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【発明の名称】 掘削用工具
【発明者】 【氏名】廣瀬 健二
【住所又は居所】大阪府寝屋川市池田西町26−5 東邦金属株式会社寝屋川工場内

【要約】 【課題】灌木林や荒れ地を掘削して木の根等を切断し、開墾、耕地化するためや、対人地雷の除去等に使用するに適した掘削用工具を提供する。

【解決手段】強制回転させられる円筒状基体に固着されるホルダと、該ホルダに取り付けられる着脱可能なビットと、これらビットとホルダとを固定する固定具とを備えた掘削用工具であって、前記ビットの基部には係合用の凹部が設けられ、前記ホルダにはビットの凹部に係合する板状部が設けられるとともに、該板状部の前側と後側にはそれぞれ厚肉の支持部が形成され、これら係合用の凹部と板状部には、両者の係合状態において固定具を挿通することのできる通孔が設けられ、かつ前記ビットの刃先部は、側面視において5〜30度の正のすくい角を有する側面視で45〜80度の尖った形状に形成されるとともに、ビットの中間部には、係合状態において前記前後の支持部端面に当接する張出した顎部が設けられている掘削用工具。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 強制回転させられる円筒状基体に固着されるホルダと、該ホルダに取り付けられる着脱可能なビットと、これらビットとホルダとを固定する固定具とを備えた掘削用工具であって、前記ビットの基部には係合用の凹部が設けられ、前記ホルダにはビットの凹部に係合する板状部が設けられるとともに、該板状部の前側と後側にはそれぞれ厚肉の支持部が形成され、これら係合用の凹部と板状部には、両者の係合状態において互いに重なり合う固定具挿通用の通孔が設けられ、かつ前記ビットの刃先部は、側面視において5〜30度の正のすくい角を有する側面視で45〜80度の尖った形状に形成されるとともに、ビットの中間部には、係合状態において前記前後の支持部端面に当接する張出した顎部が設けられていることを特徴とする掘削用工具。
【請求項2】 前記板状部の通孔にガタツキを防止するブッシュが嵌着され、該ブッシュの内部に固定具であるボルトが挿通される請求項1に記載の掘削用工具。
【請求項3】 ビットの背面部の肉厚方向中央部に該ビットの厚肉部から外側へ隆起する薄肉の板状リブが設けられている請求項1又は2に記載の掘削用工具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、灌木林や荒れ地を掘削して木の根等を切断し、開墾、耕地化するためや、対人地雷の除去等に使用するに適した掘削用工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】横軸方向の両端部に回転機構を備えた円筒状の基体の外周部に複数列のビット取り付け部を設け、各列に複数のビットを溶接等の固着方法で取り付けた掘削装置が実用化されている。この掘削装置は、円筒状の基体を回転させつつ、その外周面に突出させたビットで地面等の掘削を行うものである。前記ビットとしては、刃先が焼き入れ硬化されたものや、鋼製シャンクの刃先部に超硬チップ等の硬質刃体を蝋付け等の方法で固着したものが使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の装置は、円筒状基体に溶接等で固着したビットが摩耗した時に、該ビットを交換するのが難しく、装置全体が使用不能となるので、きわめて不経済であった。そこで、ビットを基体に対し着脱可能として、損耗したビットだけを取り替えることができるようにしたものが開発されているが、使用時にはビットに大きな反力が作用するので、ビットの取付け部が損傷したり、ガタが生じたりすることが多かった。
【0004】この問題を解決するものとして、ビット又はホルダの一方の基部に係合用の凹部を、他方には該凹部に係合する板状部を設け、これら係合用の凹部と板状部とを、掘削時における前側が低く後側が高い傾斜面で互いに接触する形状とするとともに、これらビットとホルダとを、塑性変形可能なブッシュが外嵌された軸体からなる固定具をその係合部に挿通することにより固定するように構成した掘削工具が開発され、すでに特許出願されている(特開平11−196610号参照)。
【0005】さらに、上記特開平11−196610号公報に記載の掘削工具を改良するものとして、上記凹部と板状部の接触面を回転方向前側が低い傾斜面とすることによりホルダの摩耗を少なくしたものも特許出願されている(特願2001−105799号)。
【0006】しかしながら、これら従来の掘削工具は、いずれもビットとホルダの固定強度が十分ではなく、大きな切削抵抗を受けた時に、ビットのガタツキによりホルダが変形し、早期に寿命に達することが多かった。そこで、本発明は、切削抵抗によるビットのガタツキをできるだけ小さくし、ホルダの変形を防止することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用した。すなわち、請求項1に記載された発明にかかる掘削用工具は、強制回転させられる円筒状基体に固着されるホルダと、該ホルダに取り付けられる着脱可能なビットと、これらビットとホルダとを固定する固定具とを備えた掘削用工具であって、前記ビットの基部には係合用の凹部が設けられ、前記ホルダにはビットの凹部に係合する板状部が設けられるとともに、該板状部の前側と後側にはそれぞれ厚肉の支持部が形成され、これら係合用の凹部と板状部には、両者の係合状態において互いに重なり合う固定具挿通用の通孔が設けられ、かつ前記ビットの刃先部は、側面視において5〜30度の正のすくい角を有する側面視で45〜80度の尖った形状に形成されるとともに、ビットの中間部には、係合状態において前記前後の支持部端面に当接する張出した顎部が設けられていることを特徴としている。
【0008】前記板状部の通孔にブッシュを嵌着し、該ブッシュの内部に固定具であるボルトを挿通してビットをホルダに固定すると、該ブッシュによって固定部のガタツキが防止されるので好ましい。さらに、ビットの背面部の肉厚方向中央部に、該ビットの厚肉部から外側へ隆起する薄肉の板状リブを設けておけば、重量をそれほど増加させずにビットの強度を向上させることができるので好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面に表された本発明の実施形態に基づいて、具体的に説明する。
【0010】この掘削用工具1は、回転掘削装置の円筒状の基体2に固着されるホルダ5,…と、該ホルダに個々に取り付けられるビット7,…からなる。基体2は、図11に示すように、軸方向の左右両端部に回転装置10,10が設けられており、掘削中はこの回転装置によって所定方向に強制回転させられる。
【0011】ホルダ5の基部には図2に示すように円弧状の底面5aが形成され、基体2の円形の外周面に密着させて溶接固着されている。底面5aの両側面には溶接のための面取り5b,5bが施されている。溶接に際しては、ホルダ5の底面に設けた丸棒状の突起5cを基体2の外周面に設けた穴に挿入して位置決めするので、ホルダの配置を予め設定した通りの効率のよい配置とするのが容易である。このような突起の代わりに他の位置決め手段を採用してもよく、場合によってはホルダに位置決め手段を設けておかなくてもよい。なお、基体2に対するホルダ5,…の数と配置は、使用条件に応じて最適なものとすればよく、例えば基体2の外周面に沿って螺旋状に配置する等、所望の掘削効率が得られるものとすればよい。また、図10に示すように、基体2の左右両端部に取り付けられるホルダ5とビット7(符号Gで示す)は、掘削範囲が基体2の全幅以上となるよう、ビットの先端部が外向きに開いた姿勢となるように他のものよりも数度だけ傾斜させて固定しておくのが好ましい。
【0012】ホルダ5の上面は回転方向前側が低い一つの傾斜平面として形成されており、回転方向前側と後側にそれぞれ厚肉の支持部12、13が設けられ、両者の中間部には、前側が低い傾斜面を上面15aとして備えた肉厚の薄い板状部15が形成されている。板状部15の下側は前記支持部12、13と同じ厚さの基部14となっていて、前記板状部15は、前側の支持部12と後側の支持部13及びこの基部14によって概略U字状に囲まれている。なお、前側の支持部12は後側の支持部13よりも若干低くなっており、その背面12aと後側の支持部13の前面13aは、それぞれ平らな支持面として形成されている。前側の支持部12の前部両側面は、平面視において前側が尖るような傾斜面12b,12bとして形成されている。
【0013】ホルダ5の板状部15の中央部には、左右に貫通する挿通孔19が設けられている。この挿通孔19には、ビットを固定するための固定具である後述のボルトが挿通される。
【0014】ビット7は、鋼製のシャンク部(台金)21の頭部22に超硬チップの刃体23を蝋付け固着してなる。前記シャンク部21には、その基部底面から上方に向けて嵌合溝25が切り込まれていて、この嵌合溝25の両側部分は二股の脚部21a,21bとなっている。嵌合溝25の溝底をなす面25aは、前記ホルダの板状部15の上面に密着する平面となっている。また、シャンク部21には、前記脚部21a,21bを貫通する固定具挿入用の挿通孔27が設けられている。この挿通孔27のうち、嵌合溝25を挟んで一方の脚部21a側に形成されている部分は、固定具であるボルト30の頭部30aが埋め込まれる皿状部27aとなっており、螺子は切られていない。また、嵌合溝25を挟んで反対側の脚部21bに設けられている穴部分はボルト30が螺合するネジ穴27bとなっている。
【0015】ビット7の頭部22の軸心(m)は、シャンクの基部の軸心(n)に対し前向きに傾斜している。また、ビットの先端部は、角αの尖った形状に形成され、該ビットの先端部の前面側には、正のすくい角βが形成されている。なお、頭部22の背面には、上面がなだらかな薄肉のリブ22aが外側へ隆起するように設けられている。前記角α,βは、頭部の形状にもよるが、切削性と掘削物の掻き上げ性を考慮すると、通常はαが45〜80度程度、βが5〜30度程度とするのが好ましい。なお、頭部の上面22bは、回転掘削の抵抗にならないよう僅かに後側が低い傾斜面となっている。上記刃体23の固着部には、ビット頭部の上端部から縦方向に上下に開口する溝24が形成され、この部分に刃体(超硬チップ)23が嵌め込まれて蝋付けされている。超硬チップの刃体23の刃先は、側面視山形に尖っていて、台金部分から前側及び上側に向かって突出している。
【0016】前記ビット7の脚部21a,21bと頭部の境界部には、、前後に張出する顎部35,36が段状に形成されている。この顎部35,36の下面35a,36aは、ビットを前記ホルダ5に取り付けたとき該ホルダの上面に密着する平面となっている。なお、超硬チップの刃体23が植設されたビット刃先部の直下部に、その前面部から側面部にかけて硬化肉盛層(ハ−ドフェ−シング)を形成しておくと、耐摩耗性が強化されるので好ましい。
【0017】ビット7をホルダ5に固着するための固定具30は、図示例では皿状の頭部を有する六角穴付きボルトである。なお、固定具としては他の形状のボルト、ビス、ピン等を使用することができるが、ビットの側部に突出していると掘削中に急速に摩耗するので、図示例のような角穴付きボルトを用い、固着状態では頭部がビット側面に突出しないようにするのが好ましい。
【0018】ホルダ5にビット7を取り付けるに際しては、図8に示すように、ホルダ5の板状部15に穿設されている前記挿通孔19に塑性変形可能なブッシュ31を嵌着してから、ビット7の嵌合溝25を板状部15に嵌合し、固定具30を挿入螺着する。この状態では、ビット7の顎部35,36がホルダ5の前後の支持部12,13上に載置された密着した状態となる。上記ブッシュ31の材質としては、ある程度塑性変形可能で、固定具を係合部に挿入した時にガタや遊びがないようにしっかりと固定具を保持できるものであればよく、ナイロンその他の合成樹脂や、例えば銅、アルミ等の軟質金属の筒体を適宜採用することができる。場合によっては、この種のブッシュを省略してもよい。
【0019】この掘削工具1は、円筒状の基体2の外周部に適当な配置でホルダ5,…を固着して使用される。ホルダ5,…の配置は、基体2の軸方向に沿う複数の線上に適当な間隔で列状に配置するのが好ましい。この場合、隣接するホルダ列の各ホルダは、図9に示すように、前後で横方向に位置をずらして、平面視千鳥状に配置するのが効果的である。なお、ホルダの配置は、これに限らず、基体の回転により広い範囲にわたって効果的な掘削が行われるようなものであればよい。
【0020】基体2に適当な配置で固着されたホルダ5,…にはそれぞれビット7,…を取り付ける。この取り付けは、上記のとおり、ホルダの板状部15をビットの嵌合溝25に嵌合させ、固定具であるボルト30をビットの両脚部21a,21bの挿通孔27と板状部15の挿通孔19にそれぞれ挿通して螺着することにより行われる。このビットの着脱は簡単である。この場合、外周部に嵌合したブッシュ31を挿通孔内に無理嵌めし、固定具の軸体であるボルト30がゆるまないようにしておく。
【0021】基体2の外周部に多数のビット7,…を取り付けたら、当該基体を例えば図12に示すようなクローラ式走行装置(車輪式走行装置でもよい)40のアーム41に取り付け、地面に押し付けた状態(場合によっては単に載置しただけでもよい)で油圧モータを駆動源とする回転装置10,10で所定方向に強制回転させる。この回転により基体2が所定方向に転動しつつビット7,…により掘削が行われる。ビットの先端部には硬質の刃体23が植設されているので、木の根や石等があってもうまく掘削を行うことができる。ビット7の頭部は尖っていて、正のすくい角が形成されている(頭部がシャンクの軸心に対し前傾姿勢となっている)ので、掘削された土砂や掘り起こされた地雷等はビットの頭部によって回転方向に沿ってうまく掬い揚げられ、効果的な掘削が行われる。
【0022】掘削中にビットに作用する力の多くは、ビット7の顎部35,36と支持部12,13の上面との接触、ビット7の脚部の前後面と支持部12,13の内面との接触、及びホルダの板状部15の上面15aとビットの嵌合溝25の底面25bとの接触部によって支持される。特に、上記ビット7の顎部35,36と支持部12,13の上面との接触によって、大きな切削抵抗力を支持することができる。図示例の走行装置40は油圧ショベルのショベルの代わりにカバー43付きの基体2を取り付けたもので、ビット7によって掻き上げられた掘削物はこのカバー43の内側によって飛散が防止される。
【0023】この掘削用工具1は、ビット7がホルダ5を介して基体2に取り付けられるが、ホルダの露出部中、基体2の回転方向前側の部分(支持部12)の高さが低いので、使用中は専らビット7が摩耗し、ホルダ5の摩耗は少ない。このため、ビットが摩耗した場合は、当該ビットだけを取替えることにより、再使用することができる。なお、ビット7の刃先部には前側が断面山形に尖った硬質刃体(超硬チップ)23が蝋付けされているので、ビット頭部の切削性は良好である。
【0024】なお、この掘削装置を対人地雷の除去に使用する場合は、遠隔操作等で、対象地面上を進行させるのが安全上好ましい。また、以上の説明では、ホルダを円筒状の基体2に取り付けて使用する場合を例示したが、基体の形状はこれに限られるものではなく、他の形状の基体に取り付けて使用することもできる。
【0025】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明にかかる掘削工具は、そのビットの先端部が正のすくい角を有する尖った形状に形成されているので、効率よく切削することができ、切削抵抗も比較的少なくてすむ。また、ビットの頭部に、ホルダの支持部上面に当接して切削抵抗を受ける顎部が張出させて設けられているので、切削時においてビットを強固に支持することができ、ガタツキが少なくてすむ。このため、ホルダとビットの変形が少なく、長寿命を達成することができる。なお、ビットとホルダを固定する固定具であるボルトを図示例のようなブッシュを介して挿入固定する構成とすると、この部分のガタツキを抑制することができるので、より好ましい。
【出願人】 【識別番号】598000426
【氏名又は名称】雨宮 清
【住所又は居所】山梨県山梨市大野85−1
【識別番号】000221889
【氏名又は名称】東邦金属株式会社
【住所又は居所】大阪市中央区北浜2丁目6番17号
【出願日】 平成14年2月18日(2002.2.18)
【代理人】 【識別番号】100083611
【弁理士】
【氏名又は名称】菅原 弘志
【公開番号】 特開2003−235305(P2003−235305A)
【公開日】 平成15年8月26日(2003.8.26)
【出願番号】 特願2002−40382(P2002−40382)