| 【発明の名称】 |
X線分光素子およびそれを用いたX線分析装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】清水 一明
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| 【要約】 |
【課題】X線分析で試料に照射するためのAu −Lβ線を回折する多層膜分光素子において、約3nmの周期長でも明確な積層構造を形成でき、かつ十分高い反射強度と波長選択性をもつもの等を提供する。
【解決手段】X線分析において試料1 に照射するためのAu −Lβ線5 を回折するX線分光素子4 であって、反射層4aと、この反射層4aを形成する元素よりも原子番号の小さい元素を含むスペーサ層4bとを交互に複数組積層して構成され、前記反射層4aが、Ru 、Mo 、Co およびCr のうちの少なくとも1つからなる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 X線分析において試料に照射するためのAu −Lβ線を回折するX線分光素子であって、反射層と、この反射層を形成する元素よりも原子番号の小さい元素を含むスペーサ層とを交互に複数組積層して構成され、前記反射層が、Ru 、Mo 、Co およびCr のうちの少なくとも1つからなるX線分光素子。 【請求項2】 試料にAu −Lβ線を照射するX線照射装置と、試料から発生するX線の強度を測定する検出手段とを備え、前記X線照射装置が、固有X線としてAu −Lβ線を含むX線を発生するX線源と、そのX線源から発生するX線を分光する請求項1のX線分光素子とを有するX線分析装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、X線分析において試料に照射するためのAu −Lβ線を回折する多層膜分光素子およびそれを用いたX線分析装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】例えば、半導体ウエハ等の試料に微小な入射角で1次X線(励起X線)を照射して全反射蛍光X線分析を行う場合、十分な強度の蛍光X線を発生させかつバックグラウンドを抑制するため、試料に照射する1次X線は、高強度で単色性の強いものが望ましい。そこで、従来より、W(タングステン)をターゲットとするX線管から発生するX線を分光素子で分光し、単色化されたW−Lβ線を1次X線として利用することが多い。ここで、高強度の1次X線を得るため、分光素子としては、Wからなる反射層と例えばCからなるスペーサ層とを交互に複数組積層した多層膜分光素子を用いている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】このような状況において、近年、特にCu の高感度、高精度の分析が要求されるようになり、そのためにはW−Lβ線よりもエネルギーの高いAu −Lβ線が1次X線として適切である。ここで、Au −Lβ線のように非常にエネルギーの高いX線を回折するためには、ブラッグの条件から、多層膜分光素子の周期長(d値)は約3nmの非常に小さい値でなければならない。そこで、従来は、約3nmの周期長でも明確な積層構造を形成できる実績のあるものとして、Wからなる反射層をもつ多層膜分光素子を、Au −Lβ線を回折するためにも用いている。しかし、Au をターゲットとするX線管から発生するX線を、Wからなる反射層をもつ多層膜分光素子で分光しても、得られるAu −Lβ線は、1次X線として強度や単色性が今一つ十分でない。 【0004】本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、X線分析で試料に照射するためのAu −Lβ線を回折する多層膜分光素子において、約3nmの周期長でも明確な積層構造を形成でき、かつ十分高い反射強度と波長選択性をもつもの、およびそれを用いたX線分析装置を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明のX線分光素子は、X線分析において試料に照射するためのAu −Lβ線を回折するものであって、反射層と、この反射層を形成する元素よりも原子番号の小さい元素を含むスペーサ層とを交互に複数組積層して構成され、前記反射層が、Ru 、Mo 、Co およびCr のうちの少なくとも1つからなる。 【0006】本発明のX線分光素子によれば、反射層が、Ru 、Mo 、Co およびCr のうちの少なくとも1つからなるので、約3nmの周期長でも明確な積層構造を形成でき、かつX線分析で試料に照射するためのAu −Lβ線を十分高い反射強度と波長選択性をもって回折できる。 【0007】本発明のX線分析装置は、試料にAu −Lβ線を照射するX線照射装置と、試料から発生するX線の強度を測定する検出手段とを備え、前記X線照射装置が、固有X線としてAu −Lβ線を含むX線を発生するX線源と、そのX線源から発生するX線を分光する前記本発明のX線分光素子とを有する。 【0008】本発明のX線分析装置によれば、X線照射装置に、固有X線としてAu −Lβ線を含むX線を発生するX線源と、そのX線源から発生するX線を分光する前記本発明のX線分光素子とを有するので、高強度で単色性の強いAu −Lβ線を試料に照射することができる。したがって、特に蛍光X線分析において、試料から十分な強度の蛍光X線を発生させかつバックグラウンドを抑制することができ、Cu について十分高感度、高精度の分析ができる。 【0009】 【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態のX線分析装置を図面にしたがって説明する。この装置は、図2に示すように、1次X線5を試料1の表面に対して例えば0.05度程度の微小な入射角α(図においては誇張して表す)で照射させる全反射蛍光X線分析装置であって、試料台10に載置された半導体ウエハ等の試料1にAu−Lβ線5を1次X線として照射するX線照射装置6と、試料1から発生する蛍光X線等の2次X線7の強度を測定する検出手段であるSSD8とを備えている。X線照射装置6は、固有X線としてAu −Lβ線を含むX線2を発生するX線源3、すなわち、Au のターゲットからX線2を発生するX線管3と、そのX線管3から発生するX線2を分光するX線分光素子4とを有する。 【0010】このX線分光素子4は、単独でも本発明の一実施形態をなすもので、X線分析において試料1に照射するためのAu −Lβ線5を回折する多層膜分光素子である。さて、多層膜分光素子の反射強度および波長選択性を決定する主要因のひとつは、多層膜(反射層およびスペーサ層)を構成する物質の回折すべきX線に対する光学定数(複素屈折率)である。すなわち、良好な反射特性を得るための構成物質に関する条件としては、1)回折すべきX線に対する吸収係数(複素屈折率の虚部)ができるだけ小さいこと、2)回折すべきX線に対する反射層とスペーサ層の光学的コントラスト(複素屈折率の実部の差の絶対値)ができるだけ大きいこと、が挙げられる。ここで、特にエネルギーの高いX線に対しては、通常スペーサ層に使用されるCやSi 等の軽元素の吸収はほとんど無視できるため、多層膜分光素子の反射特性は、主として重元素からなる反射層の光学定数によって決まるといえる。 【0011】また、多層膜分光素子の反射特性を決定するもうひとつの主要因は、所望の周期長において明確な積層構造を形成できるか否かという点である。すなわち、良好な反射特性を得るための積層構造に関する条件としては、1)反射層およびスペーサ層をそれぞれ構成する物質が、所望の厚さで平坦な連続膜を形成できること、2)反射層とスペーサ層の層界面において、形状的凹凸や相互拡散等による乱れ(いわゆる界面ラフネス)ができるだけ小さく、急峻な界面を形成できること、が挙げられる。 【0012】以上の観点から、理論計算によるシミュレーションおよび実際の多層膜成膜実験等の詳細な調査を行った結果、Au −Lβ線に対して十分な反射特性を発揮し得る反射層の物質として、Ru 、Mo 、Co およびCr が非常に有望であることを見出し、本実施形態において、以下のように多層膜分光素子4を構成した。なお、Wは、Au −Lβ線付近のエネルギーにおいて、その吸収係数が急激に大きくなる吸収端を有しており、このことからも、Au −Lβ線に対しては、反射層の物質として不十分であることが分かる。 【0013】すなわち、本実施形態のX線分光素子4は、図1に示すように、反射層4aと、この反射層4aを形成する元素よりも原子番号の小さい元素を含むスペーサ層4bとを基板4c上に交互に複数組積層して構成され、反射層4aが、Ru 、Mo 、Co およびCr のうちの少なくとも1つ、例えばRu からなる。スペーサ層4bは、例えばCからなる。積層された反射層4aとスペーサ層4bとの1組の層対の厚さ(いわゆる周期長、d値)は、3nmとし、反射層4aとスペーサ層4bとの厚さの比は、1対1とし、積層数は、反射性能がほぼ飽和する100層対とした。 【0014】図3に、Au −Lβ線近傍での反射特性における、このX線分光素子4(Ru/Cで表記する)と、他の条件は同じで反射層がWからなる従来のX線分光素子(W/Cで表記する)との比較を示す。具体的には、両X線分光素子において、Au −Lβ線を回折するようにブラッグの条件にしたがって入射角θ(図1)を固定し、入射X線2(図1)の波長をAu −Lβ線近傍で変化させたときの反射率を理論計算によりシミュレーションした結果である。ここで、Au −Lβ線についての反射強度の高低は、Au −Lβ線の波長における反射率の高低として表れ、Au −Lβ線についての波長選択性の良好さは、半価幅(最高の反射率の半分の反射率における波長幅)の狭さとして表れる。図3から明らかなように、従来のW/CのX線分光素子に比べ、本実施形態のRu /CのX線分光素子4は、Au −Lβ線の反射強度(反射率)および波長選択性(半価幅)において優れている。 【0015】同様に、図4に、本実施形態において反射層4aがCr からなるX線分光素子4(Cr /Cで表記する)と、従来のX線分光素子(W/Cで表記する)との比較を示す。さらに、表1に、本実施形態において反射層4aがMo またはCo からなるX線分光素子4(それぞれ、Mo /C、Co /Cで表記する)を含め、反射率と半価幅をまとめる。各数値の下のかっこ書きの数値は、従来のX線分光素子の数値を1.00としたときの値、すなわち、従来のX線分光素子の数値に対する比である。 【0016】 【表1】
【0017】表1から分かるように、本実施形態のX線分光素子4(Ru /C、Mo /C、Co /C、Cr /C)は、従来のX線分光素子(W/C)に比べ、反射率において10〜26%良好な数値を示し、半価幅において10〜44%良好な数値を示す。Ru /C、Mo /CのX線分光素子は、特に反射率すなわち反射強度に優れ、Co /C、Cr /CのX線分光素子は、特に半価幅すなわち波長選択性に優れるので、目的に応じて反射層4aの材質を選択すればよい。なお、反射層4aが薄くても平坦性がより良好であるために、反射層4aには、Ru 、Mo 、Co およびCr のうち2つ以上を組み合わせて用いてもよい。 【0018】このように、本実施形態のX線分光素子4によれば、反射層4aが、Ru 、Mo 、Co およびCr のうちの少なくとも1つからなるので、3nmの周期長でも明確な積層構造を形成でき、かつX線分析で試料1に照射するためのAu −Lβ線5を十分高い反射強度と波長選択性をもって回折できる。 【0019】また、図2の本実施形態の全反射蛍光X線分析装置によれば、X線照射装置6に、固有X線としてAu −Lβ線を含むX線2を発生するX線管3と、そのX線管3から発生するX線2を分光する前記本実施形態のX線分光素子4とを有するので、高強度で単色性の強いAu −Lβ線5を試料1に照射することができる。したがって、試料1から十分な強度の蛍光X線7を発生させかつバックグラウンドを抑制することができ、特にCu について十分高感度、高精度の分析ができる。なお、前記本実施形態のX線分光素子4は、全反射蛍光X線分析装置以外の蛍光X線分析装置やX線回折装置におけるX線照射装置にも用いることができ、前述したのと同様に、高強度で単色性の強いAu −Lβ線を試料に照射することができる。 【0020】 【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明のX線分光素子によれば、反射層が、Ru、Mo 、Co およびCr のうちの少なくとも1つからなるので、約3nmの周期長でも明確な積層構造を形成でき、かつX線分析で試料に照射するためのAu −Lβ線を十分高い反射強度と波長選択性をもって回折できる。また、本発明のX線分析装置によれば、X線照射装置に、固有X線としてAu −Lβ線を含むX線を発生するX線源と、そのX線源から発生するX線を分光する前記本発明のX線分光素子とを有するので、高強度で単色性の強いAu −Lβ線を試料に照射することができる。したがって、特に蛍光X線分析において、試料から十分な強度の蛍光X線を発生させかつバックグラウンドを抑制することができ、Cu について十分高感度、高精度の分析ができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000250351 【氏名又は名称】理学電機工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年11月9日(2000.11.9) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100087941 【弁理士】 【氏名又は名称】杉本 修司 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−148393(P2002−148393A) |
| 【公開日】 |
平成14年5月22日(2002.5.22) |
| 【出願番号】 |
特願2000−341351(P2000−341351) |
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