| 【発明の名称】 |
X線画像撮影システム及びX線画像撮影方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】本田 凡
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| 【要約】 |
【課題】本発明の目的は、焦点サイズが小さく、充分なX線量を得ることができ、かつ医療診断画像を撮影するために人体に許容できるX線エネルギー範囲、すなわち、中性子の発生を著しく低減し、人体に影響のない実用的なX線画像撮影方法及びX線画像撮影システムを提供することにある。
【解決手段】電子に円運動を与えて加速し、金属ターゲットに衝突してX線を発生させ、被写体にX線を照射するマイクロトロン型X線発生装置と、該被写体を透過したX線を検出するX線画像検出媒体とを有するX線画像撮影システムであり、該マイクロトロン型X線発生装置が、放射角が0.085〜0.30radの該X線を発生させることを特徴とするX線画像撮影システム。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電子に円運動を与えて加速し、金属ターゲットに衝突せしめることによりX線を発生させ、被写体にX線を照射するマイクロトロン型X線発生装置と、該被写体を透過したX線を検出するX線画像検出媒体とを有するX線画像撮影システムであり、該マイクロトロン型X線発生装置が、放射角が0.085〜0.30radの該X線を発生させることを特徴とするX線画像撮影システム。 【請求項2】 前記被写体と前記X線画像検出媒体との距離(R2)が、0.2〜3.0mであることを特徴とする請求項1に記載のX線画像撮影システム。 【請求項3】 前記マイクロトロン型X線発生装置から発生し、前記被写体に照射されるX線の少なくとも高周波を除去する高周波除去手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のX線画像撮影システム。 【請求項4】 前記金属ターゲットの短辺長が、10〜600μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のX線画像撮影システム。 【請求項5】 前記マイクロトロン型X線発生装置が、電子回転リングを有し、かつ該電子回転リングの半径が5m以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のX線画像撮影システム。 【請求項6】 X線源から照射され被写体を透過したX線を、X線画像検出媒体で検出するX線画像撮影方法において、該X線源が電子に円運動を与えて加速し、金属ターゲットに衝突せしめることによりX線を発生させるマイクロトロン型X線発生装置であり、発生したX線が0.085〜0.30radであることを特徴とするX線画像撮影方法。 【請求項7】 前記被写体と前記X線画像検出媒体の距離(R2)が、0.2m〜3.0mであることを特徴とする請求項6に記載のX線画像撮影方法。 【請求項8】 前記マイクロトロン型X線発生装置が、少なくとも高周波除去手段を有していることを特徴とする請求項6又は7に記載のX線画像撮影方法。 【請求項9】 前記金属ターゲットの短辺長が、10〜600μmであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のX線画像撮影方法。 【請求項10】 電子に円運動を与えて加速し、金属ターゲットに衝突せしめることによりX線を発生させ、被写体にX線を照射するマイクロトロン型X線発生装置と、該被写体を透過したX線を検出するX線画像検出媒体とを有するX線画像撮影システムであり、該マイクロトロン型X線発生装置が、実質的に中性子を発生させない条件で該X線を発生させることを特徴とするX線画像撮影システム。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、画質の優れるX線画像を撮影する方法に関し、詳しくは、医療用の高画質な診断画像を得るX線画像撮影システム及びX線画像撮影方法であり、位相コントラストにより高画質を達成するX線画像撮影システム及びX線画像撮影方法に関する。 【0002】 【従来の技術】一般に、X線画像撮影、とりわけ医療用診断X線画像撮影には、回転陽極X線管が用いられている。この回転陽極X線管は、陰極のフィラメントから熱電子を発生させ、金属陽極にこの電子を衝突させることによって、電子の運動エネルギーが放射X線に変換される。一般的に、このX線は360度の全方向に放射される。金属表面から放射されたX線は、X線管の窓から放出され、被写体をその一部が通過することによってX線画像の撮影が行われる。X線管の窓とは逆方向に放射されるX線は、金属内で再度金属原子と相互作用を起こし、このときX線エネルギーの一部が金属内で熱エネルギーに変換される。その結果、強いX線強度を得ようとする場合には、この発生する熱エネルギーにより、陽極である金属材料が溶解するなど損傷を与えてしまう。その損傷をできるだけ少なくし、かつできるだけ多くのX線量を得るためには、金属陽極を円盤状とし、それを回転させながら、熱電子の衝突を1箇所に集中させないように工夫されたものが回転陽極X線管である。通常、この回転陽極X線管は、一般X線写真撮影においては、0.5mm四方の焦点サイズを用いている。また、高解像度が必要とされる乳房撮影の場合では、焦点サイズとしては0.1〜0.3mm四方である。この様に、X線を発生させる陽極断面積(焦点サイズ)を小さくすると、狭い面積に電子を集中させるために、その損傷は起こり易くなる。 【0003】この10年間、X線撮影画像の形成方法として、X線位相コントラスト画像の活用が広く研究されるようになってきている。位相コントラストとは、図1に示すように、X線源から発せられたX線1の回折作用あるいは屈折作用を利用して、X線屈折率の異なる物体(被写体2)界面の画像にエッジ強調Eが得られるものである。このことにより、従来にはない鮮鋭性の極めて高い画像が得られることが知られている。近年、この位相コントラストを得るための方法として、シンクロトロンを用いて平行に直進するX線を発生させ、それによりX線画像を撮影する方法が報告されている。通常、位相コントラスト画像を得るには、被写体2とX線画像検出媒体3との距離(R2)を離す必要がある。X線が平行であると、その距離を大きくとっても、X線の広がりによる単位面積当たりのX線強度の減衰がなく好都合である。しかしながら、現在得られる平行性のよいX線ビームは、そのビーム径が細いために、人体のような大きい被写体を撮影することが難しい。そして、何よりも、このシンクロトロン放射光施設は、半径数キロメートルに及ぶため、当然のことながら、一般的な市中の医療施設に設置することは困難であり、従って、シンクロトロンの位相画像は、特殊用途に限定されているのが現状である。 【0004】一方、1996年に科学雑誌ネイチャー(ウイルキンス等、384巻335頁、1996年)に10〜20μmの焦点サイズを有する回転陽極X線管(マイクロフォーカスX線源)を用いて、位相コントラスト画像が得られることが報告されている。ここでの画像は小魚であり、この焦点サイズでは人体の画像を撮影するのはX線が弱すぎる。このように、シンクロトロンや上記のマイクロフォーカスX線源は、広く医療機関で使用することは難しい。 【0005】ここで、電子を光速度程度まで加速して、金属ターゲットに衝突させると、非常に狭い放射角でX線が放射されることが知られている。これは、例えば、電子を、15cm程度の半径からなる電子回転リングを用いて、電磁気的に円運動を与え、加速することによって実現できる。本発明では、電子に円運動を与え加速して、金属ターゲットに衝突せしめてX線を発生させる装置であれば、マイクロトロン型X線発生装置と位置付けることができ、特に、医療施設等に設置可能なサイズとして、電子回転リングの半径が5m以下であることが好ましい。また、電子の円運動の軌道は、真円である必要はなく、電子回転リング内で電子が周期的に回転運動を行えればよく、また、電子回転リングも真円である必要はないが、その場合の半径とは、設置状態の電子回転リングを上から見て、最も幅の広い直径を選択した場合の1/2の値となる。その一例を図2に示す。図2において、電子回転リング(図示していない)は、電子の回転運動軌跡の周囲に設けられている。この様なX線発生装置では、直径1m程度の大きさで設計することができる。 【0006】マイクロトロン型X線発生装置に関しては、山田廣成 放射光 11巻77頁(1998年)にその詳細が記載されている。このX線発生源を用いた場合、一定方向に狭い放射角(θ)でX線が放射されるので、薄い金属ターゲット4を用いると、衝突した金属内での2次的なX線との相互作用が小さい利点を有している。また、金属ターゲットの温度上昇は、従来のX管のようには生じないので、X線の発生する面積を小さく絞っても、充分な強度のX線を得ることができる。しかしながら、この技術では、衝突させる電子の速度が著しく高いために、発生するX線エネルギーが非常に高い領域に亘る。また、同時にエネルギーの低い領域のX線も発生する。これら高エネルギーおよび低エネルギーのX線は、人体に対して悪い影響を与えてしまう。高エネルギーの場合、エネルギーが高いために人体に吸収される確率は小さいが、一旦吸収されるとエネルギーが高いために人体細胞の破壊力は極めて大きい。癌治療には使用されているが、健康な細胞には重大な害を及ぼす可能性が高い。一方、低エネルギーX線は、人体に吸収されやすく、エネルギーが低いといってもその害は無視できない。すなわち、低エネルギーX線は、人体を透過しないため、画像形成に寄与せず、単なる害を生むだけである。 【0007】また、マイクロトロン型X線発生装置では、X線を発生させると同時に、人体を侵襲する中性子も発生させることが知られており、この中性子の発生量を人体に影響を与えないレベルまで低減する必要があるが、これまで有効な手段が見出されておらず、X線画像撮影方法の実現において、大きな障害であった。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、位相コントラスト画像を特に医療施設で実現せしめるために、焦点サイズが小さくても、充分なX線量を得ることができ、かつ医療診断画像を撮影するために人体に許容できるX線エネルギー範囲を選ぶことができるX線画像撮影システム及びX線画像撮影方法を提供することにある。更には、中性子の発生を著しく低減し、人体に影響のない実用的なX線画像撮影システム及びX線画像撮影方法を提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。 【0010】1.電子に円運動を与えて加速し、金属ターゲットに衝突せしめることによりX線を発生させ、被写体にX線を照射するマイクロトロン型X線発生装置と、該被写体を透過したX線を検出するX線画像検出媒体とを有するX線画像撮影システムであり、該マイクロトロン型X線発生装置が、放射角が0.085〜0.30radの該X線を発生させることを特徴とするX線画像撮影システム。 【0011】2.前記被写体と前記X線画像検出媒体との距離(R2)が、0.2〜3.0mであることを特徴とする前記1項に記載のX線画像撮影システム。 【0012】3.前記マイクロトロン型X線発生装置から発生し、前記被写体に照射されるX線の少なくとも高周波を除去する高周波除去手段を有することを特徴とする前記1又は2項に記載のX線画像撮影システム。 【0013】4.前記金属ターゲットの短辺長が、10〜600μmであることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載のX線画像撮影システム。 【0014】5.前記マイクロトロン型X線発生装置が、電子回転リングを有し、かつ該電子回転リングの半径が5m以下であることを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項に記載のX線画像撮影システム。 【0015】6.X線源から照射され被写体を透過したX線を、X線画像検出媒体で検出するX線画像撮影方法において、該X線源が電子に円運動を与えて加速し、金属ターゲットに衝突せしめることによりX線を発生させるマイクロトロン型X線発生装置であり、発生したX線が0.085〜0.30radであることを特徴とするX線画像撮影方法。 【0016】7.前記被写体と前記X線画像検出媒体の距離(R2)が、0.2m〜3.0mであることを特徴とする前記6項に記載のX線画像撮影方法。 【0017】8.前記マイクロトロン型X線発生装置が、少なくとも高周波除去手段を有していることを特徴とする前記6又は7項に記載のX線画像撮影方法。 【0018】9.前記金属ターゲットの短辺長が、10〜600μmであることを特徴とする前記6〜8項のいずれか1項に記載のX線画像撮影方法。 【0019】10.電子に円運動を与えて加速し、金属ターゲットに衝突せしめることによりX線を発生させ、被写体にX線を照射するマイクロトロン型X線発生装置と、該被写体を透過したX線を検出するX線画像検出媒体とを有するX線画像撮影システムであり、該マイクロトロン型X線発生装置が、実質的に中性子を発生させない条件で該X線を発生させることを特徴とするX線画像撮影システム。 【0020】以下、本発明のX線画像撮影方法及びX線画像撮影システムの詳細について説明する。 【0021】はじめに、X線発生原理について以下説明する。本発明に係るマイクロトロン型X線発生装置においては、熱電子を発生させた後、それを磁石で囲まれた空間に放出し、連続的に磁性を変化させることにより熱電子を加速する。次いで、加速した電子を金属に衝突させて、この運動エネルギーを放射X線に変換させる。これは一般的に制動放射と呼ばれる。この制動放射の放射角θは、請求項1及び6における放射角であり、次式により定義される。 【0022】θ=1/γ(γ=Ee/mc2) 式中、γはローレンツ因子、Eeは電子のエネルギー、mは電子の質量、cは光速度を表す。 【0023】ここで、電子のエネルギーが6MeVのとき、γ=6/0.511=11.74となり、放射角θはθ=1/γ=0.085(rad)となり、この放射角はかなり小さい。これは、X線が1m進むときに近似的に0.085mの幅の広がりを持つことを意味する。 【0024】上記の方法のほか、逆コンプトン散乱による放射角の小さいX線発生手段を得る方法も報告されており、その一例を図3に示す。即ち、高速運動している電子にレーザー光などの光を衝突させると、電子の運動エネルギーが光エネルギーに変換し、その結果としてX線を発生させる方法である。このとき、発生するX線のエネルギーExは、Ex=4γ2Elと表すことができる。式中、Elは光のエネルギーを、γはコンプトン因子を表す。この時、X線の放射角は、上記同様に表すことができ、電子エネルギーが高いときには、放射角は極めて小さくなる。この場合、強いレーザー光線の発生が必要となり、極めて高いエネルギーと大きなレーザー発生装置が必要とされる。従って、この技術を利用したX線発生装置は、一般的な医療設備に設置するのに充分なコンパクトサイズとはなり得ない。 【0025】巨大半径を有するシンクロトロンでは、光速度に近い電子が真空空間内を飛行する。この際、電子が一定の曲率で回転するとき、強いX線を放射する。これは、一般に軌道放射光と呼ばれる。そして、このX線の放射角は、例えば、SPring−8においては、1.3μradであって、上記制動放射に比べて極めて平行性にすぐれていることがわかる。このような巨大シンクロトロンを用いるX線画像撮影では、例えば、7mm角サイズの平行なX線であるので、シリカ結晶等によりブラッグ反射を用いて放射角を広げることで、1辺数cm程度の画像を得ている。あるいは、点光源に対して、被写体を動かすことにより、一定の大きさの画像を得ている。本発明に係る制動放射を用いるマイクロトロン型X線発生装置の場合には、電子の運動エネルギーを調節することにより、医用画像で活用する所望のサイズに広がるので、シリカ結晶等を用いる必要がなく、また患者を撮影のために動かすなどの必要はない。また、本発明に係るマイクロトロン型X線発生装置の場合は、X線放射に伴う熱エネルギーの発生がないために、回転陽極型のX線管に比べて、同じ焦点面積で約1000倍程度の強度のX線放射が得られる。従って、10μm程度の短辺長を有するターゲットでも、医用画像撮影の目的にかなうX線を得ることができる。なお、本発明でいう短辺長とは、電子が金属ターゲットに衝突する方向で、金属ターゲットを投影したときに得られる形状の中で、水平方向及び垂直方向における最も短い部分の長さを言う。例えば、図2に記載のごとく、投影面の形状が縦長の長方形である場合には、水平方向に長さが、垂直方向のそれより短いため、図2中の矢印で示した長さが短辺長となる。 【0026】本発明に係るマイクロトロン型X線発生装置を用いる場合は、電子の運動エネルギーよりも低い値のX線が放射される。したがって、6MeVの電子の制動放射では、6MeV以下のX線が放射される。一般に、医用に用いられるX線のエネルギーは、20kV付近を下限とし、せいぜいその上限は150kVである。従って、制動放射で得られるX線の150kV以上のX線、すなわち、請求項3及び8における高周波及び20kV以下のX線は、除去する必要がある。 【0027】請求項10に係る発明では、マイクロトロン型X線発生装置において、実質的に中性子が生じない条件でX線を発生させることを特徴とする。 【0028】実質的に中性子を発生させない条件は、加速電子の速度を制御すること、あるいは、放射角を0.085〜0.30radの範囲に制御すること等で達成される。 【0029】請求項1及び6に係る発明では、マイクロトロン型X線発生装置において、発生させたX線の放射角が、0.085〜0.30radであることが特徴であり、本条件とすることにより、極めて鮮鋭性の高いX線画像を得ることができる。その際、上述した理由により、本発明の請求項3及び8に係る発明である、少なくとも高周波除去手段を有していることがより好ましい。 【0030】本発明において、高いエネルギーのX線を除去するには、例えば、ブラッグ反射を利用してX線直進軸からX線を曲げることにより実現することができる。ブラッグ反射は、2dsinθ=nλであって、このθやdを組み合わせることにより、除去するX線のエネルギー範囲を調整することができる。本発明でいう除去とは、完全に除去することのみを意味するものではなく、人体に害を及ぼさないX線量まで低減することも包含する。 【0031】また、低エネルギー側については、従来のX線管を用いたX線診断画像撮影時に使用されている銅やアルミニウムなどの金属板をX線の放射光路に設置することにより、一定エネルギー以下のX線を遮蔽するフィルタとして使用することができる。 【0032】次いで、位相コントラストについて説明を行う。本発明でいう位相コントラストとは、X線の回折効果として説明される場合もあるが、ここでは屈折効果として説明を行う。そして、焦点ターゲットサイズを点光源とみなさず、従って、X線の可干渉性は特に必要とされない。 【0033】X線は、波の性質を持っている。すなわち、可視光線と同様に、X線が屈折率の異なる物体を透過すると、その界面で屈折を起こす。図1で模式的に示すように、屈折率の異なる被写体2の界面部分のX線画像検出媒体上のX線透過画像では、X線の屈折によってX線強度が低下する部分と、そしてその屈折したX線が空間を直進してきたX線と重なりあってX線強度が上昇する部分とが生ずる。すなわちここで得られる陰画画像では、屈折率の異なる界面を境にしてX線強度が低下する部分が白く抜け、X線強度が上昇する部分がより黒くなる結果、いわゆるエッジ強調画像が得られる。これが、位相コントラストと呼ばれる現象である。X線の波長は非常に短く、その屈折率は小さいので、従来から行われているX線画像撮影では、この位相コントラストは見過ごされてきた。すなわち、従来のX線画像では、位相コントラストは十分に活用されておらず、むしろX線の吸収差による吸収コントラストのみを主体に活用するX線画像が主流であった。 【0034】X線による位相コントラスト画像を得るには、原理的に図1で示すように、被写体2からX線画像検出媒体3の距離R2は、一定の距離を離さなければならない。しかしながら、X線焦点サイズ(X線ターゲットサイズ)が一定以上で、点光源とみなせない場合が、現実的である。このとき図5に示すように、焦点サイズによるボケが生ずることとなる。一般に、これは幾何学的ボケと言われる。ここでボケの大きさBは、B=a×(R2/R1)で表すことができる。尚、R1はX線源から被写体までの距離を表す。シンクロトロンから得られる放射光X線は極めて平行線に近いため、すなわち焦点が無限遠である(R1→∞)と等価であって、Bは0となり、このようなボケの問題はない。X線源が点光源とみなせるときは、a→0であり、B→0であって、この場合もボケによる影響を考慮する必要はない。しかし、現実的な広く医療施設で使用されるX線画像撮影方法においては、このボケを無視することができない。 【0035】ここで、図1で示すように、位相コントラストによるエッジ効果のエッジの半値幅Eは、下式により表すことができる。 【0036】E=2.3(1+R2/R1)1/3{R2δ(2r)1/2}2/3ここで、δは被写体のX線に対する屈折率であり、rは被写体を円柱と仮定したときの半径である。このエッジ効果が画像の鮮鋭性の向上に寄与するのは、同時に発生する上記の幾何学的ボケにエッジ効果が打ち勝つ領域である。この領域は、X線画像検出媒体の空間分解能などの基本性能と関係し、例えば、X線蛍光増感紙と銀塩フィルムを用いるスクリーン・フィルムシステム、シンチレータと光半導体及びスイッチング薄膜トランジスタと組み合わせたフラットパネルディテクター、輝尽性蛍光体を用いてレーザー照射で輝尽発光を読取って画像の電機信号をえるコンピューテッドラジオグラフィ(CR)など、用いる画像形成方式、あるいは拡大撮影での拡大率などで異なる。 【0037】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施態様を説明するが、実施可能な態様は必ずしもここでの説明に限定されるものではない。 【0038】図4は、本発明に係るマイクロトロン型X線発生装置の一例を示す模式図である。左よりX線発生装置であるマイクロトロンM、高周波カットフィルタ9、低周波カットフィルタ10、放射線防御板11、被写体2、被写体保持具12そしてX線画像検出媒体3と配置される。被写体保持具12とX線画像検出媒体3は固定レール14上に配置し、照射時の光軸が狂わないようにすることが好ましい態様である。 【0039】マイクロトロンMには、電子注入口7から電子が注入され、電子回転リング6に導かれて磁石5によって回転運動を行う結果、電子に運動エネルギーが与えられて、加速される。このとき、例えば、加速周波数を2.5GHzとし、金属ターゲット4に6MeVで衝突せしめる。金属ターゲット4は、50μm径のタングステンワイヤであり、ターゲット焦点サイズはこの直径により定められる。このワイヤはタングステンのほか、モリブデンやロジウムなど、一般に回転陽極X線管に陽極ターゲットとして用いられる金属が使われる。電子回転リング6は、0.15mであり、磁石5とその回りの放射線防御の枠を入れて直径は1mである。電子リングは一旦10-10Torrまで真空にし、その後水素ガスを注入し10-8Torrにする。このガスをイオン化して、周回する電子を金属ターゲット4に収束せしめる。さらに、他の実施態様は、特開平8−195300記載の態様で差し支えない。なお、請求項4及び9に係る発明では、金属ターゲット4の短辺長が10〜600μmであることが特徴である。 【0040】金属ターゲット4から放射されたX線は、高周波カットフィルタ9及び低周波カットフィルタ10を通り、医用に適切なX線のエネルギー範囲に絞られる。高周波カットフィルタ9は、例えば、ブラッグ反射を利用して、SiO2結晶の傾きを変えた一群や、その他格子定数の異なる結晶板を組合すことで、X線の高周波成分を取り除くことができる。また、低周波成分については、銅やアルミニウムなど、回転陽極X線管で従来から用いられている金属板を用いることができる。取り出す周波数領域は、20〜150kVであるが、撮影部位によりその範囲を変えることは好ましい。例えば、胸部画像のような場合は、最高エネルギーは120〜150kV、骨撮影のときは60〜90kV、腹部撮影のときは最高エネルギーは80〜110kV、また乳房撮影の場合、20〜40kV付近を最高エネルギーとすることが好ましい。また、撮影時間も、対象とする撮影部位により一概には言えないが、好ましくは0.01〜5秒である。 【0041】また、高周波カットフィルタ9や低周波カットフィルタ10に代えて、複数の結晶板を用いて、特定の放射角のX線のみを取り出すことも好ましい。 【0042】X線が放射される出口穴を設けた放射線防御板11を設置することも好ましい。この放射線防御板11には、鉛板がはめ込まれることにより、不要なX線が防御板で吸収される。 【0043】撮影系については、基本的にX線画像検出媒体3と被写体保持具12からなる。密着撮影の時は、X線画像検出媒体3と被写体保持具12を一体化しても良い。この時、被写体2から発生する散乱X線を除去するX線グリッドを使用することがよく知られている。ただし、この密着撮影では、位相コントラスト画像は得られない。 【0044】位相コントラスト画像を得るため、請求項2及び7に係る発明では、被写体2とX線画像検出媒体3との間の距離(R2)を0.2m以上3.0m以下とすることが特徴であり、特に、病院施設の大きさの制約等からも最大3m程度が適当である。R2が5mにもなると、X線強度が低くなり、粒状が目立つ画像となるので好ましくない。また、被写体2からX線源までの距離(R1)は、0.5mから3m程度が好ましいが、この距離は、撮影部位やX線画像検出媒体の感度により、適宜決定されるべきものである。このように、X線源から被写体2(被写体保持具12)、そして被写体2(被写体保持具12)とX線画像検出媒体3との間の距離は、その撮影目的によって任意に決定されるので、被写体保持具12とX線画像検出媒体3は、固定レール14上に半固定して、距離を可変できる形態とすることが、光軸のブレを生じない上では好ましい態様である。この固定レール14は、2本でも1本でも差し支えない。また、床に埋め込み式であると、歩行の障害にならない。また、長さを示す目盛をつけることにより、撮影の拡大率を計算することができ、好ましい。 【0045】本発明においては、X線源とX線画像検出媒体3との間の所定の距離に、被写体2を固定するための被写体保持具12を備える。被写体保持具12は、X線の透過性のよい素材、例えば、一定厚さのプラスチック樹脂製による板状もしくは枠状のものが支え棒に固着されて、地面もしくは支柱で支持される。この被写体保持具12は、X線管とX線画像検出媒体の間で可動であり、任意の距離で一時的に固定することができる。X線管から、あるいはX線画像検出媒体3からの各々の距離が明示されることが好ましい。その被写体保持具12に、基準長さを示すスケールを設けて、そのスケールを写しこむことにより、その画像もしくは画像信号から拡大率を計算し、求めることも好ましい態様である。 【0046】本発明に係るX線画像検出媒体としては、公知の様々な手段を適用することができ、例えば、従来から用いられているX線蛍光増感紙とハロゲン化銀写真フィルムとの組み合わせの、いわゆるSFシステム(スクリーン・フィルム・システム)を用いることができる。一般に、X線吸収率の小さい素材でできたカセッテに2枚のスクリーンを貼付し、この2枚のスクリーンの間に、樹脂支持体の表裏両面にハロゲン化銀乳剤を塗設した両面フィルムを使用することができる。とくに、高い鮮鋭性が要求される場合には、1枚の増感紙と支持体の1面のみにハロゲン化銀乳剤を塗布したいわゆる片面フィルムを用いることが好ましい態様である。本発明においては、使用するSFシステムの感度範囲についてはとくに制約はないが、できるだけ感度の高いシステムを使用することが好ましい。 【0047】また、X線画像検出媒体として、いわゆるコンピューテッド・ラジオグラフィで用いられる輝尽性蛍光板、X線シンチレータからの光を電気信号に置きかえる光半導体とその電荷を読み取る薄膜トランジスタを2次元平面に敷き詰めたX線画像検出媒体、X線を直接的に電荷に変換して、その電荷を読み取る薄膜トランジスタを2次元に敷き詰めたX線画像検出媒体、X線シンチレータからの光をレンズまたはガラスファイバーで集めてCCDもしくはCMOSで電気信号として画像情報を得る方法、また、X線を直接CCDに照射してX線画像情報を得るものなどを使用することができる。 【0048】また、輝尽性蛍光体を用いる場合、本発明でいう画素サイズpは、X線照射後に輝尽発光を誘発させるレーザー光照射の照射サイズである。その他の上記X線画像検出媒体では光半導体での最小読取サイズ、電荷を読み取る薄膜トランジスタの最小単位、CCDの集光最小面積などで、通常、製造者により、画素サイズとして、その仕様が記載されている。上記各手段の中で、本発明に係るX線画像検出媒体としては、本発明の効果をより発揮できる観点から、輝尽性蛍光体を用いることが好ましい。 【0049】上記X線画像検出媒体における画素サイズpについては、小さければ小さいほど緻密な画像情報が得られるが、反面、処理時間がかかり、また製造コストの増大を招いてしまう。また、医療用に用いるときは、微細構造を得るためには、画素サイズpはより小さいことが望まれる。したがって、図5で示すように、本発明で用いるX線画像検出媒体の画素サイズpは0.01≦p(mm)<0.3が好ましく、さらに医療用においては0.03≦p(mm)≦0.2であることがより好ましい。 【0050】ここで得られるX線画像電気信号は、増幅回路などを経てAD変換された後、デジタルX線画像情報が得られる。このデジタル画像情報を用いて周波数強調処理や画像の縮小処理などの画像処理を行う。また、出力画像のコントラストや特性曲線形状、または画像濃度などをコントロールすることも、本発明で有用な実施態様である。 【0051】上記方法により得られたX線画像は、CRTや液晶画像表示画面上に表示される。さらに、銀塩フィルムや昇華型やインクジェットプリンターなどでプラスチック支持体上にハードコピー画像として出力し、それをシャーカステン上で観察することもできる。この観察時に表示されるX線画像の大きさを、被写体の大きさに対応させる。出力画像は、モノクロ画像表示でも疑似カラーを用いたカラー画像でも差し支えない。 【0052】得られた画像信号は、一時的もしくは永久保存を目的として画像保存することができる。このとき、光磁気ディスクやDVDなどを用いることができる。また回線を通して、画像信号を離れた場所に送信して、その場所で画像表示させて画像診断が行われることも好ましい。 【0053】 【発明の効果】本発明により、位相コントラスト画像を広く医療施設で実現せしめるために、焦点サイズが小さく、充分なX線量を得ることができ、かつ医療診断画像を撮影するために人体に許容できるX線エネルギー範囲を選ぶことができるX線画像撮影方法を提供することができた。さらに、中性子の発生を著しく低減し、人体に影響のない実用的なX線画像撮影方法及びX線画像撮影システムを提供することができた。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001270 【氏名又は名称】コニカ株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年12月1日(2000.12.1) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2002−170699(P2002−170699A) |
| 【公開日】 |
平成14年6月14日(2002.6.14) |
| 【出願番号】 |
特願2000−366836(P2000−366836) |
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