| 【発明の名称】 |
電解コンデンサ用アルミニウム箔 |
| 【発明者】 |
【氏名】目秦 将志
【氏名】松岡 洋
【氏名】片野 雅彦
【氏名】大竹 富美雄
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| 【要約】 |
【課題】部位による静電容量のばらつきを低減した平均的に静電容量の高い電解コンデンサ用アルミニウム箔を提供する。
【解決手段】表面から深さ200nm以上の位置まで炭素が混入していることを特徴とする電解コンデンサ用アルミニウム箔。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面から深さ200nm以上の位置まで炭素が混入していることを特徴とする電解コンデンサ用アルミニウム箔。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、エッチング処理によりピット形成して増大させた箔の表面に陽極酸化皮膜を形成するアルミニウム箔であって、静電容量が高く且つ部位によるばらつきの小さい電解コンデンサ用アルミニウム箔に関する。 【0002】 【従来の技術】アルミニウムは、化学的あるいは電気化学的なエッチング処理により微小ピットを形成して表面積の増大が容易にでき、その表面に化成処理と呼称される陽極酸化処理を施すことにより良質な陽極酸化皮膜が形成できる。しかもこの皮膜が誘電体となるところから、薄く圧延したアルミニウム箔をエッチング処理し、その表面に使用電圧に応じた種々の化成電圧で化成処理して陽極酸化皮膜を形成することにより、使用電圧に適合する各種のコンデンサが製造されている。 【0003】上記エッチング処理で形成する微小ピットは、使用電圧に応じた化成電圧の高低に適した形状に穿孔される。即ち、使用電圧の高い中高圧用のコンデンサに使用する場合は、化成電圧を高くして厚い化成皮膜を形成する必要があるので、厚い化成皮膜でピットが埋まらないように、ピット形成は直流による電気化学的エッチング処理により行い、ピット形状をトンネルタイプとする。その際、エッチング処理を一次、二次の二段階で行い、一次エッチングでは例えば直流を印加して細いトンネル状の初期ピットを形成し、次いで二次エッチングでは化学的あるいは電気化学的なエッチングを施し初期ピットの径を拡大している。 【0004】中高圧コンデンサ用のアルミニウム箔は一般に下記のように製造される。すなわち、Si,Fe,Cu,Mn等の各種元素の含有量を調節したアルミニウム溶湯を鋳造し、得られた鋳塊を均質化処理し、熱延、冷延を経て厚さ0.3mm程度の箔地とする。次いで、この箔地を冷間で箔圧延して厚さ約0.1mm程度の目的厚さのアルミニウム箔とし、400〜600mm程度の箔巾でコイル状に巻く。更に、結晶方位調整等のために、コイルに真空または不活性ガス雰囲気の下で最終熱処理を施し、中高圧コンデンサ用のアルミニウム箔とする。この最終熱処理は、470〜600℃程度の加熱温度で行う。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】上記のように製造されたアルミニウム箔は、必要により寸法等を調整した後、上述の如くエッチング処理によりピットを形成して表面積を増大させ、次いで化成処理して電解コンデンサ箔とする。しかし、箔のコイル内位置、すなわちコイルの巾方向および厚さ方向(半径方向)の位置で箔の静電容量に大きな差があった。また、静電容量が箔の部位によりばらつくため、安定して高い静電容量を得ることができないという問題があった。 【0006】本発明は、部位による静電容量のばらつきを低減し全体的に静電容量の高い電解コンデンサ用アルミニウム箔を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】即ち本発明は、表面から深さ200nm以上の位置まで炭素が混入していることを特徴とする電解コンデンサ用アルミニウム箔である。本発明者は、従来の箔より深い位置まで炭素を混入させた箔は、エッチング処理によりトンネル状ピットを形成し、化成処理を施こしても全般的に静電容量が高くなると共に、最終熱処理時のコイル内位置による静電容量のばらつきが小さくなる、という新規な事実を見出し、これに基づいて本発明を完成させた。 【0008】なお、本発明においては、アルミニウム箔表面から深さ方向に沿った炭素の分析は、オージェ電子分光分析法で行い、その際の炭素の検出限界値に基づき、炭素の混入深さを決定した。本発明において、表面から深さ200nm以上の位置まで炭素が混入しているとの規定は、箔コイルを最終熱処理した後の状態を規定したものである。 【0009】 【発明の実施の形態】本発明に用いることができるアルミニウムの組成を以下に説明する。ただし、本発明に用いるアルミニウムは下記の組成に限定する必要はなく、高純度のアルミニウムの他、種々のアルミニウム合金も用いることができる。例えば、化成電圧200V程度以上で処理するような中高圧コンデンサ用アルミニウム箔の場合は、好ましくはSi5〜50ppm 、Fe5〜50ppm 、Cu25〜70ppm を含有するアルミニウムや、JIS H 2111に記載される方法に準じて測定されるAl純度99.98wt%以上のアルミニウムの他、更にZn,Ga等の元素を任意に選択して含有させたアルミニウム合金でもよい。 【0010】なお、Pbは中高圧コンデンサ用アルミニウム箔には通常添加される元素であり、本発明のアルミニウム箔にもPbを添加することが好ましい。即ちPbは箔の表面積増大のためのエッチング処理に使用する電解液との反応を促進して、初期のトンネルピット数を増加させる効果があるので、その後のピット径拡大処理と炭素の深さ方向の存在の効果と相まって、静電容量が高くてばらつきの小さいアルミニウム箔を得る上で有利である。 【0011】特にPbの含有量を箔の表面から0.1μmの深さ部分に40ppm 〜2000ppm とすると好ましい。箔の表面から0.1μmの深さ部分に含有されるPb量が下限値未満であると上記の効果少なく、一方、上限値を超えると箔表面の過剰溶解を誘起し、静電容量の高い箔が得難くなる。上記のPb量を達成するには、アルミニウム溶湯中にPbを例えば4ppm 以下添加し、箔コイルの最終熱処理を470℃程度以上の加熱温度で行う。 【0012】アルミニウム箔表面から深さ方向に沿った炭素の分析は、上述したようにオージェ電子分光分析法で行い、箔表面から深さが増加するのに伴い炭素量が順次低下し、信頼できる分析値として検出できなくなった深さをもって、炭素の混入深さとする。箔の表面から200nm以上の深さまで炭素を混入させることにより、上述の如き効果が得られる理由は未だ解明されていないが、下記のように推察される。 【0013】即ち、前述のように、中高圧コンデンサ用に使用されるアルミニウム箔はたとえば400〜600mm巾の箔を後方に張力をかけながらコイル状に巻いた状態で最終熱処理を施す。圧延された箔の厚みや、コイルに巻く際に後方にかける張力は、必ずしも巾方向に均一ではない。更に、コイルの厚さ方向(半径方向)については、箔の巻き始めに相当するコイルの巻き芯部近傍と、巻き終わりに相当するコイル外周部近傍とでは、上下互いに接する箔の接触圧に大きな差がある。このような状態ではコイルの巾および厚さ方向における各位置で箔と箔の間に捕捉されている圧延油残滓、空気等の酸化性物質の量にばらつきがある。その結果、コイルの最終熱処理を真空あるいは不活性ガス雰囲気中で行っても、熱処理中に箔表面のAlと酸化性物質が反応し、反応生成物の量に大きな差が生じ、箔の位置による静電容量のばらつきが大きくなるものと考えられる。 【0014】これに対して、本発明のように箔表面から深い位置まで炭素が存在すると、箔の表面はエッチング液に対して耐食性を有し、熱処理中に生じた反応生成物の量に従来の如くばらつきがあったとしても、前記箔表面から深い位置にまで炭素が存在することによる箔表面の耐食性向上によって、ビット形成のためのエッチング処理に際して箔表面の過剰溶解を最大限防ぎ、最終的に、コイル内位置によるばらつきが低減し、平均的に静電容量が高くなるものと考えられる。静電容量の向上およびそのためのばらつき低減の効果を得る上では、炭素の混入深さが大きい程好ましく、250nm以上あるいは300nm以上の位置まで混入していることが更に望ましい。ただし、炭素混入深さが大きくなるにしたがって、熱延および冷延等の操業が困難となる。また、炭素混入深さが500nmを越えると、静電容量のばらつき低減の効果の向上は飽和する傾向がみられる。 【0015】中高圧コンデンサ用アルミニウム箔は、ピット形成による表面積増大のために、典型的には下記のようにエッチングされる。例えば直流による連続エッチング処理でトンネル状ピットを穿孔して表面積を増大させる。このエッチング処理は一次エッチングと二次エッチングの二段階に分けて行い、一次エッチング処理では箔表面に初期トンネルピットを多数形成し、次いで二次エッチング処理では処理条件を変えて初期トンネルピットの径を拡大する。 【0016】一次エッチング処理で使用する電解液は、塩酸、硫酸、燐酸、硝酸等を含有する酸水溶液等の公知の液でよく、特に限定されるものではない。電解液の温度が高いと反応が促進されて好ましいが、高温に過ぎると反応が速過ぎて箔表面の溶解が激しく均一な初期トンネルピットを形成し難くなる。好ましい液温度は60〜95℃である。また好ましい処理時間は2〜4分程度である。電気量は15〜30クーロン/cm2 、電流密度は100〜300mA/cm2 が好ましい。 【0017】二次エッチング処理による初期トンネルピット径の拡大処理は、直流電解処理、化学処理、または両者を併用して、一次エッチングで形成した初期のピットの径を拡大して表面積を増大させる。トンネル状ピットの長さは、箔厚さとエッチング処理された箔の用途等によって異なるが、一般的に数十μmである。二次エッチング処理の条件は、本発明を限定するものではないが、例えば電解液としては、塩酸に少量の硫酸、燐酸、蓚酸等を加えた酸水溶液や硝酸を加えた酸水溶液が好ましい。電解液の温度は60〜95℃、電流密度は60〜200mA/cm2 が好ましい。処理時間は、トンネルピットの拡径の寸法にもよるが2〜20分程度が適当である。 【0018】本発明の如くアルミニウム箔の表面から深い位置まで炭素が存在することにより、箔表面の耐食性が向上し、従来の如く最終焼鈍を施こして箔表面の状態に均一性が欠けたとしても箔表面の過剰溶解の発生し易い部位の過剰溶解が防がれトンネルピットの形崩れが抑制されて全体的静電容量が向上し、コイル内位置による静電容量のばらつきが低減されると考えられる。 【0019】エッチング処理によりピットを形成して表面積を増大させたアルミニウム箔に、この箔を陽極とした化成処理を施す。化成処理は公知の条件で行えばよく、例えば電解液としては、硼酸アンモニウム、りん酸アンモニウム、有機酸アンモニウムなどの緩衝溶液を用いて、コンデンサの用途によって約200V以上の電圧を一段または多段階で印加して化成皮膜すなわち誘電体皮膜を形成する。 【0020】中高圧コンデンサ用アルミニウム箔は、エッチング処理に先だって、アルミニウム箔の表面を脱脂および表面調整等のために酸またはアルカリ液による処理を行ってもよい。この処理は、例えば処理液としては0.05〜1モル/リットルの硝酸または苛性ソーダ水溶液を用い、温度は40〜60℃で処理する。本発明の箔は、最終熱処理後の状態として、表面から深さ200nm以上の位置まで炭素が混入しているアルミニウム箔である。このように深い位置まで炭素が混入している箔を得るには、例えば箔地または箔を得るための冷間圧延の諸条件を調整する。即ち冷間圧延工程で用いられる条件のうち、例えば冷間圧延油、圧延速度、ワークロール径、圧下率等を組み合わせて冷間圧延する。ただし、上記の方法に限定する必要はない。 【0021】以上、本発明を中高圧コンデンサ用のアルミニウム箔について詳述したが、本発明はこれに限定する必要はなく、最終熱処理を行う箔であれば低圧コンデンサ用アルミニウム箔および陰極用アルミニウム箔についても適用できる。 【0022】 【実施例】〔試料の作製〕Pb0.8ppm 、Si15ppm 、Fe10ppm 、Cu50ppm を含有するAl純度99.99wt%のアルミニウム溶湯を半連続鋳造して厚さ530mmの鋳塊を得、該鋳塊を600℃×10時間の均質化処理し、室温で両面を15mm面削した。再加熱して鋳塊温度520℃で熱間圧延を開始し、厚さ6〜10mmの熱延板とした。熱間圧延はロールをブラシで清掃しつつ行い、終了温度は300℃であった。次いで冷間圧延機のワークロールの粗度、圧延油粘度、ワークロール径、圧下率を変化させて冷間圧延し、厚さ0.25mmの箔地を得た。このときの条件を表1に示す。次いで表1の各条件で得た箔地を箔圧延して厚さ106μmの箔としてコイル状に巻き取った。箔の幅は500mmである。この巻き取ったコイルをアルゴンガス雰囲気中で530℃×6時間の最終熱処理を施し、(100)面を圧延面に揃えた。最終熱処理後に箔の表面から深さ0.1μmまでの部分のPb量を化学分析したところ800ppm であった。 【0023】〔箔表面層の炭素の測定〕図1に示すように、コイルの芯部、中間部および外周部の3位置について、幅方向の中央部および両端部(箔端から中央部へ向けて80mmの位置)の合計9箇所の箔をサンプルとして採取した。このサンプルをオージェ電子分光分析法によって炭素が検出限界値となるまで測定し、炭素の存在する深さ位置とした。表面のエッチングはアルゴンイオンを用いた。以下に測定条件を示す。測定結果を表2に示す。 【0024】〔オージェ電子分光分析法による箔表層の炭素量測定〕 <電子線系>測定装置:VG社製MICROLAB310D電子線源:LaB6 フィラメント加速電圧:10kVフィラメント電流:0.1mA測定領域:約100μm×100μm照射電流:約20nA〜30nA(ファラデーカップ計測) <イオン銃系>イオン銃:VG社製EX050イオン銃加速電圧:3kVフィラメント電流:5mA照射電流:約500nA(ファラデーカップ計測) Arイオンエッチング速度はAl2 O3 換算で約4nm/分とし、1試料当り5点を測定してその平均値を求めた。 【0025】〔エッチング処理〕上記各位置のサンプルに対して、前処理に次いでエッチング処理し、箔表面積を増大した。以下に処理条件を示す。 <処理条件>・前処理液 :0.1モル/リットル水酸化ナトリウム、50℃条件:浸漬60秒・1次エッチング液 :1モル/リットル塩酸、3モル/リットル硫酸混合液、85℃電解:直流、200mA/cm2 ×120秒・2次エッチング液 :同上液条件:浸漬15分エッチング後、硼酸系水溶液で200V化成処理を施した。 【0026】〔箔の静電容量の測定〕各試料に対して静電容量を硼酸アンモニウム水溶液中で測定した。サンプル番号3のコイルの半径方向中間部の幅方向中央部の静電容量を100として他のサンプルの容量を表示した。結果を表3に示す。表2および表3の結果から、測定点において、表面から200nm以上の深い位置まで炭素の存在する本発明例(番号3,4,6,7)は、コイル内位置によるばらつきが1.0〜1.9と小さいこと、また、全体的に静電容量が高くなっていることが判かる。一方、炭素の存在する位置が200nm未満である比較例(番号1,2,5)は、静電容量が極端に低い個所があり、コイルにおける箔位置による容量のばらつきが5.0〜5.9と大きいこと、また、全般的に静電容量が低いことが判かる。 【0027】 【表1】
【0028】 【表2】
【0029】 【表3】
【0030】 【発明の効果】上述した如く、本発明の電解コンデンサ用アルミニウム箔は、化成処理を施こしても全般的に静電容量高く、しかもコイル内位置による静電容量のばらつきが小さいから、信頼性の高いコンデンサが製作できる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】399054321 【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社 【識別番号】000004743 【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年8月11日(2000.8.11) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100077517 【弁理士】 【氏名又は名称】石田 敬 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−57075(P2002−57075A) |
| 【公開日】 |
平成14年2月22日(2002.2.22) |
| 【出願番号】 |
特願2000−245145(P2000−245145) |
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