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【発明の名称】 材料照射用液体金属ターゲット
【発明者】 【氏名】小川 雪郎

【氏名】土田 一輝

【氏名】道下 秀紀

【氏名】林 克己

【氏名】菊地 賢司

【氏名】大井川 宏之

【氏名】佐々 敏信

【氏名】池田 裕二郎

【要約】 【課題】主たる課題は、核破砕反応による材料照射用液体金属ターゲットにおいて、材料照射試験を行う際に課題となるターゲット容器、試料の冷却性を向上させ、試料挿入孔の密封構造の健全性を確保する。

【解決手段】前記課題は、高速に加速された陽子ビームを液体金属と交差させて水平方向に流し、ターゲット容器またはターゲット容器を兼ねる配管の上部に試料挿入孔を設け、試料を上方に引き抜いて交換することで、陽子ビーム入射方向と液体金属の流れの方向と照射試料の引き抜き方向を互いに交差させるよう構成することによって達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 高エネルギーに加速された陽子ビームを水平方向から液体金属に入射し、核破砕反応により発生する中性子を容器内部に設置した試料に照射する材料照射用液体金属ターゲットであって、液体金属を陽子ビームと交差する方向に流し、ターゲット容器またはターゲット容器を兼ねる配管の上部に試料挿入孔を設け、試料を上方に引き抜いて交換することで、陽子ビーム入射方向と液体金属の流れの方向と照射試料の引き抜き方向を互いに交差させるよう構成したことを特徴とする材料照射用液体金属ターゲット。
【請求項2】 請求項1において、照射を受ける試料を、支持具を用いて試料挿入孔の蓋に固定したことを特徴とする材料照射用液体金属ターゲット。
【請求項3】 請求項1または2において、ターゲット容器の陽子ビーム入射面および試料部を冷却するために容器内部に流量調整板を設けたことを特徴とする材料照射用液体金属ターゲット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高エネルギーの陽子ビームを液体金属に照射して、核破砕反応により中性子を発生させ、材料照射実験を行う材料照射用液体金属ターゲットに関する。
【0002】
【従来の技術】高エネルギーの陽子ビームを重金属ターゲットに照射し、核破砕反応により中性子を発生させる中性子源施設は、入射エネルギーに対して最も多くの中性子を発生させることができるばかりでなく、原子炉に比べて設備が簡素である。このため、中性子を利用する生命科学、物質材料研究、核物理、医療等多分野での利用を目的として、欧州、米国、日本等世界的に大出力化した核破砕中性子源施設の建設が計画されている。また、原子炉で発生する長寿命の放射性廃棄物を核破砕反応により短半減期の核種に変換する核変換施設も21世紀中盤の実用化を目指して研究が進められている。
【0003】MW級の核破砕中性子源の構造材料は、年に100dpaを超える重照射を受けるため、材料の寿命が短くなることが懸念される。また、大規模の加速器中性子源では熱除去の困難からターゲット材に液体金属を用いることが必要となるが、高温の液体金属に接する環境下での照射と腐食の両方の影響を受ける状態での材料特性は明らかにされていない。この点を解明することが世界的な開発課題となっているが、核破砕中性子源は核融合、核分裂には無い数100MeV〜数GeVの高エネルギー中性子を含む中性子と陽子の同時照射を受ける特徴的な照射場であるため、材料特性を調べる照射場にも核破砕中性子源を使わざるを得ない。
【0004】このような目的のために、材料照射用の中規模の核破砕中性子源を建設する計画が日本で進められている。液体金属の鉛ビスマスをターゲット材に用いてターゲット容器中に照射試料を浸漬し、照射と腐食による材料の変化を研究する施設である。核破砕中性子源はこれまで中性子散乱実験用のビームを供給するために主に用いられてきており、材料照射用の核破砕中性子源はこれまでに無い。中性子散乱実験用に中性子ビームを供給するための液体金属ターゲット概念の例としてはJAERI−Tech 2000−003 p.31に示されている水銀ターゲット概念がある。またこの施設は重金属と高エネルギー陽子との核破砕反応を利用するもので、国際核融合材料照射施設(IFMIF)で検討されたd−Li反応を用いる照射施設とは関係が無い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】これまでに建設された核破砕中性子源は全て固体ターゲットを用いたものである。また、これまでに提案された液体金属ターゲット概念はビーム供給用ターゲットであり、材料照射に適した構造になっていない。
【0006】材料照射用液体金属ターゲットでは、発生中性子数の多い陽子ビーム入射面近傍の有効な照射体積に多数の試料を設置する必要がある。一方、核破砕反応による発熱も陽子ビーム入射面近傍が多い。この場合、発熱が高い場所で多数の試料により液体金属の流れが阻害され、除熱効率が低下することで照射試料、ターゲット容器の温度が局所的に上昇することになり、容器および試料の健全性が保てない可能性がある。
【0007】また、試料挿入孔は液体金属を密封できる構造になっている必要があるが、このシール面が放射線の照射により変質すると充分な密封性を保てなくなる恐れがある。
【0008】さらに、核破砕中性子源のターゲット材は極めて放射化が激しいため、放射線防護の観点からは、ターゲット材を容器に閉じ込めるほうがよい。一方、材料照射試験の目的からは、ターゲット容器を開放して試料の挿入、取出しを行うことが要求される。容器から液体金属を排出したとしても、液体金属の一部は容器内壁に付着して容器内に残り、完全な排出は困難であり、この状態でターゲット容器を開放すれば、高度に放射化した液体金属が飛散しやすく、雰囲気中にも飽和蒸気圧濃度まで蒸発する。このため、できるだけ短時間で試料の挿入、取出しができる操作性の良い構造が求められる。
【0009】本発明の第1の課題は、核破砕反応による材料照射用液体金属ターゲットにおいて、材料照射試験を行う際に課題となるターゲット容器、試料の冷却性を向上させ、試料挿入孔の密封構造の健全性を確保した容器構造を有する材料照射試験に適したターゲット構造を提供することにある。
【0010】本発明の第2の課題は、前記第1の課題に加えて、迅速な試料の交換を可能にしたターゲット構造を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記第1の課題は、高エネルギーに加速された陽子ビームを水平方向から液体金属に入射し、核破砕反応により発生する中性子を容器内部に設置した試料に照射する材料照射用液体金属ターゲットであって、液体金属を陽子ビームと交差する方向に流し、ターゲット容器またはターゲット容器を兼ねる配管の上部に試料挿入孔を設け、試料を上方に引き抜いて交換することで、陽子ビーム入射方向と液体金属の流れの方向と照射試料の引き抜き方向を互いに交差させるよう構成することによって達成される。
【0012】また、前記第2の課題は、前記第1の構成に加えて、照射を受ける試料を、支持具を用いて試料挿入孔の蓋に固定することによって達成される。
【0013】さらに、前記第1の課題は、前記第1の構成または第2の構成に加えて、ターゲット容器の陽子ビーム入射面および試料部を冷却するために容器内部に流量調整板を設けることによって達成される。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明による液体金属ターゲットについて、図面を用いて詳細に説明する。
【0015】図1は本発明による液体金属ターゲットの第1実施例の縦断面図、図2は横断面図である。
【0016】入口管フランジ7および出口管フランジ9を介してターゲット容器1は外部の液体金属供給設備に接続される。高エネルギー加速された陽子ビーム2は図の左側から水平方向にターゲット容器1に入射し、核破砕反応により高密度の中性子を発生させる(なお、陽子ビーム2の入射方向は厳密な意味で水平である必要はなく、若干傾いていても問題は無く、要するに液体金属10の流れの方向と交差すればよく、これらを含めて本発明では水平と呼ぶ)。
【0017】核破砕反応による発生中性子の分布、および核破砕反応による発熱分布の概略図を図6に示す。
【0018】図のように発生中性子の分布は陽子ビーム入射面に近いところで鋭いピークをもつため、照射試料3は陽子ビーム入射面に近いところに設置される。一方、発生中性子数が飽和するターゲット長さは陽子のエネルギーおよびターゲット材質によっても異なるが、数100MeVの陽子で10−20cm、数GeVでは60cm以上になる。ターゲットが短いと高エネルギー陽子が後方に漏れるため中性子発生効率が下がる。そのため試料設置部の後方にも液体金属10が流れるような流路が設けられている。液体金属10を流す配管の口径が大きく、必要なターゲット長さを確保できる場合にはターゲット容器1は設けずに配管が容器1を兼ねていてもよい。液体金属10はターゲット容器1の側方に取り付けられた入口配管6を通ってターゲット容器1に流入し、容器1の反対側から出口配管8を通って流出する。液体金属10の流れは陽子ビーム2に交差するため、液体金属10が核破砕反応で加熱される時間が短い。そのため、液体金属10の温度を低く抑えることが可能であり、照射試料3およびターゲット容器1の冷却性を確保するのに効果がある。
【0019】図3に試料部の詳細を示す。
【0020】照射試料3の形状は柱状であり、試料支持棒5に取り付けられた試料支持板11に固定されている。試料支持板11には、試料3の冷却のため、液体金属10が通過する孔15が適宜空けられる。試料支持棒5および試料支持板11を介して照射試料3を試料挿入孔蓋4に固定することで、蓋4を開放すると同時に蓋4と一体となった試料3を引き上げることができ、交換時の作業性を向上している。また試料3の挿入孔を陽子ビーム入射面と異なる面に設け、発生中性子分布のピークから試料挿入孔を遠ざけることで、シール部の放射線損傷による劣化を低減できる。また、開放面が運転時の液体金属10の液面より上にあるため、開放時の液漏れの危険性を軽減している。
【0021】この例では液体金属10の流れに対する試料3の流動抵抗を少なくするために試料3の長手方向を流れに平行に置く。また、試料支持板11には液体金属10を通過させる孔15を適宜設ける。このようにすることで試料部での均一な流れを確保する。しかし、試料3の無い部分と比較すれば、試料3を設置した部分での流動抵抗が大きいため流量調整板12を設置し、液体金属10は試料3の無い部分ではスリット13を通るようにして流動抵抗を調節し、発熱の大きい陽子ビーム入射面および試料部で除熱に必要な流量を確保する。
【0022】また、この例では試料挿入孔蓋4の下部に自由液面14がある。これは特開平11−297498号公報に示されているように液体金属中で発生する圧力波を低減する効果がある。自由液面14と試料挿入孔蓋4の間は、ターゲット材の酸化を抑えるため、ヘリウム等の不活性ガスで覆われる。不活性ガスは貯留させても閉ループを循環させてもよい。
【0023】図4は本発明による液体金属ターゲットの第2実施例の縦断面図、図5は横断面図である。
【0024】この例では、液体金属10の流れに対し照射試料3の長手方向を鉛直におき、液体金属10の流れに対して直交するようにする。第1実施例では液体金属10の流れが試料の長手方向に平行に流れるため、試料3の長手方向で温度分布がつく。第2実施例では、液体金属10の流れに対し試料3の長手方向を直交させるように置くため、そのような問題は生じない。ただし、試料部での流動抵抗は第1実施例に比べて大きくなる。照射試料3の長手方向を液体金属10の流れに平行に置き、流動抵抗を下げるか、試料3の長手方向を流れに直交させ、試料温度の均一性を確保するかの選択は、陽子ビーム2の出力、および液体金属10の種類、流速等の条件により、どちらが制約条件になるかで決めればよい。
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、核破砕反応による液体金属ターゲットにおいて、材料照射試験を行う際に課題となるターゲット容器、試料の冷却性を向上させ、試料挿入孔の密封構造の健全性を確保することができる。
【0026】また、本発明によれば、前記効果に加えて、迅速な試料の交換を可能にすることができる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【識別番号】000004097
【氏名又は名称】日本原子力研究所
【出願日】 平成13年2月28日(2001.2.28)
【代理人】 【識別番号】100068504
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男 (外1名)
【公開番号】 特開2002−258000(P2002−258000A)
【公開日】 平成14年9月11日(2002.9.11)
【出願番号】 特願2001−54128(P2001−54128)