| 【発明の名称】 |
正極活物質,その製造方法およびリチウムイオン二次電池 |
| 【発明者】 |
【氏名】竹内 肇
【氏名】田中 弘真
【氏名】白川 康博
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| 【要約】 |
【課題】電池の正極材料として用いた場合に高い安全性と優れた容量特性とを兼ね備えた二次電池を実現できる正極活物質,その製造方法およびリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】一般式Li1+xNi1−y−zCoyAlzO2(但し、0≦x≦0.1,0.1≦y≦0.4,0.02≦z≦0.1)で表わされる組成を有する複合酸化物粒子から成り、この複合酸化物粒子の粉末X線回折パターンにおける(110)面と(018)面とのブラッグ角の差が、[0.29×(y+z)+0.172]度以上であり、10%累積頻度粒径が1μm以上であることを特徴とする正極活物質である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式Li1+xNi1−y−zCoyAlzO2(但し、0≦x≦0.1,0.1≦y≦0.4,0.02≦z≦0.1)で表わされる組成を有する複合酸化物粒子から成り、この複合酸化物粒子の粉末X線回折パターンにおける(110)面と(018)面とのブラッグ角の差が、[0.29×(y+z)+0.172]度以上であり、10%累積頻度粒径が1μm以上であることを特徴とする正極活物質。 【請求項2】 活物質構成成分を含有した金属塩を分散媒中に分散せしめ、スラリー中の金属塩の99%累積頻度粒径が5μm以下である金属塩スラリーを調製する工程と、上記金属塩スラリーを噴霧乾燥して凝集粒子を調製する工程と、上記凝集粒子を焼成することにより、10%累積頻度粒径が1μm以上である活物質粒子を形成する工程とを備えることを特徴とする正極活物質の製造方法。 【請求項3】 前記金属塩が、分散媒に対して不溶性または難溶性を有することを特徴とする請求項2記載の正極活物質の製造方法。 【請求項4】 前記金属塩スラリーを調製する工程において、金属塩スラリーを10MPa以上の圧力で分散ノズルに供給し、この分散ノズルを乱流状態で流れる金属塩スラリーによって発生する衝撃波や超音波振動により金属塩を粉砕することを特徴とする請求項2記載の正極活物質の製造方法。 【請求項5】 アルミニウム塩の懸濁液中においてニッケル成分とコバルト成分との共沈反応を進行せしめてニッケルコバルト複合水酸化物を生成する工程と、得られたニッケルコバルト複合水酸化物にリチウム塩を添加して焼成することにより、10%累積頻度粒径が1μm以上である活物質粒子を形成する工程とを備えることを特徴とする正極活物質の製造方法。 【請求項6】 一般式Li1+xNi1−y−zCoyAlzO2(但し、0≦x≦0.1,0.1≦y≦0.4,0.02≦z≦0.1)で表わされる組成を有する複合酸化物粒子から成り、この複合酸化物粒子の粉末X線回折パターンにおける(110)面と(018)面とのブラッグ角の差が、[0.29×(y+z)+0.172]度以上であり、10%累積頻度粒径が1μm以上である正極活物質を含有する正極と、前記正極とセパレータを介して配置された負極と、前記正極、前記セパレータおよび前記負極を収納する電池容器と、前記電池容器内に充填された非水電解液とを具備することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は正極活物質,その製造方法およびその活物質を用いたリチウムイオン二次電池に係り、特に電池の正極材料として用いた場合に高い安全性と優れた容量特性とを兼ね備えた二次電池を実現できる正極活物質,その製造方法およびリチウムイオン二次電池に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、比較的に安全な負極材料が開発され、さらに分解電圧を高めた非水電解質の開発が進み、高電圧の非水電解液二次電池が実用化されている。特に、リチウムイオンを用いた二次電池は、放電電位が高く、かつ軽量でエネルギー密度が高いという優れた特長から、携帯電話,ノート型パソコン,カメラ一体型ビデオなどの機器電源としてその需要が急速に拡大している。 【0003】このリチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な正極および負極と、リチウム塩を非水溶媒に溶解した非水電解液とから構成されている。 【0004】上記リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、例えばLiCoO2などのリチウムコバルト複合酸化物,LiNiO2などのリチウムニッケル複合酸化物,LiMn2O4などのリチウムマンガン複合酸化物などの金属酸化物が一般に用いられる。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記リチウムコバルト複合酸化物などの金属酸化物を用いた電池においては、他の2つの複合酸化物を使用した電池と比較して放電電位が高くなり、非水電解液が分解しない電位範囲における放電容量は理論容量の約1/2程度に低下してしまう欠点がある。また希少資源であるコバルトを材料としているため、製造原価が高くなるという問題点もあった。 【0006】一方、リチウムニッケル複合酸化物を用いた電池においては、理論容量が大きく適度な放電電位が得られる反面、電池の安定性が不十分であるという問題があった。 【0007】すなわち、電池の充電状態においては、正極活物質からの脱酸素反応や電解液の酸化反応が起こるが、これらの反応は発熱反応であり、かつ温度が高くなるに従って反応速度が大きくなり発熱量も急増する。したがって特定の温度で上記発熱反応が急激に進行する熱暴走が発生し易く、電池の安全性が損われ易い。この傾向は、充電状態における活物質を示差熱分析(DTA)や示差走査熱量測定(DSC)などを用いて熱分析することにより把握することができる。上記のよううに、充電状態の活物質の熱分析における上記反応に起因する発熱ピークを与える温度(発熱ピーク温度)が高いほど電池の安全性は高いと評価できる。 【0008】しかしながら、従来の正極活物質の発熱ピーク温度は160〜190℃程度と低く、十分に高い安全性を備えた電池は得られない。一方、発熱ピーク温度が300〜350℃程度である正極活物質は得られているが、電池容量特性が大幅に低下してしまう問題点があった。 【0009】一方、上記発熱反応によって阻害され易い電池の安全性を改善する目的で、正極活物質を構成するNi成分の一部をMn,Co,Alなどの金属元素で置換することも試行されている。しかしながら、これらの置換元素の導入により電池の安全性は向上するが、電池容量の低下が起こり易い問題点があった。 【0010】本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、特に電池の正極材として用いた場合に高い安全性と優れた容量特性とを兼ね備えた二次電池を実現することが可能な正極活物質,その製造方法およびその活物質を用いたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。 【0011】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するためには、本発明者らは種々の組成を有する正極活物質を、各種物理化学的製法を使用して調製し、得られた正極活物質の組成,粒度分布や各構成成分元素の混合状態が電池の安全性や容量特性に及ぼす影響を比較検討した。その結果、上記構成成分元素の置換の度合を適正に制御するとともに、活物質粒子の粒径分布をより適正な範囲に調整したときに、優れた電池特性が得られることが判明した。 【0012】具体的には、一般式Li1+xNi1−y−zCoyAlzO2(但し、0≦x≦0.1,0.1≦y≦0.4,0.02≦z≦0.1)で表わされる組成を有する複合酸化物粒子から成り、この複合酸化物粒子の粉末X線回折パターンにおける(110)面と(018)面とのブラッグ角の差が、所定値以上であり、10%累積頻度粒径が1μm以上である正極活物質が、安全性と容量特性とを共に満足する二次電池を実現できるという知見を得た。 【0013】また正極活物質を構成する原料成分の混合体を噴霧乾燥したり、衝撃波や超音波によって原料混合体を粉砕したり、原料懸濁液で共沈反応を進行させたりすることによって、活物質原料成分の混合状態が改善されるとともに、活物質の粒度分布が適正な正極活物質が得られるという知見も得た。 【0014】本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。すなわち、本発明に係る正極活物質は、一般式Li1+xNi1−y−zCoyAlzO2(但し、0≦x≦0.1,0.1≦y≦0.4,0.02≦z≦0.1)で表わされる組成を有する複合酸化物粒子から成り、この複合酸化物粒子の粉末X線回折パターンにおける(110)面と(018)面とのブラッグ角の差が、[0.29×(y+z)+0.172]度以上であり、10%累積頻度粒径が1μm以上であることを特徴とする。 【0015】また、本発明に係る正極活物質の製造方法は、活物質構成成分を含有した金属塩を分散媒中に分散せしめ、スラリー中の金属塩の99%累積頻度粒径が5μm以下である金属塩スラリーを調製する工程と、上記金属塩スラリーを噴霧乾燥して凝集粒子を調製する工程と、上記凝集粒子を焼成することにより、10%累積頻度粒径が1μm以上である活物質粒子を形成する工程とを備えることを特徴とする。 【0016】上記製造方法において、前記金属塩が、分散媒に対して不溶性または難溶性を有することが好ましい。また、前記金属塩スラリーを調製する工程において、金属塩スラリーを10MPa以上の圧力で分散ノズルに供給し、この分散ノズルを乱流状態で流れる金属塩スラリーによって発生する衝撃波や超音波振動により金属塩を粉砕することが好ましい。 【0017】さらに本発明に係る正極活物質の他の製造方法は、アルミニウム塩の懸濁液中においてニッケル成分とコバルト成分との共沈反応を進行せしめてニッケルコバルト複合水酸化物を生成する工程と、得られたニッケルコバルト複合水酸化物にリチウム塩を添加して焼成することにより、10%累積頻度粒径が1μm以上である活物質粒子を形成する工程とを備えることを特徴とする。 【0018】また、本発明に係るリチウムイオン二次電池は、一般式Li1+xNi1−y−zCoyAlzO2(但し、0≦x≦0.1,0.1≦y≦0.4,0.02≦z≦0.1)で表わされる組成を有する複合酸化物粒子から成り、この複合酸化物粒子の粉末X線回折パターンにおける(110)面と(018)面とのブラッグ角の差が、[0.29×(y+z)+0.172]度以上であり、10%累積頻度粒径が1μm以上である正極活物質を含有する正極と、前記正極とセパレータを介して配置された負極と、前記正極、前記セパレータおよび前記負極を収納する電池容器と、前記電池容器内に充填された非水電解液とを具備することを特徴とする。 【0019】本発明に係る正極活物質の組成を示す一般式Li1+xNi1−y−zCoyAlzO2において、Liの過剰添加比率xを0≦x≦0.1と規定した理由は、下記の通りである。x値が負の場合には、金属イオンの配列が乱れ、岩塩構造を有する成分が形成され易く、所望の容量が得られないからである。一方、x値が0.4を超えた場合にも、容量が低下してしまう。 【0020】一方、CoおよびAlは活物質の発熱ピーク温度を高め電池の安全性を高めるために添加される。Coの添加比率yの範囲を0.1≦y≦0.4と規定したのは、y値が0.1未満では、電池の安全性の確保が困難になる一方、y値が0.4を超えると容量の利得が見出せないためである。また、Alの添加比率zの範囲を0.02≦z≦0.1と規定したのは、z値が0.02未満では安全性の確保が困難になる一方、0.1を超えると容量が低下してしまうためである。 【0021】また、本発明に係る正極活物質では、構成成分がより微細で均一に混合した状態を指向するため、活物質を構成する複合酸化物粒子の粉末X線回折パターンにおける(110)面と(018)面とのブラッグ角の差(Δ)が、CoおよびAlの成分比率y,zとの関連をもって[0.29×(y+z)+0.172]度以上の範囲に規定される。 【0022】上記ブラッグ角はCuX線を用いたX線回折装置を用いて測定される。上記ブラッグ角の差(Δ)は、Co成分およびAl成分がLi−Ni組織内に均一に置換されている度合を表わす指標であり、Co,Al成分が組織内に一定量占めた場合に、上記範囲の値をとり得るものである。 【0023】なお、本発明の活物資組成のように、コバルトおよびアルミニウムでニッケルを置換すると、a軸が縮みc軸が伸びることが知られている。粉末X線回折から求める格子定数は、測定温度、光学系の機械精度、解析に用いるパラメータ依存性が強い。一方、本発明で規定するブラッグ角の差Δはa軸c軸比を直接的に反映し、かつ測定条件依存性や解析パラメータ依存性が殆どないため、CoおよびAl成分の混合状態を正確に把握することが可能である。そして、ブラッグ角の差Δが上記範囲であるときに、各成分元素の置換状態が良好になり、Niと酸素との結合力が高まり結晶の安全性が改善されるため、電池の安全性が増加するとともに、160mAh/g以上の高い容量特性が得られる。 【0024】また、本発明に係る正極活物質の10%累積頻度粒径(D10値)は1μm以上とされる。この10%累積頻度粒径が1μm以上であるリチウムイオン二次電池用正極活物質は微粒子が少ないため電池内で電解液との反応が制限され、発熱ピーク温度が220℃以上、好ましくは240℃以上となるような、安全性が高い二次電池を実現することができる。 【0025】なお、本発明で規定する10%累積頻度粒径(D10値)は、マイクロトラック法で粒度分布を測定し、粒径が小さい粒子からその体積を積算して10%に達した粒子の粒径を示すものとする。また、D99値は積算した粒子の体積が99%に達した際の粒子の粒径を示すものである。 【0026】粒度分布の測定は、以下のようにして実施するものとする。すなわち、レーザ光散乱型粒度分布計(例えば、LEEDS&NOTHRUP社製のMICROTRAC II PARTICLE−SIZE ANALYZER)を用いて、粒度分布を測定する。これは測定原理として粒子にレーザ光を当てたときに起こる光の散乱現象を利用している。散乱光の強度および散乱角度は粒子の大きさに大きく依存するから、この散乱光の強度および散乱角度を光学検出器で測定し、これをコンピュータ処理することによって、粉体の粒度分布が得られる。 【0027】上記10%累積頻度粒径(D10値)の測定に際しては、湿式の試料を測定できるレーザ光散乱型粒度分布計が好適に使用できる。具体的には、活物質を適当な溶媒中に懸濁させてスラリーを作製し、これを超音波で十分分散させた後測定することが好ましい。超音波装置の形式は、超音波発振機より連結された金属製のチップが直にスラリーに浸漬されている構造のものが好ましい。この構造は、スラリーに直接超音波が伝達されるために効率よく分散できること、分散の再現性に優れている利点がある。 【0028】超音波出力は100W以上であることが望ましい。100W未満では時間をかけて超音波を照射しても力学的エネルギーが不足しており微細構造間の凝集を破壊することができない。逆に200W以上のエネルギーを投入するとスラリー温度が急速に上昇し、分散状態の再現性を得ることが困難である。 【0029】超音波振動子の振動数は20kHz程度のものが用いられる。特に振動数を追尾することが可能な制御系を備えていることが好ましい。 【0030】スラリー濃度は、0.001−1質量%であることが望ましい。これ以上の濃度では粒子同士の会合確率が高くなり破砕された微粒子が再凝集を起こし正確な破砕の状況が把握できない。またこの範囲未満の濃度では粒子による超音波エネルギーの吸収効率が低下する他、散乱を光検知する測定装置の制約でS/N比が低下し、ノイズが増加する。 【0031】上記の超音波照射時間は5分以内であることが望ましい。これ以上の照射はスラリー温度が上昇し、超音波の振幅を変化させるため再現性が乏しくなる。 【0032】上記のような均一な組織形態および粒径分布を有するリチウムイオン二次電池用正極活物質を得るためには、活物質成分となるリチウム塩,ニッケル塩,コバルト塩,アルミニウム塩などの金属塩を分散媒中に分散せしめて金属塩スラリーを調製し、このスラリーを噴霧乾燥したり、共沈反応により処理して成分元素の混合状態を適正に制御することが重要である。そして得られた生成物を焼成することにより、本発明の正極活物質が得られる。 【0033】上記リチウム塩としては炭酸リチウム,水酸化リチウムが好適に用いられる。また、ニッケル塩としては水酸化ニッケル,酸化ニッケル,炭酸ニッケル,シュウ酸ニッケルなどが用いられる。コバルト塩としては、CoO,Co2O3,Co3O4の酸化物のほか水酸化コバルトあるいはニッケルと複合化されたニッケルコバルト複合水酸化物が好適に使用できる。また、アルミニウム塩としてはアルミナ,アルミナの水和物,水酸化アルミナが用いられる。 【0034】また、金属塩スラリーに用いられる分散媒としては、水のほか各種アルコール,ケトン系溶媒などの有機溶媒を用いることができる。この際、金属塩が分散媒に対して不溶性または難溶性を有するような組合せにすることが望ましい。 【0035】本発明に係る正極活物質を製造する際に構成元素の混合状態を制御する具体的な方法として、以下のような方法を適用することができる。すなわち、活物質構成成分を含有した金属塩を分散媒中に分散せしめ、スラリー中の金属塩の99%累積頻度粒径(D99)が5μm以下である金属塩スラリーを調製する工程と、上記金属塩スラリーを噴霧乾燥して凝集粒子を調製する工程と、上記凝集粒子を焼成する方法が適用できる。 【0036】上記99%累積頻度粒径(D99)の測定機器としては、湿式の試料についても使用できる前記のレーザ光散乱型粒度分布計を使用することができる。上記のように金属塩スラリーを構成する金属塩粒子の99%累積頻度粒径(D99)を5μm以下と微粒子化することにより、焼成時に成分元素の拡散が容易迅速に進行し、均一な活物質組成体が得られる。上記D99値が5μmを超えるように粗大な金属塩を含有すると、活物質における成分元素の均一で微細な混合状態が得られない。 【0037】また、金属塩スラリーを構成する金属塩粒子の粒度調節を効果的に行うためには、金属塩混合スラリーを100MPa以上の圧力で分散ノズル部に送り、この分散ノズル部で起こる乱流による衝撃波や超音波振動によって金属塩を粉砕することが好適である。上記金属塩スラリーの分散ノズル部への送給圧力が100MPa未満の場合には、金属塩の粉砕効果が不十分となり所定のD99値が得にくくなる。粉砕された金属塩粒子表面は反応活性が大幅に高まり、焼成時の合成反応が促進されるため、上記粉砕操作は極めて有効である。 【0038】このようにして得られた金属塩スラリーを噴霧乾燥することにより凝集粒子状の均一組成物を得ることができる。噴霧乾燥法としては、乾燥用気流中で回転するディスク上に金属塩スラリーを滴下して分散させるディスク方式あるいはノズル方式のスプレードライを採用することができる。この凝集粒子状の均一組成物を焼成することにより所望のリチウムイオン二次電池用正極活物質が得られる。 【0039】本発明に係る正極活物質の他の製造方法として、アルミニウム塩の懸濁液中での共沈反応によって得られるニッケルコバルト複合水酸化物にリチウム塩を添加して焼成する方法も採用することができる。すなわち、アルミニウム塩の懸濁液中においてニッケル成分とコバルト成分との共沈反応を進行せしめてニッケルコバルト複合水酸化物を生成する工程と、得られたニッケルコバルト複合水酸化物にリチウム塩を添加して焼成することにより、10%累積頻度粒径が1μm以上である活物質粒子を形成する工程とを備える製造方法によって製造することもできる。 【0040】上記製造方法において、アルミニウム塩としては、アルミナ,各種のアルミナ水和物,水酸化アルミナを用いることができる。また、リチウム塩としては、炭酸リチウム,水酸化リチウム等が用いられる。さらに共沈プロセスは公知のものを用いることが可能であり、例えば、ニッケルコバルトの水溶性塩の水溶液に苛性ソーダ等のアルカリ成分を加え共沈反応を起こすことが可能である。得られた沈殿物を濾別・乾燥することで、所望組成を有する複合水酸化物を得る。この複合水酸化物にリチウム塩を添加して焼成することにより、本発明の正極活物質が調製される。 【0041】なお、酸素分圧の高い雰囲気中で焼成を行うことが好ましい。酸素分圧としては50−100%、さらに好ましくは80−100%が好ましい。また焼成温度は650−800℃、さらに好ましくは、700−780℃が好ましい。また、焼成後の降温速度は1℃/分以下であることが望ましい。 【0042】本発明に係るリチウムイオン二次電池は、上記のように調製した正極活物質および導電助剤をバインダー等とともに混合・加圧成形して保持した正極と、負極活物質を有する負極とを、セパレータおよび非水電解液を介して電池缶内に対向するように配置して構成される。 【0043】ここで上記導電助剤としては、例えばアセチレンブラック,カーボンブラック,黒鉛等が使用される。また、バインダーとしては、例えばポリテロラフルオロエチレン(PTFE)、ポリふっ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等を使用することができる。 【0044】また、上記正極は、例えば前記正極活物質およびバインダーを適当な溶媒中に懸濁せしめ、この懸濁物を集電体に塗布・乾燥した後にプレス圧着することにより製作される。ここで上記集電体としては、例えば、アルミニウム箔,ステンレス鋼箔,ニッケル箔等を用いることが好ましい。 【0045】なお、上記正極用電極を作製するに際して、活物質と電解液との接触状態を制御する観点から、電極シート中の活物質に適当量および適正サイズの空孔を設けておくことが好ましい。すなわち空孔が全く存在しない場合には、電解液と活物質との接触割合が小さくなり高温特性は向上する反面、電池反応そのものが起こりにくくなり、電池のレート特性が低下する。逆に、空孔率が過大になると、電解液と活物質との接触割合が大きくなり、電池反応が起こり易くなり、電池の容量特性、特にレート特性は向上する反面、高温特性は維持できない傾向がある。 【0046】上記空孔率は上記観点から5〜80%の範囲に設定されるが、10〜60%の範囲がより好ましい。さらには10〜50%の範囲が好ましい。上記空孔率は、集電体表面に活物質材を塗布した後に加圧成形して電極を形成する際の成形圧力を調整することにより活物質層の分散度合いを制御して調整できる。また上記空孔率は、活物質材に添加するバインダー量を適正に調整することによっても調整できる。すなわち、バインダー量が増加すると空孔率は減少し電池反応自体が起りにくくなる一方、バインダー量が減少すると空孔率が増加し、電池の高温特性が維持できない傾向が確認されている。なお、適正なバインダー量は、バインダーの種類や正極活物質の粒径等によって異なり、一律に規定することは困難である。上記活物質の空孔率および空孔分布は、例えば水銀注入式空孔分布測定装置(オートポア)等によって測定することが可能である。 【0047】一方、負極の活物質としては、例えばリチウムイオンを吸蔵・放出する炭素物質やカルコゲン化合物を含む物質や軽金属から成る活物質を使用することができる。特にリチウムイオンを吸蔵・放出する炭素物質またはカルコゲン化合物を含む負極を使用することにより、二次電池のサイクル寿命などの電池特性が向上するため、特に好ましい。 【0048】ここで上記リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素物質としては、例えばコークス,炭酸繊維,熱分解気相炭素物質,黒鉛,樹脂焼成体,メソフェーズピッチ系炭素繊維(MCF)またはメソフェーズ球状カーボンの焼成体等が使用される。特に、重質油を温度2500℃以上で黒鉛化した液晶状のメソフェーズピッチ系炭素繊維,メソフェーズ球状カーボンを用いることにより、電池の電極容量を高めることができる。 【0049】また前記炭素物質は、特に示差熱分析で700℃以上に、より好ましくは800℃以上に発熱ピークを有し、X線回折(XRD)による黒鉛構造の(101)回折ピーク(P101)と(100)回折ピーク(P100)との強度比P101/P100が0.7〜2.2の範囲内にあることが望ましい。このような回折ピークの強度比を有する炭素物質を含む負極は、リチウムイオンの急速な吸蔵・放出が可能であるため、特に急速充放電を指向する前記正極活物質を含む正極との組合せが有効である。 【0050】さらに前記リチウムイオンを吸蔵・放出するカルコゲン化合物としては、二硫化チタン(TiS2)、二硫化モリブデン(MoS2)、セレン化ニオブ(NbSe2)等を使用することができる。このようなカルコゲン化合物を負極に用いると、二次電池の電圧は低下するものの負極の容量が増加するため、二次電池の容量が向上する。さらに負極内でのリチウムイオンの拡散速度が大きくなるため、特に本発明で使用する正極活物質との組合せが有効である。 【0051】また、負極に用いる軽金属としては、アルミニウム,アルミニウム合金,マグネシウム合金,リチウム金属,リチウム合金などが例示できる。 【0052】さらに、リチウムイオンを吸蔵・放出する活物質を含む負極は、例えば前記負極活物質および結着剤を適当な溶媒に懸濁し、この懸濁物を集電体に塗布し、乾燥した後にプレス圧着することにより製作される。上記集電体としては、例えば銅箔,ステンレス箔,ニッケル箔などから形成したものを用いる。またバインダーとしては例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリふっ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用することができる。 【0053】また上記セパレータは、例えば合成樹脂製不織布、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルム等から形成される。 【0054】非水電解液としては、非水溶媒に電解質(リチウム塩)を溶解させた溶液が使用される。 【0055】非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)等の環状カーボネートやジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)等の鎖状カーボネートやジメトキシエタン(DME)、ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン等の鎖状エーテルやテトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン(2−MeTHF)等の環状エーテルやクラウンエーテル、γ−ブチロラクトン(γ−BL)等の脂肪酸エステルやアセトニトリル(AN)等の窒素化合物やスルホラン(SL)やジメチルスルホキシド(DMSO)等の硫化物を例示できる。 【0056】上記非水溶媒は単独で使用しても、2種以上混合した混合溶媒として使用してもよい。特に、EC、PC、γ−BLから選ばれる少なくとも1種からなる物や、EC、PC、γ−BLから選ばれる少なくとも1種とDMC、MEC、DEC、DME、DEE、THF,2−MeTHF、ANから選ばれる少なくとも1種とからなる混合溶媒を用いることが望ましい。 【0057】また、負極に前記リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素物質を含む負極活物質を用いる場合に、負極を備える二次電池のサイクル寿命を向上させる観点から、ECとPCとγ−BL、ECとPCとMEC、ECとPCとDEC、ECとPCとDEE、ECとAN、ECとMEC、PCとDMC、PCとDEC、またはECとDECとからなる混合溶媒を用いることが特に好ましい。 【0058】電解液としては、例えば過塩素酸リチウム(LiClO4)、六ふっ化リン酸リチウム(LiPF6)、ほうふっ化リチウム(LiBF4)、六ふっ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルフォン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルフォニルイミドリチウム[LiN(CF3SO2)2]等のリチウム塩が例示できる。特に、LiPF6、LiBF4、LiN(CF3SO2)2を用いると導電性や安全性が向上するため望ましい。 【0059】これらの電解液の非水溶媒に対する溶解量は0.1〜3.0モル/lの範囲に設定することが望ましい。電解液濃度が3.0モル/lを超える高リチウム塩濃度では、正極活物質と電解液との反応が高温度域で活発となり、電池の安全性が低下するために好ましくない。 【0060】上記構成に係る正極活物質,その製造方法およびその活物質を用いたリチウムイオン二次電池によれば、活物質における各構成成分の混合状態が改善され、かつ活物質の粒径が所定範囲に規定されているため、電池の正極材料として使用された場合に、高い安全性と優れた容量特性とを兼ね備えた二次電池を実現することが可能になる。 【0061】 【発明の実施の形態】次に本発明の実施形態について以下に示す実施例を参照して、より具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨および請求の範囲に記載された要素によって規定される範囲を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することができる。 【0062】下記に示すような手順に従って、図1に示すような各実施例および比較例に係る正極評価用リチウムイオン二次電池を作成し、その特性を比較評価した。 【0063】[正極活物質の調製] 実施例1正極活物質組成が表1左欄に示す組成となるように、0.98モルの(Ni0.9Co0.1)(OH)2と0.02モルのベーマイト[AlO(OH)]と、0.05モルのLi2CO3とを純水中に分散せしめ、固形分濃度が15質量%の金属塩スラリーを調製した。この金属塩スラリーを100MPaに加圧した状態で湿式粉砕機(ナノメーカー:ナノマイザー株式会社製)に供給して金属塩を粉砕し、その粒度を調整した。 【0064】ここで上記湿式粉砕機は、対向する一対の噴射ノズルを備え、この噴射ノズルより所定圧力で金属塩スラリーを超高速で噴射させ、対向して噴射された金属塩スラリーの衝突による衝撃力によって金属塩を粉砕する装置である。そして、この湿式粉砕機による粉砕処理を1回実施した後の金属塩の50%累積頻度粒径(D50値)および99%累積頻度粒径(D99値)を、LEEDS&NORTHRUPのマイクロトラックIIにて測定したところ、D50値は1.0μmであり、D99値は5.0μmであった。 【0065】この粉砕処理した金属塩スラリーをスプレードライ装置により噴霧乾燥して凝集粒子を調製し、得られた凝集粒子を、さらに温度750℃で10時間焼成した後に、毎分1℃の降温速度で冷却することにより、実施例1に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質を調製した。 【0066】実施例2表1に示す活物質組成となるように各金属塩を配合する一方、湿式粉砕機による粉砕処理を5回実施した点以外は、実施例1と同一条件で処理することにより、実施例2に係る正極活物質を調製した。 【0067】実施例3表1に示す活物質組成となるように各金属塩を配合する一方、湿式粉砕機による粉砕処理を10回実施した点以外は、実施例1と同一条件で処理することにより、実施例3に係る正極活物質を調製した。 【0068】実施例40.02モルのベーマイト[AlO(OH)]を1リットルの純水中に分散・撹拌した後に、さらに、0.88モルの硝酸ニッケルと0.1モルの硝酸コバルトを添加し十分に撹拌して金属塩スラリーを調製した。この金属塩スラリーに0.1M濃度の苛性ソーダ溶液をpH値が9になるまで緩速度で添加し、共沈反応を進行させてNi−Co複合水酸化物の沈殿を生成させた。次に、沈殿生成物を濾別し、洗浄乾燥した。得られた乾燥粉体は、Ni:Co:Alの金属成分比(モル比)が0.88:0.10:0.02である複合酸化物であった。この複合酸化物に水酸化リチウムを添加し、さらに温度700℃で10時間焼成した後に、毎分1℃の降温速度で冷却することにより、実施例4に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質を調製した。 【0069】比較例1実施例3で調製した正極活物質を、さらに遊星ボールミルを用いて粉砕し、比較例1に係る正極活物質とした。この比較例1に係る活物質のD10値は0.9μmであった。 【0070】比較例2正極活物質の金属組成比が表1に示すようにLi:Ni:Co:Al=1.0:0.90:0.09:0.01となるように金属塩を配合した点以外は、実施例4と同一条件で処理することにより、比較例2に係る正極活物質を調製した。 【0071】比較例3正極活物質の金属組成比が表1に示すようにLi:Ni:Co:Al=1.0:0.48:0.41:0.11となるように金属塩を配合し、温度720℃で10時間焼成した後に、毎分1℃の降温速度で冷却することにより、比較例3に係る正極活物質を調製した。 【0072】比較例4実施例1において湿式粉砕機による粉砕処理を実施しない点以外は、実施例1と同一条件で処理することにより、比較例4に係る正極活物質を調製した。 【0073】比較例5密閉反応容器に4.0mol/l濃度の水酸化ナトリウム溶液420mlを入れ窒素ガスを充満させる。Ni:Co:Alのモル比が8:1:1となるように2.0mol/l濃度の硝酸ニッケル、硝酸コバルトおよび硝酸アルミニウムの水溶液を混合し、この混合水溶液400mlを窒素ガス流しながら室温下30分かけて滴下する。得られた反応液を窒素雰囲気下で濾過、水洗後、水に懸濁させることによりNi0.8Co0.1Al0.1の塩基性塩スラリーを得た。このスラリー中の(Ni+Co+Al)に対し原子比がLi/(Ni+Co+Al)=1.05に相当する量の3mol/l水酸化リチウム水溶液を前記スラリーに添加させた後、窒素を充満させたクローズドシステム噴霧乾燥機により噴霧乾燥を行った。得られた噴霧乾燥品をアルミナ製ボードに入れ管状炉(山田電気製TF−630型)にて窒素流通下350℃で1時間予備焼成後、酸素流通下725℃で15時間焼成し比較例5に係る正極活物質を調製した。得られた焼成物の化学組成は、Li1.03Ni0.799Co0.103Al0.097O2であったが、一部にLi−Al−O相が混入していた。 【0074】比較例6LiNi0.85Al0.05Co0.10O2なる組成を有する活物質が得られるように、水酸化リチウム、水酸化ニッケル、水酸化アルミニウムおよび水酸化コバルトを所定のモル比で混合し、大気中650℃で20時間焼成後、酸素中750℃で20時間焼成して比較例6に係る正極活物質を調製した。このようにして得られた正極活物質の結晶が単一相であることをX線回折図形より確認した。 【0075】比較例7コバルト塩とアルミニウム塩を含むニッケル塩水溶液として硝酸ニッケルと硝酸コバルト、硝酸アルミニウムの混合した水溶液を、錯化剤としてアンモニウムイオン供給体である硫酸アンモニウム水溶液を、アルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ用い、次のように正極活物質を調製した。 【0076】すなわち、反応槽内に、塩濃度が100mS/cmに調整され、かつ0.6mol/lの硫酸コバルト、0.3mol/lの硫酸アルミニウムを含む2.0mol/lの硫酸ニッケル水溶液を300ml/min、また、6mol/lの硫酸アンモニウム水溶液を150ml/min、同時に連続投入した。一方、10mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を、反応槽内のpHが自動的に12.5に維持されるように投入した。反応槽内の温度は45℃に維持し、撹拌機により常に撹拌した。生成した水酸化ニッケルは、オーバーフロー管からオーバーフローさせて取り出し、水洗、脱水、乾燥処理を実施することにより、3元素(Al−Co−Ni)共沈水酸化物を得た。 【0077】次に、水酸化リチウム・1水和物と上記のAl−Co−Ni共沈水酸化ニッケルとを(Li:(Ni+Co+Al))=1.03:1.00のモル比で混合し、酸素中、650℃で4時間加熱した後、酸素中、750℃で10時間反応させてLi(Ni0.70Co0.20Al0.10)O2(アルミニウム−コバルト−ニッケル)酸リチウムから成る比較例7に係る正極活物質を合成した。得られた正極活物質にはLi2SO4ピークが観察され、単相状態は得られなかった。 【0078】比較例8水酸化リチウム、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、水酸化アルミニウムをモル比で105:80:15:5となるようにそれぞれ計量した後、ボールミルで粉砕混合し、得られた混合粉末を1トン/cm2の圧力下で加圧成形し、得られた成形体を焼成用原料とした。 【0079】この原料を700℃で10時間、空気気流中で焼成(1次焼成)した。得られた焼成物と純水とを40:60の重量比で混合した後、湿式ビーズミルで2時間解粒分散して平均粒子径が0.4ミクロンのスラリーとし、噴霧乾燥機により球状に乾燥造粒した。この造粒粉を、850℃で2時間、酸素気流中で焼成(2次焼成)し、臼式粉砕機で解粒した後、スクリーン式分級機で整粒することにより、比較例8に係る正極活物質を調製した。 【0080】上記のように調製した各実施例および比較例に係る正極活物質について、粉末X線回折装置(Rint2000,リガク株式会社製)を用い、(110)面と(018)面とのブラッグ角の差Δを測定した。また、各正極活物質のNMP0.05%スラリーを作製し、出力100Wで振動子振動数20Hzの超音波を1分照射した後に前記マイクロトラックを使用して活物質の10%累積頻度粒径を測定した。各測定結果を表1に示す。 【0081】[正極電極の作製]上記の各正極活物質粉末と導電助剤であるアセチレンブラックとバインダーとしてのテフロン(登録商標)粉末とを重量比80:17:3の割合で混合してそれぞれ正極合剤とした。次に各正極合剤を集電体(ステンレス製鋼)に貼り付けることにより、10mm角×0.5mmの正極をそれぞれ調製した。以降の電池作成作業は、アルゴンガスを充填したグローブボックス内で実施した。 【0082】[負極の作製]リチウムメタル箔をステンレス鋼製の集電帯に一体に貼り付けることにより、それぞれ負極を作成した。 【0083】[参照電極の作製]リチウムメタル箔をステンレス鋼製の集電体に一体に貼り付けることにより、10mm角の参照電極を作成した。 【0084】[非水電解液の調製]プロピレンカーボネートおよびジメトキシエタンからなる混合溶媒に、電解質としてのLiClO4を、その濃度が1mol/lになるように所定量溶解して各電池用の非水電解液の調製を行った。 【0085】[正極評価用電池の調製]上記のようにそれぞれ調製した正極,負極,参照電極および十分に乾燥させた非水電解液などの電池部材をアルゴン雰囲気中に置き、これらの電池部材を用いて図1に示すようなビーカー型ガラスセルを備えた各実施例および比較例に係るリチウムイオン二次電池の評価用電池をそれぞれ組み立てた。 【0086】各評価用電池1は、図1に示すように、ガラスセル2を電池容器として備え、このガラスセル2内には、20mlの非水電解液3が収容されている。正極4と袋状のセパレータ5内に収納された負極6とは、その間にセパレータ5を介在させた状態で積層され、この積層体はガラスセル2内の前記非水電解液3中に浸漬されている。2枚の押え板7は、その間に前記積層体を挟持して固定している。袋状のセパレータ5に収納された参照電極8は、前記ガラスセル2内の非水電解液3中に浸漬されている。 【0087】また、3本の電極配線9の各一端は、前記ガラスセル2の上面部を貫通して外部にそれぞれ導出される一方、各他端は前記、正極4,負極6および参照電極8にそれぞれ接続されている。このようなガラスセル2に対しては、充放電試験中に大気が内部に侵入しないように密封処理が施されている。 【0088】[電池評価] (初期容量)上記のように調製した各実施例および比較例に係るリチウムイオン二次電池の評価用電池について、1mAの電流値で、参照電極と正極との間の電位差が4.2Vに達するまで充電を行い、引き続き4時間定電圧充電を行った後30分間電流を停止した。次に1mAの電流値で正極参照極間の電位差が3Vになるまで放電を行い、この間の放電電気量を調べた。 【0089】(安全性試験)引き続き1mAの電流値で正極と参照極間との電位差が4.2Vに達するまで充電を行い、引き続き4時間定電圧充電を行った。これをグローブボックス内で分解し、正極を回収した。Al製セルに約20mgの正極を入れ上ブタをかしめた後、大気中に出し、昇温速度を毎分5℃としてDSC測定を実施し、発熱ピーク温度を測定した。各測定結果を下記表1に示す。 【0090】 【表1】
【0091】上記表1に示す結果から明らかなように、正極活物質の組成,10%累積頻度粒径(D10値)およびブラッグ角の差Δを適正な範囲に規定した正極活物質を用いた各実施例に係る電池においては、初期容量が160mAh/g以上と高く、また発熱ピーク温度が220〜280℃と高く、優れた容量特性と安全性とを兼ね備えていることが判明した。 【0092】一方、活物質粒子のD10値が過小で微細な活物質粒子を含有する比較例1においては容量が低下するとともに発熱ピーク温度が低く、電池としての安全性が低下することが再確認できた。また活物質の組成が本発明で規定する範囲外となる比較例2の電池では、容量はある程度確保されるが、発熱ピーク温度が低く安全性が劣る。一方、比較例3では発熱ピーク温度は370℃と優れており安全性は高いが、容量が低下する難点がある。また比較例4では発熱ピーク温度が低く、安全性が十分ではないことが再確認できる。 【0093】さらに、前記のように調製した各正極活物質を使用して図2に示す構造を有する各実施例および比較例に係るリチウムイオン二次電池10をそれぞれ作製した。なお、二次電池を構成する負極用活物質としては、黒鉛化MCF(メソフェースピッチ系炭素繊維)を用いた。また、正極および負極用バインダーとしては、PVDFを用いた。さらに正極集電体としてはアルミニウム箔を用いる一方、負極集電体としては銅箔を用いた。 【0094】すなわち、各リチウムイオン二次電池10において、ステンレスからなる有底円筒状の電池容器14は底部に絶縁体18が配置されている。電極群15は、前記電池容器14に収納されている。前記電極群15は、正極12、セパレータ13および負極11をこの順序で積層した帯状物を前記負極11が外側に位置するように渦巻き状に巻回した構造に形成されている。前記セパレータ13は例えば不織布、ポリプロピレン多孔質フィルムから形成される。前記電池容器14内には、電解液が収容されている。中央部が開口された絶縁封口板19は、前記電池容器14の上部開口部に配置され、かつ上部開口部付近を内部にかしめ加工することにより前記絶縁封口板19は電池容器14に液密に固定されている。正極端子20は、前記絶縁封口板19の中央に嵌め合されている。正極リード17の一端は、前記正極12に、他端は前記正極端子20にそれぞれ接続されている。前記負極11は、図示しない負極リードを介して負極端子である電池容器14に接続されている。 【0095】上記のように調製した各実施例および比較例に係るリチウムイオン二次電池について、放電容量を測定するとともに、釘刺し試験を実施して電池特性および安全性を評価した。なお、上記放電容量は、1mAの電流値で電位差が4.2Vに達するまで充電を行い、さらに1mAの電流値で電位差が3Vになるまで放電を行い、この間の放電電気量として測定した。なお、この放電容量は、実施例1に係る電池の放電容量を基準値(100)として相対的に表示した。 【0096】また、釘刺し試験は、4.2Vおよび4.3Vの充電状態にある電池に直径2.5mmの釘を刺して強制的に短絡(ショート)を発生させ大電流を流した際の各円筒電池の安全性を下記の評価基準で評価した。すなわち、釘を刺した電池の損傷レベルについて、漏液を発生しないものを○と評価し、漏液を発生したものを△と評価し、さらに大電流によるジュール熱がある臨界温度を超えたために暴走反応を起こして発火に至ったものを×と評価した。これらの測定・評価結果を前記の表1に併せて示す。 【0097】表1に示す結果から明らかなように、正極活物質の組成10%累積頻度粒径(D10),およびブラッグ角の差Δを適正な範囲に規定した正極活物質を用いた各実施例の電池においては、容量がいずれも高く、釘刺し試験を実施しても発火を生じることがなく、優れた安全性を備えている。 【0098】一方、各比較例に係る電池においては釘刺し試験における安全性と高容量性とを共に満足するものは得られていない。特に、水酸化リチウム溶液を噴霧乾燥して正極活物質とした比較例5においては、噴霧乾燥時にスラリーから水分が抜けるに従い、水酸化リチウムは水とともに移動してしまうため、乾燥時には不均一組成体が形成される。すなわち、リチウムとアルミニウムとが反応してLi−Al−O相なる異相が形成されるため、電池特性が低下してしまう。これに対して各実施例においては、溶媒に不溶となる金属塩の組合せを採用しているため、乾燥物の組成が均一であり、Li−Al−O相は形成されない。 【0099】また、比較例6においては、固相原料を混合して焼成するという一般的な合成方法を使用しているため、各原料が均一に分散した組成物が得られず、活物質のブラッグ角の差Δが小さく、発熱ピーク温度も低い難点があることが判明した。 【0100】一方、比較例7においては、アルミニウム成分を共沈で炭化しているため、硫酸根が洗浄によって完全に除去できずに残留する。この硫酸根はリチウムと化合して異相(Li2SO4)を形成するため、所定の均一組成の活物質が得られず、容量が大幅に低下した。また、上記異相のため、均一なLiNiCoAlO2が形成されておらず、Li不足の酸化物が多く岩塩構造が混在している。そのため、ブラッグ角の差Δを測定する意味がない。 【0101】一方、比較例8においては、原料混合体を湿式ビーズミルで粉砕する際、リチウムイオンが溶出してしまい、比較例5と同様に異相を有する不均一な組成しか得られないため、電池特性が低下した。 【0102】 【発明の効果】以上説明の通り、本発明に係る正極活物質,その製造方法およびリチウムイオン二次電池によれば、活物質における各構成成分の混合状態が改善され、かつ活物質の粒径が所定範囲に規定されているため、電池の正極材料として使用された場合に、高い安全性と優れた容量特性とを兼ね備えた二次電池を実現することが可能になる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003078 【氏名又は名称】株式会社東芝
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| 【出願日】 |
平成13年1月24日(2001.1.24) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100078765 【弁理士】 【氏名又は名称】波多野 久 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−222648(P2002−222648A) |
| 【公開日】 |
平成14年8月9日(2002.8.9) |
| 【出願番号】 |
特願2001−16264(P2001−16264) |
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