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【発明の名称】 電子線照射方法及びその装置
【発明者】 【氏名】山川 隆

【要約】 【課題】一つの電子線加速器で効率よく両面照射が可能な、然も、処理効率が良く生産性の高い電子線照射方法及びその装置を提供すること。

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 立体被照射物を所定方向に搬送させながら電子線を照射して殺菌等の所期の目的を達成する電子線照射方法において、前記電子線照射により二次的に生成されるX線を遮蔽する遮蔽空間内を周回しながら被照射物を片面照射する電子線照射装置と、前記照射位置搬送方向下流側と上流側間に、被照射物を並行移動させながら下流側より上流側に戻す被照射物並行移動手段とを具え、前記並行移動手段により片面照射後の被照射物が、照射位置上流側に戻り、照射されていない反対側の面を、電子線照射側に対面させ、これにより搬送経路の二周回により前記被照射物の両面を照射させることを特徴とする電子線照射方法。
【請求項2】 立体被照射物を所定方向に搬送させながら電子線を照射して殺菌等の所期の目的を達成する電子線照射装置において、前記電子線照射により二次的に生成されるX線を遮蔽する遮蔽空間内を周回するコンベアと、該コンベア上に載置された被照射物を前記遮蔽空間内で側方より片面照射する電子線照射装置と、前記照射位置下流側のコンベア搬送位置と、前記照射位置上流側のコンベア搬送位置間を連絡する如く架け渡した被照射物並行移動手段とを具え、前記並行移動手段により片面照射後の被照射物が、照射位置上流側のコンベアに移動し、照射されていない反対側の面が、電子線照射側に対面可能に構成したことを特徴とする電子線照射装置。
【請求項3】 前記コンベアの周回路上の電子線非照射域に絞り部を設け、該絞り部に被照射物並行移動手段を架設したことを特徴とする請求項2記載の電子線照射装置。
【請求項4】 前記遮蔽空間の入口側と出口側を一致させ、該入出口部間の作業域空間に被照射物並行移動手段を架設したことを特徴とする請求項3記載の電子線照射装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば飲料水容器や医療機器等のように立体形状をもつ被照射物を搬送しながら、該被照射物に高エネルギ電子線を照射して殺菌等の初期の目的を達成する電子線照射方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、飲料水容器や医療機器等の滅菌方法として電子線照射滅菌装置が開発されている。かかる装置は、電子線の加速電圧を大きくすることで、医療用具等を滅菌可能とするもので、被照射物の耐熱性や残留毒性の心配がなく、更に滅菌処理時間が極めて短時間で処理が可能であるとともに、電源を切れば、瞬時に照射を停止し、環境上の安全性が高く、コスト面からも安価である等の有利性を有す。更に、γ線照射との違いは、材料劣化が小さいと言われていることである。このため、材料選択の範囲が広がる可能性がある。
【0003】このように、ある程度以上の肉厚を有し、特に前記したような医療機器等を滅菌する際には十分な量の電子線の照射が必要となるため、一般に使用される浸透性の低い低エネルギ電子線では不十分であり、産業応用として許されている限界に近い電子線エネルギをもつ5〜10MeVの電子線が多く利用されている。しかし、特に厚肉で高密度の被照射物の場合は、透過力の不足により、10MeVの電子線を照射しても、電子線照射時に一製品中の各部位間の線量分布(最大線量と最小線量との比)が大きくなり、その値が大きいほど、材質劣化、溶出物析出等の問題を生じていた。
【0004】具体的には、照射基準を最大線量部位に合わせると、最小線量位置での滅菌が不十分になり、又照射基準を最小線量部位に合わせると、前記被照射物は一般に有機材料で製造されているために、最大線量位置で過大照射となり、材料の劣化や着色が生じてしまう。
【0005】この為、照射による透過力不足を補うために、表裏両面から電子線を照射する両面照射方式が考えられるが、10MeVの電子線を照射装置は極めて高価であり、複数の照射装置を設置することはコスト的に困難である。
【0006】かかる課題を解消するために、低エネルギ照射の電子線加速器を用いたものであるが、コンベアをジグザグ(Z状)状に配置し、その間を架けわたすように前記2つの電子線加速器を配置する。そしてコンベアの第1の照射領域の後側であって第二の電子線照射領域の手前側のコンベア搬送経路上に被処理物を反転させる反転装置を設ける。被処理物が反転する位置は前後の被処理物に挟まれる空間位置であるために、反転により被処理物が汚染される恐れがない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記のような装置は低エネルギの電子線を用いる装置であるために、複数の加速器を用いた構成に出来るが、高エネルギの電子線加速器は、低エネルギ電子線加速器に比べて極めてコスト高である。又180°天地反転する機構では、天地反転となる為内容物が逆になり梱包状態が乱れ、また内部に充填している液等も一緒に混じり合ってしまい、時間差をおいた両面照射の効果が出にくい。そこで本発明は、上述した問題を解決し一つの電子線加速器で効率よく両面照射が可能な、然も、処理効率が良く生産性の高い電子線照射方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明はかかる課題を解決するために、請求項1記載の発明は、立体被照射物を所定方向に搬送させながら電子線を照射して殺菌等の所期の目的を達成する電子線照射方法において、前記電子線照射により二次的に生成されるX線を遮蔽する遮蔽空間内を周回しながら被照射物を側方より片面照射する電子線照射装置と、前記照射位置搬送方向下流側と上流側間に、被照射物を並行移動させながら下流側より上流側に戻す被照射物並行移動手段とを具え、前記並行移動手段により片面照射後の被照射物が、照射位置上流側に戻り、照射されていない反対側の面を、電子線照射側に対面させて二周回により前記被照射物の両面を照射させることを特徴とする。
【0009】かかる発明によれば、「側方よりの片面照射と」位置口から出口側に向けて周回する搬送経路上で、下流から上流側に並行移動することで又電子線が照射されていない反対側の面が、電子線照射装置に対面する側になり、二周回で両面照射が円滑に行われる。
【0010】請求項2記載の発明は、前記発明を効果的に実施する電子線照射装置に関するもので、前記電子線照射により二次的に生成されるX線を遮蔽する遮蔽空間内を周回するコンベアと、該コンベア上に載置された被照射物を前記遮蔽空間内で側方より片面照射する電子線照射装置と、前記照射位置下流側のコンベア搬送位置と、前記照射位置上流側のコンベア搬送位置間を連絡する如く架け渡した被照射物並行移動手段とを具え、前記並行移動手段により片面照射後の被照射物が、照射位置上流側のコンベアに移動し、照射されていない反対側の面が、電子線照射側に対面可能に構成したことを特徴とする。
【0011】請求項3記載の発明は、前記コンベアの周回路上の電子線非照射域に絞り部を設け、該絞り部に被照射物並行移動手段を架設したことを特徴とする。かかる発明によれば、被照射物並行移動手段の架設位置が電子線非照射域であるために、その移動手段の駆動部等が電子線照射領域から発生するX線に侵されて破損することはない。又絞り部に架設されている為に、並行移動距離が最も小さくなり並行移動中における倒れ等が解消できる。
【0012】請求項4記載の発明は、前記遮蔽空間の入口側と出口側を一致させ、該入出口部間の作業域空間に被照射物並行移動手段を架設したことを特徴とする。かかる発明は遮蔽空間の入出口側は、既にX線の漏洩が封止されている状態であるために、被照射物並行移動手段を架設してもその移動手段の駆動部等がX線に侵されて破損することはない。又架設位置は作業域空間であるためにその部分での保守が容易である。また、本発明は、前記入出口部におけるコンベアの被照射物の搬送サイクル(速度)と被照射物並行移動手段の被照射物の移動サイクル(速度)を実質的に同期、若しくは移動速度を速くしたことを特徴とする。かかる発明によればコンベアの搬送速度で隘路となることなく、円滑な周回が可能となる。尚、照射位置におけるコンベアの移動速度は照射量に対応させるために、出入り口部における移動速度と異なる場合が多い為に、一致若しくは速くさせるのは出入り口部における移動速度である。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。本実施形態における被照射物は、医療機器等の立体形状を有する被照射物を方形のカートンケースに収納したものを用いた。また、このような立体形状の被照射物の電子線滅菌装置として10MeVの電子線照射装置を使用する。
【0014】図1は本発明の基本構成図で、図2、図3は夫々本発明の被照射物並行移動コンベアの第1、第2実施例を示す概略平面図とその正面断面図である。図1において、電子線より二次的に発生したX線の拡散を防ぐ遮蔽壁21−22に囲まれた搬送経路20上には被照射物1を入口側より電子線照射域を通って出口側に導く搬送コンベア12を有し、該搬送コンベア12は図4に示すように複数のコンベア12〜14よりなるが、便宜上入口側より照射域までを入口側コンベア12Aと、照射域より出口側までを出口コンベア12Bと指称する。又電子線照射域のコンベア12側方には電子線加速器10が配設されている。
【0015】そして前記遮蔽空間からなる搬送経路20の入口側と出口側を一致させその部分20Aに、コンベア12の出口側と入口側を一致させるとともに、該コンベア12の出口側部分120Bと入口側部分120Aは作業領域19を介して並行に配置され、該作業領域19上に被照射物並行移動コンベア12が架設されている。図1において遮蔽壁21−22内に設けられた搬送経路20上には被照射物1を入口側120Aより電子線照射域25を通って出口側120Bに導く搬送コンベア12を有し、該搬送コンベア12は図2に示すように複数のコンベア12〜14よりなるが、便宜上入口側120Aより照射域25までを入口側コンベア12Aと、照射域25より出口側120Bまでを出口コンベア12Bと指称する。又電子線照射域25のコンベア12側方には電子線加速器10が配設されている。
【0016】前記並行に配置されたコンベア12は、図2に示す並行移動コンベアの第1実施例に示すように、所定間隔毎に段状突起112を有する断続移動コンベア110と、出口側コンベア12Bに載置された被照射物1を前記断続移動コンベア110側にスライドさせるプッシャ111を具え、前記プッシャ111の押出しサイクルに同期させて断続移動コンベア110を突起間距離Sずつ断続移動するようにコンベア12本体を構成する。
【0017】かかる実施形態の動作を説明する。搬送経路入口側120Aより入口側コンベア12Aに載置した被照射物1は、電子線照射域25に達すると、加速器10により片側が照射された後(1A)出口側コンベア12Bにより搬送経路出口側120Bに達する(1B)。搬送経路出口側120Bでは、前記プッシャ111の位置に片側照射した被照射物1が達すると、前記コンベア12は、所定間隔S毎に突設された段状突起112を後側に背にした位置に断続移動コンベア110を所定距離Sだけ移動させた状態で停止し、出口側コンベア12Bに達した片側照射被照射物(1B)を前記プッシャ111にてコンベア110側にスライドさせる。
【0018】以下順次前記プッシャ111の位置に片側照射した被照射物1(1C…)が達する毎に移動コンベア110が段状突起間距離Sだけ所定間隔移動し、片側照射被照射物1を前記プッシャ111にてコンベア110に並行スライドさせる。
【0019】そして前記断続移動コンベア110の夫々の間隔部に搭載された被照射物1C…が、入口側コンベア12Aの対面位置に達する毎に、前記段状突起112を利用して入口側コンベア12Aに押し出される。
【0020】これにより断続移動コンベア110で、出口側コンベア12との対面位置に達した片側照射被照射物1を前記突起部112の力により順次入口コンベア12A側に押し出させることが出来る。そして前プッシャ111の押し出しサイクルと同期して断続移動コンベア110は、段状突起間隔サイクルSだけ間隔移動し、段状突起112を後側に背にした位置にプッシャ111と対面するようになる。
【0021】また、被照射物並行移動コンベアの第2実施例として、図3にその概略平面図と正面断面図を示す。図3において、12A、12Bは搬送用ローラコンベア、114は搬出系ローラコンベア12Bの出口側に位置するストッパ、115は搬入系ローラコンベア12A上に位置する並行移動用ストッパで、コンベア12Bと反対側側方に配設されている。さらに、コンベア12Aとコンベア12Bにはチェーン113が架け渡されており、通常は該コンベア12A、12Bの下方に位置している。
【0022】かかる第2実施例の作用を説明するに、上記第1実施例と同様に経路出口側120Bに搬送された被照射物1は並行移動用ストッパ114により一時停止され(A)、コンベア12A、12Bに架けて設けられたチェーンが回転して上方へせり出し、被照射物1がチェーンによりコンベア12Bからコンベア12Bへ並行移動する(B)。そして、被照射物1は、該コンベア12Aの片側に設けられた並行移動用ストッパ115により停止され、チェーンが降下し(C)、コンベア12Aに載置されて再び滅菌室内に搬送される。もちろん、このような被照射物並行手段は、天地反転させずに並行移動可能な手段であれば、第1実施例、第2実施例に限定しない。
【0023】次に本発明の具体的実施形態について説明する。図4は本発明の実施形態にかかる電子線滅菌装置の概略構成図、図5はその電子線照射部を示す平面図である。図4において、滅菌装置は、電子線照射時に二次的に発生するX線が外部に漏出しないように、周囲をコンクリートなどの遮蔽壁22で囲繞するとともに、その中に中央照射壁21を配置して、電子線照射区域の反対側に出入口となす開口を設ける。
【0024】また、中央遮蔽壁21は上部中央に加速器10が配置される照射空間部25を凹状をなし、その外周囲を搬送経路20、更にその外側を遮蔽外壁21を囲撓させている。滅菌室26の中央部に位置する中央遮蔽壁21は、電子線照射域25から発生するX線の被爆量の低い位置にストッパが設けられ、これらの劣化を防ぐ目的を有する。
【0025】そして前記遮蔽壁22に囲まれる搬送経路20には、被照射物1を搬送するコンベア12〜14が設けられており、該コンベアは、入り口側から順に、被照射物1を適宜間隔で搬送するローラコンベア12、該被照射物1を片寄せ整列させながら搬送するスキューコンベア13、及び電子線照射領域を照射量に対応させてゆっくり搬送する電子線透過性の良好なチェーン状の照射コンベア14とで構成される。前記ローラコンベア12は、照射コンベア14に被照射物1を安定供給する目的で、該照射コンベア12及びスキューコンベア13より高速に設定される。さらに、該スキューコンベア13を照射コンベア14より増速に設定することで、後記するストッパ17により、完全には密着されていない被照射物1間の空間をさらに狭める。このように、夫々のコンベア12の速度制御により、被照射物1を電子線照射領域25にて確実に密着させた状態とすることができる。前記ストッパ17は、空気圧ストッパに限らないが、X線による影響を考慮して圧縮空気により作動するものを利用するのが好ましい。
【0026】さらに、前記照射コンベア14に対向する位置(中央遮蔽壁21の凹部空間)に高エネルギ電子線を照射する電子線加速器10が設置され、電子線照射領域25を被照射物1が通過する際に、被照射物1側面に、電子線の片面照射を行う。尚、前記電子線加速器10の直下には、照射コンベア12を挟んでSUS等で形成される肉厚のビームストップ15が設置されており、被照射物1に当らずに透過した電子線を受け止めるように構成されている。
【0027】そして被照射物1は、電子線加速器10から照射される高エネルギ電子線の照射により片面側を滅菌処理を施されたのち、再度後流側に位置するローラコンベア12Bに搬送されて、搬送経路出入口部120A、120Bに至る。出入口部120A、120Bでは、出口側ローラコンベア12Bと入口側ローラコンベア12Aが所定の作業領域を挟んで並行に配置されており、その間に出口側ローラコンベア12Bより入口側ローラコンベア12A側に被照射物を並行移動させながら再度入口側ローラコンベア12A側に戻す被照射物並行移動コンベア12が設けられており、該並行移動コンベア12により片面照射後の被照射物1Cが、照射位置上流側に戻り、照射されていない反対側の面を、電子線照射側に対面させて二周回により前記被照射物の両面を照射させている。
【0028】かかる実施形態によれば、「側方よりの片面照射」後再度入口側コンベア側に並行移動により反転移動することで又電子線が照射されていない反対側の面が、電子線加速器10に対面する側になり、二周回で両面照射が円滑に行われる。そして前記両面照射が終了した被照射物1は出口側ローラコンベア12Bよりそのまま次工程に搬出される。
【0029】
【発明の効果】以上記載のごとく本発明によれば、「側方よりの片面照射と」位置口から出口側に向けて周回する搬送経路上で、下流から上流側に並行移動することで又電子線が照射されていない反対側の面が、電子線照射装置に対面する側になり、二周回で両面照射が円滑に行われる。
【0030】また、請求項3記載の発明によれば、被照射物並行移動手段の架設位置が電子線非照射域であるために、その移動手段の駆動部等が電子線により発生するX線が侵されて破損することはない。又絞り部に架設されている為に、並行移動距離が最も小さくなりコストが低減できるとともに、並行移動中における倒れ等のリスクが低減できる。
【0031】さらに、請求項4記載の発明は遮蔽空間の入出口側は、既にX線の漏洩が封止されている状態であるために、被照射物並行移動手段を架設してもその移動手段の駆動部等が電子線により発生するX線に侵されて破損することはない。又架設位置は作業域空間であるためにその部分での保守が容易である。そして、請求項5記載の発明によればコンベア12の搬送速度で隘路となることなく、円滑な周回が可能となる。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成12年6月26日(2000.6.26)
【代理人】 【識別番号】100083024
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌久 (外1名)
【公開番号】 特開2002−6100(P2002−6100A)
【公開日】 平成14年1月9日(2002.1.9)
【出願番号】 特願2000−191802(P2000−191802)