| 【発明の名称】 |
Mo/Si多層膜及びその耐熱性を向上させる方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】石野 雅彦
【氏名】依田 修
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| 【要約】 |
【課題】波長13nm領域で高い反射率を実現するMo/Si多層膜反射鏡において使用される耐熱性を向上させた多層膜。
【解決手段】Mo/Si多層膜において、Si層の上、下または両側にSiO2層を挿入し、Mo層とSi層との界面における拡散を抑制することからなる、耐熱性を向上させたMo/Si多層膜、及びMo/Si多層膜において、イオンビームスパッタ法によりSi層の上、下または両側にSiO2層を挿入し、Mo層とSi層との界面における拡散を抑制することからなるMo/Si多層膜の耐熱性を向上させる方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 Mo/Si多層膜において、Si層の上、下または両側にシリコン酸化物層を挿入し、Mo層とSi層との界面における拡散を抑制することからなる、耐熱性を向上させたMo/Si多層膜。 【請求項2】 シリコン酸化物層がSiO2を中心とするシリコン酸化物層である請求項1記載の多層膜。 【請求項3】 Si層の上側にSiO2層を挿入したMo/Si/SiO2多層膜からなる請求項1記載の多層膜。 【請求項4】 Si層の下側にSiO2層を挿入したMo/SiO2/Si多層膜からなる請求項1記載の多層膜。 【請求項5】 Si層の両側にSiO2層を挿入したMo/SiO2/Si/SiO2多層膜からなる請求項1記載の多層膜。 【請求項6】 放射光又はX線レーザーの高熱負荷軟X線用の反射鏡として利用することが来る請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の多層膜。 【請求項7】 Mo/Si多層膜において、Si層の上、下または両側にSiO2層を形成することにより、Mo層とSi層との界面における拡散を抑制することからなるMo/Si多層膜の耐熱性を向上させる方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、波長13nm領域で高い反射率を実現するMo/Si多層膜反射鏡において使用される耐熱性を向上させた多層膜及びその耐熱性を向上させる方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】放射光のビームラインやX線レーザーの光学系への応用について考えると、多層膜反射鏡は、極めて強い光の負荷を受けることになり、結果として素子の温度が上昇する。そのため、過酷な条件下での使用にも耐えうる安定な耐熱性多層膜反射鏡が求められている。 【0003】Mo/Si多層膜は、波長13nm近傍の直入射領域において高い反射率を示すにも関わらず、特に300℃以上では熱的に不安定となり、Si層とMo層との界面においてSi化合物が生成され、界面がぼやけることが原因となり反射率が低下することが知られている。 【0004】Mo/Si多層膜の耐熱性改善においては、Mo/B4C(モリブデン/炭化ホウ素)、Mo/SiC(モリブデン/炭化シリコン)、W/BN(タングステン/窒化ホウ素)等、軽元素層に耐熱性材料を用いることで耐熱性が向上することや、Moに代えてMoシリサイドを使用すること、Mo層とSi層の間にC(カーボン)層を挿入する方法などが見出されてきた。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】波長13nm領域において高い反射率を示すにも関わらず、熱的に不安定なMo/Si多層膜はMo層とSi層の界面において形成されるSi化合物が反射率低減の原因となっている。本発明は、従来技術に無い新たな物質を多層膜界面に導入することにより、Si化合物の生成を抑え、耐熱性を向上させるものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は、Mo/Si多層膜のMo層とSi層との界面(Si層の上、下または両方)に薄いシリコン酸化物層(Si2O3等も含まれるSiO2を中心とする層)を挿入することにより、Mo層とSi層の界面におけるSi化合物の生成を抑制し、熱による多層膜の周期長および軟X線反射率の低減を抑え、耐熱性を向上させるものである。 【0007】 【発明の実施の形態】波長が50nmから1nm程度の光は軟X線と呼ばれており、物質による吸収が大きいため、光路を真空にしなければならないうえに、光学定数もほとんど1に近く、屈折を利用したレンズが使えないなどの困難がある。また、反射率も極端に小さいために、全反射を利用した斜入射光学系が主流であるが、結像する際の収差が大きくなる。また、広い取り込み角で光を集めるためには、非常に大きな鏡が必要となる。そのため、直入射で高い反射率を得ることが出来る多層膜反射鏡が注目された。 【0008】多層膜反射鏡は、2種類以上の物質を交互に軟X線の波長程度の厚さに何十層も積層させたものである。軟X線を多層膜に入射させると、各層から反射される光が干渉効果によって特定の方向に強め合うBragg反射が起こる。多層膜反射鏡は、このBragg反射を利用した光学系であり、表面に対して垂直に近い角度で光が入射しても高い反射率を得ることができる。 【0009】現在ではMo/Si(モリブデン/シリコン)多層膜において、波長13nm近傍の直入射領域で60%を超える反射率が得られており、直入射型のX線望遠鏡,X線顕微鏡に加えて、X線リソグラフィー等に用いる光学素子としての応用研究が精力的に進められている。また、放射光分光素子やX線レーザーの共振器ミラーとしての多層膜反射鏡の適応研究も行われている。 【0010】本発明は、波長13nm領域で高い反射率を実現するMo/Si多層膜反射鏡の耐熱性向上に関するものである。以下に本発明の実施例に基づいて説明する。 【0011】 【実施例】本発明において、イオンビームスパッタ法により、Mo/Si多層膜(従来例)およびMo/SiO2多層膜(従来例)、そしてMo層とSi層との界面に薄いSiO2層を挿入したMo/Si/SiO2多層膜(Si層の上側にSiO2層を挿入)、Mo/SiO2/Si多層膜(Si層の下側にSiO2層を挿入)、Mo/SiO2/Si/SiO2多層膜(Si層の両側にSiO2層を挿入)を室温にて成膜した。各多層膜試料の設計値を表1及び概略図を図1から図5に示す。 【0012】 【表1】
【0013】図1は、Mo/Si多層膜の概略図である。MoとSiを1つのペアとし、1周期とする。Mo層厚とSi層厚とを合わせた膜厚が周期長となり、ペアの総数が多層膜の周期である。図2は、Mo/SiO2多層膜の概略図である。 【0014】図3はSi層の上側に薄いSiO2層を挿入したMo/Si/SiO2多層膜である。図4は、図3の多層膜とは反対にSi層の下側にSiO2層を挿入したMo/SiO2/Si多層膜、図5は、Si層の両側にSiO2層を挿入したMo/SiO2/Si/SiO2多層膜成膜の概略図である。 【0015】各多層膜成膜に対して、真空加熱炉による加熱処理を200℃、300℃、350℃及び400℃にて1時間づつ行った。また加熱処理の後に各多層膜試料のCuKα1線によるX線反射率測定を行い、構造評価を行った。各温度における各多層膜試料の周期長の変化を図6に示す。 【0016】Mo/Si多層膜は、温度の上昇に従って、周期長が小さくなり、加熱温度が400℃を超えると、1割以上も周期長が短くなる。しかし、Si層の上または下側に薄いSiO2層を挿入した多層膜では、周期長にMo/Si多層膜のような大きな変化は無く、数%の減少にとどまることが確認された。一方、Si層の両側にSiO2層を挿入した多層膜とSi層のかわりにSiO2層を用いた多層膜では、温度の上昇に伴って周期長は大きくなっているが、変化の割合は小さく抑えられている。 【0017】400℃に加熱した多層膜試料に対して、放射光を用いた軟X線反射率測定を行った。結果を図7から図11に示す。図7に示したMo/Si多層膜では、加熱処理による周期長の変化に伴って、反射率のピークを示す波長が短波長側にシフトし、それと同時に反射率も大きく減少している。図8はSi層の代わりにSiO2層を用いたMo/ SiO2多層膜の軟X線反射率を示したものである。Mo/Si多層膜に比べ、反射率の絶対値は小さいがピーク波長、反射率ともに加熱処理による変化は小さい。 【0018】図9はSi層の上側にSiO2層を挿入したMo/Si/ SiO2多層膜の軟X線反射率を示したものである。加熱処理による変化も小さく、高い反射率を維持しており、効果的に耐熱性の向上が実現されている。一方、図10に示したMo/ SiO2/Si多層膜は、Si層の下側にSiO2層を挿入した多層膜試料であるが、加熱処理による影響がやや大きく出ている。しかし、SiO2層を挿入しないMo/Si多層膜の変化に比べると、耐熱性は向上している。最後に図11に示したSi層の両側にSiO2層を挿入したMo/ SiO2/Si/ SiO2多層膜では、Mo/Si/ SiO2多層膜と同様にピーク波長変化や反射率の低下は抑えられ、SiO2層の挿入がMo/Si多層膜の耐熱性の向上に効果的に作用していることを証明している。 【0019】以上の結果より、Mo層とSi層との界面にSiO2層を挿入した多層膜は、Mo/Si多層膜に比べ、周期長の変化が小さく抑えることが可能である。また、軟X線反射率の低下やピーク波長のシフトもほとんど起きていないことが証明された。 【0020】 【発明の効果】本発明においては、Mo層とSi層との間に薄いSiO2層を挿入することによって、Mo/Si多層膜の耐熱性が向上することを見出した。このことから、Mo層とSi層との界面にSiO2層を挿入した多層膜は、放射光やX線レーザー等の高熱負荷軟X線用の反射鏡として利用することが期待出来る。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004097 【氏名又は名称】日本原子力研究所
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| 【出願日】 |
平成13年3月16日(2001.3.16) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100089705 【弁理士】 【氏名又は名称】社本 一夫 (外5名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−277589(P2002−277589A) |
| 【公開日】 |
平成14年9月25日(2002.9.25) |
| 【出願番号】 |
特願2001−76031(P2001−76031) |
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