| 【発明の名称】 |
特性の変化を抑制した電磁波吸収体とその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】遠藤 博司
【氏名】筒井 和久
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| 【要約】 |
【課題】軟磁性物質の粉末を未加硫のゴムからなるマトリクス材料中に分散してシート状に成形してなる電磁波吸収体であって、非磁性物質の粉末を配合することにより寸法安定性を高めたものにおいて、使用条件において常温よりは高い温度にさらされても、温度変化が引きおこす寸法の変化によって吸収特性が変化することが実質上ないような電磁波吸収体を提供すること。
【解決手段】下記の工程に従って電磁波吸収シートを製造する:A)軟磁性金属の粉末と非磁性物質の粉末とを、ゴムまたはプラスチックのマトリクス中に、軟磁性の粉末と非磁性の粉末との合計量が体積にして全体の50〜80%を占めるように分散させ、B)次工程において生じる、加熱による寸法の変化を見込んだ厚さにロール圧延してシート状体に成形し、C)電磁波吸収体の使用条件で到達する最も高い温度、またはそれに近い温度に、寸法の変化が実質上進行しなくなる時間にわたり加熱して、生じ得る寸法の変化を生じさせる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 軟磁性物質の粉末と非磁性物質の粉末とを、未加硫のゴムマトリクス中に、軟磁性の粉末と非磁性の粉末との合計量が体積にして全体の50〜80%を占めるように分散させたものを、ロール圧延によりシート状体に成形してなる電磁波吸収体において、成形後の加熱処理により使用中の寸法変化を実質上生じなくしたことにより、特性の変化を抑制した電磁波吸収体。 【請求項2】 軟磁性の粉末が、Fe、Fe−Cr合金、Fe−Al−Si合金またはFe−Ni合金の粉末から選んだものであり、マトリクス材料が、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムまたはアクリルゴムである請求項1の電磁波吸収体。 【請求項3】 下記の工程からなる、特性の変化を抑制した電磁波吸収体の製造方法:A)軟磁性物質の粉末と非磁性物質の粉末とを、ゴムまたはプラスチックのマトリクス中に、軟磁性の粉末と非磁性の粉末との合計量が体積にして全体の50〜80%を占めるように分散させること、B)次工程において生じる、加熱による寸法の変化を見込んだ厚さにロール圧延してシート状体に成形すること、およびC)電磁波吸収体の使用条件で到達する最も高い温度、またはそれに近い温度に、寸法の変化が実質上進行しなくなる時間にわたり加熱して、生じ得る寸法の変化を生じさせること。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、特性の変化を抑制した電磁波吸収体に関する。詳しくは、シート状の電磁波吸収体であって、使用条件において常温よりは高い温度にさらされるものにおいて、温度変化が引きおこす寸法の変化による吸収特性の変化を抑制した電磁波吸収シートに関する。 【0002】 【従来の技術】電子機器に対する外部からの電磁波による干渉を防ぎ、またその機器自身からノイズ電磁波を放射することを抑制するため、軟磁性の物質、たとえばパーマロイの粉末を、未加硫のゴムのマトリクス材料中に分散させたものが、電磁波吸収体として広く使用されている。その多くはシート形状であって、シートへの成形は、通常、ロール圧延により行なう。 【0003】この電磁波吸収シートは、その使用の過程で、電磁波吸収性能の低下が起こり得ることが経験された。具体的にいえば、電磁波吸収シートは特定の周波数において吸収性能がピークになるように設計され、製造されているところ、使用中にそのピーク吸収周波数がずれてしまうという経験である。電磁波吸収シートを使用する第一の目的は、その電子機器から出る放射ノイズを低減することであり、1GHz以下の周波数領域においてとくに大きな問題である。第二の目的は、誤動作の防止であって、1GHz以上の周波数で重要度が高い問題である。いずれにせよ電磁波吸収シートは、電子機器の動作周波数もしくはその主要な高調波、または使用周波数と、吸収性能がピークになる周波数とが、常に一致していなければならない。 【0004】ピーク吸収の周波数がずれるという現象が、使用時に電磁波吸収シートが常温より高い温度に達した場合に生じたことからみて、原因は、電磁波吸収シートが成形されたときに与えられ残留していた歪みが使用中の高い温度で解放され、シートの形状・寸法が変化することにあると考えられる。歪みの解放は、電磁波吸収シートの厚さの変化をもたらす。シートの厚さは、それを構成する軟磁性金属粉末の粒子形状および粒度、マトリクスゴム中の充填率等と並んで、ピーク吸収周波数を決定する重要な因子である。 【0005】電磁波吸収シートの成形後の変形を防止する努力として、出願人は、非磁性粉末を多量に配合することを考案し、すでに開示した(特開2000−228598)。具体的には、センダスト、パーマロイ、パーメンジュール、電磁ステンレス、Fe−Cr合金、鉄またはフェライトのような軟磁性物質の粉末と、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、ケイ酸またはケイ酸塩のような非磁性物質の粉末とを、両者の合計量が体積にして50〜80%、好ましくは55〜70%を占めるように、ゴムのマトリクス材料中に分散させたものをロール加工によりシートに成形した電磁波吸収体である。 【0006】この試みは一応の成功を収め、シートの寸法安定性は高まったため、5GHzまたはそれを超える高い周波数領域における電磁波吸収性能の低下が、ひとまず防止できているが、いっそうの改善が求められている。とくに、対象とする周波数がいっそう高い領域に拡大するにつれ、わずかなシート厚さの変化が、ピーク吸収周波数を大きく変動させるから、問題は深刻になってきている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、軟磁性物質の粉末を未加硫のゴムからなるマトリクス材料中に分散してシート状に成形してなる電磁波吸収体であって、非磁性物質の粉末を配合することにより寸法安定性を高めたものにおいて、使用条件において常温よりは高い温度にさらされても、温度変化が引きおこす寸法の変化によって吸収特性が変化することが実質上ないような電磁波吸収体と、その製造方法を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明の特性の変化を抑制した電磁波吸収体は、軟磁性物質の粉末と非磁性物質の粉末とを、未加硫のゴムマトリクス中に、軟磁性の粉末と非磁性の粉末との合計量が、体積にして全体の50〜80%を占めるように分散させたものを、ロール圧延によりシート状体に成形してなる電磁波吸収体において、成形後の加熱処理によりそれ以上の寸法変化を実質上生じなくしたことにより、特性の変化を抑制したものである。 【0009】 【発明の実施形態】上記した特性の変化を抑制した電磁波吸収体を製造する本発明の方法は、下記の工程からなる:A)軟磁性物質の粉末と非磁性物質の粉末とを、ゴムまたはプラスチックのマトリクス中に、軟磁性の粉末と非磁性の粉末との合計量が体積にして全体の50〜80%を占めるように分散させること、B)次工程において生じる、加熱による寸法の変化を見込んだ厚さにロール圧延してシート状体に成形すること、およびC)電磁波吸収体の使用条件で到達する最も高い温度、またはそれに近い温度に、寸法の変化が実質上進行しなくなる時間にわたり加熱して、生じ得る寸法の変化を生じさせること。 【0010】軟磁性物質の粉末としては、任意の物質の粉末が使用できるが、好適な例を挙げれば、Fe、Fe−Cr合金、Fe−Al−Si合金またはFe−Ni合金の粉末である。 【0011】非磁性物質の粉末は、無機物とくに酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩などで、鉄やクロムの酸化物のように、磁性を有する物資を除いたものが使用できる。具体例は、前記した、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、ケイ酸またはケイ酸塩である。有機物であっても、電磁波吸収体の使用温度域で軟化したり揮発したりしないものであれば、使用できる。具体例としては、ヘキサブロモベンゼンなどの臭素系難燃剤が挙げられる。もちろん、無機物と有機物を混合して使用してもよい。 【0012】マトリクス材料も未加硫のゴムであれば任意のものが選択できるが、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンまたはアクリルゴムが、とくに好適である。 【0013】材料の配合およびシートへの成形は、この分野において既知の技術に従って実施すればよい。ただし、ロール圧延によって得られるシートは、のちの加熱処理によって歪みが解消して寸法が変化するので、それを見込んだ厚さに成形する必要がある。圧延成形後の加熱により、シートは圧延方向に縮み、幅方向には僅かに収縮するが、厚さに関しては厚くなる、要するに形状復元の方向に向かう。どの程度の復元が起こるかは、組み合わせた材料の種類、配合割合、加工の程度などで異なるから、それらのデータから経験的に知見を得て、必要ならば若干の試行を加えて、加熱前後の厚さの変化を見極めるべきである。 【0014】軟磁性物質の粉末および非磁性物質の粉末の配合割合、およびマトリクス中の充填率は、電磁波吸収シートの吸収特性を決定する重要な要素である誘電率を左右するので、配合データとの関連で経験的に知られている知見に従って、選択すべきである。軟磁性の粉末とマトリクス材料とを同じ組み合わせとした場合において、相対的に低い充填率と相対的に薄いシート厚さとは、ピーク吸収周波数を比較的高い領域に位置させ、反対に、相対的に高い充填率と相対的に厚いシート厚さとは、ピーク吸収周波数を比較的低い領域に位置させる傾向にある。しかし、後記する実施をみればわかるように、常にそうなるわけではない。 【0015】シートへの成形後に行なう加熱処理は、製品である電磁波吸収体の使用条件で到達する最も高い温度において行なうことが最適である。その最高温度より若干は低い温度でも、長い時間加熱することにより、大差のない効果を得ることができる。加熱は、それ以上の寸法の変化が実質上生じなくなる時間にわたって持続させる。要は、シートへの成形に至る間に蓄積され、残留している歪みを開放するだけのエネルギーを与えることである。電磁波吸収シートの耐用温度は、主としてマトリクスを形成する未加硫のゴムによって決定される。具体的には、マトリクスが塩素化ポリエチレンであれば約90℃、クロロスルホン化ポリエチレンであれば、やはり約90℃アクリルゴムであれば約125℃である。加熱処理は、通常、1時間程度行なえば足りる。 【0016】 【実施例】[比較例1]Fe−13Cr合金の溶湯を水噴霧して得た粉末を、マトリクスとして選んだ塩素化ポリエチレンに23体積%となるように配合し、さらに、製品電磁波吸収シートに所望の誘電率を与える量の炭酸カルシウムを添加して、ニーダーで混練してから、カレンダーロールで圧延し、厚さ0.70mmのシートに成形した。この電磁波吸収シートは、吸収のピーク周波数が、そのままで30GHzとなるように設計されたものである。 【0017】このシートを、一部はそのまま、一部は90℃のエアオーブン中に24時間置く試験を経てから、シートの誘電率ε’を、25〜40GHzの周波数領域において測定した。結果は図1のグラフに示すとおりである。ε’の値に、周波数による変化はほとんどないが、加熱したものとしないものとで、絶対値にして約2の差が見られた。加熱試験をへたシートは、厚さが0.70mmから0.80mmに増大していた。 【0018】つぎに、2種のシートについて、同じく25〜40GHzの周波数領域における反射減衰を測定した。反射減衰の測定には、アジレント・テクノロジー社製のHP8510Cを使用した。それぞれのシートの示した反射減衰の周波数特性を、図2に示す。図2のグラフから、「比較例1・加熱後」のシートは、吸収のピークが、「比較例1・加熱前」の30GHzから28GHzにずれてしまったことがわかる。 【0019】[実施例1]比較例1において用意した混合物を、熱処理によるシート厚さの回復を見込んで、0.60mmの厚さに圧延した。このシートを、90℃に1時間加熱したところ、厚さが0.70mmに増大した。それらのシートを、そのまま、または90℃に24時間置く加熱試験を経たのち、25〜40GHzの領域における反射減衰を測定した。結果は、図3のグラフに示すとおりであって、吸収特性に見るべき変化はない。24時間の加熱試験を経たシートも、それ以上の厚さの変化は認められなかった。 【0020】[比較例2]比較例1におけるFe−13Cr合金の粉末、塩素化ポリエチレンおよび炭酸カルシウムに代えて、Fe粉末、アクリルゴムおよび水酸化アルミニウムを使用した。Fe粉末の充填率を25体積%とし、水酸化アルミニウムの量は、製品電磁波吸収シートに所望の誘電率を与えるように調節した。比較例1と同様に、ニーダー混練およびカレンダーロール圧延を行ない、厚さ0.95mmのシートに成形した。この電磁波吸収シートは、吸収のピーク周波数が、そのままで76GHzとなるように設計されたものである。 【0021】このシートを、一部はそのままで、一部は125℃のエアオーブン中に24時間置く試験を経てから、60〜90GHzの周波数領域における反射減衰を測定した。加熱試験をへたシートは、厚さが0.95mmから1.05mmに増大していた。それぞれのシートの示した反射減衰の周波数特性を、図4に示す。図4のグラフから、「比較例2・加熱後」のシートは、吸収のピークが、「比較例2・加熱前」の76GHzから73GHzにずれてしまったことがわかる。 【0022】[実施例2]比較例2において用意した混合物を、熱処理によるシート厚さの回復を見込んで、0.85mmの厚さに圧延した。このシートを、125℃に1時間加熱したところ、厚さが0.95mmに増大した。それらのシートを、そのまま、または125℃に24時間置く加熱試験を経たのち、60〜90GHzの領域における反射減衰を測定した。結果は、図5のグラフに示すとおりであって、吸収特性に見るべき変化はない。24時間の加熱試験を経たシートも、それ以上の厚さの変化は認められなかった。 【0023】 【発明の効果】本発明の特性の変化を抑制した電磁波吸収体は、軟磁性物質の粉末を未加硫のゴムのマトリクス中に分散してシート状に成形してなる電磁波吸収体に対し、非磁性物質の粉末を添加して寸法安定性を高めた上に、使用温度またはそれに近い温度における加熱処理を加えて、それ以上の変形を生じないようにしてあるから、常温より高い温度で使用しても、寸法とくにシート厚さの変化がない。従って、シートのピーク吸収周波数を決定する誘電率は変化せず、所望の周波数の電磁波を減衰させる特性に変化がない。 【0024】それゆえ本発明の電磁波吸収体を使用すれば、外部に放射する電磁波の強度を一定値以下に抑制すべき電視機器において、時間の経過とともに放射電磁波の抑制性能が低下するという心配がない。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003713 【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年12月11日(2000.12.11) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100070161 【弁理士】 【氏名又は名称】須賀 総夫
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| 【公開番号】 |
特開2002−185177(P2002−185177A) |
| 【公開日】 |
平成14年6月28日(2002.6.28) |
| 【出願番号】 |
特願2000−376185(P2000−376185) |
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