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【発明の名称】 散乱線吸収グリッドおよびその製造方法
【発明者】 【氏名】幸田 勝博

【要約】 【課題】放射線の透過率が向上され、かつ軽量化された散乱線吸収グリッドを製造する。

【解決手段】対向するグリッド支持板20に、使用時に放射線源に向かって収束する傾きを持たせて放射線吸収材料からなる多数のグリッド用板材10を間隙をおいて係止し、これらの間隙に発泡性樹脂30を充填し、その後、発泡性樹脂30を硬化させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも2枚以上の対向するグリッド支持板に、使用時に放射線源に向かって収束する傾きを持たせて放射線吸収材料からなる多数のグリッド用板材を間隙をおいて係止し、前記間隙に発泡性樹脂を充填し、その後、該発泡性樹脂を硬化させることを特徴とする散乱線吸収グリッドの製造方法。
【請求項2】 前記硬化後に前記グリッド支持板を取り除くことを特徴とする請求項1記載の散乱線吸収グリッドの製造方法。
【請求項3】 少なくとも2枚以上の対向するグリッド支持板と、使用時に放射線源に向かって収束する傾きを有し、前記グリッド支持板に間隙をおいて係止された放射線吸収材料からなる多数のグリッド用板材と、前記間隙に充填され硬化された発泡性樹脂とからなることを特徴とする散乱線吸収グリッド。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放射線撮影装置に使用される散乱線吸収グリッドおよびその製造方法に関し、詳しくはグリッドを構成する板材が放射線の放射方向に傾いて並んだ散乱線吸収グリッドおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】放射線撮影装置によって撮影を行なうときに被写体と放射線検出器との間に配置され、被写体によって散乱された散乱線を吸収してS/Nの高い放射線を得るための散乱線吸収グリッドが知られている。
【0003】この散乱線吸収グリッドは、放射線を吸収する細長い薄板からなるグリッド用板材を多数、間隙をおいて並べ全体として平板形状あるいは円筒面形状に形成されたものであり、被写体によって散乱されて斜めに進む散乱放射線を吸収し、放射線源から被写体を通して直線的に放射線検出器に入射する放射線のみを効果的に透過させることにより、検出された被写体の画像に混入する散乱放射線によるノイズを低減させるものである。
【0004】この平板形状あるいは円筒面形状に形成された散乱線吸収グリッドを構成するグリッド用の板材は、放射線源から被写体を透過して直線的に放射線検出器に入射する放射線の進行を妨げないように、この放射線源に向けて整列させ、すなわち使用時に放射線源に向かって収束する傾きを持たせて並べるために中央部から両端部に向かうほど傾斜角度が大きくなるように配列させるのが、より高いS/Nを得るために好ましい。
【0005】また、細長い薄板(例えば厚さ約0.1mm)からなるグリッド用板材は剛性が低いので、多数のグリッド用板材が並んだ配列状態を維持するために、放射線を透過させるこの配列の両面(全体として板状に構成されたグリッドの表裏両面)にアルミニウム板やFRP(繊維強化プラスチック)等からなるグリッド固定天板が配設されている。例えば特開平10−5207号に開示された散乱線吸収用のグリッドにおいては、多数のグリッド用板材によって形成された全体として平板形状あるいは円筒面形状に形成された散乱線吸収グリッドの放射線を透過させる表裏両面にCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)製のグリッド固定天板が配設されており、このグリッド固定天板によってグリッド用板材の配列を維持している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、散乱線吸収グリッドの放射線を透過させる面に比較的剛性の高い材料からなるグリッド固定天板を配設すると、このグリッド固定天板による放射線の吸収および散乱によって放射線の透過率が低下して、検出される画像のS/Nが低下することになる。また、このようなグリッド固定天板が配設された散乱線吸収グリッドは重量が重くなり放射線撮影を行う際に取り扱いにくい場合がある。
【0007】本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、放射線の透過率を向上させることができ、かつ軽量化された散乱線吸収グリッド、およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の散乱線吸収グリッドの製造方法は、少なくとも2枚以上の対向するグリッド支持板に、使用時に放射線源に向かって収束する傾きを持たせて放射線吸収材料からなる多数のグリッド用板材を間隙をおいて係止し、これらの間隙に発泡性樹脂を充填し、その後、発泡性樹脂を硬化させることを特徴とするものである。
【0009】グリッド支持板は、発泡性樹脂の硬化後に取り除いてもよい。
【0010】本発明の散乱線吸収グリッドは、少なくとも2枚以上の対向するグリッド支持板と、使用時に放射線源に向かって収束する傾きを有し、グリッド支持板に間隙をおいて係止された放射線吸収材料からなる多数のグリッド用板材と、これらの間隙に充填され硬化された発泡性樹脂とからなることを特徴とするものである。
【0011】なお、少なくとも2枚以上の対向するグリッド支持板とは、グリッド用板材を支持するのに必要な枚数の支持板を意味し、全てのグリッド用板材を支持できれば、その位置、枚数には特に制限はない。例えば、2枚が平行に対向する場合に限らず、斜めに対向したり、平行に対向した2枚の支持板と斜めに対向した少なくとも1枚の支持板とを複合させたりしてもよい。
【0012】また、前記グリッド用板材としては、1方向に長く伸びた細長い薄板等を用いるのが適切である。
【0013】また、前記「係止」とは、グリッド用板材を、使用時に放射線源に向かって収束する傾きを有するようにグリッド支持板に保持できればどのような方式であってもよく、例えばグリッド支持板の板面に切欠き、細穴または突起を設けたり、あるいはグリッド支持板の板面に長孔を設け、この長孔に、溝を設けたりあるいはピンを立ててグリッド用板材を保持するようにしてもよい。
【0014】また、前記発泡性樹脂としては、例えば発泡ポリスチレン、発泡ポリプロポピレン、発泡ポリウレタン等が適しているが、放射線が吸収されにくく、細部構造に入り込むことができるように泡を発生させることができるものであれば、どのような発泡性樹脂であってもよく、発生するガスの種類、あるいは発泡倍率等によって限定されるものではない。
【0015】また、前記グリッド支持板を取り除くとは、グリッド支持板をグリッド用板材から引き抜いて取り外したり、外側に配されたグリッド支持板の間に配列されたグリッド用板材をグリッド用支持板の内側から切断してグリッド支持板を切り出したりすることを意味する。
【0016】また、平面状に延びたグリッド用板材は、想定される放射線源に向かって収束する方向に完全に沿うことはできないが(厳密には放射線源を頂点とする円錐状でなければ放射線源に向かって収束する方向に一致しないが)、グリッド用板材の傾きを外側へ向かうほど大きくすれば、このグリッド用板材が平面状であっても、グリッド用板材が傾いていないものに比べれば放射線源の方向にその傾きを、より沿わせることができる。
【0017】
【発明の効果】本発明の散乱線吸収グリッドおよびその製造方法によれば、対向するグリッド支持板に、多数のグリッド用板材を間隙をおいて係止し、これらの間隙に発泡性樹脂を充填して硬化させるようにしたので、放射線の透過率が高く軽い発泡性樹脂によってグリッド用板材の配列が保持され、従来のように、放射線を吸収あるいは散乱させる虞(欠点)のあるグリッド固定天板を散乱線吸収グリッドの放射線源を透過させる面に設ける必要がなく、放射線の透過率を向上させることができ検出された画像のS/Nを高めることができると共に、軽量化された散乱線吸収グリッドを製造することができる。
【0018】また、前記発泡性樹脂を硬化させた後にグリッド支持板を取り除くようにすれば、このグリッド支持板を散乱線吸収グリッドの製造に繰り返し使用することができ製造コストが低減されると共により軽量化された散乱線吸収グリッドを製造することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の散乱線吸収グリッドの具体的な実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0020】図1は、本発明の実施の形態による散乱線吸収グリッドの概略構成を示す図である。図1に示すように、散乱線吸収グリッド100は、2枚の対向するグリッド支持板20と、使用時に放射線源に向かって収束する傾きとなるように、グリッド支持板20に間隙をおいて係止された放射線吸収材料からなる多数のグリッド用板材10と、これらのグリッド用板材10の間隙に充填され硬化された発泡性樹脂30とからなる。なお、このグリッド用板材10は、想定される放射線撮影時の放射線源200の位置に向かうように係止され、中心部Cから両端部E1およびE2に向かうほどその傾斜角度が大きくなっている。
【0021】グリッド用板材10は、図2に示すように厚さt1が0.1mm程度、幅が3〜15mm程度、長さが450mm程度の細長い薄板であり、粉体状の単体、または粉体状の鉛酸化物、ビスマス化合物、あるいは他の重金属化合物などを溶液に混合して有機ポリマーを結合材(バインダ)とする溶液にして、この溶液を平面上に塗布して薄板状に形成した材料や、鉛箔、タンタル、ビスマス等の薄板状の単体材料によって形成されている。
【0022】グリッド支持板20は、図3に示すようなグリッド用板材10を係止するための、使用時に想定される放射線源200に向かって収束する傾きを有する係止溝21を備えている。なお、互いに隣り合う係止溝21の間隔は0.2mmから1.0mm程度である。また、グリッド支持板20の板面に細穴または突起を設ける等の他の方式によってグリッド用板材を係止してもよい。
【0023】発泡性樹脂30は、放射線が吸収されにくい非常に軽い材料である、例えば発泡ポリスチレン、発泡ポリプロポピレン、発泡ポリウレタン等からなる。
【0024】このように構成された散乱線吸収グリッドは、非常に軽くて扱いやすく、また、放射線の透過率が高い発泡性樹脂によってグリッド用板材の配列が保持されているので、放射線を効率よく透過させることができ、検出された画像のS/Nを高めることができる。
【0025】次に本発明の散乱線吸収グリッドを製造する製造工程について説明する。
【0026】まず、図4に示すように2枚の対向するグリッド支持板20に、使用時に放射線源に向かって収束する傾きを持たせて放射線吸収材料からなる多数のグリッド用板材10を間隙をおいて係止する。
【0027】このときの係止の方式は、図5に示すように、想定される放射線源200に向かって収束する傾きを持たせた係止溝21をグリッド支持板20に設け、これらの係止溝21にグリッド用板材10を挿入し、係止する方式を用いる。
【0028】次に、図6に示すように、係止された多数のグリッド用板材10の間隙に発泡性樹脂30を充填する。充填させる発泡性樹脂は、例えば発泡ポリスチレン、発泡ポリプロポピレン、発泡ポリウレタン等が用いられ、発泡が完了して硬化される前の発泡性樹脂をグリッド用板材10間隙に充填してもよいし、発泡が完了する前の段階で発泡性樹脂をグリッド用板材10の間隙に注入して、発泡完了後に間隙が発泡性樹脂によって満たされるように充填してもよい。なお、発泡による膨張でグリッド用板材10の間隙からはみ出した発泡性樹脂は除去される。
【0029】その後、グリッド用板材10の間隙に充填された発泡性樹脂を硬化させる。一般に、発泡性樹脂の硬化は、発泡する際の化学反応の進行に伴い硬化が進む。これにより、グリッド支持板20を備えた散乱線吸収グリッド100が得られる。
【0030】その後、図7に示すように、発泡性樹脂30の硬化後に2枚のグリッド支持板20をグリッド用板材10から引き抜き(取り除いて)散乱線吸収グリッド110を得る。なお、この取り除かれたグリッド支持板20は繰り返し使用することができる。また、図8に示すように、外側に配列されたグリッド支持板20の間に配列されたグリッド用板材10を、グリッド支持板20の内側から切断することによりグリッド支持板20を取り除いてもよい。(なお、このグリッド支持板を取り除く工程は必ずしも必要ない。)なお、上記実施の形態においては、天板を設けないものについて説明したが、放射線の吸収あるいは散乱の度合いが小さいものであれば、前記発泡性樹脂の硬化後に、グリッドの片面または両面に天板を固定して剛性を高めるようにしてもよい。
【出願人】 【識別番号】000005201
【氏名又は名称】富士写真フイルム株式会社
【出願日】 平成12年7月24日(2000.7.24)
【代理人】 【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史 (外1名)
【公開番号】 特開2002−40196(P2002−40196A)
【公開日】 平成14年2月6日(2002.2.6)
【出願番号】 特願2000−222040(P2000−222040)