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【発明の名称】 放射線像変換パネルの製造方法
【発明者】 【氏名】礒田 勇治

【要約】 【課題】高感度であって、高画質の放射線画像を与える放射線像変換パネルの製造方法を提供する。

【解決手段】ユーロピウム付活アルカリ金属ハロゲン化物系輝尽性蛍光体もしくはその原料を含む蒸発源の加熱により発生する物質を基板上に蒸着させて蛍光体層を形成する工程を含む放射線像変換パネルの製法であって、蒸発源として、ユーロピウム付活剤成分の濃度が、形成する蛍光層中の蛍光体のユーロピウム付活剤濃度よりも高い蒸発源を用いることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 基本組成式(I)を有するユーロピウム付活アルカリ金属ハロゲン化物系輝尽性蛍光体もしくはその原料を含む蒸発源を加熱することによって発生する物質を基板上に蒸着させることにより蛍光体層を形成する工程を含む放射線像変換パネルの製造方法において、該蒸発源として、ユーロピウム付活剤成分の濃度が、目的とする蛍光体層中の蛍光体のユーロピウム付活剤濃度よりも高い蒸発源を用いることを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
基本組成式(I): MIX・aMIIX’2・bMIIIX”3:zEu ‥‥(I)
[ただし、MIはLi、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属を表し;MIIはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Cu、Zn及びCdからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属又は二価金属を表し;MIIIはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素又は三価金属を表し;X、X’及びX”はそれぞれ、F、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表し;そしてa、b及びzはそれぞれ、0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<z<0.2の範囲内の数値を表す]
【請求項2】 蒸発源中のユーロピウム付活剤成分の濃度が、形成される蛍光体層中の蛍光体のユーロピウム付活剤濃度の150倍以下である請求項1に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項3】 蒸発源中のユーロピウム付活剤成分の濃度が、形成される蛍光体層中の蛍光体のユーロピウム付活剤濃度の1.5倍以上10倍以下である請求項2に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項4】 蒸発源中のユーロピウム付活剤成分の濃度αが、関係式:10-5≦α≦10-1を満足する請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項5】 基本組成式(I)を有するユーロピウム付活アルカリ金属ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の母体成分原料と付活剤成分原料とを含む蒸発源を加熱することによって発生する物質を基板上に蒸着させることにより蛍光体層を形成する工程を含む放射線像変換パネルの製造方法において、母体成分原料、そしてユーロピウム付活剤成分の濃度が目的とする蛍光体層中の蛍光体のユーロピウム付活剤濃度よりも高い付活剤成分原料が互いに分離配置された蒸発源を用いることにより共蒸着することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
基本組成式(I): MIX・aMIIX’2・bMIIIX”3:zEu ‥‥(I)
[ただし、MIはLi、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属を表し;MIIはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Cu、Zn及びCdからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属又は二価金属を表し;MIIIはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素又は三価金属を表し;X、X’及びX”はそれぞれ、F、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表し;そしてa、b及びzはそれぞれ、0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<z<0.2の範囲内の数値を表す]
【請求項6】 蒸発源の付活剤成分原料中のユーロピウム付活剤成分の濃度が、形成される蛍光体層中の蛍光体のユーロピウム付活剤濃度の150倍以下である請求項5に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項7】 蒸発源の付活剤成分原料中のユーロピウム付活剤成分の濃度が、形成される蛍光体層中の蛍光体のユーロピウム付活剤濃度の1.5倍以上10倍以下である請求項6に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項8】 蒸発源の付活剤成分原料中のユーロピウム付活剤成分の濃度αが、関係式:10-5≦α≦10-1を満足する請求項5乃至7のうちのいずれかの項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項9】 蒸発源の加熱を電子線の照射により行なうことを特徴とする請求項1乃至8のうちのいずれかの項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、輝尽性蛍光体の輝尽発光を利用する放射線像記録再生方法に用いられる放射線像変換パネルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】X線などの放射線が照射されると、放射線エネルギーの一部を吸収蓄積し、そののち可視光線や赤外線などの電磁波(励起光)の照射を受けると、蓄積した放射線エネルギーに応じて輝尽発光を示す性質を有する輝尽性蛍光体(蓄積性蛍光体)を利用して、この輝尽性蛍光体を含有するシート状の放射線像変換パネルに、被写体を透過したあるいは被検体から発せられた放射線を照射して被写体または被検体の放射線画像情報を一旦蓄積記録した後、パネルにレーザ光などの励起光を走査して順次輝尽発光光として放出させ、そしてこの輝尽発光光を光電的に読み取って画像信号を得ることからなる、放射線画像記録再生方法が広く実用に共されている。読み取りを終えたパネルは、残存する放射線エネルギーの消去が行われた後、次の撮影のために備えられて繰り返し使用される。
【0003】放射線画像記録再生方法に用いられる放射線像変換パネル(蓄積性蛍光体シートともいう)は、基本構造として、支持体とその上に設けられた輝尽性蛍光体層とからなるものである。ただし、輝尽性蛍光体層が自己支持性である場合には必ずしも支持体を必要としない。また、輝尽性蛍光体層の上面(支持体に面していない側の面)には通常、保護層が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
【0004】輝尽性蛍光体層は、通常は輝尽性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなる。ただし、蒸着法や焼結法によって形成される結合剤を含まないで輝尽性蛍光体の凝集体のみから構成されるものや、輝尽性蛍光体の凝集体の間隙に高分子物質が含浸されているものも知られている。
【0005】また、上記放射線画像記録再生方法の別法として本出願人による特願平11−372978号明細書には、従来の輝尽性蛍光体における放射線吸収機能とエネルギー蓄積機能とを分離して、少なくとも輝尽性蛍光体(エネルギー蓄積用蛍光体)を含有する放射線像変換パネルと、放射線を吸収して紫外乃至可視領域に発光を示す蛍光体(放射線吸収用蛍光体)を含有する蛍光スクリーンとの組合せを用いる放射線画像形成方法が提案されている。この方法は、被検体を透過などした放射線をまず、該スクリーンまたはパネルの放射線吸収用蛍光体により紫外乃至可視領域の光に変換した後、その光をパネルのエネルギー蓄積用蛍光体にて放射線画像情報として蓄積記録する。次いで、このパネルに励起光を走査して輝尽発光光を放出させ、この輝尽発光光を光電的に読み取って画像信号を得るものである。このような放射線像変換パネルおよび蛍光スクリーンも、本発明に包含される。
【0006】放射線像記録再生方法(および放射線画像形成方法)は上述したように数々の優れた利点を有する方法であるが、この方法に用いられる放射線像変換パネルにあっても、できる限り高感度であってかつ画質(鮮鋭度、粒状性など)の良好な画像を与えるものであることが望まれている。
【0007】感度および画質を高めることを目的として、例えば特公平6−77079号公報に記載されているように、放射線像変換パネルの製造方法として、輝尽性蛍光体層を気相堆積法により形成する方法が提案されている。気相堆積法には蒸着法やスパッタ法などがあり、例えば蒸着法は、輝尽性蛍光体またはその原料からなる蒸発源を抵抗加熱器や電子線の照射により加熱して蒸発源を蒸発、飛散させ、金属シートなどの基板表面にその蒸発物を堆積させることにより、輝尽性蛍光体の柱状結晶からなる蛍光体層を形成するものである。
【0008】気相堆積法により形成された蛍光体層は、結合剤を含有せず、輝尽性蛍光体のみからなり、輝尽性蛍光体の柱状結晶と柱状結晶の間には空隙(クラック)が存在する。このため、励起光の進入効率や発光光の取出し効率を上げることができるので高感度であり、また励起光の平面方向への散乱を防ぐことができるので高鮮鋭度の画像を得ることができる。しかしながら、上記の抵抗加熱器を用いた蒸着法などでは、蒸発源のうち蒸気圧の高い物質が優先的に蒸発する(例えば、蛍光体の付活剤が母体よりも先行して蒸発する)傾向にあり、蒸発源として仕込んだ蛍光体の組成と形成された蛍光体層中の蛍光体の組成とが一致しないという問題がある。
【0009】なお、上記特公平6−77079号公報には、蒸発源として輝尽性蛍光体(具体的には、RbBr:Tl輝尽性蛍光体を使用)を用いて一元蒸着する方法が開示されているが、蒸発源中の蛍光体の付活剤濃度と、目的とする蛍光体の付活剤濃度あるいは実際に得られた蒸着膜中の蛍光体の付活剤濃度との関係については全く記載されていない。なお、蒸気圧1.333Paを示す温度はRbBrで894Kであり、TlBrで533Kである。
【0010】一方、特公平7−84588号公報には、ユーロピウムで付活されたアルカリ金属ハロゲン化物系輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換方法および放射線像変換パネルが開示されている。しかしながら、放射線像変換パネルの蛍光体層を形成する方法としては、この蛍光体の粒子と結合剤を用いて塗布により形成する方法が記載されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、上記の蒸着法を用いて放射線像変換パネルの蛍光体層を形成する方法について研究を重ねた結果、蒸発源を電子線の照射により局所的に加熱して瞬時に蒸発させることからなる電子線蒸着法であっても、CsBr:Eu蛍光体のような、母体成分と付活剤成分とで一定の蒸気圧となる温度に大きな差がある場合(蒸気圧1.333Paとなる温度、CsBr:556K、EuBr2:1013K)、すなわち同一温度であれば蒸気圧に大きな差がある場合には、蒸発源として蛍光体それ自体を用いる一元蒸着では、蒸気圧の高い母体成分(この場合にはCsBr)が先に蒸発しやすく、結果として蒸発源として仕込んだ蛍光体の組成と形成された蛍光体層中の蛍光体の組成とが一致せず、蛍光体層中の付活剤濃度が所望とする濃度よりも低くなることが分った。また、先に母体成分が過剰の蒸着膜が形成されると、その表面にドープされるべき付活剤成分の排斥が発生しやすいことも分った。そして、その結果、得られた蛍光体層中の蛍光体の付活剤濃度が低いために、感度が著しく低下する。
【0012】従って本発明は、高感度の放射線像変換パネルの製造方法を提供するものである。また本発明は、高感度であって、かつ高画質の放射線画像を与える放射線像変換パネルの製造方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記の基本組成式(I)を有するユーロピウム付活アルカリ金属ハロゲン化物系輝尽性蛍光体もしくはその原料を含む蒸発源を加熱することによって発生する物質を基板上に蒸着させることにより蛍光体層を形成する工程を含む放射線像変換パネルの製造方法において、該蒸発源として、ユーロピウム付活剤成分の濃度が目的とする蛍光体のユーロピウム付活剤濃度よりも高い蒸発源を用いることを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法にある。
【0014】
基本組成式(I): MIX・aMIIX’2・bMIIIX”3:zEu ‥‥(I)
[ただし、MIはLi、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属を表し;MIIはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Cu、Zn及びCdからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属又は二価金属を表し;MIIIはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素又は三価金属を表し;X、X’及びX”はそれぞれ、F、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表し;そしてa、b及びzはそれぞれ、0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<z<0.2の範囲内の数値を表す]
【0015】上記の本発明の放射線像変換パネルの製造方法に於いて好ましい態様を以下に記載する。
(1)蒸発源中のユーロピウム付活剤成分の濃度が、形成される蛍光体層中の蛍光体のユーロピウム付活剤濃度の150倍以下である。
(2)蒸発源中のユーロピウム付活剤成分の濃度が、形成される蛍光体層中の蛍光体のユーロピウム付活剤濃度の1.5倍以上10倍以下である。
(3)蒸発源中のユーロピウム付活剤成分の濃度αが下記関係式を満足する。
10-5≦α≦10-1【0016】本発明はまた、上記の基本組成式(I)を有するユーロピウム付活アルカリ金属ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の母体成分原料と付活剤成分原料とを含む蒸発源を加熱することによって発生する物質を基板上に蒸着させることにより蛍光体層を形成する工程を含む放射線像変換パネルの製造方法において、母体成分原料、そしてユーロピウム付活剤成分の濃度が目的とする蛍光体層中の蛍光体のユーロピウム付活剤濃度よりも高い付活剤成分原料が互いに分離配置された蒸発源を用いることにより共蒸着することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法にもある。
【0017】上記の本発明の共蒸着を利用する放射線像変換パネルの製造方法に於いて好ましい態様を以下に記載する。
(1)蒸発源の付活剤成分原料中のユーロピウム付活剤成分の濃度が、形成される蛍光体層中の蛍光体のユーロピウム付活剤濃度の150倍以下である。
(2)蒸発源の付活剤成分原料中のユーロピウム付活剤成分の濃度が、形成される蛍光体層中の蛍光体のユーロピウム付活剤濃度の1.5倍以上10倍以下である。
(3)蒸発源の付活剤成分原料中のユーロピウム付活剤成分の濃度αが、下記関係式を満足する。
10-5≦α≦10-1【0018】本発明において、ユーロピウム付活剤成分またはユーロピウム付活剤の濃度とは、上記基本組成式(I)を有する蛍光体の母体の中心元素MIに対する付活剤Euのモル比Eu/MIを意味する。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明において、蒸発源の加熱に際しては、電子線の照射を利用することが好ましい。
【0020】以下に、本発明の放射線像変換パネルの製造方法について、蛍光体層を蒸着法の一種である電子線蒸着法により形成する場合を例にとって詳細に述べる。蒸着膜形成のための基板は、通常は放射線像変換パネルの支持体を兼ねるものであり、従来の放射線像変換パネルの支持体として公知の材料から任意に選ぶことができるが、特に好ましい基板は、石英ガラスシート;アルミニウム、鉄、スズ、クロムなどからなる金属シート;アラミドなどからなる樹脂シートである。公知の放射線像変換パネルにおいて、放射線像変換パネルとしての感度もしくは画質(鮮鋭度、粒状性)を向上させるために、二酸化チタンなどの光反射性物質からなる光反射層、もしくはカーボンブラックなどの光吸収性物質からなる光吸収層などを設けることが知られている。本発明の放射線像変換パネルの製造で用いられる基板についても、これらの各種の層を設けることができ、それらの構成は所望の放射線像変換パネルの目的、用途などに応じて任意に選択することができる。さらに特開昭58−200200号公報に記載されているように、得られる画像の鮮鋭度を向上させる目的で、基板の蛍光体層側の表面(基板の蛍光体層側の表面に下塗層(接着性付与層)、光反射層あるいは光吸収層などの補助層が設けられている場合には、それらの補助層の表面であってもよい)には微小な凹凸が形成されていてもよい。
【0021】蛍光体としては、基本組成式(I):IX・aMIIX’2・bMIIIX”3:zEu ‥‥(I)
を有するユーロピウム付活アルカリ金属ハロゲン化物系輝尽性蛍光体が用いられる。ただし、MIはLi、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属を表し;MIIはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Cu、Zn及びCdからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属又は二価金属を表し;MIIIはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素又は三価金属を表し;X、X’及びX”はそれぞれ、F、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表し;そしてa、b及びzはそれぞれ、0≦a<0.5、0≦b<0.5、0≦z<0.2の範囲内の数値を表す。
【0022】上記基本組成式(I)中のMIとしては少なくともCsを含んでいることが好ましい。Xとしては少なくともBrを含んでいることが好ましい。また、基本組成式(I)には、必要に応じて、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物を添加物として、MI1モルに対して、0.5モル以下の量で加えてもよい。
【0023】本発明において蛍光体層は、例えば電子線蒸着法により、以下のようにして基板上に形成することができる。電子線蒸着法を利用することにより、特に形状が良好で、配列の整った柱状結晶が得られる。まず、蒸発源を用意する。本発明において蒸発源は基本的には、上記基本組成式(I)を有するユーロピウム付活アルカリ金属ハロゲン化物系輝尽性蛍光体からなる。ただし、付活剤であるユーロピウムの濃度が、形成する蛍光体層中の蛍光体のユーロピウム濃度よりも高い蛍光体を用いる。
【0024】本発明においては、蒸発源中の付活剤濃度Eu/MIを、形成する蛍光体層中の蛍光体の付活剤濃度よりも少しでも高くすれば、得られる蛍光体層中の付活剤濃度をこれまでよりも上げることができ、感度向上の効果を得ることができる。よって、蒸発源中の付活剤濃度Eu/MIは、好ましくは目的とする蛍光体の付活剤濃度の1倍より高く、150倍以下となるようにする。特に好ましくは、1.5倍以上10倍以下である。
【0025】なお、蒸着膜(蛍光体層)を目的とする付活剤濃度を有するように形成することには、蒸発源中の高い付活剤濃度だけではなく、目的の蛍光体組成や付活剤濃度(絶対値)、および蒸発源の形態や蒸着速度等の蒸着条件など様々な要因があるため、蒸発源の最適な付活剤濃度は一概には決められない。しかしながら、例えばEu濃度(Eu/Cs)が0.01程度のCsBr:Eu蛍光体からなる蛍光体層を形成するには、蒸発源中のEu濃度を約2〜50倍にすることが望ましい。
【0026】また、蒸発源中の付活剤濃度α(Eu/MI、絶対値)は、一般には関係式:10-5≦α≦10-1を満足することが好ましい。
【0027】あるいは、蒸発源は上記蛍光体と付活剤成分との混合物であってもよいし、あるいはまた、上記蛍光体の母体成分と付活剤成分との混合物であってもよい。付活剤成分は、一般には付活剤元素Euを含む化合物であり、例えばEuのハロゲン化物や酸化物が用いられる。母体成分は、母体を構成する化合物それ自体であってもよいし、あるいは互いに反応して母体化合物となりうる二以上の原料の混合物であってもよい。いずれであっても蛍光体の付活剤および/または付活剤成分の濃度が蒸発源全体として、目的とする蛍光体の付活剤濃度よりも高ければよい。
【0028】蒸発源は、加圧圧縮によりタブレット(錠剤)の形状に加工しておくことが好ましい。加圧圧縮は、一般に800〜1000kg/cm2の範囲の圧力を掛けて行う。圧縮の際に、50〜200℃の範囲の温度に加温してもよい。加圧圧縮後、得られたタブレットに脱ガス処理を施すことが好ましい。タブレットの相対密度は、80%以上98%以下であることが好ましく、特に好ましくは90%以上96%以下である。タブレットの相対密度が低いと、タブレット表面から蛍光体が均一に蒸発しないで蒸着膜の膜厚が不均一となったり、突沸物が基板に付着したり、更には蛍光体自体が不均一に蒸発して蒸着膜中に蛍光体の付活剤や添加物が偏析する。
【0029】本発明の蛍光体もしくはその原料成分の蒸着にさいして、母体成分原料と付活剤成分原料とを分離配置し、公知の共蒸着法などを利用して、それらを同時に加熱して共蒸着させることもできる。
【0030】次に、蒸発源と被蒸着物である基板を蒸着装置内に設置し、装置内を排気して1.33×10-4〜6.67×10-2Pa程度の真空度とする。このとき、真空度をこの程度に保持しながら、Arガス、Neガスなどの不活性ガスを導入してもよい。次いで、複数の電子銃から電子線を発生させて、蒸発源それぞれに照射する。電子線の加速電圧は1.5kV以上で5.0kV以下に設定することが望ましい。加速電圧が1.5kVより低いと、電圧が不安定になって、電子線のビームポジションが変動してしまったり、蒸発源の電子線による走査面の形状が変化して蒸発面を平坦に保つことが困難となる。反対に、加速電圧が5.0kVより高い場合には、蒸発により気相成長する蛍光体の柱状結晶が不揃いとなる。
【0031】電子線の照射により、蒸発源の輝尽性蛍光体等は加熱されて蒸発、飛散し、基板表面に堆積する。蛍光体の堆積する速度、すなわち蒸着速度は、一般には0.1〜1000μm/分の範囲にあり、好ましくは1〜100μm/分の範囲にある。蒸発源が蛍光体の付活剤成分等を含む場合には、基板上で蛍光体が合成されると同時に蛍光体層が形成される。なお、電子線の照射を複数回に分けて行って二層以上の蛍光体層を形成することもできる。その場合に、他の蛍光体層を別の蛍光体、例えば公知の各種の輝尽性蛍光体や前記特願平11−372978号明細書記載の放射線吸収用蛍光体から構成してもよい。さらに、蒸着の際に必要に応じて被蒸着物(基板)を冷却または加熱してもよいし、あるいは蒸着終了後に蛍光体層を加熱処理(アニール処理)してもよい。
【0032】このようにして、輝尽性蛍光体の柱状結晶がほぼ厚み方向に成長した蛍光体層が得られる。蛍光体層は、輝尽性蛍光体のみからなり、輝尽性蛍光体の柱状結晶と柱状結晶の間には空隙(クラック)が存在する。蛍光体層の層厚は、通常は100μm〜1mmの範囲にあり、好ましくは200μm〜700mmの範囲にある。
【0033】得られた蛍光体層中の輝尽性蛍光体の組成の分布解析は、カソードルミネッセンス法(CL)、電子分光法(ESCA)、電子マイクロアナライザ法(EPMA)、二次イオン質量分析法(SIMS)などにより行うことができる。あるいは、蛍光体層中の測定すべき部分を削り取り、その部分を蛍光X線法、原子吸光法、誘導結合高周波プラズマ分光分析法(ICP)などにかけることによっても実施することができる。
【0034】本発明において、蒸着法は上述した電子線蒸着法に限られるものではなく、例えば電子銃の代わりに抵抗加熱器を用いて蒸発源を加熱蒸発させることからなる抵抗加熱法など、他の蒸着法も利用することができる。
【0035】上記の蒸着操作において、基板は必ずしも放射線像変換パネルの支持体を兼ねる必要はなく、蒸着膜形成後、蒸着膜を基板から引き剥がし、別に用意した支持体上に接着剤を用いるなどして接合して、蛍光体層を設ける方法を利用してもよい。
【0036】蛍光体層の表面には、放射線像変換パネルの搬送および取扱い上の便宜や特性変化の回避のために、保護層を設けることが望ましい。保護層は、励起光の入射や輝尽発光光の出射に殆ど影響を与えないように、透明であることが望ましく、また外部から与えられる物理的衝撃や化学的影響から放射線像変換パネルを充分に保護することができるように、化学的に安定で防湿性が高く、かつ高い物理的強度を持つことが望ましい。保護層としては、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート、有機溶媒可溶性フッ素系樹脂などのような透明な有機高分子物質を適当な溶媒に溶解して調製した溶液を輝尽性蛍光体層の上に塗布することで形成されたもの、あるいはポリエチレンテレフタレートなどの有機高分子フィルムや透明なガラス板などの保護層形成用シートを別に形成して蛍光体層の表面に適当な接着剤を用いて設けたもの、あるいは無機化合物を蒸着などによって蛍光体層上に成膜したものなどが用いられる。また、保護層中には酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、アルミナ等の光散乱性微粒子、パーフルオロオレフィン樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末等の滑り剤、およびポリイソシアネート等の架橋剤など各種の添加剤が分散含有されていてもよい。保護層の層厚は一般に、高分子物質からなる場合には約0.1〜20μmの範囲にあり、ガラス等の無機化合物からなる場合には100〜1000μmの範囲にある。
【0037】保護層の表面にはさらに、保護層の耐汚染性を高めるためにフッ素樹脂塗布層を設けてもよい。フッ素樹脂塗布層は、フッ素樹脂を有機溶媒に溶解(または分散)させて調製したフッ素樹脂溶液を保護層の表面に塗布し、乾燥することにより形成することができる。フッ素樹脂は単独で使用してもよいが、通常はフッ素樹脂と膜形成性の高い樹脂との混合物として使用する。また、ポリシロキサン骨格を持つオリゴマーあるいはパーフルオロアルキル基を持つオリゴマーを併用することもできる。フッ素樹脂塗布層には、干渉むらを低減させて更に放射線画像の画質を向上させるために、微粒子フィラーを充填することもできる。フッ素樹脂塗布層の層厚は通常は0.5μm乃至20μmの範囲にある。フッ素樹脂塗布層の形成に際しては、架橋剤、硬膜剤、黄変防止剤などのような添加成分を用いることができる。特に架橋剤の添加は、フッ素樹脂塗布層の耐久性の向上に有利である。
【0038】上述のようにして本発明の方法に従う放射線像変換パネルが得られるが、本発明に係るパネルの構成は、公知の各種のバリエーションを含むものであってもよい。たとえば、得られる画像の鮮鋭度を向上させることを目的として、上記の少なくともいずれかの層を、励起光を吸収し輝尽発光光は吸収しないような着色剤によって着色してもよい(特公昭59−23400号公報参照)。
【0039】
【実施例】[実施例1]
(1)蒸発源の作製臭化セシウム100g(CsBr、0.47モル)、および臭化ユーロピウム5.5212g(EuBr2.2、1.7×10-2モル)を乳鉢で粉砕混合した後、更に撹拌振動器で15分間撹拌混合した。得られた混合物を炉内に置いて、3分間排気した後、窒素雰囲気下、温度525℃にて2時間焼成した。焼成後、炉内を15分間排気して焼成物を冷却した。次いで、得られたCsBr:Eu輝尽性蛍光体を乳鉢で粉砕した後、圧力800kg/cm2にて加圧圧縮して、タブレットを作製した。タブレットに、更に温度150℃で2時間排気して脱ガス処理を施した。
【0040】(2)蛍光体層の形成支持体としてアルミニウム基板を蒸着装置内に設置した。装置内の所定位置に上記の蒸発源を置いた後、装置内を排気して、6.7×10-3Paの真空度とした。次いで、蒸発源に、電子銃で加速電圧2.3kVの電子線を20分間照射して、アルミニウム基板上にCsBr:Eu輝尽性蛍光体を25μm/分の速度で堆積させた。その後、電子線の照射を止め、装置内を大気圧に戻し、装置からアルミニウム基板を取り出した。基板上には、幅が約3μm、長さが約450μmの蛍光体の柱状結晶がほぼ垂直方向に密に林立した構造の蛍光体層(層厚:450μm)が形成されていた。このようにして、支持体と輝尽性蛍光体層とからなる本発明の放射線像変換パネルを製造した。
【0041】[実施例2]実施例1において、EuBr2.2の量を18.404g(5.6×10-2モル)に変更したこと以外は実施例1と同様にして本発明の放射線像変換パネルを製造した。
【0042】[実施例3]実施例1において、EuBr2.2の量を184.04g(5.6×10-1モル)に変更したこと以外は実施例1と同様にして本発明の放射線像変換パネルを製造した。
【0043】[比較例1]実施例1において、EuBr2.2の量を1.8404g(5.6×10-3モル)に変更したこと以外は実施例1と同様にして比較のための放射線像変換パネルを製造した。
【0044】[実施例4]
(1)蒸発源の作製臭化セシウム100g(CsBr、0.47モル)の粉末を圧力800kg/cm2にて加圧圧縮して、タブレットを作製した。タブレットに、更に温度150℃で2時間排気して脱ガス処理を施した。別に、臭化ユーロピウム5.5212g(EuBr2.2、1.7×10-2ル)を、圧力800kg/cm2にて加圧圧縮して、タブレットを作製した。タブレットに、更に温度150℃で2時間排気して脱ガス処理を施した。
【0045】(2)蛍光体層の形成(共蒸着)
支持体としてアルミニウム基板を蒸着装置内に設置した。装置内の所定位置に上記の臭化セシウムタブレットと臭化ユーロピウムタブレットとを置いた後、装置内を排気し、6.7×10-3Paの真空度とした。次いで、臭化セエシウムタブレットと臭化ユーロピウムタブレットに、電子銃で加速電圧2.3kVの電子線を20分間照射して、アルミニウム基板上にCsBr:Eu輝尽性蛍光体を25μm/分の速度で堆積させた。その後、電子線の照射を止め、装置内を大気圧に戻し、装置からアルミニウム基板を取り出した。基板上には、幅が約3μm、長さが約300μmの蛍光体の柱状結晶がほぼ垂直方向に密に林立した構造の蛍光体層(層厚:450μm)が形成されていた。このようにして、共蒸着法により、支持体と輝尽性蛍光体層とからなる本発明の放射線像変換パネルを製造した。
【0046】[実施例5]実施例4において、EuBr2.2の量を18.404g(5.6×10-2モル)に変更したこと以外は実施例4と同様にして本発明の放射線像変換パネルを製造した。
【0047】[放射線像変換パネルの性能評価]得られた各放射線像変換パネルの感度について下記の方法により性能の評価を行った。放射線像変換パネルに管電圧40kVp、管電流30mAのX線を照射した後、He−Neレーザ光で走査してフォトマルチプライヤで輝尽発光光を検出し、その発光強度により感度を評価した。比較例1を基準とした相対値で表した。蛍光体層のEu濃度(Eu/Csモル比)は、蛍光X線測定により求めた。得られた結果をまとめて表1に示す。
【0048】
【表1】
表1 ──────────────────────────────── 感度 蒸発源のEu濃度 蛍光体層のEu濃度 ──────────────────────────────── 実施例1 2 0.036(3倍) 0.0005 実施例2 11 0.12(10倍) 0.0015 実施例3 45 1.2(100倍) 0.0102 ──────────────────────────────── 実施例4 25 0.036(3倍) 0.0300 実施例5 30 0.12(10倍) 0.1000 ──────────────────────────────── 比較例1 1 0.01 0.0002 ────────────────────────────────【0049】表1の結果から明らかなように、本発明の方法に従って従来よりも付活剤濃度の高い蒸発源を用いて製造された放射線像変換パネル(実施例1〜3)はいずれも、従来法に従って製造された放射線像変換パネル(比較例1)よりも、蛍光体層におけるCsBr:Eu輝尽性蛍光体の付活剤濃度が高く、その結果、感度が著しく向上した。特に、目的とする付活剤濃度が達成された実施例3のパネルでは、極めて高い感度が得られた。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば、ユーロピウム付活剤成分の濃度が目的とする蛍光体の付活剤濃度よりも高い蒸発源を用いて蒸着法、特に電子線蒸着法により蛍光体層を形成することにより、蛍光体層における付活剤濃度をこれまでよりも高く、そして目的の濃度もしくはそれに近づけることができ、感度の顕著に向上した放射線像変換パネルを得ることができる。また、本発明の放射線像変換パネルは、蛍光体層における蛍光体の柱状結晶の形状や配列状態、表面性、支持体との接着性も良好であり、鮮鋭度など画質の優れた放射線画像を与えることができる。
【出願人】 【識別番号】000005201
【氏名又は名称】富士写真フイルム株式会社
【出願日】 平成13年3月30日(2001.3.30)
【代理人】 【識別番号】100074675
【弁理士】
【氏名又は名称】柳川 泰男
【公開番号】 特開2002−296398(P2002−296398A)
【公開日】 平成14年10月9日(2002.10.9)
【出願番号】 特願2001−102224(P2001−102224)