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【発明の名称】 化学洗浄装置
【発明者】 【氏名】青井 洋美

【氏名】遠田 正見

【氏名】金崎 健

【氏名】梶沼 仁志

【氏名】斉藤 宣久

【要約】 【課題】化学洗浄中に必要最低限の鉄濃度が維持できなくなった場合、鉄イオンを溶出させ、または系統内の鉄イオン濃度を上げることにより、適切な鉄濃度を維持しながら化学洗浄を実施することができるようにする。

【解決手段】放射線取扱施設にて使用される配管、機器等の構造物を洗浄対象物1とし、この洗浄対象物1に洗浄液循環系4を接続して化学薬品を含む洗浄液3を循環させ、構造物表面の酸化皮膜を化学的に洗浄する化学洗浄装置であり、洗浄液循環系4の一部に洗浄対象物1の母材金属腐食を抑制する腐食抑制用ライン21を設け、この腐食抑制用ライン21は、洗浄液循環系4の洗浄液循環配管5に接続された炭素鋼または低合金鋼を含むライン23として構成され、これらの炭素鋼または低合金鋼を洗浄液に接触可能とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 放射線取扱施設にて使用される配管、機器等の構造物を洗浄対象物とし、この洗浄対象物に洗浄液循環系を接続して化学薬品を含む洗浄液を循環させることにより、前記構造物表面の酸化皮膜を化学的に洗浄する化学洗浄装置において、前記洗浄液循環系の一部に前記洗浄対象物の母材金属腐食を抑制する腐食抑制用ラインを設け、この腐食抑制用ラインは、前記洗浄液循環系の洗浄液循環配管に接続された炭素鋼または低合金鋼を含むラインとして構成され、かつ、これらの炭素鋼または低合金鋼を前記洗浄液に接触可能としたものであることを特徴とする化学洗浄装置。
【請求項2】 放射線取扱施設にて使用される配管、機器等の構造物を洗浄対象物とし、この洗浄対象物に洗浄液循環系を接続して化学薬品を含む洗浄液を循環させることにより、前記構造物表面の酸化皮膜を化学的に洗浄する化学洗浄装置において、前記洗浄液循環系の一部に前記洗浄対象物の母材金属腐食を抑制する腐食抑制用ラインを設け、この腐食抑制用ラインは、前記洗浄液循環系の洗浄液循環配管に並列接続された1系統または複数系統の炭素鋼配管または低合金鋼配管を、前記洗浄液循環配管と選択的に連通可能としたものであることを特徴とする化学洗浄装置。
【請求項3】 放射線取扱施設にて使用される配管、機器等の構造物を洗浄対象物とし、この洗浄対象物に洗浄液循環系を接続して化学薬品を含む洗浄液を循環させることにより、前記構造物表面の酸化皮膜を化学的に洗浄する化学洗浄装置において、前記洗浄液循環系の一部に前記洗浄対象物の母材金属腐食を抑制する腐食抑制用ラインを設け、この腐食抑制用ラインは、前記洗浄液循環系の洗浄液循環配管にステンレス鋼製の配管またはタンクを接続し、その内部に炭素鋼もしくは低合金鋼製の板材、管材またはブロック材を収容し、これらの板材、管材またはブロック材を前記洗浄液に接触可能としたものであることを特徴とする化学洗浄装置。
【請求項4】 放射線取扱施設にて使用される配管、機器等の構造物を洗浄対象物とし、この洗浄対象物に洗浄液循環系を接続して化学薬品を含む洗浄液を循環させることにより、前記構造物表面の酸化皮膜を化学的に洗浄する化学洗浄装置において、前記洗浄液循環系の一部に前記洗浄対象物の母材金属腐食を抑制する腐食抑制用ラインを設け、この腐食抑制用ラインは、前記洗浄液循環系の洗浄液循環配管にFe(II)酸化物もしくはFe(II)Fe(III)酸化物が溶解した液を注入する酸化物溶解液注入ラインであることを特徴とする化学洗浄装置。
【請求項5】 請求項4記載の化学洗浄装置において、酸化物溶解液注入ラインに、撹拌機およびヒータの少なくともいずれか一方を設置したことを特徴とする化学洗浄装置。
【請求項6】 放射線取扱施設にて使用される配管、機器等の構造物を洗浄対象物とし、この洗浄対象物に洗浄液循環系を接続して化学薬品を含む洗浄液を循環させることにより、前記構造物表面の酸化皮膜を化学的に洗浄する化学洗浄装置において、前記洗浄液循環系の一部に前記洗浄対象物の母材金属腐食を抑制する腐食抑制用ラインを設け、この腐食抑制用ラインは、前記洗浄液循環系の洗浄液循環配管または他の配管内にFe(II)酸化物もしくはFe(II)Fe(III)酸化物を付着させたフィルタを設置し、このフィルタに前記洗浄液を通過可能としたものであることを特徴とする化学洗浄装置。
【請求項7】 放射線取扱施設にて使用される配管、機器等の構造物を洗浄対象物とし、この洗浄対象物に洗浄液循環系を接続して化学薬品を含む洗浄液を循環させることにより、前記構造物表面の酸化皮膜を化学的に洗浄する化学洗浄装置において、前記洗浄液循環系の一部に前記洗浄対象物の母材金属腐食を抑制する腐食抑制用ラインを設け、この腐食抑制用ラインは、前記洗浄液循環系の洗浄液循環配管にバイパス配管を介して電界槽を接続し、この電界槽の陽極または陰極に炭素鋼または低合金鋼を適用して、これら陽極または陰極を前記洗浄液に接触可能としたものであることを特徴とする化学洗浄装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば原子力発電プラント等に設置された配管、機器その他の構造部品に付着した放射性物質を含む金属酸化物を化学的に溶解し、その構造部品の表面から除去するための化学洗浄装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】原子力発電プラント等の放射線取扱い施設においては、放射性物質を含む流体と接触する配管、機器その他の構造部品の内面に、運転に伴って放射性核種を含む酸化皮膜が付着または生成する。そのため、配管や機器等の周囲においては放射線量が高まり、定期点検作業時あるいは原子炉廃止措置時の解体作業おいて作業員の被ばく防止の点から作業性低下の原因となっている。
【0003】このような酸化皮膜を除去するには、酸化皮膜あるいは金属母材を溶解し、酸化皮膜を溶液中に溶解あるいは剥離させる方法などが用いられており、特に化学的に酸化皮膜を溶解、除去する化学洗浄方法は、一部実機において実施され、放射性物質低減に大きな効果を上げている。
【0004】例えば原子力発電所では、原子炉水中の放射能が機器や配管の表面の酸化皮膜中に取り込まれて被ばく線源になるため、保守、点検、補修期間の前にこの放射能を除去する方策が採られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の化学洗浄の手法としては積極的に放射能を含んだ酸化皮膜を除去していくため、金属母材の腐食抑制剤として作用させる鉄イオンまで過剰に除去した場合、容易に鉄濃度コントロールを実施することが困難であった。
【0006】しかしながら、化学洗浄中に金属母材の腐食抑制材として作用させる鉄を除去することにより、鉄濃度コントロールを実施することが困難となり、金属母材の腐食を加速してしまう。
【0007】そこで、本発明は化学洗浄中に不足した鉄イオンを容易に添加できる化学洗浄装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するために、請求項1に係る発明では、放射線取扱施設にて使用される配管、機器等の構造物を洗浄対象物とし、この洗浄対象物に洗浄液循環系を接続して化学薬品を含む洗浄液を循環させることにより、前記構造物表面の酸化皮膜を化学的に洗浄する化学洗浄装置において、前記洗浄液循環系の一部に前記洗浄対象物の母材金属腐食を抑制する腐食抑制用ラインを設け、この腐食抑制用ラインは、前記洗浄液循環系の洗浄液循環配管に接続された炭素鋼または低合金鋼を含むラインとして構成され、かつ、これらの炭素鋼または低合金鋼を前記洗浄液に接触可能としたものであることを特徴とする化学洗浄装置を提供する。
【0009】即ち、本発明では、洗浄機器を構成する系統の一部に、化学洗浄中に母材金属を溶解させる目的において、洗浄装置機器以外に、弁操作等により隔離することが可能な炭素鋼または低合金鋼を含むラインを構成する。
【0010】炭素鋼または低合金鋼を含むラインを構成し、洗浄中に本ラインに化学薬品を通水することにより、炭素鋼または低合金鋼の金属母材が腐食溶解し、母材金属が洗浄系統に溶出する。炭素鋼や低合金鋼からの母材溶出の主なイオンはFeイオンであるため、洗浄中に紫外線照射を実施することなく、下記の化学式に示すように、Fe2+イオンやFe2+錯イオン濃度を高めることができる。Fe2+錯イオン濃度が高い場合には、カチオン交換樹脂を通水することにより、濃度を下げることができる。
【0011】
【化1】

【0012】[R−H:カチオン樹脂]一方、Fe3+イオンは酸化皮膜の溶解により自然と濃度があがる。Fe3+錯イオンの溶解度は高いため、酸化皮膜が溶解するまで濃度を高く保持しても沈殿することはない。万一、Fe3+イオンが不足した場合には、下記の化学式のように、低濃度の過酸化水素の注入により、容易にFe2+イオンをFe3+イオンに酸化させることができる。
【0013】
【化2】

【0014】化学洗浄中の電位コントロールを行う場合にも、Fe3+イオンが存在し、Fe2+イオン濃度をコントロールすることで、目標電位を保持することができる。
【0015】請求項2に係る発明では、放射線取扱施設にて使用される配管、機器等の構造物を洗浄対象物とし、この洗浄対象物に洗浄液循環系を接続して化学薬品を含む洗浄液を循環させることにより、前記構造物表面の酸化皮膜を化学的に洗浄する化学洗浄装置において、前記洗浄液循環系の一部に前記洗浄対象物の母材金属腐食を抑制する腐食抑制用ラインを設け、この腐食抑制用ラインは、前記洗浄液循環系の洗浄液循環配管に並列接続された1系統または複数系統の炭素鋼配管または低合金鋼配管を、前記洗浄液循環配管と選択的に連通可能としたものであることを特徴とする化学洗浄装置を提供する。
【0016】即ち、本発明では、洗浄機器を構成する系統の一部に、洗浄装置機器以外に、炭素鋼の配管を洗浄液の主循環系と並列に設置し、仮設弁等により通水切替が可能なラインを構成する。
【0017】金属母材の溶解目的に設置する炭素鋼または低合金鋼の仮設ラインを隔離可能な系統構成にすることにより、化学洗浄中の目標Fe2+イオン濃度が保持できる場合に、過剰な鉄の溶出、即ち二次廃棄物を低減させることができる。
【0018】また、本発明では、洗浄機器を構成する系統の一部に、洗浄装置機器以外に、炭素鋼の配管を洗浄液の主循環系と並列に複数系統設置し、それぞれの系統が仮設弁により通水切替が可能なラインを構成する。
【0019】金属母材の溶解目的に設置する炭素鋼または低合金鋼の仮設ラインを複数系統設置し、それぞれの系統を隔離可能にすることにより、化学洗浄中のFe2+イオン濃度状況により、不足分のFe2+イオンを補充するために要する時間を、炭素鋼または低合金鋼のラインの通水本数により、調整することができる。
【0020】請求項3に係る発明では、放射線取扱施設にて使用される配管、機器等の構造物を洗浄対象物とし、この洗浄対象物に洗浄液循環系を接続して化学薬品を含む洗浄液を循環させることにより、前記構造物表面の酸化皮膜を化学的に洗浄する化学洗浄装置において、前記洗浄液循環系の一部に前記洗浄対象物の母材金属腐食を抑制する腐食抑制用ラインを設け、この腐食抑制用ラインは、前記洗浄液循環系の洗浄液循環配管にステンレス鋼製の配管またはタンクを接続し、その内部に炭素鋼もしくは低合金鋼製の板材、管材またはブロック材を収容し、これらの板材、管材またはブロック材を前記洗浄液に接触可能としたものであることを特徴とする化学洗浄装置を提供する。
【0021】即ち、本発明では、洗浄機器を構成する系統の一部に、洗浄装置機器以外に、炭素鋼を含むラインを構成するために、ステンレス鋼の配管またはタンクの中に炭素鋼や低合金鋼の板や配管やブロック等を設置する。
【0022】ラインのステンレス鋼の配管またはタンクの中に、母材溶出を目的に設置する炭素鋼や低合金鋼として、板、配管、ブロックの形状が不揃いな品や廃材等を設置することにより、炭素鋼材の補給が容易になる。
【0023】請求項4に係る発明では、放射線取扱施設にて使用される配管、機器等の構造物を洗浄対象物とし、この洗浄対象物に洗浄液循環系を接続して化学薬品を含む洗浄液を循環させることにより、前記構造物表面の酸化皮膜を化学的に洗浄する化学洗浄装置において、前記洗浄液循環系の一部に前記洗浄対象物の母材金属腐食を抑制する腐食抑制用ラインを設け、この腐食抑制用ラインは、前記洗浄液循環系の洗浄液循環配管にFe(II)酸化物もしくはFe(II)Fe(III)酸化物が溶解した液を注入する酸化物溶解液注入ラインであることを特徴とする化学洗浄装置を提供する。
【0024】即ち、本発明では、洗浄機器を構成する系統の一部に、Fe(II)酸化物もしくはFe(II)Fe(III)酸化物を溶解した液を注入するラインを構成する。
【0025】鉄酸化物を溶解した液を注入するラインを構成することにより、化学洗浄実施中に必要最低限の鉄のみを容易に注入することが可能となる。
【0026】請求項5に係る発明では、請求項4記載の化学洗浄装置において、酸化物溶解液注入ラインに、撹拌機およびヒータの少なくともいずれか一方を設置したことを特徴とする化学洗浄装置を提供する。
【0027】即ち、本発明では、洗浄機器を構成する系統の一部に、Fe(II)酸化物もしくはFe(II)Fe(III)酸化物を溶解した液を注入するために鉄酸化物の撹拌機、ヒータ等を設置する。
【0028】鉄酸化物を溶解するためには、化学洗浄剤に鉄酸化物を注入後、溶解度を大きくする為に昇温、撹拌することで、作業効率を向上させることが可能となる。
【0029】請求項6に係る発明では、放射線取扱施設にて使用される配管、機器等の構造物を洗浄対象物とし、この洗浄対象物に洗浄液循環系を接続して化学薬品を含む洗浄液を循環させることにより、前記構造物表面の酸化皮膜を化学的に洗浄する化学洗浄装置において、前記洗浄液循環系の一部に前記洗浄対象物の母材金属腐食を抑制する腐食抑制用ラインを設け、この腐食抑制用ラインは、前記洗浄液循環系の洗浄液循環配管または他の配管内にFe(II)酸化物もしくはFe(II)Fe(III)酸化物を付着させたフィルタを設置し、このフィルタに前記洗浄液を通過可能としたものであることを特徴とする化学洗浄装置を提供する。
【0030】即ち、本発明では、洗浄機器を構成する系統の一部に、Fe(II)酸化物もしくはFe(II)Fe(III)酸化物を付着させたフィルタを設置する。
【0031】洗浄中の鉄イオン不足を補う方法として、バイパスラインに化学洗浄前に酸化鉄を付着させたフィルタを設置することにより、化学洗浄中に鉄イオン濃度不足が生じた際に、化学洗浄液をフィルタに通水することにより、補足されていた酸化鉄が溶出し、鉄イオンを化学洗浄液に補充することが可能となる。
【0032】請求項7に係る発明では、放射線取扱施設にて使用される配管、機器等の構造物を洗浄対象物とし、この洗浄対象物に洗浄液循環系を接続して化学薬品を含む洗浄液を循環させることにより、前記構造物表面の酸化皮膜を化学的に洗浄する化学洗浄装置において、前記洗浄液循環系の一部に前記洗浄対象物の母材金属腐食を抑制する腐食抑制用ラインを設け、この腐食抑制用ラインは、前記洗浄液循環系の洗浄液循環配管にバイパス配管を介して電界槽を接続し、この電界槽の陽極または陰極に炭素鋼または低合金鋼を適用して、これら陽極または陰極を前記洗浄液に接触可能としたものであることを特徴とする化学洗浄装置を提供する。
【0033】即ち、本発明では、バイパスラインに炭素鋼または低合金鋼を陽極に接続した電解槽を設置する。
【0034】洗浄中に炭素鋼を電極に使用した電解槽を設置することにより、炭素鋼からのFe2+イオンの溶出を促進させることができ、鉄イオンを化学洗浄液に補充することが可能となる。
【0035】また、本発明では、バイパスラインに炭素鋼または低合金鋼を陰極に接続した電解槽を設置する。
【0036】洗浄中に炭素鋼を電極に使用した電解槽を設置することにより、陰極と陽極を交換することにより、化学洗浄液中に過剰に溶解した鉄イオンを補足し、イオン交換樹脂の負荷を軽減することが可能となる。
【0037】以上の本発明において、炭素鋼または低合金鋼として適用できる材料を例示すると、下記の通りである。(a)配管用炭素鋼管…JIS−G3452(SGP)、JIS−G3454(STPG)、JIS−G3455(STS)、JIS−G3457(STPY)、JIS−G3460(STPL)、(b)構造用炭素鋼管…JIS−G3444(STK)、JIS−G3445(STKM)、(c)機械構造用炭素鋼、合金鋼…JIS−G4051(SK)、JIS−G4052(SMn−H、SMnC−H、SCr−H、SCM−H、SNC−H、SNCM−H)、(d)工具鋼…JIS−G4401(SK)、(e)鋳鍛造品…JIS−G3201(SF)、JIS−G3202(SFVC)、JIS−G3203(SFVA)、JIS−G3204(SFVQ)、JIS−G3205(SFL),JIS−G3251(SFB)、JIS−G5101(SC)、JIS−G5102(SCW)、JIS−G5111(SCC等)、JIS−G5151(SCPH)、JIS−G5152(SCPL)。
【0038】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る化学洗浄装置の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の各実施形態は原子力発電プラントの配管、機器等の構造物を洗浄対象物とし、定期検査の際に同プラントに仮設して実施するものである。
【0039】第1実施形態(図1)図1は本発明の第1実施形態を示す系統構成図である。
【0040】この図1に示すように、本実施形態の化学洗浄装置においては、ステンレス鋼等の鉄系金属からなる洗浄対象物1を収納する化学洗浄タンク2が設けられている。この化学洗浄タンク2に洗浄液3を循環する洗浄液循環系4が形成され、この洗浄液循環系4は、化学洗浄タンク2に閉ループ状に接続された洗浄液循環配管5を有し、この洗浄液循環配管5は化学洗浄タンク2の底部から洗浄液を吸引し、化学洗浄タンク2の底部付近に洗浄液を供給するようになっている。洗浄液循環配管5には、洗浄液3の流れ方向に沿って順次に、循環ポンプ6、ヒータ7、イオン交換樹脂塔8、オゾン発生器9のミキサ10、過酸化水素注入装置11、化学薬品(シュウ酸)注入装置12等が設けられ、これにより化学薬品を含む洗浄液3が化学洗浄タンク2に循環するようになっている。化学洗浄タンク2には、溶存オゾン濃度計13が設けられている。なお、化学洗浄タンク2には排気系14が設けられている。この排気系14の排気管15には、上流側から順に、エアフィンクーラ16、フィルタ17、オゾン分解塔18、排気用ファン装置19、気相オゾン濃度計20等が設けられている。
【0041】このような構成のもとで、洗浄液循環配管5の一部に、洗浄対象物1の母材金属腐食を抑制する腐食抑制用ライン21が設けられている。この腐食抑制用ライン21は、洗浄液循環配管5の例えば下流側位置に分岐管22を介して並列な配管を設け、この並列な配管を炭素鋼または低合金鋼からなる補助配管23として構成したものである。そして、補助配管23の両端部に位置して、分岐管21に1対の隔離弁24が設けられ、これらの隔離弁24を開として補助配管23内に洗浄液3を流動させることにより、補助配管23を構成する炭素鋼または低合金鋼を洗浄液2に接触可能としてある。即ち、洗浄機器を構成する系統の一部に、化学洗浄中に洗浄対象物1の母材金属を溶解させる目的において、洗浄装置機器以外に、隔離弁24の閉操作により隔離することが可能な炭素鋼または低合金鋼を含む腐食抑制用ライン21を構成している。
【0042】次に作用を説明する。
【0043】本実施形態の装置においては、通常は上述した腐食抑制ライン21の隔離弁24を閉状態として運転する。即ち、通常運転においては、炭素鋼または低合金鋼製の補助配管23に洗浄液3が流通しない状態とする。
【0044】この状態で化学洗浄対象物1を化学洗浄タンク2に設置し、洗浄液3を仮設の洗浄液循環系4に沿って循環させ、化学洗浄タンク2に戻す。洗浄液3については、ヒータ7で温度コントロールを実施し、イオン交換樹脂塔8にて過剰の鉄分を除去する。洗浄液3としてオゾン水を使用する場合には、オゾン発生器9からオゾン注入装置の一つであるミキサ10を通して洗浄液循環配管5にオゾンを注入し、洗浄タンク1の中の濃度を溶存オゾン濃度計13にて確認する。
【0045】また、還元剤の洗浄液としてシュウ酸を使用する場合には、化学薬品注入装置11にてシュウ酸を溶解し、洗浄液循環配管5に注入する。このように、例えばオゾンを含有した洗浄液2により、洗浄対象物1の表面に付着した放射性物質を含む酸化皮膜中の酸化物の溶解が行われるとともに、溶出金属の分離およびシュウ酸の分解が平行して行われることにより、化学洗浄が実施される。
【0046】排気系14においては、化学洗浄タンク2の気相部からエアフィンクーラ16、フィルタ17、オゾン分解塔18、排気用ファン装置19を通して本設の排気系統へ廃棄がなされる。また、最終排気ラインにオゾンの残留が無いことが、気相オゾン濃度計20によって確認される。
【0047】このような一連の洗浄操作において、イオン交換樹脂塔8にて洗浄液3から過剰の鉄を除去する事態が起こり得る。このような事態が継続すると、洗浄対象物1の母材浸食に至る可能性がある。そこで、かかる場合には、洗浄液配管5に接続した分岐管22の隔離弁24を開け、炭素鋼または低合金鋼製の補助配管23に洗浄液を通液する。これにより、ステンレス鋼よりも耐食性に劣る炭素鋼や低合金鋼製の補助配管23の母材金属からFe2+イオンの溶解が促進される。
【0048】これにより、洗浄配管5を経て化学洗浄タンク2に流入する洗浄液3中の必要最低限のFe2+イオンが保持できるようになり、化学洗浄タンク2内にて洗浄される洗浄対象物1の母材からのFe2+イオンの溶出が抑制される。また、Fe3+イオンはFe2+イオンを生成させ、その後過酸化水素注入装置11より過酸化水素を添加し、Fe2+イオンを過酸化水素の酸化力によりFe3+イオンに酸化することができる。
【0049】一方、Fe3+イオンは酸化皮膜の溶解により自然と濃度があがる。Fe3+錯イオンの溶解度は高いため、酸化皮膜が溶解するまで濃度を高く保持しても沈殿することはない。万一、Fe3+イオンが不足した場合には、低濃度の過酸化水素の注入により、容易にFe2+イオンをFe3+イオンに酸化させることができる。化学洗浄中の電位コントロールを行う場合にも、Fe3+イオンが存在し、Fe2+イオン濃度をコントロールすることで、目標電位を保持することができる。
【0050】以上の構成を有する本実施形態によれば、洗浄液循環配管5に炭素鋼または低合金鋼製の補助配管23を設置することにより、化学洗浄中の鉄濃度を紫外線照射をすることなく、Fe3+イオン濃度とFe2+イオン濃度をコントロールし、これにより洗浄対象物1の母材金属の腐食を抑制できることができる。
【0051】第2実施形態(図2)図2は本発明の第2実施形態を示す系統構成図である。
【0052】本実施形態は、複数系統の炭素鋼配管または低合金鋼配管を、洗浄液循環配管と選択的に連通可能としたものであり、化学洗浄対象物が原子炉一次系統である原子炉冷却材再循環系の一部とした場合の化学洗浄を行なう場合に適用したものである。
【0053】具体的に説明すると、図3に示すように、本実施形態の化学洗浄装置においては、洗浄対象物1が原子炉冷却材再循環系配管25の内表面であり、洗浄範囲は原子炉冷却材再循環系配管25に設けた1対の弁26,27間の領域である。そこで、本実施形態では第1実施形態における化学洗浄タンク3に代えて洗浄液を収容するサージタンク28を設ける一方、原子炉冷却材再循環系配管25の弁26,27間領域が洗浄液循環系4の一部となるように洗浄液循環配管5を接続した構成とされている。
【0054】また、本実施形態では第1実施形態と異なり、イオン交換樹脂塔8および化学薬品注入装置12がサージタンク28に独立系として接続され、それぞれ系統配管29,30に補助ポンプ31,32を有する構成とされている。さらに、洗浄液循環配管5のオゾン発生器9(9a)の他、オゾンによる洗浄効果を高めるための別系統のオゾン注入系33がサージタンク28に接続されている。このオゾン注入系33は、独立ループ状の系統配管34にオゾン発生器9(9b)およびミキシングポンプ35を設けた構成とされている。また、洗浄液循環配管5には、化学洗浄液としてのシュウ酸の分解に使用する紫外線照射装置36が設置されている。その他の構成については、第1実施形態とほぼ同様であるから、図2の対応部分に図1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】このような構成のもとで、本実施形態では、洗浄液循環配管5の一部に設ける腐食抑制用ライン21として、循環ポンプ6の上流側部位に複数系統、例えば3系統の炭素鋼配管または低合金鋼配管からなる補助配管23が、分岐管22を介して並列に接続されている。各補助配管23の両端部にはそれぞれ隔離弁24が設けられている。そして、各隔離弁24の所定のものを開として、選択された補助配管23内に洗浄液3を流動させることにより、補助配管23を構成する炭素鋼または低合金鋼が洗浄液2に接触可能とされている。
【0056】洗浄時においては、第1実施形態と同様の作用に加えて、洗浄液循環配管5の一部に洗浄液3の受けタンクとして設置されたサージタンク28中のオゾン濃度維持方法として、独立のオゾン注入系33が使用される。即ち、サージタンク28内の洗浄液3が補助ポンプ35を用いて系統配管34に循環され、その系統配管34を介してサージタンク28にオゾン発生器9bからミキシングポンプ19を用いてオゾンが注入される。また、化学薬品(シュウ酸)の分解のために、紫外線照射装置36が適用される。この場合、洗浄液3がサージタンク28から洗浄液循環配管5に流出する際に、洗浄液3中のシュウ酸は、洗浄液循環配管5に設けられた紫外線照射装置36において紫外光照射を受け、CO2ガスと水とに分解されて、浄化される。
【0057】そして、本実施形態においても一連の洗浄操作中に、イオン交換樹脂塔8にて洗浄液3から過剰の鉄を除去する事態が起こり得る。このような事態が継続すると、洗浄対象物1の母材浸食に至る可能性があるので、第1実施形態と同様に、洗浄液配管5に接続した分岐管22の隔離弁24を開け、炭素鋼または低合金鋼製の補助配管23に洗浄液を通液する。
【0058】これにより、ステンレス鋼よりも耐食性に劣る炭素鋼や低合金鋼製の補助配管23の母材金属からFe2+イオンの溶解が促進されるが、本実施形態の場合には、炭素鋼または低合金鋼製の補助配管23を並列的に複数設けてあるため、各補助配管23を例えば単一、または複数組合せた状態等、任意に選択してそれぞれの系統を隔離可能とすることができる。例えば、化学洗浄中に鉄濃度が不足した場合に炭素鋼隔離弁21を順次に開き、補助配管23に化学洗浄液3を通液する。鉄濃度が低く、1系統の補助配管23への通液では鉄濃度を上げるために時間を要する場合には、更にもう1系統の補助配管23への通液を開始することにより、化学洗浄液中における母材金属の腐食域での接触時間を短縮し、母材腐食を抑制することが可能となる。
【0059】したがって、本実施形態によれば、化学洗浄中のFe2+イオン濃度状況により、不足分のFe2+イオンを補充するために要する時間を、炭素鋼または低合金鋼の補助配管23のラインの通液本数の設定により、任意に調整することができ、化学洗浄中の鉄濃度の状況に応じた最適な炭素鋼または低合金鋼の母材金属溶出によるFe3+イオン濃度とFe2+イオン濃度のコントロールが行なえる。
【0060】第3実施形態(図3)図3は本発明の第3実施形態を示す系統構成図である。
【0061】本実施形態は、洗浄液循環系の洗浄液循環配管にステンレス鋼製の配管またはタンクを接続し、その内部に炭素鋼もしくは低合金鋼製の板材、管材またはブロック材を収容し、これらの板材、管材またはブロック材を洗浄液に接触可能とした腐食抑制用ラインを設けたものである。
【0062】具体的に説明すると、図3に示すように、本実施形態の化学洗浄装置は基本的な系統構成について第1実施形態と同様である。即ち、ステンレス鋼等の鉄系金属からなる洗浄対象物1を化学洗浄タンク2に収容し、この化学洗浄タンク2に洗浄液3を循環する洗浄液循環系4を形成している。洗浄液循環系4は、化学洗浄タンク2に閉ループ状に接続された洗浄液循環配管5を有し、この洗浄配管5には洗浄液3の流れ方向に沿って順次に、循環ポンプ6、ヒータ7、イオン交換樹脂塔8、オゾン発生器9のミキサ10、過酸化水素注入装置11、化学薬品(シュウ酸)注入装置12等が設けられ、これにより化学薬品を含む洗浄液3が化学洗浄タンク2に循環するようになっている。
【0063】このような構成において、本実施形態では、洗浄液循環配管5のヒータ7下流部位に腐食抑制用ライン21が設けられている。この腐食制御用ライン21は、ステンレス鋼製のタンク37の内部に炭素鋼もしくは低合金鋼製の板材、管材またはブロック材等からなる廃材38を収容し、この廃材38を洗浄液に接触可能とした構成とされている。すなわち、タンク37の上部に例えば散液管39が設けられ、この散液管39には洗浄液循環配管5から分岐した液導入管40が接続され、散液管39からタンク37内に洗浄液5が散布できるようになっている。液導入管40には、隔離弁41が設けられている。また、タンク37の底部には液送出管42が設けられ、この液送出管42にはポンプ43および隔離弁44が設けられ、液送出管42の先端は洗浄液循環配管5に接続されている。これにより、タンク37内に収容した板材、管材またはブロック材等の廃材38は、導入される洗浄液に接触可能とされ、接触後の洗浄液は洗浄液循環配管5に戻されるようになっている。
【0064】なお、他の構成部分については第1実施形態のものとほぼ同様であるから、共通部分について図3に図1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】本実施形態においては、洗浄液循環配管5から隔離弁41,44にて隔離されたステンレス鋼製のタンク37の内部に炭素鋼板または炭素鋼等の廃材38を設置し、鉄イオン濃度が足りない場合には隔離弁41,44を開にし、タンク37に洗浄液5を通液させて鉄イオンを溶解させる。内部に設置する炭素鋼等の廃材38はタンク37に収まる大きさであれば、どのような形状でも問題は無い。
【0066】本実施形態によれば、小さな形状の炭素鋼廃材38を数点設置することにより、洗浄液5との接液面積が大きくなり、炭素鋼の母材金属の溶解が促進されるため、鉄濃度コントロールに要する時間を短縮することができる。
【0067】また、洗浄液循環配管5またはタンク38の中に、母材溶出を目的に設置する炭素鋼や低合金鋼として、板、配管、ブロックの形状が不揃いな品や廃材38等を設置することにより、炭素鋼材の補給が容易になる。なお、本実施形態ではタンク37を設置したが、タンク37に代えて廃材を収容し得る配管とすることも可能である。
【0068】第4実施形態(図4)図4は本発明の第4実施形態を示す系統構成図である。
【0069】本実施形態は腐食抑制用ラインは、洗浄液循環系の洗浄液循環配管にFe(II)酸化物もしくはFe(II)Fe(III)酸化物が溶解した液を注入する酸化物溶解液注入ラインを設けたものである。
【0070】具体的に説明すると、図4に示すように、本実施形態の化学洗浄装置も基本的な系統構成について第1実施形態と同様である。即ち、ステンレス鋼等の鉄系金属からなる洗浄対象物1を化学洗浄タンク2に収容し、この化学洗浄タンク2に洗浄液3を循環する洗浄液循環系4を形成している。洗浄液循環系4は、化学洗浄タンク2に閉ループ状に接続された洗浄液循環配管5を有し、この洗浄配管5には洗浄液3の流れ方向に沿って順次に、循環ポンプ6、ヒータ7、イオン交換樹脂塔8、オゾン発生器9のミキサ10、過酸化水素注入装置11、化学薬品(シュウ酸)注入装置12等が設けられ、これにより化学薬品を含む洗浄液3が化学洗浄タンク2に循環するようになっている。
【0071】このような構成において、本実施形態では、洗浄液循環配管5に腐食抑制用ライン21が設けられている。この腐食制御用ライン21は、図4に示すように、オゾン注入用のミキサ10の下流側に鉄酸化物注入装置として、鉄酸化物溶解槽45を設置し、その内部に投込ヒー46と攪拌棒47が設置されている。鉄酸化物溶解槽45の底部には注入管48が設けられ、この注入管48には補助ポンプ48aおよび隔離弁50が設けられ、注入管48の先端が洗浄液循環配管5に接続されている。
【0072】そして、洗浄液循環系4内の洗浄液3の鉄濃度が不足した場合には、隔離弁50を開き、補助ポンプ48aを稼動して、鉄酸化物溶解槽45で鉄酸化物溶解により生成した鉄イオンを洗浄液循環配管5内に投入する。これにより、鉄酸化物の溶解を促進させる。
【0073】本実施形態によれば、事前に鉄酸化物を溶解し、鉄イオン溶液としておくことで、瞬時に鉄イオン濃度を必要濃度に維持することができる。また、溶解する鉄酸化物の形態により、ヘマタイトであればFe3+イオンが主となり、マグネタイトであればFe3+イオンとFe3+イオンが2:1の割合で生成させることが可能である。つまり、鉄酸化物を溶解した液を注入するラインを構成することにより、化学洗浄実施中に必要最低限の鉄のみを容易に注入することが可能となる。
【0074】第5実施形態(図5)図5は本発明の第5実施形態を示す系統構成図である。
【0075】本実施形態は、洗浄液循環系の洗浄液循環配管または他の配管内にFe(II)酸化物もしくはFe(II)Fe(III)酸化物を付着させたフィルタを設置し、このフィルタに前記洗浄液を通過可能としたものである。
【0076】具体的に説明すると、図5に示すように、本実施形態の化学洗浄装置も基本的な系統構成について第1実施形態と同様である。即ち、ステンレス鋼等の鉄系金属からなる洗浄対象物1を化学洗浄タンク2に収容し、この化学洗浄タンク2に洗浄液3を循環する洗浄液循環系4を形成している。洗浄液循環系4は、化学洗浄タンク2に閉ループ状に接続された洗浄液循環配管5を有し、この洗浄配管5には洗浄液3の流れ方向に沿って順次に、循環ポンプ6、ヒータ7、イオン交換樹脂塔8、オゾン発生器9のミキサ10、過酸化水素注入装置11、化学薬品(シュウ酸)注入装置12等が設けられ、これにより化学薬品を含む洗浄液3が化学洗浄タンク2に循環するようになっている。
【0077】このような構成において、本実施形態では、洗浄液循環配管5に腐食抑制用ライン21が設けられている。この腐食制御用ライン21は、図5に示すように、洗浄液循環配管5のオゾン注入用ミキサ10下流側に設けたバイパス管49に隔離弁50により隔離された鉄酸化物付着フィルタ51を設置した構成としてある。
【0078】そして、洗浄液循環配管5内の鉄濃度が不足した場合には、隔離弁50を開き、鉄酸化物付着フィルタ51に洗浄液5を通液することにより、鉄酸化物を系統内に溶出させ、これにより鉄イオン濃度を上げることができる。
【0079】本実施形態によれば、バイパス管49に化学洗浄前に酸化鉄を付着させた鉄酸化物付着フィルタ51を設置することにより、化学洗浄中に鉄イオン濃度不足が生じた際に、洗浄液5を鉄酸化物付着フィルタ51に通液することにより、補足されていた酸化鉄を溶出させて鉄イオンを洗浄液5に補充することが可能となる。したがって、炭素鋼や低合金鋼の溶解による鉄イオン生成よりも早く鉄濃度を目的濃度に保持することができる。また、第4の実施の形態でも記載したとおり、フィルタに付着させるクラッドの形態を替えることにより、溶出する鉄イオン主も変化させることができる。
【0080】第6実施形態(図6)図6は本発明の第6実施形態を示す系統構成図である。
【0081】本実施形態は、洗浄液循環系の洗浄液循環配管にバイパス配管を介して電界槽を接続し、この電界槽の陽極または陰極に炭素鋼または低合金鋼を適用して、これら陽極または陰極を前記洗浄液に接触可能としたものである。
【0082】具体的に説明すると、図6に示すように、本実施形態の化学洗浄装置も基本的な系統構成について第1実施形態と同様である。即ち、ステンレス鋼等の鉄系金属からなる洗浄対象物1を化学洗浄タンク2に収容し、この化学洗浄タンク2に洗浄液3を循環する洗浄液循環系4を形成している。洗浄液循環系4は、化学洗浄タンク2に閉ループ状に接続された洗浄液循環配管5を有し、この洗浄配管5には洗浄液3の流れ方向に沿って順次に、循環ポンプ6、ヒータ7、イオン交換樹脂塔8、オゾン発生器9のミキサ10、過酸化水素注入装置11、化学薬品(シュウ酸)注入装置12等が設けられ、これにより化学薬品を含む洗浄液3が化学洗浄タンク2に循環するようになっている。
【0083】このような構成において、本実施形態では、洗浄液循環配管5に腐食抑制用ライン21が設けられている。この腐食制御用ライン21は、図6に示すように、洗浄液循環配管5のオゾン注入用ミキサ10下流側に設けたバイパス管52に隔離弁53により隔離された電解槽54を設け、この電解槽54の陽極55に炭素鋼を接続し、陰極56に白金を接続した構成としてある。
【0084】このように、洗浄液循環配管5のバイパス管52に隔離弁53により隔離された電解槽54を設置し、陽極55に炭素鋼、陰極56に白金を設置することにより、系統内の鉄濃度が不足した場合には、隔離弁53を開き、電解槽54に化学洗浄液を通水することにより、陽極55の炭素鋼から鉄イオンが積極的に溶け出し、鉄濃度を目的濃度に保持することができる。また、陽極55と陰極56とを入れ替えることにより、系統内に鉄濃度が高過ぎる場合には鉄を電極に付着させて系統内から隔離することができる。即ち、洗浄中に炭素鋼を電極に使用した電解槽を設置することにより、炭素鋼からのFe2+イオンの溶出を促進させることができ、鉄イオンを化学洗浄液に補充することが可能となる。
【0085】本実施形態によれば、洗浄中に炭素鋼を電極に使用した電解槽を設置することにより、陰極と陽極を交換することにより、化学洗浄液中に過剰に溶解した鉄イオンを補足し、イオン交換樹脂の負荷を軽減することが可能となる。
【0086】実施形態の効果(図7)図7は、上述した本発明の実施形態において、化学洗浄液としてシュウ酸を用いた場合における、炭素鋼腐食量のFe2+イオン濃度依存性を示す特性図である。縦軸に炭素鋼腐食量を示し、横軸に洗浄時間を示してある。
【0087】この図7に示したように、シュウ酸を用いた場合における炭素鋼腐食量は、溶液中にFe2+イオン濃度が低い場合には増加し、Fe2+イオン濃度が高い場合には減少する。このため、化学洗浄中にFe2+イオン濃度が不足した場合には、炭素鋼に化学洗浄液を接触させることにより、母材が腐食、即ち、洗浄系統中に鉄が溶出されることが分かる。
【0088】また、図7より、系統中にFe2+イオン濃度が十分保持されていれば、洗浄対象物の母材金属の腐食を抑制できることが判るまた、洗浄対象物の母材腐食抑制や除却対処物洗浄時の鉄イオン濃度コントロールによる積極的な母材研磨を実施することができ、化学洗浄効果を高めることが確認できる。
【0089】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、化学洗浄中に必要最低限の鉄濃度が維持できなくなった場合、鉄イオンを溶出させ、または系統内の鉄イオン濃度を上げることにより、適切な鉄濃度を維持しながら化学洗浄を実施することができ、また、洗浄対象物の母材腐食抑制や除却対処物洗浄時の鉄イオン濃度コントロールによる積極的な母材研磨を実施することができ、化学洗浄効果を高めることも可能となる。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【識別番号】000221018
【氏名又は名称】東芝エンジニアリング株式会社
【出願日】 平成13年3月1日(2001.3.1)
【代理人】 【識別番号】100078765
【弁理士】
【氏名又は名称】波多野 久 (外1名)
【公開番号】 特開2002−257985(P2002−257985A)
【公開日】 平成14年9月11日(2002.9.11)
【出願番号】 特願2001−57032(P2001−57032)