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【発明の名称】 移植機
【発明者】 【氏名】布野 隆
【住所又は居所】島根県八束郡東出雲町大字揖屋町667番地1 三菱農機株式会社内

【氏名】芝田 哲男
【住所又は居所】島根県八束郡東出雲町大字揖屋町667番地1 三菱農機株式会社内

【要約】 【課題】回転ケースを備える移植機において、植付株間を広げた際に、植付爪が植付苗を引き摺る不都合を防止する。

【解決手段】回転ケース24の両端部に、該回転ケース24の回転に伴って苗載台15から苗を掻取り、且つ、掻取った苗を土中に植付ける植付爪29を備える田植機において、前記回転ケース24の回転に速度変動を生じさせる不等速変換機構36を設けると共に、前記回転ケース24の回転の最高速点Eを、前記植付爪29が苗を植付けた直後に合わせる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転ケースの両端部に、該回転ケースの回転に伴って苗載台から苗を掻取り、且つ、掻取った苗を土中に植付ける植付爪を備える移植機であって、該移植機に、前記回転ケースの回転に速度変動を生じさせる不等速変換機構を設けると共に、前記回転ケースの回転の最高速点を、前記植付爪が苗を植付けた直後に合わせたことを特徴とする移植機。
【請求項2】 請求項1において、前記回転ケースの回転領域に、前記植付直後の最高速点と略180゜ずらして最高速点を設け、前記植付爪が苗を掻取るときの前記回転ケースの速度を増速させたことを特徴とする移植機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回転ケースを不等速回転させる田植機等の移植機の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】近年、田植機等の移植機においては、回転式の植付機構が普及している。回転式の植付機構は、回転ケースの両端部に、該回転ケースの回転に伴って苗載台から苗を掻取り、且つ、掻取った苗を土中に植付ける植付爪を備えて構成される。回転ケースの回転速度は、車速変化に拘わらず植付株間が一定となるように車速連動しており、また、車速に対する相対速度を変更することによって、植付株間の調節が行われる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年においては、植え付けた苗の成育条件(日照、通気等)を考慮し、植付株間を広げる試みがある。しかしながら、前記植付爪の静止軌跡(機体停止時の運動軌跡)は、標準的な植付株間を基準にして設定されているため、植付株間を広げるべく回転ケースの回転速度(相対速度)を遅くすると、機体進行に伴う植付爪の前方移動量が土中において大きくなり、植え付けた苗が引き摺られる可能性がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、回転ケースの両端部に、該回転ケースの回転に伴って苗載台から苗を掻取り、且つ、掻取った苗を土中に植付ける植付爪を備える移植機であって、該移植機に、前記回転ケースの回転に速度変動を生じさせる不等速変換機構を設けると共に、前記回転ケースの回転の最高速点を、前記植付爪が苗を植付けた直後に合わせたことを特徴とする。つまり、植付周期を変えることなく、土中における植付爪の動作速度を速くすることができるため、植付株間を広げても、土中における植付爪の前方移動量が抑制され、苗の引き摺りを防止することができる。しかも、回転ケースの最高速点が苗を植付けた直後(土中)であるため、下死点を最高速点とする場合に比べ、植付爪の引き上げを素早く行うことができ、その結果、植付苗との干渉を減らし、植付精度をさらに向上させることができる。また、前記回転ケースの回転領域に、前記植付直後の最高速点と略180゜ずらして最高速点を設け、前記植付爪が苗を掻取るときの前記回転ケースの速度を増速させたことを特徴とする。この場合においては、植付直後の増速によって植付精度が向上する許りでなく、苗掻取り時の増速によって植付苗の掻取り性能も向上させることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態の一つを図面に基づいて説明する。図面において、1は乗用田植機の走行機体であって、該走行機体1は、機体前部に搭載されるエンジン(図示せず)と、エンジン動力を入力するミッションケース2と、フロントアクスルケース3を介して取付けられる左右一対の前輪4と、リヤアクスルケース5を介して取付けられる左右一対の後輪6とを備える。エンジン動力は、ベルト式無段変速機構7を介してミッションケース2に入力される。ミッションケース2に入力されたエンジン動力は、主クラッチ機構8の伝動下手側から、フロントアクスルケース3およびリヤアクスルケース5に伝動されると共に、株間変速機構9を介して植付PTO軸10に伝動される。株間変速機構9は、二枚の変速ギヤ11a、11bが設けられる第一変速動作部11と、三枚の変速ギヤ12a、12b、12cが設けられる第二変速動作部12とを備えて構成され、各変速動作部11、12の変速動作に応じて植付PTO軸10の回転速度(車速に対する相対速度)が六段階に変速される。
【0006】走行機体1の後部には、昇降リンク機構1aを介して植付作業部13が連結されている。植付作業部13は、昇降リンク機構1aにローリング自在に連結される植付フレーム14と、該植付フレーム14の上方に左右往復動自在に設けられる苗載台15と、上記植付フレーム14の左右中間部に取付けられる入力ケース16と、上記植付フレーム14に対して左右方向に所定間隔を存して取り付けられ、植付フレーム14から後方に延出する複数の植付伝動ケース17と、該植付伝動ケース17の後端部に設けられる植付機構18と、上記植付伝動ケース17の下方に上下揺動自在に設けられるフロート19とを備えて構成される。
【0007】入力ケース16は、前記植付PTO軸10から植付動力を入力する入力軸20を備える。入力ケース16に入力された植付動力は、植付伝動軸21を介して各植付伝動ケース17の前端部に伝動され、さらに、植付伝動ケース17に伝動された植付動力は、植付伝動ケース17の後端部に貫通状に軸承される植付駆動軸22に対し、チェン伝動機構23を介して伝動される。
【0008】植付駆動軸22の両端部もしくは一端部には、植付機構18を構成する回転ケース24が一体的に設けられる。回転ケース24には、植付駆動軸22に回動自在に支持され、かつ植付伝動ケース17側に噛合して回り止めされる太陽ギヤ25と、該太陽ギヤ25に対して180゜位置をずらして噛合する一対の中間ギヤ26と、各中間ギヤ26に噛合する遊星ギヤ27とが内装されている。
【0009】回転ケース24の両端部には、植付爪支持ケース28が設けられる。各植付爪支持ケース28は、その先端部に植付爪29を備える一方、基端部には筒状軸30が一体的に突設される。筒状軸30は、回転ケース24の両端部に回動自在に支持されると共に、各遊星ギヤ27に一体的に結合されている。つまり、植付駆動軸22の駆動に伴って回転ケース24が回転すると、中間ギヤ26が太陽ギヤ25の周囲を公転しながら自転すると共に、遊星ギヤ27が逆回りに自転し、それに伴って植付爪支持ケース28が植付駆動軸22を中心として公転しつつ筒状軸30を中心として逆方向に自転する。従って、植付爪支持ケース28は、回転ケース24が回転しても、前下方を向く姿勢に保たれる。
【0010】太陽ギヤ25、中間ギヤ26および遊星ギヤ27は、何れも偏芯ギヤで構成されており、該偏芯ギヤの角速度は、植付爪29の先端が苗載台15の下端部から苗を掻取った後、前方に膨らむ円弧を描きながら土中の植付位置に達し、その後は直線的に上昇するという半月状の静止軌跡(走行停止時の先端運動軌跡)を描くように設定される。また、一方の植付爪29が苗載台15から苗を掻取るとき、それと同時に他方の植付爪29が植付けを実行し、また、他方の植付爪29が苗載台15から苗を掻取るとき、それと同時に一方の植付爪29が植付けを実行するよう植付爪29の位置および軌跡が設定される。これにより、回転ケース24が一回転する毎に二回の植付けを実行することが可能になる。
【0011】入力ケース16においては、入力軸20が入力した植付動力がベベルギヤ機構31を介して第一伝動軸32に伝動される。第一伝動軸32の動力は、第二伝動軸33を介して前記植付伝動軸21に伝動されると同時に、横送り伝動軸32aを介して横送り変速ケース34にも伝動される。横送り変速ケース34は、植付フレーム14の右端部に取り付けられており、横送り伝動軸32aから入力した横送り動力を、内部の横送り変速機構34aで変速した後、苗載台横送り軸35に伝動するように構成される。苗載台横送り軸35は、無端状のラセン溝を有するスクリュー軸であり、その回転に応じて苗載台15が往復状に横送りされる。
【0012】第一伝動軸32と第二伝動軸33との間には、不等速変換機構36が介設されている。不等速変換機構36は、互いに噛合する一対の偏芯ギヤ36a、36bを介して動力伝動を行うことにより、回転ケース24の回転速度に周期的な速度変動を生じさせる。植付動力伝動経路における不等速変換機構36の介設位置は、植付機構18の伝動上手側で、且つ、株間変速機構9および横送り変速ケース34よりも伝動下手側である。これにより、株間変速に伴って回転ケース24の速度変動位置がずれたり、苗載台15の横送り速度が不等速になって振動が発生する等の不都合を解消される。しかも、不等速変換機構36は、各植付駆動軸22に動力を分配する植付伝動軸21よりも伝動上手側に介設されるので、複数設けられる回転ケース24の回転速度を一箇所で不等速変換することが可能になる。
【0013】また、不等速変換機構36は、入力ケース16の外部に配置されると共に、着脱容易なカバー37で覆蓋される。カバー37を外すと、偏芯ギヤ36a、36bが露出し、その交換が可能になる。従って、作業条件(植付け株間等)の変更に際し、偏芯ギヤ36a、36bを変速量が異なる偏芯ギヤに交換することによって、作業条件に適合する不等速変換を行うことが可能になる。
【0014】第二伝動軸33と植付伝動軸21との間には、減速機構38が介設される。減速機構38の減速比は、回転ケース24に設けられる植付爪支持ケース28(植付爪29)の個数(回転ケース24が一回転中に行う植付回数)の整数倍に設定される。これにより、偏芯ギヤ36a、36bが一回転中に発生させる増速域が一回であっても、各植付爪29に同様の速度変動を生じさせることが可能になる。また、減速機構38は、各植付駆動軸22に動力を分配する植付伝動軸21よりも伝動上手側に介設されるので、複数の植付機構18を備えるものでありながら、植付け爪29の個数に応じた減速を一箇所で行うことが可能になる。
【0015】次に、回転ケース24の増減速領域設定および最高速点設定について説明する。図10は、植付爪の静止軌跡を示す側面図である。この図に示すように、各回転ケース24に設けられる植付爪29の個数が2である本実施形態においては、植付動力伝動経路に、前述の不等速変換機構36および減速機構38を介設することにより、回転ケース24の回転速度に増速域A、Cと減速域B、Dを発生させる。これにより、各植付爪29の掻取運動速度および土中運動速度が増速される一方、掻取苗を保持している中間運動域の運動速度が減速される。また、各増速域A、Cには、略180゜ずらして二つの最高速点E、Fが存在する。一方の最高速点Eは、植付爪29が苗を植付けた直後(土中)に合わせて設定される一方、他方の最高速点Fは、植付爪29が苗を掻取るときに合わせて設定される。以下、株間を広く設定(例えば24cm)した場合における植付爪29のランニング軌跡を示し、該ランニング軌跡に基づいて本発明の作用を説明する。
【0016】図11は、従来のランニング軌跡を示す説明図である。この図に示すように、不等速変換を行わない従来のものでは、株間を広く設定(車速に対する植付速度を遅くする。)すると、土中における植付爪29の運動速度が不足することから、機体進行に伴う植付爪29の土中前方移動量が大きくなり、植え付けた苗が植付爪29によって引き摺られる可能性がある。
【0017】図12は、最下点を最高速点にした場合のランニング軌跡を示す説明図である。この図に示すように、植付爪29の最下点(120゜)を最高速点とした場合には、土中における植付爪29の運動速度が増速されることから、機体進行に伴う植付爪29の土中前方移動量が小さくなる。しかしながら、苗を植え付けた後における植付爪29の引き上げ速度が十分ではなく、植付爪29の上昇時に植付苗に干渉する可能性がある。
【0018】図13は、本発明のランニング軌跡を示す説明図である。この図に示すように、植付爪29が苗を植付けた直後(140゜)を最高速点とした場合には、土中における植付爪29の運動速度が増速されることから、機体進行に伴う植付爪29の土中前方移動量が小さくなる。また、図12に示すものに比べ、苗を植え付けた後における植付爪29の引き上げ速度が速くなり、植付爪29と植付苗との干渉が回避される。しかも、180゜ずらして設定される他方の最高速点が、苗を掻取るタイミングに一致し、掻取り性能の向上も図られることになる。
【0019】叙述の如く構成されたものにおいて、回転ケース24の両端部に、該回転ケース24の回転に伴って苗載台15から苗を掻取り、且つ、掻取った苗を土中に植付ける植付爪29を備える田植機において、前記回転ケース24の回転に速度変動を生じさせる不等速変換機構36を設けると共に、前記回転ケース24の回転の最高速点Eを、前記植付爪29が苗を植付けた直後に合わせたため、植付周期を変えることなく、土中における植付爪29の動作速度を速くすることができ、その結果、植付株間を広げても、土中における植付爪29の前方移動量が抑制され、苗の引き摺りを防止することができる。しかも、回転ケース24の最高速点Eが苗を植付けた直後(土中)であるため、下死点を最高速点とする場合に比べ、植付爪29の引き上げを素早く行うことができ、その結果、植付苗との干渉を減らし、植付精度をさらに向上させることができる。
【0020】また、前記回転ケース24の回転領域に、前記植付直後の最高速点Eと略180゜ずらして最高速点Fを設け、前記植付爪29が苗を掻取るときの前記回転ケース24の速度を増速させたため、植付直後の増速によって植付精度が向上する許りでなく、苗掻取り時の増速によって植付苗の掻取り性能も向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱農機株式会社
【住所又は居所】島根県八束郡東出雲町大字揖屋町667番地1
【出願日】 平成14年2月13日(2002.2.13)
【代理人】 【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
【公開番号】 特開2003−235317(P2003−235317A)
【公開日】 平成15年8月26日(2003.8.26)
【出願番号】 特願2002−35754(P2002−35754)