| 【発明の名称】 |
チップ型ヒューズおよびその溶断狭小部形成方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】戸田 篤司
【氏名】中西 幸司
|
| 【要約】 |
【課題】ヒューズ膜の幅狭または溶断狭小部の形成においてパターニング技法を不要とし、生産工数の増加、管理の複雑さを抑制して歩留向上にも寄与し、並びに回路基板に搭載した際にも安定した溶断特性を保持しつつ、長期寿命をも確保できる。
【解決手段】トリミング溝を、ヒューズ膜3の内部抵抗値を調整しつつ、溶断狭小部4を形成する固定の第1トリミング溝と可変の第2トリミング溝とから構成し、固定の第1トリミング溝を溶断狭小部4を形成するに際してヒューズ膜3の中央部に位置するように設け、可変の第2トリミング溝を膜厚との相関で所定幅の溶断狭小部4を調整するように設ける。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁基板上に形成された一対の表電極と、該表電極に対し両端部が重畳するように、前記絶縁基板上に設けられた矩形のヒューズ膜と、該ヒューズ膜に溶断狭小部を形成するトリミング溝とを備えたチップ型ヒューズにおいて、前記トリミング溝が、前記ヒューズ膜の内部抵抗値を調整しつつ、前記溶断狭小部を形成する固定の第1トリミング溝と可変の第2トリミング溝とからなり、前記固定の第1トリミング溝は前記溶断狭小部を形成するに際してヒューズ膜の中央部に位置するように設けられ、前記可変の第2トリミング溝は膜厚との相関で所定幅の溶断狭小部を調整するように設けられたことを特徴とするチップ型ヒューズ。 【請求項2】 前記固定の第1トリミング溝が、前記ヒューズ膜の一方の側縁部から該側縁部に直交する方向に形成された垂直のトリミング溝と、該垂直のトリミング溝に連設されて、前記側縁部に平行なトリミング溝とによってL字状に形成され、前記可変の第2トリミング溝が、前記ヒューズ膜の他方の側縁部から該側縁部に直交する方向に形成された垂直のトリミング溝と、該垂直のトリミング溝に連設されて、前記側縁部に平行なトリミング溝とによってL字状に形成され、前記第1トリミング溝および第2トリミング溝の前記平行な各トリミング溝が相対峙して所定幅の溶断狭小部が確保され、前記第1トリミング溝および第2トリミング溝の前記平行な各トリミング溝の長さが略等しく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のチップ型ヒューズ。 【請求項3】 前記固定の第1トリミング溝が、前記各表電極間の略中間部において、前記ヒューズ膜の一方の側縁部からこれに直交する方向に設けられ、前記可変の第2トリミング溝が、前記各表電極間の略中間部において、前記ヒューズ膜の他方の側縁部からこれに直交する方向に設けられ、前記固定の第1トリミング溝の終端点と可変の第2トリミング溝の終端点とが相対峙して、所定幅の溶断狭小部が確保されていることを特徴とする請求項1に記載のチップ型ヒューズ。 【請求項4】 絶縁基板上に設けられた矩形のヒューズ膜に、トリミングによって溶断狭小部を形成するチップ型ヒューズの溶断狭小部形成方法において、前記ヒューズ膜に可変の第2トリミング溝を形成するための初期内部抵抗値分布を複数の偏差値幅に段落区分する情報と、前記各偏差値幅の段落区分に対応する所定の溶断狭小部の幅情報とを、固定の第1トリミング溝形成に先立ち記憶装置に予め格納し、前記固定の第1トリミング溝形成のためのトリミング開始点および/または方向転換点、終端点の位置情報を包含した第1のプログラムを記憶装置に格納し、前記固定の第1トリミング溝を形成した後に有効な可変の前記第2トリミング溝を形成するための初期内部抵抗値を測定しつつ、測定した個々の内部抵抗値が前記偏差値幅のどの段落部分に属するかを対比演算する第2のプログラムを備えて、その演算結果を記憶装置に格納し、前記可変の第2トリミング溝を形成するためのトリミング開始点および/または方向転換点の位置情報を包含した第3のプログラムを記憶装置に格納し、前記第1のプログラムに従って前記固定の第1トリミング溝形成を実行し、続いて第3のプログラムに従って、前記可変の第2トリミング溝を形成して、前記ヒューズ膜の中央部に所定幅の溶断狭小部を形成することを特徴とするチップ型ヒューズの溶断狭小部形成方法。 【請求項5】 前記ヒューズ膜に前記固定の第1トリミング溝を形成した後に内部抵抗値を測定しつつ、測定した個々の内部抵抗値が前記偏差値幅のどの段落区分に属するかを対比演算する比較演算プログラムを備えて、その演算結果を記憶装置に格納し、この格納された情報にもとづき前記偏差値幅の両側に位置する内部抵抗値を記憶装置に格納し、前記比較演算プログラムおよびオープンカットのトリミング溝を形成するためのトリミング開始点および終端点の位置情報を含むプログラムを実行し、これらのプログラムの実行により、前記可変の第2トリミング溝のトリミング開始点から前記ヒューズ膜を幅方向に横断するように前記オープンカットのトリミング溝を形成することを特徴とする請求項4に記載のチップ型ヒューズの溶断狭小部形成方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電子機器回路基板に面実装されるチップ型ヒューズとその溶断狭小部形成方法に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、各種電子機器の多様性および小型軽量化の要請に伴って、回路基板上への高密度実装に適合するチップ型ヒューズが提案されている。このチップ型ヒューズは安価で、小形かつ薄形であり、しかも安定した溶断特性と十分な長期寿命が得られている。 【0003】このような従来のチップ型ヒューズとしては、例えば特開平4−65046号公報(第1従来例)に示すものがある。これは図6に示すように、電極11との幅広の接合部間に所定のパターン幅を有して、幅狭で矩形のヒューズ部12を備えたAgグレーズの厚膜ヒューズ抵抗体としたものである。また、他のチップ型ヒューズとして、特開平9−129115号公報(第2従来例)に示すものがある。これは図7に示すように絶縁性の基板21に端子電極20、20間に薄膜技法で導体膜22を被着形成した後に、レジストを塗布してマスキングし、さらに露光処理に続く不要パターン部分のエッチング処理を行った後、ガラス被覆層23および外装被覆層24を設けて、導体膜22の中央部に両端部分の幅よりも狭い溶断細部を形成してヒューズ抵抗体としたものである。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の第1従来例ではヒューズ抵抗体の材料が厚膜のメタルグレーズペーストの印刷パターン技法によって形成されるが、ペースト粘度、スクリーン印刷条件、焼成条件の変動など、特に印刷・焼成後のヒューズ抵抗体の周縁では滲み、ダレによってヒューズ抵抗体の膜厚が全体に亘って均一とならず、また膜厚の変動に伴って焼成後の抵抗値にバラツキが生じる結果となっている。すなわち、印刷パターン技法による幅狭の溶断部を備えたヒューズ抵抗体では、ヒューズとしての重要要件である内部抵抗値のばらつきが、溶断特性のバラツキの増大の要因となるが、このように内部抵抗値の大きなばらつきを包含するチップ型ヒューズ抵抗器では、溶断特性のバラツキを抑制しようとすれば、焼成後の内部抵抗値分布から所要の内部抵抗値の幅のものを中抜きするか、または異なる幅狭の溶断部を有した幾通りかのパターンを備えた印刷スクリーンの保有などが必要となり、生産工数の増加および歩留低下などを強いられるという問題があった。 【0005】また、前記後者の第2従来例では、蒸着、スパッタリングなどの技法によって絶縁基板上若しくは絶縁基板上に形成されたグレーズ層上に薄膜のヒューズ導体膜を形成した後に、フォトリゾグラフィ/エッチングによってヒューズ導体膜の中央部に両端部の幅よりも狭くした溶断細部を形成する手法が取られているが、ヒューズ導体膜が薄膜であるが故に、複合要因による膜のバラツキの他、特にヒューズ導体膜周縁際の仕上がりが一様でなく、前記前者と同様に結果として内部抵抗値のバラツキが生じ、これを抑制するために前者と同様にヒューズ導体膜の形成後の内部抵抗値分布から所要の内部抵抗値の幅のものを中抜きするか、または異なる溶断極細部を有するための幾通りかのパターンを備えた印刷スクリーンにより溶断細部を形成するなどして、生産工数の増加および歩留低下などを招いているという問題があった。 【0006】ここで、これらのチップ型ヒューズは、小形であるためヒューズ抵抗体またはヒューズ導体膜が形成される面積も自ら制約を受け、異常電流に対する溶断性能を確保するために厳格な幅狭または溶断極細部の管理を強いられているが、前記バラツキによって幅狭または溶断極細部が狭いときには、スイッチのオン、オフ時や回路部品構成の組み合わせによって、容量成分やインダクタンス成分に起因する過度現象による小さなジュールインテグラのインラッシュ電流が加わると、容易に溶断してしまうという課題があった。 【0007】本発明は前記の課題に鑑みて成されたものであり、ヒューズ抵抗体またはヒューズ導体膜の幅狭または溶断細部の形成においてパターニング技法を不要とし、生産工数の増加、管理の複雑さを抑制して歩留向上にも寄与し、並びに回路基板に搭載した際にも安定した溶断特性を保持しつつ、長期寿命をも確保できる溶断狭小部を備えたチップ型ヒューズおよびその溶断狭小部形成方法を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明は前記目的に鑑みて成されたものであり、その要旨とするところは、絶縁基板上に形成された一対の表電極と、該表電極に対し両端部が重畳するように、前記絶縁基板上に設けられた矩形のヒューズ膜と、該ヒューズ膜に溶断狭小部を形成するトリミング溝とを備えたチップ型ヒューズにおいて、前記トリミング溝が、前記ヒューズ膜の内部抵抗値を調整しつつ、前記溶断狭小部を形成する固定の第1トリミング溝と可変の第2トリミング溝とからなり、前記固定の第1トリミング溝は前記溶断狭小部を形成するに際してヒューズ膜の中央部に位置するように設けられ、前記可変の第2トリミング溝は膜厚との相関で所定幅の溶断狭小部を調整するように設けられたことを特徴とするチップ型ヒューズにある。 【0009】この態様によれば、ヒューズ膜の中央部の膜厚と内部抵抗値との関係をモニタリングしながら、所定のプログラムの演算・記憶および実行によりトリミング溝のトリミングを実行することで、内部抵抗値を調整しつつも、膜厚に対応する所定幅の溶断狭小部を形成可能にしている。ここで、実施されるトリミングはレーザトリミングであり、ヒューズ膜の不要部分を高精度に除去することにより、所定の内部抵抗値とすべきトリミング溝を形成可能にする。 【0010】また、本発明の他の要旨は、前記固定の第1トリミング溝が、前記ヒューズ膜の一方の側縁部から該側縁部に直交する方向に形成された垂直のトリミング溝と該垂直のトリミング溝に連設されて、前記側縁部に平行なトリミング溝とによってL字状に形成され、前記可変の第2トリミング溝が、前記ヒューズ膜の他方の側縁部から該側縁部に直交する方向に形成された垂直のトリミング溝と、該垂直のトリミング溝に連設されて、前記側縁部に平行なトリミング溝とによってL字状に形成され、前記第1トリミング溝および第2トリミング溝の前記平行な各トリミング溝が相対峙して所定幅の溶断狭小部が確保され、前記第1トリミング溝および第2トリミング溝の前記平行な各トリミング溝の長さが略等しく設定されていることを特徴とするチップ型ヒューズにある。 【0011】この態様によれば、第1トリミング溝および第2トリミング溝の互いに平行な部分の長さを厳密に等しくしなくても、小電流から大電流の定格電流値を有するチップ型ヒューズのトリミング溝の形成に適応できる。 【0012】また、本発明の他の要旨は、前記固定の第1トリミング溝が、各表電極間の略中間部において、前記ヒューズ膜の一方の側縁部からこれに直交する方向に設けられ、前記可変の第2トリミング溝が、前記各表電極間の略中間部において、前記ヒューズ膜の他方の側縁部からこれに直交する方向に設けられ、前記固定の第1トリミング溝の終端点と可変の第2トリミング溝の終端点とが相対峙して、所定幅の溶断狭小部が確保されていることを特徴とするチップ型ヒューズにある。 【0013】この態様によれば、前記ヒューズ膜の中央部でジュール熱を効率的に集中させることができ、中程度以上定格電流値を確保するのに有用となり、長期寿命で信頼性の高い溶断狭小部の確保を可能にしている。 【0014】また、本発明の他の要旨は、絶縁基板上に設けられた矩形のヒューズ膜に、トリミングによって溶断狭小部を形成するチップ型ヒューズの溶断狭小部形成方法において、前記ヒューズ膜に可変の第2トリミング溝を形成するための初期内部抵抗値分布を複数の偏差値幅に段落区分する情報と、前記各偏差値幅の段落区分に対応する所定の溶断狭小部の幅情報とを、固定の第1トリミング溝形成に先立ち記憶装置に予め格納し、前記固定の第1トリミング溝形成のためのトリミング開始点および/または方向転換点、終端点の位置情報を包含した第1のプログラムを記憶装置に格納し、前記固定の第1トリミング溝を形成した後に有効な可変の前記第2トリミング溝を形成するための初期内部抵抗値を測定しつつ、測定した個々の内部抵抗値が前記偏差値幅のどの段落部分に属するかを対比演算する第2のプログラムを備えて、その演算結果を記憶装置に格納し、前記可変の第2トリミング溝を形成するためのトリミング開始点および/または方向転換点の位置情報を包含した第3のプログラムを記憶装置に格納し、前記第1のプログラムに従って前記固定の第1トリミング溝形成を実行し、続いて第3のプログラムに従って、前記可変の第2トリミング溝を形成して、前記ヒューズ膜の中央部に所定幅の溶断狭小部を形成することを特徴とするチップ型ヒューズの溶断狭小部形成方法にある。 【0015】この態様によれば、ヒューズ膜を矩形に形成すれば、ヒューズ膜の長さや幅を固定することなく、また、ヒューズ膜の種類が厚膜であっても薄膜であっても、レーザトリミングによって、所定の溶断抵抗値を持つ溶断狭小部を形成可能にする。そして、固定の第1トリミング溝と可変の第2トリミング溝との組み合わせによるリバースL字形のトリミング溝の形成方法によって、生産工数と管理工数の削減、さらには歩留の向上を図ることができる。 【0016】また、本発明の他の要旨は、前記ヒューズ膜に前記固定の第1トリミング溝を形成した後に内部抵抗値を測定しつつ、測定した個々の内部抵抗値が前記偏差値幅のどの段落区分に属するかを対比演算する比較演算プログラムを備えて、その演算結果を記憶装置に格納し、この格納された情報にもとづき前記偏差値幅の両側に位置する内部抵抗値を記憶装置に格納し、前記比較演算プログラムおよびオープンカットのトリミング溝を形成するためのトリミング開始点および終端点の位置情報を含むプログラムを実行し、これらのプログラムの実行により、前記可変の第2トリミング溝のトリミング開始点から前記ヒューズ膜を幅方向に横断するように前記オープンカットのトリミング溝を形成することを特徴とするチップ型ヒューズの溶断狭小部形成方法にある。 【0017】この態様によれば、ヒューズ膜の内部抵抗値分布の両側部の所定範囲における内部抵抗値はバラツキ要因を多く含み、溶断狭小部の幅を厳密に管理しても溶断特性や長期寿命を確保できないものであるため、自動的にオープンカットの処理をして、不良品として除去することで、適合品との差別化を図ることができる。 【0018】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図について説明する。図1および図2は、それぞれアルミナを96%以上含有して、チップ片の態様で略長方形に区画された絶縁基板1上に、矩形状のヒューズ膜3が形成されたものを示す。この矩形状のヒューズ膜3を形成する前段において、絶縁基板1上には蓄熱効果および平坦性を確保する目的からグレーズ層を形成することも有用である。なお、集合して成る絶縁基板1は、アルミナに限らず、フッ素金雲母基板、ガラス基板なども有用である。 【0019】そして、Ag、Ag−Pd系またはCu系のメタルグレーズ厚膜、AgまたはAuを含む金属有機物ペーストを用いた薄膜、またはAl、Cuなどを蒸着またはスパッタリング工法により形成した薄膜などを集合して成る絶縁基板1の全面に、または略長方形に個々に区分した絶縁基板1上に、パターン印刷またはフォトリゾグラフィ/エッチングによって矩形状のヒューズ膜3を得る。なお、薄膜のヒューズ膜3は複数の定格電流の定数を得るために、随時、ヒューズ膜3に適合する材料を選択するかまたは多重層に形成する。 【0020】表電極2は、Ag、Ag−Pd系、AuまたはCu系から選択された導体で形成する。なお、表電極2と矩形状のヒューズ膜3とは電気的な接続の信頼性を確保するために、表電極2と矩形状のヒューズ膜3の一部が重畳するように形成する。表電極2は矩形状のヒューズ膜3を形成する前に形成しても良いし、矩形状のヒューズ膜3両端の一部を挟み込むように形成しても良い。 【0021】次に矩形状のヒューズ膜3は、内部抵抗値を調整しつつ、矩形状のヒューズ膜3の中央部に所定の溶断狭小部4を確保するために、レーザトリミング工法によってリバースL字形のトリミング溝および/または対向形のトリミング溝を形成する。 【0022】ここで、本発明のチップ型ヒューズのトリミング溝形状およびその形成方法について説明する。 【0023】一般に厚膜または薄膜の矩形状のヒューズ膜3を形成した後の内部抵抗値Roは、次式によって与えられる。 Ro=ρ×{L/(w×t)} ・・・(1) ここで、ρ:ヒューズ膜材料の固有抵抗L:矩形状のヒューズ膜3の長さW:矩形状のヒューズ膜3の幅t:矩形状のヒューズ膜3の膜厚なお、(1)式において、ρはヒューズ膜3のシート抵抗(Ω/□)であり、LおよびWも固定寸法であって、一定な値と見なすことができ、これを定数Nとすれば、(1)式は次式で表わされ、Roはtに対し反比例の関係にあることが分かる。 Ro=N×(1/t) ・・・(2) 【0024】本発明は、矩形状のヒューズ抵抗膜3の周縁部以外の範囲は比較的内部抵抗値のバラツキが安定していることおよび矩形状のヒューズ膜3の中央部の膜厚と内部抵抗値の関係を(2)式に着目してモニタリングしつつ、レーザトリミング装置によるプログラムの演算・記憶および実行の手段によって、トリミング溝形状の形成方法を確立すれば、従来の印刷パターンまたはホトリゾグラフィ/エッチングによる溶断狭小部の形成方法に替えて、内部抵抗値を調整しつつも、膜厚に対応する任意の溶断狭小部の幅形成が可能となることを見出した。 【0025】これは、(2)式からも分かるように、例えば、ヒューズ膜3中央部における膜厚tが薄くなれば高い内部抵抗値に対応して溶断狭小部幅を広く設定できることを示唆しており、複数枚から構成して成る集合の絶縁基板1では、個々の略長方形の区画内に形成する矩形状のヒューズ膜3そのものを同一ロットとする場合には、ヒューズ抵抗膜3の中央部における膜厚tに追従した溶断狭小部4の幅を確保すれば、ロット内およびロット間の溶断特性および長期寿命の信頼性の確保においてもバラツキの少ないチップ形ヒューズを実現でき、トリミング工法の採用によって生産と管理の工数増加、並びに歩留低下の抑制にも寄与することになる。 【0026】なお、リバースL字形のトリミング溝の形成方法については、特公昭60−28366号公報に記載の技術でその基本となるL字形のトリミング溝の形成方法を開示しており、特にロット間のバラツキを考慮したL字形のトリミング溝の垂直方向から水平方向への方向転換点の決定手段を設けて、水平方向のトリミング溝形成距離を自動で平均化して高精度のトリミング溝を形成する手段は、本発明においても参考に値し、本発明におけるトリミング溝の形成技術は、トリミング装置を用いて該当情報のインプット、内部抵抗値測定、演算、格納および実行などのプログラム処理手段に従ってトリミング溝を形成する思想の一部で共通ところである。 【0027】本発明の固定の第1トリミング溝において、リバースL字形のトリミング溝形成では固定の第1トリミング溝の垂直部T1aおよび水平部T1bのトリミング開始点、水平方向への方向転換点および終端点の位置情報が、また、対向形のトリミング溝形成では固定の第1トリミング溝の垂直部T1aの開始点および終端点の位置情報が、また、可変の第2トリミング溝にあっては、リバースL字形のトリミング溝形成では可変の第2トリミング溝の垂直部T2aのトリミング開始点および水平部T2bへの方向転換点の位置情報が、対向形のトリミング溝形成では可変の第2トリミング溝の垂直部T2aの位置情報がその実行プログラムとともにトリミング機の記憶装置に格納されている。 【0028】図3は固定の第1トリミング溝を形成した後の、つまり、可変の第2トリミング溝を形成する前の初期内部抵抗値の分布形態を示す。固定の第1トリミング溝を形成する際に個々の内部抵抗値が測定されてトリミング機の記憶装置に格納される。 【0029】ここで、チップ形ヒューズの形状寸法、定格電流値、溶断特性などが考慮されたヒューズ膜3の膜厚tと溶断狭小部4の幅との相関においては、前記初期内部抵抗値の分布を所定の偏差値の幅を有する複数の段落(例えば図3のHop、偏差値の幅1、偏差値の幅2、偏差値の幅3、・・・偏差値の幅nおよびLop)に区分される情報が、可変の第2トリミング溝を形成するための有効な初期内部抵抗値の範囲として、かつ、各段落区分に対応した溶断狭小部4の幅の値は、溶断特性と十分な長期寿命が確保されるようにそれぞれ予め経験値に基づいた外部情報として、固定の第1トリミング溝形成に先立ちトリミング機の記憶装置に随時インプットされる。 【0030】可変の第2トリミング溝形成に先立ち、前記固定の第1トリミング溝の形成に伴う個々の内部抵抗値が、前記段落区分でどの偏差値の幅に属するかの比較演算プログラムを備え、実行結果をトリミング機の記憶装置に格納し、格納された情報に基づき可変の第2トリミング溝の形成が行われる。 【0031】前記トリミング機の記憶装置に格納された実行プログラムと、外部情報と、可変の第2トリミング溝形成時の各段落の偏差値幅に対応する初期内部抵抗値情報に基づいて、内部抵抗値を調整しつつ、所定の溶断狭小部の幅を確保するように固定の第1トリミング溝および第2トリミング溝が形成される。 【0032】ここで、前記段落区分にあっては、固定の第1トリミング溝形成に伴う内部抵抗値分布の両側部LopおよびHopの範囲に位置する各々の内部抵抗値は、矩形状のヒューズ膜3にあってはバラツキ要因が多く含むものであり、溶断狭小部の幅を厳密に管理したとしても、溶断特性や定常時の長期的寿命の信頼性が確保できない範囲のものとして、前記格納手段からの情報と可変の第2トリミング溝の垂直なトリミング溝T2aの開始点および終端点の位置情報に基づいて、可変の第2トリミング溝形成の後に、自動的にオープンカット(内部抵抗値が無限大に高化)するトリミング溝形成のオプション機能を備えている。図4aおよび図4bは、このようなオープンカットのトリミング溝形成の態様を図示したものである。なお、オープンカットのトリミング溝が形成されたものは、後の適合する工程において内部抵抗値測定による手段で不良品として除去される。 【0033】本発明におけるレーザトリミング工法を利用したりバースL字形および対向形のトリミング溝形状とその形成方法について更に説明を加える。 【0034】固定の第1トリミング溝と可変の第2のトリミング溝の形成は内部抵抗値を所定の値に調整し、かつ、固定の第1トリミング溝は溶断狭小部を形成するに際してヒューズ膜3の中央部に位置するように制御し、可変の第2のトリミング溝は膜厚tとの相関で、確保すべき所定の溶断狭小部4の幅を微調整する機能を有する。 【0035】また、リバースL字形のトリミング溝形状とその形成方法は、定格電流値定数で小さな値を必要とするチップ形ヒューズにおいては、小さな異常電流で溶断させなければならず、溶断狭小部4の形成に際しては厳格な精度管理を必要とすることから、トリミング溝切り込み量増分に対する内部抵抗値増分の割合が小さいL字形のトリミング手法に着目して、ダブルに組み合わせることによって、内部抵抗値のバラツキ制御および溶断狭小部幅の精度の向上を図れる。 【0036】なお、本発明のリバースL字形のトリミング溝形成に際しては、第1および第2のトリミング溝の垂直部T1aおよびT2aの開始点は、表電極2間の内側縁からの距離T1およびT2がほぼ等間隔になる位置とする。このとき、相対峙する第1と第2のトリミング溝の水平部のT1bとT2bの長さは厳密に等しくする必要はなく、前述した偏差幅と溶断狭小部幅の関連においてT1bとT2bの長さが略等しい関係が保たれれば良い。このようにリバースL字形のトリミング溝の形成は、小電流から大電流の定格電流値を有するチップ型ヒューズのトリミング溝の形成に適応できるが、特に小電流から中電流の定格電流値定数を確保するには有用である。 【0037】他方、対向形のトリミング溝の形成は、長期寿命および信頼性を確保できる溶断狭小部の幅を確保できれば、小さな定格電流値の対応に必要な厳格な溶断狭小部幅の精度管理を必ずしも要しないことから、特に中程度以上の定格電流値を有するチップ型ヒューズのトリミング溝の形成に有用である。なお、本発明の対向形のトリミング溝形成に際しては、相対峙するトリミング溝を所定の溶断狭小部の幅として管理すれば、固定の第1および可変の第2のトリミング溝の垂直部の開始点は、矩形のヒューズ膜3の中央部でのジュール熱が効率的に集中するように、表電極2の内側縁からのT1およびT2が略等しい距離とすれば良い。 【0038】前記では矩形状のヒューズ膜3の形成に続き、内部抵抗値を調整しつつ、溶断狭小部4の幅を確保するトリミング溝形成に続き、ヒューズ膜3の材料選定にリンクして矩形状のヒューズ膜3上の前面または溶断狭小部4範囲を覆うように、硼珪酸鉛系の低融点ガラスを被覆してからトリミングしても良い。なお、トリミング溝形成後は熱硬化性のシリコーン樹脂またはシリカガラスなどで被覆する。 【0039】次に、前記実施の形態により形成したチップ型ヒューズの特性試験の結果を説明する。この特性試験では、チップ型ヒューズとして外形寸法で長さ方向の公称寸法が2.0mm、幅方向の公称寸法が1.25mmのものを試料とし、このチップ型ヒューズを構成する絶縁基板1としては、アルミナ96%を用い、これの片面には蓄熱効果と平坦性が確保できる物性値を有するグレース層を形成した後に、略長方形の区画内にAuまたはAg系の金属有機物ペーストをスクリーンパターンを用いて印刷、焼成して、矩形状ヒューズ膜としている。 【0040】次に、表電極2は、この表電極2とヒューズ膜3とが電気的な接続の信頼性を確保するように、ヒューズ膜3の両端の一部に重畳してヒューズ膜と同種の導体で印刷、焼成して形成した。また、矩形状のヒューズ膜3へのトリミング溝形成に際しては、ヒューズ膜3を覆う硼珪酸鉛系の低融点ガラスを印刷、焼成して、後にレーザトリミング工法によってリバースL字形および/または対向形のトリミング溝を形成した。そして、トリミング溝を埋めてヒューズ膜3の前面を覆うように保護ガラスを形成した。 【0041】さらに、絶縁基板の裏面の両端には導電性の裏電極を形成し、表電極3および裏電極と接続するように、表電極3と同種の導電体で端面電極を形成し、これに続いて電極面上にCu、Niなどによるはんだ付けに適合するメッキ膜を形成した。また、トリミング溝形成に際して、レーザトリミング機によるレーザトリミング条件を、平均レーザ出力を1.0ワット、Qスイッチ周波数を6kHz、ビームポジショナの移動速度を30mm/秒、バイトサイズを5μmに設定してトリミングした。 【0042】ここで、特性試験観測に際しては、1例としてリバースL字形と対向形のトリミング溝形状の形成態様比較を容易にするために、表1に示す定格値のものを試料とした。ここで、溶断特性および耐久性の試験方法は、IEC Publ.60127−4に準じて実施した。 【0043】 【表1】
【0044】なお、表1におけるトリミング溝の形成に際しては、前記発明の実施の形態で記載したように、第2のトリミング溝形成前の内部抵抗値分布において有効とする段落区分範囲で両側に位置する偏差幅1と偏差幅nを抽出し、これに対応する所定の溶断狭小部幅に設定したトリミング溝を有する試料の溶断特性における溶断時間、並びに長期寿命の初期値に対する変化率の比較結果を表2に示した。試験は各観察項目試料数を各20個抽出して実施し、これの平均値および最大値から最小値の範囲を示した。 【0045】 【表2】
【0046】このように、リバースL字形および対向形のトリミング溝とその形成方法において、本発明の態様によれば、内部抵抗値分布において有効とする各偏差幅の範囲でどの偏差値に該当するチップ型ヒューズであっても、内部抵抗値分布を有効活用でき、歩留向上とともに、安定した溶断特性を保持しつつ十分な長期寿命を確保できる。 【0047】 【発明の効果】以上のように、本発明のトリミング溝形状およびその溶断狭小部形成方法によれば、ヒューズ膜が矩形状に形成されれば、ヒューズ膜の長さおよび幅を固定する必要はなく、ヒューズ膜の種類も厚膜、薄膜を問わず、レーザトリミング工法によってパターニング技法に代用したチップ型ヒューズの溶断狭小部が容易かつ高精度に形成できる。また、固定の第1のトリミング溝と可変の第2のトリミング溝の組み合わせによるリバースL字形のトリミング溝および対向形のトリミング溝の形成方法は、小電流から大電流の幅の広い定格値を有するチップ形ヒューズに有用であり、生産工数と管理工数の削減と歩留向上、並びに回路基板に搭載した際に安定した溶断特性を保持しつつ、チップ型ヒューズとしての長期寿命を実現できるという効果が得られる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】591100769 【氏名又は名称】釜屋電機株式会社
|
| 【出願日】 |
平成12年8月11日(2000.8.11) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100081514 【弁理士】 【氏名又は名称】酒井 一 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2002−56767(P2002−56767A) |
| 【公開日】 |
平成14年2月22日(2002.2.22) |
| 【出願番号】 |
特願2000−244362(P2000−244362) |
|