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【発明の名称】 巻線の絶縁被覆材料
【発明者】 【氏名】田尻 浩三

【氏名】桑原 正芳

【氏名】奥村 康則

【要約】 【課題】低誘電性、耐熱性及び高耐湿性に優れる巻線の絶縁被覆材料を提供する。

【解決手段】下記式(1):【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記式(1):【化1】

ただし、式(1)中、R1は4価の芳香族有機基を表わし;R2は2価の芳香族有機基を表わし;およびR1および/またはR2はC−H結合を有さない芳香族有機基を表わす、で示される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂を含んでなる巻線の絶縁被覆材料。
【請求項2】 該式(1)中、R1および/またはR2はすべての残位にハロゲン原子またはパーハロゲノアルキル基を有する芳香族有機基を表わす、請求項1に記載の巻線の絶縁被覆材料。
【請求項3】 該式(1)中、R1およびR2はC−H結合を有さない芳香族有機基を表わす、請求項1に記載の巻線の絶縁被覆材料。
【請求項4】 該式(1)中、R1およびR2はすべての残位にハロゲン原子またはパーハロゲノアルキル基を有する芳香族有機基を表わす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の巻線の絶縁被覆材料。
【請求項5】 該式(1)中、R1は、下記式:【化2】

ただし、上記式中、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、パーハロゲノアルキル基、パーハロゲノアルコキシル基、パーハロゲノアルケノキシ基、パーハロゲノアルキノキシ基、パーハロゲノフェノキシ基、パーハロゲノナフトキシ基またはパーハロゲノアントラトキシ基を表わし;およびXは、下記式:【化3】

ただし、上記式中、R7及びR8は、それぞれ独立して、ハロゲン原子またはパーフルオロアルキル基を表わし;R9はパーフルオロアルキレン基を表わし;およびmは1〜10の整数である、を表わす、請求項1または3に記載の巻線の絶縁被覆材料。
【請求項6】 該式(1)中、R2は、下記式:【化4】

ただし、上記式中、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、パーハロゲノアルキル基、パーハロゲノアルコキシル基、パーハロゲノアルケノキシ基、パーハロゲノアルキノキシ基、パーハロゲノフェノキシ基、パーハロゲノナフトキシ基またはパーハロゲノアントラトキシ基を表わし;およびYは、下記式:【化5】

ただし、上記式中、R13及びR14は、それぞれ独立して、ハロゲン原子またはパーフルオロアルキル基を表わし;R15はパーフルオロアルキレン基を表わし;およびnは1〜10の整数である、を表わす、請求項1、3または5に記載の巻線の絶縁被覆材料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、巻線の絶縁被覆材料に関するものである。より詳しくは、本発明は、優れた高周波電圧の印加に対する耐劣化性を有するモーター、トランス、コイル等において使用される巻線の絶縁被覆材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】巻線は、電気機器の内部にコイル状に巻いて使用される電線であり、例えば、モータ、変圧器(トランス)、高周波回路、電子機器用コイルや発電機など、きわめて広範な分野において使用されている。
【0003】巻線は、導体上に合成エナメルを塗布し焼付けた焼付線と、導体周上に絶縁物を横巻きした横巻線とに大別されるが、それぞれの特性に応じて各種分野に使用されている。特に最近のエレクトロニクスの進歩により、電気エネルギー消費機器分野への巻線の用途展開が著しいが、電気機器の小型化や軽量化等にともない耐熱エナメル線に対する重要が増大している。従来、ポリイミド線やポリアミドイミド線など、耐熱性に優れた巻線が開発されている。
【0004】しかしながら、従来の巻線の被覆に使用される材料は、高周波の電圧が印加される条件下で使用されると、その絶縁被膜は劣化されやすく、ゆえに電気製品や部品の寿命が短くなるという問題を有している。例えば、テレビの部品では、電磁偏向によりブラウン管の電子を走査する偏向ヨークコイルや、ブラウン管の陽極用の高圧電源を得るために使用するフライバックトランスなどに高周波の電圧が印加される。また、電磁調理器(電子レンジ)では、高周波誘電加熱を利用して食品を調理するため、ワークコイルに高周波の電圧が印加される。
【0005】このような高周波電圧が巻線に印加されると、巻線全体が加熱し、その絶縁被膜が熱で劣化してしまう。このため、このような問題を考慮して、従来、耐熱性のある材料で巻線を被覆したり、あるいは巻線を撚線とすることなどの対策がとられてきた。しかしながら、巻線の絶縁材料をより耐熱化したり、巻線を撚線化する対処法では、コスト高となったり、あるいはコイルとしての要求特性を満足しなくなるといった問題がある上、従来の巻線の被覆材料は、高周波電圧の印加に対する耐劣化性が十分ではないという問題も残っていた。
【0006】近年、テレビジョンやCRTディスプレイ装置の分野では、高精度の表示を行うため、より高周波の電圧を印加するようになっており、また、高周波ミシンや高周波溶接機など、電磁調理器と同じく電磁誘導により加熱を行う機器が増加している。したがって、各種機器の高周波化に対し、耐熱性のみならず、高周波電圧の印加に対する耐劣化性に優れた巻線が要求されているが、従来の巻線では、このような要求特性に十分対応することができない。
【0007】このような問題を克服するために、高周波電圧が印加される条件下で使用された場合でも優れた耐劣化性を示す巻線として、下記構造式[I]:【0008】
【化6】

【0009】ただし、Xは4価の有機基を表わし、およびmは1〜4の整数である、で示されるフッ素基を有するポリイミドまたは該ポリイミドの前駆体を含有する塗料を導体上に塗布・焼付してなる巻線が特開平6−44827号公報で開示された。
【0010】しかしながら、上記公報で開示される塗料は、比誘電率が3.0程度と依然として絶縁皮膜の比誘電率が高いと巻線全体が加熱され、絶縁皮膜が熱で劣化するという問題があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の目的は、上記諸事情を鑑みてなされたものであり、高周波電圧が印加される条件下で使用された場合でも、優れた耐劣化性を示す巻線の絶縁被覆材料を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記諸目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の構造を有するポリイミド樹脂の比誘電率が2.8〜2.3と従来絶縁層に使用されてきたポリイミド樹脂をはじめとする材料に比べて低いことに着目し、このポリイミド樹脂を含有する塗料を導体上に塗布して得られる巻線は高周波電圧が印加される条件下においても劣化しにくく、このようなポリイミド樹脂含む絶縁被覆材料が巻線の被覆に良好に使用できることを知得した。
【0013】本発明者らはまた、このポリイミド樹脂の分子内にフッ素原子を導入することにより、さらに低比誘電率化が図れる、即ち、高周波電圧の印加に対する耐劣化性が向上できると同時に、耐熱性もまた改善され、このようなポリイミド樹脂は巻線の絶縁被覆材料にさらに好適に使用できることをも発見した。
【0014】上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0015】すなわち、上記諸目的は、以下の(1)〜(8)によって達成される。
【0016】(1)下記式(1):【0017】
【化7】

【0018】ただし、式(1)中、R1は4価の芳香族有機基を表わし;R2は2価の芳香族有機基を表わし;およびR1および/またはR2はC−H結合を有さない芳香族有機基を表わす、で示される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂を含んでなる巻線の絶縁被覆材料。
【0019】(2)前記式(1)中、R1および/またはR2はすべての残位にハロゲン原子またはパーハロゲノアルキル基を有する芳香族有機基を表わす、前記(1)に記載の巻線の絶縁被覆材料。
【0020】(3)前記式(1)中、R1およびR2はC−H結合を有さない芳香族有機基を表わす、前記(1)に記載の巻線の絶縁被覆材料。
【0021】(4)前記式(1)中、R1およびR2はすべての残位にハロゲン原子またはパーハロゲノアルキル基を有する芳香族有機基を表わす、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の巻線の絶縁被覆材料。
【0022】(5)前記式(1)中、R1は、下記式:【0023】
【化8】

【0024】ただし、上記式中、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、パーハロゲノアルキル基、パーハロゲノアルコキシル基、パーハロゲノアルケノキシ基、パーハロゲノアルキノキシ基、パーハロゲノフェノキシ基、パーハロゲノナフトキシ基またはパーハロゲノアントラトキシ基を表わし;およびXは、下記式:【0025】
【化9】

【0026】ただし、上記式中、R7及びR8は、それぞれ独立して、ハロゲン原子またはパーフルオロアルキル基を表わし;R9はパーフルオロアルキレン基を表わし;およびmは1〜10の整数である、を表わす、前記(1)または(3)に記載の巻線の絶縁被覆材料。
【0027】(6)前記式(1)中、R2は、下記式:【0028】
【化10】

【0029】ただし、上記式中、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、パーハロゲノアルキル基、パーハロゲノアルコキシル基、パーハロゲノアルケノキシ基、パーハロゲノアルキノキシ基、パーハロゲノフェノキシ基、パーハロゲノナフトキシ基またはパーハロゲノアントラトキシ基を表わし;およびYは、下記式:【0030】
【化11】

【0031】ただし、上記式中、R13及びR14は、それぞれ独立して、ハロゲン原子またはパーフルオロアルキル基を表わし;R15はパーフルオロアルキレン基を表わし;およびnは1〜10の整数である、を表わす、前記(1)、(3)または(5)に記載の巻線の絶縁被覆材料。
【0032】(7)前記式(1)中、R1は、下記式:【0033】
【化12】

【0034】を表わす、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の巻線の絶縁被覆材料。
【0035】(8)前記式(1)中、R2は、下記式:【0036】
【化13】

【0037】を表わす、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の巻線の絶縁被覆材料。
【0038】
【発明の実施の形態】本発明は、下記式(1):【0039】
【化14】

【0040】ただし、式(1)中、R1は4価の芳香族有機基を表わし;R2は2価の芳香族有機基を表わし;およびR1および/またはR2はC−H結合を有さない芳香族有機基を表わす、で示される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂を含んでなる巻線の絶縁被覆材料を提供するものである。
【0041】以下、本発明を詳細に説明する。
【0042】本発明の巻線の絶縁被覆材料は、上記式(1)で示される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂を含むことを必須とし、導体上に塗付するのに好適に使用されるものである。
【0043】本発明において巻線の絶縁被覆材料を構成するポリイミド樹脂は、本願請求項の記載から明らかなように、下記式(1):【0044】
【化15】

【0045】で示される繰り返し単位を有するものである。
【0046】上記式(1)において、R1は、4価の芳香族有機基を表わし、好ましくはC−H結合を有さない4価の芳香族有機基、より好ましくはすべての残位にハロゲン原子またはパーハロゲノアルキル基を有する4価の芳香族有機基を表わす。本発明に使用できるR1の具体的としては、下記式:【0047】
【化16】

【0048】で表わされる4価の芳香族有機基などが挙げられる。これらのうち、下記式:【0049】
【化17】

【0050】で表わされる4価の芳香族有機基がR1として好ましい。なお、上記式は、特記しない限り、置換基「X」、「R3」、「R4」、「R5」、及び「R6」の結合位置が特に制限されず、置換基「X」、「R3」、「R4」、「R5」、及び「R6」が相互に独立して各ベンゼン環内の残位のうちの任意の位置に結合できることを意味する。
【0051】上記式中、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子等のハロゲン原子、好ましくはフッ素原子及び塩素原子、特に好ましくはフッ素原子;またはパーハロゲノアルキル基、パーハロゲノアルコキシル基、パーハロゲノアルケノキシ基、パーハロゲノアルキノキシ基、パーハロゲノフェノキシ(−OC65)基、パーハロゲノナフトキシ(−OC107)基若しくはパーハロゲノアントラトキシ(−OC149)基を表わす。この際、パーハロゲノアルキル基としては、特に制限されないが、炭素原子数が、通常、1〜5、好ましくは、1〜3のパーハロゲノアルキル基、好ましくはパーフルオロアルキル基及びパークロロアルキル基、特に好ましくはパーフルオロアルキル基(−Cp2p+1;この際、pは1〜5の整数である)が挙げられる。本発明において特に好ましく使用されるパーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、パーフルオロ−n−ブチル、パーフルオロ−sec−ブチル、パーフルオロ−tert−ブチル、パーフルオロペンチル、パーフルオロネオペンチル、及びパーフルオロイソペンチルなどが挙げられる。これらのうち、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル及びヘプタフルオロイソプロピルがパーフルオロアルキル基として好ましい。また、パーハロゲノアルコキシル基としても、特に制限されないが、炭素原子数が、通常、6〜12、好ましくは、6〜9のパーハロゲノアルコキシル基、好ましくはパーフルオロアルコキシル基及びパークロロアルコキシル基、特に好ましくはパーフルオロアルコキシル基(−OCq2q+1;この際、qは6〜12の整数である)が挙げられる。本発明において特に好ましく使用されるパーフルオロアルコキシル基としては、−OC613、−OC715、−OC817、−OC919、−OC1021、−OC1123、及び−OC1225で示されるパーフルオロアルコキシル基などが挙げられる。これらのうち、−OC613、−OC715、−OC817及び−OC919がパーフルオロアルコキシル基として好ましい。さらに、パーハロゲノアルケノキシ基としても、特に制限されないが、炭素原子数が、通常、6〜12、好ましくは、6〜9のパーハロゲノアルケノキシ基、好ましくはパーフルオロアルケノキシ基及びパークロロアルケノキシ基、特に好ましくはパーフルオロアルケノキシ基(−OCq2q-1;qは6〜12の整数である)が挙げられる。本発明において特に好ましく使用されるパーフルオロアルケノキシ基としては、−OC611、−OC713、−OC815、−OC917、−OC1019、−OC1121及び−OC1223などで示されるパーフルオロアルケノキシ基などが挙げられる。これらのうち、−OC611、−OC713、−OC815及び−OC917がパーフルオロアルケノキシ基として好ましい。さらにまた、パーハロゲノアルキノキシ基としても、特に制限されないが、炭素原子数が、通常、6〜12、好ましくは、6〜9のパーハロゲノアルキノキシ基、好ましくはパーフルオロアルキノキシ基及びパークロロアルキノキシ基、特に好ましくはパーフルオロアルキノキシ基(−OCq2q-3;qは6〜12の整数である)が挙げられる。本発明において特に好ましく使用されるパーフルオロアルキノキシ基としては、−OC69、−OC711、−OC813、−OC915、−OC1017、−OC1119、及び−OC1221で示されるパーフルオロアルキノキシ基などが挙げられる。これらのうち、−OC69、−OC711、−OC813及び−OC915がパーフルオロアルキノキシ基として好ましい。
【0052】この際、本発明によるパーハロゲノアルキル基、パーハロゲノアルコキシル基、パーハロゲノアルケノキシ基及びパーハロゲノアルキノキシ基は、いうまでもなく、上記した相当するパーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシル基、パーフルオロアルケノキシ基及びパーフルオロアルキノキシ基の炭素に結合する1価の元素がフッ素に限定されず他のハロゲン原子が使用されてもよい点以外は、上記パーフルオロアルキル基などについて列挙されたものと同様であり、また、一つの炭素に結合する1価のハロゲン原子は同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、本発明において、置換基「R3」、「R4」、「R5」及び「R6」が一つのベンゼン環等の芳香族環内に複数個存在する際には、これらのR3、R4、R5及びR6はそれぞれ同一であってもあるいは異なるものであってもよい。
【0053】さらに、上記式中、Xは、下記式:【0054】
【化18】

【0055】のいずれかを表わし、この際、R7及びR8は、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子等のハロゲン原子、好ましくはフッ素原子及び塩素原子、特に好ましくはフッ素原子;またはパーフルオロアルキル基を表わす。この際、パーフルオロアルキル基としては、特に制限されないが、炭素原子数が、通常1〜5、好ましくは、1〜3のパーフルオロアルキル基が挙げられる。具体的には、パーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、パーフルオロ−n−ブチル、パーフルオロ−sec−ブチル、パーフルオロ−tert−ブチル、パーフルオロペンチル、パーフルオロネオペンチル、及びパーフルオロイソペンチルなどが挙げられる。これらのうち、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル及びヘプタフルオロイソプロピルがパーフルオロアルキル基として好ましい。また、R9は、パーフルオロアルキレン基、通常、炭素原子数が、通常、1〜6、好ましくは、1〜3のパーフルオロアルキレン基、例えば、ジフルオロメチレン、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロペンチレンを表わす。さらに、mは、Xが式:−(OR9)−、−(R9O)−、または−(OR9O)−で示される際の各繰り返し単位の数を表わし、1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3の整数である。
【0056】これらのうち、R1としては、下記式:【0057】
【化19】

【0058】を表わすことが好ましく、特に下記式:【0059】
【化20】

【0060】を表わすことが好ましい。
【0061】また、上記式(1)において、R2は、2価の芳香族有機基を表わし、好ましくはC−H結合を有さない2価の芳香族有機基、より好ましくはすべての残位にハロゲン原子またはパーハロゲノアルキル基を有する2価の芳香族有機基を表わす。この際、R2がすべての残位にハロゲン原子またはパーハロゲノアルキル基を有する2価の芳香族有機基を表わす際のR2の具体的としては、下記式:【0062】
【化21】

【0063】で表わされる2価の芳香族有機基などが挙げられる。これらのうち、下記式:【0064】
【化22】

【0065】で表わされる2価の芳香族有機基がR2として好ましい。なお、上記式は、特記しない限り、置換基「Y」、「R10」、「R11」、及び「R12」の結合位置が特に制限されず、置換基「Y」、「R10」、「R11」、及び「R12」が相互に独立して各ベンゼン環内の残位のうちの任意の位置に結合できることを意味する。
【0066】上記式中、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子等のハロゲン原子、好ましくはフッ素原子、及び塩素原子、特に好ましくはフッ素原子;またはパーハロゲノアルキル基、パーハロゲノアルコキシル基、パーハロゲノアルケノキシ基、パーハロゲノアルキノキシ基、パーハロゲノフェノキシ(−OC65)基、パーハロゲノナフトキシ(−OC107)基若しくはパーハロゲノアントラトキシ(−OC149)基を表わす。この際、パーハロゲノアルキル基としては、特に制限されないが、炭素原子数が、通常、1〜5、好ましくは、1〜3のパーハロゲノアルキル基、好ましくはパーフルオロアルキル基及びパークロロアルキル基、特に好ましくはパーフルオロアルキル基(−Cp2p+1;この際、pは1〜5の整数である)が挙げられる。本発明において特に好ましく使用されるパーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、パーフルオロ−n−ブチル、パーフルオロ−sec−ブチル、パーフルオロ−tert−ブチル、パーフルオロペンチル、パーフルオロネオペンチル、及びパーフルオロイソペンチルなどが挙げられる。これらのうち、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル及びヘプタフルオロイソプロピルがパーフルオロアルキル基として好ましい。また、パーハロゲノアルコキシル基としても、特に制限されないが、炭素原子数が、通常、6〜12、好ましくは、6〜9のパーハロゲノアルコキシル基、好ましくはパーフルオロアルコキシル基及びパークロロアルコキシル基、特に好ましくはパーフルオロアルコキシル基(−OCq2q+1;この際、qは6〜12の整数である)が挙げられる。本発明において特に好ましく使用されるパーフルオロアルコキシル基としては、−OC613、−OC715、−OC817、−OC919、−OC1021、−OC1123、及び−OC1225で示されるパーフルオロアルコキシル基などが挙げられる。これらのうち、−OC613、−OC715、−OC817及び−OC919がパーフルオロアルコキシル基として好ましい。さらに、パーハロゲノアルケノキシ基としても、特に制限されないが、炭素原子数が、通常、6〜12、好ましくは、6〜9のパーハロゲノアルケノキシ基、好ましくはパーフルオロアルケノキシ基及びパークロロアルケノキシ基、特に好ましくはパーフルオロアルケノキシ基(−OCq2q-1;qは6〜12の整数である)が挙げられる。本発明において特に好ましく使用されるパーフルオロアルケノキシ基としては、−OC611、−OC713、−OC815、−OC917、−OC1019、−OC1121及び−OC1223などで示されるパーフルオロアルケノキシ基などが挙げられる。これらのうち、−OC611、−OC713、−OC815及び−OC917がパーフルオロアルケノキシ基として好ましい。さらにまた、パーハロゲノアルキノキシ基としても、特に制限されないが、炭素原子数が、通常、6〜12、好ましくは、6〜9のパーハロゲノアルキノキシ基、好ましくはパーフルオロアルキノキシ基及びパークロロアルキノキシ基、特に好ましくはパーフルオロアルキノキシ基(−OCq2q-3;qは6〜12の整数である)が挙げられる。本発明において特に好ましく使用されるパーフルオロアルキノキシ基としては、−OC69、−OC711、−OC813、−OC915、−OC1017、−OC1119、及び−OC1221で示されるパーフルオロアルキノキシ基などが挙げられる。これらのうち、−OC69、−OC711、−OC813及び−OC915がパーフルオロアルキノキシ基として好ましい。
【0067】この際、本発明によるパーハロゲノアルキル基、パーハロゲノアルコキシル基、パーハロゲノアルケノキシ基及びパーハロゲノアルキノキシ基は、いうまでもなく、上記した相当するパーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシル基、パーフルオロアルケノキシ基及びパーフルオロアルキノキシ基の炭素に結合する1価の元素がフッ素に限定されず他のハロゲン原子が使用されてもよい点以外は、上記パーフルオロアルキル基などについて列挙されたものと同様であり、また、一つの炭素に結合する1価のハロゲン原子は同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、本発明において、置換基「R10」、「R11」及び「R12」が一つのベンゼン環等の芳香族環内に複数個存在する際には、これらのR10、R11及びR12はそれぞれ同一であってもあるいは異なるものであってもよい。
【0068】さらに、上記式中、Yは、下記式:【0069】
【化23】

【0070】のいずれかを表わし、この際、R13及びR14は、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子等のハロゲン原子、好ましくはフッ素原子及び塩素原子、特に好ましくはフッ素原子;またはパーフルオロアルキル基を表わす。この際、パーフルオロアルキル基としては、特に制限されないが、炭素原子数が、通常、1〜5、好ましくは、1〜3のパーフルオロアルキル基が挙げられる。具体的には、パーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、パーフルオロ−n−ブチル、パーフルオロ−sec−ブチル、パーフルオロ−tert−ブチル、パーフルオロペンチル、パーフルオロネオペンチル、及びパーフルオロイソペンチルなどが挙げられる。これらのうち、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル及びヘプタフルオロイソプロピルがパーフルオロアルキル基として好ましい。また、R15は、パーフルオロアルキレン基、通常、炭素原子数が、通常、1〜6、好ましくは、1〜3のパーフルオロアルキレン基、例えば、ジフルオロメチレン、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロペンチレンを表わす。さらに、nは、Yが式:−(OR15)−、−(R15O)−、または−(OR15O)−で示される際の各繰り返し単位の数を表わし、1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3の整数である。
【0071】これらのうち、R2としては、下記式:【0072】
【化24】

【0073】を表わすことが好ましく、特に下記式:【0074】
【化25】

【0075】を表わすことが好ましい。
【0076】また、本発明において、式(1)において、R1およびR2のうち少なくとも一方はC−H結合を有さない芳香族有機基、好ましくはすべての残位にハロゲン原子またはパーハロゲノアルキル基を有する芳香族有機基を表わすことを必須とする。より好ましくは、R1およびR2の双方がC−H結合を有さない芳香族有機基、最も好ましくはすべての残位にハロゲン原子またはパーハロゲノアルキル基を有する芳香族有機基を表わし、それぞれの好ましい態様は上記のとおりである。
【0077】本発明において、ポリイミド樹脂は、式(1)で示される繰り返し単位を有することを必須とするが、式(1)で示される繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を有していてもよい。この際に使用できる他の繰り返し単位としては、ポリイミド被膜の被覆のし易さを目的として架橋性反応基が導入されたアミド酸、アミノカルボン酸及びアミノカルボン酸アミドなどが挙げられる。また、ポリイミド樹脂は、これらの繰り返し単位のうちの同一の繰り返し単位からなるものであってもまたは異なる繰り返し単位からなるものであってもよく、後者の場合には、その繰り返し単位はブロック状であったもまたはランダム状であってもよい。さらに、ポリイミド樹脂が上記した他の繰り返し単位を含む場合には、ポリイミド樹脂を構成する全繰り返し単位に対する式(1)の繰返し単位の含量は、特に制限されるものではないが、通常、30〜100%、好ましくは50〜100%である。
【0078】本発明において、式(1)の繰り返し単位を有するポリイミド樹脂は、公知と同様の方法によって製造でき、その製造方法は特に制限されるものではないが、例えば、特開平4−325,580号公報や特開平2−208,324号公報に記載される方法などが挙げられる。その一例を簡単に下記に記載する。まず、テトラカルボン酸またはその誘導体とジアミンとをおおよそ等モルで反応させて、ポリアミド酸を得、さらにこのようにして得られたポリアミド酸を化学的または加熱によりポリイミド化することによって、式(1)の繰り返し単位を有するポリイミド樹脂が得られる。上記方法に使用されるテトラカルボン酸またはその誘導体としては、分子内のアルキル基、フェニル環等の炭素に結合するすべての1価元素をハロゲン原子、好ましくはフッ素、またはパーハロゲノアルキル基、好ましくはパーフルオロアルキル基としたものであればどのようなものでもよいが、例えば、1,4−ジフルオロピロメリット酸、1−トリフルオロメチル−4−フルオロピロメリット酸、1,4−ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸、1,4−ジ(ペンタフルオロエチル)ピロメリット酸、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラクロロベンゼン、及びヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−オキシビスフタル酸などのテトラカルボン酸;並びにテトラカルボン酸の誘導体としてこれらのテトラカルボン酸の酸二無水物、酸ハロゲン化物、モノエステル化物及びジエステル化物などが挙げられる。これらのうち、ピロメリット酸二無水物のベンゼン環にフルオロアルキル基を導入した含フッ素酸二無水物である1,4−ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、及び1,4−ジ(ペンタフルオロエチル)ピロメリット酸二無水物等の製造方法については、特開平2−15,084号公報に記載される方法が使用できる。
【0079】また、上記方法に使用されるジアミンの例としては、アルキル基、フェニル基等の炭素に結合するすべての1価元素をハロゲン原子、好ましくはフッ素、またはパーハロゲノアルキル基、好ましくはパーフルオロアルキル基としたものであればどのようなものでもよく、例えば、3,4,5,6−テトラフルオロ−1,2−フェニレンジアミン、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−フェニレンジアミン、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−フェニレンジアミン、2,4,5,6−テトラクロロ−1,3−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−フェニレンジアミン、2,4,6−テトラフルオロ−5−クロロ−1,3−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノオクタフルオロビフェニル、ビス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−アミノフェニル)エーテル、ビス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−アミノフェニル)スルホン、ヘキサフルオロ−2,2’−(ビストリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4−ビス(3−アミノテトラフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3−アミノテトラフルオロフェノキシ)テトラクロロベンゼン及び2,2−ビス(3−アミノテトラフルオロフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。
【0080】なお、ポリイミドが可溶性である場合には、上記したジアミンの代わりに対応するジイソシアネートを使用することも可能である。
【0081】上記方法において、テトラカルボン酸またはその誘導体とジアミンとの反応は、公知のポリアミド酸の製造方法と同様にして行なわれ、溶媒中で行なわれてもあるいは無溶媒下で行なわれてもよいが、好ましくは溶媒中で、特に好ましくは下記に例示されるような極性有機溶媒中で行なって、ポリアミド酸溶液とする。この際使用される溶媒としては、特に制限されるものではないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブ、ベンゾニトリル、アセトン及びアセトニトリルなどの極性有機溶媒;ならびにテトラヒドロフラン、クロロホルムなどの低極性有機溶媒などが挙げられる。なお、上記反応において、本発明において、テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸またはその誘導体およびジアミンは、それぞれ、単一の化合物として使用されてもあるいは2種以上のジアミンおよび/またはテトラカルボン酸二無水物の混合物の形態で使用されてもよい。後者の場合には、使用される複数または単一のジアミンのモル数の合計が、複数または単一のテトラカルボン酸二無水物のモル数の合計に等しいまたはほぼ等しいことが好ましい。また、全フッ素化ポリアミド酸を製造する際には、全フッ素化されていない酸無水物成分、ジアミン成分を用いることにより、一部フッ素化されていないポリアミド酸が製造されるが、この際その比率が過度に大きくない場合には、特に精製工程を伴うことなく、そのまま一部フッ素化されていないポリアミド酸を含んだ形態で次工程であるイミド化工程に供してもよい。
【0082】また、テトラカルボン酸またはその誘導体とジアミンとの反応条件は、これらの反応が効率良く進行する条件であれば特に制限されるものではなく、例えば、テトラカルボン酸またはその誘導体とジアミンを含む溶液の攪拌については、反応系が均一であれば攪拌を行なっても若しくは行なわなくてもよいが、反応系が不均一である場合には攪拌を行なうことが望ましい。攪拌を行なう際の攪拌速度は、これらの反応が速やかに進行するものであれば特に制限されないが、反応液に気泡が混入しない程度であることが望ましい。また、反応温度は、通常、−20〜200℃、好ましくは0〜100℃であり、反応時間は、通常、1〜72時間、好ましくは2〜48時間である。また、反応は、加圧下、常圧下または減圧下のいずれの圧力下で行なってもよいが、好ましくは常圧下で行われる。
【0083】つぎに、上記反応によって得られたポリアミド酸から所望のポリイミドを製造する方法は、公知のポリイミド化方法が使用でき、例えば、ポリアミド酸を化学的な処理によりまたは加熱処理によりポリイミド化する方法が挙げられる。これらのうち、前者のポリアミド酸の化学的な処理方法としては、イミド化剤(例えば、無水酢酸やピリジン等)を用いた処理方法などが挙げられる。また、後者のポリアミド酸の加熱処理方法の一例としては、例えば、ポリアミド酸を、好ましくはアルゴンガス、ヘリウムガス及び窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で、通常、20〜500℃、好ましくは50〜400℃の反応温度で、通常、1〜48時間、好ましくは2〜24時間、加熱する方法が挙げられる。
【0084】より詳しくは、上記反応によって得られたポリアミド酸溶液をキャスティング等により導体上に塗付した後、例えば、無水酢酸やピリジン等のイミド化剤の添加により若しくは20〜500℃、好ましくは50〜400℃で、1〜48時間、好ましくは2〜24時間、加熱することによりポリアミド酸をイミド化し、これによりポリイミド樹脂により絶縁被覆された巻線が得られる。この際、溶液におけるポリアミド酸の濃度は、導体上にキャスティングしやすくかつイミド化が十分達成できるような濃度であれば特に制限されないが、全溶液の重量に対して、通常、10〜60質量%、好ましくは20〜50質量%である。また、テトラカルボン酸またはその誘導体とジアミンとの反応により、反応後のポリイミド樹脂溶液の粘度は次第に上昇するが、この際のポリアミド酸溶液の粘度は、25℃で、0.5〜100Pa・s程度、より好ましくは10〜50Pa・s程度の範囲となることが好ましい。
【0085】または、ポリアミド酸溶液を無水酢酸やピリジン等のイミド化剤の添加により若しくは高温(例えば、20〜500℃、好ましくは50〜400℃)で1〜48時間、好ましくは2〜24時間、加熱することによりイミド化を行なってポリイミド溶液を得、この後、このポリイミド溶液をキャスティング等により導体上に塗付した後、これを乾燥してポリイミド樹脂により絶縁被覆された巻線を得てもよい。この際、溶液におけるポリイミドの濃度は、導体上にキャスティングしやすいような濃度であれば特に制限されないが、キャスティング等による塗布のし易さ及び絶縁被膜としてのポリイミドの機械的強度を考慮すると、全溶液の重量に対して、通常、10〜60質量%、好ましくは20〜50質量%である。
【0086】または、テトラカルボン酸またはその誘導体及びジアミンを真空蒸着装置を用いて導体上に蒸着させてポリアミド酸とし、次いで、これを例えば、20〜500℃、好ましくは50〜400℃で、1〜48時間、好ましくは2〜24時間、加熱処理してイミド化してポリイミド樹脂により絶縁被覆された巻線を得てもよい。上記方法は、反応設備が大がかりになるという欠点はあるものの、溶媒の添加を必要としないため、不純物の混入の極めて少ない高純度のポリイミド被膜が得られる点で好ましい。
【0087】本発明において、ポリアミド酸溶液は、2種以上のポリアミド酸混合液として用いられてもよく、また、所望の特性(例えば、耐熱性や低誘電性など)が許容される範囲内で、以下に詳述するような他のポリアミド酸溶液、ポリイミド溶液、またはポリイミド以外の樹脂溶液との混合物として使用されてもよい。
【0088】また、本発明において使用される導体としては、特に制限されるものではなく公知のものが使用され、用途に応じて、例えば、高純度から超高純度の銅線、金線、軽い硬アルミ線を亜鉛メッキ鋼線とより合わせたものなどの金属、およびポリアセチレン、ポリピロール、ポリパラフェニレンなどの共役系高分子などの導電性高分子などが挙げられる。また、導体の直径もまた、特に制限されず、使用される用途によって適宜選択できる。
【0089】このようにして製造されたポリイミド樹脂は、比誘電率が2.8〜2.3と十分低い比誘電率を有し、例えば、フッ素原子を持たないポリイミドの比誘電率が3.5程度であることを考慮すると、本発明に係るポリイミド樹脂を使用することにより、通常の巻線の絶縁被膜に比べて有意に低い比誘電率が付与できる。したがって、本発明に係るポリイミド樹脂を巻線の絶縁被覆材料に使用することによって、高周波電圧が巻線に印加され、巻線全体が加熱して、絶縁被膜の熱による劣化が生じても、本発明に係るポリイミド樹脂による絶縁被膜の誘電率は十分低いため、発熱量が有意に抑えられ、絶縁被膜の劣化速度が遅くなる、即ち、巻線への高周波電圧の印加に対しても従来の巻線より劣化しにくいため、結果として、高周波の電圧に対する巻線の寿命を長くなることが可能になる。さらに、本発明において使用されるポリイミド樹脂は、優れた耐湿性及び耐候性を有する上、十分な可撓性を有するため好ましい。
【0090】また、このようにして製造されたポリイミド樹脂は、優れた絶縁性及び機械的強度を兼ね備えているが、上記諸特性や耐溶剤性などの所望の特性が不十分である場合には、他の成分、例えば、重合性不飽和機炭素結合を有するアミンやジアミン、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、マレイン酸、ナジック酸、3−エチルフタル酸、これらの無水物、エチニルアニリン、シアノアニリンなどを添加することにより、重合性分を変性・架橋したり、あるいはフェノール性水酸基やカルボン酸を有する芳香族ジアミン、例えば、ジアミノフェノール、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ジアミノ安息香酸、カルボキシベンジジンなどでポリイミド樹脂を変性・架橋して、耐溶剤性などの諸特性を向上させてもよい。
【0091】本発明において、巻線の絶縁被覆材料は、上記したような特定の構造を有するポリイミド樹脂を含むことを必須とするが、このポリイミド樹脂に加えて、所望の低比誘電率、耐劣化性及び耐熱性等に悪影響を及ぼしたりせず、本発明の範疇を逸脱しない範囲において、さらに他の成分を含んでいてもよい。さらなる成分としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、付加型ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリパラビニルフェノール樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン及びポリアゾメチン;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)及びポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等のフッ素樹脂;炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、チタニア、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、ジルコン、ガラス、タルク、マイカ、黒鉛、アルミニウム、銅及び鉄等の粉末や短繊維状の無機充填材;脂肪酸やワックス類等の離型剤;エポキシシラン、ビニルシラン、ボラン系化合物及びアルキルチタネート系化合物等のカップリング剤;アンチモンやリンの化合物およびハロゲン含有化合物等の難燃剤;ならびに分散剤や溶剤等の各種添加剤が挙げられる。ポリイミド樹脂に加えてさらなる成分を含む際のさらなる成分の含量は、全原料に対して、1〜49質量%である。
【0092】本発明のコーティング剤による導体への被覆方法としては、特に制限されず公知の方法が使用される。具体的には、キャスティング(流延法)、スピンコーティング(回転塗布法)、ロールコーティング、スプレイコーティング、バーコーティング、フレキソ印刷、およびディップコーティングなどの方法が挙げられる。これらの方法のうち、容易にコーティングできる点などを考慮すると、ディップコーティングが好ましく使用される。また、ポリイミド樹脂に加えて上記したような他の成分を含む場合には、例えば、キャスティング、スピンコーティング、ロールコーティング、スプレイコーティング、バーコーティング、フレキソ印刷、およびディップコーティングなどの方法が挙げられる。本発明の絶縁被覆材料による絶縁被膜の厚みは、目的とする特性及び用途ならびにその材質などに合わせて適宜選択することができる。
【0093】
【実施例】以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0094】実施例1下記式で表される含フッ素ポリイミドをジメチルアセトアミドに40質量%の濃度で溶かした溶液を溶液流延法にてフィルム加工し、350℃で5時間焼成することで厚さ10μmのフィルムを得た。得られたフィルムの比誘電率をインピーダンスアナライザー(HP社、HP4294A)で周波数1MHzで測定したところ、比誘電率は2.6であった。
【0095】
【化26】

【0096】比較例1市販のポリイミドワニス(デュポン社製)を溶液流延法にてフィルム加工し、350℃で1時間焼成することで厚さ25μmのフィルムを得た。得られたフィルムの比誘電率を実施例と同様にして測定したところ、3.5であった。
【0097】(結果)実施例1および比較例1から、本願発明の多層配線基板の絶縁層は、従来絶縁層に使用されているポリイミドによる絶縁層に比較して、有意に低い比誘電率を有することが示された。
【0098】
【発明の効果】上述したように、本願発明の巻線の絶縁被覆材料は、上記式(1)で示される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂を含むことを特徴とするものである。したがって、本願発明によるポリイミド樹脂は、十分な低比誘電率を有し、これにより大きい高周波電圧の印加に対しても耐劣化性が大巾に向上するため、高周波用巻線の被覆材料として非常に有用である。上記利点に加えて、本願発明によるポリイミド樹脂は、高耐湿性及び高耐候性をも有するので、このポリイミド樹脂を含む巻線の絶縁被覆材料もまた、上記したような特性を有し、好ましい。
【0099】また、分子内にフッ素原子が導入されたポリイミド樹脂を使用する場合には、巻線の絶縁被覆材料は、さらに低比誘電率化が図れると同時に、耐熱性や溶解性が改善される。
【出願人】 【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
【出願日】 平成12年8月10日(2000.8.10)
【代理人】 【識別番号】100072349
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 幹雄 (外4名)
【公開番号】 特開2002−56720(P2002−56720A)
【公開日】 平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願番号】 特願2000−243309(P2000−243309)