そして、揺動選別部51の揺動作用と、唐箕52及び吸引ファン53から発生される選別風により、稈枝と分離される。揺動選別部51にて選別された穀粒は、下方に配置された1番樋55又は2番樋56に落下収容される。
【0057】このようなコンバイン10の制御装置85における穀稈の搬送制御について、図4に示すフローチャート、図5に示すタイミングチャート及び図6に示す特性図を参照しながら説明する。
【0058】T/M(トランスミッション)回転センサ97により、走行用HST60の回転の有無を判定する(図4のステップS1、以下、単にステップS○という)。即ち、コンバイン10の走行、停止を判定し、その状態(「回転」又は「停止」)を記録する。
【0059】ステップS1で、走行用HST60が停止していると判定された場合には、繰り返し走行用HST60の監視を行なう。一方、ステップS1で、走行用HST60が回転していると判定された場合には、前回記録された走行用HST60の状態を判定する(ステップS2)。
【0060】そして、前回記録された走行用HST60の状態が「停止」であった場合、走行用HST60が回転(コンバイン10が走行)を開始したものと判定して、増速タイマ100に予め設定されている増速運転時間Tをセットする(ステップS3)。
【0061】増速タイマ100に設定された増速運転時間Tが経過したか否かを判定する(ステップS4)。そして、増速タイマ100に設定された増速運転時間Tが経過していない場合には、前処理用HST72の駆動モータ75に増速指令を出力する(ステップS5)。
【0062】すると、図5に示すように、走行用HST60が回転(コンバイン10が走行)を開始したタイミングT1で、前処理用HST72の駆動モータ75に増速指令が印加される。この指令によって、駆動モータ75は、前処理用HST72を、コンバイン10の走行速度に比例する速度より速い速度になるように作動させる。
【0063】走行用HST60の回転速度と、前処理用HSTの回転速度を比例制御した場合、図6に示すように、走行用HST60の回転初期において、比例制御の目標値A(一点鎖線)に対して、前処理用HST72の回転速度が実効値B(破線)のように遅れ量D1だけ遅れて追従する(この遅れ量D1は、走行用HSTの初期の回転速度が速くなるほど大きくなる)。
【0064】本実施形態では、走行用HST60が回転を開始したタイミングT1で、前処理用HST72の駆動モータ75に増速指令を印加し、前処理用HST72の回転速度を比例制御の目標値Aを超える増速値C(実線)で回転させる。即ち、前処理用HST72を、走行用HST60の回転初期(コンバイン10の走行初期)において、前記比例制御の目標値Aで要求される回転速度より速い速度で回転させる。
【0065】従って、コンバイン10の発進速度が速くても、前処理部16はコンバイン10の走行速度に対応する目標値Aよりさらに速い速度で作動することになり、コンバイン10の走行により送り込まれる穀稈を、刈取り部に詰まらせることなく刈取り、搬送することができる。
【0066】前記ステップS2において、前回記録された走行用HST60の状態が「回転」であった場合、コンバイン10は既に走行しているものと判定し、ステップ4へ移行して増速タイマ100に設定された増速運転時間Tが経過したか否かを判定する。
【0067】前記ステップS4で、増速タイマ100に設定された増速運転時間Tが経過していた場合、図5に示すように、タイミングT2で前処理用HST72のモータ75への増速指令を終了する。すると、制御装置85による制御は、前処理部16の駆動速度をコンバイン10の走行速度と比例させる比例制御に移行する。
【0068】即ち、増速タイマ100に設定された増速運転時間Tが経過したタイミングT2で、駆動モータ75に対する増速指令が終了するため、駆動モータ75の制御は通常の比例制御に移行する。従って、前処理用HST72の回転速度は、図6に示すように、タイミングT2で減速され、通常の比例関係に基づく回転数に移行する。
【0069】このとき、比例制御における前処理部16の実効値Bも遅れ量D2(<D1)となり目標値Aに近づいているので、コンバイン10の走行により前処理部16に送り込まれる穀稈の量と、前処理部16で処理できる穀稈の量の差が小さくなる。従って、送り込まれた穀稈を刈取り部に詰まらせることなく刈取り、搬送することができる。
【0070】即ち、コンバイン10の発進初期において、前処理用HST72の回転速度を比例制御で要求される目標値Aより大きくすることで、前処理部16における処理能力を向上させ、コンバイン10の発進速度が大きく、前処理部16に多量の穀稈が送り込まれても、これらの穀稈を前処理部16で確実に刈取り、こぎ深さ搬送装置36へ送り出すことができ、刈取り不良の発生を防止することができる。
【0071】また、コンバイン10の走行開始から一定時間前処理部16を増速駆動させることにより、前記一定時間経過後に比例制御に移行しても、前処理部16の駆動速度が、比例制御における目標値に近接するように上昇しているので、コンバイン10の走行により前処理部16に多量の穀稈が送り込まれても、その刈取り、搬送を円滑に行なうことができ、刈取り不良が発生することはない。
【0072】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によると、トランスミッションの回転開始時に、前処理駆動用無段変速機を、一定時間、コンバインの走行速度との比例関係より増速駆動させるようにしたので、刈取り作業開始時において、コンバインが高速発進しても、前処理部の作動遅れによる刈取り不良の発生を防止することが出来る。
【出願人】 【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱農機株式会社
【住所又は居所】島根県八束郡東出雲町大字揖屋町667番地1
【出願日】 平成13年12月10日(2001.12.10)
【代理人】 【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫 (外1名)
【公開番号】 特開2003−169527(P2003−169527A)
【公開日】 平成15年6月17日(2003.6.17)
【出願番号】 特願2001−376426(P2001−376426)