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【発明の名称】 難燃性を持つ電子部品
【発明者】 【氏名】佐々木 正美

【氏名】高原 誠志

【要約】 【課題】ポリビニルベンジルエーテル化合物本来の各種の特徴を活用することができ、しかも高い難燃性を確保しうる構成の難燃性を持つ電子部品を提供する。

【解決手段】少なくともポリビニルベンジルエーテル化合物と機能粉末とを混合してなる基板を多層に積層してなる多層基板を構成する。少なくとも最下層と最上層には難燃剤を混合した層(基板)3aを配置する。これらの難燃剤を有する難燃剤高含有率層3aの間に、該難燃剤高含有率層3aより難燃剤の含有率を低くするかまたは難燃剤を含まない1以上の層3b、4bを配置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくともポリビニルベンジルエーテル化合物からなる基板を多層に積層してなる多層基板を用いた電子部品であって、少なくとも最下層と最上層には難燃剤を混合した基板を配し、これらの難燃剤を有する難燃剤高含有率層の間に、該難燃剤高含有率層より難燃剤の含有率を低くするかまたは難燃剤を含まない1または複数の層を配したことを特徴とする難燃性を持つ電子部品。
【請求項2】請求項1の難燃性を持つ電子部品において、一部の層または全層に誘電体粉末または磁性粉末の少なくともいずれかを混合してなることを特徴とする難燃性を持つ電子部品。
【請求項3】請求項1または2の難燃性を持つ電子部品において、前記難燃剤高含有率層の難燃剤含有率が30wt%以上でかつ80wt%以下であり、該難燃剤高含有率層の間の層の難燃性含有率が30wt%未満であることを特徴とする難燃性を持つ電子部品。
【請求項4】請求項1から3までのいずれかの難燃性を持つ電子部品において、前記多層基板を構成する一部の層はガラスクロスは含み、残りの層はガラスクロスを含まないことを特徴とする難燃性を持つ電子部品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂と機能粉末とを混合してなる基板を多層に積層してなる多層基板を用いたインダクタ、コンデンサ、あるいはこれらの複合部品さらには電気的機能を発揮するモジュール部品として用いられる電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリビニルベンジルエーテル化合物は、特開平9−31006号公報に開示されているように、高Q値、低誘電率等、高周波領域で使用する場合に適した電気特性を有し、かつ高耐熱性、高信頼性を有すると共に、各種材料との接着性に優れていることから、多層基板を有するあらゆる種類の電子部品、とりわけ移動体通信機器等におけるパワーアンプ等への適用化が検討されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ポリビニルベンジルエーテル化合物は、電子部品に難燃性を持たせるために難燃剤を混合してプリプレグとして使用するが、難燃剤の添加により、誘電正接(tanδ)(=Q値の逆数)が劣化するという問題点がある。
【0004】本発明は、ポリビニルベンジルエーテル化合物を使用して多層基板を構成する電子部品を構成する場合、ポリビニルベンジルエーテル化合物本来の前記した各種の特徴を活用することができ、しかも難燃性を確保しうる構成の難燃性を持つ電子部品を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段とその作用、効果】請求項1の難燃性を持つ電子部品は、少なくともポリビニルベンジルエーテル化合物と機能粉末とを混合してなる基板を多層に積層してなる多層基板を用いた電子部品であって、少なくとも最下層と最上層には難燃剤を混合したシート状素材を配し、これらの難燃剤を有する難燃剤高含有率層の間に、該難燃剤高含有率層より難燃剤の含有率を低くするかまたは難燃剤を含まない1または複数の層を配したことを特徴とする。
【0006】このように、少なくとも最下層と最上層の層の難燃剤含有率を高くすれば、その間の主要部分の層の難燃剤含有率を低下させても、全体としての難燃性を高く維持することができる。また、最下層と最上層の間の主要部分の層は、難燃剤含有率は低くしているので、全体としてポリビニルベンジルエーテル化合物本来の優れた性能、とりわけ高いQ値を維持することができ、損失の少ない電子部品を提供することができる。また、低い誘電率のため、高周波化に対応した電子部品が提供できる。
【0007】請求項2の難燃性を持つ電子部品は、請求項1の難燃性を持つ電子部品において、一部の層または全層に誘電体粉末または磁性粉末の少なくともいずれかを混合してなることを特徴とする。
【0008】このように、ポリビニルベンジルエーテル化合物に誘電体粉末または磁性粉末を混入することにより、誘電率や透磁率を高めた層を形成することができ、層の厚みを薄くしたままで内蔵素子に所望の特性が得易くなり、薄型化が図れる。
【0009】請求項3の難燃性を持つ電子部品は、請求項1または2の難燃性を持つ電子部品において、前記難燃剤高含有率層の難燃剤含有率が30wt%以上でかつ80wt%以下であり、該難燃剤高含有率層の間の層の難燃性含有率が30wt%未満であることを特徴とする。
【0010】このように、最下層と最上層の難燃剤含有率を30wt%以上に設定すれば、難燃性規格上最も高いUL94−VOのレベルを満足することができる。難燃剤含有率が80wt%を超すと、ポリビニルベンジルエーテル化合物本来の高いQ値を維持することができなくなるので、最下層、最上層の難燃剤含有率は80wt%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは30wt%〜60wt%である。また、最下層と最上層との間の層の難燃剤含有率を30wt%未満とすることにより、ポリビニルベンジルエーテル化合物本来の電気性能、接着性、信頼性を高く維持することができる。
【0011】請求項4の難燃性を持つ電子部品は、請求項1から3までのいずれかの難燃性を持つ電子部品において、前記多層基板を構成する一部の層はガラスクロスは含み、残りの層はガラスクロスを含まないことを特徴とする。
【0012】このように、ガラスクロスを一部の層に含ませれば、機械的強度を高めることができる。また、ガラスクロスを一部の層のみに含ませたので、ガラスクロスによる厚みの増大を抑えることができ、かつガラスクロスを加えることによるQ値の低下を抑えることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】まず本発明の電子部品を構成する材料についての説明を行う。
(ポリビニルベンジルエーテル化合物)本発明の電子部品は多層基板のそれぞれ各層を構成する基板の主要材料である樹脂として、少なくともポリビニルベンジルエーテル化合物を含む。
【0014】このようなポリビニルベンジルエーテル化合物あるいはこれに誘電体粉末もしくは磁性体粉末を分散させた複合層を用いて積層基板を形成する場合、接着剤等を用いることなく、銅箔との接着やパターニングが実現でき、かつ多層化を実現することができる。こうしたパターニングや多層化処理は、通常の基板製造工程と同じ工程でできるので、コストダウンおよび作業性の改善を図ることができる。また、このようにして得られる基板を積層して得られる多層基板を用いた電子部品は、高強度で、高周波特性の向上したものである。
【0015】本発明のパワーアンプモジュールに用いられるポリビニルベンジルエーテル化合物は、下記化1で示されるものが好ましい。
【0016】
【化1】

(式中、R1 はメチル基またはエチル基を示し、R2 は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示し、R3 は水素原子またはビニルベンジル基を示し(但し、水素原子とビニルベンジル基とのモル比は60:40〜0:100である)、nは2〜4の数を示す)また本発明は、下記化2【0017】
【化2】

(式中、R1 はメチル基またはエチル基を示し、R2 は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示し、nは2〜4の数を示す)で示されるポリフェノールと、ビニルベンジルハライドとを、アルカリ金属水酸化物の存在下で反応させて得られる、上記化1で示されるポリビニルベンジルエーテル化合物を用いてもよい。
【0018】本発明に用いる化1のポリビニルベンジルエーテル化合物は、例えば、特開平9−31006号公報に記載されているように、上記化2に示されるポリフェノールと、ビニルベンジルハライドとを反応させることにより合成することができる。
【0019】化2に示すポリフェノールは、市販されているものを利用することができ、例えば日本石油化学社製PP−700−300、PP−1000−180等が挙げられる。
【0020】化2に示すポリフェノール水酸基のビニルベンジル基への置換率は、40〜100モル%、好ましくは60〜100モル%である。この置換率は、当然のことながら高ければ高いほど望ましい。この置換率は、ポリフェノールと、ビニルベンジルハライドとの配合設計により適宜調整することができる。
【0021】ポリフェノールの存在が許されない場合は、ポリフェノールとビニルベンジルハライドとの配合設計および適当な手段、例えば溶媒/非溶媒系の組み合わせによる再沈殿精製法により未反応原料等を除去すればよい。
【0022】本発明に用いるポリビニルベンジルエーテル化合物は、それ自体あるいは他の共重合可能な単量体と重合および硬化させることにより、広い周波数領域で良好で一定で、且つ温度や吸湿性に依存しにくい誘電特性を示し、さらに耐熱性にも優れる樹脂として使用することができる。
【0023】表1は本発明において用いるポリビニルベンジルエーテル化合物(VB)と市販材の特性を比較して示す。
【0024】
【表1】

共重合可能な単量体としては、例えばスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジビニルベンジルエーテル、アリルフェノール、アリルオキシベンゼン、ジアリルフタレート、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピロリドン等が挙げられる。これらの単量体の配合割合は、ポリビニルベンジルエーテル化合物に対して、2〜50重量%程度である。
【0025】また、本発明のポリビニルベンジルエーテル化合物は、既知の熱硬化性樹脂、例えばビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、ポリフェノールのポリシアナート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルベンジル化合物等や、既知の熱可塑性樹脂、例えばポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリアセタール、ジシクロペンタジエン系樹脂等と組み合わせて使用することも可能である。その配合割合は、本発明のポリビニルベンジルエーテル化合物に対して5〜90重量%程度である。中でも好ましくは、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、ポリフェノールのポリシアナート樹脂、エポキシ樹脂およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0026】(難燃剤)本発明において用いる難燃剤には、ハロゲン化フェノールのビニルベンジルエーテル化合物を用いることができる。これはハロゲン化フェノール化合物水酸基の少なくとも1つをビニルベンジルオキシ基としたものである。この場合のハロゲン化フェノール化合物は、フェノール性水酸基を1個以上有するハロゲン化モノフェノールであってもよいし、フェノール性水酸基を2個以上有するハロゲン化ポリフェノールであってもよい。ハロゲン化の度合も、目的とする難燃化の度合等に応じて種々のものを用いることができる。フェノール性水酸基が2個以上存在するとき、少なくとも1個がビニルベンジルオキシ基となっていればよく、残存するフェノール性水酸基が誘電特性等に悪影響を及ぼす場合は、反応系に炭化水素ハロゲン化合物を加えて、残存水酸基を封止する等すればよい。
【0027】前記ハロゲン化フェノールのビニルベンジルエーテル化合物は、例えば特開平6−116194号公報に記載されている方法を用いて合成することができる。具体的には、フェノール性水酸基を持つ化合物とビニルベンジルハライドをアルカリ存在化で極性溶剤中、もしくは相間移動触媒の存在下、水/有機溶剤混合溶液中で反応させる方法により合成することができる。
【0028】前記ハロゲン化フェノール化合物としては、市販のハロゲン化フェノール化合物を用いることができ、例えばジクロロフェノール、トリクロロフェノール、ペンタクロロフェノール、テトラクロロビスフェノールA等の塩素化物、ジブロモフェノール、トリブロモフェノール、ペンタブロモフェノール、テトラブロモフェノール、テトラブロモカテコール、テトラブロモビスフェノールA、臭素化ノボラック等の臭素化物が挙げられる。
【0029】本発明において使用されるハロゲン化フェノール化合物は、ハロゲン含有率が高いもの程得られるハロゲン含有ビニルベンジルエーテル化合物の難燃剤としての効果も高くなる。ハロゲン化フェノール化合物のハロゲン含有率は20wt%以上が好ましく、より好ましくは40wt%以上である。その上限には特に制限はないが、85wt%程度である。ハロゲン含有率が少なくなると、得られるハロゲン含有ビニルベンジルエーテル化合物の難燃効果が低くなり、期待する効果が得られにくくなる。
【0030】ポリビニルベンジルエーテル化合物に対するハロゲン化フェノールのビニルベンジルエーテル化合物の配合比は、得たい難燃性に応じて適宜選択すればよいが、多くなるとポリビニルベンジルエーテル化合物から得られる硬化物の優れた電気的特性等の物性が低下する。
【0031】本発明では、前記の反応型難燃剤と共に、添加型難燃剤を用いることができる。添加型難燃剤には大きく分けてハロゲン化難燃剤、リン系難燃剤、チッソ系難燃剤、金属塩系難燃剤、水和金属系難燃剤、無機系難燃剤がある。
【0032】配合する添加型難燃剤は必要に応じて選択(1種以上)すればよい。この中でも、一般的にはハロゲン化難燃剤と併用するのは水和金属系難燃剤、無機系難燃剤であり、これらは燃焼時に樹脂の脱水剤として作用し、炭化皮膜形成に寄与する。これらの難燃剤として、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等の金属酸化物、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ、アンチモン等の金属粉、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等が挙げられる。
【0033】また、水和金属系難燃剤、無機系難燃剤は、分散性向上、ポリビニルベンジルエーテル化合物との界面状態を改良するために表面処理を行ってもよい。具体的には、シラン化合物、チタネート系、アルミニウム系カップリング剤等による表面処理が挙げられる。
【0034】反応型難燃剤と添加型難燃剤とを併用することによって、反応型難燃剤を単独で使用する場合に比べて、本発明の組成物におけるポリビニルベンジルエーテル化合物の配合比を増しても、難燃効果のレベルを同等に保つことができる。
【0035】また、本発明においては、基板の難燃化のために用いられている種々の難燃剤を用いることができる。具体的には、ハロゲン化リン酸エステル、ブロム化エポキシ樹脂等のハロゲン化物、また、リン酸エステルアミド系等の有機化合物や、三酸化アンチモン、水素化アルミニウム等の無機材料を用いることができる。これらのなかでも、ハロゲン化リン酸エステル、リン酸エステルアミド系等が好ましく、特にハロゲン化リン酸エステルが好ましい。
【0036】(誘電体粉末)本発明において、基板の誘電率を上げるために誘電体粉末を樹脂中に混合する。ここに用いられる誘電体材料は、特に限定されるものではないが、比透磁率(ε)は10以上とすることが好ましく、さらに好ましくは20以上であり、誘電正接は0.01以下のものが良い。樹脂との混練性等を考えると、誘電体粉末の平均粒径0.2〜10μm 程度が好ましく、粒径が小さくなると、樹脂との混練がしにくくなる。また、粒径が大きくなると、不均一となり、均一な分散を行うことができず、粉末の含有量が多い組成の成形の際に、緻密な成型体を得られない。
【0037】誘電体粉末の含有率は、難燃剤としてテトラブロモビスフェノールA変性ビニルベンジル樹脂を用いた場合、ポリビニルベンジルエーテル化合物と難燃剤との合計量を100vol%としたとき、10〜65vol%含有することが好ましい。ここで、誘電体粉末の含有率が65vol%以下としているので、65vol%を超えると、ポリビニルベンジルエーテル化合物への分散が困難になり、さらにはプリプレグ作製時のガラスクロス等の基材への塗工も困難となるためである。また、5vol%未満であると添加による誘電率調整の実効がない誘電体粉末としては、例えばチタン−バリウム−ネオジウム系セラミックス、チタン−バリウム−スズ系セラミックス、鉛−カルシウム系セラミックス、二酸化チタン系セラミックス、チタン酸バリウム系セラミックス、チタン酸鉛系セラミックス、チタン酸ストロンチウム系セラミックス、チタン酸カルシウム系セラミックス、チタン酸ビスマス系セラミックス、チタン酸マグネシウム系セラミックス等が挙げられる。さらに、CaWO系セラミックス、Ba(Mg、Nb)O系セラミックス、Ba(Mg、Ta)O系セラミックス、Ba(Co、Mg、Nb)O系セラミックス、Ba(Co、Mg、Ta)O系セラミックス等が挙げられる。これらは単独または2種類以上混合しても良い。また、球形の金属粒子の周囲を誘電体層により覆ったものを用いることができる。
【0038】(磁性体粉末)本発明の電子部品において、内蔵するインダクタのインダクタンス値を上げるために基板を構成する樹脂中に磁性体粉末を含ませる場合がある。この磁性体粉末として、フェライトあるいは金属磁性体粉末または金属磁性体粒子を絶縁層により覆ったものが用いられる。
【0039】磁性体粉末の粒径は、樹脂との混練性等を考えると、平均粒径0.2〜10μm 程度が好ましく、粒径が小さくなると、樹脂との混練がしにくくなる。また、粒径が大きくなると、不均一となり、均一な分散を行うことができず、粉末の含有量が多い組成の成形の際に、緻密な成型体を得られない。また磁性体粉末の含有率は誘電体粉末と同様の範囲に設定される。
【0040】(ガラスクロス)本発明に用いられるガラスクロス等の強化繊維は、目的・用途に応じて種々のものであってよく、市販品をそのまま用いることができる。このときの強化繊維は、電気的な特性に応じてEガラスクロス(ε=7、tanδ=0.003、1GHz)、Dガラスクロス(ε=4、tanδ=0.0013、1GHz)、Hガラスクロス(ε=11、tanδ=0.003、1GHz)等を使い分けてもよい。また、層間密着力向上のため、カップリング処理などを行ってもよい。その厚さは100μm 以下、特に20〜60μm であることが好ましい。布重量としては、120g/m2 以下、特に20〜70g/m2 が好ましい。
【0041】(金属箔)使用する金属箔としては、金、銀、銅、アルミニウムなど導電率の良好な金属のなかから好適なものを用いればよい。これらのなかでも特に銅が好ましい。
【0042】金属箔を作製する方法としては、電解、圧延法等種々の公知の方法を用いることができるが、箔ピール強度をとりたい場合には電解箔を、高周波特性を重視したい場合には、表面凹凸による表皮効果の影響の少ない圧延箔を使用するとよい。金属箔の厚みとしては、8〜70μm が好ましく、特に12〜35μm が好ましい。
【0043】(製造工程)
プリプレグの作製:本発明において、電子部品の基礎となるプリプレグを得るには、所定の配合比とした機能粉末(誘電体粉末または磁性体粉末)、ポリビニルベンジルエーテル化合物と必要により加える難燃剤とを含み、溶剤に混練してスラリー化したペーストを塗布して、乾燥する工程に従う。この場合に用いられる溶剤は揮発性溶剤が好ましく、上記極性中性溶媒が特に好ましく、ペーストの粘度を調整し塗工しやすくする目的で用いられる。混練はボールミル、撹拌等により公知の方法によって行えばよい。ペーストを金属箔上に塗工、またはガラスクロス上に含浸することにより、形成することができる。
【0044】プリプレグの乾燥は、含有する磁性体粉末や、必要により加える難燃剤の含有量などにより適宜調整すればよいが、通常、100〜120℃、0.5〜3時間とすればよい。乾燥した後の厚みは50〜300μm 程度が好ましく、その用途や要求される特性(パターン幅および精度、直流抵抗)等により最適な膜厚に調整すればよい。
【0045】プリプレグはつぎのように作製することができる。まずロール状に巻回されたガラスクロスを塗工槽に送り込む。塗装槽中には、溶剤中に分散されている磁性体粉末、必要により難燃剤とポリビニルベンジルエーテル化合物がスラリー状に調整されており、この塗工槽をガラスクロスが通過すると、上記スラリー中に浸漬され、ガラスクロスに塗工されるとともに、その中の隙間が埋められることになる。
【0046】塗工槽を通過したガラスクロスは、ガイドローラーを介して乾燥炉に導入される。乾燥炉に導入された樹脂含浸ガラスクロスは、所定の温度と時間乾燥されるとともに、巻取ローラに巻回される。
【0047】そして、所定の大きさに切断されると、ガラスクロスの両面にセラミック粉末、必要により難燃剤を含有した樹脂が配置されたプリプレグが得られる。
【0048】金属箔の貼り付け:さらに、得られたプリプレグの上下両面上に銅箔などの金属箔を配置し、これを加熱・加圧プレスすると、両面金属箔付き基板が得られる。なお、金属箔を設けない場合には、金属箔を配置することなく加熱・加圧プレスすればよい。また、ガラスクロスを有しないものの場合は、難燃剤や粉末を混合した樹脂を横型塗工機により金属箔上に塗工したり、ドクターブレード法により金属箔上に塗工する。
【0049】パターンの形成:前記金属箔を、インダクタやコンデンサ、共振器等の電極などを形成するためにパターニングし、粉末を含むかあるいは含まないプリプレグを所定の順序で積層することにより、加熱加圧により一体化する。加熱加圧条件は、100〜230℃の温度、0.98〜7.84MPaの圧力で0.5〜20時間とすることが好ましい。
【0050】このような多数個取り用の多層基板の素材に、内蔵導体間の接続、あるいは端子電極形成との接続のためのビアホールをNC加工等により形成する。形成したビアホールに銅(Cu)メッキを施し、メッキ膜を形成する。さらに両面の銅箔に端子電極パターンやグランド電極のためのパターニングを施す。次に具体的な製造例、構造例について説明する。
【0051】(具体例)基板の作製のため、ポリビニルベンジルエーテル化合物を55wt%溶液となるようにトルエン溶液に溶解した。この溶液に難燃剤としてテトラブロモビスフェノールA変性ビニルベンジル樹脂と誘電体粉末をボールミルで5時間混合した。この場合、難燃剤混合比は、ポリビニルベンジルエーテル化合物に対して0、5、10、20、30wt%とした。誘電体粉末には平均粒径2μmのチタン−バリウム−ネオジウム系セラミックを用いた。また、誘電体粉末の含有率は40vol%とした。40vol%を超えると、シート剥離性が悪くなり、ピール強度が劣化するためである。
【0052】このスラリーを30μmガラスクロス(旭シュエーベ(株)製)に塗工機により塗工し、110℃で1時間乾燥し、これをプリプレグとした。乾燥後の膜厚は60μmであった。次に、プリプレグ10枚でプレス成形を行い、基板を得た。プレス条件はプレス圧1.96MPaで150℃で30分、180℃で30分、200℃で30分の加熱を順次行った。得られた基板の厚みは0.55mmであった。同様に、ガラスクロスを含まない基板についても同様の処理により基板を作製した。
【0053】得られた基板をUL94規格に従って試験片127mm長、12.7mm幅、1.6mm厚に切り出して難燃性のレベルの測定を行った。表2にその結果を示す。
【0054】
【表2】

【0055】これらの結果から分かるように、難燃剤含有率が30wt%に達すると最高の難燃性レベルであるUL94−V0が得られた。また、誘電率ε、Qについては、100mm長、1.0mm幅、1.2mm厚の大きさに切り出し、摂動法により2GHzにおける比誘電率と誘電正接を求め、Q値を算出した。その結果を図1、図2に示す。図1から分かるように、ガラスクロス入り、ガラスクロスレスのいずれの場合にも、難燃剤が増えても誘電率εの変化率は1%以内に抑えられる。
【0056】一方、図2から分かるように、難燃剤の増加と共に、Q値が減少する。また、ガラスクロスを入れると、ガラスクロスを入れない場合に比較してQ値が低下することが分かる。また、前記組成物のスラリーを銅箔(18μm)に対して50μmの厚みが得られるように塗工した。
【0057】図3に示すような携帯電話における送信回路のパワーアンプ回路を、前記プリプレグの積層とICとにより作製した。図4は比較例として構成した送信回路のパワーアンプモジュールであり、3aはガラスクロスの無いプリプレグ(基板)により作製された層、4aはガラスクロス入りのプリプレグ(基板)により作製された層である。5は各層に形成された銅箔パターンであり、インダクタやコンデンサの電極あるいは配線パターンとして形成されたものである。6は図3に示した搭載IC(MMIC)であり、3段の増幅回路を構成するものである。前記層3aが積層された部分の一部1aは図3の回路の整合回路のインダクタ(L)、コンデンサ(C)を内蔵し、他の積層部1bはバイアス回路のL、Cを内蔵する。
【0058】図4における層3a、4aのすべては難燃剤添加量(含有率)が30wt%、Qは280である。また、ガラスクロスレス層3aの厚みは50μm、ガラスクロス入り層4aは150μmである。
【0059】図5は本発明の実施例であり、3aは最下層と最上層に配置された難燃剤高含有率層であり、前記比較例の層3aと同様の厚みのガラスクロスレス層であり、30wt%の難燃剤を含有し、Q値は280である。これらの最下層、最上層の間のガラスクロスレス層3b、ガラスクロス入り層4bはそれぞれ難燃剤添加量(含有率)が5wt%、0wt%である。また、ガラスクロスレス層3bの厚みtは50μm、Q=340、厚み50μmである。ガラスクロス入り層4bの厚みtは150μm、Q=290である。
【0060】このような層構成を採用し、これを周波数が900MHz、出力Pout=35dBm、入力Pin=3.0dBmのGSM方式の携帯電話用パワーアンプを構成し、効率αを下記の式により求めた。但し下記の式において、Vdは電源電圧、Iinは入力電流である。
【0061】α=(Pout−Pin)/(Vd・Iin)
上述の式により求められる効率αおよび損失は、図6(A)、(B)に示すように、基板のQ値に依存する。図5に示した本発明の実施例の構成の場合、効率αは60%となる。また、図4の比較例の場合、効率αは58.2%となり、本発明による場合、効率が1.8%向上する。また、別の比較例として、ガラスエポキシ樹脂を用いた市販品適用の基板(Q=100、ε=10)の場合、図4(A)に示すように、効率が55%であり、本発明による場合の方が効率αが5%高くなる。
【0062】一方、基本構成とし、周波数1800MHz用DCS方式用パワーアンプにおいては、Q値の変化に対する効率、損失の変化はそれぞれ図7(A)、(B)に示す通りになる。この場合も本発明の実施例の場合、α=55%程度であり、ガラスエポキシ樹脂を用いた市販品適用の基板(Q=100、ε=10)の場合の効率α=50%に対して約5%上がる。
【0063】このように、少なくとも最下層と最上層の層の難燃剤含有率層3aを高くすれば、その間の他の部分の層3b、4bの難燃剤含有率を低下させても、全体としての難燃性を高く維持することができる。また、最下層と最上層3aの間の主要部分の層3b、4bは、難燃剤含有率は低くしているので、全体としてポリビニルベンジルエーテル化合物本来の優れた性能、とりわけ高いQ値を維持することができ、損失の少ない電子部品を提供することができる。また、低い誘電率のため、高周波化に対応した電子部品が提供できる。
【0064】また、実施例に示したように、ポリビニルベンジルエーテル化合物に誘電体粉末を混入することにより、目的に応じてポリビニルベンジルエーテル化合物より誘電率(ε=2.6程度)より誘電率を高めた層を形成することができ、層の厚みを薄くしたままで内蔵素子に所望の特性が得易くなり、薄型化が図れる。他の電子部品において、インダクタ層を形成する場合に磁性体粉末を混合することにより、同様の薄型化が図れる。
【0065】また、最下層と最上層の難燃剤含有率層3aを30wt%以上の含有率に設定すれば、難燃性規格上最も高いUL94−VOのレベルを満足することができる。また、ガラスクロスを一部の層4bに含ませれば、機械的強度を高めることができる。また、ガラスクロスを一部の層のみに含ませ、主要層となる層3a、3bの積層部を主要層として形成したので、ガラスクロスによる厚みの増大を抑えることができ、かつガラスクロスを加えることによるQ値の低下を抑えることができる。
【出願人】 【識別番号】000003067
【氏名又は名称】ティーディーケイ株式会社
【出願日】 平成12年10月18日(2000.10.18)
【代理人】 【識別番号】100081569
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 勝一
【公開番号】 特開2002−124773(P2002−124773A)
【公開日】 平成14年4月26日(2002.4.26)
【出願番号】 特願2000−317391(P2000−317391)