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【発明の名称】 放射性物質除染方法及び放射性物質除染装置
【発明者】 【氏名】穴沢 和美

【氏名】坂下 元昭

【氏名】長瀬 誠

【要約】 【課題】本発明の目的は、放射性物質に汚染された金属部材の除染をより短時間で行うことができる放射性物質除染方法及び放射性物質除染装置を提供することである。

【解決手段】内部に貯蔵される還元除染剤の放射線量の上限値である放射線管理値が異なる複数の還元除染槽と、前記金属部材を前記複数の還元除染槽と洗浄槽に浸漬させる搬送機と、前記複数の還元除染槽のうち、前記放射線管理値が第1の値である第1の還元除染槽内の還元除染液を、前記放射線管理値が前記第1の値よりも高い第2の値である第2の還元除染槽に移送する管と、上記管で接続された還元除染槽の内、前記放射線管理値が最も高い還元除染槽の還元除染液に含まれる成分を分解する還元剤分解装置と、除染された前記金属部材に付着した前記還元除染液を洗浄する洗浄槽とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】放射性物質に汚染された金属部材を還元除染液を用いて除染する装置において、内部に貯蔵される還元除染剤の放射線量の上限値である放射線管理値が異なる複数の還元除染槽と、前記金属部材を前記複数の還元除染槽と洗浄槽に浸漬させる搬送機と、前記複数の還元除染槽のうち、前記放射線管理値が第1の値である第1の還元除染槽内の還元除染液を、前記放射線管理値が前記第1の値よりも高い第2の値である第2の還元除染槽に移送する管と、上記管で接続された還元除染槽の内、前記放射線管理値が最も高い還元除染槽の還元除染液に含まれる成分を分解する還元剤分解装置と、除染された前記金属部材に付着した前記還元除染液を洗浄する洗浄槽とを有することを特徴とする放射性物質除染装置。
【請求項2】請求項1において、前記管が接続されていない還元除染槽の還元除染液を分解する還元除染剤分解装置を有することを特徴とする放射性物質除染装置。
【請求項3】内部にある還元除染剤の放射線量の上限値である放射線管理値が異なる複数の還元除染槽と、前記複数の還元除染槽のうち、前記放射線管理値が第1の値である第1の還元除染槽の中にある還元除染液を、前記放射線管理値が前記第1の値よりも高い第2の値である第2の還元除染槽に移送する第1の管と、前記第2の還元除染槽の中にある還元除染液を、前記放射線管理値が前記第2の値よりも高い第3の値である還元除染槽に移送する第2の管と、前記第3の還元除染槽の還元除染液を分解する還元剤分解装置と、除染された前記金属部材に付着した前記還元除染液を洗浄する洗浄槽と、前記金属部材を前記複数の還元除染槽及び洗浄槽に浸漬させる搬送機とを有することを特徴とする放射性物質除染装置。
【請求項4】請求項1乃至3の何れかにおいて、更に、前記金属部材を酸化除染液を用いて除染する酸化除染槽を有し、前記搬送機が、前記還元除染槽のうち前記放射線管理値が最も高い還元除染槽から前記還元除染槽のうち前記放射線管理値が2番目に高い還元除染槽に前記金属部材を搬送する間に、前記酸化除染槽に前記金属部材を浸漬する搬送機であることを特徴とする放射性物質除染装置。
【請求項5】請求項4において、前記酸化除染槽の中の酸化除染液を、前記複数の還元除染槽のうち何れかの還元除染槽に移送する配管を有することを特徴とする放射性物質除染装置。
【請求項6】請求項4において、前記酸化除染槽の中の酸化除染液を、前記還元除染槽のうち前記放射線管理値が最も高い還元除染槽に移送する配管を有することを特徴とする放射性物質除染装置。
【請求項7】請求項1乃至3の何れかにおいて、更に、前記金属部材を酸化除染液を用いて除染する酸化除染槽を複数有し、前記搬送機が、前記放射線管理値が最も高い還元除染槽から前記放射線管理値が最も低い還元除染槽へ、前記放射線管理値が高い順に順次前記金属部材を浸漬させて移送する際に、還元除染層と次の還元除染槽を移送する間に、前記酸化除染槽に前記金属部材を浸漬させる搬送機であることを特徴とする放射性物質除染装置。
【請求項8】請求項1乃至7の何れかにおいて、前記搬送機は、複数の前記金属部材を搬送するものであり、前記金属部材を準じ移送する際に、第1の金属部材を浸漬している槽以外の槽に第2の金属部材を浸漬する搬送機であることを特徴とする放射性物質除染装置。
【請求項9】放射性物質に汚染された金属部材を第1の放射線管理値を有する第1の還元除染槽に浸漬して前記金属部材を除染し、次に、前記金属部材を第1の放射線管理値よりも低い第2の放射線管理値を有する第2の還元除染槽に浸漬することで、前記金属部材を更に除染し、除染により金属部材の放射線量が規定の値以下になった前記金属部材を、洗浄槽に移送して前記金属部材に付着した還元除染剤を洗い落とす、前記第2の還元除染槽の還元除染液の放射線量をモニタし、前記第2の還元除染槽の還元除染液が前記第2の放射線管理値を越えた場合に、前記第1の還元除染槽の還元除染液を還元除染剤処理装置に送って分解処理し、前記第2の還元除染槽の還元除染液を前記第1の還元除染槽に搬送して第1の還元除染槽の還元除染液として再利用することを特徴とする放射性物質除染方法。
【請求項10】請求項9において、第1の金属部材を除染槽にて除染もしくは洗浄槽にて洗浄している間に、第1の金属部材が浸漬されていない還元除染槽で、第2の金属部材の除染を行うことを特徴とする放射性物質除染方法。
【請求項11】請求項7において、金属部材の放射線量が、前記第1の放射線管理値よりも低い場合は、前記第2の還元除染槽から浸漬を開始することを特徴とする放射性物質除染方法。
【請求項12】請求項9乃至11の何れかにおいて、放射線管理値の異なる還元除染槽の間を移送する際に、酸化除染槽に浸漬させた後、次の還元除染槽に浸漬することを特徴とする放射性物質除染方法。
【請求項13】請求項9乃至12の何れかにおいて、放射性物質に汚染された金属部材を異なる還元除染槽,酸化除染槽もしくは洗浄槽に移送する際に、シャワー,エアブロー,ふき取り,機械式研磨の少なくとも何れかによって、前記金属部材に付着している液体を取り除くことを特徴とする放射性物質除染方法。
【請求項14】請求項4乃至6の何れかにおいて、前記還元除染槽間及び前記還元除染槽と前記酸化除染槽間の少なくとも何れかに、防護壁,防護カバー,樋の少なくとも何れかを設けることを特徴とする放射性物質除染装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放射性物質除染方法及び放射性物質除染装置に関する。
【0002】
【従来の技術】化学除染は、除染対象物表面の酸化皮膜内に取り込まれた放射性物質を、除染対象物の酸化処理及び還元処理を繰り返し、酸化皮膜をそれらの酸化除染液及び還元除染液で溶解,除去することによって除染対象物から取り除くものである。
【0003】化学除染に関する従来技術としては、特開2000−105295号公報に、2種以上の成分を含有する還元除染剤を用いて還元除染し、その還元除染剤を分解する化学除染方法が開示されている。また、特表平9−510784号公報には、有機酸の分解方法として、鉄錯体と紫外線を用いて二酸化炭素と水に分解する方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の技術では、1サイクル毎に酸化除染,酸化剤分解,還元除染及び還元剤分解を行っていた。そのため、各サイクルで還元剤分解を行う必要があり、化学除染を行うには長時間要する。例えば、第1から第4の4つの除染対象物があるものとし、酸化除染及び分解時間を2.5 時間,還元除染時間を5時間,還元剤分解時間を5時間,洗浄時間を5時間とし、1つの除染対象物に対して2サイクル繰り返した場合、酸化除染及び分解,還元除染,還元剤分解,還元除染,酸化除染及び分解,還元除染,還元剤分解,還元除染,洗浄の行程を経るため、合計で30時間を要する。ここで、第2の除染対象物以降の除染は、その前の除染対象物の除染が終了するまで開始できないため、4つの除染対象物を除染するには、120時間を要する。
【0005】このような処理時間の長期化の対策として、除染液分解装置を大型化あるいは台数の増加、また、高性能化して還元剤分解時間を短縮することが考えられる。しかし、設備の大型化あるいは台数増加をした場合、装置の設置スペースを広くする必要があり、更に循環流量を多くする必要が生じる。これは好ましい対策ではない。また、除染装置の高性能化を行うには限度があり、どの程度の効果が得られるかは不確かである。
【0006】更に、各サイクルで酸化剤,還元剤をそれぞれ分解するため、次工程では新たな薬品によって酸化除染あるいは還元除染を行うことが必要となり、多量の薬品を必要とする。例えば、酸化除染液量を3立方メートル、酸化除染液として過マンガン酸カリウム200ppm を使用した場合、1サイクル当たり過マンガン酸カリウムは約0.6kg 必要である。また、還元除染液量を3立方メートル、還元除染液としてシュウ酸2000ppm を使用するとし、酸化除染液中の過マンガン酸カリウムをシュウ酸で分解する場合、1サイクル当たりシュウ酸は約7.4kg が必要である。従って、1つの除染対象物に対して2サイクル除染を行うことを仮定すると、4つの除染対象物を除染するためには、過マンガン酸カリウムは約4.8kg、シュウ酸は約59.2kg必要となる。これらの薬品の量を削減する方法として、薬品濃度を低下させることが考えられるが、薬品濃度を低下させると除染効果が低下するため、薬品濃度を低下させることは難しい。
【0007】更に、酸化剤分解によって生成された金属イオンがカチオン樹脂に吸着されるため、カチオン樹脂の負荷を増加させる。例えば、1つの除染対象物の表面積を40m2 、酸化除染液量を3立方メートル、酸化除染液として過マンガン酸カリウム200ppm を使用した場合、酸化剤分解によって生成したカリウムイオン,マンガンイオンのカチオン樹脂における負荷量は、カチオン樹脂の全負荷量の約35%を占める。その対策として、カチオン樹脂量を増加させることが考えられるが、設備の増加を伴うため好ましい対策ではない。
【0008】更に、除染槽内の除染液中から当該除染対象物を取り出す際に、一旦除染液中に溶出した放射性物質が再度当該金属部材表面に付着することによる汚染、すなわち再汚染が生じる。その対策として、従来から還元除染期間中に除染液をカチオン樹脂塔に通水し、除染液中の放射性物質を除去することが行われている。しかし、除染液中の放射能濃度は、カチオン樹脂塔への通水流量,通水時間に依存し、実際には、カチオン樹脂塔通水流量,除染時間の制約があるため、除染液中の放射能濃度の低減には限界がある。従って、除染対象物の再汚染を完全に回避することは難しく、除染対象物の再汚染抑制には限度が生じる。
【0009】例えば、除染装置の保有水量を3立方メートル,カチオン樹脂塔通水流量を3立方メートル/h,カチオン樹脂塔での放射能除去効率を80%,還元除染時間を5hとし、還元除染を2回繰り返したとする。また、除染対象物に付着している放射性物質は第1回目の還元除染で90%が、第2回目の還元除染で10%が溶出すると仮定すると、第1回目の還元除染で全溶出放射性物質の約1.7% が還元除染液中に残存し、第2回目の還元除染で全溶出放射性物質の約0.21%が還元除染液中に残存する。2回目の還元除染液中に残存する放射性物質によって、除染対象物は再汚染されることとなる。
【0010】本発明の目的は、放射性物質に汚染された金属部材の除染をより短時間で行うことができる放射性物質除染方法及び放射性物質除染装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための実施態様は、内部に貯蔵される還元除染剤の放射線量の上限値である放射線管理値が異なる複数の還元除染槽と、前記金属部材を前記複数の還元除染槽と洗浄槽に浸漬させる搬送機と、前記複数の還元除染槽のうち、前記放射線管理値が第1の値である第1の還元除染槽内の還元除染液を、前記放射線管理値が前記第1の値よりも高い第2の値である第2の還元除染槽に移送する管と、上記管で接続された還元除染槽の内、前記放射線管理値が最も高い還元除染槽の還元除染液に含まれる成分を分解する還元剤分解装置と、除染された前記金属部材に付着した前記還元除染液を洗浄する洗浄槽とを有する。
【0012】これによれば、放射線管理値の異なる複数の除染槽を順次使用することで、金属部材を還元除染するにあたって、複数の金属部材の除染を並行して行うことができる。即ち、第1の還元除染槽での除染を終了した金属部材を第2の還元除染槽にて除染する際に、第1の除染槽では他の金属部材の還元除染を行うことができる。そのため、一つの還元除染槽で還元除染を行う場合よりも多量の金属部材の除染を同じ時間で行うことができる。これにより、作業効率を上げることが出来る。また、作業員の被曝量を削減することが出来る。更に、短い時間で除染を終了することが出来るので、作業員の労働に係る費用や、機器の運用費用を削減することが出来る。
【0013】更に、放射線管理値の低い還元除染槽の還元除染液を、放射線管理値の高い還元除染槽に移送することが出来る。これにより、放射線管理値の低い還元除染槽の還元除染液では使えなくなった還元除染液を、放射線管理値の高い還元除染槽で再使用することが出来る。これにより、使用する還元除染液の量を削減することが出来る。
【0014】更に、放射線管理値の低い還元除染槽の還元除染液は、放射線管理値の高い還元除染槽に移送するため、放射線管理値の低い還元除染槽には、還元除染液を分解する設備を設ける必要が無い。これにより、還元除染液分解装置の数を減らすことが出来る。そのため、機器の製作費用を低減することが出来る。また、機器の整備にかかる費用を削減することが出来る。
【0015】
【発明の実施の形態】(実施例1)図1に、本実施例の化学除染装置構成図を示す。この化学除染装置は、還元除染槽2a及び2b、洗浄槽4と循環配管から構成されている。還元除染槽2aの循環配管には、ポンプ5a,加熱器8a,薬品投入口10a,カチオン樹脂塔12a,混床樹脂塔13a及び還元剤分解装置14等が設けられている。還元除染槽2bの循環配管には、ポンプ5b,加熱器8b,薬品投入口10b,カチオン樹脂塔12b等が設けられている。洗浄槽4の循環配管には、ポンプ7,混床樹脂塔13b等が設けられている。
【0016】次に、除染の手順について説明する。
【0017】まず最初に除染開始前準備を行う。
【0018】還元除染槽2a,2b及び洗浄槽4並びにそれらの循環配管内に純水を張る。
【0019】次に、還元除染槽2aの出口弁V1a,ポンプ5aの出口弁V4a,樹脂塔バイパス弁V23a,還元剤分解装置14のバイパス弁V11及び還元除染槽2aの戻り弁V14aを開とし、ポンプ5aを用いて循環運転をしながら加熱器8aで所定の温度まで昇温する。その後、弁V17aを開として薬品投入口10aから還元除染剤を投入して所定の還元剤濃度とする。その後カチオン樹脂塔12aの出入口弁V17a,V19aを開、バイパス弁V23aを閉又は調整開として、所定の流量をカチオン樹脂塔12aに通水する。
【0020】還元除染槽2b及びその循環配管も、還元除染槽2a及びその循環配管と同様の方法で所定の還元剤濃度にし、その後カチオン樹脂塔12bに通水する。なお、還元除染槽2b及びその循環配管は、除染対象物1が還元除染槽2bに設置されるまでに、所定の還元剤濃度,温度に設定し、カチオン樹脂通水の運転準備ができていれば良い。
【0021】洗浄槽4の出口弁V3,ポンプ7の出口弁V6,混床樹脂塔13bのバイパス弁V24及び洗浄槽4の戻り弁V16を開とし、ポンプ7を用いて循環運転する。その後、混床樹脂塔13bの出入口弁V8b,V10bを開、バイパス弁V24を閉又は調整開として、所定の流量を混床樹脂塔13bに通水する。なお、洗浄槽4及びその循環配管は、除染対象物1が洗浄槽4に設置されるまでに、混床樹脂通水の運転準備を行う。
【0022】除染開始前の準備が終了したら、除染対象物1を還元除染槽2aに設置し、除染対象物1を還元除染液中に浸漬させて、カチオン樹脂塔12aに通水しながら還元除染を行う。所定時間経過したら、除染対象物1を還元除染槽2aから取出し、還元除染槽2bに設置し、還元除染槽2aと同様の方法で還元除染を行う。還元除染槽2bで、所定時間の還元除染が終了したら、除染対象物1を洗浄槽4に移動させる。洗浄槽4では、除染対象物1の表面に付着している放射性物質及び還元除染液を除去する。ここでは、洗浄槽4の循環配管は、ポンプ7によって混床樹脂塔13bに通水,循環運転を行い、除染対象物1の洗浄によって流入した還元除染液及び放射性物質を混床樹脂塔で吸着除去する。洗浄槽4内で、除染対象物1の洗浄が終了したら、除染対象物1を洗浄槽4から取り出す。洗浄槽4から取出した除染対象物1は、洗浄水を拭き取った後、放射線サーベーを行い、その結果に応じて一般物として搬出するか、廃棄物貯蔵容器に入れて放射性廃棄物として安全保管を行う。
【0023】本実施例では、還元除染槽2aを放射能濃度の管理値を高く、還元除染槽2bを低く管理している。除染対象物1の個数が多い場合は、これまで説明した手順を繰り返し行う。
【0024】運転を繰り返し行った場合、還元除染液中の放射能濃度が徐々に上昇し、管理値を超える場合がある。そのような時には、放射能濃度を最も高く管理している還元除染槽、即ち本実施例では還元除染槽2a及びその循環配管内の還元除染液を分解して、排水する。
【0025】分解及び排水は以下の手順で行う。
【0026】まず、還元剤分解装置14の出入口弁V12,V13を開、バイパス弁V11を閉(調整開でも良い)にして、還元剤分解装置14に所定の流量を通水して還元剤を分解する。所定の濃度以下まで還元剤の分解が終了したら、混床樹脂塔13aの出入口弁V8a,V10aを開、カチオン樹脂塔12aの出入口弁V7a,V9aを閉、バイパス弁V23aを閉又は調整開として、混床樹脂塔13aに所定の流量を通水し、浄化を行う。水質が排水基準を満たすことを確認して、V21を開として排水設備へ液を排水し、還元除染槽2a及びその循環配管を空にする。なお、ポンプ5aは、還元除染槽2a内の液位の低下により空気を巻き込まない範囲で運転を行い、その後、停止する。
【0027】次に、移送ポンプ15aの出入口弁V19,V20を開とし、移送ポンプ15を運転して、管理値が二番目に高い還元除染槽、即ち本実施例では還元除染槽2bの除染液を還元除染槽2aへ移送する。なお、ポンプ5bは、還元除染槽2b内の液位の低下により空気を巻き込まない範囲で運転を行い、その後、停止する。
【0028】なお、本実施例では、移送ポンプ15を用いて還元除染液の移送を行うこととしているが、ポンプ5bを用いて移送をしても良い。その後、除染前の準備と同様の方法で、還元除染槽2b及びその循環配管内に新たな還元除染液を補充する。
【0029】本実施例によれば、放射能濃度を最も高く管理している還元除染槽の還元除染液を分解して、その還元除染槽に放射能濃度を二番目に高く管理している還元除染槽の除染液を移送して放射能濃度を最も高く管理している還元除染槽の除染液として利用することにより、放射能濃度を二番目に高く管理している還元除染槽の除染液の放射能濃度が管理値に達した時に、二番目に高く管理している還元除染槽の除染液を交換、分解する場合に比べ、使用する除染液の量を少なくすることが出来る。そのため、廃棄する除染液の量を削減することが出来、化学除染に必要な費用を削減することが出来る。
【0030】(実施例2)図2に本実施例に用いる構成図を示す。本実施例は、還元除染に加えて酸化除染を行うことによって、除染効果をより高めたものである。構成は、実施例1に酸化除染槽3a及びその循環配管を追加したものである。酸化除染槽3aの循環配管には、ポンプ6a,加熱器9a,薬品投入口11a等が設けられている。
【0031】まず、運転準備について説明する。
【0032】酸化除染槽3aの出口弁V2a,ポンプ6aの出口弁V5a及び酸化除染槽3aの戻り弁V15aを開とし、ポンプ6aを用いて循環運転をしながら加熱器9aで所定の温度まで昇温する。その後、弁V18aを開として薬品投入口11aから酸化除染剤を投入して所定の酸化剤濃度とする。なお、酸化除染槽3a及びその循環配管は、除染対象物1が酸化除染槽3aに設置されるまでに、所定の酸化剤濃度,温度に設定し、運転準備ができていれば良い。
【0033】本実施例では、還元除染槽2aでの還元除染,酸化除染槽3aでの酸化除染,還元除染槽2bでの還元除染の順序で除染を行った後、洗浄槽4で洗浄して除染を終了するもので、酸化除染が加わった以外は実施例1の除染方法と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0034】本実施例においては、酸化除染液の分解は還元除染液と酸化除染液を混合することによって行う。すなわち、ポンプ6aの運転を停止し、酸化除染槽3aの循環運転を停止する。また、樹脂塔のバイパス弁V23a,還元剤分解装置14のバイパス弁V11を開、樹脂塔の出入口弁V7a,V8a,V9a,V10a,還元剤分解装置14の出入口弁V12,V13を閉とした循環運転を行う。その後、還元除染槽2aと酸化除染槽3aを接続する配管に設置した弁V22aを開とした後、ポンプ5aとポンプ6aの入口側を接続する配管に設けた弁V21aを開として、ポンプ5aによって還元除染液と酸化除染液を同時に吸込み、還元除染液と酸化除染液を混合する。混合液は、加熱器8aを経て、還元除染槽2aに戻す。還元除染槽2aに戻った混合液は、弁V22aを介して酸化除染槽3aに戻す。酸化除染液の分解が終了したら、カチオン樹脂塔の出入口弁V7a,V9aを開、V23aを閉又は調整開として、所定の流量の混合液をカチオン樹脂塔12aに通水し、酸化除染液の分解によって生じた金属イオン成分をカチオン樹脂塔12aで吸着除去する。
【0035】なお、酸化除染液の分解は、還元除染液と混合し、酸化除染液の分解後の混合液をカチオン樹脂塔12aに通水すれば良い。
【0036】本実施例によれば、実施例1と同様の効果を得ることが出来る。更に、還元除染と酸化除染を行うことにより除染効果を高めることが出来る。
【0037】(実施例3)図3に本実施例の構成図を示す。本実施例は、酸化除染と還元除染をそれぞれ2回繰り返した後、洗浄を行うように、図2の構成に、更に酸化除染槽3b及びその循環配管を設けたもので、酸化除染槽3bの循環配管は酸化除染槽3aの循環配管と同様の構成となっている。酸化除染槽3b及びその循環配管は、図2の実施例と同様の方法で所定の酸化剤濃度,温度にする。また、酸化除染から開始する以外は、実施例1及び実施例2と同様なので、ここでは重複する説明を省略する。
【0038】本実施例において、酸化除染,還元除染,酸化除染,還元除染,洗浄の順序で除染対象物1の除染を行う場合を説明する。酸化除染時間を2.5h ,還元除染時間を5h,洗浄を5hと仮定すると、図5に示すように1つの除染対象物を除染するのに20h要する。除染対象物が複数ある場合には、1つ目の除染対象物が還元除染槽2aに移動し、2.5h 経過した時点から、次の除染対象物を酸化除染槽3aで酸化除染を開始することができる。そのため、これらの運転を並行して行うことができるため、5h毎に除染対象物の除染を終了することができ、従来例に比べて6倍の速度で除染を行うことができる。
【0039】更に、酸化除染液,還元除染液共に、分解をせずに除染対象物の除染ができるため、薬品の使用量を大幅に低減することができる。例えば、酸化除染液量を3立方メートル、酸化除染液として過マンガン酸カリウム200ppm を使用した場合、1つの酸化除染槽当たり過マンガン酸カリウムは約0.6kg 必要となる。また、還元除染液量を3立方メートル、還元除染液としてシュウ酸2000ppm を使用した場合、1つの還元除染槽当たりシュウ酸は約6kg必要となる。また、従来の経験によれば酸化除染,還元除染を行うことによる除染剤の消費量は10%以下であるため、酸化剤,還元剤共に、各サイクルで10%を補充するものとする。従って、1つの除染対象物に対して2サイクル除染を行うと仮定すると、4つの除染対象物を除染するためには、過マンガン酸カリウムは約1.6kg 、シュウ酸は約15.6kg で良い。すなわち、従来例に比べて本実施例の場合、酸化剤は33%、還元剤は26%で良く、大幅に薬品使用量を低減することができる。なお、除染対象物が多い程、薬品使用量の低減効果は大きくなる。
【0040】更に、除染期間中は酸化剤の分解を必要としないため、酸化剤分解によって生成された金属イオンをカチオン樹脂で吸着除去する必要がなく、カチオン樹脂の負荷を低減できる。例えば、酸化除染液として過マンガン酸カリウム200ppmを使用し、各サイクルで10%の過マンガン酸カリウムの補充を行い、4つの除染対象物の除染終了後に酸化剤の分解を行い、分解によって生成したマンガンイオンとカリウムイオンをカチオン樹脂で吸着除去するものとする。1つの除染対象物の表面積を40m2 、酸化除染液量を3立方メートルとした場合、酸化剤分解によって生成したカリウムイオン,マンガンイオンのカチオン樹脂における負荷量は、カチオン樹脂の全負荷量の約11%に抑制でき、従来例に比べて樹脂の負荷を大幅に低減できる。なお、除染対象物が多い程、樹脂の負荷の低減効果は大きくなる。
【0041】更に、本実施例では、還元除染槽2aを放射能濃度の管理値を高く、還元除染槽2bを低く管理しているとする。そのため、還元除染槽2bの除染液中から当該除染対象物を取り出す際に、一旦除染液中に溶出した放射性物質が除染対象物に付着することによる再汚染のポテンシャルを低減することができる。例えば、除染装置の保有水量を3立方メートル、カチオン樹脂塔通水流量を3立方メートル/h,カチオン樹脂塔での放射能除去効率を80%,還元除染時間を5hとし、還元除染を2回繰り返したとする。また、除染対象物に付着した放射性物質は、還元除染槽2aで90%が、還元除染槽2bで10%が溶出すると仮定すると、還元除染槽2aで全溶出放射性物質の約1.7% が還元除染液中に残存し、還元除染槽2bで全溶出放射性物質の約0.18% が還元除染液中に残存する。除染対象物の再汚染は、還元除染槽2bでの放射能濃度に依存するため、従来例に比べて再汚染のポテンシャルを約14%低減できる。
【0042】実施例1乃至実施例3においては、還元除染槽及び酸化除染槽の循環配管にそれぞれ薬品投入口を設けているが、必ずしもその必要性はない。還元除染槽,酸化除染槽及びそれらの循環配管内に還元剤もしくは酸化剤を投入できれば目的は達成されるもので、1つあるいは複数の薬品注入装置を用いて、還元剤もしくは酸化剤を注入しても良い。
【0043】(実施例4)図4に本実施例の除染槽を示す。実施例1から実施例3においては、還元除染槽,酸化除染槽,洗浄槽を個々に設置するように示しているが、本実施例(図4)に示すように1つの槽を仕切板17によって分離する構造でも良い。還元除染液位,酸化除染液位,洗浄水位は、仕切板17よりも低く、かつ、除染対象物1を設置してもオーバーフローしないようにする。各槽の間の除染対象物1の移動はクレーンを用いる。除染対象物1をバスケットの中に入れ、そのバスケットをクレーンによって各槽の間を移動させる。バスケットの中には複数の除染対象物を入れてもよい。
【0044】また、除染対象物1を移動させる際には、除染対象物1を揚重機等を用いて、除染液より上方に持ち上げ、その場で除染液を水切りする。
【0045】水切りは、純水を用いてシャワー,エアーブロー,ふき取り,機械式研磨等によって、除染対象物1の表面に付着している放射性物質を取り去る。これにより、次の槽への放射性物質の持ち込み量を低減でき、除染効果を上げることができる。
【0046】また、除染対象物1の移動範囲に防護壁16を設置する。これによれば、除染対象物1を移動させる際に、除染液が管理されない箇所に液垂れを防止できる。
【0047】防護壁16を設置する方法以外にも、液垂れした液を回収する樋や槽全体を覆う防護カバーを設置しても良い。また、以上のべた方法を組み合わせても良い。これらによって、管理されない箇所に除染液が液垂れしないようにすることが出来る。
【0048】以上述べた各実施例によれば、より少ない除染薬品を使用することによって、放射性物質に汚染された複数の除染対象物の表面から、より少ない除染薬品の使用量で、放射性物質を化学的に除去することが出来る。また、複数の除染槽を用いて除染を行うことによって、複数の除染対象物の除染をより短時間で行うことができる。
【0049】
【発明の効果】本発明によれば、放射性物質に汚染された金属部材の除染をより短時間で行うことができる放射性物質除染方法及び放射性物質除染装置を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【識別番号】390023928
【氏名又は名称】日立エンジニアリング株式会社
【出願日】 平成13年4月3日(2001.4.3)
【代理人】 【識別番号】100075096
【弁理士】
【氏名又は名称】作田 康夫
【公開番号】 特開2002−296392(P2002−296392A)
【公開日】 平成14年10月9日(2002.10.9)
【出願番号】 特願2001−104079(P2001−104079)