| 【発明の名称】 |
磁性金属材からなる薄膜を含む磁性多層薄膜のエッチング方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】江上 明宏
【氏名】真下 公子
【氏名】松井 尚子
【氏名】岡田 修
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| 【要約】 |
【課題】MRAMや高密度磁気ヘッドの生産に要求されるTMR膜などの、主に磁性合金からなる各層が複数積層されて形成されている磁性多層薄膜の微細加工に適し、特に、再付着がなく、磁性多層薄膜の特性を維持できる温度領域で行うことのできるエッチング方法を提供する。
【解決手段】磁性金属材からなる薄膜を含む磁性多層薄膜をエッチングする方法であって、磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程と、当該金属化合物の薄膜を錯化してその錯体を作る錯化工程と、当該錯体を昇華させる昇華工程とからなり、磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程が律速過程となるようにエッチングが行われることを特徴とするエッチング方法によって課題を解決した。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁性金属材からなる薄膜を含む磁性多層薄膜をエッチングする方法であって、磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程と、当該金属化合物の薄膜を錯化してその錯体を作る錯化工程と、当該錯体を昇華させる昇華工程とからなり、磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程が律速過程となるようにエッチングが行われることを特徴とするエッチング方法。 【請求項2】 磁性金属材は、コバルト、鉄、マンガン、ニッケルのいずれか、あるいはこれらのそれぞれ、もしくは2種以上を主成分とする磁性合金としたことを特徴とする請求項1記載の磁性金属材からなる薄膜を含む磁性多層薄膜をエッチングする方法。 【請求項3】 エッチングが行われるプロセス室内を錯化工程開始可能な雰囲気とした後に、当該プロセス室内を磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程開始可能な雰囲気とすることによって、磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程を律速過程とすることを特徴とする請求項1又は2記載の磁性金属材からなる薄膜を含む磁性多層薄膜をエッチングする方法。 【請求項4】 エッチングが行われるプロセス室内における錯化工程の開始可能な雰囲気は、プロセス室内にβ−ジケトンを導入することにより作られることを特徴とする請求項3記載の磁性金属材からなる薄膜を含む磁性多層薄膜をエッチングする方法。 【請求項5】 エッチングが行われるプロセス室内における磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程を開始可能な雰囲気は、プロセス室内に酸素、塩素ガス、ハロゲン系ガスのいずれかを導入することにより作られることを特徴とする請求項3又は4記載の磁性金属材からなる薄膜を含む磁性多層薄膜をエッチングする方法。 【請求項6】 二酸化ケイ素又は、二酸化アルミニウムをマスク材として使用することを特徴とする請求項5記載の磁性金属材からなる薄膜を含む磁性多層薄膜をエッチングする方法。 【請求項7】 エッチングが行われるプロセス室内における磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程を開始可能な雰囲気は、プロセス室内に酸素を導入することにより作られ、マスク材としてタンタルが使用されることを特徴とする請求項3又は4記載の磁性金属材からなる薄膜を含む磁性多層薄膜をエッチングする方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、金属薄膜のエッチング方法、特に、磁性金属材からなる薄膜を含む磁性多層薄膜のエッチング方法に関し、より具体的には、磁気ヘッドや、外部記憶媒体のMRAM(Magnetic Random Access Memory)などのデバイスで用いられる磁性金属材の多層薄膜に適したエッチング方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、薄膜のエッチングはプラズマを用いたドライエッチング法で行われるのが一般的であった。特に、磁性金属材の多層薄膜の微細加工に対しては、不活性ガスを用いたイオンミリング法などの物理的スパッタリングを利用した加工方法が使用されるのが一般的であった。 【0003】しかし、不活性ガスを用いたイオンミリング法で磁性金属材の多層薄膜をエッチングすると、薄膜を構成する金属原子が物理的に叩き出されて(スパッタリングされて)、加工された面に再付着し、これによって磁性多層薄膜の層間の電気的絶縁が要求される箇所が短絡され、デバイスとして求められる磁性多層薄膜の特性が失われてしまうおそれがあった。 【0004】イオンミリング法の他に、磁性金属材の多層薄膜のエッチングに、塩素などの反応性ガスを使ったプラズマを用いたRIE(リアクティブイオンエッチング)法を用いることも考えられる。 【0005】通常、半導体分野における金属のドライエッチングにおいては、反応性ガスとしてハロゲン系ガスが用いられるが、この反応性ガスを用いたドライエッチング法では、磁性合金のエッチングは、従来のシリコンやアルミニウムを対象にしたエッチングよりも困難である。 【0006】例えば、塩素ガスによるプラズマエッチングをコバルト(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)などの磁性金属に対して行ったときにできる生成物(塩化物)の沸点は、下記の表1に表すとおり、シリコンやアルミニウムに対して塩素ガスプラズマエッチングを行ったときにできる生成物(塩化物)の沸点に比べて非常に高く、揮発させることが困難である。従って、これらの磁性金属のエッチングを行うためには高い温度にすることが要求される。 【0007】 【表1】
【0008】しかし、MRAMのようなデバイスとして使用される磁性多層薄膜は、各層が数nm〜十数nmと薄い磁性合金で構成されており、熱によって各層を構成する原子が界面を通って拡散し、各層が維持しなければならない特性が劣化してしまうことを防止するため、生産工程中の耐熱温度が低く、最も耐熱性のあるものでも400℃程度以下の温度しか許容されない。すなわち、磁性多層薄膜に対するエッチング工程は、各磁性薄膜の特性の劣化を防止するため、400℃程度以下の温度で行われねばならない。 【0009】磁性金属材においてこの温度領域で十分な揮発性を発揮するのは、前記表1に表されている通り、鉄塩化物のみであり、他のCo、Ni、Mnといった磁性合金の構成原子の塩化物は揮発性が低く、生成しても蒸発しないため、結果として、RIE法によっては、エッチングが進行しないか、進行しても非常に遅くなってしまう。 【0010】エッチング速度を上げるためにはイオン入射エネルギーを上げることが考えられるが、このようにすると、揮発性の低い生成物がスパッタされて加工パターンの側面に再付着し、形状がテーパーとなり微細加工性が損なわれてしまうか、あるいは、前述したイオンミリング法による場合と同様の状態になるなどのため、磁性金属材の多層薄膜のエッチングに、塩素などの反応性ガスを使ったRIE法を用いることもやはり困難である。 【0011】更に、RIE法でTMR(Tunneling Magnetoresistive)膜などの磁性金属材からなる薄膜を含む磁性多層薄膜をエッチングする際にプラズマを使用すると、使用されるエッチングガスによっては、プラズマ中のイオン、中性活性種により、磁性薄膜が物理的に変性及びダメージを受け、磁気特性が変化することがあるというエッチング対象物が磁性多層薄膜であることに起因する特有の問題が存在している。 【0012】今日、DRAM並みの集積密度でSRAM並みの高速性を持ち、かつ無制限に書き換え可能なメモリとして磁性多層薄膜で構成されるMRAM及び磁気ヘッドが注目されるようになってきている。これらのデバイスの主要部となっている、主に数nm程度の非磁性又は磁性薄膜の積層で構成されるTMR膜などは、デバイスとして当然要求されるべき特性の向上をはかるため、図2図示のように、磁性合金の薄膜が積層されて形成されている場合が多い。このような磁性合金、特に、NiFe、FeMn、CoFeなどの合金の薄膜を含む磁性多層薄膜の微細加工に適したエッチング方法は未だ確立されていない。 【0013】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、MRAMや高密度磁気ヘッドの生産に要求されるTMR膜などの、主に磁性合金からなる各層が複数積層されて形成されている磁性多層薄膜の微細加工に適し、特に、再付着がなく、磁性多層薄膜の特性を維持できる温度領域で行うことのできるエッチング方法を提案することを目的としている。 【0014】 【課題を解決するための手段】前述したように、磁性金属材の多層薄膜をエッチングする場合には、エッチングによって磁気特性の変化が生じることを未然に防止すべくプラズマを使用しないことが望ましい。 【0015】また、イオンミリング法、RIE法のようにイオン入射によるスパッタリングが主となっているエッチングでは、金属原子が加工パターンの側面に再付着して、デバイスの主要部である磁性多層薄膜の層間の電気的絶縁が要求される箇所が短絡され、磁性多層薄膜の特性が失われたり、形状がテーパーになることにより微細加工性が損なわれるという問題がある。 【0016】そこで、本願の発明者は、プラズマを使用することなく、またエッチング対象物へのイオン入射も伴わずにエッチングを行う方法として化学気相エッチング法を採用することを検討した。 【0017】化学気相エッチング法に関しては、これを用いて成膜処理室内に付着した金属薄膜を除去するクリーニング方法が既に本願出願人によって提案されている(特開平11−140652号)。このクリーニング方法は、除去すべき金属膜を酸化してその酸化膜を作る酸化工程と、当該酸化膜を錯化して錯体を作る錯化工程(β−ジケトンを配位子とする金属錯体を生成する工程)と、当該錯体を昇華させる昇華工程とからなるクリーニング方法であって、前記酸化工程が律速過程となるように当該クリーニングの工程の条件が定められているものである。 【0018】本願の発明者は、前述した化学気相エッチング法を用いて磁性金属材からなる薄膜を含む多層膜のエッチングを行うにあたって、Co、Fe、Mn、Niや、これらの合金のような磁性金属材をエッチング対象としたときにできるエッチング生成物の揮発性に注目した。前述したように、磁性金属材からなる薄膜を含む磁性多層薄膜は、耐熱温度が低く、耐熱性のあるものでも400℃程度以下の温度しか許容されないので、このような温度領域において充分揮発できる磁性金属や、これらの合金の錯体がエッチング生成物として生成される必要があるからである。 【0019】本願の発明者は、前述した化学気相エッチング法を用いてCo、Fe、Mn、Niのような磁性金属の薄膜をエッチングすると、生成されるエッチング生成物(Co、Fe、Mn、Niのような磁性金属のβ−ジケトンを配位子とする金属錯体)が、磁性金属材からなる薄膜を含む磁性多層薄膜の許容される耐熱温度領域(400℃程度以下)でも充分な揮発性を持ち、更にそれぞれの磁性金属材が合金となった場合にも同様の傾向が発揮されることを見出だして、この発明を完成したものである。 【0020】なお、磁性金属材、例えば、Co、Fe、Mnのβ−ジケトンを配位子とする金属錯体の融点は、トリケミカル社のカタログによれば、下記の表2の通りである。 【0021】 【表2】
【0022】すなわち、Co、Fe、Mn、Niのような磁性金属、あるいはこれらのそれぞれ、もしくは2種以上を主成分とする磁性合金からなる薄膜を含む磁性多層薄膜を前述した化学気相エッチング法によってエッチングし、この際、β−ジケトンをエッチャントとして用いれば、磁性金属、あるいはその合金からなる薄膜を含む磁性多層薄膜の許容される耐熱温度領域(400℃程度以下)においても、高い揮発性を持ったエッチング生成物(磁性金属材、あるいはその合金のβ−ジケトンを配位子とする金属錯体)を生成させ、これにより、プラズマを使用することなく、またエッチング対象物へのイオン入射も伴わずに、Co、Fe、Mn、Niなどの磁性金属材、あるいはその合金からなる薄膜を含む磁性多層薄膜のエッチングを行うことが可能であることを見出だして本願発明を完成させたものである。 【0023】すなわち、本発明が提案する磁性金属材からなる薄膜を含む磁性多層薄膜をエッチングする方法は、磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程と、当該金属化合物の薄膜を錯化してその錯体を作る錯化工程と、当該錯体を昇華させる昇華工程とからなり、磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程が律速過程となるようにエッチングが行われることを特徴とするエッチング方法である。 【0024】ここで、磁性金属材は、コバルト、鉄、マンガン、ニッケルのいずれか、あるいはこれらのそれぞれ、もしくは2種以上を主成分とする磁性合金としたものであり、本発明は、TMR膜などの、主に磁性合金からなる各層が複数積層されて形成されている磁性多層薄膜の微細加工に適したエッチング方法を提案するものである。 【0025】前記において、磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程としては、酸素を用いて磁性金属材を酸化させる酸化工程、塩素ガスを用いて磁性金属材を塩化させる塩化工程、あるいは臭化水素等のハロゲン系ガスを用いてハロゲン化物を作るハロゲン化工程のいずれかを採用することができる。 【0026】本発明は、前述した化学気相エッチング法において、β−ジケトンをエッチャントとして用いて、磁性多層薄膜の許容される耐熱温度領域において、高い揮発性を持ったエッチング生成物(コバルト、鉄、マンガン、ニッケルのいずれか、あるいはこれらのそれぞれ、もしくは2種以上を主成分とする磁性合金のβ−ジケトンを配位子とする金属錯体)を生成させるものであるが、β−ジケトンは、金属やその合金そのものとは反応せず、金属やその合金の酸化物、塩化物、ハロゲン化物と反応するので、前記のように、磁性金属材からなる薄膜を、その酸化物、塩化物、ハロゲン化物などの金属化合物に変化させるものである。 【0027】前記において、β−ジケトンとして最も好ましいと考えられるヘキサフルオロアセチルアセトン(以下、本明細書に於いて「Hhfac」と表す。)を用い、例えば、エッチング対象の磁性金属材がFeである場合、磁性金属材を金属化合物に変化させる工程として、酸化工程、塩化工程を採用したときの本発明のエッチング方法における工程を化学式で表すと、それぞれ、以下のようになる。 【0028】磁性金属を金属化合物に変化させる工程として酸化工程を採用したとき4Fe+3O2→2Fe2O3Fe2O3+6Hhfac→2Fe(hfac)3↑+3H2O磁性金属を金属化合物に変化させる工程として塩化工程を採用したとき4Fe+3Cl2→2Fe2Cl3Fe2Cl3+3Hhfac→2Fe(hfac)3↑+3HCl【0029】また、エッチング対象の磁性金属材がNiである場合、β−ジケトンとしてHhfacを用い、磁性金属を金属化合物に変化させる工程として酸化工程を採用したときのエッチング方法における工程を化学式で表すと以下のようになる。 2Ni+O2→2NiONiO+2Hhfac→Ni(hfac)2↑+H2O【0030】エッチング対象がコバルト、鉄、マンガン、ニッケルのいずれか、あるいはこれらのそれぞれ、もしくは2種以上を主成分とする磁性合金のいずれであっても、エッチング対象の磁性金属材が金属化合物に変化する工程、金属化合物に変化した磁性金属材の錯化工程(磁性金属材のβ−ジケトンを配位子とする金属錯体の生成)、磁性金属材のβ−ジケトンを配位子とする金属錯体の昇華工程という順序で化学反応が起こり、エッチングが進行する。 【0031】本発明においては、磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程が律速過程となるようにエッチングが行われる条件が設定されているが、これは、金属化合物に変化した磁性金属材の錯化工程(磁性金属材のβ−ジケトンを配位子とする金属錯体の生成)、磁性金属材のβ−ジケトンを配位子とする金属錯体の昇華工程を促進させ、円滑なエッチングを行わせるために採用している条件である。 【0032】なお、「磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程が律速過程となるようにエッチングが行われる条件が設定されている」とは、前記3つの工程の化学反応で、磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程の化学反応が一番遅い速度で進行するということを意味している。この工程の反応速度によって、錯化工程の反応速度と昇華工程の反応速度が決まり、その結果、エッチング工程全体の反応速度が決められる。別言すれば、エッチング対象の磁性金属材を金属化合物に変化させる工程(酸化工程、塩化工程、ハロゲン化工程)が開始されるとただちに、金属化合物に変化された磁性金属材の錯化工程(磁性金属材のβ−ジケトンを配位子とする金属錯体の生成)が進行し、更に磁性金属材のβ−ジケトンを配位子とする金属錯体の昇華工程が進行して当該金属錯体がプロセス室から排気され、磁性金属材が金属化合物に変化する工程(酸化工程、塩化工程、ハロゲン化工程)が、このように金属化合物に変化した磁性金属材の錯化工程(磁性金属材のβ−ジケトンを配位子とする金属錯体の生成)に比較して過度に進行することのないように、エッチングの条件が定められることをいう。 【0033】ここで、前記のように、磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程を律速過程とする条件は、エッチングが行われるプロセス室内を錯化工程開始可能な雰囲気とした後に、磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程開始可能な雰囲気とすることによって作りだすことができる。 【0034】また、エッチングが行われるプロセス室内における錯化工程の開始可能な雰囲気は、プロセス室内にβ−ジケトンを導入することにより作ることができ、エッチングが行われるプロセス室内における磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程を開始可能な雰囲気は、プロセス室内に酸素、塩素ガス、ハロゲン系ガスのいずれかを導入することにより作ることができる。 【0035】本発明のエッチング方法において、エッチング対象物たる磁性金属材からなる薄膜を含む磁性多層薄膜は、150℃〜400℃程度に加熱しておくことが望ましい。これは、150℃より低いと、磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程、錯化工程、昇華工程からなるエッチングをより実用的な速度で進行させることができず、磁性金属材に対して十分早いエッチング速度を得ることができないからである。また、400℃程度を越えると、磁性金属材、あるいはその合金からなる薄膜を含む磁性多層薄膜の磁気特性が損なわれるおそれがあるので好ましくないからである。 【0036】本発明によれば、プラズマを用いる必要がなく、したがって、プラズマ中に存在する荷電粒子による磁性金属薄膜及び磁性合金薄膜に対する望ましくない影響を避けることができる。 【0037】また、本発明のエッチング方法において、エッチングが行われるプロセス室内の圧力を、100Pa〜大気圧に維持して前記のエッチングプロセスを進行させることが望ましい。本発明の一連のプロセスで生成される生成物(磁性金属材のβ−ジケトンを配位子とする金属錯体)は、大気圧下では固体であるため、効率よく揮発させるためには、大気圧よりも低い圧力にすることが必要である。その一方、エッチング対象の磁性金属材を金属化合物に変化させる工程、金属化合物に変化した磁性金属材の錯化工程、磁性金属材のβ−ジケトンを配位子とする金属錯体の昇華工程という化学反応を促進させるためには、ある程度の圧力(ガス分圧)も必要である。そこで、これらの条件を満たすために、エッチングが行われるプロセス室内の圧力は、100Pa〜大気圧に維持しておくことが望ましい。 【0038】更に、前述した本発明が提案する磁性金属材からなる薄膜を含む磁性多層薄膜をエッチングする方法においては、タンタル(Ta)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化アルミニウム(Al2O3)のいずれかをマスク材として使用することができる。 【0039】前述した本発明のエッチング方法によっては、SiO2、Al2O3はエッチングされない。そこで、これらをマスク材として使用することにより、微細加工の要求により効果的に応えることができる。 【0040】特に、Al2O3は、通常、TMR素子を構成する磁性多層薄膜の絶縁膜として採用されているので、Al2O3を本発明のエッチング方法におけるマスク材(ストッパー材)として利用すると有利である。 【0041】また、TMR膜のように、TMR素子を構成する磁性多層薄膜は、デバイス素子として酸化による特性劣化を防ぎ、化学的安定性を確保するために、表面に導電性を有する非磁性の薄膜が保護膜として形成され、通常この保護膜に、図2図示のように、Ta薄膜が採用されるので、Taを本発明のエッチング方法におけるマスク材として使用すると、TMR膜のエッチング、微細加工に有利である。 【0042】ただし、Taは、本発明のエッチング方法において、磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程として酸化工程が採用される場合にはエッチングされないので、マスク材(ストッパー材)として使用可能であるが、磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程として塩化工程やハロゲン化工程が採用される場合には、マスク材としての役割を十分に発揮できない。そこで、前記の保護膜として使用されるTaの特性を考慮して、Taをマスク材として使用する場合には、磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程を開始可能な雰囲気を、プロセス室内に酸素を導入して作るようにしておく必要がある。 【0043】 【発明の実施の形態】添付図面を参照して、β−ジケトンにHhfacを用いる場合の本発明の好ましい実施形態を説明する。 【0044】図1は、本発明のエッチング方法に使用される基板処理装置の一例の概略構成を表したものである。 【0045】プロセス室1内の基板ホルダー2に、被エッチング膜が成膜されている基板3が保持されている。 【0046】60℃〜100℃の温度で保温されているプロセス室1に、Hhfac及びO2供給系と、排気系11とが備えられており、排気系11によってプロセス室1が所定の圧力状態に保たれている。 【0047】Hhfac及びO2供給系は、液体の状態で原料容器4内に収容されているHhfac(符号6で示されている。)を、原料容器4内に配管5を介してHe(ヘリウム)ガスを供給して原料容器4内を加圧することにより、液体配管7、流量計8、液体配管9を介して液体状態のまま気化器10に供給し、ここで気化させてプロセス室1内に導入する系統と、本発明のエッチングにおける酸化工程を進行させるために、プロセス室1内に導入される酸素(O2)ガスを気化器10に供給する系統とから構成されている。 【0048】以下、図1図示の基板処理装置を用いた、本発明のエッチング方法の実施形態を説明する。 【0049】不図示のゲートバルブを開けて、不図示の基板搬送装置にて、被エッチング膜(例えば、図2図示の磁性合金の薄膜を含む磁性多層薄膜)が、スパッタ法などによって成膜されている基板3を基板ホルダー2に保持させ、基板ホルダー2内に備えられている不図示の調温手段にて、基板3を所定の温度、例えば、150℃〜400℃に維持すると共に、排気系11によって、プロセス室1内を所定の圧力状態に排気する。 【0050】次いで、液体状態のHhfacを流量計8で流量制御しつつ気化器10へ移送し、気化させてプロセス室1内へ導入する。次に、気化器10へ酸素(O2)ガスを供給し、プロセス室1内へ導入する。このように、Hhfacの導入を酸素(O2)ガスの導入に先行させるのは、エッチング対象の磁性金属材からなる薄膜中に酸化が進行することを防止し、被エッチング膜表面を金属面の状態に維持させるためである。 【0051】ここで、プロセス室1内へのHhfacガスと、酸素(O2)ガスの導入は、酸化された磁性金属材の錯化工程(磁性金属材のHhfacを配位子とする金属錯体の生成)が進行し、更に磁性金属材のHhfacを配位子とする金属錯体の昇華工程が進行して当該金属錯体がプロセス室1から排気系11によって排気され、磁性金属材の酸化工程が、酸化された磁性金属材の錯化工程(磁性金属材のHhfacを配位子とする金属錯体の生成)に比較して過度に進行することのないよう、酸化工程が律速過程となるようにして行われる。 【0052】これによって、磁性金属材の酸化工程と、酸化された磁性金属材の錯化工程とが同時に進行し、磁性金属材のHhfacを配位子とする金属錯体が生成され、この生成された金属錯体は、基板3が前記のように加熱されているので、ただちに昇華してエッチングが進行する。 【0053】エッチング終了と共に、酸素(O2)ガスのプロセス室1内への導入、Hhfacガスのプロセス室1内への導入を停止し、プロセス室1を排気系11によって排気し、基板3をプロセス室1から取り出す。 【0054】 【実施例1】図1図示の構成からなる基板処理装置を用い、6インチ酸化膜付きSi基板上に、スパッタ法により成膜された30nmのコバルト膜に対して、本発明の方法によってエッチングを行った。 【0055】基板温度300℃、酸素流量を500ml/min.、Hhfac導入流量を気体に換算して100ml/min.、プロセス室の圧力を常に13.3kPaに維持して30分間エッチングしたところ、コバルト膜はすべて取り除かれ、基板の酸化膜が露出した。 【0056】 【実施例2】図1図示の構成からなる基板処理装置を用い、6インチ酸化膜付きSi基板上に、スパッタ法により成膜された40nmのコバルト鉄合金(重量比がコバルト9に対して鉄1)膜に対して、本発明の方法によってエッチングを行った。 【0057】基板温度300℃、酸素流量を500ml/min.、Hhfac導入流量を気体に換算して100ml/min.、プロセス室の圧力を常に13.3kPaに維持して18分間エッチングしたところ、コバルト鉄合金膜はすべて取り除かれ、基板の酸化膜が露出した。 【0058】 【実施例3】図1図示の構成からなる基板処理装置を用い、6インチ酸化膜付きSi基板上に、スパッタ法により成膜された100nmの鉄マンガン合金(重量比が鉄1に対してマンガン1)膜に対して、本発明の方法によってエッチングを行った。 【0059】基板温度300℃、酸素流量を500ml/min.、Hhfac導入流量を気体に換算して100ml/min.、プロセス室の圧力を常に13.3kPaに維持して30分間エッチングしたところ、鉄マンガン合金膜は20nm以上エッチングされた。 【0060】これらの実施例により、本発明の方法によれば、磁性金属材のエッチングが可能であることが示されている。 【0061】 【実験例1】図1図示の構成からなる基板処理装置を用い、6インチ酸化膜付きSi基板上にスパッタ法により成膜された1000nmのSiO2膜、40nmのTa膜及び、大気中で長時間放置されたために表面が酸化膜で覆われたAl膜(Al2O3)に対して、それぞれ本発明の方法によってエッチングを行った。 【0062】基板温度300℃、酸素流量を500ml/min.、Hhfac導入流量を気体に換算して100ml/min.、プロセス室の圧力を常に13.3kPaに維持して30分間それぞれエッチングした。エッチング終了後、それれの薄膜を検討したところ、以下の通りであった。 【0063】SiO2膜を目視で検討したところ、色の変化はなかった。また、ナノスペック測定によってSiO2膜の膜厚測定を行ったところ、±0.5nmの誤差の違いしかなく、ほとんどエッチングされていないと考えられた。 【0064】Ta膜を目視で検討したところ、鏡面のままで変化がなく、ほとんどエッチングされていないと考えられた。 【0065】Al2O3を目視で検討したところ、色の変化はなく、重量変化を測定したところ、0.0007gと誤差の範囲で軽くなっていただけであった。 【0066】この結果、磁性金属材からなる薄膜を金属化合物に変化させる工程が酸化工程として行われる本発明のエッチング方法に、Ta、SiO2、Al2O3をマスク材として使用できることが確認できた。 【0067】以上、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態、実施例を説明したが、本発明はかかる実施形態、実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々の形態に変更可能である。 【0068】例えば、前記の実施形態では、Hhfacは液体直接導入法でプロセス室1へ導入したが、バブリング法によって導入することもできる。また、β−ジケトンとしては、Hhfac以外のアセチルアセトン等を使用することも可能である。 【0069】また、前記図1の実施形態では、エッチング対象面が下を向いている形態が採用されているが、エッチング対象物を基板載置台上に搭載し、エッチング対象面が上を向く構成からなる基板処理装置を用いて本発明を実施することも当然可能である。 【0070】更に、酸化工程は、前記の実施形態で採用していた熱酸化に変えて、リモートプラズマなどによって、活性化された酸素を用いた酸化に置き換えることが可能である。 【0071】なお、本発明のエッチング方法は、磁性金属材からなる薄膜を含む磁性多層薄膜の微細加工目的だけでなく、微細構造中に残された磁性金属材含有物の除去、およびプラズマ照射などで生じた磁性材表面の変性相(例えば、酸化膜)の除去への適用も可能である。 【0072】 【発明の効果】本発明によれば、MRAMや高密度磁気ヘッドの生産に要求されるTMR膜などの、主に磁性合金からなる各層が複数積層されて形成されている磁性多層薄膜の微細加工に適し、特に、再付着がなく、磁性多層薄膜の特性を維持できる温度領域で行うことのできるエッチング方法を提供することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000227294 【氏名又は名称】アネルバ株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年8月11日(2000.8.11) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100059281 【弁理士】 【氏名又は名称】鈴木 正次 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−57058(P2002−57058A) |
| 【公開日】 |
平成14年2月22日(2002.2.22) |
| 【出願番号】 |
特願2000−244581(P2000−244581) |
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