| 【発明の名称】 |
同位体核種製造装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】岡崎 隆司
【氏名】真木 紘一
【氏名】竹内 一浩
【氏名】森 利克
|
| 【要約】 |
【課題】中性子を用いて生成される同位体核種の生成効率を向上させることができる同位体核種製造装置を提供することにある。
【解決手段】中性子を中性子増倍材2によって増倍した後、中性子減速材3によって中性子を減速させる。中性子減速材3によって減速された中性子を同位体核種生成材5に入射することによって、核反応により同位体核種が発生する。中性子を増倍すると共に減速することによって、同位体核種生成材5において核反応を起こす中性子が増えるため、同位体核種の生成効率が向上する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】入射された中性子を減速させる中性子減速材と、前記中性子減速材によって減速された中性子との核反応により同位体核種が発生する同位体核種生成材とを備えたことを特徴とする同位体核種製造装置。 【請求項2】入射された中性子を増倍する中性子増倍材と、前記中性子増倍材によって増倍された中性子を減速させる中性子減速材と、前記中性子減速材によって減速された中性子との核反応により同位体核種が発生する同位体核種生成材とを備えたことを特徴とする同位体核種製造装置。 【請求項3】前記同位体核種生成材を収納する容器と、前記容器に前記同位体核種と結合する液体を注入するための注入口と、前記容器から前記液体を排出するための排出口とを備えたことを特徴とする請求項1及び2のいずれかに記載の同位体核種製造装置。 【請求項4】前記同位体核種生成材は、複数の領域に分割されており、前記同位体核種の発生後に領域ごとに取り出されることを特徴とする請求項1及び2のいずれかに記載の同位体核種製造成装置。 【請求項5】トリチウムが含浸された水素吸蔵材或いは金属を有し、前記水素吸蔵材或いは前記金属に荷電粒子ビームを照射することによって中性子を発生させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の同位体核種製造装置。 【請求項6】中性子を発生する中性子発生源を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の同位体核種製造装置。 【請求項7】前記同位体核種生成材は、モリブデン98であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の同位体核種製造装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、中性子を利用して同位体核種を製造する同位体核種製造装置に関する。 【0002】 【従来の技術】同位体核種(Radio Isotope:以下、RIと呼ぶ)を用いたSPECT(SinglePhoton Emission Computed Tomography)は、癌診断,血管障害診断,肺機能診断,骨疾病診断等の様々な放射線医学診断に利用されている。このSPECTに用いられるRIの中でもテクネチウム99m(99mTc)は60種類以上の薬剤に利用されており、SPECT用RIの使用量でテクネチウム99mの占める割合は非常に大きい。 【0003】テクネチウム99mは、半減期が66時間のモリブデン99(99Mo)の娘核種であり、モリブデン99をテクネチウムジェネレータとして利用すれば、病院内でも容易にテクネチウム99mを溶出することができる。上述のように、テクネチウム99mは医療において極めて重要な位置を占めており、親核種であるモリブデン99の安定供給が医療にとって重要であることは「Isotope news;Jan.'00.No.548 日本アイソトープ協会」に記載されている通りである。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】モリブデン99の生成には、98Mo(n,γ)99Mo,235U(n,f)99Mo,100Mo(p,pn)99Mo等の核反応が利用されるが、235U(n,f)99Moは原子炉を利用するため稼働率が悪く、100Mo(p,pn)99Mo は反応断面積が小さいために大出力の陽子線源が必要となる。このため、中性子を用いた98Mo(n,γ)99Moが注目されているが、中性子を用いた98Mo(n,γ)99Moにおいても効率良くモリブデン99を生成することが望まれている。 【0005】本発明の目的は、中性子を用いて生成される同位体核種の生成効率を向上させることができる同位体核種製造装置を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明の特徴は、入射された中性子を減速させる中性子減速材と、中性子減速材によって減速された中性子との核反応により同位体核種が発生する同位体核種生成材とを備えたことにある。 【0007】中性子減速材によって中性子を減速することにより、中性子が同位体核種生成材と核反応を起こしやすくなり、核反応を起こす中性子の量が増加するので、RIの生成効率が向上する。 【0008】 【発明の実施の形態】以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。 (実施例1)図1は、本発明の好適な一実施例である同位体核種製造装置の構造図(断面図)である。図示するように、本実施例の同位体核種製造装置では、円筒の容器1に中性子増倍材2と中性子減速材3が収められており、容器1の底部にはターゲット4が設けられている。また、容器1を囲むようにしてRI生成材5が設けられている。このRI生成材5は容器6内に充填されており、この容器6には下部に回収液体注入口7が設けられ、上部に回収液体排出口8が設けられている。 【0009】このような同位体核種製造装置において、ターゲット4に荷電粒子ビームが照射され、ターゲット4と荷電粒子ビームの核反応によって中性子が発生する。本実施例では、荷電粒子ビームとして重水素ビームを用い、ターゲット4としてはトリチウムを含浸させたチタン材(Ti)を用いることで、重水素ビームとトリチウムとのD−T反応により中性子を発生させる。なお、トリチウムを含浸させる物質はチタン材に限られるものではなく、他の水素吸蔵材或いは金属(例えば銅)を用いても良い。また、中性子の発生にD―D反応を用いる場合には、重水素を含浸させたチタン材に重水素ビームを照射すればよい。 【0010】ターゲット4で発生した中性子は容器1を透過して中性子増倍材2に入射し、中性子増倍材2により中性子が増倍される。本実施例では、中性子増倍材2としてベリリウムが用いられる。なお、中性子増倍材2として鉛等を用いても良い。中性子増倍材2によって増倍された中性子は中性子減速材3に入射し、中性子減速材3に入射した中性子は減速される。本実施例では、中性子減速材3として水が用いられる。なお、中性子は中性子減速材3によって熱中性子まで減速されるのが望ましい。 【0011】中性子減速材3によって減速された中性子は容器6を透過してRI生成材5に到達し、核反応によってRIが生成される。本実施例では、RI生成材5としてモリブデン98が用いられ、98Mo(n,γ)99MoによってRIであるモリブデン99が生成される。モリブデン99は、崩壊してテクネチウム99mとなる。このテクネチウム99mを回収するために、回収液体注入口7から回収液体(本実施例では生理食塩水)を注入して回収液体にテクネチウム99mを取り込み、その回収液体を回収液体排出口8より取り出す。取り出した回収液体からテクネチウム99mを分離・回収し、回収されたテクネチウム99mはSPECTに利用される。なお、本実施例のRI生成材5は、回収液体が通過しやすいようにペブルとする。また、RI生成材5であるモリブデン98は天然存在比が24%であるため、本実施例ではエンリッチによりモリブデン98の原子数を増やして使用する。更に、容器6は、生理食塩水によって腐食せず、かつ低放射化材料からなるのが好ましく、本実施例ではSUSを用いる。 【0012】以上のように、本実施例では、中性子増倍材2によって中性子を増倍させるため、RI生成材5と核反応を起こす中性子を増やすことができ、RIの生成効率を向上させることができる。また、本実施例では、中性子減速材3によって中性子を減速させるので、RI生成材5と核反応を起こす中性子を増やすことができ、RIの生成効率を向上させることができる。 (実施例2)本発明の他の実施例である同位体核種製造装置について図2を用いて説明する。本実施例の同位体核種製造装置は、容器内に中性子増倍材,中性子減速材及びRI生成材を積層してなる積層物を2セット設けている。以下、実施例1と異なる点について説明する。 【0013】ターゲット4に荷電粒子ビームが照射されることによって発生した中性子は、容器1を透過して中性子増倍材2aに達し、中性子増倍材2aにより増倍される。中性子増倍材2aによって増倍された中性子は、中性子減速材3aにて減速された後、RI生成材5aと核反応を起こしてRI(モリブデン99)が生成される。RI生成材5aにて核反応を起こさなかった中性子は、中性子増倍材2bによって反射されるものと、中性子増倍材2b内に入射するものとに別れる。中性子増倍材2bによって反射された中性子は、再びRI生成材5aに入射され、核反応によってRIが生成される。一方、中性子増倍材2bに入射した中性子は、中性子増倍材2bによって増倍される。中性子増倍材2bによって増倍された中性子は、中性子減速材3bにて減速された後、RI生成材5bと核反応を起こしてRIが生成される。なお、RI生成材5aと中性子増倍材2b及び中性子減速材3aとの間、及びRI生成材5bと中性子減速材3bとの間には、中性子を透過する材質の仕切板(図示せず)が挿入されており、仕切板で仕切られたRI生成材5a,5bの層には回収液体注入口7a,7bから回収液体が注入されて回収液体排出口8a,8bから回収液体が排出される。 【0014】このように、中性子増倍材,中性子減速材及びRI生成材を積層した積層物を2セット設けることによって、RI生成材5aにて核反応を起こさなかった中性子の一部が中性子増倍材2bにて反射されてRI生成材5aに入射されるので、RIの生成効率を向上させることができる。なお、中性子増倍材,中性子減速材及びRI生成材の積層物は2セットに限らず、複数セットであれば本実施例の効果が得られる。また、中性子増倍材,中性子減速材及びRI生成材を積層せずに混合しても同様の効果が得られる。 (実施例3)本発明の他の実施例である同位体核種製造装置について図3を用いて説明する。本実施例の同位体核種製造装置は、中性子増倍材,中性子減速材及びRI生成材の各層を球状としている。以下、実施例1と異なる点について説明する。 【0015】図3は、本実施例の同位体核種製造装置の断面図である。図示するように、本実施例の同位体核種製造装置では、中性子増倍材2が内部に球状の空間を有する球状をしており、内部空間の表面にはターゲット4が設けられている。また、中性子増倍材2の内部空間には中性子を導入するための導入管9が接続されており、荷電粒子ビームがこの導入管9を通ってターゲット4に照射されることによって中性子が発生する。発生した中性子は放射状に広がるが、導入管9の部分を除いて中性子増倍材2が囲むように設けられているため、大部分の中性子を中性子増倍材2に入射させることができる。中性子増倍材2に入射した中性子は増倍された後、中性子減速材3に達し、減速される。中性子減速材3によって減速された中性子はRI生成材5に入射し、核反応によってRIが生成される。 【0016】本実施例によれば、中性子増倍材2,中性子減速材3及びRI生成材5を球状としたため、放射状に広がる中性子の大部分をRI製造に利用することができ、RIの生成効率を向上させることができる。 (実施例4)本発明の他の実施例である同位体核種製造装置について図4を用いて説明する。本実施例の同位体核種製造装置では、RI生成材を複数の領域に分割して、領域毎に取り出せる構造としている。以下、実施例1と異なる点を説明する。 【0017】図4に示すように、RI生成材5は複数の領域a〜dに分割されており、個別に取り出すことができる。前述の通り、テクネチウム99mはモリブデン99の崩壊によって発生するが、モリブデン99におけるテクネチウム99mの発生量は、モリブデン99の生成が停止してから所定時間増加するため、モリブデン99ごと取り出すことによってテクネチウム99mをその半減期以上に確保しておくことが可能となる。図5は、モリブデン98への中性子の照射を8時間経過した時点で止めた場合における、モリブデン99とテクネチウム99mの核種量を示す。図示するように、モリブデン98への中性子の照射を停止してモリブデン99の核種量が減少しはじめた後も、テクネチウム99mは増加する。これは、モリブデン99の崩壊によるテクネチウム99mの生成量がテクネチウム99mの減衰量を上回るためである。従って、テクネチウム99mの量がピークを迎える時間にテクネチウム99mを取り出してSPECTに利用できるように、モリブデン99を装置から取り出せばよい。 【0018】このように本実施例によれば、モリブデン99ごとテクネチウム99mを取り出すことによってテクネチウム99mの半減期以上の時間テクネチウム99mを確保しておくことができる。 【0019】以上説明した各実施例では、ターゲットに荷電粒子ビームを照射して中性子を発生させているが、ターゲットを用いずに中性子発生源を用いても良い。中性子発生源としては、加速された電子からの制動輻射による(γ,n)反応で中性子を発生させるものや、加速された陽子を物質に照射して(p,n)反応で中性子を発生させるもの、また陽子を金属等に照射して核破砕により中性子を発生させるもの等が既に知られている。なお、実施例3において中性子発生源を用いる場合に、中性子があたるターゲット部分の形状をくの字にすることによって、導入管9における中性子の逆流を防ぐことができる。 【0020】また、各実施例では、中性子増倍材を用いて中性子を増倍しているが、中性子増倍材を設けずに中性子減速材のみ設けても、従来技術と比較してRIの生成効率を向上させることが可能である。 【0021】更に、各実施例では、中性子を利用してモリブデン99(最終的にはテクネチウム99m)を生成する場合について説明したが、モリブデン99以外の核種についても同様に本発明を適用することができる。図6は、本発明により生成可能な核種、核種生成時の反応と反応に必要とされるエネルギーの閾値、及び半減期と核種の崩壊を示す。なお、図6に示す核種のうち閾値反応により生成される核種を用いる場合には、RI生成部に入射する中性子が閾値以上となるように中性子減速材の厚さを調節する。 【0022】 【発明の効果】本発明によれば、RIの生成効率を向上させることができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000005108 【氏名又は名称】株式会社日立製作所
|
| 【出願日】 |
平成13年1月12日(2001.1.12) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100075096 【弁理士】 【氏名又は名称】作田 康夫
|
| 【公開番号】 |
特開2002−214395(P2002−214395A) |
| 【公開日】 |
平成14年7月31日(2002.7.31) |
| 【出願番号】 |
特願2001−4372(P2001−4372) |
|