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【発明の名称】 水田作業機
【発明者】 【氏名】神谷 寿
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】長井 博
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】新山 裕之
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【要約】 【課題】ピッチング装置の有効利用による性能向上及び構成の簡略化を図る。

【解決手段】走行車体1に対する作業機部分4の前後傾斜姿勢を変更するピッチング装置33を設ける。ピッチング装置33を作動する制御の形態には、走行車体1の前後傾斜姿勢に基づき作業機部分4が所定の前後傾斜姿勢となるように自動制御する自動制御モードと、走行車体1に対する作業機部分4の前後傾斜姿勢が手動で設定された状態となるように制御する手動設定モードとがあり、いずれかのモードを選択可能である。自動制御モードにおける作業機部分4の前後傾斜姿勢の調節可能範囲よりも手動設定モードにおける作業機部分4の前後傾斜姿勢の調節可能範囲を小さい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行車体に対し作業機部分が昇降可能に連結され、作業機部分に設けた左右方向の軸回りに回動自在なフロートにより圃場面の凹凸を検出し、その検出結果に基づき作業機が所定の対地高さに維持されるように昇降制御を行う水田作業機において、走行車体に対する作業機部分の前後傾斜姿勢を変更するピッチング装置を設け、このピッチング装置を作動する制御の形態を、走行車体の前後傾斜姿勢に基づき作業機部分が所定の前後傾斜姿勢となるように自動制御する自動制御モード、及び走行車体に対する作業機部分の前後傾斜姿勢が手動で設定された状態となるように制御する手動設定モードのいずれか選択可能とし、自動制御モードにおける作業機部分の前後傾斜姿勢の調節可能範囲よりも手動設定モードにおける作業機部分の前後傾斜姿勢の調節可能範囲を小さくしたことを特徴とする水田作業機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行車体に対する作業機部分の前後傾斜姿勢を変更するピッチング装置を備えた水田作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】走行車体に対し作業機部分が昇降可能に連結された田植機等の水田作業機は、作業機部分に左右方向の軸回りに回動自在にフロートを設け、このフロートの上下揺動に応じて作業機部分を昇降させることにより、作業機部分の対地高さを一定に維持する昇降制御を行っている。フロートの対地角度(フロート迎い角)をセンサで検出し、その検出結果に基づき作業機部分を昇降させる電子制御式の場合は、センサの制御目標値を変更することで制御感度を変えられる。
【0003】また、走行車体の前後傾斜が極端に大きくなった時、例えば畦を乗り越え圃場を脱出しながら苗を植付ける時のようにフロートの感知に基づく昇降制御では対応しきれない場合のために、走行車体に対する作業機部分の前後傾斜姿勢を変更するピッチング装置を設けた水田作業機も知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のピッチング装置は、通常に圃場で作業を行っているときに作動することはほとんどなく、上述の圃場脱出時等のような特殊な場合にしか作動しない。したがって、ピッチング装置が十分に活用されているとは言えなかった。そこで、ピッチング装置を通常の作業時にも有効利用することにより、性能向上と構成の簡略化を図ることが本発明の課題である。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、次に示す技術的手段を講じた。すなわち、本発明にかかる水田作業機は、走行車体に対し作業機部分が昇降可能に連結され、作業機部分に設けた左右方向の軸回りに回動自在なフロートにより圃場面の凹凸を検出し、その検出結果に基づき作業機が所定の対地高さに維持されるように昇降制御を行う水田作業機において、走行車体に対する作業機部分の前後傾斜姿勢を変更するピッチング装置を設け、このピッチング装置を作動する制御の形態を、走行車体の前後傾斜姿勢に基づき作業機部分が所定の前後傾斜姿勢となるように自動制御する自動制御モード、及び走行車体に対する作業機部分の前後傾斜姿勢が手動で設定された状態となるように制御する手動設定モードのいずれか選択可能とし、自動制御モードにおける作業機部分の前後傾斜姿勢の調節可能範囲よりも手動設定モードにおける作業機部分の前後傾斜姿勢の調節可能範囲を小さくしたことを特徴としている。
【0006】圃場脱出時等のように走行車体の前後傾斜が極端に大きくなると想定される時には、ピッチング装置を作動する制御の形態を自動制御モードにする。これにより、作業機部分の対地高さを適正に維持したまま作業を行える。通常の平坦な圃場で作業を行う場合には、ピッチング装置を作動する制御の形態を手動設定モードにする。そして、圃場の硬軟等の条件に合わせて走行車体に対する作業機部分の前後傾斜姿勢を手動で変更する。走行車体に対する作業機部分の前後傾斜姿勢を変更すると、フロートの対地角度(フロート迎い角)が変わり、それによって昇降制御の感度も変わる。具体的には、フロート迎い角が大きいほど、すなわちフロートが前下がりであるほど感度が敏感になる。
【0007】圃場脱出時に変更される作業機部分の前後傾斜角度は10〜30°程度である。これに対し、昇降制御の感度調節のために変更される作業機部分の前後傾斜角度は最大でも±2°弱である。したがって、自動制御モードにおける作業機部分の前後傾斜姿勢の調節可能範囲よりも手動設定モードにおける作業機部分の前後傾斜姿勢の調節可能範囲を小さくしておいて十分であり、ピッチング装置の作動範囲を広げる必要がない。
【0008】
【発明の効果】この発明の構成とすると、ピッチング装置を圃場脱出時等のような特殊な場合だけでなく、通常作業時における昇降制御の感度調節に利用できる。その結果、従来機に設けられていた感度調節機構が不要となり、構成が簡略化並びにコストダウンになる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面に表された実施の形態に基づき本発明を具体的に説明する。図1乃至図5は本発明を適用した水田作業機を表している。この水田作業機1は乗用田植機であって、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して作業機部分としての水稲用苗植付部4が装着されている。
【0010】走行車体2は、左右一対の前輪6,6及び後輪7,7を備えた四輪駆動車両であり、機体の前後中央部に搭載されたエンジン8の回転動力が、機体前部のミッションケース9内のトランスミッションで変速されてから、前輪6,6及び後輪7,7に伝達されると共に、植付クラッチ10を経由するPTO軸11を介して苗植付部4へ伝動されるようになっている。エンジン8の上側に運転座席13を設け、その前方に前輪6,6を操向するステアリングハンドル14を配設している。走行車体の前後傾斜は前後傾斜センサ15で検出され、左右傾斜の変化速度は左右角速度センサ16で検出される。17は予備苗載台で、補給用のマット苗を載せる複数段の苗枠17a,…を有している。
【0011】昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、走行車体2のリンクベースフレーム20に回動自在に枢支された左右一対の上リンク21,21及び下リンク22,22を備え、これらリンクの後端部に縦枠23を連結し、その縦枠23の下端部に苗植付部4から前方に突出するローリング軸24を挿入連結している。走行車体2に基部が枢着された昇降油圧シリンダ26のピストンロッドが下リンク22,22と一体のスイングアーム27に連結されており、該シリンダを油圧で伸縮させることにより、各リンクが上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。昇降油圧シリンダ26は、リンクベースフレーム20に取り付けた油圧バルブ27によって制御される。
【0012】前記上リンク21,21の後端部には下リンクと縦枠との連結点を中心とする円弧状の長穴30,30を形成し、上リンクと縦リンクとを連結する連結ピン31をこの長穴30,30に摺動自在に嵌合させている。したがって、縦枠23は下リンク22,22との連結ピン32を支点にして回動可能である。左右の上リンク21,21の間に設けられたピッチング装置としてのピッチング油圧シリンダ33のピストンロッドが縦枠23に連結されており、該シリンダ33を伸縮作動させて縦枠23を回動させることにより、苗植付部4が前後傾動(ピッチング)する。苗植付部4の前後傾斜は、縦枠23に設けたピッチングセンサ34で検出される。
【0013】前記ローリング軸24は若干後ろ下がりの略前後方向を向いており、苗植付部4はこのローリング軸24を支点にして左右傾動(ローリング)自在に支持されている。縦枠23の上部には、両ロッド型のローリング油圧シリンダ35が取付ピン36により取り付けられている。そして、そのシリンダ35の左右両ロッドと苗植付部の苗載台フレーム56の左右支柱部56a,56aとをリンク37,37を介して連結している。ローリング油圧シリンダ35が作動してロッドが左右にスライドすると、苗植付部4がローリング軸24回りにローリングする。走行車体2に対する苗植付部4の左右傾斜は左右傾斜センサ38に検出される。
【0014】図6は各油圧シリンダを作動させる油圧装置の油圧回路図で、油タンク40内の作動油が油圧ポンプ41によって送り出され、昇降油圧シリンダ26の回路部と、ピッチング油圧シリンダ33の回路部と、ローリング油圧シリンダ35の回路部とにそれぞれ供給される。昇降油圧シリンダ26の制御弁27、ピッチング油圧シリンダ33の制御弁42及びローリング油圧シリンダ35の制御弁43はいずれも比例ソレノイド弁である。ピッチング油圧シリンダ33及びローリング油圧シリンダ35のシリンダポートには、油圧力を検出する圧力センサ44A,44B,44L,44Rが設けられている。
【0015】苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51aに供給するとともに苗送りベルト51bが作動して苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a,…に供給された一株分の苗を分割して取り出して圃場に植付ける苗植付装置52,…、左右中央に1個及びその両側各1個づつ整地用のフロート53,54,54等を備えている。各フロートを圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロートが泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52,…により苗が植付けられる。各フロート53,54,54は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように左右方向の軸回りに回動自在に取り付けられている。中央のフロート53は圃場表土面の凹凸を検出するための接地体であり、その迎い角がフロートセンサ55に検出される。
【0016】植付作業時には、各条の苗の植付深さを常に一定に維持するために昇降制御、ピッチング制御、ローリング制御の各制御を行う。図7はこれらの制御を併せて行う姿勢制御装置のブロック図で、コントローラ60の入力側に前後傾斜センサ15、左右角速度センサ16、ピッチングセンサ34、左右傾斜センサ38、圧力センサ44A,44B,44L,44R、フロートセンサ55、感度調節ダイヤル61、及び自動制御モードと手動設定モードとに切り替えるモード切替スイッチ62が接続され、出力側に昇降制御弁27、ピッチング制御弁42、ローリング制御弁43及び警報機63が接続されている。
【0017】昇降制御は、フロートセンサ55の検出値が所定の制御目標値に近づくように、昇降制御弁27に出力して苗植付部4を昇降させる。この昇降制御の感度は、感度調節ダイヤル61で調節できる。感度調節ダイヤル61の設定位置に応じ、ピッチング油圧シリンダ33が作動して走行車体に対する苗植付部の前後傾斜姿勢が変更される。これにより、フロートセンサ55の基準迎い角が変わり、制御感度が変わる。基準迎い角が大きいほど、すなわちフロート53が前下がりであるほど、センサ53の対地追従性が良好になり、制御感度が高くなる。この感度調節ダイヤル61による感度の調節は、モード切替スイッチ62が手動設定モードになっている場合にだけ有効である。
【0018】図8に示すように、感度調節ダイヤル61は「1」〜「7」まで7段階に操作可能になっている。例えば、ダイヤルを1段階回すごとに、走行車体1に対する苗植付部4の前後傾斜姿勢が0.6°づつ変更される。したがって、標準感度「4」を基準にして最大で±1.8°だけ苗植付部4の前後傾斜姿勢を変化させられる。
【0019】ピッチング制御は、モード切替スイッチ62が自動制御モードになっている場合に有効で、前後傾斜センサ15及びピッチングセンサ34の検出値に基づき、フロート53の接地圧が一定に保たれるように、ピッチング制御弁42に出力して走行車体1に対する苗植付部4の前後傾斜姿勢を制御する。
【0020】このピッチング制御は、図9のフローチャートに示すように、苗植付部4が下降後、フロートセンサ値の変動幅が規定値以下になるか、又は一定時間が経過してからでないと実行されないようにしている。これにより、苗植付部4が下降した直後の一時的に機体が不安定な状態のときに制御が行われるのを避けることができ、作業性の向上が図れる。
【0021】畦を乗り越えて圃場を脱出する時には、ピッチング制御の範囲を越えることによりフロート53,54,54の後端側が沈み込んで苗の植付けが不可能になったり、走行車体1が前上りになりすぎて転倒する危険が生じることがある。前者はピッチングセンサ値から判断でき、その場合は例えば断続的に警報が鳴るように警報機63に出力する。後者は前後傾斜センサ値から判断でき、その場合は例えば連続的に警報がなるように警報機63に出力する。このように警報機63の出力のし方によって両者を区別すれば、オペレータが瞬時に状況を把握することができ、適切な対応をとりやすい。
【0022】ローリング制御は、左右角速度センサ16及び左右傾斜センサ38の検出値に基づき、苗植付部4が左右水平になるようにローリング制御弁43に出力し、苗植付部4のローリング軸24回りの左右傾斜姿勢を制御する。
【0023】また、フロート53,54,54を接地させながら旋回するフローティングターンを行う場合については、図10のフローチャートに示すように、フロートセンサ値が規定値以下の場合は、フロートに無理な負荷がかかることを防止するために、フローティングターンを中止して苗植付部4を上昇させるようにしている。上記規定値を外部から設定できるようにしておけば、圃場の状況に合った制御を行える。
【0024】フローティングターン時には、走行車体1が若干旋回外側に傾くので、外側のフロート54ほど整地跡が深くなる傾向がある。そこで、フローティングターン時にはローリング油圧シリンダ35を作動させて、苗植付部4を強制的に水平に戻すように制御するとよい。
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【住所又は居所】愛媛県松山市馬木町700番地
【出願日】 平成14年1月31日(2002.1.31)
【代理人】 【識別番号】100083611
【弁理士】
【氏名又は名称】菅原 弘志
【公開番号】 特開2003−219713(P2003−219713A)
【公開日】 平成15年8月5日(2003.8.5)
【出願番号】 特願2002−23817(P2002−23817)