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【発明の名称】 X線集光方法及びX線集光装置
【発明者】 【氏名】小池 正記

【要約】 【課題】従来のX線の集光は、同心円状の2次元ゾーンプレートにより行われていたが、これでは、入射X線の波長λ(エネルギー)に応じて焦点位置が変動しており、測定する際に非常に不便であった。

【解決手段】2個の1次元フレネルゾーンプレートを直交配置し、入射X線の波長λ(エネルギー)に応じて、該プレートの傾斜角度を変化させることにより焦点位置を不動とすることができた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フレネルゾーンプレートを用いたX線集光方法において、2個の1次元フレネルゾーンプレートを直交してX線線路に配置することにより、焦点位置を不動としたことを特徴とするX線集光方法。
【請求項2】 請求項1記載のX線集光方法において、入射X線の波長に応じて、上記1次元ゾーンプレートを傾斜させたことを特徴とするX線集光方法。
【請求項3】 フレネルゾーンプレートを用いたX線集光装置において、2個の1次元フレネルゾーンプレートを直交してX線線路に配置し、焦点位置を不動としたことを特徴とするX線集光装置。
【請求項4】 請求項3記載のX線集光装置において、入射X線の波長に応じて、上記1次元ゾーンプレートを傾斜させたことを特徴とするX線集光装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、X線を用いた分析又は計測装置において用いられ、代表的なものとしては、X線顕微鏡、X線マイクロプローブ等が挙げられる。X線を微小に集光して物体に照射すると、局所的な情報が得られ、定量的な分析を行うことができる。測定される物理量は、透過X線、蛍光X線、光電子等である。さらにそれぞれの元素は、固有のX線吸収端を持ち、吸収端の前後では、わずかなエネルギーの差でも吸収係数(あるいは透過率)が1桁程度異なるという性質があるので、この性質を利用した分析には特に有効に用いられる発明である。
【0002】
【従来の技術】X線を集光する従来技術としては、フレネル回折を利用した2次元のフレネルゾーンプレートが挙げられる。これは図2に示すように、強度変調型の場合、同心円状に、X線に対して不透明なゾーンと透明なゾーンとが交互に繰り返される円盤状となっている。波長λのX線に対してn番目のゾーンの半径rが近似的に、r=nfλの関係にあるとき、隣り合う透明ゾーンから透過するX線の光路差がλ(位相差が2π)となり、集光点で互いに強め合いレンズの役目を果たす。ここで、fは焦点距離である。
【0003】この式から明らかなように、焦点距離fは、波長λに反比例、すなわち、エネルギーに比例している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】元素は、固有のX線吸収端を持ち、吸収端の前後では、わずかなエネルギーの差でも吸収係数(あるいは透過率)が1桁程度異なるという性質があるので、この性質を利用すると特定の元素のみを選択して分析できるようになり精密な分析が可能となる。ところが、ゾーンプレートを集光素子に用いると、前述の式に示されるとおり、波長λに反比例(エネルギーに比例)して、焦点距離fが変動するため、波長を変化させるたびに試料位置を変えなければならないという不具合が生じていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】本願発明は、2個の1次元フレネルゾーンプレートを用い、X線のエネルギーの変動に対応して該1次元フレネルゾーンプレートの傾きを調整することにより焦点位置を不動にするものである。図1に示すように2個のゾーンプレートは、直交して配置され、それぞれ入射角を自由に設定できる回転台に保持されている。そしてそれらは、それぞれ、水平方向、垂直方向の集光に用いられる。斜め入射の場合、入射角をθとすると(垂直入射の時θ=90度)、r=(nfλ)1/2/sinθと表せるので、波長を短くしても入射角θを小さくすることにより、同じ長さの焦点距離fを得ることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】例えば、波長2.3nmから4.4nmの間のX線は水ではほとんど吸収されないが、蛋白質には1桁以上大きく吸収される。この波長域のX線を用いれば水中の生物や水を含む生物の内部組織を高いコントラストで観察することができる。さらには炭素の吸収端の波長は4.48nmであるが、波長4.4nmのX線は波長4.5nmのX線より1桁程度炭素中で吸収されやすいという性質を持つ。同様に窒素の吸収端の波長は3.16nmであり、3.1nmから4.5nmまでの波長域を一つの素子で集光・分析できれば、炭素と窒素の成分比も分析可能となる。本発明によると全ての元素について同様のことが可能となる。
【0007】ゾーンプレートの作製は、紫外光ホログラフィック・リソグラフィーあるいは電子ビーム・リソグラフィーによって行うことができる。紫外光ホログラフィック・リソグラフィーとは、ドイツ国のゲッチンゲン大学において開発された手法であり、波長400nm程度の2つのレーザーを光源とし、それらによる干渉縞により直接ゾーンプレートのパターンを作り、フォトレジストを露光し、反応性イオンエッチング等により作製する手法である。
【0008】電子ビーム・リソグラフィーは、X線ゾーンプレートの作製上、現在、最も多く用いられている方法で、細く絞った電子ビームでゾーンプレートのパターンを走査し、ポリメチルメタクリレート等のレジストを露光し、同様に反応性イオンエッチング等で加工する方法である。
【0009】ゾーンプレートの材料としては、使用するX線のエネルギーに応じて、金、銀、ニッケル、タンタル、ゲルマニウム等が用いられる。これまでに作製されたゾーンプレートで、最も小さい最外ゾーン幅は、数十nmである。
【0010】
【実施例】一次元ゾーンプレートで目的とする波長λを4.5nm、焦点距離fを20mmとすると、n=3000程度で線幅は86nm程度になる。この場合ゾーンプレート全体の大きさは約1mmである。ゾーンプレートの材料としてニッケルを用いるとすると、この場合80nm程度の厚さで約15%の集光効率が得られる。これを傾けながら波長を走査すると集光点が一定のまま連続的に変化し34度傾けたところで波長は、3.1nmであった。
【0011】
【発明の効果】従来のX線の集光は、同心円状の2次元ゾーンプレートにより行われていたが、これでは、入射X線の波長λ(エネルギー)により焦点位置が変動していたが、本願発明の方法によれば、X線の波長が変化しても焦点位置を変化させる必要がない。
【出願人】 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【出願日】 平成13年5月23日(2001.5.23)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−350593(P2002−350593A)
【公開日】 平成14年12月4日(2002.12.4)
【出願番号】 特願2001−154623(P2001−154623)