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【発明の名称】 放射性廃棄物の除染廃液の処理方法
【発明者】 【氏名】鳥井 淳史

【要約】 【課題】放射性廃棄物の除染廃液中の遊離酸成分を簡便に回収できる。

【解決手段】放射性廃棄物は、除染槽41、中和リンス槽42、水洗リンス槽43の各処理を経過し、放射能測定装置44により放射能チェックを受け除染された非放射性廃棄物として取り出されるという除染システムにおいて、前記除染槽41で発生する除染廃液は、酸回収装置5に送られ、この酸回収装置5において残留する遊離酸を回収し、回収した酸の成分調整を行った後、再び前記除染槽41に返送装置51によって返送する除染廃液の処理方法であって、前記酸回収装置5では、イオン交換樹脂層に通して遊離酸を吸着させ、次いで清水タンク53から清水を通して吸着した酸を溶出させて酸回収液として回収する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】無機酸による放射性廃棄物の除染工程において発生する除染廃液から残留する酸を回収する酸回収工程と、回収した酸を再び前記除染工程で使用するために返送する回収酸返送工程を含む除染廃液の処理方法であって、前記酸回収工程において、前記除染廃液をイオン交換樹脂層に通して遊離酸を吸着させ、次いで水を通して吸着した酸を溶出させて回収することを特徴とする除染廃液の処理方法。
【請求項2】前記回収酸返送工程において、回収した酸の成分調整を行った後返送する、請求項1に記載の除染廃液の処理方法。
【請求項3】前記酸回収工程で処理された酸回収済廃液を中和処理した後、中和処理で生成する固形分をろ過または沈降または遠心分離により沈殿物と上澄液とに分離する中和分離工程を含む、請求項1及び2に記載の除染廃液の処理方法。
【請求項4】前記中和分離工程において、前記除染工程後のリンス処理によって生じたリンス廃液も併せて処理する請求項3に記載の除染廃液の処理方法。
【請求項5】前記中和処理後に分離した上澄液を電気透析により処理して、その上澄液が含有する塩類を酸成分とアルカリ成分とに分解する塩分解工程を含むとともに、この塩分解工程で得られた酸成分を前記除染工程の酸として使用するようにし、かつ、同じくアルカリ成分を前記除染工程後のリンス処理または酸回収済廃液の中和処理に使用するようにした請求項3及びまたは4に記載の除染廃液の処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放射性廃棄物の除染工程において発生する除染廃液の改良された処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、除染廃液の処理技術における酸成分の回収には、図3に例示するような拡散透析を用いたものが知られている。この処理技術を説明すると、先ず、放射性廃棄物は除染室1において、溶解槽12、洗浄槽13、洗浄槽14の順に除染処理され、除染廃棄物として排出される。溶解槽12には、酸タンク33a、33b、33cから送られる硝酸、塩酸、ふっ酸によって濃度調整された除染液が供給され、前記放射性廃棄物の処理に供される。ここで、廃棄物の放射性成分は、除染液側に溶出し、除染される。
【0003】かくして放射性成分を含む除染廃液は、フィルタ21、廃液回収タンク22を経て、拡散透析槽2に送られる。ここでは、含有酸成分は拡散透析膜を透過して分離され、さらに除染廃液は回収タンク23を経て、加熱蒸発システム24で濃縮され、最終的な固化処理に供される。
【0004】一方、拡散透析槽2で分離された酸成分は、水タンク3から供給される酸回収液に移行し、酸回収タンク31を経て、イオンメータ32によって酸濃度が計測され、再度、除染液として再利用される。この場合、前述の通り、酸タンク33a、33b、33cから送られる硝酸、塩酸、ふっ酸によって濃度調整されるのである。
【0005】このようにして、除染液の酸成分は、循環して再利用されるのであるが、この拡散透析法に基づく酸成分の回収装置は、拡散透析槽に有機物製の膜を用いているため、放射線や放射線と酸成分との相乗効果による劣化の観点から膜の寿命が短いと想定されることに加え、この膜は多数使用することになるため、膜が劣化した場合の補修は複雑な作業となり、原子力施設内の設備としては好ましくないという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、放射性廃棄物の除染廃液中の遊離酸成分を簡便に回収できるようにするとともに、さらには、回収後の廃液中の塩成分も再利用することも可能とする除染廃液の処理方法を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の問題は、無機酸による放射性廃棄物の除染工程において発生する除染廃液から残留する酸を回収する酸回収工程と、回収した酸を再び前記除染工程で使用するために返送する回収酸返送工程を含む除染廃液の処理方法であって、前記酸回収工程において、前記除染廃液をイオン交換樹脂層に通して遊離酸を吸着させ、次いで水を通して吸着した酸を溶出させて回収することを特徴とする本発明の除染廃液の処理方法によって解決することができる。
【0008】そして、本発明は、前記酸回収工程で処理された酸回収済廃液を中和して、ろ過、沈降または遠心分離などにより固形物と上澄液とに分離する中和分離工程を組み合わせて、固形物である放射性成分と塩分とを分離し、放射性成分の最終的な固化を容易にした除染廃液の処理方法として、好ましく具体化できる。
【0009】更に本発明は、前記中和分離工程で処理された上澄液をバイポーラ膜などを用いた電気透析により処理して、その上澄液が含有する塩類を酸成分とアルカリ成分とに分解する塩分解工程を含むとともに、この塩分解工程で得られた酸成分を前記除染工程の酸として使用するようにし、かつ、同じくアルカリ成分を前記除染工程後のリンス処理または酸回収済廃液の中和処理に使用するようにした除染廃液の処理方法として、好ましく具体化できる。
【0010】
【発明の実施の形態】次に、本発明の除染廃液の処理方法に係る実施形態について、図1、2を参照しながら説明する。図1の装置フロー図において本発明の除染廃液の処理方法では、放射性廃棄物は、除染槽41、中和リンス槽42、水洗リンス槽43の順に、除染、中和リンスおよび水洗リンスの各処理を経過し、放射能測定装置44により放射能チェックを受け除染された非放射性廃棄物として取り出されるという除染システムを基本としている。
【0011】本発明の特徴とするところは、前記除染槽41で行われる無機酸による放射性廃棄物の除染工程41で発生する除染廃液は、酸回収装置5に送られ、この酸回収装置5では残留する遊離酸を回収する酸回収工程が行われ、回収した酸を再び前記除染槽41で使用するために返送装置51によって酸回収液を前記除染槽41に返送するという、回収酸返送工程を含む除染廃液の処理方法であって、前記酸回収工程において、前記除染廃液をイオン交換樹脂層に通して遊離酸を吸着させ、次いで清水タンク53から清水を通して吸着した酸を溶出させて酸回収液として回収する点にある。
【0012】この場合、遊離酸を吸着分離した除染廃液は放射性成分、例えば、除染時に酸と反応して生じた硝酸鉄などの塩類および分離しきれなかった残留酸成分を含むのであるが、この除染廃液は、中和槽61で中和され、中和によって発生した水酸化鉄などはろ過槽62のろ過残渣として取り出され、次いで固化装置64により固化処理され、減容化した放射性廃棄物として廃棄処理される。
【0013】このような本発明において、特に重要なのは、前記酸回収装置5の工程において、イオン交換樹脂層を用いて除染廃液から遊離酸を吸着、分離する点にあり、その原理を図2を参照して説明する。酸回収装置5には、酸型のアニオン交換樹脂層が収容され、一端に設けた除染廃液供給バルブa1を通じて除染廃液を送り込み、廃液中の酸成分をイオン交換樹脂に吸着させ、他端に設けた廃液取出しバルブa2を通じて酸回収済み廃液を取り出す。次いで、この吸着操作を停止し、清水バルブb1を通じて送り込まれる清水を逆向きに流し吸着していた酸成分を溶出させ、酸回収液取出しバルブb2を通じて酸成分を回収するものである。
【0014】かくして、本発明によれば、この吸着操作と酸回収操作を繰り返せば、除染廃液中の酸成分を効果的に回収できるのである。また、イオン交換樹脂層を採用したことにより、従来の拡散透析法に基づく回収装置に比較して膜を使用しないため寿命を気にせず使用でき,万一補修が必要となった場合でも簡単に補修が可能で、原子力施設内の設備として好ましい。
【0015】さらに、本発明を具体化するに際して、次の形態の塩分解工程を付加するのが特に好ましい。すなわち、前記酸回収工程で処理された酸回収済み廃液を電気透析により処理して、その酸回収済み廃液が含有する塩類を酸成分とアルカリ成分とに分解する塩分解工程を付加するのであるが、図1に示すように、酸回収装置5から取り出された酸回収済み廃液は、中和槽61で中和され、ろ過装置62で放射性固形分を分離し可溶性塩類を含むろ液を濃縮装置63で濃縮し、次いで、例えばバイポーラ膜を収容する電気透析装置7によって、酸成分とアルカリ成分とに分解するものである。
【0016】そして、この塩分解工程で得られた酸成分を酸回収装置5を経由、除染槽41に返送して前記除染工程の酸として再使用するようにし、同時に、同じくアルカリ成分を中和槽61に返送して酸回収済み廃液の中和処理に使用するようにリサイクルするのが好ましい。このアルカリ成分は、中和リンス槽42に返送して中和に使用するのもよい。かくして、前記中和処理に使用されたアルカリも、この塩分解工程によって回収され、酸の場合と同様に、有効に再利用されるのである。
【0017】なお、この塩分解工程においては、酸回収装置5から取り出された酸回収済み廃液のみならず、前記除染工程後の中和リンス槽42、水洗リンス槽43などのリンス処理によって生じたリンス廃液も併せて処理するようにすると、このシステム内で用いられる酸およびアルカリを再利用するなど無駄なく活用できる利点が得られるのである。
【0018】本発明による酸回収の効果を以下具体的に説明する。厚さ1cmの鉄1トンを硝酸で除染した場合、酸回収を行わなければ、硝酸塩約40kgが発生するのに対し、本発明による酸回収を行った場合には、硝酸塩約22kgが発生するに止まり、二次廃棄物をほぼ半減することができる。更に、酸回収済み廃液を中和分離後、上澄液の塩類を分解した場合、二次廃棄物は処理の容易な水酸化鉄約10kgに更に半減できる上、固化処理の難しい硝酸塩はほぼ0とすることができる。
【0019】
【発明の効果】本発明の除染廃液の処理方法は、以上説明したように構成されているので、除染廃液中の酸成分を効果的に回収でき、かつ膜を使用しないため寿命を気にせず使用でき、万一補修が必要となった場合でも簡単に補修が可能で、原子力施設内の設備として好ましい。また、中和分離工程を付加したものでは、放射性成分と塩分を分離しているため、最終的に必要な放射性成分の固化を容易に行うことができる。更に、塩分解工程を付加したものでは、酸回収装置から取り出された酸回収済み廃液のみならず、前記除染工程後の中和リンスや水洗リンスなどのリンス処理によって生じたリンス廃液も併せて処理でき、この処理システム内で用いられる酸およびアルカリを再利用することができるという優れた効果がある。よって本発明は、従来の問題点を解消した除染廃液の処理方法として、工業的的価値はきわめて大なるものがある。
【出願人】 【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
【出願日】 平成14年1月8日(2002.1.8)
【代理人】 【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄 (外2名)
【公開番号】 特開2002−350589(P2002−350589A)
【公開日】 平成14年12月4日(2002.12.4)
【出願番号】 特願2002−1474(P2002−1474)