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【発明の名称】 電子ビーム照射装置及び電子ビーム照射装置における真空シール方法
【発明者】 【氏名】三浦 佳久

【氏名】安芸 祐一

【要約】 【課題】電子ビームコラム15が内蔵される真空チャンバー14に静圧浮上パッド18が連結され、この静圧浮上パッド18が被照射体1に被接触で吸着した状態で電子ビームbが静圧浮上パッド18の電子ビーム通路19を通って被照射体1に照射される構造の部分真空方式の電子ビーム照射装置において、静圧浮上パッド18を被照射体1から離した状態でも真空チャンバー内を所要の真空度に維持できるようにする。

【解決手段】静圧浮上パッド18の内部に、電子ビーム通路19を開閉する真空シールバルブ30を備え、静圧浮上パッド18を被照射体1から離すときにはこの真空シールバルブ30を作動させて電子ビーム通路19を閉じることにより真空チャンバー14内への大気の流入を防ぐ構造とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電子ビームコラムが内蔵される真空チャンバーに静圧浮上パッドが連結され、この静圧浮上パッドが被照射体に非接触で吸着した状態で電子ビームが静圧浮上パッドの電子ビーム通路を通って被照射体に照射される構造の電子ビーム照射装置において、上記静圧浮上パッドの内部に、上記電子ビーム通路を開閉する真空シールバルブを備えたことを特徴とする電子ビーム照射装置。
【請求項2】 上記真空シールバルブは、圧縮気体の供給によりピストン式に移動する構造であることを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム照射装置。
【請求項3】 上記真空シールバルブは、上記静圧浮上パッドの内部で僅かな隙間をもって移動される構造であることを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム照射装置。
【請求項4】 上記真空シールバルブによって上記電子ビーム通路が閉じられた状態では、上記真空シールバルブがOリングに圧着して上記電子ビーム通路を密封する構造であることを特徴とする請求項3に記載の電子ビーム照射装置。
【請求項5】 上記真空シールバルブは、セラミックスを材料として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム照射装置。
【請求項6】 電子ビームコラムが内蔵される真空チャンバーに静圧浮上パッドが連結され、この静圧浮上パッドが被照射体に非接触で吸着した状態で電子ビームが静圧浮上パッドの電子ビーム通路を通って被照射体に照射される構造の電子ビーム照射装置において、上記静圧浮上パッドを被照射体から離すときに、上記静圧浮上パッドの内部に移動可能に設けられた真空シールバルブを移動させて上記電子ビーム通路を閉じることにより、上記真空チャンバー内を所要の真空度に維持するようにした電子ビーム照射装置における真空シール方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は例えば光ディスクの原盤記録に用いられる電子ビーム照射装置及び電子ビーム照射装置における真空シール方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、光ディスクにおいては記録密度の一層の高密度化が求められており、これを実現するためには記録ピットをより微細に形成する必要がある。このため光ディスクの原盤の作製においては、従前のレーザー光に代えて電子ビームを原盤に照射して記録を行なう装置が提案されている。
【0003】この電子ビーム照射装置では、電子ビームが気体分子と衝突して散乱することがないように、真空環境での電子ビーム照射が必要となる。この場合、電子ビーム照射装置全体を真空環境に置くとすると、大きな真空空間及び大型の排気手段が必要となり、装置が大型で高価なものとなる。
【0004】そこでこれを回避するものとして本出願人は、先に「特願2000−57374」において、電子ビームを照射する部分のみを真空状態とする部分真空方式の電子ビーム照射装置を提案した。
【0005】即ちこの電子ビーム照射装置は、電子ビームコラムが内蔵される真空チャンバーの電子ビーム出口に静圧浮上パッドが連結されてなり、この静圧浮上パッドは排気手段による吸引と給気手段による圧縮気体の供給により原盤に対し数μm程度の僅かな隙間をもって非接触で吸着され、その状態で電子銃から出射された電子ビームが静圧浮上パッドの中心部の電子ビーム通路を通って原盤に照射される構造となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このように構成される電子ビーム照射装置において、原盤の取り替え作業を行なう場合、静圧浮上パッドを原盤から待避させる必要がある。この場合、静圧浮上パッドが原盤から完全に離れる状態となるので、静圧浮上パッドの電子ビーム通路から大気が真空チャンバーの内部に流入し、電子ビームコラムが大気開放状態に晒される。
【0007】そのため、静圧浮上パッドを待避させる前の高真空を維持しているうちに電子ビームコラムのゲートバルブを閉じて電子銃を保護し、また真空チャンバー内を真空にする排気手段(真空ポンプ)を保護するためにその電源を切らなければならない等、非常に作業性が悪い。
【0008】また、原盤を取り替えた後に再び真空システムを立ち上げる場合、真空チャンバー内の真空度が電子ビームの照射に支障のない程度まで上昇し、それが安定するまでには数時間を費やすことになり、これは電子ビーム照射によって原盤に記録を行なう時間よりも待ち時間の方が長いという非常に効率の悪いシステムであった。
【0009】さらには、原盤の取り替えの度に真空チャンバー内を大気開放状態とするために、大気中の塵埃の吸い込みによる真空チャンバー及び電子ビームコラム内の汚染の問題もあった。
【0010】本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、部分真空方式の電子ビーム照射装置において、被照射体(原盤)から静圧浮上パッドを離した状態でも真空チャンバー内を所要の真空度に維持することができるようにし、上記の問題点の解消することを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために本発明は、電子ビームコラムが内蔵される真空チャンバーに静圧浮上パッドが連結され、この静圧浮上パッドが被照射体に非接触で吸着した状態で電子ビームが静圧浮上パッドの電子ビーム通路を通って被照射体に照射される構造の電子ビーム照射装置において、静圧浮上パッドの内部に、電子ビーム通路を開閉する真空シールバルブを備えてなるものである。
【0012】このように構成される本発明の電子ビーム照射装置では、被照射体から静圧浮上パッドを離すときには真空シールバルブを作動させて電子ビーム通路を閉じることにより、電子ビーム通路から大気が真空チャンバー内に流入することはなく、電子ビームコラム内を電子ビームの照射に支障のない真空度に維持できる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態例について詳述する。ここでは、光ディスクの原盤記録に用いる電子ビーム照射装置を例示してあり、はじめに図1及び図2を参照してこの電子ビーム照射装置の基本構成を説明する。
【0014】この装置は図1に示す如く、電子銃16から出射される電子ビームbを被照射体であるディスク原盤1に照射して信号の記録(信号パターンの記録ピットの形成)を行なうものである。ここで電子ビームの照射には真空環境が必要であるが、特にこの装置では電子ビームを照射する部分のみを真空状態とし、それ以外の部分は大気中に置く部分真空方式が採用されている。
【0015】先ず、この装置において原盤1を支持する支持機構部2について説明する。装置の基台3上にはガイドレール4が水平に配置されてその左右両端部が固定部5a,5bで固定されており、このガイドレール4にスライドテーブル6が左右の脚部7a,7bに設けられた軸受8によって移動可能に支持されている。ここで軸受8としては、静圧空気式軸受を用いることにより、スライドテーブル6の移動時の摩擦抵抗が極端に少ない高精度な移動機構を実現することができる。
【0016】そしてこのスライドテーブル6には原盤1の回転手段であるモーター9が固定されており、このモーター9の回転軸に取り付けられた回転テーブル10に原盤1が水平に載置支持されるようになっている。
【0017】原盤回転用のモーター9は電磁駆動型のスピンドルモーターが用いられており、制御回路からの制御信号に基いてこのモーター9が駆動されることによって回転テーブル10と一体に原盤1が回転されるものである。ここでこのモーター9は、回転軸の軸受に静圧空気式軸受を用いることにより、回転時の摩擦抵抗による負荷が少なくなって応答性のよい高精度な回転機構を実現することができる。
【0018】またこの装置において原盤1を回転テーブル10に固定保持するチャッキング方式としては、真空吸着方式が採用されている。
【0019】さらにスライドテーブル6と基台3との間には、スライドテーブル6の移動手段であるモーター11が配置されている。このスライドテーブル移動用のモーター11には電磁駆動型のリニアモーターが用いられており、即ちこれは基台3側の固定子11aとスライドテーブル6側の移動子11bとの間に例えばボイスコイル型の磁気回路が構成されてなるもので、制御回路からの制御信号に基いてこのモーター11が駆動されることによってスライドテーブル6がガイドレール4に沿って水平に移動し、これと一体に原盤1がその径方向に移動される構造となっている。
【0020】このように構成される原盤の支持機構部2に対しその上方には、原盤1上を部分的に真空状態にして電子ビームを照射する電子ビーム照射手段13が固定配置されている。14は原盤1の上方で懸架支持されている真空チャンバーで、この真空チャンバー14の内部に電子ビームコラム15が配置され、この電子ビームコラム15の上流の電子ビーム励起源である電子銃16から電子ビームbが出射される。
【0021】電子ビームコラム15が内蔵される真空チャンバー14には真空ポンプによりなる排気手段が連結されており、この排気手段によって真空チャンバー14の内部を吸引することで電子ビームコラム15内が電子ビームの照射に支障のない程度の真空度(1×10-4〔Pa〕程度)に保たれるようになっている。
【0022】この真空チャンバー14の下端部の電子ビーム出口には伸縮連結機構17を介して静圧浮上パッド18が取り付けられており、この静圧浮上パッド18が原盤1に対し5μm程度の僅かな隙間をもって非接触で吸着し、その状態で電子銃16から出射された電子ビームbが静圧浮上パッド18の中心部の電子ビーム通路を通って原盤1に照射される。
【0023】図2に静圧浮上パッド18の詳細な構造を示す。この静電浮上パッド18は、その中心部に電子ビームbが通る電子ビーム通路19を有する例えば金属製のブロック20により構成される。このブロック20はベローズ状の伸縮連結機構17によって真空チャンバー14の下端の固定部14aに気密的に連結されており、この伸縮連結機構17の伸縮によりブロック20は原盤1に厚さムラや回転ぶれ等があってもそれに追従して確実に吸着できるようになっている。
【0024】そしてこのブロック20を原盤1に吸着する手段としてブロック20には、原盤1との対向面に開口する第1の吸引溝21及び第2の吸引溝22が電子ビーム通路19を中心とする同心円状に形成されている。
【0025】この第1の吸引溝21と第2の吸引溝22には夫々排気管23と24を介して排気手段が連結されており、この排気手段によって第1の吸引溝21と第2の吸引溝22から排気即ち気体の吸引が行なわれる如くなされている。
【0026】この排気手段としては真空ポンプが用いられ、この場合、電子ビーム通路19に近い吸引溝ほど高い真空度に排気できる真空ポンプを連結する。即ち、電子ビーム通路19に近い第1の吸引溝21には例えば1×10-1〔Pa〕程度の真空度が得られる真空ポンプを連結し、これより外側の第2の吸引溝22には5×103 〔Pa〕程度の真空度が得られる真空ポンプを連結する。
【0027】さらにブロック20には、第2の吸引溝22の外側において原盤1との対向面に露出する通気体25が埋め込まれている。この通気体25は通気性を有する多孔質の金属またはカーボン等のセラミックスを材料として電子ビーム通路19を中心とするリング状に形成されており、この通気体25の裏側においてブロック20の内部には気体の流路26が形成されている。
【0028】この流路26には給気管27を介して給気手段が連結されており、この給気手段から流路26に例えば5×105 〔Pa〕程度の圧縮気体(正圧)が供給され、これが通気体25から噴出されるようになっている。
【0029】このように構成される静圧浮上パッド18を原盤1の上に載せた状態で各排気手段及び給気手段を作動させると、通気体25から噴出される気体によって静圧浮上パッド18が原盤1から僅かに浮き上がり、同時に第1及び第2の吸引溝21及び22から気体が吸引されて溝内が負圧となることによって静圧浮上パッド18が原盤1に吸い付くように作用し、このため静圧浮上パッド18は原盤1に対し5μm程度の隙間dを保ちながら非接触で吸着される状態となるので、原盤1の回転には支障がない。
【0030】このとき通気体25から噴出される気体は、その周囲に形成されている第1及び第2の吸引溝21及び22で吸引されることにより電子ビーム通路19に至ることが回避され、この場合、通気体25からの気体は先ず第2の吸引溝22で吸引され、さらに第1の吸引溝21で吸引されることになり、ここで第1の吸引溝21での吸引力は第2の吸引溝22より強くなっているため、静圧浮上パッド18の中心部にいくほど真空度を高くでき、これによって真空チャンバー14の内部即ち電子ビームコラム15内を電子ビームの照射に支障のない程度の真空度(1×10-4〔Pa〕程度)に保つことができるものである。
【0031】そしてこの静圧浮上パッド18によって原盤1上の一部分を真空にした状態で原盤1に電子ビームbが照射され、同時に支持機構部2のモーター9の駆動により原盤1が回転されると共にモーター11の駆動によって原盤1が径方向に移動されることで所定のトラックに記録が行なわれる。
【0032】上記の如く構成される電子ビーム照射装置では、電子ビームを照射する部分のみを真空とする部分真空方式を採用したことにより、大きな空間の真空保持を必要とせず、このため大型の排気手段(真空ポンプ)の使用を回避でき、小型で廉価に装置を構成することができる。
【0033】ところで、この部分真空方式の電子ビーム照射装置においては、原盤1の取り替え作業を行なう場合、静圧浮上パッド18の第1及び第2の吸引溝21及び22からの排気(吸引)を停止し、静圧浮上パッド18を原盤1上から半径方向もしくは上方向へ待避させる。
【0034】このとき、静圧浮上パッド18が原盤1から離れることによって静圧浮上パッド18の電子ビーム通路19から真空チャンバー14の内部に大気が流入することを防止するために、特に本発明による電子ビーム照射装置においては、静圧浮上パッド18の内部に真空シールバルブ機構を構築してある。
【0035】この真空シールバルブ機構の詳細を図3に示す。本例においては、静圧浮上パッド18を構成するブロック20の内部に、電子ビーム通路19と直交して直線棒状の真空シールバルブ30が左右に移動可能に配置されている。この真空シールバルブ30には電子ビーム通路19の孔径と同等もしくは若干大きい径の孔30aが形成されており、真空シールバルブ30の移動によってこの孔30aの位置が移動されることでバルブの切り換え動作即ち電子ビーム通路19の開閉動作が行なわれる構造となっている。
【0036】この真空シールバルブ30の作動手段としてその左右両側にはエアーシリンダー部31,32が設けられ、このエアーシリンダー部31,32内に配されるピストン31a,32aが真空シールバルブ30の左右両端部に連結されている。左右のエアーシリンダー部31,32には夫々給気管33,34を介してエアーポンプによりなる給気手段が連結されており、この給気手段から左右のエアーシリンダー部31,32に選択的に圧縮気体が供給されることによってバルブの切り換え動作が行なわれる。
【0037】即ち、図において左側のエアーシリンダー部31に給気手段から圧縮気体が供給されると、その圧力によってピストン31aが押し込まれて真空シールバルブ30は右方向に移動し、その状態では図示の如く真空シールバルブ30の孔30aが電子ビーム通路19と対応して電子ビーム通路19が開いた状態となり、この状態で電子ビームbの照射が行なわれる。これに対し右側のエアーシリンダー部32に給気手段から圧縮気体が供給されると、その圧力によってピストン32aが押し込まれて真空シールバルブ30は左方向へ移動し、その状態では真空シールバルブ30の孔30aが電子ビーム通路19からずれて電子ビーム通路19が閉じた状態となる。
【0038】このバルブの切り換え動作においてピストン31a,32aの押し込み力はピストンの断面積×圧縮気体の圧力の積となり、この値が大きいほど押し込み力も大きくなり、バルブ切り換え動作時の安定性が増すことになる。また、ピストン31a,32aに摺動時の摩擦抵抗を減らすために例えばテフロン(登録商標)コーティング等の表面処理を施すことでも同等の効果を得ることができる。
【0039】ここで、真空シールバルブ30と静圧浮上パッド18の関係を見てみると、真空シールバルブ30の上側は真空チャンバー14に連結されている排気手段で排気され、また下側は第1及び第2の吸引溝21及び22に連結されている排気手段で排気されており、力のバランス的に上下で互いに負圧で平衡している。そのためバルブの切り換え動作において、支障となり得る上下方向の力のアンバランスは殆ど生じることがなく、スムーズな切り換え動作が行なわれる。尚、上記のバルブ切り換え動作が完了した後は、何れもエアーシリンダー部31,32への圧縮気体の供給を停止するものである。
【0040】このように構成される真空シールバルブ機構を備えた静圧浮上パッド18では、原盤1の切り取り替え時には先ず右側のエアーシリンダー部32に給気手段から圧縮気体を供給して真空シールバルブ30を左側に移動させて電子ビーム通路19を閉じ、その後に第1及び第2の吸引溝21及び22からの排気を停止して静圧浮上パッド18を原盤1から待避させるようにする。
【0041】このとき、静止浮上パッド18が原盤1から完全に離れても、真空シールバルブ30によって電子ビーム通路19が閉じられていることにより、電子ビーム通路19から大気が真空チャンバー14内に流入することはなく確実な真空シール状態が得られ、電子ビームコラム15内を電子ビームの照射に支障のない程度の真空度(1×10-4〔Pa〕程度)に維持することができるものである。
【0042】さらにこの真空シールバルブ機構では、バルブの切り換え動作の安定性を得るために、図4に示す如く真空シールバルブ30が静圧浮上パッド18の内部で僅かな隙間をもった状態で移動される構造とすると効果的である。即ちこの場合、静圧浮上パッド18のブロック20内において、真空シールバルブ30とこの真空シールバルブ30が通るバルブ通路35との間には50μm程度の隙間cが設けられており、これによって真空シールバルブ30は切り換え動作時に少ない摺動抵抗でスムーズに移動することが可能となって安定した切り換え動作が行なわれる。
【0043】図4(A)は真空シールバルブ30の孔30aが電子ビーム通路19と対応して電子ビーム通路19が開いた状態、(B)は真空シールバルブ30によって電子ビーム通路19が閉じて真空チャンバー内が真空シールされた状態であり、この真空シール状態では静圧浮上パッドが原盤から離れることにより前述した真空シールバルブ30の上下の力のバランスが崩れ、即ち真空シールバルブ30の上側は真空(負圧)で下側は大気圧となるので、真空シールバルブ30はブロック20に吸い付くように押し上げられて電子ビーム通路19を塞ぎ、これによって確実に真空シール状態が維持される。
【0044】さらにこの構成では、より確実な真空シール状態が得られるように、図5に示す如く静圧浮上パッド18のブロック20の内部において電子ビーム通路19の周囲にゴム製のOリング36を設けてもよい。この場合、Oリング36はバルブ通路35に臨んで適当な潰し代をもって固定され、真空シールバルブ30によって電子ビーム通路19が閉じられた状態ではこのOリング36を潰すようにこのOリング36に真空シールバルブ30が圧着し、これによって電子ビーム通路19が密封されて真空チャンバー14内の真空度をより確実に維持できる構造となっている。
【0045】尚、この真空シール状態においても電子ビームが照射されることがあり、この場合真空シールバルブ30に電子ビームが当たっても支障のないように、真空シールバルブ30の材料としては耐熱性に優れたセラミックスを用いると好適である。
【0046】そしてこの真空シール状態において原盤の取り替え作業を行なった後は、再び静圧浮上パッド18を原盤1上に戻すようにする。このとき、静圧浮上パッド18の通気体25に浮上用の圧縮気体を常に供給したままにしておくと、原盤1との衝突を回避することが可能である。
【0047】この静圧浮上パッド18が原盤1上に戻された状態で、第1及び第2の吸引溝21及び22からの排気を再開すると、これによって真空シールバルブ30の下側にも負圧が生じて真空シールバルブ30の上下の力のバランスが平衡し、この状態で左側のエアーシリンダー部31に給気手段から圧縮気体を供給することにより真空シールバルブ30はスムーズに右側に移動して電子ビーム通路19を開くように切り替わり、原盤1への電子ビームの照射が可能となる。
【0048】以上、本発明の実施の形態の一例について説明したが、本発明はこの例に限ることなく他にも種々の実施形態を採り得るものであることは言うまでもない。
【0049】
【発明の効果】以上の説明で明らかな如く本発明は、静圧浮上パッドを用いた部分真空方式の電子ビーム照射装置において、静圧浮上パッドに電子ビーム通路を開閉する真空シールバルブを備えてなるものである。そしてこの電子ビーム照射装置では、被照射体から静圧浮上パッドを離すときには真空シールバルブを作動させて電子ビーム通路を閉じることにより、電子ビーム通路から大気が真空チャンバー内に流入することはなく、電子ビームコラム内を電子ビームの照射に支障のない真空度に維持することができる。
【0050】従って本発明によれば、従来のように静圧浮上パッドを被照射体から離す度に電子ビームコラムのゲートバルブを閉じて電子銃を保護したり真空チャンバーの排気手段の電源を切ったりする必要がなくなるので、作業が簡略化、短時間化して作業性が向上し、また真空チャンバー内を常に真空状態に維持できるので、真空チャンバー及び電子ビームコラム内の汚染が防止される等の効果を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
【出願日】 平成13年2月28日(2001.2.28)
【代理人】 【識別番号】100080883
【弁理士】
【氏名又は名称】松隈 秀盛
【公開番号】 特開2002−257998(P2002−257998A)
【公開日】 平成14年9月11日(2002.9.11)
【出願番号】 特願2001−54739(P2001−54739)