トップ :: H 電気 :: H01 基本的電気素子




【発明の名称】 積層セラミック電子部品用端子電極ペースト
【発明者】 【氏名】赤木 正美

【氏名】加藤 隆

【氏名】山添 幹夫

【要約】 【課題】有機バインダの燃焼、分解、除去が容易に行われ、セラミック誘電体を劣化させることなく、ブリスタの発生のない緻密な膜構造を有する端子電極を形成できる積層セラミック電子部品用端子電極ペーストを提供する。

【解決手段】銅粉末とガラス粉末と有機ビヒクルとを主成分とするペーストであって、これを塗布、乾燥した時の乾燥膜密度が3.0〜4.8g/cm3であることを特徴とする積層セラミック電子部品用端子電極ペースト。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 銅粉末とガラス粉末と有機ビヒクルとを主成分とするペーストであって、これを塗布乾燥した時の乾燥膜密度が3.0〜4.8g/cm3であることを特徴とする積層セラミック電子部品用端子電極ペースト。
【請求項2】 銅粉末が、平均粒径が3.0〜10.0μm、平均粒径/平均厚みが5〜40、比表面積が0.1m2/g以上1.0m2/g未満であるフレーク状銅粉末である請求項1記載の積層セラミック電子部品用端子電極ペースト。
【請求項3】 銅粉末が、平均粒径が3.0〜10.0μm、平均粒径/平均厚みが5〜40、比表面積が0.1m2/g以上1.0m2/g未満であるフレーク状銅粉末と比表面積が0.1m2/g以上1.0m2/g未満である球状銅粉末とからなる請求項1記載の積層セラミック電子部品用端子電極ペースト。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、積層セラミック電子部品の端子電極ペースト、特に内部電極がニッケル及び又は銅を含む積層セラミックコンデンサの端子電極ペーストに関するものである。
【0002】
【従来の技術】内部電極を有する積層セラミック電子部品、例えば積層セラミックコンデンサは誘電体等の未焼成セラミック誘電体シートと内部電極ペースト層とを交互に複数層積み重ねて未焼成の積層体を得る。次いでこの未焼成の積層体を個々の電子部品となる様、例えば直方体状に切断した後、これを高温で焼成しセラミック誘電体素体(以下「素体」という)とする。更に、該素体の内部電極の露出端面に端子電極ペーストが塗布されるよう、該素体をペースト中に浸漬し引き上げるというディッピング法により該ペーストを塗布、乾燥、焼成し、内部電極に電気的に導通した端子電極を形成する。この後、バレルメッキ装置等を用いて該端子電極上に電気メッキによりニッケルメッキ層を、次いでこの上にスズ若しくはその合金メッキ層を形成し積層セラミックコンデンサが得られる。
【0003】内部電極材料としては、従来パラジウム、銀―パラジウム、白金等の貴金属が用いられていたが、省資源やコストダウン、パラジウム、銀―パラジウムの焼成時の酸化膨張に起因するデラミネーション、クラックの発生防止などの要求からニッケルや銅等の卑金属材料が内部電極材料として用いられるようになってきている。このため、端子電極材料もAg、Ag-Pdに替わり内部電極のニッケルや銅等と良好な電気的接続を形成しやすいニッケル、コバルト、銅等が用いられている。
【0004】ところで、積層セラミックコンデンサの内部電極材料にニッケルが使用され端子電極材料として銅が用いられる場合には、端子電極の焼成は内部電極と端子電極とを構成するこれら卑金属が焼成の際に酸化して導電不良を生じない様に、焼成雰囲気を窒素雰囲気や中性雰囲気となる様に制御しながら最高温度が700〜900℃の温度範囲で行われる。
【0005】このため、銅粉末が用いられる端子電極ペーストを使用した場合には、空気中で焼成した場合と異なり、銅粉末が焼結を開始する前までに有機ビヒクル中の有機バインダの燃焼、分解、除去(以下「脱バインダ」という)が完全に行われることができず、種々の問題を生じていた。例えば、素体の劣化による信頼性の低下やクラックの発生である。また、電極膜にはブリスタが発生したり膜構造がポーラスとなったりした。これは、焼成の際に幾らかの有機バインダが電極膜中に残留カーボンとして閉じ込められて残り、このカーボンが焼成時の高温のもとでセラミック誘電体に対して還元剤として作用し、該セラミック誘電体の一部を還元させ素体の劣化やクラックの発生を引起こすためと考えられる。このときに発生するガスにより電極膜中にブリスタと呼ばれる空洞が発生し電極膜の一部がドーム状にもりあがる現象が生じる。また、電極膜中に残った残留カーボンは銅粉末の焼結抑制剤として作用するため、焼結が十分に進まず得られた電極膜はポーラスとなる。このため、その後行われる電気メッキ工程の際、ニッケルメッキ液やスズ若しくはその合金メッキ液が電極膜中に侵入し、IR等の低下や素体クラックの発生が起こり積層セラミックコンデンサの信頼性が低下する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、積層セラミック電子部品の端子電極ペースト、特に内部電極がニッケル及び又は銅を含む積層セラミックコンデンサの端子電極ペーストにおいて、窒素雰囲気や中性雰囲気中で焼成した時に脱バインダが容易に行われ、このため素体を劣化させることなく又ブリスタの発生のない緻密な焼成膜を形成できる端子電極ペーストを提供するものである。更に塗布乾燥の際に突起や凹みのない優れた形状の塗膜を得ることができできる端子電極ペーストを提供するものである。更に電気メッキ工程の際にニッケルメッキ液やスズ若しくは合金メッキ液が焼成膜中に侵入しIR等の低下やクラックの発生の無い、信頼性の高い積層セラミックコンデンサを製造することが可能である端子電極ペーストを提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、銅粉末とガラス粉末と有機ビヒクルとを主成分とするペーストであって、これを塗布乾燥した時の乾燥膜密度が3.0〜4.8g/cm3であることを特徴とする積層セラミック電子部品用端子電極ペーストを要旨とするものである。また本発明は、銅粉末とガラス粉末と有機ビヒクルとを主成分とするペーストであって、これを塗布乾燥した時の乾燥膜密度が3.0〜4.8g/cm3であることを特徴とする積層セラミック電子部品用端子電極ペーストにおいて、銅粉末が平均粒径3.0〜10.0μm、平均粒径/平均厚みが5〜40、比表面積が0.1m2/g以上1.0m2/g未満のフレーク状銅粉末であることを特徴とする端子電極ペーストを要旨とするものである。
【0008】更に本発明は、銅粉末とガラス粉末と有機ビヒクルとを主成分とするペーストであって、これを塗布乾燥した時の乾燥膜密度が3.0〜4.8g/cm3であることを特徴とする積層セラミック電子部品用端子電極ペーストにおいて、銅粉末が平均粒径3.0〜10.0μm、平均粒径/平均厚みが5〜40、比表面積が0.1m2/g以上1.0m2/g未満のフレーク状銅粉末と比表面積が0.1m2/g以上1.0m2/g未満の球状銅粉末とからなることを特徴とする端子電極ペーストを要旨とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明を更に詳細に説明する。素体の劣化やクラックの発生をなくすため脱バインダについて種々検討した所、端子電極ペーストの乾燥膜密度を特定の範囲に限定することでこれらの問題を解決できるとの知見を得て本発明を成すに到った。この乾燥膜密度はガラス粉末や有機ビヒクルの種類や配合割合には依存せず端子電極ペーストの主成分である銅粉末によりほぼその値が決り、このため銅粉末が電極膜中に作り出す空隙が窒素雰囲気や中性雰囲気中で焼成した時の脱バインダに対して有効に働いているものと思われる。
【0010】尚、ペーストの乾燥膜密度(Dg/cm3)は次のようにして測定したものである。端子電極ペーストをペースト厚が約250μmとなるようにPETフィルム上に塗布、150℃で10分間乾燥後直径20mmの円形の大きさに切出しPETフィルムからはがした後、重量(Wg)と乾燥膜の厚さ(Tμm)を測定し下式により算出したものである。
【0011】
【数1】D=W/(πT×104)【0012】本発明の端子電極ペーストは、銅粉末とガラス粉末と有機ビヒクルとを主成分とするペーストであってこれを塗布乾燥した時の乾燥膜密度が3.0〜4.8g/cm3であることを特徴とするものである。乾燥膜密度が4.8g/cm3より大きい場合には銅粉末により電極膜中に作り出される空隙が小さく膜外との繋がりも悪くなり脱バインダが十分でなく、カーボンが電極膜中に残るため、素体の劣化を起こしたり、ブリスタが発生したり、電極膜も緻密とはならない。乾燥膜密度が3.0g/cm3より小さい時は乾燥膜中に形成される空隙が大きくなり、有機バインダの除去は十分行われるが、この空隙が焼結後でも残り電極膜はポーラスとなり好ましくない。この様に乾燥膜密度が3.0〜4.8g/cm3の場合には素体の劣化やブリスタの発生のない緻密な膜構造の電極膜を得ることができる。このため、その後の電気メッキ工程においてニッケルメッキ液やスズ若しくは合金メッキ液が電極膜中に侵入することがなくIR等の低下やクラックの発生の無い、信頼性の高い積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【0013】また、本発明は、平均粒径が3.0〜10.0μm、平均粒径/平均厚みが5〜40、比表面積が0.1m2/g以上1.0m2/g未満であるフレーク状銅粉末を用いることにより優れた効果を発揮できる。このようなフレーク状銅粉末を使用することでブリスタの発生のないより緻密な電極膜が得られる。更に、ディッピング法により塗布され得られた電極の乾燥塗膜は突起も凹みも無く均一な厚みを有するものであった。ここで使用されるフレーク状銅粉末は一種類でも良く、また二種類以上を混合して使用しても良く、この場合には混合した時の平均粒径、平均粒径/平均厚み、比表面積の平均値が前記範囲に入っていれば良い。
【0014】平均粒径が3.0μmより小さいとカーボンが残留しやすく銅粉末の焼結が抑制されポーラスな電極膜となる。また、平均粒径が10.0μmより大きいと脱バインダが十分に行われ銅粉末の焼結も低温からスムーズに進行するが、この空隙が焼結後でも残り電極膜はポーラスとなり、電極表面も荒れてしまい好ましくない。平均粒径/平均厚みが40より大きいとペーストのチクソ性が大きく前記焼成体の内部電極の露出端面にディッピング法により塗布した時にペーストの流動性が十分でなく塗布形状が悪く突起状となる。平均粒径/平均厚みが5より小さいと乾燥塗膜中に形成される空隙の大きさや膜外への繋がりが十分とならず脱バインダが不十分となり、素体の劣化やブリスタが発生したり電極膜がポーラスとなったりする。
【0015】比表面積が0.1m2/gより小さいと焼成により得られた電極膜がポーラスとなり、1.0m2/g以上であるとペーストの流動性が十分でなく突起状となりやすく、またブリスタを発生するなど好ましくない。
【0016】また、本発明は、上記フレーク状銅粉末に比表面積が0.1m2/g以上1.0m2/g未満の球状銅粉末を混合して使用しても良い。乾燥膜密度が3.0〜4.8g/cm3となる範囲内であれば該フレーク状銅粉末に該球状銅粉末を添加することでより一層緻密な電極膜を形成することができる。球状銅粉末の比表面積が1.0m2/g以上の時には乾燥膜密度が大きくなり脱バインダが不十分で電極膜は緻密にならず、ブリスタの発生が見られた。また、0.1m2/gより小さい時には乾燥膜中に形成された空隙が大きくなり、脱バインダは十分行われるが、この空隙が焼成後でも残ってしまい電極膜はポーラスとなり好ましくない。
【0017】ガラス粉末は、例えばBaO-ZnO-B2O3系、ZnO-B2O3系のものを使用できる。好ましくは銅粉末100重量部に対して5〜20重量部が好ましい。5重量部より少ない場合には前記素体と端子電極の接着強度が小さくなり好ましくない。20重量部より多いと焼成後の電極表面にガラスが多く分布するようになり電気メッキによるニッケル、スズおよびその合金のメッキ皮膜形成が困難となる。有機ビヒクルは通常使用される樹脂である有機バインダを有機溶剤に溶かしたもので、例えばアクリル樹脂をテルピネオールに溶解し20重量%の溶液としたものを使用した。また、本発明の効果を損わない程度で粘度調整剤、無機結合剤、酸化剤等種々の添加剤を加えても良い。
【0018】
【実施例】以下、本発明を実施例に沿って具体的に説明する。尚、平均粒径とは、レーザー式粒度分布測定装置を用いて粒度分布を測定し、この粒度分布の体積基準の積算分率50%値であり、平均厚みはSEM観察によりフレーク状銅粉末の厚みを測定し求めたものである。平均粒径/平均厚みはそれぞれこのようにして求めた平均粒径を平均厚みで割り算出した。比表面積は、BET法により測定した。
【0019】実施例1〜4、比較例1、2各粒径のフレーク状銅粉末100重量部に対してBaO-ZnO-B2O3系ガラス粉末を12重量部、アクリル樹脂をテルピネオールに溶解した有機ビヒクルを40重量部の割合で配合し、三本ロールミルで混合しペースト状にした。得られたペーストについて前述の方法で乾燥膜密度を測定した。次いで、内部電極にニッケルを使用し焼成して得られた平面寸法が2.0mm×1.25mmで厚みが1.25mmサイズの積層セラミックコンデンサ用素体を用意し、本ペーストを該素体のニッケル内部電極の露出端面に焼成後の膜厚が60μmとなる様にディッピング法により塗布し、熱風式乾燥機中150℃で10分間保持し乾燥させた。この乾燥体を窒素雰囲気としたベルト式マッフル炉で焼成し積層セラミックコンデンサを得た。この時の焼成条件は、ピーク温度が800℃でピーク温度のキープ時間は10分間、焼成の開始から終了まで1時間であった。次いでこの電極表面に電気メッキによりニッケルメッキ膜を、更にスズメッキ膜を形成し試料とした。各試料について外観観察を行い、研磨断面試料を作成しSEMにより電極膜の緻密性、メッキ液の浸透の有無を調べ、その結果を乾燥膜密度の測定結果等とともに表1に示した。但し、ブリスタの発生が見られた試料については電気メッキによるメッキ膜の形成を行わなかった。
【0020】
【表1】

【0021】実施例5〜6、比較例3銅粉末の一部を平均粒径1.5μm比表面積0.65m2/gの球状銅粉末と置きかえる以外は実施例1と同じようにして試料作製を行なった。ペーストについて乾燥膜密度の測定を行い、コンデンサについて電極の外観観察、電極膜の緻密性、メッキ液の浸透の有無を調べた。これらの結果を表2にまとめて示した。
【0022】
【表2】

【0023】
【発明の効果】以上の様に、本発明のペーストを用いることにより窒素雰囲気や中性雰囲気中で焼成しても脱バインダが十分に行われ、その結果素体の劣化がなく、ブリスタのない緻密な膜構造を有する端子電極を形成することができる。このため、電気メッキを行ってもメッキ液が電極膜中に侵入することが無くIR不良やクラックの発生の無い信頼性の高い積層セラミックコンデンサを製造できる。更に、電極の形状にも優れるため回路基板に実装する際に実装機につまったり位置ずれをおこしたりすることのない積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000186762
【氏名又は名称】昭栄化学工業株式会社
【出願日】 平成12年8月10日(2000.8.10)
【代理人】 【識別番号】100070600
【弁理士】
【氏名又は名称】横倉 康男
【公開番号】 特開2002−56717(P2002−56717A)
【公開日】 平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願番号】 特願2000−242894(P2000−242894)