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【発明の名称】 除電器の安全装置
【発明者】 【氏名】土方 康裕

【要約】 【課題】昇圧トランスの2次側の回路条件に依存せず、安定で感度の良い除電器の安全装置を得る。

【解決手段】1次側が交流電源に接続された昇圧トランスと、この昇圧トランスの2次側の一端と同軸ケーブルを介して結合された放電電極と、この放電電極と対向するように配置されるとともに上記昇圧トランスの2次側の他端と接続された接地電極とを具備する除電器の安全装置であって、上記昇圧トランスの2次側の一端と接地間に流れる電流を検出する検出手段と、この検出手段の出力が一定値以上の時絶縁破壊または異常放電を警報する判定部を具備する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 1次側が交流電源に接続された昇圧トランスと、この昇圧トランスの2次側の一端と同軸ケーブルを介して結合された放電電極と、この放電電極と対向するように配置されるとともに上記昇圧トランスの2次側の他端と接続された接地電極とを具備する除電器の安全装置であって、上記昇圧トランスの2次側の一端と接地間に流れる電流を検出する検出手段と、この検出手段の出力が一定値以上の時絶縁破壊または異常放電を警報する判定部を具備する除電器の安全装置。
【請求項2】 上記検出手段によって所定値以上の電流が検出されることにより、上記記昇圧トランスの1次側回路を遮断する短絡時遮断手段を具備することを特徴とする請求項1記載の除電器の安全装置。
【請求項3】 上記検出手段は、コンデンサとパルストランスの一次巻線の直列回路で構成されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の除電器の安全装置。
【請求項4】 上記昇圧トランスと上記コンデンサとを一体モールド化したことを特徴とする請求項3記載の除電器の安全装置。
【請求項5】 上記検出手段は、上記昇圧トランスの2次側の一端と上記同軸ケーブル間に挿入された補助同軸ケーブルの浮遊容量と上記パルストランスの一次巻線の直列回路で構成されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の除電器の安全装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、静電気を帯びた物体の除電を行う除電器の安全装置に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体デバイスは静電気により破壊されやすいため、その保管や製造工程において、静電気を除去する必要がある。このため、従来、上記半導体デバイスの製造工程等においては、図5に示すような原理の除電器が使用されていた。
【0003】図5において、1は商用交流電源(100V)、2は電源スイッチ、3は昇圧トランス、4は高圧ケーブルである。5は、接地電極6および放電電極7から成る除電電極であり、放電電極7は高圧ケーブル4の導体部分を介して昇圧トランス3の一端に接続されている。また、接地電極6は高圧ケーブル4の接地線を介して昇圧トランス3の他端と接続され、接地されている。また、8は、除電電極5と非接触な状態に対向された半導体デバイス等の帯電物体である。
【0004】上記構成において、電源スイッチ2がオン状態になっている時は、商用交流電源1からの出力電圧(交流100V)が昇圧トランス3を介して昇圧され、放電電極7に正または負の高電圧(例えば7kV)が交互に印加される。そして、放電電極7と接地電極6との間にコロナ放電が発生し、除電電極5の周囲の空気が正および負のイオンに交互にイオン化される。そして、帯電物体8の帯電電荷の極性に応じていずれかの極性のイオンが帯電物体8に引き寄せられ、帯電物体8の帯電電荷と再結合し、帯電電荷が中和される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した除電器は放電現象を利用しているので、装置の異常や周辺大気の状態により、異常な放電が起こる可能性がある。放電が異常になると、帯電物体の静電気が有効に除去されないばかりか、帯電物体、すなわち半導体デバイスの破壊を招くおそれがある。これに対する対策としては、従来より、以下のような手法が提案されている。
■昇圧トランス3の2次側と除電電極5との間に高抵抗またはコンデンサを接続し、異常放電による電流のレベルを抑える。
■高圧ケーブル4と放電電極7とを容量的に結合する。
■昇圧トランス3として、リーケージトランスを用いる。リーケージトランスは漏れリアクタンスが大であるので、負荷側、すなわち除電電極5に流れる電流が増大すると、2次側の電圧が低下する。
■2次側回路を流れる電流を監視し、異常になったら1次側回路を遮断する(実開昭62−64135号公報参照)。
【0006】上記■〜■の方法は、異常放電が発生した時に1次側回路、すなわち電源を遮断するものではなく、安全装置として十分であるとは言えない。また、上記■の方法は、異常放電が発生した時に電源が遮断されるが、以下のような欠点を有している。
■昇圧トランスと除電電極との間を感電の心配の無い同軸ケーブルで接続した場合等には、正常動作時に2次側回路を流れる電流レベルが高くなり、異常放電による電流の増加を感度良く検出することが困難になる。
■昇圧トランスの1次側回路の短絡や電源異常等により、過度の電流やサージ電圧が安全装置に印加されると、安全装置そのものが破壊する可能性がある。
【0007】本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、昇圧トランスの2次側の回路条件に依存せず、安定で感度の良い除電器の安全装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、1次側が交流電源に接続された昇圧トランスと、この昇圧トランスの2次側の一端と同軸ケーブルを介して結合された放電電極と、この放電電極と対向するように配置されるとともに上記昇圧トランスの2次側の他端と接続された接地電極とを具備する除電器の安全装置であって、上記昇圧トランスの2次側の一端と接地間に流れる電流を検出する検出手段と、この検出手段の出力が一定値以上の時絶縁破壊または異常放電を警報する判定部を具備することを特徴としている。
【0009】また、請求項2記載の発明にあっては、請求項1記載の発明において、上記検出手段によって所定値以上の電流が検出されることにより、上記昇圧トランスの1次側回路を遮断する短絡時遮断手段を具備することを特徴としている。
【0010】また、請求項3記載の発明にあっては、請求項1または請求項2記載の発明において、前記検出手段はコンデンサ及びパルストランスの1次巻線の直列回路であることを特徴としている。
【0011】また、請求項4記載の発明にあっては、請求項3記載の発明において、前記昇圧トランスと前記コンデンサとを一体にモールド化したことを特徴としている。
【0012】また、請求項5記載の発明にあっては、上記検出手段は、請求項1または請求項2記載の発明において、上記昇圧トランスの2次側の一端と上記同軸ケーブル間に挿入された補助同軸ケーブルの浮遊容量と上記パルストランスの一次巻線の直列回路で構成されたことを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態における除電器の安全装置の構成を示す図であり、図4各部と共通する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。図1において、3aは昇圧トランス3に設けられた混触防止板である。10は電源装置、12は除電電極であり、両者は同軸ケーブル11により接続されている。ここで、高圧ケーブルとして同軸ケーブル11を使用した理由は、クリーンルーム等において人体に感電する危険を回避するためである。
【0014】次に、除電電極12の構成を、その具体的な構造を示す図(図4)を併せて参照しながら説明する。図4において、(A)は正面図、また(B)は、正面図(A)のX−X’方向における断面図である。図1,3に示すように、同軸ケーブル11の中心導体部分の先端部分における所定の長さ分が高圧電極13として使用されている。次に、図4における符号17は、絶縁材料により中空円筒形状に構成された結合リングであり、その表面が真鍮等の導体で被覆されている。そして、該導体には針状の放電電極14が突出している。
【0015】上記結合リング17は所定間隔毎に複数設けられ、その中空部分を絶縁性被覆16で覆われた高圧電極13が貫通している。すなわち、高圧電極13と各放電電極14とは、上述した絶縁部分を介して容量的に結合している。また、18は、高圧電極13および放電電極14が突出した各結合リング17を被覆するモールド部である。また、19は、モールド部18を覆うように設けられた別のモールド部であり、図4に示すような形態で接地電極15が固定されるとともに、除電電極12を一体化して保護する役目を担っている。
【0016】次に、図1に示す電源装置10における昇圧トランス3の1次側に設けられた安全遮断回路20につき説明する。同安全遮断回路20において、21はホトカプラであり、互いに逆極性になるように並列に結合された発光ダイオード22,23、および、ホトトランジスタ24から構成されている。図1に示すラインL1にいずれかの向きに異常操作電流idが流れると、発光ダイオード22,23のいずれかが該異常操作電流idの大きさに対応した発光強度で発光し、ホトトランジスタ24に光電流が流れる。また、ホトトランジスタ24には、図1に示すようにトランジスタ25がダーリントン接続されており、該トランジスタ25のコレクタ端子25Cは直流電源26の正極に接続されている。
【0017】次に、30,40はそれぞれサーキットブレーカ(配線用遮断器)である。サーキットブレーカ30における動作コイル31は、その一端が上記直流電源26の負極に、また、他端が上記トランジスタ25のエミッタ端子25Eに接続されている。動作コイル31は、自身に流れる電流、すなわち、上記ホトカプラ21およびトランジスタ25により増幅された電流の大きさに基づく電磁力を発生し、該電流が所定以上の大きさになると、サーキットブレーカ30の主接点32がオン状態からオフ状態に切り換わる。これにより、昇圧トランス3の1次側回路が遮断される。
【0018】また、サーキットブレーカ40においては、動作コイル41に所定量以上の電流が流れると、接点42がオン状態からオフ状態に切り換えられるようになっている。ここで、正常動作時の昇圧トランス3の1次側電流をi3_1、2次側回路短絡時の同1次側電流をi3_1s とすると、上記所定量の電流、すなわち、サーキットブレーカ40のトリップ電流i40 は、i3_1 < i40 < i3_1s ……(1)
となるように設定されている。すなわち、同軸ケーブルの絶縁破壊等により昇圧トランス3の2次側回路が短絡した場合、接点42がオフ状態になり、昇圧トランス3の1次側回路が遮断される。
【0019】また、サーキットブレーカ30および40の両方がオン状態の時に、サーキットブレーカ30がオフ状態になればサーキットブレーカ40がオフ状態になり、また、サーキットブレーカ40がオフ状態になればサーキットブレーカ30がオフ状態になるように、両サーキットブレーカの接点は機械的に結合されている。すなわち、上述した異常操作電流idの発生および2次側回路短絡のうち、少なくともいずれかが検出されれば、1次側回路が遮断されるようになっている。
【0020】上記構成において、除電電極12の下方に、これと非接触な状態に被除電物体(以後、帯電物体EOと呼ぶ)を対置し、電源スイッチ2をオン状態にしたとする。これにより、商用交流電源1の出力電圧が昇圧トランス3を介して例えば7kVに昇圧された低周波の高電圧が同軸ケーブル11を介して高圧電極13に印加される。そして、該高圧電極13と容量結合された放電電極14と接地電極15との間でコロナ放電が発生し、除電電極12の周囲の空気が正イオンおよび負イオンに交互にイオン化される。このコロナ放電により、昇圧トランス3の2次側回路を環流する放電電流i1が発生する。また、この放電電流i1には、同軸ケーブル11のもれ電流も含まれる。
【0021】ここで、除電電極12に対置された帯電物体EOが正の電荷を帯びていたとすると、上記コロナ放電により発生した負イオンが帯電物体EOに引き寄せられ、帯電物体EOの帯電電荷が中和される。この除電過程において、除電電極12の周囲には正イオンが過剰となり、過剰となった正イオンが接地電極15に引き寄せられる。これにより、昇圧トランス3の2次側回路には除電電流i2が発生する。
【0022】次に、2次側回路に設けられた異常警報回路50につき説明する。51はパルストランスであり、その1次巻線の一端は接地され、他端はコンデンサ58を介して昇圧トランス3の2次巻き線の一端に接続され、これを流れる電流isを監視する。
【0023】パルストランス51の2次側に発生する電流は、ダイオード52、コンデンサ53と抵抗54との並列回路よりなる整流平滑回路ににより直流電圧Esに変換される。55はEsを一定倍増幅する増幅器であり、その出力Eoが絶縁破壊判定部56および異常放電判定部57に導かれる。
【0024】絶縁破壊判定部56は、絶縁破壊が発生したときに得られる増幅器出力Eoのレベルと設定値Eo1とを比較し、絶縁破壊警報出力AL1を発生すると共にホトカプラ21に操作電流idを供給し、サーキットブレーカ30、40を作動させる。即ち、絶縁破壊については1次側電流の増加を監視して作動するサーキットブレーカ40との2重安全構成となっている。
【0025】異常放電判定部57は、異常放電が発生したときに得られる増幅器出力Eoのレベルと設定値Eo2とを比較し、異常放電壊警報出力AL2を発生すると共にホトカプラ21に操作電流idを供給し、サーキットブレーカ30、40を作動させる。
【0026】次に、図3(A)、(B)、(C)の等価回路図に基づき、各異常パターンにおける異常電流検出方法について説明する。各図において、Csはコンデンサ58の容量、V2は2次側電圧である。図3(A)は、高圧電極13と接地電極15が短絡する絶縁破壊のパターンであり、短絡パルス電流i3の一部として容量Csの充電電荷がパルストランス51を流れる。
【0027】図3(B)は、複数の放電電極14(図示では3個)が短絡し、高圧電極との間の容量が増大(3Ca)し、このインピーダンスを介して放電する異常放電パターンであり、短絡パルス電流i4の一部としてとして容量Csの充電電荷がパルストランス51を流れる。正常な場合は、各放電電極から接地電極への放電はランダムに発生し、見かけ上のインピーダンスはきわめて大きいため、放電電流は極めて小さく、異常電流との識別が容易である。
【0028】図3(C)は、接地電位を有する導体60が放電電極14に接近した場合に発生するパターンであり、パルス電流i5の一部として容量Csの充電電荷がパルストランス51を流れる。
【0029】このように、上述した実施例によれば、昇圧トランスの2次巻き線の一端と接地電位間に発生する異常パルス電流(i3 、i4 、i5 )を監視しているので、昇圧トランスの2次側回路を流れる電流(放電電流i1 + 除電電流i2 )を監視する場合に比べて高感度であり、あらゆるパターンの異常放電を検知することができる。また、同様の理由により、安全遮断回路が2次側回路の特性、例えば同軸ケーブル11のもれ電流等の影響を受けることがなく、電源電圧や周波数の変化の影響を受けない安全装置を得ることができる。
【0030】また、電流検出素子としてパルストランスを使用する事により、昇圧トランス3の1次側回路と2次側回路とを絶縁した安全装置とすることができ、装置の信頼性が高い。また、昇圧トランス3の1次側回路を遮断する手段としてサーキットブレーカを使用したため、遮断手段としてリレーやサイリスタ等を使用した安全装置に比べて過電流や過電圧に強く、安全装置としての信頼性が高い。
【0031】また、パルストランス51の1次巻線の流れる電流は、コンデンサ58の容量と比例関係にある。従って、この容量により検出感度を最適に設定することが可能であり、監視の信頼性を向上することができる。
【0032】さらに、図1の点線のブロックで示すように、昇圧トランス3とコンデンサ58とを一体モールド59とすることにより、高圧部の保護が可能であり、安全性の向上に貢献することができる。
【0033】図2は、本発明を適用した他の実施例を示す。この実施例では、昇圧トランス3の2次側の一端と同軸ケーブル11の間にシールド被覆を接地しない補助同軸ケーブル61が挿入さ、この補助同軸ケーブル61の芯線とシールド被覆の浮遊容量Csとパルストランス51の一次巻線の直列回路により昇圧トランス3の2次側の一端と接地間に流れる電流を検出するようにしたものである。
【0034】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明によれば、昇圧トランスの2次側の一端と接地間に流れる電流を検出することにより昇圧トランスの1次側回路を遮断するようにしたので、昇圧トランスの2次側の回路条件に依存せず、安定で感度の良い除電器の安全装置を得ることができる。従って、異常放電を早期にかつ確実に停止させ、帯電物体を破壊等から守ることができる。
【出願人】 【識別番号】000232357
【氏名又は名称】横河電子機器株式会社
【出願日】 平成12年11月30日(2000.11.30)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外6名)
【公開番号】 特開2002−170697(P2002−170697A)
【公開日】 平成14年6月14日(2002.6.14)
【出願番号】 特願2000−365298(P2000−365298)