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【発明の名称】 耐還元性サーミスタ素子とその製造方法および温度センサ
【発明者】 【氏名】緒方 逸平

【氏名】牧野 太輔

【氏名】葛岡 馨

【氏名】倉野 敦

【要約】 【課題】還元雰囲気に晒されても抵抗値が大きく変化することがなく、高精度で、優れた抵抗値安定性を有する耐還元性サーミスタ素子を得る。

【解決手段】混合焼結体(M1 M2 )O3 ・AOx を主成分とする組成物中に、酸素吸蔵放出特性を有するCeO2 等の酸素吸蔵放出組成物を分散させた構造を有するサーミスタ素子とする。還元雰囲気において酸素吸蔵放出組成物が吸蔵している酸素を放出して、素子を構成する組成物からの酸素の移動を抑制するために、還元雰囲気に晒されても抵抗値が大きく変化することがなく、長期に渡って精度よい温度検出が可能で、信頼性の高い温度センサを実現できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属酸化物焼結体を主成分とするサーミスタ素子であって、上記金属酸化物焼結体中に、酸素吸蔵放出特性を有する酸素吸蔵放出組成物が分散した構造を有することを特徴とする耐還元性サーミスタ素子。
【請求項2】 上記酸素吸蔵放出組成物が、Ce、Pr、Tbから選ばれる少なくとも1つの金属元素を含有する酸化物である請求項1記載の耐還元性サーミスタ素子。
【請求項3】 上記酸素吸蔵放出組成物が、CeO2 、Pr6 11、Tb47 、2CeO2 ・Y2 3 、CeO2 ・ZrO2 から選ばれる少なくとも1種ないしそれ以上の酸化物である請求項2記載の耐還元性サーミスタ素子。
【請求項4】 上記酸素吸蔵放出組成物の出発原料が、平均粒径100ナノメートル以下の超微粒子である請求項1ないし3のいずれか記載の耐還元性サーミスタ素子。
【請求項5】 上記酸素吸蔵放出組成物の添加量が、上記金属酸化物焼結体と上記酸素吸蔵放出組成物を合計した全モル量(100%)に対して、1モル%〜95モル%である請求項1ないし4のいずれか記載の耐還元性サーミスタ素子。
【請求項6】 上記金属酸化物焼結体が、負のサーミスタ特性を有する請求項1ないし5のいずれか記載の耐還元性サーミスタ素子。
【請求項7】 上記金属酸化物焼結体が、(M1 M2 )O3 で表わす複合酸化物とAOx で表わす金属酸化物との混合焼結体(M1 M2 )O3 ・AOx であり、上記複合酸化物(M1 M2 )O3 において、M1 が元素周期律表第2A族およびLaを除く第3A族の元素から選択される少なくとも1種ないしそれ以上の元素であり、M2 が元素周期律表第3B族、第4A族、第5A族、第6A族、第7A族および第8族の元素から選択される少なくとも1種ないしそれ以上の元素であるとともに、上記金属酸化物AOx が、1400℃以上の融点を有し、サーミスタ素子形状におけるAOx単体の抵抗値(1000℃)が1000Ω以上の金属酸化物である請求項6記載の耐還元性サーミスタ素子。
【請求項8】 上記混合焼結体における上記複合酸化物(M1 M2 )O3 のモル分率をa、上記金属酸化物AOx のモル分率をbとした時に、aおよびbが、0.05≦a<1.0、0<b≦0.95、a+b=1の関係を満足する請求項6記載の耐還元性サーミスタ素子。
【請求項9】 上記複合酸化物(M1 M2 )O3 におけるM1 が、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、YbおよびScから選択される1種ないしそれ以上の元素であり、M2 が、Al、Ga、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPtから選択される1種ないしそれ以上の元素である請求項7または8記載の耐還元性サーミスタ素子。
【請求項10】 上記金属酸化物AOx におけるAが、B、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、Cr、Mn、Fe、Ni、Zn、Ga、Ge、Sr、Y、Zr、Nb、Sn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、HfおよびTaから選択される1種ないしそれ以上の元素である請求項7ないし9のいずれか記載の耐還元性サーミスタ素子。
【請求項11】 上記金属酸化物AOx が、MgO、Al2 3 、SiO2、Sc2 3 、TiO2 、Cr2 3 、MnO、Mn2 3 、Fe2 3 、Fe3 4 、NiO、ZnO、Ga2 3 、Y2 3 、ZrO2 、Nb2 5 、SnO2 、CeO2 、Pr2 3 、Nd2 3 、Sm2 3 、Eu2 O、Gd2 3、Tb2 3 、Dy2 3 、Ho2 3 、Er2 3 、Tm2 3 、Yb2 3、Lu2 3 、HfO2 、Ta2 5 、2MgO・2SiO2 、MgSiO3 、MgCr2 4 、MgAl2 4 、CaSiO3 、YAlO3 、Y3 Al5 12、Y2 SiO5 、および3Al2 3 ・2SiO2 から選ばれる一種ないしそれ以上の金属酸化物である請求項7ないし10のいずれか記載の耐還元性サーミスタ素子。
【請求項12】 上記複合酸化物(M1 M2 )O3 におけるM1 がY、M2がCrおよびMnであるとともに、上記金属酸化物AOx におけるAがYであり、上記混合焼結体(M1 M2 )O3 ・AOx がY(CrMn)O3 ・Y2 3 で表される請求項7または8記載の耐還元性サーミスタ素子。
【請求項13】 焼結助剤としてCaO、CaCO3 、SiO2 およびCaSiO3 のうち少なくとも一種を含有する請求項1ないし請求項12のいずれか記載の耐還元性サーミスタ素子。
【請求項14】 金属酸化物焼結体を主成分とするサーミスタ素子を製造する方法であって、上記金属を含有する原料粉体を混合・粉砕し、熱処理して、上記金属を含む酸化物からなるサーミスタ組成物を得る工程と、上記サーミスタ組成物と酸素吸蔵放出特性を有する酸素吸蔵放出組成物とを混合、粉砕して、上記サ−ミスタ組成物中に上記酸素吸蔵放出組成物が分散した複合原料を調製する工程と、上記複合原料を、所定形状に成形して、焼成する工程とを有することを特徴とする耐還元性サーミスタ素子の製造方法。
【請求項15】 上記原料粉体が、平均粒径100ナノメートル以下の粉体である請求項14記載の耐還元性サーミスタ素子の製造方法。
【請求項16】 金属酸化物焼結体を主成分とするサーミスタ素子を製造する方法であって、上記金属酸化物の前駆体化合物を液相中に混合して前駆体溶液を調製し、この前駆体溶液を熱処理することにより、上記金属酸化物を含むサ−ミスタ組成物を得る工程と、上記サ−ミスタ組成物と酸素吸蔵放出特性を有する酸素吸蔵放出組成物とを混合、粉砕して、上記サ−ミスタ組成物中に上記酸素吸蔵放出組成物が分散した複合原料を調製する工程と、上記複合原料を、所定形状に成形して、焼成する工程とを有することを特徴とする耐還元性サーミスタ素子の製造方法。
【請求項17】 金属酸化物焼結体を主成分とするサーミスタ素子を製造する方法であって、上記金属酸化物の前駆体化合物を液相中に混合して第1の前駆体溶液を調製する工程と、酸素吸蔵放出特性を有する酸素吸蔵放出組成物の前駆体化合物を液相中に混合して第2の前駆体溶液を調製する工程と、上記第1および第2の前駆体溶液を混合して、上記金属酸化物と上記酸素吸蔵放出組成物の混合前駆体溶液を調製する工程と、上記混合前駆体溶液を熱処理することにより、上記金属酸化物を含むサ−ミスタ組成物に上記酸素吸蔵放出組成物が分散した複合原料を調製する工程と、上記複合原料を、所定形状に成形して、焼成する工程とを有することを特徴とする耐還元性サーミスタ素子の製造方法。
【請求項18】 金属酸化物焼結体を主成分とするサーミスタ素子を製造する方法であって、上記金属酸化物の前駆体化合物を液相中に混合した前駆体溶液を調製し、この前駆体溶液中に、酸素吸蔵放出特性を有する酸素吸蔵放出組成物を混合して、酸素吸蔵放出組成物が分散した混合前駆体溶液を調製する工程と、上記混合前駆体溶液を熱処理することにより、上記金属酸化物を含むサ−ミスタ組成物に上記酸素吸蔵放出組成物が分散した複合原料を調製する工程と、上記複合原料を、所定形状に成形して、焼成する工程とを有することを特徴とする耐還元性サーミスタ素子の製造方法。
【請求項19】 金属酸化物焼結体を主成分とするサーミスタ素子を製造する方法であって、上記金属を含有する原料粉体を混合・粉砕した混合物を得る工程と、上記混合物に、酸素吸蔵放出特性を有する酸素吸蔵放出組成物の前駆体溶液を含浸する工程と、上記酸素吸蔵放出組成物の前駆体溶液を含浸した混合物を熱処理して、上記金属酸化物を含むサ−ミスタ組成物に上記酸素吸蔵放出組成物が分散した複合原料を調製する工程と、上記複合原料を、所定形状に成形して、焼成する工程とを有することを特徴とする耐還元性サーミスタ素子の製造方法。
【請求項20】 上記酸素吸蔵放出組成物またはその出発原料が、平均粒径100ナノメートル以下の超微粒子である請求項14ないし19のいずれか記載の耐還元性サーミスタ素子。
【請求項21】 上記請求項1ないし13のいずれかに記載の耐還元性サーミスタ素子からなる温度センサ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、広い温度範囲にわたって精度よい検知が可能であり、還元雰囲気においても安定した特性を有する、耐還元性サーミスタ素子とその製造方法に関し、特に自動車排ガス用の温度センサに用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】温度センサ用のサーミスタ素子は、自動車排ガス温度、ガス給湯器等のガス火炎温度、加熱炉の温度といった、約400℃〜1300℃程度の中温から高温度域の測定に用いられている。この種のサーミスタ素子の特性は、一般に、抵抗値と抵抗温度係数(抵抗値の温度依存性)によって示され、温度センサを構成する温度検出回路の実用的な抵抗値に対応するためには、サーミスタ素子の抵抗値が所定の範囲(例えば、通常の使用温度範囲で100Ω〜100kΩの範囲)にあることが要求される。そして、サーミスタ素子に適した抵抗値特性を有するものとして、ペロブスカイト系複合酸化物材料等が主に用いられている。
【0003】ペロブスカイト系材料を用いたサーミスタ素子としては、例えば、特開平6−325907号公報に記載のものがある。これは、広い温度範囲で使用可能なサーミスタ素子を実現するために、Y、Sr、Cr、Fe、Ti等の酸化物を所定の組成割合で混合し、焼成して完全固溶体としたサーミスタ素子であり、高温域で安定した特性を示すことが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来より、自動車排ガス用の温度センサでは、検知ガス中のゴミ、スス等の堆積防止等の目的から、検知部となる温度センサ先端のサーミスタ素子を金属ケースで被っている。ところが、排ガスが900℃程度の高温になると、金属ケースが高温の排ガス熱等により熱酸化し、金属ケース内が還元雰囲気となりやすい。このために、サーミスタ素子を構成する酸化物が還元作用を受けて、抵抗値が変化するという問題が生じている。
【0005】そこで、通常は、温度センサを電気炉に入れ、900〜1000℃で100時間程度の熱エージング処理を行って抵抗値の安定化を図っている。ところが、温度センサ使用中に、金属ケースに穴が開いたり、ケースが緩んだりする等によって、ケース内に排ガスが入り込み、サーミスタ素子が還元雰囲気に晒された場合には、上述の抵抗値変化が発生するおそれがある。また、最近のエンジン制御システムにおいては、温度センサが、高温排気ガスが発生するエンジンにより近い位置に搭載されるようになっている。よって、温度センサがより高温(例えば1100〜1200℃)の排気ガスの熱の影響を受けることになり、900〜1000℃で100時間程度の熱エージング処理では、エンジンの運転モードによっては金属ケースが再酸化し、サーミスタ素子が再還元を受けて抵抗値が変化する可能性がある。このように、熱エージング処理では問題が完全には解決されず、また、製作工程数が増加して、温度センサの高コスト化をまねく不具合がある。
【0006】一方、特開平9−69417号公報には、金属ケースを、特殊な金属材料、例えば、Ni−Cr−Feを主成分とする合金を加工して形成することにより、ケース内部の雰囲気の変化を抑制して、サーミスタ素子の抵抗値変化を小さくすることが記載されている。しかしながら、金属ケースを、特殊金属材料で構成することは、材料コスト、加工コストが増加する問題がある。また、サーミスタ素子自身が還元雰囲気に晒された場合の抵抗変化の問題は、依然として残る。
【0007】このように、温度センサの金属ケース内が還元雰囲気となるような条件下においても、安定した抵抗値特性を示すサーミスタ素子は、現状では得られていない。本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、還元雰囲気に晒されても抵抗値が大きく変化することがなく、高精度で、優れた抵抗値安定性を有する耐還元性サーミスタ素子を安価に得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記問題点を解決するために鋭意検討し、還元雰囲気での、サーミスタ素子を構成する組成物中に、酸素吸蔵放出組成物を添加・分散し、雰囲気に応じて酸素を吸蔵したり放出したりする機能を持たせることで、サーミスタ素子からの酸素の移動をなくし、抵抗変化を抑制できることを見出した。請求項1の発明は、上記知見に基づいてなされたもので、本発明のサーミスタ素子は、金属酸化物焼結体を主成分とし、該金属酸化物焼結体中に、酸素吸蔵放出特性を有する酸素吸蔵放出組成物が分散した構造を有する点を特徴とする。
【0009】本発明のサーミスタ素子は、サーミスタ特性を有する上記金属酸化物焼結体中に、酸素吸蔵放出組成物が分散した構造を有するので、金属ケース内が還元雰囲気となった時に、上記酸素吸蔵放出組成物が吸蔵している酸素を放出することで、上記金属酸化物焼結体からの酸素の移動を防止する。よって、上記金属酸化物焼結体の還元による組成の変動や、それに伴う抵抗変化を防止して、抵抗値安定性を向上させる。
【0010】このように、本発明のサーミスタ素子は、耐還元性を有し、還元雰囲気に晒されても抵抗値が大きく変化することがないので、長期に渡って精度よい温度検出が可能で、信頼性の高い温度センサを実現できる。また、金属ケース材料を高価な特殊金属材料とする必要がなく、熱エージング処理も不要であるので、コスト低減が可能である。
【0011】請求項2の発明は、上記酸素吸蔵放出組成物が、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Tb(テルビウム)から選ばれる少なくとも1つの金属元素を含有する酸化物である請求項1記載の耐還元性サーミスタ素子。
【0012】請求項3の発明は、上記酸素吸蔵放出組成物を、CeO2 、Pr6 11、Tb4 7 、2CeO2 ・Y2 3 、CeO2 ・ZrO2 から選ばれる少なくとも1種ないしそれ以上の酸化物とする。これら酸化物は雰囲気に応じて酸素を吸蔵ないし放出する機能を有するので、これら酸化物を添加、分散させることで、サーミスタ素子の耐還元性を大きく向上させることができる。
【0013】請求項4の発明は、上記酸素吸蔵放出組成物の出発原料を、平均粒径100ナノメートル以下の超微粒子とする。超微粒子を用いることで、サーミスタ素子を構成する金属酸化物焼結体中へのより均一な分散が可能になり、耐還元性を向上させる効果が高い。
【0014】請求項5の発明は、上記酸素吸蔵放出組成物の添加量を、上記金属酸化物焼結体と上記酸素吸蔵放出組成物を合計した全モル量(100%)に対して、1モル%〜95モル%とする。この範囲で、酸素の吸蔵、放出による耐還元性向上効果を効果的に得ることができる。
【0015】請求項6の発明は、上記酸化物焼結体が、負のサーミスタ特性を有する。本発明では、好ましくは、絶対温度に対して直線的な負特性(温度増加で抵抗値が減少する)サーミスタ素子を用いる。このようなサーミスタ素子は温度センサとして有用であり、特に車両用等では、還元雰囲気に晒される可能性があるため、本発明の効果が高い。
【0016】請求項7の発明は、サーミスタ素子の組成に関するもので、上記金属酸化物の焼結体を、(M1 M2 )O3 で表わす複合酸化物とAOx で表わす金属酸化物との混合焼結体(M1 M2 )O3 ・AOx とする。上記複合酸化物(M1 M2 )O3 におけるM1 は、元素周期律表第2A族およびLaを除く第3A族の元素から選択される少なくとも1種ないしそれ以上の元素であり、M2 は元素周期律表第3B族、第4A族、第5A族、第6A族、第7A族および第8族の元素から選択される少なくとも1種ないしそれ以上の元素である。また、上記金属酸化物AOx が、1400℃以上の融点を有し、サーミスタ素子形状におけるAOx単体の抵抗値(1000℃)が1000Ω以上の金属酸化物である。
【0017】広い温度領域で使用される温度センサには、室温〜1000℃の温度範囲において比較的低い抵抗値特性を有するペロブスカイド構造の複合酸化物(M1 M2)O3 と、高抵抗値で高融点の金属酸化物AOx との混合焼結体を用いるのがよい。金属酸化物AOx は、高抵抗値であるので、混合焼結体の高温域での抵抗値を高くすることができ、また融点が高く耐熱性に優れるので、サーミスタ素子の高温安定性を高めることができる。これにより、室温〜1000℃の温度範囲における抵抗値が100Ω〜100kΩの範囲にあり、しかも、熱履歴等による抵抗値の変化が小さい、安定性に優れるワイドレンジ型サーミスタ素子を得ることができる。
【0018】請求項8の発明は、上記混合焼結体における複合酸化物(M1 M2 )O3 と金属酸化物AOx の混合比に関し、上記複合酸化物(M1 M2 )O3 のモル分率をa、上記金属酸化物AOx のモル分率をbとした時に、aおよびbが、0.05≦a<1.0、0<b≦0.95、a+b=1の関係を満足するように設定する。これらモル分率a、bが、上記関係にあれば、上述した効果(所定範囲の抵抗値と抵抗値安定性)をより確実に達成することができる。
【0019】また、このように、広い範囲でモル分率を変えることができるので、(M1 M2 )O3 とAOx を適宜混合、焼成することにより、抵抗値、抵抗温度係数を広い範囲で種々制御できる。
【0020】請求項9の発明は、上記複合酸化物(M1 M2 )O3 における各金属元素の好適例に関し、M1 は、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、YbおよびScから選択される1種ないしそれ以上の元素であり、M2 が、Al、Ga、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPtから選択される1種ないしそれ以上の元素であることが、実用上、望ましい。
【0021】請求項10の発明は、上記金属酸化物AOx の好適例であり、金属元素Aとして具体的には、B、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、Cr、Mn、Fe、Ni、Zn、Ga、Ge、Sr、Y、Zr、Nb、Sn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、HfおよびTaから選択される1種ないしそれ以上の元素が用いられる。
【0022】請求項11のように 具体的には、上記金属酸化物AOx として、MgO、Al2 3 、SiO2 、Sc2 3 、TiO2 、Cr2 3 、MnO、Mn2 3、Fe2 3 、Fe3 4 、NiO、ZnO、Ga2 3 、Y2 3 、ZrO2、Nb2 5 、SnO2 、CeO2 、Pr2 3 、Nd2 3 、Sm2 3 Eu2 O、Gd2 3 、Tb2 3 、Dy2 3 、Ho2 3 、Er2 3 、Tm2 3 、Yb2 3 、Lu2 3 、HfO2 、Ta2 5 、2MgO・2SiO2 、MgSiO3 、MgCr2 4 、MgAl2 4 、CaSiO3 、YAlO3 、Y3 Al5 12、Y2 SiO5 、および3Al2 3 ・2SiO2 から選ばれる一種ないしそれ以上の金属酸化物が挙げられる。これらの金属酸化物は、いずれも高抵抗値かつ高耐熱性を示し、サーミスタ素子の性能向上に寄与する。
【0023】請求項12の発明は、上記複合酸化物(M1 M2 )O3 におけるM1 にYを、M2 にCrおよびMnを選択するとともに、上記金属酸化物AOx をY2 3 とする。この時、上記混合焼結体(M1 M2 )O3 ・AOx はY(CrMn)O3・Y2 3 で表される。この混合焼結体は、温度センサ等に好適に使用されて、広い温度範囲で高い性能を発揮できる。
【0024】請求項13の発明は、上記混合焼結体(M1 M2 )O3 ・AOx において、各粒子の焼結性等を向上させるために、焼結助剤を添加する。焼結助剤としては、CaO、CaCO3 、SiO2 およびCaSiO3 のうちの少なくとも一種が用いられ、焼結密度の高いサーミスタ素子が得られる。
【0025】請求項14の発明は、金属酸化物焼結体を主成分とするサーミスタ素子を製造する方法であって、上記金属を含有する原料粉体を混合・粉砕し、熱処理して、上記金属を含む酸化物からなるサーミスタ組成物を得る工程と、上記サーミスタ組成物と酸素吸蔵放出特性を有する酸素吸蔵放出組成物とを混合、粉砕して、上記サ−ミスタ組成物中に上記酸素吸蔵放出組成物が分散した複合原料を調製する工程と、上記複合原料を、所定形状に成形して、焼成する工程とを有することを特徴とする。
【0026】サーミスタ素子の耐還元性を向上するための製造工程について検討を進めた結果、サーミスタ素子を構成する金属酸化物焼結体中に、酸素吸蔵放出組成物を添加して、均一に分散させることが重要であることが判明した。そこで、金属酸化物焼結体の原料となるサーミスタ組成物を調製した後に、酸素吸蔵放出組成物を混合、粉砕し、成形、焼成を経て、サーミスタ素子とする。これにより、還元雰囲気においても抵抗安定性を有する耐還元性サーミスタ素子が得られる。
【0027】請求項15の発明では、上記請求項14において使用する上記原料粉体を、平均粒径100ナノメートル以下の粉体とする。平均粒径100ナノメートル以下の超微粒子を原料粉体を混合・粉砕し、熱処理した組成物は、組成のバラツキが小さく、サーミスタ素子の抵抗のバラツキが低減して、さらに温度精度が向上する。
【0028】請求項16の発明は、サーミスタ素子を製造する他の方法であって、上記金属酸化物の前駆体化合物を液相中に混合して前駆体溶液を調製し、この前駆体溶液を熱処理することにより、上記金属酸化物を含むサ−ミスタ組成物を得る工程と、上記サ−ミスタ組成物と酸素吸蔵放出特性を有する酸素吸蔵放出組成物とを混合、粉砕して、上記サ−ミスタ組成物中に上記酸素吸蔵放出組成物が分散した複合原料を調製する工程と、上記複合原料を、所定形状に成形して、焼成する工程とを有することを特徴とする。
【0029】サーミスタ素子の主成分となるサーミスタ組成物を調製する際に、上記金属酸化物の前駆体化合物を含む溶液を用い、これを熱処理してサーミスタ組成物を得ることにより、組成のバラツキを小さくし、抵抗のバラツキが低減し温度精度が向上したサーミスタ素子を得ることができる。得られたサーミスタ組成物に酸素吸蔵放出組成物を混合、粉砕する点は同様であり、酸素吸蔵放出組成物が均一分散したサーミスタ素子とする同様の効果が得られる。
【0030】請求項17の発明は、サーミスタ素子を製造する他の方法であって、上記金属酸化物の前駆体化合物を液相中に混合して第1の前駆体溶液を調製する工程と、酸素吸蔵放出特性を有する酸素吸蔵放出組成物の前駆体化合物を液相中に混合して第2の前駆体溶液を調製する工程と、上記第1および第2の前駆体溶液を混合して、上記金属酸化物と上記酸素吸蔵放出組成物の混合前駆体溶液を調製する工程と、上記混合前駆体溶液を熱処理することにより、上記金属酸化物を含むサ−ミスタ組成物に上記酸素吸蔵放出組成物が分散した複合原料を調製する工程と、上記複合原料を、所定形状に成形して、焼成する工程とを有することを特徴とする耐還元性サーミスタ素子の製造方法。
【0031】上記複合原料を調製するにあたり、上記金属酸化物と上記酸素吸蔵放出組成物の前駆体溶液をそれぞれ調製し、これらを混合した混合前駆体溶液を熱処理する方法を用いることもできる。溶液で混合するので、均一混合が容易にでき、上記酸素吸蔵放出組成物が均一分散したサーミスタ素子が得られる。
【0032】請求項18の発明は、サーミスタ素子を製造する他の方法であって、上記金属酸化物の前駆体化合物を液相中に混合した前駆体溶液を調製し、この前駆体溶液中に、酸素吸蔵放出特性を有する酸素吸蔵放出組成物を混合して、酸素吸蔵放出組成物が分散した混合前駆体溶液を調製する工程と、上記混合前駆体溶液を熱処理することにより、上記金属酸化物を含むサ−ミスタ組成物に上記酸素吸蔵放出組成物が分散した複合原料を調製する工程と、上記複合原料を、所定形状に成形して、焼成する工程とを有することを特徴とする。
【0033】サーミスタ素子の主成分となるサーミスタ組成物を調製する際に、上記金属酸化物の前駆体化合物を含む溶液を用い、この前駆体溶液に、上記酸素吸蔵放出組成物を添加することで、両者の均一混合が容易にでき、上記酸素吸蔵放出組成物が均一分散したサーミスタ素子が得られる。
【0034】請求項19の発明は、サーミスタ素子を製造する他の方法であって、上記金属を含有する原料粉体を混合・粉砕した混合物を得る工程と、上記混合物に、酸素吸蔵放出特性を有する酸素吸蔵放出組成物の前駆体溶液を含浸する工程と、上記酸素吸蔵放出組成物の前駆体溶液を含浸した混合物を熱処理して、上記金属酸化物を含むサ−ミスタ組成物に上記酸素吸蔵放出組成物が分散した複合原料を調製する工程と、上記複合原料を、所定形状に成形して、焼成する工程とを有することを特徴とする耐還元性サーミスタ素子の製造方法。
【0035】上記複合原料を調製するにあたり、上記酸素吸蔵放出組成物の前駆体溶液を調製し、これを上記金属酸化物の原料混合物に含浸させて溶液を熱処理する方法を用いることもできる。溶液で混合するので、均一混合が容易にでき、上記酸素吸蔵放出組成物が均一分散したサーミスタ素子が得られる。
【0036】請求項20の発明では、上記酸素吸蔵放出組成物またはその出発原料を、平均粒径100ナノメートル以下の超微粒子とする。超微粒子を用いることで、上記サ−ミスタ組成物に上記酸素吸蔵放出組成物を均一分散させることでき、サーミスタ素子の抵抗安定性が向上する。
【0037】請求項21の発明は、上記請求項1ないし請求項13のいずれか記載の耐還元性サーミスタ素子からなる温度センサを提供するものである。上記各請求項の構成を有するサーミスタ素子は、広い温度範囲にわたって温度が検知でき、安定した抵抗値特性を有するので、高性能でしかも耐還元性に優れる温度センサを実現することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の耐還元性サーミスタ素子は、金属酸化物焼結体を主成分とするサーミスタ素子であって、上記金属酸化物焼結体中に、酸素吸蔵放出特性を有する酸素吸蔵放出組成物が分散した構造を有することを特徴とする。主成分の上記金属酸化物焼結体は、好適には、絶対温度に対して直線的な負特性(温度増加に伴い抵抗値が減少する)を持つものが用いられ、後述する方法で、所望のサーミスタ特性を有するように調製される。
【0039】酸素吸蔵放出組成物は、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)およびTb(テルビウム)から選ばれる少なくとも1つの金属元素を含有する酸化物である。具体的には、例えば、CeO2 (酸化セリウム)、Pr6 11(酸化プラセオジム)、Tb4 7 (酸化テルビウム)、2CeO2 ・Y2 3 (セリウム・イットリウム複合酸化物)、CeO2 ・ZrO2 (セリウム・ジルコニウム複合酸化物)から選択される少なくとも1種ないしそれ以上の酸化物を用いることができる。好適には、平均粒径100ナノメートル以下のCeO2 、Pr6 11、Tb4 7 、あるいは、平均粒径100ナノメートル以下のCeO2 とY2 3 またはZrO2 から合成された2CeO2 ・Y2 3 、CeO2 ・ZrO2 から選ばれる少なくとも1種ないしそれ以上の酸化物を用いるのがよい。平均粒径100ナノメートル以下の超微粒子を用いることで、サーミスタ素子のマトリックス中への均一分散が容易にでき、抵抗値安定性が向上する。
【0040】酸素吸蔵放出組成物の添加量は、上記金属酸化物焼結体と酸素吸蔵放出組成物を合成した全モル量(100モル%)に対して、1モル%〜95モル%の範囲となるようにするのがよい。1モル%より少ないと、還元雰囲気におけるサーミスタ素子の抵抗値安定性を向上する十分な効果が得られない。また、添加量が95モル%を越えると、室温での抵抗値が高くなり、サーミスタ素子としての特性が得られなくなるので好ましくない。
【0041】本発明の耐還元性サーミスタ素子を構成する金属酸化物焼結体は、好適には、(M1 M2 )O3 で表される複合酸化物と、AOx で表される金属酸化物とを混合して、焼成した混合焼結体(M1 M2 )O3 ・AOx からなる。ここで、複合酸化物(M1 M2 )O3 は、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物で、M1 は周期律表第2A族およびLaを除く第3A族の元素から選択される1種ないしそれ以上の元素を、M2 は周期律表第3B族、第4A族、第5A族、第6A族、第7A族および第8族の元素から選択される1種ないしそれ以上の元素を示す。ここで、Laは吸湿性が高く、大気中の水分と反応して不安定な水酸化物を形成し、サーミスタ素子を破壊する等の問題があるため、M1 として用いない。
【0042】具体的には、M1 となる第2A族の元素は、例えば、Mg、Ca、Sr、Baから、第3A族の元素は、例えば、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Scから選択される。また、M2 となる第3B族の元素としては、例えば、Al、Gaが、第4A族の元素としては、例えば、Ti、Zr、Hfが、第5A族の元素としては、例えば、V、Nb、Taが、第6A族の元素としては、例えば、Cr、Mo、Wが、第7A族の元素としては、例えば、Mn、Tc、Reが、第8族の元素としては、例えば、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptが好適に使用される。
【0043】M1 とM2 の組み合わせは、所望の抵抗値特性が得られるように、任意に組み合わせることができ、これらM1 、M2 を適正に選択した複合酸化物(M1 M2)O3 は、低抵抗値および低抵抗温度係数(例えば1000〜4000(K))を示す。このような複合酸化物(M1 M2 )O3 としては、例えば、Y(Cr,Mn)O3 等が好適に使用される。なお、M1 またはM2 として複数の元素を選択した場合、各元素のモル比は、所望の抵抗値特性に応じて、適宜設定することができる。
【0044】ただし、複合酸化物(M1 M2 )O3 を単独でサーミスタ材料として用いた場合、抵抗値の安定性が不十分であり、また、高温域の抵抗値が低くなる傾向にあるため、本発明では、サーミスタ素子の抵抗値を安定化し、かつ所望の範囲とする材料として、金属酸化物AOx を混合使用する。従って、金属酸化物AOx に必要な特性としては、■高温域において高い抵抗値を有すること、かつ■耐熱性に優れ、高温において安定であること、が挙げられる。具体的には、■については、センサとして使用される通常のサーミスタ素子の寸法形状で、AOx 単体((M1 M2 )O3 を含まない)の1000℃での抵抗値が1000Ω以上であること、■については、融点が1400℃以上であり、センサの常用最高温度である1000℃よりも十分高いこと、を満たしていればよい。
【0045】上記■、■の特性を満足するために、金属酸化物AOx における金属元素Aには、B、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、Cr、Mn、Fe、Ni、Zn、Ga、Ge、Sr、Y、Zr、Nb、Sn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Taから選択される1種ないしそれ以上の元素が好適に用いられる。具体的には、金属酸化物AOxとして、MgO、Al2 3 、SiO2 、Sc2 3 、TiO2 、Cr2 3 、MnO、Mn2 3 、Fe2 3 、Fe3 4 、NiO、ZnO、Ga2 3 、Y2 3 、ZrO2 、Nb2 5 、SnO2 、CeO2 、Pr2 3 、Nd2 3 、Sm2 3 、Eu2 O、Gd2 3 、Tb2 3 、Dy2 3 、Ho2 3、Er2 3 、Tm2 3 、Yb2 3 、Lu2 3 、HfO2 、Ta2 5 、2MgO・2SiO2 、MgSiO3 、MgCr2 4 、MgAl2 4 、CaSiO3 、YAlO3 、Y3 Al5 12、Y2 SiO5 、および3Al2 3 ・2SiO2 から選ばれる一種ないしそれ以上の金属酸化物を用いることができる。
【0046】好適には、高抵抗値で耐熱性に優れる金属酸化物AOx として、例えば、Y23 が挙げられる。複合酸化物(M1 M2 )O3 におけるM1 にYを、M2 にCrおよびMnを選択すれば、混合焼結体(M1 M2 )O3 ・AOx はY(CrMn)O3 ・Y2 3 で表され、この混合焼結体からなるサーミスタ素子は、温度センサ等に好適に使用されて、広い温度範囲で高い性能を発揮できる。
【0047】混合焼結体(M1 M2 )O3 ・AOx における、複合酸化物(M1 M2 )O3と、金属酸化物AOx のモル比について次に説明する。複合酸化物(M1 M2 )O3 のモル分率をa、金属酸化物AOx のモル分率をbで示した時、本発明では、これらaとbが、0.05≦a<1.0、0<b≦0.95、a+b=1の関係を満足することが望ましく、この範囲で、aとbを適宜選択することにより、所望の低抵抗値と低抵抗温度係数を実現することができる。このように、広い範囲でa、bを変えることができるので、これら抵抗値特性を広い範囲で種々制御することができる。
【0048】また、この混合焼結体は、焼結助剤としてCaO、CaCO3 、SiO2 、CaSiO3 のうちの少なくとも一種を含有することもできる。これら焼結助剤は、複合酸化物(M1 M2 )O3 と金属酸化物AOx の混合物の焼成温度において液相を形成し、焼結を促進する効果がある。これにより、得られる混合焼結体の焼結密度が向上し、サーミスタ素子の抵抗値を安定化するとともに、焼成温度の変動に対して抵抗値のばらつきが低減できる。これら焼結助剤の添加量は、その種類に応じて適宜調製される。
【0049】図1、2に、上記混合焼結体よりなるサーミスタ素子1およびこれを用いた温度センサSの一例を示す。図1のように、サーミスタ素子1は、平行な2本のリード線11、12の各端部が素子部13に埋設された形状を有し、上記混合焼結体を、例えば外径1.60mmの円柱形に成形して素子部13となしている。このサーミスタ素子1を、図2に示す一般的な温度センサアッシーに組み込んで温度センサSとする。図2(A)に示すように、温度センサSは、筒状の耐熱性金属ケース2を有し、サーミスタ素子1は、その左半部内に配置されている。金属ケース2の右半部には、外部より延びる金属パイプ3の一端が位置している。金属パイプ3は、図2(B)に示すように、内部にリード線31、32を保持しており、これらリード線31、32は、金属パイプ3の内部を通って金属ケース2内に至り、サーミスタ素子1のリード線11、12にそれぞれ接続される(図2(A))。リード線11、12は、例えば、線径0.3mm、長さ5.0mmとし、材質はPt100(純白金)とする。なお、図2(B)に示すように、金属パイプ3の内部には、マグネシア粉体33が充填されており、金属パイプ3内のリード線31、32の絶縁を確保している。
【0050】次に、上記サーミスタ素子1を製造する方法について、基本的な製造方法(1)と、その一部の工程を変更した製造方法(2)〜(6)を示す。これらの製造方法は、出発原料の形態や、サーミスタ原料の調製方法を変更しているが、いずれの製造方法においても、主成分となる金属酸化物焼結体の原料と、酸素吸蔵放出組成物の原料とを混合する工程、酸素吸蔵放出組成物が分散した複合原料を得る工程、これを成形、焼成する工程を有している。
【0051】基本的な製造方法(1)においては、まず、混合焼結体(M1 M2 )O3 ・AOx におけるM1 、M2 およびAの原料となるこれら金属元素の酸化物等の粉末を準備し、これらを所望の組成となるように調合する(調合1工程)。次いで、この調合物に水等の分散剤を加えて媒体攪拌ミル等で混合・粉砕した後、乾燥し、混合粉体を得る(混合工程)。この混合粉体を、熱処理して、(M1 M2 )O3 ・AOx サーミスタ組成物(仮焼成工程)。熱処理温度は、通常、1000〜1500℃程度とする。なお、組成の均一化を図るために、混合工程でバインダーを添加してもよく、熱処理を2回以上実施することもできる。また、M1 、M2 およびAの原料としては酸化物以外の化合物を用いることもできる。
【0052】このサーミスタ組成物(M1 M2 )O3 ・AOx に対し、酸素吸蔵放出特性を有する酸素吸蔵放出組成物と、焼結助剤等を所定の割合で調合する(調合2工程)。調合1工程では複合酸化物(M1 M2 )O3 を調製し、この調合2工程でAOx を添加して所望の構成とすることもできる。次いで、これらサーミスタ組成物と酸素吸蔵放出組成物等を、媒体攪拌ミル等で混合、粉砕して、サーミスタ組成物に酸素吸蔵放出組成物が分散した複合原料となる混合スラリーを得る(混合・粉砕工程)。この混合スラリーを、スプレードライヤー等を用いて造粒、乾燥し(造粒・乾燥工程)、Pt等よりなるリード線を組み込んだ所定形状に金型成形した後(成形工程)、焼成することにより、酸素吸蔵放出組成物が均一分散した(M1 M2 )O3 ・AOx からなる耐還元性サーミスタ素子が得られる(焼成工程)。焼成工程では、通常、焼成温度は1400〜1700℃程度とする。
【0053】成形工程では、予めリード線をインサートした金型を用いて成形を行っても、成形後に、リード線を付与するための穴を開け、リード線を装填して焼成してもよい。また、焼成後にリード線を接合形成することもできる。あるいは、サーミスタ素子の原料に、バインダー、樹脂材料等を混合添加して、押出成形に適当な粘度、硬さに調整し、押出成形して、リード線を付与するための穴が形成されたサーミスタ素子の成形体を得、リード線を装填して焼成することで、リード線が形成されたサーミスタ素子を得ることができる。
【0054】製造方法(2)は、上記基本的な製造方法(1)において、調合1または調合2工程で用いる(M1 M2 )O3 ・AOx の出発原料として、平均粒径100nm(ナノメートル)以下の粉体を用いる。このように、混合焼結体(M1 M2 )O3 ・AOx の出発原料として、平均粒径100nm(ナノメートル)以下の粉体を用いると、均一な混合が可能で、組成のバラツキを小さくすることができ、サーミスタ素子の性能が向上する。このような原料粉体としては、例えば、平均粒径100nm以下のゾル粒子を用いることができる。これら原料粉体を調合、混合、仮焼成する各工程は、上記基本的な製造方法(1)と同様であり、得られたサーミスタ組成物に酸素吸蔵放出組成物を添加して複合原料とし、以下、同様の方法で、混合・粉砕、造粒・乾燥、成形、焼成することで、組成が均一で抵抗値のバラツキの小さい耐還元性サーミスタ素子が得られる。
【0055】製造方法(3)は、上記基本的な製造方法(1)とサーミスタ組成物の調製方法が異なり、(M1 M2 )O3 ・AOx の前駆体化合物を液相中に混合して前駆体溶液を調製し、この前駆体溶液を熱処理することにより、(M1 M2 )O3 ・AOx を含むサーミスタ組成物とする。例えば、M1 、M2 およびAの化合物とクエン酸等の錯体形成剤の混合溶液を形成し、溶液中で反応させると、(M1 M2 )O3 ・AOx の前駆体化合物となる複合錯体化合物が得られ、さらにエチレングリコール等の重合剤を用いて、加熱、重合させて得た複合錯体化合物の重合体を熱処理することにより、サーミスタ組成物が得られる。このサーミスタ組成物に酸素吸蔵放出組成物を添加して複合原料とし、以下、同様の方法で、混合・粉砕、造粒・乾燥、成形、焼成することで、組成が均一で抵抗値のバラツキの小さいサーミスタ素子が得られる。
【0056】製造方法(4)は、製造方法(3)の方法と同様にして、(M1 M2 )O3 ・AOx の前駆体化合物を液相中に混合して第1の前駆体溶液を調製する一方、酸素吸蔵放出組成物の前駆体化合物を液相中に混合して第2の前駆体溶液を調製する。そして、これら第1、第2の前駆体化合物の溶液を混合して、混合前駆体溶液を調製し、熱処理することにより、(M1 M2 )O3 ・AOx を含むサーミスタ組成物に酸素吸蔵放出組成物が分散した複合原料を得る。以下、同様の方法で、混合・粉砕、造粒・乾燥、成形、焼成することにより、酸素吸蔵放出組成物が均一に分散し、かつ組成の均一で、抵抗値のバラツキの小さいサーミスタ素子が得られる。
【0057】さらに、製造方法(5)のように、(M1 M2 )O3 ・AOx の前駆体溶液を熱処理する前に、上記前駆体溶液中に酸素吸蔵放出組成物の粉体を添加、混合して、酸素吸蔵放出組成物が分散した混合前駆体溶液を調製することもできる。この混合前駆体溶液を、熱処理することにより、(M1 M2 )O3 ・AOx を含むサーミスタ組成物に酸素吸蔵放出組成物が分散した複合原料を得、以下、同様の方法で、混合・粉砕、造粒・乾燥、成形、焼成することにより、酸素吸蔵放出組成物が均一に分散し、かつ組成の均一で、抵抗値のバラツキの小さいサーミスタ素子が得られる。
【0058】製造方法(6)は、上記基本的な製造方法(1)と同様にして、(M1 M2 )O3 ・AOx の出発原料の粉体を調合、混合する一方、製造方法(4)と同様にして、酸素吸蔵放出組成物の前駆体化合物を液相中に混合した前駆体溶液を調製し、(M1 M2 )O3 ・Ax の出発原料の混合粉体に酸素吸蔵放出組成物の前駆体溶液を混合、含浸させる。この混合物を熱処理することにより、(M1 M2)O3 ・AOx を含むサーミスタ組成物に酸素吸蔵放出組成物が分散した複合原料を得、以下、同様の方法で、混合・粉砕、造粒・乾燥、成形、焼成することにより、酸素吸蔵放出組成物が均一に分散し、かつ組成の均一で、抵抗値のバラツキの小さいサーミスタ素子が得られる。
【0059】このようにして得られる本発明のサーミスタ素子は、複合酸化物(M1 M2 )O3 と金属酸化物AOx が粒界を介して均一混合された混合焼結体となっている。よって、室温(例えば27℃)から1000℃程度の高温域において、温度センサに必要な100Ωから100kΩの低抵抗値を示し、また、抵抗温度係数βは、2000から4000(K)の範囲に調整可能である。さらに、酸素吸蔵放出組成物であるCeO2 等の酸化物が均一に分散した構造を有しているために、雰囲気に応じて酸素を吸蔵ないし放出することが可能で、金属ケース内が還元雰囲気となっても、抵抗値が大きく変化することがない。
【0060】この耐還元性サーミスタ素子を組み込んだ温度センサを、高温連続耐久試験(大気中1100℃)に供し、抵抗変化を測定した。ここで、高温連続耐久試験により耐還元性サーミスタ素子は金属ケース中で還元雰囲気の影響を受けるため、抵抗変化率ΔRは耐還元性サーミスタ素子の抵抗安定性を図る指標となる。その結果、本発明の耐還元性サーミスタ素子は、金属ケース中での還元雰囲気に晒される場合であっても、最大抵抗変化率ΔRは1〜10%程度のレベルを安定して実現できることが確認された。
【0061】また、本発明の耐還元性サーミスタ素子を用いた温度センサ100台の温度精度を評価した結果、高温連続耐久試験前の初期温度精度±3〜5℃レベルに対し、耐久試験後の温度精度±3〜5℃レベルと、耐久試験前後で温度精度が同等レベルであった。よって、本発明の耐還元性サーミスタ素子によれば、抵抗変化率ΔRが小さく安定した特性を有し高精度な温度センサを実現することができ、高価な特殊金属材料のケースを用いることを不要とし、コスト低減が可能である。
【0062】
【実施例】(実施例1)実施例1として、複合酸化物(M1 M2 )O3 にY(Cr0.5 Mn0.5 )O3を、金属酸化物AOx にY2 3 を選定した混合焼結体:aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・bY2 3 に、酸素吸蔵放出組成物としてCeO2 を添加したサーミスタ素子を製作した。a、bは、それぞれ、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 、Y23 のモル分率で、所望の抵抗値と抵抗温度係数となるように選択され、ここでは、a=0.40、b=0.60とした。本実施例1のサーミスタ素子の製造工程を図3に基づいて説明する。
【0063】調合1工程では、複合酸化物Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 の出発原料粉体として、各金属元素の酸化物である、いずれの純度も99.9%以上のY2 3 、Cr2 3 およびMn2 3 を用意し、熱処理(仮焼成)後の組成がY(Cr0.5Mn0.5 )O3 となるように秤量した。次いで、混合工程で、原料を均一混合するために媒体攪拌ミルを用いて、これら原料粉体を混合した。媒体攪拌ミルとしてはパールミル装置(アシザワ(株)製 RV1V、有効容積:1.0リットル実容量:0.5リットル)を使用し、粉砕媒体としてのジルコニア(ZrO2)製ボール(直径0.5mm)で攪拌槽体積の80%を充填し、混合原料に対しては分散剤とバインダーを添加して、10時間の混合・粉砕を行った。操作条件は、周速12m/sec、回転数3110rpmとした。
【0064】得られたY2 3 、Cr2 3 およびMn2 3 の混合原料スラリーは、スプレードライヤで乾燥室入口温度200℃、出口温度120℃の条件で乾燥した。次いで、仮焼成工程において、乾燥した混合原料を、99.7%アルミナ(Al2 3 )製のルツボに入れ、高温炉で大気中1100〜1300℃で1〜2時間仮焼成し、塊状となったY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 の仮焼成物を得た。この仮焼成物を、ライカイ機で粗粉砕した後、500μmの篩いを通した。
【0065】次に、調合2工程において、得られた原料組成物Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3と、これとともに混合焼結体を形成する金属酸化物Y2 3 を、上記目的組成aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・bY2 3 (a=0.40、b=0.60)となるように調合してサーミスタ組成物とした。さらに、酸素吸蔵放出組成物であるCeO2 と、焼結助剤のCaCO3 、SiO2 を調合した。CeO2 は、純度99.9%以上の微粉末原料(高純度化学(株)製)を用い、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とY2 3 とCeO2 の合計モル数の5モル%を添加した。また、CaCO3 は4.5重量%、SiO2 は3重量%をそれぞれ添加した。続く混合・粉砕工程では、上記混合工程と同様の媒体攪拌ミル(パールミル装置)を使用して、均一混合を図り、同様の粉砕条件で、混合・粉砕を行った。また、混合・粉砕工程では、分散剤、バインダー、離型剤を添加して同時に粉砕した。
【0066】造粒・乾燥工程では、このようにして得た酸素吸蔵放出組成物CeO2 を含む複合原料スラリーを、スプレードライヤーで造粒、乾燥し、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 、Y2 3 、CeO2 を含む複合原料の混合粉体を得た。この混合粉体をサーミスタ複合原料として、上記図1に示したのと同様の形状のサーミスタ素子1を作製した。成形工程は、金型成形法で行い、リード線11、12は、外径φ0.3mm、長さ10.5mmの純白金(Pt100)製のものとし、これをインサートした外径φ1.89mmの金型を用いて、圧力約1000kgf/cm2 で成形することにより、リード線が埋設された外径φ1.9mmの成形体を得た。
【0067】得られたサーミスタ素子1の成形体は、焼成工程において、Al2 3 製波型セッタに並べ、大気中、1400〜1700℃で1〜2時間焼成して、焼結粒子径を8μmとした焼結体を得た。このようにして、混合焼結体Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 +CeO2 からなる外径1.6mmのサーミスタ素子1を得た。このサーミスタ素子1を、上記図2に示す一般的な温度センサアッシーに組み込んで温度センサSとした。
【0068】次に、実施例1のサーミスタ素子1を組み込んだ温度センサSを、高温炉に入れ、大気中1100℃で1000時間の高温連続耐久試験を行い、温度センサの抵抗変化を測定した。結果を表1に示す。ここで、表1の抵抗変化率ΔRは、大気中1100℃での高温連続耐久試験中の、温度センサの抵抗変化を示すものであり、下記式(1)で表される。
ΔR(%)=(RMAX t /R初期t )×100−100・・・(1)
式中、R初期t は所定温度t(例えば600℃)における初期抵抗値、RMAX tは1100℃で放置中の温度センサSの所定温度tにおける最大抵抗値を示す。
【0069】この高温耐久試験において、サーミスタ素子1は金属ケース2中で還元雰囲気の影響を受けるため、抵抗変化率ΔRは、本実施例のサーミスタ素子1の抵抗安定性を図る指標となる。表1の結果から、実施例1のサーミスタ素子は、金属ケース2中のように還元雰囲気に晒される条件下でも、最大抵抗変化率ΔRが3〜5%程度のレベルを安定して実現できることが確認できた。
【0070】また、高温連続耐久試験後に、温度センサ100台の温度精度を評価した結果を表1に併記する。温度精度の評価方法は、温度センサ100台の抵抗値−温度データから、600℃における抵抗値の標準偏差σ(シグマ)を算出し、標準偏差σの6倍を抵抗値のバラツキ幅(両側)とし、抵抗値バラツキ幅を温度換算した値を半分にした値Aとして、温度精度±A℃として評価した。
【0071】この結果、表1のように、実施例1のサーミスタ素子は、1100℃、1000時間の高温連続耐久試験後の温度精度±5℃が得られた。なお、耐久試験前の温度センサ100台の初期温度精度は±5℃であり、耐久試験前後で温度精度の変化がない。このように、本発明のサーミスタ素子は、耐還元性に優れて、安定した特性を長期に渡り維持できるので、高価な特殊金属材料のケースを不要とし、安価でしかも高精度な温度センサを提供することができる。
【0072】
【表1】

【0073】(実施例2)実施例2では、上記実施例1と同様の出発原料を用いて、混合焼結体aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・bY2 3 (a=0.40、b=0.60)に、酸素吸蔵放出組成物としてCeO2 を添加したサーミスタ素子を製作した。本実施例2のサーミスタ素子の製造工程を図4に基づいて説明する。
【0074】調合1工程では、混合焼結体Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 の出発原料粉体として、各金属元素の酸化物である、いずれの純度も99.9%以上のY2 3 、Cr2 3 およびMn2 3 の粉末を用意し、熱処理(仮焼成)後に上記目的組成となるように秤量した。以下、上記実施例1と同様の混合工程、仮焼成工程を経て、塊状となったY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 の仮焼成物を得た。この仮焼成物を、さらにライカイ機で粗粉砕した後、200μmの篩いを通して、サーミスタ組成物とした。
【0075】調合2工程では、実施例1と同様に、得られたサーミスタ組成物Y(Cr0.5Mn0.5 )O3 ・Y2 3 に対して、酸素吸蔵放出組成物であるCeO2 をY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とY2 3 とCeO2 の合計モル数の5モル%と、焼結助剤のCaCO3 4.5重量%、SiO2 3重量%を調合した複合原料を得、以下、同様の方法で、混合・粉砕、造粒・乾燥、成形し、焼成を行って、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 +CeO2 からなるサーミスタ素子を得た。
【0076】このサーミスタ素子を組み込んだ温度センサを製作して、実施例1と同様にして評価し、最大抵抗変化率ΔR、高温連続耐久試験後の温度精度および初期温度精度を表1に示した。表1のように、本実施例2のサーミスタ素子によっても、最大抵抗変化率ΔRが3〜5%程度のレベルを安定して実現できることが確認できた。また、高温連続耐久試験後の温度精度±5℃、耐久試験前の初期温度精度は±5℃であり、耐還元性に優れる高精度のサーミスタ素子が実現できる。
【0077】(実施例3)実施例3では、実施例2と同様の方法で、混合焼結体aY(Cr0.5 Mn0.5)O3 ・bY2 3 (a=0.38、b=0.62)に酸素吸蔵放出組成物としてPr6 11を添加したサーミスタ素子を製作した。本実施例3のサーミスタ素子の製造工程を図5に示す。図5に示す製造工程中、仮焼成工程までは実施例2(図4参照)と同様にして、サーミスタ組成物Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 を得た。調合2工程で、サーミスタ組成物Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 に、酸素吸蔵放出組成物であるPr6 11と、焼結助剤のCaCO3 4.5重量%、SiO2 3重量%を調合し、複合原料を得た。Pr6 11は、純度99.9%以上の微粉末原料(高純度化学(株)製)を用い、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とY2 3 とPr6 11の合計モル数の5モル%を添加した。以下、実施例1と同様の方法で、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 +Pr6 11からなるサーミスタ素子を得た。
【0078】このサーミスタ素子を用いて製作した温度センサを、実施例1と同様にして評価し、最大抵抗変化率ΔR、高温連続耐久試験後の温度精度および初期温度精度を表1に示した。表1のように、本実施例2のサーミスタ素子によっても、最大抵抗変化率ΔRが5〜8%程度のレベルを安定して実現できることが確認できた。また、高温連続耐久試験後の温度精度±5℃、耐久試験前の初期温度精度は±5℃であり、耐還元性に優れる高精度のサーミスタ素子が実現できる。
【0079】(実施例4)実施例4では、実施例2と同様の方法で、混合焼結体aY(Cr0.5 Mn0.5)O3 ・bY2 3 (a=0.42、b=0.58)に酸素吸蔵放出組成物としてTb4 7 を添加したサーミスタ素子を製作した。本実施例4のサーミスタ素子の製造工程を図6に示す。図6に示す製造工程中、仮焼成工程までは実施例2(図4参照)と同様にして、サーミスタ組成物Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 を得た。調合2工程で、サーミスタ組成物Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 に、酸素吸蔵放出組成物であるTb4 7 と、焼結助剤のCaCO3 4.5重量%、SiO2 3重量%を調合して複合原料とした。Tb4 7 は、純度99.9%以上の微粉末原料(高純度化学(株)製)を用い、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とY2 3 とTb4 7 の合計モル数に対して5モル%を添加した。以下、実施例1と同様の方法で、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 +Tb4 7 からなるサーミスタ素子を得た。
【0080】このサーミスタ素子を組み込んだ温度センサを製作して、実施例1と同様にして評価し、最大抵抗変化率ΔR、高温連続耐久試験後の温度精度および初期温度精度を表1に示した。表1の結果から、本実施例4のサーミスタ素子は、最大抵抗変化率ΔRが5〜10%程度のレベルを安定して実現できることが確認できた。また、高温連続耐久試験後の温度精度±5℃、耐久試験前の初期温度精度は±5℃であり、耐還元性に優れる高精度のサーミスタ素子が実現できる。
【0081】(実施例5)図7に示す製造工程に基づき、混合焼結体aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・bY2 3 (a=0.40、b=0.60)に酸素吸蔵放出組成物として2CeO2 ・Y2 3 を添加したサーミスタ素子を製作した。本実施例6では、混合焼結体Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 と酸素吸蔵放出組成物2CeO2 ・Y2 3 を別々に調合し、混合してサーミスタ複合原料を得た。
【0082】まず、調合1工程から仮焼成工程までは実施例2(図4参照)と同様にして、混合焼結体の原料となるサーミスタ組成物Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 を得た。次に、調合2工程で、酸素吸蔵放出組成物2CeO2 ・Y2 3 の出発原料粉体として、純度99.9%以上のCeO2 、Y2 3 を用意し、2CeO2 ・Y2 3 組成となるように調合した。以下、混合焼結体の原料組成物の調製と同様に、混合工程、仮焼成工程を経て、酸素吸蔵放出組成物2CeO2 ・Y2 3 を得た。
【0083】続いて、調合3工程で、上記のようにして得たサーミスタ組成物Y(Cr0.5Mn0.5 )O3 ・Y2 3 と酸素吸蔵放出組成物2CeO2 ・Y2 3 を調合し複合原料とした。酸素吸蔵放出組成物2CeO2 ・Y2 3 は、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とY2 3 と2CeO2 ・Y2 3 の合計モル数の5モル%とし、さらに、焼結助剤のCaCO3 4.5重量%、SiO2 3重量%を添加した。以下、実施例1と同様の方法で、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 +2CeO2 ・Y2 3 からなるサーミスタ素子を得た。
【0084】このサーミスタ素子を組み込んだ温度センサを製作して、実施例1と同様にして評価し、最大抵抗変化率ΔR、高温連続耐久試験後の温度精度および初期温度精度を表1に示した。表1の結果から、本実施例5のサーミスタ素子は、最大抵抗変化率ΔRが2〜4%程度のレベルを安定して実現できることが確認できた。また、高温連続耐久試験後の温度精度±5℃、耐久試験前の初期温度精度は±5℃であり、耐還元性に優れる高精度のサーミスタ素子が実現できる。
【0085】(実施例6)図8に示す製造工程に基づき、混合焼結体aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・bY2 3 (a=0.38、b=0.62)に酸素吸蔵放出組成物としてCeO2・2ZrO2 を添加したサーミスタ素子を製作した。本実施例6では、混合焼結体Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 と酸素吸蔵放出組成物2CeO2 ・Y2 3 を別々に調合し、混合してサーミスタ複合原料を得た。
【0086】まず、調合1工程から仮焼成工程までは実施例2(図4参照)と同様にして、混合焼結体の原料となるサーミスタ組成物Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 を得た。次に、調合2工程で、酸素吸蔵放出組成物CeO2 ・2ZrO2 の出発原料粉体として、純度99.9%以上のCeO2 、ZrO2 を用意し、CeO2 ・2ZrO2 組成となるように調合した。以下、サーミスタ組成物の調製と同様に、混合工程、仮焼成工程を経て、酸素吸蔵放出組成物CeO2 ・2ZrO2を得た。
【0087】続いて、調合3工程で、上記のようにして得たサーミスタ組成物Y(Cr0.5Mn0.5 )O3 ・Y2 3 と酸素吸蔵放出組成物CeO2 ・2ZrO2 を調合し複合原料とした。酸素吸蔵放出組成物CeO2 ・2ZrO2 は、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とY2 3 とCeO2 ・2ZrO2 の合計モル数の5モル%とし、さらに、焼結助剤のCaCO3 4.5重量%、SiO2 3重量%を添加した。以下、実施例1と同様の方法で、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 +CeO2 ・2ZrO2 からなるサーミスタ素子を得た。
【0088】このサーミスタ素子を組み込んだ温度センサを製作して、実施例1と同様にして評価し、最大抵抗変化率ΔR、高温連続耐久試験後の温度精度および初期温度精度を表1に示した。表1のように、本実施例6のサーミスタ素子によっても、最大抵抗変化率ΔRが2〜4%程度のレベルを安定して実現できることが確認できた。また、高温連続耐久試験後の温度精度±4℃、耐久試験前の初期温度精度は±4℃であり、耐還元性に優れる高精度のサーミスタ素子が実現できる。
【0089】(実施例7)実施例7では、実施例2と同様の方法で、混合焼結体aY(Cr0.5 Mn0.5)O3 ・bY2 3 (a=0.38、b=0.62)に酸素吸蔵放出組成物としてCeO2 を添加したサーミスタ素子を製作した。図9に製造工程を示すように、本実施例の方法は、粒子径がナノメートルレベルのCeO2 超微粒子(以下、ナノCeO2 という)としている点で実施例2(図4参照)と異なっている。
【0090】図9に示す製造工程中、仮焼成工程までは実施例2(図4参照)と同様にして、サーミスタ組成物Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 を得た。調合2工程では、この原料組成物に対し、酸素吸蔵放出組成物であるナノCeO2 を調合して複合原料とした。ナノCeOは、純度99.95%、平均粒径10nmの超微粒子原料(シーアイ化成(株)製)を用い、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とY23 とナノCeO2 の合計モル数の5モル%を添加した。さらに、焼結助剤のCaCO3 4.5重量%、SiO2 3重量%を添加し、以下、実施例1と同様の方法で、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 +CeO2 からなるサーミスタ素子を得た。
【0091】このサーミスタ素子を組み込んだ温度センサを製作して、実施例1と同様にして評価し、最大抵抗変化率ΔR、高温連続耐久試験後の温度精度および初期温度精度を表1に示した。表1のように、本実施例7のサーミスタ素子は、最大抵抗変化率ΔRが1〜3%程度のレベルを安定して実現し、抵抗変化がより小さくできることが確認された。また、高温連続耐久試験後の温度精度±5℃、耐久試験前の初期温度精度は±5℃であり、耐還元性に優れる高精度のサーミスタ素子が実現できる。
【0092】(実施例8)実施例8では、実施例5と同様の方法で、混合焼結体aY(Cr0.5 Mn0.5)O3 ・bY2 3 (a=0.38、b=0.62)に酸素吸蔵放出組成物として2CeO2 ・Y2 3 を添加したサーミスタ素子を製作した。図10に製造工程を示すように、本実施例5では、2CeO2 ・Y2 3 の出発原料を、粒子径がナノメートルレベルのCeO2 、Y2 3 超微粒子(以下、ナノCeO2 、ナノY2 3 という)としている点で実施例5(図7参照)と異なっている。
【0093】まず、調合1工程から仮焼成工程までは実施例5(図7参照)と同様にして、混合焼結体のサーミスタ組成物Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 を得た。次に、調合2工程で、酸素吸蔵放出組成物2CeO2 ・Y2 3 の出発原料粉体として、いずれも純度99.95%の超微粒子原料であるナノCeO2 (平均粒径10nm、シーアイ化成(株)製)、ナノY2 3 (平均粒径20nm、シーアイ化成(株)製)を用意した。これらナノCeO2 、ナノY2 3 を2CeO2 ・Y2 3 組成となるように調合し、以下、同様に、混合工程、仮焼成工程を経て、平均粒径50〜100nmのナノメートルレベルで固溶体となった酸素吸蔵放出組成物2CeO2 ・Y2 3 を得た。
【0094】続いて、調合3工程で、上記のようにして得たサーミスタ組成物Y(Cr0.5Mn0.5 )O3 ・Y2 3 と酸素吸蔵放出組成物2CeO2 ・Y2 3 を調合し複合原料とした。酸素吸蔵放出組成物2CeO2 ・Y2 3 は、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とY2 3 と2CeO2 ・Y2 3 の合計モル数の5モル%とし、さらに、焼結助剤のCaCO3 4.5重量%、SiO2 重量%を添加した。以下、実施例1と同様の方法で、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 +2CeO2 ・Y2 3 からなるサーミスタ素子を得た。
【0095】このサーミスタ素子を組み込んだ温度センサを製作して、実施例1と同様にして評価し、最大抵抗変化率ΔR、高温連続耐久試験後の温度精度および初期温度精度を表1に示した。表1の結果から、本実施例8のサーミスタ素子は、最大抵抗変化率ΔRが1〜3%程度と高いレベルを安定して実現できることが確認できた。また、高温連続耐久試験後の温度精度±5℃、耐久試験前の初期温度精度は±5℃であり、耐還元性に優れる高精度のサーミスタ素子が実現できる。
【0096】(実施例9)実施例9では、実施例2と同様の工程で、混合焼結体aY(Cr0.5 Mn0.5)O3 ・bY2 3 (a=0.40、b=0.60)に、酸素吸蔵放出組成物としてCeO2 を添加したサーミスタ素子を製作した。図11に製造工程を示すように、本実施例9は、混合焼結体の出発原料として平均粒径が100nm以下のゾル粒子を用いる点で実施例2と異なっている。
【0097】調合1工程では、混合焼結体Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 の出発原料粉体として、各金属元素の酸化物である、いずれの純度も99.9%以上で、平均粒径100nm以下のY2 3 、Cr2 3 およびMn2 3 のゾル粒子を用意し、熱処理(仮焼成)後の組成がaY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・bY2 3 (a=0.40、b=0.60)となるように秤量した。以下、上記実施例1と同様の混合工程、仮焼成工程を経て、塊状となったY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 の仮焼成物を得た。この仮焼成物を、さらにライカイ機で粗粉砕した後、500μmの篩いを通して、サーミスタ組成物とした。
【0098】調合2工程では、得られたサーミスタ組成物Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 と、酸素吸蔵放出組成物であるCeO2 を調合した。CeO2 は、実施例1と同様の、純度99.9%以上の微粉末原料(高純度化学(株)製)を用い、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とY2 3 とCeO2 の合計モル数の5モル%を添加して複合原料とした。同様に、焼結助剤のCaCO3 4.5重量%、SiO23重量%を調合し、以下、実施例1と同様の方法で、造粒・乾燥、成形し、焼成を行って、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 +CeO2 からなるサーミスタ素子を得た。
【0099】このサーミスタ素子を組み込んだ温度センサを製作して、実施例1と同様にして評価し、最大抵抗変化率ΔR、高温連続耐久試験後の温度精度および初期温度精度を表2に示した。表2の結果から、本実施例9のサーミスタ素子は、最大抵抗変化率ΔRが3〜5%程度のレベルを安定して実現できることが確認できた。また、高温連続耐久試験後の温度精度±3℃、耐久試験前の初期温度精度は±3℃であり、耐還元性に優れる高精度のサーミスタ素子が実現できる。
【0100】
【表2】

【0101】(実施例10)実施例10では、混合焼結体aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・bY2 3 (a=0.38、b=0.62)に、酸素吸蔵放出組成物としてCeO2 を添加したサーミスタ素子を製作した。図12に製造工程を示すように、本実施例10は、混合焼結体の原料となるサーミスタ組成物を液相法で調製する。
【0102】調合1工程では、混合焼結体Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 の出発原料粉体として、各金属元素の硝酸塩である、いずれの純度も99.9%以上の、Y(NO33 ・6H2 O、Cr(NO33 ・9H2 O、Mn(NO32 ・6H2 Oを用意して、熱処理後に上記目的組成となるように秤量した。また、焼結助剤成分であるCaの原料として、Ca(NO32 ・4H2 Oを用い、これを混合焼結体に対し酸化物換算で4.5重量%となるように秤量した。また、錯体形成剤となるクエン酸と、重合剤としてのエチレングリコールを用意した。この時、クエン酸のモル数をc、サーミスタ素子の上記目的組成における各金属元素Y、Cr、Mnの全量をモル数に換算した値をdとし、クエン酸濃度がd/c=4倍当量となるようにクエン酸を秤量し、純水に溶解してクエン酸溶液を得た。
【0103】溶解・混合工程で、このクエン酸溶液に上記出発原料とCa(NO32 ・4H2 Oを添加し、各金属元素イオン(Y、Cr、Mn、Caのイオン)とクエン酸とを反応させて、複合錯体化合物を形成した。続いて、加熱・重合工程で、複合錯体化合物の重合体を得るため、重合剤であるエチレングリコールを添加して、攪拌・混合した。この後に、得られた混合溶液を80〜95℃で加熱し、重合反応を進行させた。十分に重合反応が進行した時点で加熱を終了し、粘調溶液であるY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 の前駆体溶液を得た。このY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 の前駆体溶液を99.7%アルミナ製のルツボに入れ、乾燥させた後、600〜1200℃で加熱処理して、aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・bY2 3 (a=0.38、b=0.62)組成の粉体を得、混合、粉砕してサーミスタ組成物とした。
【0104】次いで、調合2工程で、得られたサーミスタ組成物Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 と、酸素吸蔵放出組成物であるCeO2 を調合した。CeO2 は、実施例1と同様の、純度99.9%以上の微粉末原料(高純度化学(株)製)を用い、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とY2 3 とCeO2 の合計モル数の5モル%を添加して複合原料とした。同様に、焼結助剤のCaCO3 4.5重量%、SiO2 3重量%を調合し、以下、実施例1と同様の方法で、造粒・乾燥、成形し、焼成を行って、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 +CeO2 からなるサーミスタ素子を得た。
【0105】このサーミスタ素子を組み込んだ温度センサを製作して、実施例1と同様にして評価し、最大抵抗変化率ΔR、高温連続耐久試験後の温度精度および初期温度精度を表2に示した。表2の結果から、本実施例10のサーミスタ素子は、最大抵抗変化率ΔRが3〜5%程度のレベルを安定して実現できることが確認できた。また、高温連続耐久試験後の温度精度±3℃、耐久試験前の初期温度精度は±3℃であり、耐還元性に優れる高精度のサーミスタ素子が実現できる。
【0106】(実施例11)実施例11では、上記実施例10と同様の前駆体溶液から混合焼結体:aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・bY2 3 (a=0.38、b=0.62)に、上記実施例5で用いた2CeO2 ・Y2 3 を液相法で合成して、添加、分散したサーミスタ素子を製作した。本実施例11の製造工程を図13に示す。
【0107】調合1工程では、上記実施例10と同様にして複合酸化物Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 の出発原料となる各金属元素の硝酸塩を、熱処理後にY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 組成となるように秤量した。また、焼結助剤成分であるCaの硝酸塩を秤量し、錯体形成剤であるクエン酸溶液と、重合剤としてのエチレングリコールを用意した。以下、同様にして、溶解・混合工程で、クエン酸溶液に上記出発原料とCa(NO32 ・4H2 Oを添加、反応させて、複合錯体化合物を形成し、続いて、加熱・重合工程で、エチレングリコールを添加、加熱して、重合反応を進行させ、粘調溶液であるY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 の前駆体溶液(第1の前駆体溶液)を得た。
【0108】調合2工程では、酸素吸蔵放出組成物2CeO2 ・Y2 3 の前駆体溶液を得るため、出発原料粉体として、Ce、Yの硝酸塩を用意し、調合1工程と同様にして、溶解・混合工程で、クエン酸と各元素イオン(Ce、Y)を反応させて、複合錯体化合物を形成し、加熱・重合工程で、エチレングリコールを添加、加熱して、重合反応を進行させ、2CeO2 ・Y2 3 の前駆体溶液(第1の前駆体溶液)を得た。
【0109】続いて、混合工程で、これらY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 の前駆体溶液と2CeO2 ・Y2 3 の前駆体溶液とを混合して混合前駆体溶液を得た。この混合前駆体溶液を、99.7%アルミナ製のルツボに入れ、乾燥させた後、600〜1200℃で加熱処理して、サーミスタ組成物Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y23 (a=0.38、b=0.62)に2CeO2 ・Y2 3 が分散した複合原料を得、以下、実施例1と同様の方法で、造粒・乾燥、成形し、焼成を行って、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 +2CeO2 ・Y2 3 からなるサーミスタ素子を得た。
【0110】このサーミスタ素子を組み込んだ温度センサを製作して、実施例1と同様にして評価し、最大抵抗変化率ΔR、高温連続耐久試験後の温度精度および初期温度精度を表2に示した。表2の結果から、本実施例11のサーミスタ素子は、最大抵抗変化率ΔRが1〜2%程度の高いレベルを安定して実現できることが確認できた。また、高温連続耐久試験後の温度精度±3℃、耐久試験前の初期温度精度は±3℃であり、耐還元性に優れる高精度のサーミスタ素子が実現できる。
【0111】(実施例12)図14に示す製造工程に基づき、混合焼結体:aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3・bY2 3 (a=0.38、b=0.62)に酸素吸蔵放出組成物CeO2 を添加、分散させたサーミスタ素子を製作した。本実施例12では、混合焼結体のの前駆体化合物を含む溶液を液相法で合成し、この前駆体溶液にCeO2 を添加して混合前駆体溶液とする。
【0112】調合1工程では、混合焼結体の出発原料として、各金属元素の硝酸塩化合物を用い、いずれも純度99.9%以上の、Y(NO33 ・6H2 O、Cr(NO33 ・9H2 O、Mn(NO32 ・6H2 Oを用意して、熱処理後に上記目的組成となるように秤量した。また、焼結助剤成分であるCaの原料として、Ca(NO32 ・4H2 Oを用い、これを酸化物換算で4.5重量%となるように秤量した。また、錯体形成剤となるクエン酸と、重合剤としてのエチレングリコールを用意した。この時、クエン酸のモル数をc、サーミスタ素子の上記目的組成における各金属元素Y、Cr、Mnの全量をモル数に換算した値をdとし、クエン酸濃度がd/c=4倍当量となるようにクエン酸を秤量し、純水に溶解してクエン酸溶液を得た。
【0113】溶解・混合工程で、このクエン酸溶液に上記出発原料とCa(NO32 ・4H2 Oを添加し、各金属元素イオン(Y、Cr、Mn、Caのイオン)とクエン酸とを反応させて、複合錯体化合物を形成した。続いて、加熱・重合工程で、重合剤であるエチレングリコールを添加して、攪拌・混合し、さらに、得られた混合溶液を80〜95℃で加熱し、重合反応を進行させた。十分に重合反応が進行した時点で加熱を終了し、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 の前駆体溶液を得た。
【0114】添加・混合工程で、このY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 の前駆体溶液に、実施例1で用いたのと同じCeO2 をY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とY2 3 とCeO2 の合計モル数の5モル%の割合で添加し、混合した。CeO2 が十分に混合、分散したY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 の混合前駆体溶液を、99.7%アルミナ製のルツボに入れ、乾燥させた後、600〜1200℃で加熱処理して、酸素吸蔵放出組成物であるCeO2 が混合、分散したサーミスタ組成物Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 の粉体を得、サーミスタ複合原料とした。
【0115】次いで、実施例1と同様にして、得られた複合原料を、造粒・乾燥、成形し、焼成して、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 +CeO2 よりなるサーミスタ素子を得た。このサーミスタ素子を組み込んだ温度センサを製作して、実施例1と同様にして評価し、最大抵抗変化率ΔR、高温連続耐久試験後の温度精度および初期温度精度を表1に示した。表1のように、本実施例7のサーミスタ素子によっても、最大抵抗変化率ΔRが1〜2%程度の高いレベルを安定して実現できることが確認できた。また、高温連続耐久試験後の温度精度±3℃、耐久試験前の初期温度精度は±3℃であり、耐還元性に優れる高精度のサーミスタ素子が実現できる。
【0116】(実施例13)図15に示す製造工程に基づき、混合焼結体:aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3・bY2 3 (a=0.40、b=0.60)に酸素吸蔵放出組成物CeO2 を添加、分散させたサーミスタ素子を製作した。本実施例12では、混合焼結体の出発原料として酸化物粉体を用いる一方、液相法でCeO2 の前駆体溶液を合成する。
【0117】調合1工程では、CeO2 の出発原料として、純度99.9%以上の硝酸塩化合物Ce(NO33 ・6H2 Oを用意した。以下、実施例10と同様にして、クエン酸溶液に溶解、混合して反応させることにより錯体化合物を形成し、さらに、重合剤であるエチレングリコールを添加して、攪拌・混合した後、80〜95℃で加熱して重合反応を進行させた。十分に重合反応が進行した時点で加熱を終了し、CeO2 の前駆体溶液を得た。
【0118】調合2工程では、混合焼結体の出発原料として、各金属元素の酸化物粉末を用い、いずれも純度99.9%以上の、Y2 3 、Cr2 3 、Mn2 3 を用意して、熱処理後に上記目的組成となるように秤量した。これを、実施例1と同様の混合工程、仮焼成工程を経て、aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・bY2 3 (a=0.40、b=0.60)の原料組成物を得た。これをライカイ機で粗粉砕し、500μm篩いを通した後、同様に、仮焼成(熱処理)し、媒体攪拌ミルで粉砕してサーミスタ組成物の粉砕スラリーを得た。
【0119】次いで混合工程で、上記CeO2 の前駆体溶液に、サーミスタ組成物の粉砕スラリーを、媒体攪拌ミルを用いて添加、混合して、サーミスタ組成物が分散した混合前駆体溶液を得た。これを、99.7%アルミナ製のルツボに入れ、乾燥させた後、600〜1200℃で加熱処理して、酸素吸蔵放出組成物であるCeO2 が混合、分散したY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 の粉体を得、サーミスタ複合原料とした。
【0120】調合3工程で、得られたサーミスタ複合原料に対し、焼結助剤であるCaCO3 4.5重量%、SiO2 3重量%を添加して、実施例1と同様に、媒体攪拌ミルを用いて混合・粉砕した後、造粒・乾燥、成形、焼成して、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 +CeO2 よりなるサーミスタ素子を得た。このサーミスタ素子を組み込んだ温度センサを製作して、実施例1と同様にして評価し、最大抵抗変化率ΔR、高温連続耐久試験後の温度精度および初期温度精度を表1に示した。表1のように、本実施例12のサーミスタ素子によっても、最大抵抗変化率ΔRが3〜5%程度のレベルを安定して実現できることが確認できた。また、高温連続耐久試験後の温度精度±5℃、耐久試験前の初期温度精度は±5℃であり、耐還元性に優れる高精度のサーミスタ素子が実現できる。
【0121】(比較例1)比較のために、酸素吸蔵放出組成物CeO2 を添加せずに、実施例1と同様の原料粉体を出発原料として混合焼結体:aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・bY23 (a=0.38、b=0.62)よりなるサーミスタ素子を製作した。図16にその製造工程を示す。
【0122】調合1工程では、出発原料として、各金属元素の酸化物粉末を用い、いずれも純度99.9%以上の、Y2 3 、Cr2 3 、Mn2 3 を用意して、熱処理後に上記目的組成となるように秤量した。これを、実施例1と同様の混合工程、仮焼成工程を経て、aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・bY2 3 (a=0.40、b=0.60)の原料組成物を得た。これをライカイ機で粗粉砕し、500μm篩いを通した。次いで、調合2工程で、焼結助剤であるCaCO3 4.5重量%、SiO2 3重量%を添加し、実施例1と同様にして、媒体攪拌ミルを用いて、混合・粉砕して、造粒・乾燥、成形し、焼成して、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 +CeO2 よりなるサーミスタ素子を得た。
【0123】このサーミスタ素子を組み込んだ温度センサを製作して、実施例1と同様にして評価し、最大抵抗変化率ΔR、高温連続耐久試験後の温度精度および初期温度精度を表2に示した。その結果、最大抵抗変化率ΔRが30%程度と大きく、また、高温連続耐久試験後の温度精度±15℃と、耐久試験前の初期温度精度±5℃に対して悪化している。このように、酸素吸蔵放出組成物を添加しないサーミスタ素子は、最大抵抗変化率ΔRが大きく、安定した抵抗値特性を有する、高精度な温度センサを得ることができない。
【0124】(実施例14〜19、比較例2、3)実施例2と同様の方法で、混合焼結体:aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・bY2 3 (a=0.38、b=0.62)に酸素吸蔵放出組成物CeO2 を添加、分散させたサーミスタ素子を製作した。この時、CeO2 の添加量を、表3に示すように1モル%から95モル%の範囲で変化させた(実施例14〜19)。また、比較のため、CeO2 の添加量を97モル%、0.5モル%としたサーミスタ素子を、同様の方法で製作し、それぞれ比較例2、3とした。
【0125】これらサーミスタ素子を組み込んだ温度センサを製作して、実施例1と同様にして評価し、最大抵抗変化率ΔR、高温連続耐久試験後の温度精度および初期温度精度を表3に示した。表3のように、CeO2 の添加量が1モル%から95モル%の範囲にある実施例14〜19のサーミスタ素子は、最大抵抗変化率ΔRが3〜10%程度のレベルを安定して実現できることが確認できた。また、高温連続耐久試験後の温度精度±5℃、耐久試験前の初期温度精度は±5℃であり、耐還元性に優れる高精度のサーミスタ素子が実現できる。
【0126】これに対し、比較例2のサーミスタ素子は、抵抗値が500kΩと大きくサーミスタとして不能である。また、比較例3のサーミスタ素子は、最大抵抗変化率ΔRが20〜30%程度と大きく、また、高温連続耐久試験後の温度精度±20℃と、耐久試験前の初期温度精度±5℃に対して悪化している。以上より、酸素吸蔵放出組成物の添加量は、1モル%から95モル%の範囲で選択するのがよいことがわかる。
【0127】
【表3】

【0128】以上のように、本発明の耐還元性サーミスタ素子は、酸素吸蔵放出組成物を添加、分散させることにより、還元雰囲気における組成の変動を抑制し、サーミスタ素子の還元を抑制して、抵抗変化を抑制する。よって、従来のように、素子抵抗を安定化するための熱エージングや、高価な金属材料のケースを用いる必要がなく、低コストで、抵抗変化率ΔRが小さく、安定した特性を有する高精度なサーミスタ素子を実現する。
【出願人】 【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成12年8月10日(2000.8.10)
【代理人】 【識別番号】100067596
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 求馬
【公開番号】 特開2002−57003(P2002−57003A)
【公開日】 平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願番号】 特願2000−242104(P2000−242104)