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【発明の名称】 電子線照射装置
【発明者】 【氏名】山口 正典

【氏名】今村 賢二

【要約】 【課題】被処理物に電子線を均一に照射することができる電子線照射装置を提供することにある。

【解決手段】本発明の電子ビーム照射装置は、電子線を出射する窓部1dを有する電子ビーム管1を備え、電子ビーム管1から出射した電子線により被処理物を処理する電子線照射装置であって、電子ビーム管1の窓部1dは、被処理物に電子線を線状に照射するために直線状になっているとともに、窓部1dの外部前方に、電子線の進路を遮断する遮蔽部材5が配置され、遮蔽部材5は、窓部1dの一部分の領域に対向する位置に配置されていることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電子線を外部へ出射する窓部を有する電子ビーム管を備え、当該電子ビーム管から出射した電子線により被処理物を処理する電子線照射装置において、前記電子ビーム管の窓部は、被処理物に当該窓部から出射された電子線を線状に照射するために直線状になっているとともに、当該窓部の外部前方に、電子線の進路を遮断する遮蔽部材が配置され、前記遮蔽部材は、前記窓部の一部分の領域に対向する位置に配置されていることを特徴とする電子ビーム出射装置。
【請求項2】 前記遮蔽部材は、当該遮蔽部材に浸入してきた電子を検出するための電子線量検出手段であることを特徴とする請求項1に記載の電子線照射装置。
【請求項3】 複数の電子ビーム管が、それぞれの窓部が長手方向に直線状になるように配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子線照射装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、電子ビーム管の窓部から出射される電子線により、半導体ウエハ等に塗布されたレジストの硬化や各種印刷物に塗布されたインクの乾燥等に利用される電子ビーム管を備えた電子線照射装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体ウエハ等に塗布されたレジストの硬化、基板等に塗布された塗料、インキ、接着剤、保護用樹脂の乾燥や硬化のために、電子線を利用することが提案されてきている。近年、特表平10−512092に記載されたような、窓部を有する真空型の電子ビーム管が市販されている。この電子ビーム管の構成は、真空型の電子ビーム管の内部で発生した電子を窓部から出射するものである。このような電子ビーム管を用いると、窓部から大気中に電子線を出射すことができる。従来、電子線を利用した電子線照射装置は、電子線を発生させる電子線源が配置される雰囲気を運転中は常時真空に維持する必要がるので高真空にしていたが、上記真空型の電子ビーム管を用いれば、管が封止され管内部は常に高真空に維持されているので、運転中に高真空に引くための真空ポンプが不要となり、電子線を利用した電子線照射装置の構成が簡単で取扱いも容易になる。
【0003】図11に、電子ビーム管とその電源回路の概略構造を示す。電子ビーム管1は、内部にフィラメント1aとグリッド1bを備えている。フィラメント1aとグリッド1bには、端子1fを介して直流高電圧電源2から例えば30〜70kVの高電圧が印加される。また、フィラメント1aには端子1fを介してフィラメント電源3が接続され、フィラメント1aは該電源3から供給される電流により加熱され、熱電子を放出する。グリッド1bには端子1fを介してグリッド電源4が接続されており放出された電子はグリッド1bによって生じる電界によってビーム形状に整えられる。
【0004】そして、フィラメント1aとグリッド1bには、前述したよう、例えば30〜70kVの高電圧が印加されており、一方、電子ビーム管1の前面に設けられたフランジ1cはグランドに接続されており、フィラメント1aとグリッド1bがフランジ1cに対して電位差があるので、この電位差を利用して、フランジ1cの窓部1dから電子線が電子ビーム管1の外に出射される。電子ビーム管1から出射された電子線は、例えば図示しない半導体ウエハや各種印刷物等の被処理物に照射され、レジストの硬化やインクの乾燥等が行われる。
【0005】電子ビーム管1は、石英の管壁1eとフランジ1cおよび窓部1dによって密閉構造になっており、内部の圧力は、発生した電子線が減衰しないように、10−4〜10−6Pa(10−6〜10−8Torr)に減圧され、真空型になっている。窓部1dは、電子線を通過する時、その電子線が減衰しないような、厚さ数μm(例えば3μm)の、シリコンを含む特殊な材質よりなる膜である。
【0006】図12に示すように、フィラメント1aは、長手方向に一定の長さを有するものであり、フィラメント1aの両端部は内部リード線等の給電部材に接続されている。つまり、フィラメント1aは線状になっている。このようにフィラメント1aが線状になっているので、効率よく電子線を電子ビーム管1の外部に出射するに、窓部1dは直線状になっている。また、窓部1dは、上記したように非常に薄い厚さ(数μm)の膜で電子ビーム管1の外部の大気圧と電子ビーム管1の内部の圧力(10−4〜10−6Pa)を隔てなければならない。従って、膜の破損の危険性があるので、図12に示すように短辺が1〜2mm、長辺が3〜6mmの小孔を、電子ビームの形状に沿うように、フィラメントの長手方向に複数並べて直線状の窓部1dとしている。
【0007】このような電子ビーム管1は、保持手段によって保持され、大気中、或いは、一定の処理雰囲気中において、電子線を出射する電子線照射装置となる。図13は、従来の電子線照射装置の説明図である。
【0008】図13に示すように、電子ビーム管1は、保持手段8によって保持されて、被処理物であるワークWの上方に位置するように配置されている。図13では、電子ビーム管1とワークWとの間の空間には、大気が介在しているものである。そして、電子ビーム管1の窓部1dから出射された電子線は、ワークWに照射されて、例えば、レジストの硬化処理が行われる。
【0009】しかしながら、このような電子ビーム管1は、窓部1dが直線状になっているため窓部1dの中心直下に対応する位置では線状フィラメント1aの両側から中央に向けて飛び込んでくる電子線により照射される電子線量が大きく、また、線状フィラメント1aの両端部では給電部材によって熱が奪われ電子線の発生量がもともと小さくなっているので、窓部1dの中心から窓部1dの長手方向両側に行くにつれて照射される電子線量が小さくなるものである。
【0010】図14は、ワークW上に照射される電子線量を示すものであり、横軸には窓部1dの中心直下のワークWの位置を中心点(0mm)として窓部1dの長手方向に沿ったワークWの位置を示し、縦軸にはそれぞれの位置における電子線量を示すものである。
【0011】図14からわかるように、ワークWに照射される電子線は、窓部1dの中心直下の中心点(0mm)で最も電子線量が大きくなり、中心点から離れるにしたがって順次電子線量が小さくなるものである。具体的には、ワークWの中心である0mmから±10mmの範囲では電子線量が0.9〜1.15Mradと広い範囲に広がっており、ワークWに照射される電子線が均一になっていないことがわかる。
【0012】つまり、ワークWを電子線によって処理する場合、窓部1dの中心直下の位置で最も処理が効果的に行われ、中心から離れるにしたがって処理効果が薄れていくものである。
【発明が解決しようとする課題】
【0013】本発明は、上記の問題に鑑みて、被処理物に電子線を均一に照射することができる電子線照射装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1に記載の電子線照射装置は、電子線を外部へ出射する窓部を有する電子ビーム管を備え、当該電子ビーム管から出射した電子線により被処理物を処理する電子線照射装置において、前記電子ビーム管の窓部は、被処理物に当該窓部から出射された電子線を線状に照射するために直線状になっているとともに、当該窓部の外部前方に、電子線の進路を遮断する遮蔽部材が配置され、前記遮蔽部材は、前記窓部の一部分の領域に対向する位置に配置されていることを特徴とする。
【0015】請求項2に記載の電子線照射装置は、請求項1に記載の電子線照射装置であって、特に、前記遮蔽部材は、当該遮蔽部材に浸入してきた電子を検出するための電子線量検出手段であることを特徴とする。
【0016】請求項3に記載の電子線照射装置は、請求項1または請求項2に記載の電子線照射装置であって、特に、複数の電子ビーム管が、それぞれの窓部が長手方向に直線状になるように配置されていることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の電子線照射装置に組み込まれる電子ビーム管とその電源回路および遮蔽部材の概略構造を示す説明図である。なお、電子ビーム管1は、図11で示す電子ビーム管と同様であり、同一部分は同一符号で示す。電子ビーム管1は、図11で示す電子ビーム管と同様、フランジ1cに電子線を線状に照射するための直線状の窓部1dが形成されており、この窓部1dの外部であって3mm前方の位置に遮蔽部材5が配置されている。この遮蔽部材5は、被処理物であるワークWへの電子線の進路を遮蔽するものであり、電子線を透過しない一定の厚みを有するものであればよく、例えばガラス、セラミック、ステンレス、銅、アルミニウム、シリコン、ゲルマニウム、化合物半導体からなるものである。
【0018】図2は、電子発生器1の窓部1dと遮蔽部材5の位置関係を示す説明部であり、ワークW方向から見た図である。遮蔽部材5は、窓部1dの一部分の領域に対向する位置に配置されている。具体的には、窓部1dの中心に対向する前方位置に配置されている。遮蔽部材5は、断面形状が四角形の棒状体であり、窓部1dの長手方向と交差する方向に配置されている。
【0019】この結果、電子線量が大きくなる窓部1dの中心部分の電子線を遮蔽することができ、ワークWに照射される電子線量を均一化することができる。
【0020】図3は、ワークW上に照射される電子線量を示すものであり、横軸には窓部1dの中心直下のワークWの位置を中心点(0mm)として窓部1dの長手方向に沿ったワークWの位置を示し、縦軸にはそれぞれの位置における電子線量を示すものである。図3から理解できるように、ワークWに照射される電子線は、窓部1dの中心直下の位置において遮蔽部材の影響により、電子線量が小さくなっており、中心直下とその周辺部の電子線量の差は小さくなっている。具体的には、ワークWの中心である0mmから±10mmの範囲では電子線量が0.9〜1.0Mradの範囲に入り、ワークWに均一に電子線が照射されていることがわかる。
【0021】図4は、本発明の電子線照射装置に組み込まれる電子ビーム管と他の形態の遮蔽部材を示す説明図である。この例においては、遮蔽部材5は、電子ビーム管1の窓部1dの一部分の領域に対向する前方に配置されており、さらに、窓部1dの中心近傍の2箇所の位置に対向するように配置されている。なお、遮蔽部材5が配置される位置は、窓部1dの中心に対向する位置に限らず、電子ビーム管1内部のフィラメントの形状やグリッドの電圧等によって窓部1dから出射される電子線のビーム形状に対応して、任意の位置に遮蔽部材5が位置するように配置すれば良い。
【0022】図5は、本発明の電子線照射装置に組み込まれる電子ビーム管と他の形態の遮蔽部材を示す説明図である。この例においては、遮蔽部材5は板状体であり、電子ビーム管1の窓部1dの中心近傍に対向する前方に遮蔽部材5の一部が位置するように配置されている。そして、遮蔽部材5を図中矢印方向に不図示の位置調節機構により位置を調節することにより、窓部1dから出射された電子線を遮蔽する遮蔽領域を変えることができ、従って、ワークW上に照射される電子線の照射分布を任意に変えることができる。
【0023】引き続き図1を用いて説明すると、窓部1d前方に配置された遮蔽部材5は、前述したように、ステンレス、銅、アルミニウムからなる導体、あるいは、シリコン、ゲルマニウム、化合物半導体からなる半導体よりなる場合においては、窓部1dから出射された電子線は、その一部の電子がこの遮蔽部材5に浸入する。浸入した電子は導体あるいは半導体である遮蔽部材5の中を移動し電流を発生させる。つまり、遮蔽部材5は、電子線量検出手段を兼ねるものである。
【0024】そして、発生した電流は、電流測定部6で測定され、測定電流値を示す電圧信号に変換されて、制御部7に送られる。制御部7は、上記測定電流値を、あらかじめ入力されている設定電流値と比較する。測定電流値が設定電流値よりも小さければ、フィラメント電源3を制御して、管電流を増加させ電子ビーム管1に供給する電力を増加させる。また、測定電流値が設定電流値よりも大きければ、管電流を減少させ電子ビーム管1に供給する電力を減少させる。
【0025】このように、電子ビーム管1の窓1dから出射される電子線を電流値として検出し、該電流値に基づいて電子ビーム管1に供給する電力値を制御することにより、電子ビーム管1から出射される電子線の量を一定かつ安定に制御することができる。なお、グリッド1bに印加する電圧を制御して、電子ビーム管1から出力される電子線量を制御するようにしてもよい。
【0026】図6は、本発明の電子線照射装置を組み込んだ処理装置の説明図である。電子ビーム管1は、処理室9に窓部1dが露出するように配置されており、窓部1dの外部前方に遮蔽部材5が配置されている。そして、遮蔽部材5の前方に処理すべきワークWが配置されるようになっている。
【0027】処理室9内、つまり、ワークWに電子線が照射される照射雰囲気が減圧であると、窓部1dから出射された電線はより遠くまで届くようになる。このため、遮蔽部材を設置する場所や形状に自由度が増すものである。例えば、照射雰囲気が大気圧の場合、加速電圧が30kVの場合、窓部1dから電子線は10mmしか届かないため遮蔽部材5を設置する場所は窓部1dから10mm以内に限られる。しかし、照射雰囲気が100Torrで加速電圧が30kVの場合、窓部1dから電子線は80mmまで届く。このように、照射雰囲気の圧力を低くすることによって、遮蔽部材5を設置する場所を窓部1dから離すことができ、遮蔽部材5が導体あるいは半導体である場合は電気的に窓部1dと遮蔽部材5が短絡することを防止できる。
【0028】また、遮蔽部材5の形状を中心に貫通孔を有するリング状にしてアパーチャー機能を持たせることもできる。処理室9内、つまり、ワークWに電子線が照射される照射雰囲気が大気圧状態である場合、アパーチャー通過後の電子線は雰囲気ガスとの衝突・散乱で拡散してアパーチャーで成形された電子線のビーム形状を維持できないが、照射雰囲気が減圧状態の場合、アパーチャーを通過した電子線は、雰囲気ガスとの衝突・散乱によって軌道が曲がらないためアパーチャーによるビーム形状を所定の形状とすることができる。この結果、ワークWの任意の領域を電子線で処理することができる。
【0029】図7は、本発明の他の形態の電子線照射装置に組み込まれる電子ビーム管と遮蔽部材の位置関係を示す説明図である。この電子線照射装置は、複数の電子ビーム管1を備えており、それぞれの窓部1dが、長手方向に直線状になるように配置されている。このように、複数の電子ビーム管1の窓部1dが長手方向に直線状になるように配置することにより、窓部1dの長手方向両側から出射される電子線がお互いに補完しあって窓部1dの両側に対向する位置の被処理物上に照射される電子線の量の落ち込みを少なくすることができる。この結果、上記のように複数の電子ビーム管を配置することにより、大面積の被処理物を電子線によって処理することができる。そして、それぞれの窓部1dの外部前方であって、窓部1dの一部分の領域に対向する任意の位置に棒状の遮蔽部材5が配置されている。
【0030】図8は、このような電子線照射装置を用いた場合のワークW上に照射される電子線量を示すものであり、横軸にはワークWの位置を中心点(0mm)として窓部1dの長手方向に沿ったワークWの位置を示し、縦軸にはそれぞれの位置における電子線量を示すものである。図中、実線のグラフbは、各電子ビーム管1の窓部1dの外部前方に遮蔽部材が配置されていない時のワークWが受ける電子線量の分布を示し、破線のグラフaは、図7に示すように各電子ビーム管1の窓部1dの外部前方に遮蔽部材5が配置されている時のワークWが受ける電子線量の分布を示しものである。
【0031】図8から明らかなように、遮蔽部材5を設けた場合、ワークWに照射される電子線の分布は、最大値と最小値の差が、遮蔽部材5がない場合と比較して小さくなっており、大面積のワークWに均一に電子線が照射されていることがわかる。なお、遮蔽部材5によって、電子線量の最大値は若干低下するが、ワークWを処理するうえで問題とはならない。
【0032】なお、図7に示すように、各電子ビーム管1にそれぞれ独立して対応するように遮蔽部材5が配置されているので、それぞれの遮蔽部材5を電子線量検出手段とする場合、それぞれの遮蔽部材5で発生した電流をもとに個別に制御部7に信号を送り、制御部7によって、それぞれ個別に電子ビーム管1のフィラメント電源3を制御することにより、各電子ビーム管1から出射される電子線の量を個別に制御することができる。
【0033】なお、図9に示すように、複数の電子ビーム管1のそれぞれの窓部1dが、長手方向に複数平行に直線状になるように配置されていてもよく、図10に示すように、窓部1dの長手方向に隣接する電子ビーム管1の間隔を開け、各電子ビーム管のそれぞれの窓部1dが複数直線状になるように、各電子ビーム管1を千鳥状に配置してもよい。この場合、被処理物は窓部1dの長手方向と交差する矢印方向から窓部1dの下に移動しながら電子線処理がなされるものである。なお、5は、遮蔽部材を示す。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の電子ビーム出射装置によれば、電子ビーム管の窓部は、被処理物に窓部から出射された電子線を線状に照射するために直線状になっているとともに、この窓部の外部前方に、電子線の進路を遮断する遮蔽部材が配置され、この遮蔽部材は、窓部の一部分の領域に対向する位置に配置されているので、窓部から出射された電子線の一部を遮蔽することができ、被処理物にに照射される電子線量を均一化することができる。
【0035】さらに、遮蔽部材は、遮蔽部材に浸入してきた電子を検出するための電子線量検出手段であるので、電子線量検出手段に基づく検出値によって、電子ビーム管から出力される電子線量を制御することができる。
【0036】また、電子線照射装置は、複数の電子ビーム管が、それぞれの窓部が長手方向に直線状になるように配置されているので、広い面積の被処理物を均一に処理することができる。
【出願人】 【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
【出願日】 平成13年5月21日(2001.5.21)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−341100(P2002−341100A)
【公開日】 平成14年11月27日(2002.11.27)
【出願番号】 特願2001−150965(P2001−150965)