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【発明の名称】 放射性ヨウ素の処理方法、処理材料及び処理装置
【発明者】 【氏名】石原 伸夫

【氏名】三宅 崇史

【氏名】眞部 文聡

【氏名】鳥居 伸彦

【要約】 【課題】本発明は、放射性ヨウ素含有物から効率的に放射性ヨウ素を抽出する方法を提供することを目的とする。

【解決手段】本発明は、放射性ヨウ素含有物を、溶融ガラスと接触せしめ放射性ヨウ素を溶融ガラス中に抽出した後、冷却し、安定ガラス固化体を得る放射性ヨウ素の処理方法、かかる方法に用いる処理材料及び処理装置である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 放射性ヨウ素含有物を、溶融ガラスと接触せしめ放射性ヨウ素を溶融ガラス中に抽出した後、冷却し、安定ガラス固化体を得る放射性ヨウ素の処理方法。
【請求項2】 ガラスが、ヨウ化物、1B族酸化物及びその他の酸化物を含むガラスである請求項1に記載の方法。
【請求項3】 ヨウ化物が、ヨウ化銀若しくはヨウ化銅である請求項2に記載の方法。
【請求項4】 1B族酸化物が、酸化銀若しくは酸化第一銅である請求項2に記載の方法。
【請求項5】 その他の酸化物が、三酸化二アンチモン、五酸化二リン、五酸化二バナジウム、三酸化モリブデン及び三酸化タングステンからなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化物である請求項2に記載の方法。
【請求項6】 放射性ヨウ素含有物が、放射性ヨウ素を吸着した吸着剤である請求項1に記載の方法。
【請求項7】 放射性ヨウ素を向流接触塔にて抽出する請求項1に記載の方法。
【請求項8】 放射性ヨウ素の抽出を、着脱式のふるい状のトレイに放射性ヨウ素含有物を充填した多段式抽出塔内で、(1)溶融ガラスを抽出塔の最上段から最下段に向けて流し放射性ヨウ素を溶融ガラスに抽出せしめる抽出工程、(2)抽出により放射性ヨウ素が除去された最上段のトレイをはずし、各段のトレイをそれぞれ1段ずつ上に移動させ、最下段に未抽出の放射性ヨウ素含有物を充填した新規トレイを入れる工程、を繰り返し行なうことからなる請求項1に記載の方法。
【請求項9】 前記(1)抽出工程の後に、抽出塔上部より熱風を吹き込み、放射性ヨウ素含有物の表面に残留したガラスを除去することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】 ガラス中に、ヨウ化物、1B族酸化物及びその他の酸化物を含有する放射性ヨウ素の処理材料。
【請求項11】 ヨウ化物が、ヨウ化銀若しくはヨウ化銅である請求項10に記載の材料。
【請求項12】 1B族酸化物が、酸化銀もしくは酸化第一銅である請求項10に記載の材料。
【請求項13】 その他の酸化物が、三酸化二アンチモン、五酸化二リン、五酸化二バナジウム、三酸化モリブデン及び三酸化タングステンからなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化物である請求項10に記載の材料。
【請求項14】 放射性ヨウ素含有物と溶融ガラスとを接触せしめ放射性ヨウ素を抽出する多段式抽出塔からなる放射性ヨウ素の処理装置であって、(1)各段を構成する着脱可能な複数のふるい状のトレイ、(2)塔頂に設けられた溶融ガラスの注入口、及び(3)塔底に設けられた溶融ガラスの取り出し口、を有する放射性ヨウ素の処理装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原子力発電所、核燃料再処理工場等の原子力施設から発生する放射性ヨウ素の処理方法、処理材料及び処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】使用済み核燃料の再処理工場や原子力発電所等から発生する放射性ヨウ素のうち、ヨウ素−129は、発生量も多く、半減期も1700万年と非常に長いことが知られている。この放射性ヨウ素は、再処理工場のオフガス中および溶液中に存在する。オフガス中の放射性ヨウ素の除去方法は、銀添着ゼオライトなどの吸着剤を使用する方法が代表的である。吸着剤に固定された放射性ヨウ素は、短・中期間の貯蔵には適するが、長い半減期を考慮した場合、地中処分などを行う必要があり、ヨウ素を含有するガラス固化体として安定化する必要がある。
【0003】吸着剤に吸着されたヨウ素を分離するには、加熱・気化による追い出し、あるいは、チオ硫酸水溶液などの還元性水溶液と接触させ、ヨウ化銀を還元し、ヨウ素イオンとして遊離させる方法などがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】加熱・気化による追い出しでは、ヨウ素を完全に気相側に移行させるのが難しく、担体側に残留するため、担体側も放射性廃棄物として処理しなければならない欠点があった。これを克服しようとすれば、処理温度を上げ、さらに、処理時間を延ばす必要がある。しかし、担体側のヨウ素残留量が減少するにつれ、気相側への移行が遅くなるため、ヨウ素の残留率を大きく下げることは非常に困難であった。また、ガラス化設備とは別にヨウ素を分離するための別のプロセスが必要になり、処理費用がかかるといった欠点があった。
【0005】また、還元性水溶液と接触させる方法では、ガラス化とは直接関係ない物質を混合するため、放射性ヨウ素を含む廃棄体が増えることや、廃液が発生するため、処理コストを引き上げる要因となる欠点がある。そこで本発明は、放射性ヨウ素含有物から効率的に放射性ヨウ素を抽出する処理方法を提供することを目的とする。また本発明はかかる方法に用いる処理材料、処理装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、放射性ヨウ素含有物を、溶融ガラスと接触せしめ放射性ヨウ素を溶融ガラス中に抽出した後、冷却し、安定ガラス固化体を得る放射性ヨウ素の処理方法である。また本発明は、ガラス中に、ヨウ化物、1B族酸化物及びその他の酸化物を含有する放射性ヨウ素の処理材料を包含する。さらに本発明は、放射性ヨウ素含有物と溶融ガラスとを接触せしめ放射性ヨウ素を抽出する多段式抽出塔からなる放射性ヨウ素の処理装置であって、(1)各段を構成する着脱可能な複数のふるい状のトレイ、(2)塔頂に設けられた溶融ガラスの注入口、及び(3)塔底に設けられた溶融ガラスの取り出し口、を有する放射性ヨウ素の処理装置を包含する。
【0007】放射性ヨウ素含有物本発明においては、放射性ヨウ素含有物とは、放射性ヨウ素廃棄体、放射性ヨウ素を吸着した吸着剤等のことを意味する。
【0008】ガラス本発明において、放射性ヨウ素の処理材料であるガラスは、ヨウ化物、1B族酸化物及びその他の酸化物を含む。ここで、ヨウ化物は、ヨウ化銀若しくはヨウ化銅であることが好ましい。また、1B族酸化物は、酸化銀もしくは酸化第一銅であることが好ましい。その他の酸化物は、三酸化二アンチモン、五酸化二リン、五酸化二バナジウム、三酸化モリブデン及び三酸化タングステンからなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化物であることが好ましい。ガラス中のヨウ化物(A)、1B族酸化物(B)及びその他の酸化物(C)のモル混合比は、A:B:C=1:0.2〜2.5:0.2〜3であることが好ましい。
【0009】従って、ガラスは、ヨウ化物としてヨウ化銀もしくはヨウ化銅、1B族酸化物として酸化銀もしくは酸化第一銅、その他酸化物として三酸化タングステン、三酸化モリブデン、五酸化二リン、五酸化二バナジウムからなる群より選ばれる酸化物を使用し、それぞれの分類の中の化合物を少なくとも一種類以上を含む混合物であることが好ましい。
【0010】本発明においてガラスは、特に、以下の成分で構成することが好ましい。
(1) 三酸化二アンチモン、三酸化タングステン、三酸化モリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種類の酸化物、ヨウ化銀及び酸化銀を含有する混合物。ここでヨウ化銀が20〜60モル%、酸化銀10〜30モル%、残部が、三酸化二アンチモン、三酸化タングステン、三酸化モリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種類の酸化物であることが好ましい。
(2) 五酸化二リン、五酸化二バナジウム、三酸化モリブデン及び三酸化タングステンからなる群より選ばれる少なくとも1種類の酸化物、ヨウ化銅及び酸化第一銅を含有する混合物。ここでヨウ化銅が10〜60モル%、酸化第一銅が10〜50モル%、残部が、酸化二リン、五酸化二バナジウム、三酸化モリブデン及び三酸化タングステンからなる群より選ばれる少なくとも1種類の酸化物であることが好ましい。
【0011】抽出本発明においては、放射性ヨウ素の抽出を、着脱式のふるい状のトレイに放射性ヨウ素含有物を充填した多段式抽出塔内で、(1)溶融ガラスを抽出塔の最上段から最下段に向けて流し放射性ヨウ素を溶融ガラスに抽出せしめる抽出工程、(2)抽出により放射性ヨウ素が除去された最上段のトレイをはずし、各段のトレイをそれぞれ1段ずつ上に移動させ、最下段に未抽出の放射性ヨウ素含有物を充填した新規トレイを入れる工程、を繰り返しながら行なうことが好ましい。また,ふるい状のトレイを用いなくとも、放射性ヨウ素含有物を下から上に、溶融ガラスを上から下に流す向流式の微分接触装置、あるいは、向流式の多段塔であれば、同様の効果を得られる。
【0012】抽出に際し、吸着剤を抽出塔の下から上に移動し、溶融ガラスを上から下に流し、向流接触させることで、担体表面への放射性ヨウ素の残留を大幅に下げることができる。さらに、溶融ガラスを断続的に流した後に、抽出塔上部より熱風を吹き込み、担体表面に残留したガラスを除去することで、担体表面の放射性ヨウ素残留を減少させ、抽出塔の段効率を上げると共に、ガラスの使用量を少なくすることができる。
【0013】処理装置本発明の処理装置は、放射性ヨウ素含有物と溶融ガラスとを接触せしめ放射性ヨウ素を抽出する多段式抽出塔からなる放射性ヨウ素の処理装置であって、(1)各段を構成する着脱可能な複数のふるい状のトレイ、(2)塔頂に設けられた溶融ガラスの注入口、及び(3)塔底に設けられた溶融ガラスの取り出し口、を有する放射性ヨウ素の処理装置である。かかる処理装置によれば、放射性ヨウ素含有物と溶融ガラスとを向流接触させることにより、放射性ヨウ素の抽出効率を高めることができる。
【0014】
【発明の効果】本発明によれば、放射性ヨウ素含む廃棄体から、放射性ヨウ素を低い残留率で抽出し、放射性廃棄体を削減すると共に、ガラス化プロセスと一体化することで、システムの大幅な合理化が図れる。
【0015】
【実施例】以下、実施例を示し本発明を詳述する。実施例1〜16は、図1に示すように、放射性ヨウ素I−131を吸着させた銀添着シリカを放射性廃棄体模擬物として用い、放射性ヨウ素を含まない溶融ガラスと接触させ、分離、冷却固化したガラス中の放射性ヨウ素の濃度を分析することで、ヨウ素の抽出性を確認したものである。
【0016】(実施例1)すなわち、銀添着シリカ2.59gをガラス管に詰め、50℃にて昇華させたI−131を含む空気を、I−131が破過するまで流通させることで廃棄体模擬物を合成した。この模擬物の放射線計数率を測定し、I−131の濃度を測定した。これを底部が金網になっている容器に入れた。
【0017】次に、表1のNo.1の組成のガラス化剤粉末18gを秤量、調製し、先の容器の模擬物の上に載せ、400℃に加熱した電気炉の中に10分間静置した。ガラス化剤粉末は溶融して、下部に設置した容器に回収された。この容器を電気炉より取り出し、室温にて自然放冷し、得られたガラス固化体中のI−131濃度を測定した。表1にI−131の抽出率を示す。I−131のガラスへの抽出率97%以上を確認した。
【0018】(実施例2〜16)表1のNo.2〜16組成のガラス化剤粉末を使用する以外は実施例1と同様に廃棄体模擬物から放射性ヨウ素を抽出した。結果を表1に示す。これらの実施例によれば、適切な組成の溶融ガラスと放射性ヨウ素含有廃棄体を接触させることにより、放射性ヨウ素をガラス側に高い抽出率で抽出させることができ、また、分離した溶融ガラスを冷却することで、直ちにガラス固化体を得ることができる。
【0019】
【表1】

【0020】(実施例17)実施例17は、図2に示すように、放射性ヨウ素I−131を吸着させたシリカを放射性廃棄体模擬物として用い、ふるい状の容器に入れて分離段(トレイ)を作る。次に、加熱状態で上から溶融ガラスを入れて、下部よりガラスを回収する。その後、ガラスを入れる毎にふるいは1段ずつ上にずらし、最上段のトレイをはずし放射性ヨウ素が抽出された吸着剤を回収するものである。
【0021】すなわち、銀添着シリカ2.59gをガラス管に詰め、50℃にて昇華させたI−131を含む空気を、I−131が破過するまで流通させることで廃棄体模擬物を合成した。この模擬物の放射線計数率を測定し、I−131の濃度を測定した。これを底部が金網になっている容器に入れた。
【0022】次に、これを20段積み重ね、400℃の円筒の縦型電気炉に設置した。上から表1のNo.1の組成のガラス化剤18gを投入し、5分間静置して下部から溶融ガラスを回収し、自然放冷してガラス化した。次に、シリカが入った容器(トレイ)を上部から取り出し、下部から未処理のシリカが入った容器を挿入した。この操作を100回繰り返した。この時、上部から取り出されるシリカには、ガラスが約8g含有していたが、I−131の量は、放射線の線量計測により、1/1000に減少していた。また、下部から回収されたガラスは、1回操作毎に約10g得られ、初期にシリカに吸着していたI−131が99%以上含有していることが確認された。
【0023】本実施例によれば、適切な組成の溶融ガラスと放射性ヨウ素含有廃棄体を向流接触させることにより、放射性ヨウ素をガラス側に高い抽出率で抽出させることができ、シリカ表面の放射性ヨウ素の残留を効率的に減少させることができることがわかる。
【0024】(実施例18)本実施例においては抽出塔の構造は実施例17と同等である。本実施例においては図3に示すように、溶融ガラスを流し込んだ後、熱風を吹き込み、シリカ表面に付着したガラスを吹き去るものである。
【0025】すなわち、銀添着シリカ2.59gをガラス管に詰め、50℃にて昇華させたI−131を含む空気を、I−131が破過するまで流通させることで廃棄体模擬物を合成した。この模擬物の放射線計数率を測定し、I−131の濃度を測定した。これを底部が金網になっている容器に入れた。
【0026】次に、これを5段積み重ね、400℃の円筒の縦型電気炉に設置した。上から表1のNo.1の組成のガラス化剤18gを投入し、5分間静置して下部から溶融ガラスを回収した。さらに、400℃、0.2MPa−Gに加熱圧縮した空気0.1Ndm3を塔の上部よりパルス的に吹き込んで、付着残留したガラスを強制的に除去した。下部から回収した溶融ガラスを自然放冷してガラス化する。次に、シリカが入った容器を上部から取り出し、下部から未処理のシリカが入った容器を挿入した。この操作を20回繰り返した。この時、上部から取り出されるシリカには、ガラスが約1g含有していたが、I−131の量は、放射線の線量計測により、1/1000以下に減少していた。また、下部から回収されたガラスは、1回操作毎に約17g得られ、初期にシリカに吸着していたI−131が99%以上含有していることが確認された。
【0027】本実施例によれば、適切な組成の溶融ガラスと放射性ヨウ素含有廃棄体を向流接触させ、廃棄体表面のガラス残留量を少なくすることで、少ない段数で放射性ヨウ素をガラス側に高い抽出率で抽出させることができ、かつ、シリカ表面の放射性ヨウ素の残留を効率的に減少させることができることがわかる。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成13年4月2日(2001.4.2)
【代理人】 【識別番号】100057874
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道照 (外6名)
【公開番号】 特開2002−296391(P2002−296391A)
【公開日】 平成14年10月9日(2002.10.9)
【出願番号】 特願2001−103292(P2001−103292)