| 【発明の名称】 |
中性子源 |
| 【発明者】 |
【氏名】高村 秀一
【氏名】大野 哲靖
【氏名】殿柿 智也
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| 【要約】 |
【課題】大量の中性子を生成することができるようにする。
【解決手段】環状をなす管状の陽極10と、陽極10の管内部に配設された陰極20と、陽極10の管内部に、陽極10の環周方向の電場を付与する電場付与機構(鉄心30及びコイル32)と、陽極10の管内部に、陽極10の環周方向の磁場を付与する磁場付与機構(コイル12)とを有する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 環状をなす管状の陽極と、前記陽極の管内部に配設された陰極と、前記陽極の管内部に前記陽極の環周方向の電場を付与する電場付与機構とを有する中性子源。 【請求項2】 請求項1に記載の中性子源であって、前記陰極は、前記陽極の管内部のほぼ中心位置に配設されている、中性子源。 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の中性子源であって、前記陽極の管内部に前記陽極の環周方向の磁場を付与する磁場付与機構を有する、中性子源。 【請求項4】 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の中性子源であって、前記陽極の管外部のうち、中性子を放出させる中性子放出部以外の部分が、中性子の透過を制限する遮蔽材によって遮蔽されている、中性子源。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、中性子を生成するための中性子源に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来の中性子源として、次のように、グロー放電を利用した構造のものがある。図6に示すように、その中性子源は、球殻状の陽極110を有し、陽極110は接地されている。球殻状の陽極110の内部(中心部分)には、グリッド状の中空球状の陰極120が設けられている。陰極120には、直流電源122によって負の高電圧が印加される。陽極110と陰極120との間の空間には、重水素分子(D2 )が充填されている。 【0003】そして、陽極110と陰極120との間でグロー放電が行われることによって、陰極120から陽極110へと走行する電子(e- )が重水素分子(D2 )に対して衝突し、重水素イオン(D+ )が生成される。そして、その重水素イオン(D+ )は陰極120に向かって走行し、重水素イオン(D+ )同士が衝突することによって核融合反応が生じ、中性子(n)が生成される。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】ところで、上述のように核融合反応が生じて中性子(n)が生成されるためには、重水素イオン(D+ )同士は高速で衝突する必要がある。ここで、重水素イオン(D+ )は、陽極110・陰極120間の電位差(正確には、それに基づく電場)に基づいて作用する静電気力によって加速される。このため、重水素イオン(D+ )同士が高速で衝突するためには、重水素イオン(D+ )が生成されてから重水素イオン(D+ )同士が衝突するまでの間において、静電気力を十分受ける必要がある。すなわち、重水素イオン(D+ )が生成された位置から重水素分子(D2 )と衝突する位置までの距離(その平均距離を平均自由行程ということとする)が長い方が、より高速で重水素イオン(D+)と衝突することとなる。 【0005】一方、中性子(n)が多く生成されるためには、重水素イオン(D+ )が多い方が良い。そして、上述のように重水素分子(D2 )に対して電子(e- )が衝突することによって重水素イオン(D+ )が生成されることから、重水素イオン(D+ )を多く生成させるためには、陽極110・陰極120間に多くの重水素分子(D2 )が存在する方が好ましいこととなる。 【0006】しかしながら、陽極110・陰極120間に多くの重水素分子(D2 )が存在すると、重水素イオン(D+ )が十分に高速となって他の重水素イオン(D+ )と衝突する前の時点で重水素分子(D2 )と衝突する確率が高くなってしまう。すなわち、上述の平均自由行程が短くなってしまい、重水素イオン(D+ )同士が高速で衝突することが阻害されてしまうのである。 【0007】以上のように、大量の中性子(n)を生成させるためには、重水素イオン(D+ )が多く、重水素分子(D2 )が少ない方が良い。しかし、従来の中性子源では、上述のようにその両者は相矛盾するものであり、十分な量の中性子を生成することは不可能である。 【0008】ここで、中性子源が、中性子計測器の校正用に使用されたり放射性同位元素製造装置に適用されるためには、所定以上(例えば、108 個/秒)の大量の中性子が生成される必要がある。しかしながら、前述の従来の中性子源では、105 個/秒程度の中性子しか生成されず、そのような利用はできない。 【0009】そこで、本発明は、大量の中性子を生成することができる中性子源を提供することを課題とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、環状をなす管状の陽極と、前記陽極の管内部に配設された陰極と、前記陽極の管内部に前記陽極の環周方向の電場を付与する電場付与機構とを有する中性子源である。 【0011】「管内部」とは、陽極の管としての内部のことをいう。「環周方向」とは、陽極の環としての周方向のことをいう。 【0012】この発明の中性子源では、陽極内(正確には、陽極と陰極との間の空間内)に重水素(又は、重水素及び三重水素)が充填されることによって、次の作用が生ずる。すなわち、陰極から放出された電子は、電場付与機構によって付与された陽極の環周方向の電場によって、陽極の環周方向に周回する。その電子が重水素(又は三重水素)と衝突することによって、重水素イオン(又は三重水素イオン)及び電子が生成される。生成された電子も、陽極の環周方向に周回する。そして、その重水素イオン(及び三重水素イオン)は、陽極と陰極との間の電位差に基づく電場によって陰極に向かって走行し、その重水素イオン同士(又は、重水素イオンと三重水素イオン)が衝突することによって、中性子が生成される。 【0013】以上のように、この発明の中性子源では、重水素イオン等の生成にあたって、電子は、陽極に引き寄せられつつ、陽極の環周方向の電場によって陽極の環周方向に周回することから、電子が陽極に到達するまでに重水素分子等に衝突する確率が高くなる。このため、重水素分子等が相対的に少なくても、大量の重水素イオン等が生成されることになる。このため、重水素イオン等が陰極に向かって走行する際に重水素分子と衝突する確率が低くなり、重水素イオンの平均自由行程が長くなり、大量の中性子が生成されることになる。 【0014】なお、陰極は、陽極の管内部のほぼ中心位置において、陽極の環周方向に沿って環状をなす連続的な線状のものでもよいし、陽極の環周方向に沿って断続的又は点在的に存在するものでもよい。 【0015】請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の中性子源であって、前記陰極は、前記陽極の管内部のほぼ中心位置に配設されている、中性子源である。 【0016】この発明の中性子源では、陰極が陽極の管内部のほぼ中心位置に位置するため、陽極の管周方向(管としての周方向)における各点と陰極との間の距離がほぼ均等となる。このため、陽極と陰極との間の空間内において生成された複数の重水素イオン(及び三重水素イオン)が陰極に向かって走行する際において、その走行の各始点から陰極に向かう方向のばらつきが大きくなる。このため、この発明の中性子源では、重水素イオン同士(又は重水素イオンと三重水素イオン)が衝突する際の相対速度が大きなものとなり、この点でも大量の中性子が生成されることになる。 【0017】請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明の中性子源であって、前記陽極の管内部に前記陽極の環周方向の磁場を付与する磁場付与機構を有する、中性子源である。 【0018】この発明の中性子源では、磁場付与機構によって、陽極の環周方向に磁場が付与される。そして、その環周方向の磁場によって、前述のように環周方向に周回する電子に対して、陽極の環周方向から外れないように閉じ込める閉じ込め効果が作用する。このようにして、この発明の中性子源では、陽極・陰極間の電子が陽極と接触して消滅することが防止される。このため、電子が陽極の環周方向にほぼ無限に周回することがより有効に担保され、より大量の中性子が生成されることになる。 【0019】また、環周方向の磁場がない場合には、プラズマの遮蔽効果によって、電場は陽極及び陰極の近傍に局在することとなり、重水素イオン等に対して陰極方向へ作用する加速力は、その分減殺されてしまう。しかしながら、この発明では、環周方向の磁場が存在するため、プラズマの遮蔽効果が抑制され、陽極・陰極間の全般にわたって電場が生ずる。このため、重水素イオン等に対して陰極方向への加速力が有効に作用し、重水素イオン等がより高速で衝突することとなり、その点でもより大量の中性子が生成されることになる。 【0020】請求項4に係る発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに係る発明の中性子源であって、前記陽極の管外部のうち、中性子を放出させる中性子放出部以外の部分が、中性子の透過を制限する遮蔽材によって遮蔽されている、中性子源である。 【0021】「管外部」とは、陽極の管としての外部のことをいう。「中性子の透過を制限する」には、中性子の透過を完全に防止するものに限らず、中性子の透過を低減化するものも含まれる。 【0022】この発明の中性子源では、中性子放出部以外の部分が中性子の透過を制限する遮蔽材によって遮蔽されているため、陽極内(正確には、陽極・陰極間)で生成された中性子は、中性子放出部から集中的に放出される。このため、生成された中性子を利用するのに便利である。 【0023】 【発明の実施の形態】次に、本発明の一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。図1〜図4に示すように、この中性子源は、円環状をなす円管状の陽極10を有している。陽極10はステンレスによって形成され、接地されている。陽極10の環としての中心から管としての中心までの距離(すなわち、環としての半径)を大半径といい、管としての中心から管としての壁面までの距離(すなわち、管としての半径)を小半径ということとする。また、環としての周方向を環周方向といい、管としての周方向を管周方向ということとする。環としての内部を環内部といい、管としての内部を管内部ということとする。そして、例えば、大半径が0.4mであり、小半径が0.1mである。 【0024】図2〜図4に示すように、陽極10の管内部には、陰極20が配設されている。陰極20は、タングステン,モリブデン等の金属によって形成されている。陰極20は、円環状をなす線状をしている。そして、陰極20は、陽極10の管内部のほぼ中心位置において、陽極10の環周方向に沿って延びている。陰極20には、直流電源22によって負の高電圧(例えば、−10kV)が印加される。陽極10の管内部(正確には、陽極10と陰極20との間の空間)には、重水素分子(D2 )が充填される。例えば、重水素分子(D2 )の密度は、1016個/m3 である。 【0025】図1に示すように、陽極10には鉄心30が鎖交しており、鉄心30にはコイル32が巻かれている。コイル32には、交流電源34によって交流電流が通電される。このため、コイル32に流れる電流の変化に基づいて、陽極10の管内部には環周方向に交流電圧が生ずる。この交流電圧を環周方向電圧Vzということとする。 【0026】図1及び図4に示すように、陽極10の管としての外側には、その管周方向に巻かれたコイル12が環周方向に沿って設けられている。このコイル12に直流電源14に基づいて直流電流が通電されることによって、陽極10の管内部には、環周方向に沿って磁場が生ずる。この磁場を環周方向磁場Bzということとする。 【0027】次に、この中性子源の作用及び効果について説明する。図3に示すように、陰極20から陽極10・陰極20間の空間に放出される電子(e- )は、上述のようにコイル32によって生ずる環周方向電圧Vz(正確には、それに基づく電場)に基づいて、環周方向に静電気力を受ける。このため、その電子(e- )は、陽極10に引き寄せられていくとともに、環周方向に沿って周回する。なお、環周方向電圧Vzは交流電圧のため、電子(e- )は、正方向,逆方向の各環周方向に沿って交互に周回する。 【0028】このように電子(e- )が環周方向に周回する際、前述したようにコイル12によって生ずる環周方向磁場Bzによって、 電子(e- )に対して閉じ込め効果が作用し、電子(e- )は、陽極10の管としての内壁面に衝突することが防止される。なお、このことは、次述のようにして生成される重水素イオン(D+ )に対しても同様である。 【0029】そして、このように環周方向に周回する電子(e- )が重水素分子(D2 )と衝突し、次のようにして、重水素イオン(D+ )及び電子(e- )のプラズマが生成される。そして、その生成された電子(e- )も、環周方向に周回する。なお、重水素イオン(D+ )も、環周方向に(電子(e- )とは反対方向)、電子(e- )よりも低速で周回する。電子(e- )よりも質量が大きいからである。 【0030】 【化1】
【0031】以上のようにして生成された重水素イオン(D+ )は、上述のように環周方向に周回しつつ、図4に示すように、陽極10・陰極20間の電位差(正確には、それに基づく電場Er)に基づく静電気力によって、陰極20に向かって走行する。こうして、陰極20に向かって高速で走行する重水素イオン(D+ )同士が衝突し、次のように核融合反応が生じ、中性子(n)が生成される。 【0032】 【化2】
【0033】なお、陽極10の管内部(正確には、陽極10と陰極20との間の空間)には、重水素分子(D2 )に加えて三重水素分子(T2 )が充填されてもよい。その際は、高速周回する電子(e- )が三重水素分子(T2 )と衝突することによって、次のように三重水素イオン(T+ )が生成される。 【0034】 【化3】
【0035】そして、重水素イオン(D+ )と三重水素イオン(T+ )とが衝突し、次のように核融合反応が生じ、中性子(n)が生成される。 【0036】 【化4】
【0037】なお、重水素分子(D2 )及び三重水素分子(T2 )のことを重水素分子(D2 )等といい、重水素イオン(D+ )及び三重水素イオン(T+ )のことを重水素イオン(D+ )等ということとする。 【0038】以上のように、この中性子源では、重水素イオン(D+ )等の生成が、環周方向に周回する電子(e- )によってなされ、重水素イオン(D+ )同士等の高速衝突が、陽極10・陰極20間の電位差(それに基づく電場)に基づいてなされる。 【0039】すなわち、重水素イオン(D+ )等の生成にあたっては、電子(e- )が陽極10に引き寄せられつつ環周方向に周回することから、電子(e- )が陽極10に到達するまでに重水素分子(D2 )等に衝突する確率が高くなる。このため、逆にいうと、重水素分子(D2 )等が少なくても、大量の重水素イオン(D+ )等が生成されることになる。 【0040】以上のように、この中性子源では、陽極10・陰極20間の空間には、重水素分子(D2 )等の数が少なく、重水素イオン(D+ )等の数が多く存在することが可能となる。このため、重水素イオン(D+ )同士等が衝突する前に重水素イオン(D+ )等が重水素分子(D2 )等に衝突してしまう確率が低くなり、重水素イオン(D+ )等の平均自由行程が長くなる。すなわち、重水素イオン(D+ )等が生成されてから他の重水素イオン(D+ )等と衝突するまでの距離が長くなり、その間に十分に高速となって、核融合反応が生ずる確率が高くなるのである。 【0041】また、この中性子源では、前述したように環周方向磁場Bzが存在しているため、次の効果もある。すなわち、環周方向磁場Bzがない場合には、プラズマの遮蔽効果によって、電場は陽極10及び陰極20の近傍に局在することとなり、重水素イオン(D+)等に対して陰極20方向へ作用する加速力は、その分減殺されてしまう。しかしながら、この中性子源では環周方向磁場Bzが存在するため、そのプラズマの遮蔽効果が抑制され、陽極10・陰極20間の全般にわたって電場が生ずる。このため、重水素イオン(D+ )等に対して陰極20方向への加速力が有効に作用する。このため、重水素イオン(D+ )等がより高速で衝突することとなり、その点でも核融合反応が生ずる確率が高くなる。 【0042】以上のようにして、この中性子源では、大量の中性子(n)を生成することができる。例えば、1010個/秒である。このため、この中性子源は、中性子計測器の校正用に使用されたり、工業製品等の非破壊検査に使用されたり、放射性同位元素製造装置に適用されることができるのである。 【0043】実際に上記の用途に使用される際は、次のようにされる場合がある。すなわち、図5に示すように、陽極10(ステンレス)の管としての外側面がガドリニウムの遮蔽材40(ガドリニウムの多数の板片によって形成される)に覆われて遮蔽され、中性子の放出が防止されるとともに、陽極10の外側面の一部は、遮蔽材40によって覆われず、中性子放出部42が形成される。中性子放出部42は、陽極10の環としての外周面に、ほぼ等角度の間隔を隔てて、複数個(例えば8個)形成される。 【0044】中性子放出部42は、陽極10の外側面に孔部44が形成され、その孔部44に対して石英ガラス等による窓部材46が嵌合されて形成されている。ガドリニウムには中性子を透過させない性質があるとともに、ステンレス(陽極10)及び石英ガラス等には中性子を透過させる性質があるからである。 【0045】以上のため、陽極10・陰極20間の空間内で発生した中性子は、中性子放出部42のみから放出され、前述した種々の用途に使用され得る。 【0046】なお、遮蔽材40は、ガドリニウムに限らず、中性子を透過させない種々の材質のものが適用され得る。また、窓部材46は、石英ガラスに限らず、中性子を透過させる種々の材質のものが適用され得る。また、中性子放出部42は、陽極10に孔部44が形成されず、単に遮蔽材40が覆われずに形成されてもよい。
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| 【出願人】 |
【識別番号】598091860 【氏名又は名称】財団法人名古屋産業科学研究所
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| 【出願日】 |
平成13年3月2日(2001.3.2) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100101524 【弁理士】 【氏名又は名称】長谷川 哲哉
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| 【公開番号】 |
特開2002−257993(P2002−257993A) |
| 【公開日】 |
平成14年9月11日(2002.9.11) |
| 【出願番号】 |
特願2001−58224(P2001−58224) |
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