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【発明の名称】 放射線像変換パネル
【発明者】 【氏名】細井 雄一

【要約】 【課題】優れた感度および鮮鋭度を有する医療診断に適した放射線像変換パネルを提供する。

【解決手段】気相堆積法により形成された蛍光体層を有する放射線像変換パネルにおいて、該蛍光体層の層厚が300乃至700μmの範囲にあり、かつ相対密度が85乃至97%の範囲にあることを特徴とする放射線像変換パネル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 気相堆積法により形成された蛍光体層を有する放射線像変換パネルにおいて、該蛍光体層の層厚が300乃至700μmの範囲にあり、かつ相対密度が85乃至97%の範囲にあることを特徴とする放射線像変換パネル。
【請求項2】 蛍光体層の層厚が400乃至600μmの範囲にあり、かつ相対密度が85乃至95%の範囲にある請求項1に記載の放射線像変換パネル。
【請求項3】 蛍光体層がアルカリ金属ハロゲン化物系輝尽性蛍光体からなる請求項1または2に記載の放射線像変換パネル。
【請求項4】 アルカリ金属ハロゲン化物系輝尽性蛍光体がセシウムハライド系蛍光体である請求項3に記載の放射線像変換パネル。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、輝尽性蛍光体の輝尽発光を利用する放射線画像記録再生方法に用いられる放射線像変換パネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】X線などの放射線が照射されると、その放射線エネルギーの一部分を吸収蓄積し、そののち可視光線や赤外線などの電磁波(励起光)の照射を受けると、蓄積した放射線エネルギーに応じて輝尽発光を示す性質を有する輝尽性蛍光体(蓄積性蛍光体)を利用して、この輝尽性蛍光体を含有するシート状の放射線像変換パネルに、被写体を透過したあるいは被検体から発せられた放射線を照射して被写体または被検体の放射線画像情報を一旦蓄積記録した後、パネルにレーザ光などの励起光を走査して順次輝尽発光光として放出させ、そしてこの輝尽発光光を光電的に読み取って画像信号を得ることからなる、放射線画像記録再生方法が広く実用に共されている。読み取りを終えたパネルは、残存する放射線エネルギーの消去が行われた後、次の撮影のために備えられて繰り返し使用される。
【0003】放射線画像記録再生方法に用いられる放射線像変換パネル(蓄積性蛍光体シートともいう)は、基本構造として、支持体とその上に設けられた輝尽性蛍光体層とからなるものである。ただし、輝尽性蛍光体層が自己支持性である場合には必ずしも支持体を必要としない。また、輝尽性蛍光体層の上面(支持体に面していない側の面)には通常、保護層が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
【0004】輝尽性蛍光体層は、通常は輝尽性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなる。ただし、蒸着法や焼結法によって形成される結合剤を含まないで輝尽性蛍光体の凝集体のみから構成されるものや、輝尽性蛍光体の凝集体の間隙に高分子物質が含浸されているものも知られている。
【0005】また、上記放射線画像記録再生方法の別法として本出願人による特願平11−372978号明細書には、従来の輝尽性蛍光体における放射線吸収機能とエネルギー蓄積機能とを分離して、少なくとも輝尽性蛍光体(エネルギー蓄積用蛍光体)を含有する放射線像変換パネルと、放射線を吸収して紫外乃至可視領域に発光を示す蛍光体(放射線吸収用蛍光体)を含有する蛍光スクリーンとの組合せを用いる放射線画像形成方法が提案されている。この方法は、被検体を透過などした放射線をまず、該スクリーンまたはパネルの放射線吸収用蛍光体により紫外乃至可視領域の光に変換した後、その光をパネルのエネルギー蓄積用蛍光体にて放射線画像情報として蓄積記録する。次いで、このパネルに励起光を走査して輝尽発光光を放出させ、この輝尽発光光を光電的に読み取って画像信号を得るものである。このような放射線像変換パネルおよび蛍光スクリーンも、本発明に包含される。
【0006】放射線像記録再生方法(および放射線画像形成方法)は上述したように数々の優れた利点を有する方法であるが、この方法に用いられる放射線像変換パネルにあっても、できる限り高感度であってかつ画質(鮮鋭度、粒状性など)の良好な画像を与えるものであることが望まれている。
【0007】感度および画質を高めることを目的として、例えば特開平2−58000号公報に記載されているように、輝尽性蛍光体層を気相堆積法により形成した放射線像変換パネルが提案されている。気相体積法は、輝尽性蛍光体またはその原料を用いて蒸着またはスパッタリングなどにより基板表面に輝尽性蛍光体を堆積させて、輝尽性蛍光体の柱状結晶からなる層を形成するものである。気相堆積法により形成された蛍光体層は、結合剤を含有せず、輝尽性蛍光体のみからなり、輝尽性蛍光体の柱状結晶と柱状結晶の間には空隙(クラック)が形成される。このため、励起光の進入効率や発光光の取出し効率を高めることができ、高感度であって、高鮮鋭度の画像を得ることができる。
【0008】特公平7−18958号公報には、支持体と結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層とを有する放射線像変換パネルであって、該蛍光体層内部に略層厚方向に伸びた多数の微細な空隙を有し、かつ空隙の占める空孔率が3〜30%である放射線像変換パネルが提案されている。しかしながら、具体的には実施例にて、抵抗加熱蒸着により形成された層厚約250μm、空孔率約20%(すなわち、相対密度約80%)のRbBr:Tl輝尽性蛍光体からなる蛍光体層を有するパネルが記載されているだけである。
【0009】また、感度の向上を目的として、特公平7−18957号公報には、支持体と輝尽性蛍光体からなる蛍光体層とを有する放射線像変換パネルであって、該蛍光体層が焼結により形成され、相対密度が70%以上である放射線像変換パネルが提案されている。実施例には、焼結により形成された層厚250μm、相対密度約75〜93%のBaFBr:Eu輝尽性蛍光体からなる蛍光体層が記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】放射線像変換パネルは、上述したように蛍光体層が放射線を吸収してそのエネルギーを蓄積するものであるので、蛍光体層の層厚が厚いほど感度は高くなり、そして読み取り時に励起光が蛍光体層内に進入して蓄積されたエネルギーを放出させることができる限度の層厚で感度は飽和する。
【0011】一方、本発明者は、蛍光体層を気相体積法により形成してその相対密度を高くする(蛍光体の充填率を高くする)と、感度が向上し、同時に画像鮮鋭度の低下も少ないものの、相対密度を100%近くまで上げると、空隙の極端な減少と柱状結晶の過度の成長によって励起光および輝尽発光光の柱状結晶内部での反射、散乱が減少して、急激に鮮鋭度が低下することを見い出した(添付の図1および図2参照)。特に、画像情報の読み取りをラインセンサを用いて行う場合に輝尽発光光の広がりも画像の鮮鋭度に影響してくるので、鮮鋭度が著しく低下することになる。
【0012】従って、気相体積法によって形成された蛍光体層であっても、医療診断に使用するのに適した、優れた感度と鮮鋭度(MTFが1c/mmで約60%以上、2c/mmで約30%以上)を有する放射線像変換パネルを得るためには、蛍光体層の層厚および相対密度には適正な範囲がある。
【0013】本発明は、優れた感度および鮮鋭度を有する医療診断に適した放射線像変換パネルを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、気相堆積法により形成された蛍光体層を有する放射線像変換パネルにおいて、該蛍光体層の層厚が300乃至700μmの範囲にあり、かつ相対密度が85乃至97%の範囲にあることを特徴とする放射線像変換パネルにある。なお、本発明において蛍光体層の相対密度とは、蛍光体層の全体積に対して蛍光体が占める体積の比率を意味する。
【0015】本発明の放射線像変換パネルの好ましい態様は、以下の通りである。
(1)蛍光体層の層厚が400乃至600μmの範囲にあり、かつ相対密度が85乃至95%の範囲にある放射線像変換パネル。
(2)蛍光体層がアルカリ金属ハロゲン化物系輝尽性蛍光体、特にセシウムハライド系輝尽性蛍光体からなる放射線像変換パネル。
【0016】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の放射線像変換パネルを製造する方法について、蛍光体が輝尽性蛍光体である場合を例にとって詳細に述べる。支持体は、従来の放射線像変換パネルの支持体として公知の材料から任意に選ぶことができるが、気相堆積法により蛍光体層を形成する際の基板となる場合には、石英ガラスシート、アルミニウム、鉄、スズ、クロムなどからなる金属シート、およびアラミドなどからなる樹脂シートであることが好ましい。公知の放射線像変換パネルにおいて、パネルとしての感度もしくは画質(鮮鋭度、粒状性)を向上させるために、二酸化チタンなどの光反射性物質からなる光反射層、もしくはカーボンブラックなどの光吸収性物質からなる光吸収層などを設けることが知られている。本発明で用いられる支持体についても、これらの各種の層を設けることができ、それらの構成は所望の放射線像変換パネルの目的、用途などに応じて任意に選択することができる。さらに特開昭58−200200号公報に記載されているように、得られる画像の鮮鋭度を向上させる目的で、支持体の蛍光体層側の表面(支持体の蛍光体層側の表面に下塗層(接着性付与層)、光反射層あるいは光吸収層などの補助層が設けられている場合には、それらの補助層の表面であってもよい)には微小な凹凸が形成されていてもよい。蛍光体層が自己支持性である場合には必ずしも支持体を用いる必要はない。
【0017】この支持体上には気相堆積法により蛍光体層が設けられる。輝尽性蛍光体としては、波長が400〜900nmの範囲の励起光の照射により、300〜500nmの波長範囲に輝尽発光を示す輝尽性蛍光体が好ましい。そのような輝尽性蛍光体の例は、特公平7−84588号、特開平2−193100号および特開平4−310900号の各公報に詳しく記載されている。
【0018】これらのうちでも、基本組成式(I):IX・aMIIX’2・bMIIIX”3:zA ‥‥(I)
で代表されるアルカリ金属ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は特に好ましい。但し、MIはLi、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属を表し、MIIはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Cu、Zn及びCdからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属又は二価金属を表し、MIIIはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素又は三価金属を表わし、そしてAはY、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Na、Mg、Cu、Ag、Tl及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素又は金属を表す。X、X’およびX”はそれぞれ、F、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表わす。a、bおよびzはそれぞれ、0≦a<0.5、0≦b<0.5、0≦z<0.2の範囲内の数値を表す。
【0019】上記基本組成式(I)中のMIとしては少なくともCsを含んでいることが好ましい。Xとしては少なくともBrを含んでいることが好ましい。Aとしては特にEu又はBiであることが好ましい。また、基本組成式(I)には、必要に応じて、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物を添加物として、MI1モルに対して、0.5モル以下の量で加えてもよい。
【0020】ただし、本発明において蛍光体は輝尽性蛍光体に限定されるものではなく、X線などの放射線を吸収して紫外乃至可視領域に(瞬時)発光を示す蛍光体であってもよい。そのような蛍光体の例としては、LnTaO4:(Nb,Gd)系、Ln2SiO5:Ce系、LnOX:Tm系(Lnは希土類元素である)、CsX系(Xはハロゲンである)、Gd22S:Tb、Gd22S:Pr,Ce、ZnWO4、LuAlO3:Ce、Gd3Ga512:Cr,Ce、HfO2等を挙げることができる。
【0021】本発明において蛍光体層は、例えば気相堆積法の一種である電子線蒸着法により、以下のようにして基板上に形成することができる。電子線蒸着法では、形状が良好で配列の整った柱状結晶が得られると同時に、蒸着源を局所的に加熱して瞬時に蒸発させるので、蒸着源のうち蒸気圧の高い物質が優先的に蒸発して(例えば、付活剤が蛍光体母体よりも先行して蒸発する)、蒸発源として仕込んだ蛍光体の組成と形成された蛍光体層中の蛍光体の組成とが不一致となるようなことが殆どない。
【0022】まず、蒸発源である輝尽性蛍光体、および被蒸着物である基板を蒸着装置内に設置し、装置内を排気して3×10-10〜3×10-12kg/cm2程度の真空度とする。このとき、真空度をこの程度に保持しながら、Arガス、Neガスなどの不活性ガスを導入してもよい。
【0023】輝尽性蛍光体は、加圧圧縮により錠剤(ペレット)の形状に加工しておくことが好ましい。加圧圧縮は、一般に800〜1000kg/cm2の範囲の圧力を掛けて行う。圧縮の際に、50〜200℃の範囲の温度に加温してもよく、また圧縮後、得られた錠剤に脱ガス処理を施してもよい。これにより、蒸発源の相対密度を高めることができる。蒸発源の相対密度が低いと、蛍光体が均一に蒸発しないで蒸着膜の膜厚が不均一となったり、突沸物が基板に付着したり、更には蛍光体自体が不均一に蒸発して蒸着膜中に蛍光体の付活剤や添加物が偏析したりする。さらに、輝尽性蛍光体の代わりにその原料もしくは原料混合物を用いることも可能である。
【0024】次に、電子銃から電子線を発生させて、蒸発源に照射する。このとき、電子線の加速電圧を1.5kV以上で、5.0kV以下に設定することが望ましい。加速電圧が1.5kVより低いと、電圧が不安定になって、電子線のビームポジションが変動してしまったり、蒸発源の電子線による走査面の形状が変化して蒸発面を平坦に保つことが困難となる。反対に、加速電圧が5.0kVより高い場合には、蒸発により気相成長する蛍光体の柱状結晶が不揃いとなる。
【0025】電子線の照射により、蒸発源である輝尽性蛍光体は加熱されて蒸発、飛散し、基板表面に堆積する。蛍光体の堆積する速度、すなわち蒸着速度は一般には0.1〜1000μm/分の範囲にあり、好ましくは1〜100μm/分の範囲にある。なお、電子線の照射を複数回に分けて行って二層以上の蛍光体層を形成してもよいし、あるいは複数の電子銃を用いて異なる蛍光体を共蒸着させてもよい。また、蛍光体の原料を用いて基板上で蛍光体を合成すると同時に蛍光体層を形成することも可能である。さらに、蒸着の際に必要に応じて被蒸着物(基板)を冷却または加熱してもよいし、あるいは蒸着終了後に蛍光体層を加熱処理(アニール処理)してもよい。
【0026】さらに、本発明に用いられる気相堆積法は上記の電子腺蒸着法に限定されるものではなく、抵抗加熱法等の他の蒸着法あるいはスパッタ法など公知の各種の方法を利用することができる。
【0027】このようにして、輝尽性蛍光体の柱状結晶がほぼ厚み方向に成長した蛍光体層が得られる。蛍光体層は、結合剤を含有せず、輝尽性蛍光体のみからなり、輝尽性蛍光体の柱状結晶と柱状結晶の間には空隙(クラック)が存在する。
【0028】本発明においてはパネルを医療診断に適した高感度かつ高鮮鋭度とする目的から、蛍光体層の層厚は、一般には300〜700μmの範囲にあり、好ましくは400〜600μmの範囲にある。また、相対密度は、一般には85〜97%の範囲にあり、好ましくは85〜95%の範囲にある。
【0029】図1および図2はそれぞれ、支持体と気相堆積法により形成されたCsBr:Eu輝尽性蛍光体からなる蛍光体層とから構成された放射線像変換パネルについて、蛍光体層の相対密度と感度との関係、および相対密度と鮮鋭度(MTF、1c/mm)との関係を示すグラフである。図1から、相対密度が高くなるにつれてパネルの感度も高くなることが分る。図2から、相対密度が高くなってもMTFはそれほど変化しないが、相対密度が100%に近づくとMTFが急激に低下することが分る。また、蛍光体層の層厚が500μmと厚い場合には、250μmの場合に比べてMTFはそれほど低下せずに感度が著しく向上することがわかる。
【0030】従って、蛍光体層の層厚および相対密度をそれぞれ上記本発明の範囲とすることにより、高感度であって高鮮鋭度の画像を得ることができ、医療診断に適したパネルとすることができる。
【0031】なお、蛍光体層は、必ずしも上記のように支持体上に直接蛍光体を気相成長させて形成する必要はなく、例えば、別にガラス板、金属板、プラスチックシートなどの基板上に蛍光体を気相成長させて蛍光体層を形成した後、接着剤を用いるなどして支持体上に蛍光体層を接合する方法を利用してもよいし、あるいは保護層上に形成してもよい。
【0032】この蛍光体層の表面には、放射線像変換パネルの搬送および取扱い上の便宜や特性変化の回避のために、保護層を設けることが望ましい。保護層は、励起光の入射や輝尽発光光の出射に殆ど影響を与えないように、透明であることが望ましく、また外部から与えられる物理的衝撃や化学的影響から放射線像変換パネルを充分に保護することができるように、化学的に安定で防湿性が高く、かつ高い物理的強度を持つことが望ましい。
【0033】保護層としては、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート、有機溶媒可溶性フッ素系樹脂などのような透明な有機高分子物質を適当な溶媒に溶解して調製した溶液を蛍光体層の上に塗布することで形成されたもの、あるいはポリエチレンテレフタレートなどの有機高分子フィルムや透明なガラス板などの保護層形成用シートを別に形成して蛍光体層の表面に適当な接着剤を用いて設けたもの、あるいは無機化合物を蒸着などによって蛍光体層上に成膜したものなどが用いられる。また、保護層中には酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、アルミナ等の光散乱性微粒子、パーフルオロオレフィン樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末等の滑り剤、およびポリイソシアネート等の架橋剤など各種の添加剤が分散含有されていてもよい。保護層の層厚は一般に、高分子物質からなる場合には約0.1〜20μmの範囲にあり、ガラス等の無機化合物からなる場合には100〜1000μmの範囲にある。
【0034】保護層の表面にはさらに、保護層の耐汚染性を高めるためにフッ素樹脂塗布層を設けてもよい。フッ素樹脂塗布層は、フッ素樹脂を有機溶媒に溶解(または分散)させて調製したフッ素樹脂溶液を保護層の表面に塗布し、乾燥することにより形成することができる。フッ素樹脂は単独で使用してもよいが、通常はフッ素樹脂と膜形成性の高い樹脂との混合物として使用する。また、ポリシロキサン骨格を持つオリゴマーあるいはパーフルオロアルキル基を持つオリゴマーを併用することもできる。フッ素樹脂塗布層には、干渉むらを低減させて更に放射線画像の画質を向上させるために、微粒子フィラーを充填することもできる。フッ素樹脂塗布層の層厚は通常は0.5μm乃至20μmの範囲にある。フッ素樹脂塗布層の形成に際しては、架橋剤、硬膜剤、黄変防止剤などのような添加成分を用いることができる。特に架橋剤の添加は、フッ素樹脂塗布層の耐久性の向上に有利である。
【0035】上述のようにして本発明の放射線像変換パネルが得られるが、本発明のパネルの構成は、公知の各種のバリエーションを含むものであってもよい。たとえば、得られる画像の鮮鋭度を向上させることを目的として、上記の少なくともいずれかの層を、励起光を吸収し輝尽発光光は吸収しないような着色剤によって着色してもよい(特公昭59−23400号公報参照)。
【0036】
【実施例】[実施例1]
(1)蒸着源の作製臭化セシウム100g(CsBr、0.47モル)と臭化ユーロピウム1.8404g(EuBr3、4.7×10-3モル)とを乳鉢で粉砕混合した後、更に撹拌振動器で15分間撹拌混合した。得られた混合物を炉内に置いて、3分間排気した後、窒素雰囲気下、温度525℃にて2時間焼成した。焼成後、炉内を15分間排気して焼成物を冷却した。次いで、得られたユーロピウム付活臭化セシウム(CsBr:0.01Eu)輝尽性蛍光体を乳鉢で粉砕した後、圧力800kg/cm2にて加圧圧縮して、蒸着用の錠剤を作製した。錠剤に、更に温度150℃で2時間排気して脱ガス処理を施した。
【0037】(2)蛍光体層の形成上記の蒸発源を蒸着装置内の所定位置に置き、透明石英基板(支持体、厚さ1mm)を装置内の所定位置に配置した後、装置内を排気して5.0×10-5kg/cm2の真空度とした。次いで、基板を250℃に加熱しながら、蒸着源に電子銃で加速電圧4.0kV、60Wの電子線を照射して、基板上に輝尽性蛍光体を蒸着距離14cm、速度25μm/分で堆積させた。装置内を大気圧に戻し、装置から支持体を取り出した。支持体上には、幅が約10μm、長さが約500μmの蛍光体の柱状結晶がほぼ垂直方向に密に林立した構造の蒸着膜(膜厚:500μm)が形成されていた。この蒸着膜の相対密度は95%であった。
【0038】[実施例2、3]実施例1において、基板温度および蒸着速度を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、本発明の放射線像変換パネルを製造した。
【0039】[比較例1〜3]実施例1において、基板温度、蒸着速度および蛍光体層の層厚を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較のための放射線像変換パネルを製造した。
【0040】[放射線像変換パネルの性能評価]得られた各放射線像変換パネルの感度および画像鮮鋭度について評価を行なった。
(1)感度放射線像変換パネルに管電圧80kVpのX線(線量10mR)を照射したのち、He−Neレーザ光で走査して輝尽発光光を検出し、その発光強度により感度を評価した。
【0041】(2)鮮鋭度(MTF)
放射線像変換パネルにCTFチャートを介して上記X線を照射した後、He−Neレーザ光で走査して画像データを得、得られた画像データを画像再生装置により画像フィルムとして出力し、この出力フィルムから空間周波数1c/mmにおける変調伝達関数MTFを測定した。得られた結果をまとめて表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】表1の結果から明らかなように、本発明に従う放射線像変換パネル(実施例1〜3)は、比較のための放射線像変換パネル(比較例1〜3)に比べて、高感度であって、かつ高鮮鋭度の画像を与えた。よって、本発明の放射線像変換パネルは高感度、高画質というバランスのとれた医療診断に適したパネルであると言える。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、気相堆積法により形成される蛍光体層の層厚および相対密度を特定の範囲内とすることにより、高感度であって高鮮鋭度の放射線画像を与える医療診断用の放射線像変換パネルが得られる。
【出願人】 【識別番号】000005201
【氏名又は名称】富士写真フイルム株式会社
【出願日】 平成13年1月24日(2001.1.24)
【代理人】 【識別番号】100074675
【弁理士】
【氏名又は名称】柳川 泰男
【公開番号】 特開2002−214397(P2002−214397A)
【公開日】 平成14年7月31日(2002.7.31)
【出願番号】 特願2001−15618(P2001−15618)