| 【発明の名称】 |
繊維強化プラスチック製成形品の締結構造 |
| 【発明者】 |
【氏名】▲ぬで▼島 英樹
【氏名】谷杉 英昭
【氏名】平塚 元紀
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| 【要約】 |
【課題】強度・剛性等の機械特性、電磁波遮蔽特性に優れた繊維強化プラスチック製成形品において、成形品と一体成形されたボスを介して他の部品との締結を強固に保持し、かつ締結される部品間の導通を可能とする繊維強化プラスチック製成形品の締結構造を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂に炭素繊維からなる強化繊維8が含まれてなる繊維強化プラスチック製成形品の締結構造であり、次の[A]、[B]および[C]の条件を備えている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】合成樹脂に少なくとも炭素繊維からなる強化繊維が含まれてなる繊維強化プラスチック製成形品の一部として一体成形されたボスの下穴にセルフタップねじを直接締め込み他の部材との締結を可能とする構造であって、次の[A]、[B]および[C]の条件を備えることを特徴とする繊維強化プラスチック製成形品の締結構造。 [A]該成形品中に含まれる炭素繊維の重量平均繊維長が0.1〜1.0mmの範囲内であること。 [B]該成形品の肉厚が0.6〜5.0mmの範囲内であること。 [C]該成形品の体積固有抵抗が102Ω・cm以下の範囲内であり、かつ表面抵抗率が104Ω/sq以下の範囲内であること。 【請求項2】繊維強化プラスチック製成形品の一部として一体成形されたボスの下穴にセルフタップねじを直接締め込み他の部材との締結を可能とする構造であって、次の[D]および[E]の条件を備えることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化プラスチック製成形品の締結構造。 [D]該セルフタップねじを締め込むボスの下穴径dと該ねじの呼び径aとの比d/aが0.70〜0.95の範囲内であり、ねじ山先端がボスのコア層に接触していること。 [E]該セルフタップねじを締め込むボスの下穴の軸方向にセルフタップねじが接触しているねじ込み深さLと、該ねじの呼び径aとの比L/aが1.0〜10の範囲内であること。 【請求項3】セルフタップねじを締め込むボスの外径Dと該ねじの呼び径aとの比D/aが1.3〜5.0の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化プラスチック製成形品の締結構造。 【請求項4】成形品に対する炭素繊維の含有率が5〜40重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチック製成形品の締結構造。 【請求項5】セルフタップねじの体積固有抵抗が1Ω・cm以下の範囲内であり、かつ表面抵抗率が102Ω/sq以下の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化プラスチック製成形品の締結構造。 【請求項6】該成形品が繊維強化熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化プラスチック製成形品の締結構造。 【請求項7】ねじを締め込むボスの下穴先端部に面取りまたはザグリ形状を持つことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化プラスチック製成形品の締結構造。 【請求項8】成形品が電子機器を内部に収容することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化プラスチック製筐体成形品の締結構造。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えばノート型パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、あるいは携帯電話等、電子機器などを内部に収容する繊維強化プラスチック製筐体成形品において、セルフタップねじ等のねじ部材を用いて、2つ以上の筐体部材同士、または筐体部材と筐体に外装および/または内装される他の部材との締結を可能とする、繊維強化プラスチック製成形品の締結構造に関する。 【0002】 【従来の技術】周知のようにノート型パーソナルコンピュータ等の電子機器を内部に収容する筐体材料として、繊維強化プラスチックが広く用いられてきている。繊維強化プラスチックは、射出成形など生産性や設計自由度に優れた成形法が可能で、しかも剛性や強度など機械特性にも優れた成形品が得られる利点がある。 【0003】特に強化繊維として炭素繊維を使用した場合には、剛性や強度がさらに向上することに加えて、炭素繊維が導電性材料であるために成形品としても導電特性を示し、高い電磁波遮蔽特性を発揮する。また強化繊維として長繊維タイプの炭素繊維を使用した場合には、従来の短繊維材料を使用する場合と比較してその性能はさらに向上する。 【0004】ところで、ノート型パーソナルコンピュータ等の電子機器を内部に収容するプラスチック製筐体においては、2つ以上の筐体部材同士の締結、および筐体と筐体に内装・外装される部材との締結は、製品の組立時や使用時の負荷にも耐え得るように強固に締結され、かつ長時間安定的に保持される必要がある。 【0005】図2は従来のプラスチック製電子機器筐体の締結構造を示す斜視図である。図2において、1はプラスチック製筐体成形品を示し、該筐体に一体成形された円筒状のボス2の下穴に、内径にめねじを備えた金属ナット3を熱圧入し、締結部材4を介してめねじに金属製のおねじ5を締め付けることによって強固に締結・保持している。 【0006】さらに、この金属ナットの圧入方式の締結構造によれば、筐体成形品が炭素繊維強化プラスチックや金属フィラー含有プラスチックのような導電材料の場合には、以下の経路により筐体成形品と、導電性締結部材との電気的な導通が可能となり、締結する部材同士を等電位とすることができ、電磁波遮蔽性および静電気非帯電性に寄与する。 【0007】・導電性筐体→一体成形ボス→金属ナット→金属製おねじ→締結部材このように、金属ナット圧入方式の締結構造では、2つ以上の部材を強固に締結・保持し、かつ導電性部材同士の導通を可能とする性能は高い。 【0008】しかしながら、最近の電子機器製品は薄型化、軽量化が急速に進んでおり、金属ナット圧入方式では、圧入するボスの外径を大径化する必要があり、筐体内部の電子機器の収容スペースを圧迫している。また、製品重量削減のために金属ナット自身の重量削減も求められている。 【0009】コスト面でも、金属ナット圧入方式で締結するためには、締結箇所と同数以上の金属ナットが必要であり、かつ金属ナットの熱圧入工程も必要となるため、締結箇所が多い場合には筐体製造コストの高騰の原因となる。 【0010】また、電子機器製品として使用後に筐体材料をリサイクル使用する場合には、製品を各部品に分解し、その中から筐体を回収の上、粉砕し、再コンパウンドして再生材料として活用する。しかし、筐体のボスに金属ナットが圧入されたままであると、そのまま粉砕・再コンパウンドすることができないために、粉砕前に金属ナットを除去する必要がある。この金属ナットの除去工程には手間と費用がかかり好ましくない。 【0011】そこで、現在では金属ナット圧入方式に変わり、セルフタップ方式が用いられ始めている。図3は一般的なセルフタップ方式によるプラスチック製電子機器筐体の締結構造を示す斜視図である。図において、セルフタップ方式は、外径におねじを備えたセルフタップねじ6を直接ボス2の下穴に締め込むことによって、ボス2の下穴にめねじが同時に形成され、別途金属ナットを挿入する必要なしに、2つ以上の筐体部材同士の締結、および筐体と筐体に内装・外装される部材との締結を可能としている。この方法により金具圧入方法の際の軽量化問題、コスト問題とリサイクル問題を解決している。 【0012】しかしながら、この方法ではおねじを保持する部材がプラスチックであることに起因し、金属ナット圧入方式と比較して製品の組立時・使用時に要求される機械的な締結性能を満足することが難しい。この締結性能とは、一般的に以下のような性能が挙げられる。 【0013】 ・締め付けトルク : 20N・cm以下 ・破壊トルク : 30N・cm以上 ・戻し/設定締め付けトルク比 : トルク比0.5以上 ・引き抜き荷重 : 500N以上 ・締め付け/戻し繰り返し耐久回数 : 繰り返し耐久10回以上締め付けトルクとは、ねじを締め付けるために必要な最低限のトルクであり、締め付けトルクが小さい程、小型のドライバーで簡易に締め付けが可能となる。破壊トルクとは、ねじを連続的に締め続けたときに、ボスまたはねじ山が破壊しねじとして機能しなくなるときのトルクである。破壊トルクが大きい程、組立時の過大締め付けトルクによるボスの破壊を防止することができる。戻し/設定締め付けトルクとは、締め付けトルクより大きく破壊トルクより小さな設定締め付けトルクで締め付けた後、常温で24時間後にねじを緩む方向に戻した際に残存しているトルクである戻しトルクと、設定締め付けトルクとの比である。戻し/締め付けトルク比が大きい程、長時間強固な締結を保持できることになる。引き抜き荷重とは、設定締め付けトルクで締め付け後に垂直方向にねじを引き抜く際に必要な荷重である。引き抜き荷重が大きいほど、締結後のねじまたはボスに加わる外力を原因とした締結構造の破壊を防止できる。締め付け/戻しの繰り返し耐久回数とは、設定締め付けトルクで連続的な締め付け、戻しの繰り返しが締結構造が破壊するまでに何回可能であるかを表す耐久回数である。締め付け/戻し繰り返し耐久回数が大きい程、組立工程や補修時のねじ締め耐久力が向上する。 【0014】このような締結性能向上のために、材料的、構造的な改善の試みがなされている。例えば、特開平10−265666号公報では材料的にセルフタップ性を向上させる樹脂組成物について記載されている。この樹脂組成物ではセルフタップ性は向上するものの、薄肉、電磁波遮蔽性が要求される筐体用途としては、引張強度、曲げ弾性率が十分でなく、かつ導電性が得られない。また、特開平10−93258号公報では、セルフタップ性を向上させる取り付け構造について記載されている。この取り付け構造ではセルフタップ性は向上するものの、導電性が得られない。 【0015】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来技術の欠点に鑑み、繊維強化プラスチック製の電子機器筐体等に使用される成形品において、成形性を保持したまま強度・剛性に優れ、かつ締結される部品間の導通を可能として、電磁波遮蔽性に優れた繊維強化プラスチック製成形品の締結構造を提供せんとするものである。 【0016】 【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を解決するために、次の手段を採用するものである。すなわち、本発明の繊維強化プラスチック製成形品の締結構造は、合成樹脂に少なくとも炭素繊維からなる強化繊維が含まれてなる繊維強化プラスチック製成形品の一部として一体成形されたボスの下穴にセルフタップねじを直接締め込み他の部材との締結を可能とする構造であって、次の[A]、[B]および[C]の条件を同時に備えることを特徴とする。 【0017】[A]該成形品中に含まれる炭素繊維の重量平均繊維長が0.1〜1.0mmの範囲内であること。 【0018】[B]該成形品の肉厚が0.6〜5.0mmの範囲内であること。 【0019】[C]該成形品の体積固有抵抗が102Ω・cm以下の範囲内であり、かつ表面抵抗率が104Ω/sq以下の範囲内であること。 【0020】また、該構成に加えてさらに、繊維強化プラスチック製成形品の一部として一体成形されたボスの下穴にセルフタップねじを直接締め込み他の部材との締結を可能とする構造であって、次の[D]および[E]の条件を同時に備えることを特徴とする。 【0021】[D]該セルフタップねじを締め込むボスの下穴径dとねじの呼び径aとの比d/aが0.70〜0.95の範囲内であり、ねじ山先端がボスのコア層に接触していること。 【0022】[E]該セルフタップねじを締め込むボスの下穴の軸方向にセルフタップねじが接触しているねじ込み深さLと、ねじの呼び径aとの比L/aが1.0〜10の範囲内であること。 【0023】また、該セルフタップねじを締め込むボスの外径Dとねじの呼び径aとの比D/aが1.3〜5.0の範囲内であることを特徴とする。また、成形品に対する炭素繊維の含有率が5〜40重量%の範囲内であることを特徴とする。また、セルフタップねじの体積固有抵抗が1Ω・cm以下の範囲内であり、かつ表面抵抗率が102Ω/sq以下の範囲内であることを特徴とする。また、成形品が繊維強化熱可塑性樹脂からなることを特徴とする。また、該セルフタップねじを締め込むボスの下穴先端部に面取りまたはザグリ形状を持つことを特徴とする。さらに、成形品が電子機器を内部に収容することを特徴とする。 【0024】 【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施態様を実施例の図面を参照しながら説明する。 【0025】図1は、本発明にかかる繊維強化プラスチック製成形品の締結構造の断面図であり、図のものは一体成形されたボス7を含む繊維強化プラスチック製成形品20とセルフタップねじ21と締結部材22とからなる。 【0026】繊維強化プラスチック製成形品20は、強化繊維8が高密度で配向され、高強度かつ高弾性のコア層9と、コア層9に比べて強化繊維8に対する樹脂成分の密度が高く、外観面となるスキン層10とで構成され、コア層9の両面にスキン層10がサンドイッチ状に積層されている。コア層9とスキン層10は、いずれもマトリクス樹脂に炭素繊維からなる強化繊維が含まれたものである。 【0027】マトリクス樹脂としては、熱硬化性樹脂を使用することもできるが、耐衝撃性に優れ、かつ、生産性の高い射出成形が可能な熱可塑性樹脂がよい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートや液晶ポリエステル等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンやポリブチレン等のポリオレフィンの他、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリカーボネイト、ポリスチレン、スチレン・アクリルニトリル共重合体、アクリルニトリル・ブタジエンスチレン共重合体、アクリレート・スチレン・アクリルニトリル共重合体、ポリメチレンメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等を使用することができる。また、これらの共重合体、変成体および2種類以上のブレンドした樹脂も使用することができる。また、更に耐衝撃性向上のために、上記樹脂にエラストマーもしくはゴム成分を添加した樹脂も使用することができる。 【0028】また、強化繊維8としては、軽量、薄肉で良好な機械特性、電気特性を得るためには少なくともその一部が炭素繊維であることが好ましい。なお、炭素繊維以外の繊維なども併用する場合には、例えば、ガラス繊維やアラミド繊維などを用いることが良い。炭素繊維としてはポリアクリルニトリル(PAN)系炭素繊維を使用することもできるし、ピッチ系炭素繊維を使用することもできる。良好な機械的特性を得るために炭素繊維単体の引張強度は2,000〜6,000MPaの範囲であり、引張弾性率は100〜800GPaの範囲であることが好ましい。 【0029】成形品中の炭素繊維は、連続繊維でも不連続繊維でも良いが、良好な機械的特性および電気的特性を得るために、炭素繊維の重量平均繊維長が0.1〜1.0mmの範囲であることが重要である。0.1mm未満であると炭素繊維の優れた特性である高強度、高弾性、高導電といった特性を十分に発揮することができなくなり、1.0mmを越えると成形品中の強化繊維の分散性が悪化し、成形品表面の外観面に繊維が露出し易くなり好ましくない。本発明において、炭素繊維の重量平均繊維長とは、炭素繊維を含む成形品を10×10mmの大きさで切り出し、該切り出し片を溶剤に24時間浸漬して樹脂成分を溶解させる。ここで用いる溶剤は樹脂の耐溶剤性特性により、最適なものを適宜に選択する。例えば、ナイロンの場合はギ酸を使用することができ、あるいはポリカーボネイトの場合は、ジクロロメタンまたはオルトクロロフェノールを使用することができる。樹脂分を溶解させた成形品の該切り出し片は、強化繊維を含む無機分が残存する。これを顕微鏡にて10〜100倍の倍率で観察し、視野内の炭素繊維の中で任意の400本について繊維長を測定する。個々の炭素繊維の繊維長をLiとすると、成形品中の重量平均繊維長Lwは、以下の式(1)により求められるものである。 【0030】 【式1】
【0031】また、成形品の肉厚は0.6〜5.0mmの範囲内であることが好ましい。肉厚が0.6mm未満であると、繊維が成形品表面に露出しやすくなるとともに、十分な剛性が得られないために構造体用途の場合、脆弱な構造体となり不適である。肉厚が5.0mmより厚い場合には、十分な強度・剛性が得られるが、樹脂の収縮量差による成形品の表面の凹凸が顕著となり良好な表面外観を得ることが困難になってしまう。なお、本発明において、成形品の肉厚とは、リブ・ボスなどの構造部分を除いた成形品の厚さをマイクロメータで測定した結果を平均化した値である。 【0032】また、成形品中の炭素繊維の含有率としては、成形性を確保したまま成形品の機械特性、電気特性を十分に発揮するためには5〜40重量%であることが好ましい。最も好ましくは、10〜30重量%を含むことである。特に10〜30重量%を含むと、射出成形時の成形材料の流動性を損なうことなく、強化繊維を含まない成形材料のように容易な射出成形を可能とし、良好な表面外観を備えた成形品が得られる。さらに、10〜30重量%を含むと、ガラス繊維のみで強化した場合と比較して、成形品にて極めて優れた弾性率、耐衝撃強度および導電性が得られる。含有率が5重量%未満の場合には炭素繊維の優れた特性である弾性率、耐衝撃強度、導電性を十分発揮することができない。また、含有率が40重量%より多い場合には、繊維強化樹脂の流動性が低下し成形性に悪影響を生じたり、成形品表面に強化繊維の露出が目立つようになり、良好な外観の成形品を得ることが難しくなる。ここで、成形品の炭素繊維の含有率の測定方法は、JISK 7075に準拠する。 【0033】また、成形品として高い電磁波遮蔽性を発揮するためには、成形品の体積固有抵抗が102Ω・cm以下の範囲内であり、かつ表面抵抗率が104Ω/sq以下の範囲内であることが好ましい。各抵抗が前記範囲外であると、成形品の導電性が十分でなく電磁波を透過しやすくなるとともに、成形品と締結部材との間の導通が十分でなくなる。同様に、セルフタップねじの体積固有抵抗が1Ω・cm以下の範囲内であり、かつ表面抵抗率が102Ω/sq以下の範囲内であることが好ましい。各抵抗が前記範囲外であると、成形品と締結部材との間の導通が十分でなくなる。ここで、体積固有抵抗および表面抵抗率はASTM D−257に基づき測定される。 【0034】また、強固な締結を保持し、かつ繊維強化プラスチック製成形品20とセルフタップねじ21との導通を十分とするために、ねじを締め込むボス7の下穴径dとセルフタップねじ21の呼び径aとの比d/aが0.70〜0.95の範囲内であり、セルフタップねじ21のねじ山先端がボス7のコア層9に接触していることが好ましい。d/aが0.70未満である場合、ねじの締め付け時にボス7に縦割れや横割れが発生し、ボスが破壊され締結が保持できない。d/aが0.95よりも大きい場合、ねじの締め付け時または締め付け後にねじが空回りし易く締結が保持できない。また、ねじ山先端がボス7のコア層9に接触している場合には、高強度、高弾性なコア層9によりねじが把持されるため強固な締結が可能になるとともに引き抜き強度も向上する。加えて、セルフタップねじと、炭素繊維が高密度で充填されたコア層が直接接することによって、ねじと炭素繊維が接触する機会が増加し、ねじと成形品との間の導電性が向上する。金属ナット圧入方式の場合には樹脂を加熱溶融した上で金属ナットを圧入し、樹脂を冷却固化してボス内にナットを固定するため、金属ナットは、炭素繊維の密度が低いスキン層で成形品と接している。その点、金属ナット圧入方式と比較し、セルフタップ方式の方が、ねじと成形品との間の導電性は高い。 【0035】ねじを締め込むボスの下穴の軸方向にセルフタップねじが接触しているねじ込み深さLと、ねじの呼び径aとの比L/aが1.0〜10の範囲内であることが好ましい。L/aが1.0未満であると、引き抜き荷重と締め付け/戻し繰り返し耐久回数における十分な性能が得られない。L/aが10より大きいと成形品とねじとの間の摩擦抵抗が増加し、締め付け作業が困難になるとともに、薄肉化が求められる電子機器を内部に収容する筐体用途としては不適である。 【0036】ねじを締め込むボスの外径Dとねじの呼び径aとの比D/aが1.3〜5.0の範囲内であることが好ましい。D/aが1.3未満である場合、ねじの締め付け時にボス7に縦割れや横割れが発生し、ボスが破壊され締結が保持できない。D/aが5.0より大きい場合には、ボスの裏側の面にヒケが発生しやすく、外観上の問題が発生するとともに、筐体に内装される他の部品の設置スペースを圧迫するため不適である。 【0037】ねじを締め込むボスの下穴先端部に面取りまたはザグリ形状を持つことが好ましい。前記形状を備えることによって、ボス先端部の応力集中を緩和し、ねじと成形品との締結を長時間強固に保持することができる。また、前記形状の設置により締め付け作業においても、ボス上のねじのすわりが良好で、作業効率が向上する。 【0038】本発明の繊維強化プラスチック製成形品の締結構造は、特に限定されるものではないが、その特徴である優れた機械特性および電気特性を十分に発揮するために、耐衝撃性、高強度、高剛性、電磁波遮蔽性等の特性が求められるノート型パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、携帯電話等の電子機器を内部に収容する筐体に関して適用されることが好ましい。 【0039】 【実施例】〈実施例1〉本発明の成形品20の強化繊維8として、まずPAN系長繊維炭素繊維束(引張強度4900MPa、引張弾性率230GPa、フィラメント数12,000、繊度800TEX、比重1.8、体積固有抵抗1.6×10-3Ω・cm)を電線被覆用のコーティングダイ中に通し、押し出し機から250℃で溶融させたナイロン6樹脂(重量平均分子量15,000)を吐出させて炭素繊維束の周囲がナイロン6樹脂で被覆された樹脂被覆炭素繊維を得た。次に、この樹脂被覆炭素繊維を室温まで冷却後、ストランドカッターで7mmにカットして射出成形用長繊維炭素繊維強化ペレットを得た。このペレット中の炭素繊維含有率は20重量%であり、重量平均炭素繊維長は7mmである。該ペレットを型締め力350tfの射出成形機で成形し、外形が250mm×200mm、厚さが1.5mmの図4の筐体状をした射出成形品を得た。この筐体状成形品の肉厚は1.5mmである。またこの筐体状射出成形品中の炭素繊維の重量平均繊維長は0.5mmである。 【0040】成形品の体積固有抵抗は5.0×10-1Ω・cmであり、表面抵抗率は9.0Ω/sqであった。また、この筐体状射出成形品にはセルフタップ用のボス11が150mmのピッチで2箇所設置してある。ボス11の下穴径はφ1.55(d/a=0.775)であり、外径はφ4.0(D/a=2.0)であり、高さは6mmである。外径該成形品のボス11の下穴に(株)ハイオス社製のトルクドライバー”CL−3000”を使用して、厚さ1mmの鋼製ワッシャを介して、日東精工(株)製のセルフタップねじである”Pタイトねじ”のM2×長さ5mm規格をねじ頭の根本まで締め付ける(L/a=2.0)。ここで、締め付けトルクと破壊トルクを(株)ハイオス社製の”HDP5”で測定した。また、20N・cmで締め付け/緩めを繰り返したときに、ねじが機能しなくなるまでの繰り返し耐久回数を測定した。本実施例1において、ねじの締結特性はいずれも良好であった。さらに、2カ所のボス11に鋼製ワッシャを介してねじをそれぞれ締め付けた後の、2つのワッシャ間の電気抵抗値をデジタルテスタ”IWATSU YDAC 81”で測定した。抵抗値は4.0Ωであり、本実施例1の締結構造は高い導電性を示した。 〈実施例2〉実施例1と同様の方法で射出成形用長繊維炭素繊維強化ペレットを得た。このペレット中の炭素繊維含有率は10重量%であり、重量平均炭素繊維長は7mmである。該ペレットから実施例1と同様の方法で同一形状の筐体状射出成形品を得た。この筐体状射出成形品中の炭素繊維の重量平均繊維長は0.5mmである。 【0041】成形品の体積固有抵抗は1.0Ω・cmであり、表面抵抗率は12.0Ω/sqであった。また、この筐体状射出成形品にはセルフタップ用のボス11が150mmのピッチで2箇所設置してある。ボス11の下穴径はφ1.55(d/a=0.775)であり、外径はφ4.0(D/a=2.0)であり、高さは6mmである。実施例1と同様の方法でボスにセルフタップねじを締め付け(L/a=2.0)、ねじの締結特性と2つのワッシャ間の電気抵抗値を測定した。ねじの締結特性は良好であり、抵抗値も10Ωと高い導電性を示した。 〈実施例3〉実施例1と同様の方法で射出成形用長繊維炭素繊維強化ペレットを得た。このペレット中の炭素繊維含有率は20重量%であり、重量平均炭素繊維長は4mmである。該ペレットから実施例1と同様の方法で同一形状の筐体状射出成形品を得た。この筐体状射出成形品中の炭素繊維の重量平均繊維長は0.3mmである。 【0042】成形品の体積固有抵抗は8.0×10-1Ω・cmであり、表面抵抗率は10.0Ω/sqであった。また、この筐体状射出成形品にはセルフタップ用のボス11が150mmのピッチで2箇所設置してある。ボス11の下穴径はφ1.55(d/a=0.775)であり、外径はφ4.0(D/a=2.0)であり、高さは6mmである。実施例1と同様の方法でボスにセルフタップねじを締め付け(L/a=2.0)、ねじの締結特性と2つのワッシャ間の電気抵抗値を測定した。ねじの締結特性は良好であり、抵抗値も8Ωと高い導電性を示した。 〈比較例1〉実施例1と同様の方法で射出成形用長繊維炭素繊維強化ペレットを得た。このペレット中の炭素繊維含有率は3重量%であり、重量平均炭素繊維長は7mmである。該ペレットから実施例1と同様の方法で同一形状の筐体状射出成形品を得た。この筐体状射出成形品中の炭素繊維の重量平均繊維長は0.5mmである。 【0043】成形品の体積固有抵抗は3.0×103Ω・cmであり、表面抵抗率は10.0×105Ω/sqであった。また、この筐体状射出成形品にはセルフタップ用のボス11が150mmのピッチで2箇所設置してある。ボス11の下穴径はφ1.55(d/a=0.775)であり、外径はφ4.0(D/a=2.0)であり、高さは6mmである。実施例1と同様の方法でボスにセルフタップねじを締め付け(L/a=2.0)、ねじの締結特性と2つのワッシャ間の電気抵抗値を測定した。ねじの締結特性は良好であるが、抵抗値は5kΩと低い導電性を示した。 〈比較例2〉実施例1と同様の方法で射出成形用長繊維炭素繊維強化ペレットを得た。その後、この射出成形用長繊維炭素繊維強化ペレットを(株)日本製鋼所製の2軸押し出し機”TEX30”で混練して押し出し、射出成形用短繊維炭素繊維強化ペレットを得た。このペレット中の炭素繊維含有率は20重量%であり、重量平均炭素繊維長は0.2mmである。該ペレットから実施例1と同様の方法で同一形状の筐体状射出成形品を得た。この筐体状射出成形品中の炭素繊維の重量平均繊維長は0.08mmである。 【0044】成形品の体積固有抵抗は2.0×103Ω・cmであり、表面抵抗率4.0×105Ω/sqであった。また、この筐体状射出成形品にはセルフタップ用のボス11が150mmのピッチで2箇所設置してある。ボス11の下穴径はφ1.55(d/a=0.775)であり、外径はφ4.0(D/a=2.0)であり、高さは6mmである。実施例1と同様の方法でボスにセルフタップねじを締め付け(L/a=2.0)、ねじの締結特性と2つのワッシャ間の電気抵抗値を測定した。ねじの締結特性は良好であるが、抵抗値は2kΩと低い導電性を示した。 〈比較例3〉強化繊維8として、3mmの長さで裁断したガラス繊維束(引張強度3500MPa、引張弾性率70GPa、繊度130TEX、比重2.6、体積固有抵抗1010Ω・cm以上)を使用し、該ガラス繊維束とナイロン6樹脂を(株)日本製鋼所製の2軸押し出し機”TEX30”で混練して押し出し、射出成形用短繊維ガラス繊維強化ペレットを得た。このペレット中のガラス繊維含有率は20重量%であり、ガラス繊維の重量平均繊維長は0.7mmである。該ペレットから実施例1と同様の方法で同一形状の筐体状射出成形品を得た。この筐体状射出成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長は0.5mmである。 【0045】成形品の体積固有抵抗は1010Ω・cm以上であり、表面抵抗率は1010Ω/sq以上であった。また、この筐体状射出成形品にはセルフタップ用のボス11が150mmのピッチで2箇所設置してある。ボス11の下穴径はφ1.55(d/a=0.775)であり、外径はφ4.0(D/a=2.0)であり、高さは6mmである。実施例1と同様の方法でボスにセルフタップねじを締め付け(L/a=2.0)、ねじの締結特性と2つのワッシャ間の電気抵抗値を測定した。破壊トルク、耐久繰り返し回数ともにねじの締結特性は十分であるが、抵抗値は20KΩ以上と低い導電性を示した。 〈比較例4〉ナイロン6樹脂を(株)日本製鋼所製の2軸押し出し機”TEX30”で混練して押し出し、射出成形用ナイロンペレットを得た。該ペレットから実施例1と同様の方法で同一形状の筐体状射出成形品を得た。 【0046】成形品の体積固有抵抗は1010Ω・cm以上であり、表面抵抗率は1010Ω/sq以上であった。また、この筐体状射出成形品にはセルフタップ用のボス11が150mmのピッチで2箇所設置してある。ボス11の下穴径はφ1.55(d/a=0.775)であり、外径はφ4.0(D/a=2.0)であり、高さは6mmである。実施例1と同様の方法でボスにセルフタップねじを締め付け(L/a=2.0)、ねじの締結特性と2つのワッシャ間の電気抵抗値を測定した。破壊トルク、耐久繰り返し回数ともにねじの締結特性は十分でなく、抵抗値は20KΩ以上と低い導電性を示した。 【0047】以上の結果をまとめたのが次の表1である。 【0048】 【表1】
【0049】この表1から、繊維強化プラスチック製成形品の締結構造として、低締め付けトルク、高破壊トルクおよび高繰り返し耐久回数といった高い締結特性を得るために、また成形品と締結材との高い導電性を得るためには、成形品中に含まれる炭素繊維の重量平均繊維長が0.1〜1.0mmの範囲内であり、成形品の肉厚が0.6〜5.0mmの範囲内であり、成形品の体積固有抵抗が102Ω・cm以下の範囲内であり、かつ表面抵抗率が104Ω/sq以下の範囲内であることが必要で、さらに、ねじを締め込むボスの下穴径dとねじの呼び径aとの比d/aが0.70〜0.95の範囲内であり、ねじ山先端がボスのコア層に接触していて、かつねじを締め込むボスの下穴の軸方向にセルフタップねじが接触しているねじ込み深さLと、ねじの呼び径aとの比L/aが1.0〜10の範囲内であるという要件が必要であることがわかった。 【0050】 【発明の効果】本発明の繊維強化プラスチック製成形品の締結構造によれば、成形性を保持したまま強度・剛性に優れ、かつ締結される部品間の導通を可能として、電磁波遮蔽性に優れた繊維強化プラスチック製成形品の締結構造を提供することが可能である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003159 【氏名又は名称】東レ株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年10月11日(2000.10.11) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2002−118371(P2002−118371A) |
| 【公開日】 |
平成14年4月19日(2002.4.19) |
| 【出願番号】 |
特願2000−310437(P2000−310437) |
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