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【発明の名称】 X線光学素子保持機構
【発明者】 【氏名】原田 高宏

【氏名】南雲 雄三

【要約】 【課題】X線光学素子からの光電子の飛散を抑制することができ、分析装置に光電子の飛散を防止するための構成を不要とし、また、分析装置の構成において、X線光学素子から飛散する光電子の考慮を不要とする。

【解決手段】X線光学素子を保持する保持機構に電場あるいは磁場を発生する手段を設け、この電場あるいは磁場によってX線光学素子から発生する光電子が外部に飛散することを防ぐ。この保持機構によって、X線光学素子自体や分析装置に光電子の発生や飛散を防止する構成を施す必要がなくなるため、X線光学素子や分析装置の個々の構成に関わらず高い汎用性で光電子の飛散を防ぐことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 X線光学素子を保持する保持機構であって、前記X線光学素子から放出される光電子に実質的に作用する電場を形成する電場形成手段を備えたことを特徴とするX線光学素子保持機構。
【請求項2】 前記電場形成手段は、前記X線光学素子、又は前記X線光学素子から放出される光電子の放出領域内に設けた導電体に電圧を印加することによって電場を形成することを特徴とする、請求項1記載のX線光学素子保持機構。
【請求項3】 X線光学素子を保持する保持機構であって、前記X線光学素子から放出される光電子に実質的に作用する磁場を形成する磁場形成手段を備えたことを特徴とするX線光学素子保持機構。
【請求項4】 前記磁場形成手段は、光電子の進行方向に光電子を接地する遮蔽部材を備えたことを特徴とする請求項3記載のX線光学素子保持機構。
【請求項5】 前記X線光学素子に対して少なくともX線を入射及び出射する開口部を除いて前記X線光学素子を覆し、電磁波の発散を防止する電磁シールドカバーを備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のX線光学素子保持機構。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、X線光学素子を保持する保持機構に関し、特に、X線光電子分光装置、X線回折装置やEPMA等のX線光学素子を用いる分析装置に好適なX線光学素子保持機構に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、X線光学素子を用いた各種の分析装置が知られている。例えば、X線源から発生したX線をX線光学素子に当て、該X線光学素子からのX線を試料に照射し、試料表面から発生する光電子を測定することによって、試料の化学状態の違いを表す状態分布像や、元素の二次元分布を表す元素分布像、あるいは深さ方向の分析を行う光電子分光装置が知られている。また、電子線照射によって試料から発生する特性X線の波長や強度をX線光学素子で分析して、試料の元素組成等を分析するEPMA(電子線マイクロアナライザー)が知られている。
【0003】図7は、光電子分光装置の一構成例として飛行時間型光電子分光装置を示している。光電子分光装置(飛行時間型光電子分光装置)101は、真空チャンバ105内にX線源102とX線反射素子111と光電子エネルギー分析器104を備え、X線源102で発生したX線106をX線反射素子111によって集光あるいは単色化して試料Sに照射し、試料Sの表面から発生した光電子107を測定する。これによって、試料の状態分析、元素分析、あるいは深さ分析を行う。図8は光電子分光装置が備えるX線反射素子の一構成例である。X線反射素子111は反射面112を備え、この反射面112にX線106aを当て、反射面112で反射したX線106bを試料S(図8では示していない)に照射する。
【0004】一般に、X線を物質に照射すると、ある確率でX線のエネルギーによって物質内の電子が励起され、光電子として物質外に放出される。X線光学素子においても、X線が入射すると、入射したX線を反射あるいは透過すると同時に、光電子を放出する。光電子分光装置やEPMA等の分析装置に使用するX線光学素子においても、入射X線によって光電子を放出する。
【0005】光電子分光装置は、試料Sの表面から発生した光電子107を測定することによって試料分析を行うものであるが、この分析に用いる光電子107の他に、X線反射素子111等のX線光学素子からも光電子107’が発生する。また、光電子107’が分光装置内の壁面等を励起すると、二次的な電子を発生することもある。このような、この光電子107’、あるいは光電子107’で励起された二次的な電子は、光電子エネルギー分析器104等の検出器に入射すると、本来測定すべき光電子107に対してノイズ分となり、検出精度に影響を及ぼすことになる。また、EPMAにおいても、X線光学素子で発生した光電子は、本来測定すべき特性X線以外のノイズ分となって、測定に影響が及ぼすおそれがある。
【0006】そこで、従来、X線光学素子を用いた分析装置では、このようなX線光学素子で発生する光電子の影響を防ぐために、検出器の配置を工夫したり、光電子遮蔽部材(例えば、図7に示すような光電子遮蔽部材108)を設けている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来のX線光学素子を用いた分析装置では、光電子遮蔽部材を設けたり検出器の配置を工夫するといった対策によって、X線光学素子で発生する光電子の影響を防いでいる。そのため、分析装置の種類やタイプが異なる場合には、各分析装置の構成毎に光電子遮蔽部材や検出器の配置を設計する必要があり、光電子対策としては汎用性に欠けるという問題がある。
【0008】また、図7に示すような光電子遮蔽部材108によって光電子を遮蔽する場合には、X線を通すための窓を開ける必要がある。通常、X線光学素子及び光電子遮蔽部材108は光電子をアースするために接地電位としているが、窓部分についてはアースすることができないため、光電子はこの窓部分を通過する。そのため、窓部分を通過した光電子自身、あるいはこの光電子が真空チャンバの内壁で発生させた二次電子が光電子エネルギー分析器104等の検出器に入射すると、検出精度を低下させる一要因となるというおそれがある。
【0009】そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、X線光学素子を用いた分析装置において、X線光学素子で発生する光電子の飛散を防止し、光電子自体あるいは該光電子によって発生する二次電子による影響を防止することを目的とし、特に、X線光学素子や分析装置の個々の構成に関わらず、X線光学素子や分析装置に対して高い汎用性で、光電子の飛散を防止することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、X線光学素子を保持する保持機構に電場あるいは磁場を発生する手段を設け、この電場あるいは磁場によってX線光学素子から発生する光電子が外部に飛散することを防ぐものである。この保持機構によって、X線光学素子自体や分析装置に光電子の発生や飛散を防止する構成を施す必要がなくなるため、X線光学素子や分析装置の個々の構成に関わらず高い汎用性で光電子の飛散を防ぐことができる。本発明のX線光学素子保持機構は、電場を用いた第1の態様、及び磁場を用いた第2の態様によって、X線光学素子で発生する光電子の外部への飛散を防止することができる。
【0011】本発明のX線光学素子保持機構の電場を用いた第1の態様は、X線光学素子を保持する保持機構であって、X線光学素子から放出される光電子に実質的に作用する電場を形成する電場形成手段を備えた構成とする。電場形成手段で形成された電場は、X線光学素子から放出される光電子に作用して、光電子を高電位側に引き付けて外部への飛散を抑制する。この電場形成手段は、X線光学素子に電圧を印加する構成、あるいは、X線光学素子から放出される光電子の放出領域内に導電体を設け、この導電体に電圧を印加する構成とすることができる。X線光学素子で発生した光電子は、負の電位を有しているため、電場によって高電位側の光電子分光装置あるいは導電体に引き寄せられる。なお、印加する電圧は、発生する光電子のエネルギーに応じて、該光電子を引き付けるに十分な電場が発生するよう定める。
【0012】本発明のX線光学素子保持機構の磁場を用いた第2の態様は、X線光学素子を保持する保持機構であって、X線光学素子から放出される光電子に実質的に作用する磁場を形成する磁場形成手段を備えた構成とする。磁場形成手段で形成された磁場は、X線光学素子から放出される光電子に作用して、光電子の進行方向を変化させて外部への飛散を抑制する。この磁場形成手段は、光電子を接地する遮蔽部材を光電子の進行方向の位置に備えた構成とすることができる。遮蔽部材は、光電子をアースすることによって光電子がX線光学素子から外部に飛散することを抑制する。
【0013】また、第1及び第2の態様において、X線光学素子に対して少なくともX線を入射及び出射する開口部を除いてX線光学素子を覆し、電磁波の発散を防止する電磁シールドカバーを備えた構成とする。この電磁シールドカバーによって、電場あるいは磁場の外部に発散することによる影響を抑制する。X線は開口部を通してX線光学素子に対して入射及び出射される。一方、この開口部を通過しようとする光電子は、電場あるいは磁場によって引き戻されたり、その進行方向が変化するため、開口部の大きさ、位置、形状を調整することによって開口部の通過を抑制することができる。また、本発明のX線光学素子保持機構は、任意のX線光学素子に適用することができる。
【0014】本発明のX線光学素子保持機構によれば、X線光学素子からの光電子の飛散を抑制することができるため、分析装置に光電子の発生や飛散を防ぐための構成が不要となる。したがって、X線光学素子から飛散する光電子を考慮することなく、分析装置を構成することができる。また、本発明のX線光学素子保持機構を適用するX線光学素子は、X線反射素子の他、ソーンプレート等の回折型集光素子とすることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、本発明のX線光学素子保持機構を光電子分光装置に適用する場合について説明する。図1は本発明のX線光学素子保持機構を備える分析装置の概要を説明するための概略図である。
【0016】図1に示す分析装置は、飛行時間型光電子分光装置例を示している。以下、分析装置として光電子分光装置1を用いて説明する。光電子分光装置1は、図7に示した構成とほぼ同様に、真空チャンバ5内にX線源2と、X線光学素子保持機構3で保持されたX線光学素子11と、光電子エネルギー分析器4を備え、X線源2で発生したX線6をX線光学素子11によって集光あるいは単色化して試料Sに照射し、試料Sの表面から発生した光電子7を測定することによって、試料の状態分析、元素分析、あるいは深さ分析を行う。
【0017】図1に示す光電子分光装置1では、X線光学素子保持機構3によってX線光学素子11からの光電子の飛散が防止されるため、図7で示した光電子分光装置101が備える光電子遮蔽部材108を不要とすることができる。したがって、X線源2、X線光学素子11、光電子エネルギー分析器4等の各構成要素の配置を、光電子遮蔽部材108を考慮することなく行うことができ、設計の自由度を高めることができる。以下、図2〜図6を用いて、本発明のX線光学素子保持機構の構成例について説明する。なお、図2,3は、電場形成手段による構成例を示し、図4,5,6は、磁場形成手段による構成例を示している。なお、以下ではX線光学素子としてX線反射素子を例として示しているが、ソーンプレート等の回折型集光素子についても同様に適用することができる。
【0018】はじめに、電場形成手段による構成例について説明する。図2はX線光学素子保持機構の第1の構成例であり、電場形成手段を備える例である。X線光学素子保持機構3Aは、X線反射素子11と、X線反射素子11を覆う電磁シールドカバー13とを備え、X線反射素子11には所定の電圧が印加され、電磁シールドカバー13は接地される。電磁シールドカバー13は、開口部14a及び開口部14bを備える。入射X線6aは、開口部14aを通過してX線反射素子11の反射面12に入射し、該反射面12で反射した反射X線6bは、開口部14bを通過して外部に放出される。
【0019】入射X線6aが入射した反射面12からは、X線6bが反射される他に、光電子7’が放出される。この光電子7’が放出される領域には、X線反射素子11に印加された電圧によって電場が発生しており、反射面12から放出された光電子7’は、この電場によって減速され、X線反射素子11に引き戻され、X線光学素子保持機構3Aから外部への飛散が抑制される。なお、電磁シールドカバー13には、X線の入射及び出射のために開口部14a,14bが形成されているが、開口部14a,14bの大きさ、位置、形状を調整することによって、発生する光電子はほぼ完全に電磁シールドカバー13内に遮蔽することができる。
【0020】図3はX線光学素子保持機構の第2の構成例であり、電場形成手段を備える例である。なお、図3では、電磁シールドカバー13は省略して示している。X線光学素子保持機構3Bは、X線反射素子11と電場を形成するための導電体15とを備え、導電体15には所定の電圧が印加される。導電体15は電場を形成して、発生した光電子7’を引き寄せるための構成である。導電体15は所定の電圧が印加され、これによって、反射面12から放出される光電子7’の放出領域に電場が形成される。反射面12から放出された光電子7’は、この電場によって導電体15に引き寄せられ、X線光学素子3Aから外部への飛散が抑制される。導電体15の形状は、光電子7’の発生領域を実質的に電場内とするものであれば任意とすることができる。
【0021】次に、磁場形成手段による構成例について説明する。図4はX線光学素子保持機構の第3の構成例であり、磁場形成手段を備える例である。なお、図4では、電磁シールドカバーは省略して示している。X線光学素子保持機構3Cは、X線反射素子11と磁場を形成するための磁石16a,16bと、光電子7’を遮蔽するための光電子遮蔽部材17とを備える。磁石16a,16bは光電子7’の発生領域に磁場を形成するための構成であり、X線反射素子11の反射面12を上下方向に挟んで対向して配置し、X線光学素子保持機構3Cの反射面12に対して平行な磁場を形成する。図4の構成では、光電子遮蔽部材17はX線反射素子11の反射面12と反対側の背面側に配置する。
【0022】図4中の符号8は、磁石16a,16bによって形成される磁力線を模式的に示している。反射面12で発生した光電子7’は、この磁場によって進行方向が変化し、X線光学素子3c自体あるいは光電子遮蔽部材17に再入射し、接地あるいは光電子分光装置を介して流れる。
【0023】図5はX線光学素子保持機構の第4の構成例であり、磁場形成手段を備える例である。なお、図5では、電磁シールドカバーは省略して示している。X線光学素子保持機構3Dは、X線反射素子11と磁場を形成するための磁石16a,16bと、光電子7’を遮蔽するための光電子遮蔽部材17とを備える。磁石16a,16bは光電子7’の発生領域に磁場を形成するための構成であり、X線反射素子11の反射面12を挟んで対向して配置し、X線光学素子3Cの反射面12に対して垂直な磁場を形成する。図5中の符号8は、磁石16a,16bによって形成される磁力線を模式的に示している。光電子遮蔽部材17は磁石16b側に反射素子11と対向して配置する。反射面12で発生した光電子7’は、この磁場によって磁場に巻き付くように螺旋状に進み、光電子遮蔽部材17に再入射し、接地あるいは光電子分光装置を介して流れる。
【0024】図6はX線光学素子保持機構の第5の構成例であり、磁場形成手段を備える例である。X線光学素子保持機構3Eは、X線反射素子11と磁場を形成するための筒状の磁石16と、光電子7’を遮蔽するための筒状の光電子遮蔽部材17とを備える。円筒状の磁石16は光電子7’の発生領域に磁場を形成するための構成であり、両端部を磁力端(N極及びS極)として、円筒内部に磁場を形成する。X線反射素子11は円筒状の磁石16内に挿入され、その長さ方向が円筒状の磁石16内の軸方向とほぼなるように配置する。この配置によって、磁場はX線反射素子11に対して平行で、X線反射素子11の長さ方向(X線の進行方向)となる。
【0025】光電子遮蔽部材17は円筒状とし、筒状の磁石16の内壁面あるいは外壁面に設ける構成とすることができ、また、円筒の両端部に端部面18を形成することができる。この端部面18には開口部19a,19bを形成し、該開口部19a,19bを通して入射X線あるいは出射X線を通過させることができる。
【0026】図6中の符号8は、磁石16によって形成される磁力線を模式的に示している。反射面12で発生した光電子7’は、この磁場によって磁場に巻き付くように螺旋状に進み、光電子遮蔽部材17に再入射し、接地あるいは光電子分光装置を介して流れる。なお、図3〜図6では、電磁シールドカバーは省略して示している。
【0027】本発明のX線光学素子保持機構によれば、外部に光電子を飛散させないため、光電子や光電子で発生する二次電子を検出器に侵入させないための遮蔽部材等の対策を分析装置自体に設ける必要がない。そのため、分析装置の設計の自由度を高めることができる。また、X線光学素子側で光電子の発生を抑制することができるため、X線光学素子の利便性を高めることができ、X線を利用した種々の分析装置において、光電子を防止する対策を考慮することなく容易に適用することができる。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のX線光学素子保持機構によれば、X線光学素子からの光電子の飛散を抑制することができ、分析装置に光電子の飛散を防止するための構成が不要となる。また、X線光学素子から飛散する光電子を考慮することなく、分析装置を構成することができる。
【出願人】 【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
【出願日】 平成12年12月14日(2000.12.14)
【代理人】 【識別番号】100082304
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 松司 (外1名)
【公開番号】 特開2002−181996(P2002−181996A)
【公開日】 平成14年6月26日(2002.6.26)
【出願番号】 特願2000−379969(P2000−379969)