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【発明の名称】 荷電粒子ビーム加速装置およびそれを用いた放射線照射施設
【発明者】 【氏名】中西 哲也

【氏名】田中 博文

【氏名】蒲 越虎

【氏名】築島 千尋

【要約】 【課題】設置スペースを小さくし、生産コストを低減させた荷電粒子ビーム加速装置を得、この加速装置を用いて確実に放射線遮蔽ができ、しかも建設コストが低い放射線照射施設を得る。

【解決手段】荷電粒子ビームを発生する電子銃11と、荷電粒子ビームを加速する加速空洞13及びこの加速された荷電粒子ビームを偏向する偏向電磁石52、53を有した加速器本体12と、この加速器本体12を支持する支持台23と、高周波電力を増幅する電力増幅器15と、加速空洞13に高周波電力を導く同軸管16とを備えた荷電粒子ビーム加速装置50は電力増幅器15を支持台23の下側の空間に配置して設置スペースが縮小されている。また、この加速装置50を放射線遮蔽材で覆うことにより放射線照射施設全体を放射線遮蔽する必要がなくなり建設コストが低減する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 荷電粒子ビームを発生するビーム発生手段と、前記ビーム発生手段で発生した前記荷電粒子ビームを高周波電界により加速するビーム加速手段及び前記ビーム加速手段の両端に近接して設けられ、前記ビーム加速手段によって加速された前記荷電粒子ビームを偏向する一対のビーム偏向手段を有し、前記荷電粒子ビームが前記一対のビーム偏向手段の間で周回し、前記ビーム加速手段によって周回毎に異なる軌道を描きながら前記荷電粒子ビームが加速する加速器本体と、前記加速器本体を支持する支持手段と、前記ビーム加速手段に前記高周波電界を発生させる高周波電力を増幅する電力増幅手段と、前記ビーム加速手段及び前記電力増幅手段を接続して前記電力増幅手段で増幅された高周波電力を前記ビーム加速手段に導く高周波伝送手段とを備えた荷電粒子ビーム加速装置において、前記電力増幅手段は、前記加速器本体の下側における前記支持手段の支持で生じた空間に配置されたことを特徴とする荷電粒子ビーム加速装置。
【請求項2】 前記高周波伝送手段は、前記ビーム加速手段の下面に接続されたことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム加速装置。
【請求項3】 前記高周波電界は、50〜900MHzであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の荷電粒子ビーム加速装置。
【請求項4】 前記ビーム発生手段、前記加速器本体、前記支持手段、前記電力増幅手段及び前記高周波伝送手段の周囲を覆う放射線遮蔽材を有したことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の荷電粒子ビーム加速装置。
【請求項5】 前記加速器本体、前記支持手段、前記電力増幅手段及び前記高周波伝送手段の周囲を覆う放射線遮蔽材を有し、前記ビーム発生手段は前記放射線遮蔽材の外部に配置されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の荷電粒子ビーム加速装置。
【請求項6】 前記放射線遮蔽材は第1の分割遮蔽材及び第2の分割遮蔽材から構成されており、前記第1の分割遮蔽材及び第2の分割遮蔽材の少なくとも一方が前記荷電粒子ビームの軌道を含む平面に沿う方向に移動可能にしたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の荷電粒子ビーム加速装置。
【請求項7】 請求項4乃至請求項6の何れかに記載の荷電粒子ビーム加速装置を有する放射線照射施設であって、前記荷電粒子ビーム加速装置によって発生した荷電粒子ビームを照射する放射線照射室を形成する放射線遮蔽壁を有し、前記荷電粒子ビーム加速装置は前記放射線遮蔽壁に隣接して設けられたことを特徴とする放射線照射施設。
【請求項8】 前記放射線遮蔽材は一部が前記放射線遮蔽壁となっていることを特徴とする請求項7に記載の放射線照射施設。
【請求項9】 前記荷電粒子ビーム加速装置は前記荷電粒子ビームの軌道を含む平面が前記放射線遮蔽壁の一面とほぼ平行となるように設けられ、前記一対のビーム偏向手段の間に設けられ、前記加速された荷電粒子ビームを前記放射線照射室に向かって偏向して取り出し前記放射線照射室に送り込む偏向装置を備えたことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の放射線照射施設。
【請求項10】 前記偏向装置は、前記荷電粒子ビームの偏向方向を時間的に変化させるように成っていることを特徴とする請求項9に記載の放射線照射施設。
【請求項11】 前記偏向装置は、前記荷電粒子ビームを磁場により偏向させるように成っていることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の放射線照射施設。
【請求項12】 前記偏向装置は、前記荷電粒子ビームを電場により偏向させるように成っていることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の放射線照射施設。
【請求項13】 前記荷電粒子ビーム加速装置は前記荷電粒子ビームを衝突させてX線を発生し前記放射線照射室に前記X線を照射するX線発生手段を有したことを特徴とする請求項7乃至請求項12の何れかに記載の放射線照射施設。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、食品照射、検疫照射、汚泥処理、排水処理、医療殺菌等に用いる荷電粒子ビーム加速装置およびそれを用いた放射線照射施設に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図11は、例えば、「小型シンクロトロン放射光源”オーロラ”の開発」(高橋、山田著、住友重機械技法、vol.39,No.116,1991,2〜10頁)に記載されている従来の例えば荷電粒子である電子を加速する電子ビーム加速装置である。このようなタイプの電子ビーム加速装置はレーストラック・マイクロトロンと呼ばれている。図11において、この電子ビーム加速装置は、電子ビームを発生するビーム発生手段である電子銃111と、この電子銃111で発生した電子ビームを周回させながら加速させる加速器本体112とを備えている。また、電子ビーム加速装置は、電子銃111で発生した電子ビームを加速器本体112に入射するために電子ビームを偏向する入射電磁石118を有している。
【0003】加速器本体112は、電子ビームに高周波電界をかけて加速させる加速空洞113、即ちビーム加速手段と、この加速空洞113の両端に近接して設けられ、加速空洞113によって加速された電子ビームを偏向する一対のビーム加速手段である偏向電磁石114a、114bとを有している。加速器本体112は、また加速された電子ビームを加速器本体112の外部に取り出すための出射電磁石122を備えている。偏向電磁石114a及び114bの間には真空ダクト120が設けられており、この真空ダクト120内を電子ビームが通過するようになっている。
【0004】電子ビーム加速装置は、また高周波電源(図示しない)の高周波電力を加速空洞113が所定の高周波電界を発生する程度に増幅する電力増幅手段の終段増幅器115と、この終段増幅器115で増幅した高周波電力を加速空洞113に伝送する導波管116(高周波伝送手段)とを備えている。導波管116は加速空洞113に高周波電力を効率よく供給するために入力カプラ117によって加速空洞113と接続されている。
【0005】また、電子ビーム加速装置は加速器本体112を支持する支持手段である支持台123を備えており、この支持台123で加速器本体112を床面から離間させ、加速器本体112の下側のこの空間に真空ダクト120を真空状態にするための真空ポンプが配置されている。
【0006】このような電子ビーム加速装置は、以下のような動作を行う。即ち、電子銃111で発生した電子ビームは入射電磁石118によって偏向されて加速器本体112に入射される。電子銃111で発生する電子ビームは、周波数が数Hz〜数100Hz、パルス幅が10ns〜数μs程度のパルスビームである。加速器本体112に入射された電子ビームは加速空洞113を通過して加速し、加速空洞113の両端に近接して設けられた偏向電磁石114a及び114bによって偏向されてこの一度加速空洞113から出た電子ビームが加速空洞113に戻ってくる。戻ってきた電子ビームは再び加速空洞113を通過して加速する。このような動作を繰り返して加速空洞113を通過する毎に電子ビームは加速され、それとともに電子ビーム軌道121は広がっていく。その後、所定の速度に達したところで電子ビームは出射電磁石119により加速器本体112の外部に偏向されて取り出される。
【0007】この電子ビーム加速装置(レーストラック・マイクロトロン)では主としてsバンド帯(2.8GHz)の高周波電界により加速を行う。この高周波電界は高周波電源(図示しない)の電力が終段増幅器115によって増幅され、この増幅された電力が導波管116(高周波伝送手段)、入力カプラ117を通じて加速空洞113に供給されることによって得られる。通常、入力カプラ117は加速空洞113への脱着を容易にするために、図に示すように加速空洞113の電子ビーム軌道121と反対側の側面に設けられるか、あるいは別の例として、加速空洞の加速器本体上側の側面に設けられる。
【0008】ここで、sバンド帯(2.8GHz)の高周波電界によって電子ビームの加速を行うこととしているのは、加速電圧を上げて電子ビームを加速空洞113に1回程度通させればほとんど光速となるように運転するようにしなければ電子ビームの位相が加速位相からずれて電子ビームが加速しないからである。即ち、1GHz〜3GHzといった周波数帯より低い周波数帯では加速空洞を通過する電子ビームのエネルギーゲインが小さいので、電子ビームが光速に近づくまでの周回数が増え、その間に加速位相からのずれが大きくなり加速が困難となるのである。しかし、sバンド帯といった周波数の高い加速空洞は、単位長さ当たりの加速電圧が大きいので必然的に全体の寸法が小さくなりこの加速空洞113の全体表面積が小さくなって、大電力を投入したときの熱の除去が困難となる。従って、sバンド帯といった周波数の高い加速空洞では大強度の電子ビームを加速することが困難であり、大強度の電子ビームを必要とする食品照射、検疫照射、汚泥照射、排水処理、医療殺菌等への適用が困難である。
【0009】このような大強度の電子ビームを加速する電子ビーム加速装置(レーストラック・マイクロトロン)として、偏向電磁石の磁極形状及び磁場強度を調整することにより、高周波電界の周波数を900MHz以下で運転するものが開発されている。このような900MHz以下の周波数であれば終段増幅器115を小型にでき、例えば放送用として用いられているIOT管(Inductive Output Tube)、三極管及び四極管等を用いることができる。通常、偏向電磁石によって調整可能であるので、50MHz〜900MHzの周波数帯で用いることができる。
【0010】一例として図12にIOT管を用いた大強度の電子ビームを加速する電子ビーム加速装置を示す概略上面図を示し、図13にその概略側面図を示す。このIOT管を用いた電子ビーム加速装置において、IOT管(終段増幅器)150は上面(図12では紙面手前側)で導波管116に接続され、導波管116は入力カプラ117を介して加速空洞113の上面(図12では紙面手前側)に接続されている。また、加速された電子ビームを偏向して周回軌道を作り出す主偏向電磁石152及び電子ビームに収束力を与えるための逆磁場偏向電磁石153が加速空洞113の両端に近接して設けられている。逆磁場偏向電磁石153は主偏向電磁石152とは逆方向の磁場を発生させて主偏向電磁石152への電子ビームの入射角を変える働きをしている。なお、図11の電子ビーム加速装置と同一又は相当する構成要素には同一符号を付している。
【0011】このようなIOT管等を用いた電子ビーム加速装置では、例えば電子ビームは図14に示すような軌道を描く。即ち、入射電磁石118によって入射された電子ビームは加速空洞113で加速された後、逆磁場偏向電磁石153に入る。この1回の加速では電子ビームのエネルギがそれほど高くないので、電子ビームは一回転して再び加速空洞113に戻ってくる。2回目の加速空洞113の通過でもエネルギを得るので、今度は電子ビームは主偏向電磁石152で約180度偏向され、加速空洞113の外側を通って対向する主偏向電磁石152に向かい、そこでも約180度偏向されて加速空洞113に戻ってくる。この動作を繰り返すことにより電子ビームのエネルギが高まり、エネルギが高まるにつれて主偏向電磁石内での軌道半径も大きくなって、図14のような電子ビームの軌道が描かれるのである。なお、図14では電子ビームが主偏向電磁石152内で曲がりきれずに外側に取り出されているが、図12及び図13に示す荷電粒子ビーム加速装置は主偏向電磁石152の調整により、電子ビームの最後の軌道も180度偏向させて出射電磁石119によって電子ビームを取り出すような構成である。
【0012】このような加速装置は、しばしば放射線照射施設に設置され、加速された大強度の電子ビームは、食品照射、検疫放射、汚泥処理等のためにそのままあるいはX線等の放射線に変換して用いられる。例えば、図15は一般的な放射線照射施設の概略模式図であり、「Facility to Disinfect Medical Wastes by 10MeV Electron Beam」第23回日本アイソトープ・放射線総合会議論文集に一実施例が示されている。ここでは大強度の電子ビームを加速するためにロードトロンが適用されている。図15において、放射線照射施設は放射線遮蔽壁140を有しており、この放射線遮蔽壁140によってロードトロン等の加速装置130を設置する加速装置設置室142と、食品等の被照射物体137をコンベア138で移動させてこの被照射物体137にX線等の放射線を照射する放射線照射室143とが形成されている。
【0013】また、加速装置130に高周波電力を供給する高周波電源136が加速装置設置室142に隣接して設けられ、この高周波電源136および加速装置130は放射線遮蔽壁140を貫通する電力線135によって互いに接続されている。さらに、加速装置130には時間的に磁場が変化するスキャナ132が設けられている。このスキャナ132には内部が真空となっているスキャンホーン133が設けられ、このスキャンホーン133の端部には電子ビームを衝突させてX線を発生させるX線変換部134が設けられている。
【0014】このように放射線照射施設は放射線を発生する加速装置130が設けられた加速装置設置室142及び放射線照射を行う放射線照射室143を放射線遮蔽壁140で形成して放射線の漏洩を防止している。逆に、高周波電源136は放射線を発生しないので、放射線遮蔽壁は必要なく通常の壁で囲まれている。
【0015】このような放射線照射施設では加速装置130で加速された大強度の電子ビームは階下に設けられた放射線照射室143の方向に偏向装置131によって偏向され、その後スキャン132によりこの電子ビームの偏向方向が時間的に変化させられて、時間的に平均してみると広がった電子ビームとなってスキャンホーン133を通過してX線変換部134に衝突する。X線変換部134ではこの大強度の電子ビームが衝突するとX線が発生しコンベア138によって流れる食品等の被照射物体137がこのX線の中を通過して殺菌等の処理を行う。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】このような荷電粒子ビーム加速装置では、終段増幅器を小型のIOT管150とすることができるが、図12に示すように、この終段増幅器であるIOT管150は加速器本体112の外側に設置されており、加速空洞113とこのIOT管150とを接続する導波管116が加速器本体112及びIOT管150との間を渡っているので、荷電粒子ビーム加速装置全体としての設置スペースが未だに広く、設置スペースの縮小に対応できないという問題点があった。
【0017】また、加速装置130の設置スペースが広いと放射線照射施設の床面積及び放射線遮蔽壁140が大きくなり放射線照射施設全体の建設に多大なコストを必要とするという問題点もあった。
【0018】そこでこの発明は、上記のような問題点を解決することを課題とするもので、設置スペースが小さく、コンパクトで低コストの荷電粒子ビーム加速装置を得、この荷電粒子ビーム加速装置を用いることにより放射線遮蔽壁の必要箇所を少なくして放射線遮蔽設備を少なくすることにより建設コストを低減した放射線遮蔽施設を得ることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】この発明に係る荷電粒子ビーム加速装置は、荷電粒子ビームを発生するビーム発生手段と、前記ビーム発生手段で発生した前記荷電粒子ビームを高周波電界により加速するビーム加速手段及び前記ビーム加速手段の両端に近接して設けられ、前記ビーム加速手段によって加速された前記荷電粒子ビームを偏向する一対のビーム偏向手段を有し、前記荷電粒子ビームが前記一対のビーム偏向手段の間で周回し、前記ビーム加速手段によって周回毎に異なる軌道を描きながら前記荷電粒子ビームが加速する加速器本体と、前記加速器本体を支持する支持手段と、前記ビーム加速手段に前記高周波電界を発生させる高周波電力を増幅する電力増幅手段と、前記ビーム加速手段及び前記電力増幅手段を接続して前記電力増幅手段で増幅された高周波電力を前記ビーム加速手段に導く高周波伝送手段とを備えた荷電粒子ビーム加速装置において、前記電力増幅手段は、前記加速器本体の下側における前記支持手段の支持で生じた空間に配置されたものである。
【0020】また、前記高周波伝送手段は、前記ビーム加速手段の下面に接続されたものである。
【0021】また、前記高周波電界は、50〜900MHzである。
【0022】また、前記ビーム発生手段、前記加速器本体、前記支持手段、前記電力増幅手段及び前記高周波伝送手段の周囲を覆う放射線遮蔽材を有したものである。
【0023】また、前記加速器本体、前記支持手段、前記電力増幅手段及び前記高周波伝送手段の周囲を覆う放射線遮蔽材を有し、前記ビーム発生手段は前記放射線遮蔽材の外部に配置されたものである。
【0024】また、前記放射線遮蔽材は第1の分割遮蔽材及び第2の分割遮蔽材から構成されており、前記第1の分割遮蔽材及び第2の分割遮蔽材の少なくとも一方が前記荷電粒子ビームの軌道を含む平面に沿う方向に移動可能にしたものである。
【0025】この発明に係る荷電粒子ビーム加速装置を用いた放射線照射施設は、前記荷電粒子ビーム加速装置によって発生した荷電粒子ビームを照射する放射線照射室を形成する放射線遮蔽壁を有し、前記荷電粒子ビーム加速装置は前記放射線遮蔽壁に隣接して設けられたものである。
【0026】また、前記放射線遮蔽材は一部が前記放射線遮蔽壁となっている。
【0027】また、前記荷電粒子ビーム加速装置は前記荷電粒子ビームの軌道を含む平面が前記放射線遮蔽壁の一面とほぼ平行となるように設けられ、前記一対のビーム偏向手段の間に設けられ、前記加速された荷電粒子ビームを前記放射線照射室に向かって偏向して取り出し前記放射線照射室に送り込む偏向装置を備えたものである。
【0028】また、前記偏向装置は、さらに前記荷電粒子ビームの偏向方向を時間的に変化させるよう成っている。
【0029】また、前記偏向装置は、前記荷電粒子ビームを磁場により偏向させるように成っている。
【0030】また、前記偏向装置は、前記荷電粒子ビームを電場により偏向させるように成っている。
【0031】また、前記荷電粒子ビーム加速装置は前記荷電粒子ビームを衝突させてX線を発生し前記放射線照射室に前記X線を照射するX線発生手段を有したものである。
【0032】
【発明の実施の形態】以下この発明の各実施の形態について説明するが、従来のものと同一又は同等部材、部位については同一符号を付して説明する。
【0033】実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1に係る荷電粒子ビーム加速装置の概略を示す上面図であり、図2はその側面図である。図1及び図2において、この荷電粒子ビーム加速装置50は、例えば電子ビームを発生する電子銃11(ビーム発生手段)と、この電子銃11で発生した電子ビームを周回させながら加速させる加速器本体12と、この加速器本体12を支持する支持台23(支持手段)とを備えている。
【0034】加速器本体12は、電子ビームに高周波電界をかけて加速させる加速空洞13と、この加速空洞13の両端に近接して設けられ、加速空洞13によって加速された電子ビームを偏向して周回軌道を作り出す主偏向電磁石52及び電子ビームに収束力を与えるために主偏向電磁石52とは逆方向の磁場を発生させて主偏向電磁石52への入射角を変える逆磁場偏向電磁石53と、この一対の主偏向電磁石52及び逆磁場偏向電磁石53の間を渡っている真空ダクト20と、加速された電子ビームを加速器本体12の外部に取り出すための偏向装置19とを備えている。
【0035】また、支持台23は加速器本体12をその下側に配置されて支持し、加速器本体12を床面から離間させ、加速器本体12の下側のこの空間に真空ダクト20を真空状態にするための真空ポンプ21が配置されている。
【0036】荷電粒子ビーム加速装置50は、また高周波電源の高周波電力を加速空洞13が所定の高周波電界を発生する程度に増幅する電力増幅手段である終段増幅器15と、この終段増幅器15で増幅した高周波電力を加速空洞13に伝送する同軸管16(高周波伝送手段)とを備えている。終段増幅器15は加速器本体12の下側の空間内に設けられており、この終段増幅器15に接続された同軸管16は加速空洞13に高周波電力を効率よく供給するために入力カプラ17によって加速空洞13の下側から接続されている。また、終段増幅器15は周波数帯が50MHz〜900MHzである高周波電力に対応するものが使用されており、例えばIOT管が使用されている。
【0037】なお、この荷電粒子ビーム加速装置50の動作は図12及び図13に示す従来例と同様であり、加速空洞13によって加速された電子ビームが一対の主偏向電磁石52及び逆磁場偏向電磁石53で偏向され、繰り返し加速空洞13を通過する毎に加速されて偏向装置19によってこの加速された電子ビームは取り出される。
【0038】このように荷電粒子ビーム加速装置50は、大強度の電子ビームを加速する場合でもIOT管のような小型の終段増幅器15を支持台23によって支持された加速器本体12の下側の支持空間に配置することができ、設置スペースを小さくするとともに同軸管16の長さを短くすることができるので、同軸管16の抵抗損失による熱の発生を抑えることができ冷却装置を設ける必要もなくなる。
【0039】なお、この実施の形態1では電子ビームの加速をしているが、荷電粒子であれば高周波電界により加速できるので電子ビームに限定する必要はない。
【0040】また、加速空洞13の側面又は上面に同軸管16が入力カプラ15によって接続されていても、従来の設置スペースに比べて小さくなっており、しかも脱着が容易であるので、このような配置でも構わない。
【0041】実施の形態2.図3は、この発明の実施の形態2に係る荷電粒子ビーム加速装置の概略模式図である。図3において、遮蔽加速装置である荷電粒子ビーム加速装置60は、加速装置50と、この加速装置50の周囲を覆った放射線遮蔽材30を備えている。加速装置50は電子銃11、加速器本体12、支持台23、終段増幅器15及び同軸管16を備えたものであり、放射線遮蔽材30は、例えばコンクリート、水を入れた容器あるいは鉛板とパラフィン板とボロン入りパラフィン板とを組み合わせた板等がある。また、高周波電源は図示されていないが、高周波電源は放射線の発生が小さいので、放射線遮蔽材30の外部に設けられる。終段増幅器15は高周波電源からのケーブルに接続されているが、このケーブルは長さについて制約があまりなく細くて良いので、放射線遮蔽材30に穴を設けても問題にならないほどの小さなものでよいし、床部分に貫通孔を通してこの貫通孔にケーブルを通してもよい。
【0042】このように放射線(例えば、中性子、γ線、X線等)を発生する加速装置50を放射線遮蔽材30で覆ったので、この荷電粒子ビーム加速装置のみで周囲に及ぼす放射線による損害を防止できる。
【0043】なお、放射線遮蔽材30の上面(図3では紙面手前側)が蓋となっている構成であると内部の加速装置50が容易に確認でき、保守管理も容易になるので望ましい。
【0044】また、図4に示すように電子銃11を放射線遮蔽材30の外部に配置しても構わない。電子銃11からの電子ビームエネルギは80keV程度と低くこの電子ビームによる放射線は極めて小さいからであり、また、電子銃11を放射線遮蔽材30の外部に配置したことにより、この電子銃11を覆う容積が不要になって放射線遮蔽材30自体の大きさを小さくできるからである。さらに、電子銃11は消耗品であり交換頻度が高いので、外部の電子銃11の保守管理が容易にできるという効果もある。
【0045】実施の形態3.図5はこの発明の実施の形態3に係る荷電粒子ビーム加速装置の概略を示す断面図であり、図6はこの荷電粒子ビーム加速装置の側面を示す斜視図である。図5及び図6において、荷電粒子ビーム加速装置70は遮蔽加速装置60の放射線遮蔽材30が第1の分割遮蔽材である一側面55と第2の分割遮蔽材である本体部分54とに分割可能に構成されたものである。また、本体部分54は底部にキャスタ51が設けられており、図7に示すように本体部分54が一側面55を残して水平に移動するように構成されている。
【0046】従って、加速装置50を覆っている放射線遮蔽材30を容易に移動させることができ、内部の加速装置50の保守管理の負担を軽減できる。
【0047】なお、図8に示すように放射線遮蔽材30を支える台56の底面に設けられたエアパレット57にコンプレッサ58で発生する圧縮空気を供給管59を通して送り込んで、この圧縮空気を床面に吹き付けるような構成とし、床面とエアパレット52との摩擦を低減させるようにして放射線遮蔽材30の水平方向の移動を可能にしても構わない。
【0048】実施の形態4.図9は、この発明の実施の形態4に係る放射線照射施設の概略構成を示す一部断面図である。図9において、放射線照射施設45は放射線(例えば、X線)が照射される放射線照射室41を形成する放射線遮蔽壁40を有している。放射線照射室41内にはコンベア35が設けられており、このコンベア35上を食品等の被照射物体36が移動している。また、放射線が空気中を通過するときに発生するオゾンを処理するためのオゾン処理装置もこの放射線照射室41内に配置されている。
【0049】放射線照射室41を形成する放射線遮蔽壁40の外部上面には遮蔽加速装置60が設けられている。この遮蔽加速装置60の偏向装置19には鉛直下向きに遮蔽加速装置60で加速された電子ビームを測定するビームモニタ31、内部が真空となっているスキャンホーン32及び電子ビームが衝突することによりX線が発生するX線変換部33が設けられている。スキャンホーン32及びX線発生手段であるX線変換部33は放射線照射室41内にあり、放射線照射室41内のスキャンホーン32と放射線照射室41外のビームモニタ31とを接続するために放射線遮蔽壁40に穴部が設けられている。
【0050】偏向装置19は時間的に変化する磁場によって電子ビームを時間的に偏向方向を変化させるスキャン機能を兼ね備えており、電子ビームは時間的に平均してみると広がった強度分布となった状態でビームモニタ31に導くように構成されている。
【0051】ビームモニタ31では、電子ビームの位置、強度及びプロファイルを測定する。この測定結果により電子ビームのエネルギを計算し、所定の電子ビームの条件が満たされていれば偏向装置19が磁場を時間的に変化させる。
【0052】このような放射線照射施設45では、遮蔽加速装置60で加速された電子ビームが偏向装置19で下向きに偏向されるとともに時間的に平均して広げられ、ビームモニタ31、スキャンホーン32を通ってX線変換部33に衝突する。この衝突によりX線が発生し、その下のコンベア35上を移動している被照射物体36が発生したX線中を通過することにより食品の殺菌等が行われる。
【0053】このように構成された放射線照射施設は、遮蔽加速装置60から放射線が発生しないので、遮蔽加速装置60の設置室を形成する壁は放射線遮蔽用でなく通常の壁でよい。従って、放射線照射施設45の建設コストが低減される。
【0054】また、スキャンホーン32等が貫通する穴部が放射線遮蔽壁40に設けられているため、放射線照射室41内に照射されたX線等の放射線が放射線照射室41外に漏れる可能性があるが、この漏れた放射線は遮蔽加速装置60から発生する放射線を遮蔽する放射線遮蔽材30によって遮蔽されるので、施設外に放射線が漏洩することもない。
【0055】また、遮蔽加速装置60が放射線遮蔽壁40の鉛直方向の外部上面に設けられているので、放射線照射施設45の床面積が放射線照射室41の床面積でよい。従って、放射線照射施設45の設置スペースを縮小できる。
【0056】なお、偏向装置19はスキャン機能を兼ね備えたものである必要はなく、スキャン機能を備えたスキャナを単独で設けていれば偏向装置19は偏向のみの機能でよい。また、これら電子ビームを偏向させるために電界を用いるものでも同様な効果を奏する。さらに、電子線を直接照射する場合は、X線変換部は不要である。
【0057】実施の形態5.図10はこの発明の実施の形態5に係る放射線照射施設の概略構成を示す一部断面図である。図10において、遮蔽加速装置60は実施の形態2と同様の加速装置であるが、この遮蔽加速装置60は放射線遮蔽壁40の側面に設けられ、この放射線遮蔽壁40側の放射線遮蔽材30が放射線遮蔽壁40と兼用された構成となっている。また、スキャンホーン32は水平方向に向けられており、遮蔽加速装置60で加速された電子ビームをこのスキャンホーン32内を通って放射線遮蔽室41に移動させるために放射線遮蔽壁40の側面にスキャンホーン32を通す穴部が設けられている。さらに、加速されて取り出された電子ビームはビームモニタ31を通ってスキャナ46によって時間的に偏向方向が変化した後スキャンホーン32に入射する。他の構成及び動作は実施の形態3と同様になっている。
【0058】このように放射線照射施設45は、放射線遮蔽壁40の側面に遮蔽加速装置60が隣接し、放射線遮蔽壁40の遮蔽加速装置60側の側面が放射線遮蔽材30の一部を兼用するので、放射線遮蔽材30の材料コストを低減でき、しかも実施の形態3と同様に放射線遮蔽壁40側面の穴部からの放射線の漏れも放射線遮蔽材30によって遮蔽することができる。
【0059】なお、実施の形態5では、スキャナ46は電子ビームを時間的に偏向方向を変化させているが、遮蔽加速装置60の偏向装置19にこのスキャナ46の機能を兼ね備えさせてスキャナ46をなくしても構わない。
【0060】また、偏向装置19及びスキャナ46は電界によって電子ビームを偏向するようにしても構わない。
【0061】また、実施の形態3に係る荷電粒子ビーム加速装置70の放射線遮蔽材30の一側面55が放射線遮蔽壁40となる構成とし、放射線遮蔽材30を構成する本体部分54が放射線遮蔽壁40の側面に垂直な方向に移動できるようにしても構わない。
【0062】
【発明の効果】以上の説明から明らかな通り、この発明によれば、荷電粒子ビームを発生するビーム発生手段と、前記ビーム発生手段で発生した前記荷電粒子ビームを高周波電界により加速するビーム加速手段及び前記ビーム加速手段の両端に近接して設けられ、前記ビーム加速手段によって加速された前記荷電粒子ビームを偏向する一対のビーム偏向手段を有し、前記荷電粒子ビームが前記一対のビーム偏向手段の間で周回し、前記ビーム加速手段によって周回毎に異なる軌道を描きながら前記荷電粒子ビームが加速する加速器本体と、前記加速器本体を支持する支持手段と、前記ビーム加速手段に前記高周波電界を発生させる高周波電力を増幅する電力増幅手段と、前記ビーム加速手段及び前記電力増幅手段を接続して前記電力増幅手段で増幅された高周波電力を前記ビーム加速手段に導く高周波伝送手段とを備えた荷電粒子ビーム加速装置において、前記電力増幅手段は、前記加速器本体の下側における前記支持手段の支持で生じた空間に配置されたので、前記荷電粒子ビーム加速装置全体の設置スペースを縮小できる。
【0063】また、前記高周波伝送手段は、前記ビーム加速手段の下面に接続されたので、前記高周波伝送手段の距離が短くなり、高周波の抵抗損失による熱の発生が抑えられる。
【0064】また、前記高周波電界は、50〜900MHzであるので、IOT管等の増幅器を使用でき、前記電力増幅手段を小型化できる。
【0065】また、前記ビーム発生手段、前記加速器本体、前記支持手段、前記電力増幅手段及び前記高周波伝送手段の周囲を覆う放射線遮蔽材を有したので、前記荷電粒子ビーム加速装置自体で放射線の漏洩を防止し、周囲に放射線遮蔽をする手段を用いなくても良い。
【0066】また、前記加速器本体、前記支持手段、前記電力増幅手段及び前記高周波伝送手段の周囲を覆う放射線遮蔽材を有し、前記ビーム発生手段は前記放射線遮蔽材の外部に配置されたので、前記放射線遮蔽材の材料コストが低減され、前記ビーム発生手段の保守管理が容易になる。
【0067】また、前記放射線遮蔽材は第1の分割遮蔽材及び第2の分割遮蔽材から構成されており、前記第1の分割遮蔽材及び第2の分割遮蔽材の少なくとも一方が前記荷電粒子ビームの軌道を含む平面に沿う方向に移動可能にしたので、内部の装置の保守管理が容易になる。
【0068】この発明に係る荷電粒子ビーム加速装置を用いた放射線照射施設は、前記荷電粒子ビーム加速装置によって発生した荷電粒子ビームを照射する放射線照射室を形成する放射線遮蔽壁を有し、前記荷電粒子ビーム加速装置は前記放射線遮蔽壁に隣接して設けられたので、前記荷電粒子ビームの移動距離が短くてすみ、また、前記荷電粒子ビームが通過する通路を最小限にできる。
【0069】また、前記放射線遮蔽材は一部が前記放射線遮蔽壁となっているので、この部分では前記放射線遮蔽壁が前記放射線遮蔽材の役割も兼ねており、この部分での前記放射線遮蔽材を削減できる。
【0070】また、前記荷電粒子ビーム加速装置は前記荷電粒子ビームの軌道を含む平面が前記放射線遮蔽壁の一面とほぼ平行となるように設けられ、前記一対のビーム偏向手段の間に設けられ、前記加速された荷電粒子ビームを前記放射線照射室に向かって偏向して取り出し前記放射線照射室に送り込む偏向装置を備えたので、放射線照射施設全体をコンパクトにすることができ、放射線遮蔽部分を少なくでき、しかも確実に遮蔽することができる。
【0071】また、前記偏向装置は、前記荷電粒子ビームの偏向方向を時間的に変化させるように成っているので、部品数を削減することができる。
【0072】また、前記偏向装置は、前記荷電粒子ビームを磁場により偏向させるように成っているので、確実に所定の偏向方向に偏向することができる。
【0073】また、前記偏向装置は、前記荷電粒子ビームを電場により偏向させるように成っているので、確実に所定の偏向方向に偏向することができる。
【0074】また、前記荷電粒子ビーム加速装置は前記荷電粒子ビームを衝突させてX線を発生し前記放射線照射室に前記X線を照射するX線発生手段を有したので、前記荷電粒子ビームだけでなくX線を効率よく発生することができる。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成13年2月13日(2001.2.13)
【代理人】 【識別番号】100057874
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道照 (外4名)
【公開番号】 特開2002−237400(P2002−237400A)
【公開日】 平成14年8月23日(2002.8.23)
【出願番号】 特願2001−35221(P2001−35221)